特許第6238842号(P6238842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238842
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】水素製造装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20171120BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20171120BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALN20171120BHJP
【FI】
   C01B3/38
   C01B3/48
   C01B3/56 Z
   !H01M8/06 G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-121673(P2014-121673)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-675(P2016-675A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年11月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 第33回水素エネルギー協会大会 開催場所 タワーホール船堀 5階小ホール(東京都江戸川区船堀4−1−1) 開催日 平成25年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】村田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(72)【発明者】
【氏名】高木 聡
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/059825(WO,A1)
【文献】 特開2005−289709(JP,A)
【文献】 特開2004−299995(JP,A)
【文献】 特開平06−191801(JP,A)
【文献】 特開2011−251898(JP,A)
【文献】 特表2012−511491(JP,A)
【文献】 特開2008−266118(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/126686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
H01M 8/0612
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段により加熱して改質ガスを得る改質器と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器と、当該CO変成器にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部とを設け、
前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器と前記水素精製部とに亘ってガスを流通するガス流通路を設けて、前記ガス流通路に原料ガスを供給して水素精製運転を行う水素製造装置であって、
前記ガス流通路に、前記水素精製部を迂回して前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器との順にガスを循環流通する閉循環回路を設け、
前記水素精製運転を実行する状態と、前記加熱手段による前記改質器の加熱を維持しつつ、前記水素精製部を停止状態として、ガス流通路内に充填されたガスを前記閉循環回路に循環流通させる待機運転を実行する状態とを切り替える切替装置を備える水素製造装置。
【請求項2】
前記水素精製部が水素以外の不純物を吸着除去する吸着材を充填した吸着塔を用いた圧力揺動吸着運転により水素精製を行うPSA装置を備えるものである請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記切替装置は、前記待機運転前または待機運転中に、前記PSA装置の吸着塔に水素ガスを充填して置換する水素置換運転を実行可能に構成してある請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記水素精製部で精製された水素ガスを貯留する製品タンクを備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記閉循環回路内における内圧を検知する圧力検知部を備え、前記待機運転中において前記圧力検知部の検知圧力が所定圧力よりも低下した場合に、前記製品タンクから水素ガスを前記閉循環回路内に供給する水素供給路を設けた請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記加熱手段が、前記待機運転における前記改質器の温度を、前記水素精製運転時における前記改質器の温度との関連で定めた設定温度に維持すべく加熱するように構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項7】
原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段により加熱して改質ガスを得る改質器と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器と、当該CO変成器にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部とを設け、
前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器と前記水素精製部とに亘ってガスを流通するガス流通路とを設けて、前記ガス流通路に原料ガスを供給して水素精製運転を行う水素製造装置の運転方法であって、
前記ガス流通路に、前記水素精製部を迂回して前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器との順にガスを循環流通する閉循環回路を設け、
前記水素精製運転を実行する状態と、前記加熱手段による前記改質器の加熱を維持しつつ、前記水素精製部を停止状態として、ガス流通路内に充填されたガスを前記閉循環回路に流通させる待機運転を実行する状態とを切り替える水素製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段により加熱して改質ガスを得る改質器と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器と、当該CO変成器にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部とを設け、
前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器と前記水素精製部とに亘ってガスを流通するガス流通路を設けて、前記ガス流通路に原料ガスを供給して水素精製運転を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、天然ガスや都市ガス等を原料ガスとして、水素を現場(オンサイト)で製造する水素製造装置の開発が行われている。このような水素製造装置は、工業用途として、鋼板等の金属の光輝焼鈍やガラス製造に利用される他、燃料電池自動車に水素を補給する水素ステーションとして、中部国際空港島内等へ設置されている。
当該水素製造装置の一例として、圧送装置により圧送される原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱して改質ガスを得る改質器と、当該改質器からの改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させて水素リッチガスを得るCO変成器と、当該水素リッチガスから水素以外の不純物を分離して水素を精製する水素精製部(たとえば、PSA方式を用いた装置)とを備えたものが知られている。
【0003】
当該水素精製装置にて、水素を製造する際には、脱硫器を200〜300℃程度に、改質器を700〜800℃程度に、CO変成器を200〜450℃程度に維持する必要があるため、たとえば、外部から供給される燃料ガス(例えば、都市ガス13A)を燃焼して改質器の触媒を昇温させる加熱装置を備え、昇温された改質器の触媒を通過して昇温された比較的高温の改質ガスを、CO変成器に導くことで当該CO変成器を昇温させるとともに、当該CO変成器に併設する脱硫器をも昇温させるように構成されている。
また、他の水素製造装置として、原料ガスに水蒸気を混合し加熱して改質ガスを得る改質器と、当該改質ガスを昇圧させる昇圧装置と、昇圧された改質ガスを水素と水素以外のオフガスとに分離するPSA式の水素精製部と、水素精製部からのオフガスを貯留可能なオフガス用タンクとを備えたものが知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
水素精製装置においては、その起動時におけるタイムロスを低減することが、一つの技術的課題として広く認識されており、例えば、当該特許文献1に開示の水素製造装置では、水素製造の停止時において、水素精製部を所定の圧力に維持すべく、昇圧装置と水素精製部とオフガス用タンクとにガスを循環する閉循環回路を形成するとともに、当該閉循環回路に水素精製部で精製した水素リッチガスを循環させる水素循環運転を実行可能に構成されている。これにより、水素精製部の吸着材から水素以外のオフガスが脱離して拡散することを防止して、起動時から高い純度の水素を水素精製部から供給可能として、起動時におけるタイムロスを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−299995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般的な水素製造装置においては、改質器を700〜800℃程度に、CO変成器を200〜450℃程度に、脱硫器を200〜300℃程度に維持する必要があるため、水素精製装置の停止時に加熱装置を停止させ、起動時に加熱装置の作動を再開して昇温すると、起動直後に水素を送出可能な構成を採用していたとしても、起動直後には、改質器等が十分に昇温していないため、装置全体としては高純度の水素の製造がすぐに実行されることはなく、改善の余地があった。
【0007】
また、水素製造装置の水素製造を停止する期間として、数日を想定する場合、上記特許文献1の起動方法が有効に用いられるが、水素製造を停止する期間として、たとえば夜間の数時間程度を想定する場合、水素製造装置を停止する際に加熱装置を停止し、起動する際に加熱装置の作動を再開する形態で再起動するのは、装置に熱的負荷を繰り返しかけることになるので、保守面でも好ましくないとされている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素製造装置を効率的に待機運転させ、かつ、待機運転からの起動後速やかに、水素の供給および製造を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本願の水素製造装置の特徴構成は、
原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段により加熱して改質ガスを得る改質器と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器と、当該CO変成器にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部とを設け、
前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器と前記水素精製部とに亘ってガスを流通するガス流通路を設けて、前記ガス流通路に原料ガスを供給して水素精製運転を行う水素製造装置であって、
前記ガス流通路に、前記水素精製部を迂回して前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器との順にガスを循環流通する閉循環回路を設け、
前記水素精製運転を実行する状態と、前記加熱手段による前記改質器の加熱を維持しつつ、前記水素精製部を停止状態として、ガス流通路内に充填されたガスを前記閉循環回路に循環流通させる待機運転を実行する状態とを切り替える切替装置を備える点にある。
【0010】
〔作用効果1〕
上記特徴構成によれば、前記ガス流通路に、ガス流通路内に充填されたガスを返送可能にして、前記脱硫器、前記改質器、前記CO変成器に、前記ガス流通路内に充填されたガスを返送循環する閉循環回路を形成するので、前記CO変成器を通過する閉循環回路内のガスは、前記水素精製部を迂回して、返送された返送ガスを前記脱硫器、前記改質器、前記CO変成器に、再度循環することができる。また、このとき、改質器における加熱を維持するから、再循環されたガスが、改質器で得た熱量を変成器、脱硫器に順次伝達する。すると、待機運転中は前記水素精製部の一時停止状態としても、前記脱硫器、前記改質器、前記CO変成器を所定の加熱状態に維持しておくことができ、水素精製運転を速やかに開始できる状態で待機させておくことができる。
【0011】
この場合に、改質器を加熱維持するために必要となる燃料は、脱硫器、改質器、CO変成器および閉循環回路を形成するガス流通路の温度低下に見合う熱量相当でよいから、たとえば、水素精製部を経由して閉循環回路を形成して待機運転を行うのに比べて、きわめて少なくて済む。というのは、水素精製部を迂回する待機運転を行うと、その水素精製部における放熱を回避できるので、その放熱に見合う温度低下を補うために必要となる加熱量も少なくて済み、その熱量を生成するための燃料の量も少なくて済むのである。
【0012】
そのため、水素精製運転と待機運転を選択的に行うことによって、従来では、たとえば、夜間に水素製造装置の運転を停止し、昼間に水素製造装置の運転を再開するという状況下で、夜間に改質器等の温度が極度に低下する、あるいは、常時、水素精製運転を継続するという状況下で、改質器の温度維持のために大量のエネルギーを消費しなければならない、等の不都合を合理的に解消できるようになった。
【0013】
以上より、水素製造装置を効率的に待機運転させ、かつ、待機運転からの起動後速やかに、水素の供給および製造を可能とする水素製造装置を実現できる。
【0014】
〔構成2〕
本願の水素製造装置の更なる特徴構成は、
前記水素精製部が水素以外の不純物を吸着除去する吸着材を充填した吸着塔を用いた圧力揺動吸着運転により水素精製を行うPSA装置を備える点にある。
【0015】
〔作用効果2〕
水素精製部としては、PSA装置や膜分離装置、深冷分離装置等が用いられる場合があるが、上記特徴構成によれば、PSA装置を用いた水素精製を行うから、一般に、水素精製純度を高くかつ回収率も比較的高くする連続運転を可能とするので、効率の良い水素精製運転が可能となる。
【0016】
〔構成3〕
本願の水素製造装置の更なる特徴構成は、
前記切替装置は、前記待機運転前または待機運転中に、前記PSA装置の吸着塔に水素ガスを充填して置換する水素置換運転を実行可能に構成してある点にある。
【0017】
〔作用効果3〕
上記特徴構成によれば、水素製造装置の待機運転前または待機運転中に、前記PSA装置の吸着塔に水素ガスを充填して置換するから、待機運転中に、水素精製部としてのPSA装置の吸着塔が、水素置換された状態に維持される。PSA装置は、水素以外の不純物を吸着除去する吸着材を用いたものであるから、水素精製運転の実行中は、吸着材に対して、圧力揺動運転条件の下、水素および水素以外の不純物の吸脱着が繰り返し行われる。また、圧力揺動運転は、複数の吸着塔で交互に行われるものであるから、PSA装置の停止時には、その吸着塔に収容された吸着材が水素以外の不純物を吸着した状態となっている場合がある。水素製造運転の停止中、その吸着材から水素以外の不純物が脱離すると、待機運転中に吸着塔内の水素以外の不純物濃度が上昇してしまう。すると、水素精製純度が低下するおそれがあり、運転再開初期の吸着塔内のガスは製品水素ガスとして回収することができない。結局このような場合、待機運転終了後水素精製運転を再開しても速やかに高純度の水素製造を開始できるわけではない。
【0018】
そこで、前記待機運転中、前記吸着塔に水素ガスを充填して置換する水素置換運転を実行すると、前記水素精製部の吸着塔内に存在する水素以外の不純物量を低減しておくことができ、塔内の不純物量を減少させておくことができ、水素精製運転再開後、水素製造開始されるまでの期間を短くできるようになる。
【0019】
〔構成4〕
本願の水素製造装置の更なる特徴構成は、
前記水素精製部で精製された水素ガスを貯留する製品タンクを備える点にある。
【0020】
〔作用効果4〕
上記特徴構成によれば、製品水素を製品タンクに貯留しておけるので、製品水素を安定供給するのに寄与するとともに、製品水素を、たとえば前記水素置換運転等の他の用途に対しても柔軟に利用できるようになる。
【0021】
〔構成5〕
本願の水素製造装置の更なる特徴構成は、
前記閉循環回路内における内圧を検知する圧力検知部を備え、前記待機運転中において前記圧力検知部の検知圧力が所定圧力よりも低下した場合に、前記製品タンクから水素ガスを前記閉循環回路内に供給する水素供給路を設けた点にある。
【0022】
〔作用効果5〕
上記特徴構成によると、製品タンクに貯留される製品ガスを、水素供給路を介して閉循環回路内に供給してその閉循環回路内の圧力を良好に維持することができる。
【0023】
前記閉循環回路を閉状態とするためにガス流通路には種々のバルブ等を設けられ、そのバルブの開閉動作を伴って回路の切り替えが行われる。このようなガス流通路に設けられるバルブ等は、通常厳密に密閉されるものでもなく、全閉状態でもわずかながらにガスの遺漏は許容する場合が多い。また、前記閉循環回路内を流通するガスは温度変化を伴うもので、体積膨張、収縮を伴いながら流れ、内圧の上昇、降下が起きうる状態にある。そのため、前記閉循環回路内における内圧を検知する圧力検知部を備えておくと、前記圧力検知部の検知圧力が所定圧力よりも低下した状態を検知することがある。この状態では前記閉循環回路内におけるガス量が減少している状況にあり、閉循環回路内のガス量が減少していると、流通するガスが改質器で熱を受けて、その熱を下流側に搬送する際の熱輸送量が減少していることになる。そのため、上述のように、その閉循環回路内の圧力を良好に維持することによって、その閉循環回路内における熱輸送効率を高く維持できるとともに、その閉循環回路に設けられた各脱硫器、改質器、CO変成器の温度を好適な温度域に維持しやすくなる。
【0024】
〔構成6〕
本願の水素製造装置の更なる特徴構成は、
前記加熱手段が、前記待機運転における前記改質器の温度を、前記水素精製運転時における前記改質器の温度との関連で定めた設定温度に維持すべく加熱するように構成されている点にある。
【0025】
〔作用効果6〕
上記特徴構成によると、水素精製運転、待機運転を通じて、ガス流通路に流通されるガスの温度を前記改質器の温度との関連で定めた設定温度に維持するべく加熱を維持しておくことができる。この待機運転の際には、閉循環回路をガスが流通することになるので、閉循環回路では経由しない水素精製部による放熱を考慮する必要がない。また、上記水素精製運転時には、改質器での改質反応として吸熱反応が起きるために、改質器を十分に加熱する必要があるが、上記待機運転中は、ガス流通路に充填されるガスが、水素を主成分とするガスとなっているので、改質反応はほとんど生起しない。また、待機運転中には、改質器での改質反応に要する水蒸気を供給する必要がないことから、待機運転中に、改質器に対する水蒸気の供給を停止しておけば、その水蒸気を生成あるいは加熱するエネルギーが不要となる。これらの理由により、改質器を加熱するのに必要なエネルギーは少なく維持でき、待機運転時の加熱量自体は水素精製運転時よりもきわめて少なく維持することができる。したがって、待機運転を行うとしても、少ない加熱コストの上昇のみで実行できるので、水素製造を速やかに開始できることに対する動作費用としては、極めて安価に水素製造装置を運転できるものとなる。
【0026】
〔構成7〕
本願の水素製造装置の運転方法の特徴構成は、
原料ガスを脱硫する脱硫器と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段により加熱して改質ガスを得る改質器と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器と、当該CO変成器にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部とを設け、
前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器と前記水素精製部とに亘ってガスを流通するガス流通路とを設けて、前記ガス流通路に原料ガスを供給して水素精製運転を行う水素製造装置の運転方法であって、
前記ガス流通路に、前記水素精製部を迂回して前記脱硫器と前記改質器と前記CO変成器との順にガスを循環流通する閉循環回路を設け、
前記水素精製運転を実行する状態と、前記加熱手段による前記改質器の加熱を維持しつつ、前記水素精製部を停止状態として、ガス流通路内に充填されたガスを前記閉循環回路に流通させる待機運転を実行する状態とを切り替える点にある。
【0027】
〔作用効果7〕
上記特徴構成によると、先述の水素製造装置を水素精製運転と、待機運転とに切り替えつつ、たとえば、水素製造需要の高い日中は、水素精製運転により水素製造を行い、水素製造需要のない夜間には待機運転により、いつでも速やかに水素製造を再開できる状態に待機しておくことができ、需要の無い時期に水素製造運転を行うエネルギー的な無駄を排除しつつも、需要が発生した時に速やかに水素製造を再開できる状態を、待機運転を行う少ないエネルギーで維持できるようになるので、先述の水素製造装置の効用を十分に生かしつつ運転効率の高い水素製造運転とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、待機運転を行うことにより、数時間程度の水素製造停止では迅速に再起動でき、効率よく水素ガスを供給できる水素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の水素製造装置の概略構成図であって、水素精製運転中のガスの流通状態を示す図
図2】待機運転中のガスの流通状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の水素製造装置を説明する。なお、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0031】
本願の水素製造装置100を、図1、2に示す。図中、原料ガス等の各種ガスが流通している流通路については太線で示し、流通していない流通路については細線で示している。また、流通路を開閉するバルブに関し、開放状態にあるものは白抜きで示し、閉止状態にあるものは黒塗りで示している。
【0032】
本願の水素製造装置100は、図示するように、
圧送装置11により圧送される炭化水素を含む原料ガス(例えば、メタンを主成分とする都市ガス13A)を脱硫する脱硫器12と、
脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段14により加熱して改質ガスを得る改質器13と、
改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器17と
を設けた改質部10を備え、
当該CO変成器17にて処理された後の変成ガスから水素以外の不純物を分離して水素ガスを精製する水素精製部22と、
製品タンク23およびオフガスタンク21と
を設けた水素分離部20を備え、
それらに供給されるガスを所定の順序で流通させるガス流通路により連通接続するとともに、ガス流通動作を制御する切替装置として機能し、後述の水素精製部22を構成するPSA装置のバルブ開閉動作を含め、ガス精製装置全体の動作をプログラムに基づいて制御する制御装置30を備えている。
【0033】
〔改質部〕
上述のように、改質部10は、圧送装置11により圧送される炭化水素を含む原料ガス(例えば、メタンを主成分とする都市ガス13A)を脱硫する脱硫器12と、脱硫後の原料ガスを水蒸気との混合状態で加熱手段14により加熱して改質ガスを得る改質器13と、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器17とを設けて構成される。
【0034】
〔脱硫器〕
改質部10は、ガス流通路を構成する第1流路L1より圧縮機等からなる圧送装置11にて圧縮された原料ガスの供給を受け、その原料ガスを脱硫する脱硫器12を備える。
脱硫器12には、Ni−Mo系、ZnO系等の脱硫触媒が充填されており、当該脱硫触媒により、原料ガス中の付臭剤等の硫黄成分を除去している。これにより、原料ガスを、改質器13に充填された改質触媒を劣化させにくい性状としている。
【0035】
〔改質器〕
脱硫後の原料ガスはガス流通路を構成する第2流路L2により改質器13に供給される。改質器13は、改質器13に充填される改質触媒(例えば、ニッケル系触媒)を触媒活性温度に維持するべく、外部から供給される燃料ガス(例えば、都市ガス13A)を燃焼させて改質触媒を加熱するバーナ装置等からなる加熱手段14を備えている。
改質器13に原料ガスを供給する第2流路L2には、純水をその排ガスの熱により加熱する第1熱交換器15にて加熱され気化した水蒸気と原料ガスとを混合する混合部16が設けられており、原料ガスへの水蒸気の混合を促進している。改質器13では、水蒸気の混合された原料ガスを加熱し、改質触媒により改質して改質ガスを得る。
【0036】
〔CO変成器〕
改質器13で得られた改質ガスは、ガス流通路を構成する第3流路L3により改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器17に供給される。CO変成器17には、一酸化炭素変成触媒が充填され、改質ガス中の一酸化炭素が水蒸気と反応して水素と二酸化炭素に変換される。一酸化炭素変成触媒としては、高温用、中温用、低温用があり、運転温度に応じて適当なものが使用される。運転温度が300〜450℃の高温用触媒としては、例えば、鉄−クロム系触媒が挙げられ、運転温度が180〜450℃の中温用触媒、および、190〜250℃の低温用触媒としては、例えば、銅−亜鉛系触媒が挙げられる。また、これら高温用、中温用、低温用の触媒は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
当該CO変成器17での反応により、改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンを含むとともに、その水素濃度が64〜96体積%の混合された変成ガスとなり、約300℃程度でCO変成器17より排出され、第4流路L4を経由して第2熱交換器18にて冷却水と熱交換して降温した後、さらに、気液分離部19にて水蒸気等が除去され、第5流路L5を経由して水素分離部20に導かれる。
【0038】
また、前記第5流路L5には、CO変成器17を通過したガスを、水素精製部22を迂回して圧送装置11の上流側に返送可能にする返送路L10を分岐して設けて、ガス流通路により、前記脱硫器12、前記改質器13、前記CO変成器17に、前記CO変成器17を通過したガスを返送循環する閉循環回路Cを形成可能に構成してある。
【0039】
なお、通常脱硫器12における脱硫反応は発熱反応であり、CO変成器17におけるCO変成反応は、吸熱反応であるため、これらを一体の反応容器に格納することにより、互いに熱交換可能に構成して反応効率の向上を図ることができる。
【0040】
〔水素分離部〕
水素分離部20は、改質部10にて改質された改質ガスから水素以外の不純物を分離すべく、圧力スイング式吸着法(以下、PSA法等と略称することがある)を実行可能な、複数(当該実施形態では3つ)の吸着塔20a、20b、20cを備えたPSA装置からなる水素精製部22と、製品タンク23と、オフガスタンク21とを備えている。
【0041】
〔水素精製部〕
水素精製部22における各吸着塔20a、20b、20cには、吸着材としてゼオライト系吸着材、活性炭、シリカゲルなどを組み合わせたものが充填されている。各吸着塔20a、20b、20cでは、通常のPSA法と同様に、吸着工程、減圧工程、パージ工程、および昇圧工程のプロセスを、複数の吸着塔20a、20b、20cで位相を異ならせて実行することにより、連続的に水素リッチガスを第6流路L6に製品水素として供給可能に構成されている。詳細な説明は省略するが、上述のプロセスは、前記制御装置により、特に複数の吸着塔20a、20b、20cに接続される各流通路に設けられる複数のバルブ(図示略)の開閉を行って、順次実行される。
なお、図1では、吸着塔20aに変成ガスを流通して製品水素を得る吸着工程が行われている状態を示している。
【0042】
水素精製部22にて精製された、水素濃度が95〜99.9999体積%の水素リッチガスは、第6流路L6のバルブV6を介して、製品水素として供給される。製品水素は、一旦製品タンク23に貯留されたのち水素使用箇所へ安定供給される。また、前記閉循環回路C内における内圧を検知する圧力検知部Pを備え、前記製品タンク23から前記返送路L10に対して水素ガスを供給する水素供給路L11を設けてある。
一方、水素分離部20で水素が分離された後のオフガスは、水素分離部20に第7流路L7のバルブV7を介して接続されたオフガスタンク21に一時貯留される。オフガスタンク21に貯留されたオフガスは、水素、メタン等の可燃性ガスを含むため、適宜、オフガス流通路L8を介して加熱手段14へ導かれ、燃料ガスとして用いられる。
図1では、製品水素である水素リッチガス側の流れのみを示しているが、製品水素の送出と、オフガスの送出は、異なった吸着塔20a、20b、20cを対象として、同時に行われるタイミングが存在する。
【0043】
〔水素精製運転〕
上述の構成により、本願の水素製造装置100にあっては、図1に示すように、
原料ガスを、バルブV1を通過した後、圧送装置11にて圧送され、第1流路L1を流通して脱硫器12に導かれ脱硫され、水蒸気を混合する混合部16が設けられる第2流路L2を介して改質器13に導かれて改質され、第3流路L3を流通してCO変成器17で変成され、第2熱交換器18が配設される第4流路L4を介して気液分離部19に導かれた後、第5流路L5を介して水素分離部20に導いて水素精製運転を実行可能に構成される。水素精製運転時には、上記PSA装置により、水素精製部22が水素以外の不純物を吸着除去する吸着材を用いた圧力揺動吸着運転により水素精製を行う。
【0044】
〔待機運転〕
本願の水素製造装置100は、水素ガスを適切に製造して、製品水素として外部へ供給可能に構成されているのであるが、通常の水素製造装置100では、一旦、水素の製造運転の、たとえば夜間の停止期間中において、脱硫器12、改質器13、およびCO変成器17が降温し、その適正作動温度より低い温度となる。このため、水素の製造運転を停止した後に、水素の製造運転を再開するときには、再開から十分に水素濃度の高い製品水素の供給が開始されるまでの間に、1時間程度の起動遅延時間が発生する。
【0045】
そこで、図2に示すように、前記加熱手段14による前記改質器13の加熱を維持するとともに、前記ガス流通路内に充填されたガスを、前記ガス流通路により前記閉循環回路Cを形成して、前記圧送装置11から、前記脱硫器12、前記改質器13、前記CO変成器17を経由する前記閉循環回路Cに流通させる待機運転を実行可能に構成されている。
【0046】
すなわち、当該待機運転において、図2に示すように、制御装置30は、まず、各バルブV1〜V12の開閉状態を制御して、圧送装置11、脱硫器12、改質器13、CO変成器17、第2熱交換器18、気液分離部19に対し、返送路L10を経由してCO変成器17を通過したガスを循環させる閉循環回路Cを形成するとともに、圧送装置11を働かせ、閉循環回路CにCO変成器17を通過したガスを循環させる待機運転を実行する。なお、ここでは、制御装置が、各バルブV1〜V12の開閉制御を行う構成をもって、前記水素精製運転を実行する状態と、待機運転を実行する状態とを切り替える切替装置として機能する。
【0047】
説明を追加すると、水素精製運転から待機運転に移行する際には、バルブV1、V5、V10を閉成するとともに、バルブV11、および排気路L12に設けられるバルブV12を開成し、閉循環回路Cに水素ガスを流通させる。これにより、ガス流通路に水素ガスを流通してガス流通路内のガスを前記排気路L12より排出しつつ、水素ガスで置換する。その後、バルブV11、V12を閉成するとともに、バルブV10を開成することにより、上述した第1流路L1、第2流路L2、第3流路L3、第4流路L4、第5流路L5に加え、その第5流路L5から水素精製部22を迂回する返送路L10を備えて構成される閉循環回路Cを形成して、内部に充填された水素ガスを前記加熱手段14による前記改質器13の加熱を維持しつつ、前記水素精製部22の一時停止状態として、前記CO変成器17を通過したガスを前記閉循環回路Cに流通させる待機運転とを実行できるようになる。
なお、ガス流通路内のガスを前記排気路L12より排出する場合、まず、混合部16からの水蒸気供給を行いながら、ガス流通路内のガスを排出する工程と、水蒸気の供給を停止してガス流通路内のガスを排出する工程とを順に行う。これにより、前記改質部10内の各機器に悪影響を及ぼしにくい状態で、水素ガスによる置換が完了する。
【0048】
制御装置30は、上記閉循環回路Cに充填される水素置換されたガスを循環させている状態で、そのガス流通路内に充填されたガスを返送路L10を介して加熱手段14に導いて、当該加熱手段14を働かせ、改質器13を加熱し昇温させる。これにより、改質器13を700〜800℃程度に昇温できるともに、当該改質器13を通過して昇温したガスが閉循環回路Cを循環することで、脱硫器12およびCO変成器17を200〜450℃程度に維持することができる。結果、改質器13と脱硫器12とCO変成器17とを、通常使用する温度域に近い温度で待機させることができ、水素の製造運転が再開された場合には、これらに、原料ガスの供給を開始することで、速やかに、水素リッチガスの製造を開始できる。
【0049】
また、前記待機運転における前記改質器13の温度を、前記水素精製運転時における前記改質器の温度との関連で定めた設定温度に維持されるべく加熱する。具体的には、待機運転時の改質器13の温度は、改質器13を水素生成運転時と同様の目標温度に維持するものとする設定がなされている。これにより、待機運転中も前記改質器13、脱硫器12、CO変成器17が上述の温度程度に維持されるが、この温度維持に必要な燃料ガス使用量は、水素生成運転時の燃料ガス使用量に比べて、極めて少ない量で運転維持できる。
【0050】
〔閉循環回路の圧力維持運転〕
また、水素生成運転中における圧送装置11による前記改質器13への原料ガス供給圧は、0.7MPaG程度に維持されるが、待機運転中の前記改質器13へのガス供給圧についても0.7MPaG程度に維持され、上記のように待機運転中の改質器13等の温度を適正に維持する。しかし、閉循環回路Cの内圧が低下すると、改質器13において同様の加熱状態を維持しても、他のCO変成器17等の温度が十分に高く維持することができなくなる。これは、内圧の低下によるガス運搬量(流量)の減少に伴う熱量輸送量の低下に基づくものであるが、内圧の低下を製品水素ガスにより賄うことで、良好な熱運搬量を維持することができる。
【0051】
すなわち、前記閉循環回路C内における内圧を検知する圧力検知部Pを備え、前記製品タンク23から前記返送路L10に対して水素ガスを供給する水素供給路L11を設けてあるから、制御装置30は、前記圧力検知部Pの検知圧力が所定圧力よりも低下した場合に、前記製品タンク23から水素ガスを前記閉循環回路C内に供給するように前記閉循環回路C内の圧力を所定圧力に維持するように制御する。これにより、前記閉循環回路Cの圧力が維持され、好適な熱搬送量が維持されるとともに、前記閉循環回路C内のガスを水素リッチな条件に維持して改質器13等の活性を高く維持するとともに、水素生成運転の再起動時に、速やかに水素リッチなガスを水素精製部22に供給できるようにして、再起動の迅速性を確保できるようにしてある。
【0052】
〔水素精製部の水素置換運転〕
また、前記制御装置30は、切替装置として、上記待機運転を行うに先立って、あるいは、上記待機運転と干渉しない条件下で並行して、水素製造装置の待機運転前または待機運転中に、前記水素精製部22では圧力維持運転を行う。すなわち、水素製造装置100の稼働を一次停止する際には、まず第6流路L6のバルブV6および第7流路L7におけるバルブV7を開成し、第5流路L5のバルブV5を閉成する。その後、前記返送路のバルブV10を開成するとともに、原料供給路のバルブV1を閉成することによって、上記閉循環回路Cを形成できるとともに、前記水素精製部22に対して製品タンク23から水素を供給できるようになる。製品タンク23から水素精製部22への水素ガス供給は、待機運転前の水素精製運転時に脱圧再生を行っておらず、次に水素精製運転を再開する場合に、最初に吸着工程を行う吸着塔20a、20b、20cに対して水素供給を行うとともに、吸着塔20a、20b、20c内部のガスを前記オフガスタンクに回収する、もしくは廃棄する。その後、閉循環回路Cにて待機運転を行っている最中は、各吸着塔20a、20b、20cを、それぞれに設けられたバルブにより密封してPSA運転動作を停止する。
【0053】
このような構成により、前記水素精製部22の内部を水素に置換しておくと、前記PSA装置に用いられている吸着材が、変成ガスが供給された状態で、改質部10の待機運転中清浄に維持されるので、吸着塔内の空隙ガスは純度の高い水素の充填された状態に維持される。よって、そのまま水素精製部の動作を停止させた場合には、前記吸着材にいったん吸着した水素以外の雑ガスが拡散して、製品ガスの純度を低下させるというような状態が生じにくく、水素精製部22の運転を再開した場合にも、速やかに高濃度の水素を供給できる状態で待機できることになる。
【0054】
〔停止運転〕
なお、前記水素製造装置100を長期にわたって(たとえば数日程度)停止する場合には、前記水素精製部の水素置換運転を行うとともに、改質部10に対する原料ガスの供給を停止して、バルブV1、V5、V7を閉成し、バルブV11、V12を開成したのち、前記改質部10に製品タンク23から水素を供給する。前記改質部10内部のガスを排気する改質部10の水素置換運転を行った後、前記改質器13の加熱手段14による加熱や、水蒸気の供給も含めて、装置全体を停止状態とする。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、原料ガスとして、都市ガスを用いる例を示したが、例えば、他の例としては、ガス状炭化水素から最終沸点240℃程度の重質ナフサ等も用いることができる。
【0056】
(2)圧送装置11の場所、熱交換器の配置等については、上記実施形態の配置に限らず、種々公知のものを採用することができる。すなわち、図1、2においては、圧送装置11を脱硫器12よりも上流側(原料供給側)に設けたが、改質器13の下流側にあってもよく、要するに水素生成運転において原料ガスを搬送でき、かつ、閉循環回路Cでガスを流通自在に設けられていればよい。また、圧送装置11は複数あってもよい。また、脱硫器12と、CO変成器17とが熱交換するように配置したが、別々に設けてあってもよい。
【0057】
(3)また、水素精製部22としてはPSA装置を用いたが、膜分離装置や、深冷分離装置等種々の水素精製装置を単数あるいは複数組み合わせて設けることができる。また、PSA装置の型式についても、3等式のものを図示しているが、これに限らず2塔、あるいは4塔以上の構成であってもよく、その運転形態についても任意のものを採用することができる。
【0058】
(4)上記実施形態では、待機運転時に、あらかじめ閉循環回路Cをあらかじめ製品タンク23からの水素で置換する運転を行って、ガス流通路内に水素を充填したが必ずしも必須ではない。
たとえば、閉循環回路Cを水素で置換する運転をせず、CO変成器17から供給される変成ガスをそのまま循環させることもできる。また、水素置換運転を行うとしても、水素精製部22から排出される高純度の水素ガスを所定時間にわたって、製品タンク23に供給することなく、改質部10に返送する形態でガス流通路内を水素で置換することができる。
いずれの場合であっても、改質器13の加熱を維持しつつ、ガス流通路内に充填されたガスを前記閉循環回路Cに流通させる待機運転を実行することにより、改質部全体を動作温度に近い高温状態に維持することができ、運転の再開後速やかに水素精製部22で高純度の水素を製造できるように待機しておくことができる。
なお、水素置換運転を行う場合、改質部内に存在する一酸化炭素などの不純物ガスが、改質触媒等に悪影響を及ぼす可能性を極力低減することができるので好ましく、また、水素置換運転を製品タンク23の水素を用いて行うことにより、簡単な装置構成で水素置換運転を可能にできる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水素製造装置、およびその運転方法は、水素製造装置を効率的に待機運転させ、かつ、待機運転からの起動後速やかに、水素の供給および製造を可能とする水素製造装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 :改質部
11 :圧送装置
12 :脱硫器
13 :改質器
14 :加熱手段
15 :第1熱交換器
16 :混合部
17 :CO変成器
18 :第2熱交換器
19 :気液分離部
20 :水素分離部
20a :吸着塔
20b :吸着塔
20c :吸着塔
21 :オフガスタンク
22 :水素精製部
23 :製品タンク
30 :制御装置
100 :水素製造装置
C :閉循環回路
L1 :第1流路
L10 :返送路
L11 :水素供給路
L12 :排気路
L2 :第2流路
L3 :第3流路
L4 :第4流路
L5 :第5流路
L6 :第6流路
L7 :第7流路
L8 :オフガス流通路
P :圧力検知部
V1〜V12 :バルブ
図1
図2