(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1特徴パラメータおよび前記第2特徴パラメータに加えて、前記散乱光または前記蛍光に基づく第3特徴パラメータに基づいて、前記測定試料に含まれる異型細胞を、白血球および白血球凝集と区別して検出する、
請求項6又は7に記載の分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<尿検体分析装置の構成>
本実施の形態では、尿中有形成分を分析するための尿検体分析装置について説明する。本実施の形態に係る尿検体分析装置は、尿検体を装置内部に取り込み、尿中有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌、異型細胞、白血球凝集等)を分析する。
【0014】
図1を参照し、尿検体分析装置の構成について説明する。尿検体分析装置100は、測定ユニット10と、情報処理部13とを備えている。測定ユニット10は、試験管から尿検体を吸引し、2つのアリコートに分配するための検体分配部1と、測定試料を調製するための試料調製部2と、測定試料から有形成分の情報を検出するための光学検出部5とを含む。
【0015】
図2に示すように、検体分配部1は、吸引管17を含み、試験管TBに入った尿検体を吸引管17によって吸引する。試料調製部2は反応槽2uと反応槽2bとを含み、検体分配部1は、反応槽2uおよび反応槽2bのそれぞれに尿検体の定量されたアリコートを分配する。
【0016】
試料調製部2は、反応槽2bにおいて、分配されたアリコートを、希釈液19bおよび染色液18bと混合する。これにより、染色液18bに含まれる色素により尿検体中の有形成分の染色が施される。反応槽2bにおいて調製された混合物は尿中の白血球、上皮細胞、真菌、細菌、異型細胞等、核を有する細胞を分析するために用いられる。以下、反応槽2bにおいて調製された混合物を第1測定試料と呼ぶ。
【0017】
試料調製部2は、反応槽2uにおいて、分配されたアリコートを、希釈液19uおよび染色液18uと混合する。これにより、染色液18uに含まれる色素により尿検体中の有形成分の染色が施される。反応槽2uにおいて調製された混合物は尿中の赤血球および円柱等、核を有さない粒子を分析するために用いられる。以下、反応槽2uにおいて調製された混合物を第2測定試料と呼ぶ。
【0018】
光学検出部5は、フローセル51を含む。反応槽2u,2bは、フローセル51とチューブでつながっており、反応槽2u,2bにおいて調製された測定試料がフローセル51へと供給可能である。先に反応槽2uの第2測定試料が光学検出部5に供給され、後に、反応槽2bの第1測定試料が光学検出部5に供給される。フローセル51は、供給された第1および第2測定試料がシース液に包まれた細い流れを形成する。フローセル51中の第1および第2測定試料の流れには、レーザ光が照射される。以上の動作は、
図1に示すマイクロコンピュータ11の制御により、図示しないポンプおよび電磁弁等を動作させることにより、自動的に行われる。
【0019】
染色液18bは、核酸を染色する色素を含む。より詳細に説明すると、染色液18bは、核酸を特異的に染色するためのインターカレータ又は副溝(minor groove)に結合する蛍光色素を含む。インターカレータとしては、シアニン系、アクリジン系、phenanthridium系の公知の色素が挙げられる。例えば、シアニン系のインターカレータとしては、SYBR Green I、Thiazole orangeが挙げられる。アクリジン系のインターカレータとしては、Acridin orangeが挙げられる。phenanthridium系のインターカレータとしてはpropidium Iodide、Ethidium bromideが挙げられる。副溝に結合する色素としてはDAPI、Hoechstの公知の色素が挙げられる。例えば、Hoechetの副溝に結合する色素としては、Hoechst 33342、Hoechst 33258が挙げられる。本実施形態において、シアニン系のインターカレータが好ましく、特に、SYBR Green I、Thiazole orangeが好ましい。
【0020】
希釈液19bは、界面活性剤を含んでいる。より詳細に説明すると、希釈液19bは、細胞膜に損傷を与えることにより染色液18bの膜通過を進行させるとともに、赤血球を溶血させ赤血球破片等の夾雑物を収縮させるためのカチオン系界面活性剤を含む。界面活性剤の種類はカチオン系界面活性剤に限らず、ノニオン系界面活性剤であってもよい。尿検体と染色液18bと希釈液19bとが混合されることにより、核酸を有する尿中の有形成分がその構成および特性に応じた程度で染色される。
【0021】
希釈液19bは界面活性剤を含有しているため、第2測定試料に含まれる赤血球を溶血させることができ、高精度に白血球等の核酸を有する細胞を測定することが可能である。界面活性剤を含む希釈液19bを使用することで細胞膜にダメージが与えられるため、核酸の染色を効率的に行うことが可能になる。このことも、核酸を有する細胞の測定精度向上に寄与する。
【0022】
染色液18uは、核酸を有していない有形成分を染色する蛍光色素を含む。
【0023】
希釈液19uは緩衝剤を主成分とする試薬である。希釈液19uは、赤血球を溶血させずに安定した蛍光信号を得ることができるように浸透圧補償剤を含有している。
【0024】
図3を参照し、光学検出部5の構成について説明する。光学検出部5は、フローセル51と、コンデンサレンズ52と、半導体レーザ光源53と、集光レンズ54と、第1散乱光受光部55と、集光レンズ56と、ダイクロイックミラー57と、第2散乱光受光部58と、蛍光受光部59とを含む。
【0025】
コンデンサレンズ52が光源53から照射されたレーザ光を集光し、フローセル51内の試料流上に扁平なビームスポットを形成する。ビームスポットの試料流の流れ方向の径は、3〜8μmである。レーザ光を安定的に細胞核に照射するためには、ビームスポットの流れ方向の径は、3.5〜7.5μmであることが好ましく、より好ましいのは4〜7μmである。本実施形態のビームスポットの流れ方向の径は4〜7μmである。
【0026】
集光レンズ54は、測定試料中の有形成分から発せられた前方散乱光を第1散乱光受光部55に集光する。集光レンズ56は有形成分から発せられる側方散乱光と蛍光をダイクロイックミラー57に集光する。ダイクロイックミラー57は、側方散乱光をフォトマルチプライヤである第2散乱光受光部58へ反射し、蛍光を透過してフォトマルチプライヤである蛍光受光部59へ導く。
【0027】
第1散乱光受光部55、第2散乱光受光部58および蛍光受光部59は光信号を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(以下、「FSC」という)、側方散乱光信号(以下、「SSC」という)および蛍光信号(以下、「FL」という)を出力する。FSCは、前方散乱光の強度の時間的変化を示す信号であり、SSCは、側方散乱光の強度の時間的変化を示す信号であり、FLは、蛍光の強度の時間的変化を示す信号である。蛍光受光部59は、駆動電圧を切り替えることにより、低感度と高感度の両方で蛍光信号を出力することが可能である。感度の切り替えは、
図1に示すマイクロコンピュータ11により行われる。
【0028】
再度
図1を参照し、さらに尿検体分析装置100の構成について説明する。測定ユニット10は、光学検出部5の出力信号を増幅する増幅回路50と、増幅回路50からの出力信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ回路6と、フィルタ回路6の出力信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ7と、ディジタル信号に対して所定の波形処理を行うディジタル信号処理回路8と、ディジタル信号処理回路8に接続されたメモリ9と、マイクロコンピュータ11と、LANアダプタ12とを備える。
【0029】
光学検出部5、増幅回路50、フィルタ回路6、A/Dコンバータ7、ディジタル信号処理回路8およびメモリ9は、測定試料を測定し、測定データを生成する測定部10aを構成している。
【0030】
光学検出部5は、FSC、SSC、FLの各信号をプリアンプによって増幅する。増幅された各信号は、増幅回路50に入力される。光学検出部5の出力側から延びるFLの信号チャンネルは、プリアンプと増幅回路50の間で二つに分岐している。一方の信号チャンネルは、増幅回路50の高増幅率の増幅器(Highアンプ)に接続されている。他方の信号チャンネルは、低増幅率の増幅器(Lowアンプ)に接続されている。したがって、一つの粒子に対応するFLから、高感度で増幅されたFLHと、低感度に増幅されたFLLとが取り出される。以下、Highアンプに入力されるFLを「FLH」と呼び、Lowアンプに入力されるFLを「FLL」と呼ぶ。
【0031】
増幅回路50は、FSC、SSC、FLH、FLLの4種類の信号を、設定されたゲインに応じて増幅する。増幅回路50は、異なる複数のゲインを設定することが可能である。マイクロコンピュータ11は、増幅回路50のゲインを設定することで、増幅回路50の感度を調節することが可能である。
【0032】
情報処理部13は、LANアダプタ12を介して測定ユニット10とLANケーブルにて接続されている。
【0033】
図4に、情報処理部13の構成を示す。情報処理部13は、パーソナルコンピュータである。情報処理部13は、本体400と、入力部408と、表示部409とを備えている。本体400は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、入出力インターフェース405と、画像出力インターフェース406と、通信インターフェース407とを有する。
【0034】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0035】
ハードディスク404には、測定ユニット10から与えられた測定データを解析し、分析結果を出力するためのコンピュータプログラムがインストールされている。
【0036】
入力部408は、入出力インターフェース405に接続される。表示部409は、画像出力インターフェース406に接続される。測定ユニット10は、通信インターフェース407に接続され、情報処理部13に対してデータ通信が可能である。
【0037】
<尿検体分析装置の動作>
以下、本実施の形態に係る尿検体分析装置の動作について説明する。
【0038】
図5のフローチャートを参照し、尿検体分析装置100の尿検体測定処理について説明する。まず、ステップ101において、情報処理部13のCPU401が、ユーザからの測定実行の指示を、入力部408を介して受け付ける。測定実行の指示を受け付けると、CPU401は、ステップS102において、測定ユニット10に測定開始を指示する指示データを送信する。ステップS103において、測定ユニット10が指示データを受信する。マイクロコンピュータ11は、ステップS104において測定試料調製処理を実行し、ステップS105において無核成分測定処理を実行し、ステップS106において有核成分測定処理を実行する。
【0039】
図6を参照し、測定試料調製処理について説明する。測定試料調製処理では、まず、ステップS201及びS202において、マイクロコンピュータ11が検体分配部1を制御して、吸引管17に試験管TBから尿検体を所定量吸引させ、反応槽2uと反応槽2bとにそれぞれ所定量の尿検体を分注させる。
【0040】
マイクロコンピュータ11は、試料調製部2を制御して、次のステップS203〜S207を実行する。ステップS203およびステップS204では、反応槽2uに所定量の希釈液19uおよび染色液18uが定量されて分注される。ステップS205およびステップS206では、反応槽2bに所定量の希釈液19bおよび染色液18bが定量されて分注される。反応槽2uおよび反応槽2bは、それぞれ図示しないヒータによって所定温度になるように加温されており、加温された状態で、ステップS207でプロペラ状の攪拌具(図示せず)により各槽内の混合物の攪拌が行われる。ステップS201〜S207の動作により、反応槽2uにおいて無核成分測定用の第2測定試料が調製され、反応槽2bにおいて有核成分測定用の第1測定試料が調製される。ステップS207の処理が終了すると、マイクロコンピュータ11は、メインルーチンへ処理をリターンする。
【0041】
次に、無核成分測定処理について説明する。無核成分測定処理では、フローセル51へシース液と共に反応槽2uから第2測定試料が供給され、フローセル51においてシース液に包まれた第2測定試料の試料流が形成される。形成された試料流に光源53からレーザビームが照射され、フローセル51にビームスポットが形成される。粒子がビームスポットを通過する毎に、前方散乱光、蛍光および側方散乱光が発生する。前方散乱光、蛍光、および側方散乱光のそれぞれは、第1散乱光受光部55、蛍光受光部59および第2散乱光受光部58により受光されて電気信号に変換され、FSC、FLH、FLLおよびSSCが出力される。出力されたFSC、FLH、FLLおよびSSCは、増幅回路50によって増幅される。
【0042】
増幅回路50によって増幅されたFSC、FLH、FLL、およびSSCは、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施された後、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって信号処理が施される。これにより、フローセル51を通過した粒子毎に、前方散乱光強度(FSCP)、前方散乱光パルス幅(FSCW)、蛍光強度(FLHP)、蛍光パルス幅(FLLW)、側方散乱光強度(SSCP)等の解析用パラメータが抽出される。解析用パラメータは測定データとして、メモリ9に格納され、無核成分測定処理が終了する。
【0043】
次に、
図7を参照し、有核成分測定処理について説明する。有核成分測定処理では、まず、ステップ311において、マイクロコンピュータ11が、第1散乱光受光部55、第2散乱光受光部58および蛍光受光部59の感度および増幅回路50のゲインを第1設定値で設定する。第1設定値は、白血球、上皮細胞、真菌などの、細菌よりも大きく、且つ核を有する有核細胞を測定するための設定値である。マイクロコンピュータ11は、ステップ312において、図示しないコンプレッサを駆動して、フローセル51へシース液を送液させる。ステップS313において、フローセル51へシース液が供給されている状態で、マイクロコンピュータ11は、図示しないコンプレッサを駆動して、反応槽2bから第1測定試料をフローセル51へ供給させる。
【0044】
以上の動作により、フローセル51においてシース液に包まれた第1測定試料の試料流が形成される。ステップS314において、形成された試料流に光源53からレーザビームが照射され、フローセル51にビームスポットが形成される。粒子がビームスポットを通過する毎に、前方散乱光、蛍光および側方散乱光が発生する。ステップS315において、前方散乱光、蛍光、および側方散乱光のそれぞれは、第1散乱光受光部55、蛍光受光部59および第2散乱光受光部58により受光されて電気信号に変換される。蛍光受光部59が受光レベルを電気信号に変換するときの感度は、ステップS311において設定された有核細胞測定用の第1設定値によって定まる。
【0045】
第1散乱光受光部55、蛍光受光部59および第2散乱光受光部58は、受光レベルに応じた電気信号を、FSC、FLおよびSSCとして出力する。光学検出部5は、FLをFLHとFLLの二つに分割して増幅回路50に入力する。入力された信号は、増幅回路50により増幅される。増幅回路50による信号の増幅率は、ステップS311において設定された有核細胞測定用の第1設定値によって定まる。
【0046】
第1設定値は、後述の第2設定値に比べて低感度である。言い換えると、第1設定値が設定されている場合、第2設定値が設定されている場合よりも、低い増幅率でFLが増幅される。具体的には、第1設定値が設定されている場合、粒子から発せられた蛍光は、蛍光受光部59によって低感度で光電変換されて出力される。光学検出部5から出力されるFLHおよびFLLは、それぞれ増幅回路50のHighアンプおよびLowアンプにより低増幅率および高増幅率で増幅される。この結果、低増幅率で増幅された低感度蛍光信号(FLL)と、高増幅率で増幅された第1高感度蛍光信号(以下、「FLH1」という)との2種類の蛍光信号が取得される。
【0047】
増幅されたFSC、FLL、FLH1およびSSCは、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施された後、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって所定の信号処理が施される。
【0048】
ディジタル信号処理回路8は、信号処理によって光学信号(FSC、SSC、FLL、FLH1)から、解析処理に使用するパラメータを抽出する。解析用パラメータには、前方散乱光強度(以下、「FSCP」という)、前方散乱光パルス幅(以下、「FSCW」という)、側方散乱光強度(以下、「SSCP」という)、低感度蛍光強度(以下、「FLLP」という)、低感度蛍光パルス幅(以下、「FLLW」という)、低感度蛍光パルス面積(以下、「FLLA」という)、第1高感度蛍光強度(以下、「FLHP1」という)、第1高感度蛍光パルス幅(以下、「FLHW1」という)、第1高感度蛍光パルス面積(以下、「FLHA1」という)、前方散乱光差分積分値−ピークレベル比(以下、「FSC−DS/P」という)、低感度蛍光差分積分値−ピークレベル比(以下、「FL−DS/P」という)が含まれる。
【0049】
図8A〜
図8Dに基づいて、解析用パラメータの抽出について説明する。解析用パラメータには、各光学信号について、「強度」、「パルス幅」および「パルス面積」の3種類が含まれる。強度はPで表される。パルス幅はWで表される。パルス面積はAで表される。
【0050】
FSCP、SSCP、FLLP、およびFLHP1などの光学信号の強度は、それぞれ、
図8Aに示すようなパルスのピークの高さPPとして得られる。FSCW、FLLW、およびFLHW1などの光学信号のパルス幅は、それぞれ、
図8Bに示すように、パルスが所定の閾値を超えた時刻T1から閾値を下回った時刻T2までの間隔PWとして得られる。FLLA、およびFLHA1などの光学信号のパルス面積は、
図8Cに示すように、信号のパルス波形線L1と、パルスの高さが所定の閾値を取るときの時刻を示す直線L2,L3と、光学信号強度の値が0を示す直線L4とで囲まれる領域(図中斜線を付した領域)PAの面積、すなわち、信号強度の時間積分値として得られる。
【0051】
上述した解析用パラメータの抽出方法は一例に過ぎず、異なる抽出方法を用いることができる。パルス面積は、パルスの時間曲線下面積を反映する値であれば近似値であってもよく、時間積分値には限られない。例えば、パルス面積は、パルス幅とピークの高さの積であってもよいし、パルス幅とピークの高さから求めた三角形の面積であってもよい。時間積分値を抽出する形態において、底辺は強度が0の直線でなくてもよく、適宜設定できる。例えば、
図8Cに示した所定の閾値を底辺としてもよいし、あるいは、シース液のみをフローセル51に流したときのパルスの値を基準値とし、底辺としてもよい。
【0052】
次に、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pについて説明する。差分積分値とは、信号波形を時間微分し、各微分値の絶対値を足し合わせた値である。光学信号は、離散時間信号であるため、差分積分値は、隣り合う信号値の差の絶対値を足し合わせた値である。
図8Dにおいて、隣り合う信号値の差を太線で示している。差分積分値−ピークレベル比(以下、「DS/P」という)は、光学信号に含まれるパルスの差分積分値を、パルスのピーク値で除した値である。
【0053】
図9Aに示すように、光学信号に含まれるパルスが単峰性のパルス、つまり、谷のないパルス波形の場合、差分積分値はパルスのピーク値PPを2倍した値PP×2と近似する。一方、
図9Bに示すように、光学信号に含まれるパルスが多峰性のパルス、つまり、谷のあるパルス波形の場合、差分積分値はパルスのピーク値を2倍した値よりも大きくなる。
図9Bの例では、差分積分値は、PP1、PP2、PP3、PP4の和で求められ、PP1×2+PP3×2に近似する。このため、差分積分値はピーク値を2倍した値PP1×2よりも大きくなる。したがって、DS/Pは、光学信号のパルスが単峰性である場合、概ね一定の値を取り、多峰性である場合、単峰性の場合よりも大きな値を取る。つまり、DS/Pは、光学信号のパルスが単峰性であるか多峰性であるかを示す情報である。
【0054】
再び
図7を参照する。ディジタル信号処理回路8によって光学信号から特徴パラメータが抽出され、ステップS316において、各特徴パラメータが測定データとしてメモリ9に格納される。
【0055】
第1測定試料がフローセル51に供給され始めてから所定時間が経過すると、ステップS317において、マイクロコンピュータ11は、蛍光受光部59の感度および増幅回路50のゲインを第2設定値に変更する。第2設定値は、細菌を測定するための設定値である。
【0056】
蛍光受光部59および増幅回路50が第2設定値で設定された状態で、ステップS318において、マイクロコンピュータ11は、測定部10aによる第1測定試料の測定を実行する。第1測定試料が測定されると、第2設定値によって定まる感度で蛍光受光部59からFLが出力され、第1散乱光受光部55、第2散乱光受光部58および蛍光受光部59の出力信号が第2設定値によって定まる増幅率で増幅回路50によって増幅される。
【0057】
第2設定値は、第1設定値に比べて高感度でFLを増幅するための設定値である。言い換えると、第2設定値が設定されている場合、第1設定値が設定されている場合よりも、高い増幅率でFLが増幅される。第2設定値が設定されると、蛍光受光部59による光電変換の受光感度が第1設定値の数倍に設定される。増幅回路50の増幅率は、第1設定値における増幅率と同じである。第2設定値が設定された状態で蛍光受光部59から出力されたFLは、増幅回路50のHighアンプで増幅され、第2高感度蛍光信号(以下、「FLH2」という)として取得される。
【0058】
第2設定値における蛍光受光部59の受光感度は、第1設定値における蛍光受光部59の受光感度の5倍である。これは、細菌は白血球および上皮細胞などの有核細胞に比べてサイズが小さく、蛍光量が有核細胞に比べて小さいためである。蛍光受光部59の感度を有核細胞測定の場合よりも高くすることで、細菌に適した感度となり、高精度に細菌を検出することが可能となる。本実施形態では、第2設定値においては、増幅率を5倍にするために蛍光受光部59の感度のみを高くしているが、蛍光受光部59および増幅回路50の両方のゲインを調整し、全体の増幅率を第1設定値の増幅率の5倍にすることでも、同様の効果を得ることができる。例えば、第2設定値では、蛍光受光部59の感度を第1設定値における感度の2.5倍にするとともに、増幅回路50による増幅率を第1設定値における増幅率の2倍にしてもよい。
【0059】
増幅されたFSC、FLH2およびSSCは、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施された後、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって所定の信号処理が施される。信号処理により、FSCからFSCPおよびFSCWが抽出され、SSCからSSCPが抽出される。FLH2のピーク値が、第2高感度蛍光強度(以下、「FLHP2」という)として抽出される。FLH2のパルス幅が、第2高感度蛍光パルス幅(以下、「FLHW2」という)として抽出される。FLH2のパルス面積が、第2高感度蛍光パルス面積(以下、「FLHA2」という)として抽出される。以上により、フローセル51を通過した各粒子について解析用パラメータが得られる。
【0060】
ステップS319において、ディジタル信号処理回路8は、粒子毎に抽出されたパラメータのデータを、測定データとしてメモリ9に格納する。以上の処理を完了すると、マイクロコンピュータ11は、処理をメインルーチンへリターンする。
【0061】
再び
図5を参照する。有核成分測定処理の後、ステップS107において、マイクロコンピュータ11は、無核成分測定処理および有核成分測定処理によって生成された測定データを情報処理部13へ送信し、処理を終了する。
【0062】
ステップS108において、情報処理部13が測定データを受信すると、ステップS109において、CPU401は、測定データ解析処理を実行し、尿検体の分析結果を生成して、分析結果をハードディスク404に格納する。
【0063】
図10を参照し、測定データ解析処理について説明する。測定データ解析処理には、ステップS401における第1無核成分分類処理と、ステップS402における第2無核成分分類処理と、ステップS403における分画処理と、ステップS404における第1有核成分分類処理と、ステップS405における異型細胞検出処理と、ステップS406における第2有核成分分類処理と、ステップS407における細菌検出処理とが含まれる。
【0064】
第1無核成分分類処理S401では、第2測定試料を測定することによって得られたFSCおよびFLHを使用して、赤血球と結晶とが検出され、それぞれの計数値が求められる。
【0065】
第2無核成分分類処理S402では、第2測定試料を測定することによって得られたFSCおよびFLLを使用して、円柱と粘液糸とが検出され、それぞれの計数値が求められる。
【0066】
さらに、分画処理、第1有核成分分類処理、第2有核成分分類処理、および細菌検出処理により、尿検体中の核酸を有する細胞が分類される。
【0067】
尿検体分析装置100は、分画処理によって、上皮細胞、異型細胞、および白血球を含む大型細胞の第1群と、精子、トリコモナス、および真菌を含む小型細胞の第2群とを弁別する。
【0068】
分画処理S403では、まず、第1測定試料中の粒子をFSCPおよびFSCWを使用して、第1群および第2群の集団と、細菌集団とに分類する。
図11を参照し、FSCPとFSCWとで規定される特徴パラメータ空間における有核有形成分の出現領域について説明する。第1測定試料中の粒子をFSCPおよびFSCWに基づいてプロットすると、
図11に示す領域R11には、第1群および第2群の有核有形成分がプロットされる。領域R12には、細菌を含む有核有形成分群がプロットされる。領域R11およびR12以外にプロットされた粒子は夾雑物として分析対象から排除される。
【0069】
次に、
図11の領域R11にプロットされた粒子集団をFSCPおよびFLHP1を使用して、第1群と第2群とに分類する。
図11の領域R11にプロットされた粒子集団は、
図12に示されるFSCPとFLHP1とで規定された特徴パラメータ空間にプロットされる。
図12に示す領域R21には、第1群の有核有形成分がプロットされる。領域R22には、第2群の有核有形成分がプロットされる。
【0070】
第1有核成分分類処理S404では、
図12の領域R21にプロットされた第1群の粒子集団をFSCWおよびFLLAを使用して、第3群の有核有形成分と、白血球と、上皮細胞とに分類し、白血球および上皮細胞それぞれの計数値を求める。第3群は、異型細胞と、白血球凝集とを含み得る粒子集団である。
【0071】
異型細胞、白血球、白血球凝集、および上皮細胞は、精子、トリコモナス、真菌等よりも核酸量が大きいため光によって励起されたときに生ずる蛍光量が大きく、低感度蛍光信号が解析に適している。核径がビームスポットの径よりも大きい有形成分の分類には、蛍光パルス面積がパラメータとして適している。異型細胞、白血球、白血球凝集、および上皮細胞は、核径がビームスポットの径よりも大きいため、第1有核成分分類処理には、FLLAが用いられる。
【0072】
図13を参照し、FSCWとFLLAとによって規定される特徴パラメータ空間(以下、「FSCW−FLLA空間」という)について説明する。第1群の有核有形成分は、FSCW−FLLA空間にプロットされる。図に示すように、白血球および上皮細胞と、第3群とはFLLAの分布領域が異なっている。これは、白血球と上皮細胞とには核酸量に概ね差異がなく、異型細胞の方が白血球および上皮細胞よりも核酸量が多く、FLLAは核酸量を反映しているためである。
【0073】
図15Bに示すように、白血球凝集は、複数の白血球が近接して塊状になっている。FLLでは白血球凝集に含まれる白血球の複数の核が重なって1つのパルスを形成することがあるため、白血球凝集では白血球および上皮細胞に比べてFLLAが高い。異型細胞と白血球凝集とのFLLAは概ね差異がない。
【0074】
図13に示すように、白血球と上皮細胞とは、FSCWの分布領域が異なっている。上皮細胞は白血球よりもサイズが大きく、FSCWは粒子の大きさを反映しているためである。
【0075】
異型細胞は、移行上皮癌細胞、扁平上皮癌細胞等の癌化した上皮細胞であり、白血球よりもサイズが大きい。白血球凝集もまた、白血球が複数近接しているため白血球よりもサイズが大きく、異型細胞と同程度の大きさであることが多い。尿検体に異型細胞が含まれていれば、FSCW−FLLA空間において、領域R31に異型細胞が出現し、尿検体に白血球凝集が含まれていれば、FSCW−FLLA空間において、領域R31に白血球凝集が出現する。
【0076】
第1有核成分分類処理S404において、領域R31にプロットされた粒子は第3群として検出され、領域R32にプロットされた粒子は白血球として計数され、領域R33にプロットされた粒子は上皮細胞として計数される。
【0077】
図14A〜
図14Cに、第1有核成分分類処理S404において実際に有核成分を検出した結果を示す。
図14Aは、白血球を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R32の位置に粒子が出現している。
図14Bは、上皮細胞を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R33の位置に粒子が出現している。
図14Cは、異型細胞を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R31の位置に粒子が出現している。
【0078】
よって、本実施形態の検体分析装置100によれば、細胞の大きさを反映する第1パラメータであるFSCWと、細胞の核酸量を反映する第2特徴パラメータであるFLLAとを使用することで、尿中の異型細胞を白血球および上皮細胞と区別して検出することができる。
【0079】
異型細胞検出処理S405では、
図13に示される領域R31にプロットされた粒子集団をFSC−DS/PおよびFL−DS/Pを使用して、異型細胞と白血球凝集とに分類し、それぞれの計数値を求める。
【0080】
分裂期でなく、且つ凝集していない異型細胞は、
図15Aに示すように、FSC及びFLLのパルスが単峰性を示すことが多い。他方、白血球凝集は、複数の白血球が凝集しているため、各白血球の位置関係、各核の位置関係によって信号強度が複雑に変化し、
図15Bに示すように、パルスが多峰性を示すことが多い。つまり、パルスが単峰性であるか多峰性であるかを反映したDS/Pは、細胞が単独であるか複数の細胞が連鎖しているかを反映する。したがって、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pが異型細胞と白血球凝集とを分類するためのパラメータとして適している。
【0081】
図16を参照し、FSC−DS/PとFL−DS/Pとによって規定される特徴パラメータ空間(以下、「2次元DS/P空間」という)について説明する。第3群の有核有形成分は、2次元DS/P空間にプロットされる。図に示すように、異型細胞と白血球凝集とはFSC−DS/P及びFL−DS/Pの両方において分布領域が異なっている。
【0082】
異型細胞のパルスは単峰性を示すことが多いことから、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pの値が、白血球凝集に比べて相対的に小さい。白血球凝集のパルスは多峰性を示すことが多いことから、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pの値が、異型細胞に比べて相対的に大きい。尿検体に異型細胞が含まれていれば、2次元DS/P空間において、領域R41に異型細胞が出現する。尿検体に白血球凝集が含まれていれば、2次元DS/P空間において、領域R42に白血球凝集が出現する。
【0083】
図17を参照し、異型細胞検出処理S405についてさらに説明する。異型細胞検出処理S405を開始すると、まずCPU401は、ステップS501において、異型細胞の存在を示すフラグに初期値の0をセットする。次に、CPU401は、ステップS502において、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pを用いて、領域R41にプロットされた粒子を異型細胞として計数し、領域R42にプロットされた粒子を白血球凝集として計数する。次に、CPU401は、ステップS503において、異型細胞数が所定値より多いか否かを判定し、異型細胞数が所定値より多い場合、ステップS504において、異型細胞の存在を示すフラグに1をセットし、異型細胞検出処理を終了する。ステップS503において、異型細胞数が所定値以下の場合、CPU401は、そのまま異型細胞検出処理を終了する。
【0084】
図18A〜
図18Bに、異型細胞検出処理S405において実際に有核成分を検出した結果を示す。
図18Aは、異型細胞を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R41の位置に粒子が出現している。
図18Bは、白血球凝集を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R42の位置に粒子が出現している。
【0085】
第2有核成分分類処理S406では、
図12の領域R22にプロットされた粒子集団をFSCPおよびFLHP1を使用して、トリコモナスと真菌と精子とに分類し、それぞれの計数値を求める。
【0086】
精子、トリコモナス、および真菌は、白血球、白血球凝集、上皮細胞、および異型細胞よりも核酸量が少ないため光によって励起されたときに生ずる蛍光量が、第1群の細胞に比べて相対的に小さい。したがって、高感度蛍光信号が精子、トリコモナス、および真菌の解析に適している。核径がビームスポットの径よりも小さい有形成分の分類には、蛍光強度がパラメータとして適している。精子、トリコモナス、および真菌は、核径がビームスポットの径よりも小さいため、第2有核成分分類処理には、FLHP1が用いられる。
【0087】
図19に、FSCPとFLHP1とによって規定される特徴パラメータ空間(以下、「FSCP−FLHP1空間」という)を示す。第2群の有核有形成分は、FSCP−FLHP1空間にプロットされる。精子と真菌とトリコモナスとは、FSCP−FLHP1空間における分布領域が異なっている。これは、精子と真菌とトリコモナスとが、核酸量およびサイズにおいて互いに異なっているためである。領域R51にプロットされた粒子は精子として計数される。領域R52にプロットされた粒子は真菌として計数される。領域R53にプロットされた粒子はトリコモナスとして計数される。
【0088】
図20A〜
図20Cに、第2有核成分分類処理S406において実際に有核成分を検出した結果を示す。
図20Aは、真菌を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R52の位置に粒子が出現している。
図20Bは、トリコモナスを含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R53の位置に粒子が出現している。
図20Cは、精子を含む尿検体を測定した結果を示しており、領域R51の位置に粒子が出現している。
【0089】
細菌検出処理S407では、
図11の領域R12にプロットされた粒子集団についてFSCPおよびFLHP2を使用して、細菌を計数する。
【0090】
細菌は、白血球等の他の有核細胞に比べて非常にサイズが小さく、核酸量も少ないため、他の有核細胞よりも蛍光量が小さい。細菌は微小であり、粒径がビームスポットの径よりも小さい。よって、細菌は最も高感度の蛍光信号の強度であるFLHP2を用いて検出される。
【0091】
図21に、FSCPとFLHP2とによって規定される特徴パラメータ空間(以下、「FSCP−FLHP2空間」という)を示す。
図11の領域R12にプロットされた粒子集団は、FSCP−FLHP2空間に展開される。
図21に示すFSCP−FLHP2空間では、領域R6に細菌が出現している。
図21に示すFSCP−FLHP2空間には、細菌以外の有核細胞がプロットされる可能性があるが、細菌以外の有核細胞の多くは、高感度の蛍光信号に変換されたときに飽和して解析対象から除外される。領域R6よりも蛍光強度の低い領域には、核酸を有しない夾雑物が出現する。領域R6にプロットされた粒子は細菌として計数される。
【0092】
図22に、細菌検出処理S407において細菌を実際に検出した結果を示す。
図22は、細菌を含む尿検体を測定した結果を示している。
【0093】
再び
図10を参照する。CPU401は、測定データ解析処理を終了すると、処理をメインルーチンへリターンする。
【0094】
再び
図7を参照する。CPU401は、測定データ解析処理によって得られた分析結果を表示部409に表示して(ステップS110)、処理を終了する。分析結果には、検出された有形成分の計数結果と、診断の参考となる参考情報とが含まれる。異型細胞の存在を示すフラグに1がセットされている場合は、参考情報として、異型細胞の存在を示す情報が出力される。
【0095】
図23を参照し、表示される分析結果についてさらに説明する。表示部409には、分析結果画面500が表示される。分析結果画面500は、検体情報表示領域510と、患者情報表示領域520と、測定結果表示領域530とを有する。測定結果表示領域530は、測定数値表示領域531と、参考情報表示領域532と、画像表示領域533とを有する。
【0096】
検体情報表示領域510には、分析結果画面500に表示されている分析結果の元となった尿検体の情報が表示される。患者情報表示領域520には、尿検体を採取された患者の情報が表示される。
【0097】
測定数値表示領域531には、測定データ解析処理によって得られた各項目の計数値が表示される。表示される数値情報には、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST)、細菌(BACT)、異型細胞(Atyp.Cells)、および白血球凝集(WBC Clumps)のそれぞれの計数値が含まれる。
【0098】
参考情報表示領域532には、測定データ解析処理によって、尿検体の異常等のユーザに報告すべき測定結果が得られた場合に、ユーザへの参考情報が表示される。測定データ解析処理において、異型細胞の存在を示すフラグに1がセットされた場合、参考情報表示領域532に、異型細胞の存在を示す情報である「Atyp.Cells present」が表示される。これにより、臨床上有用な情報である異型細胞の存在を示す情報をユーザに提供することができる。
【0099】
画像表示領域533には、測定結果のスキャッタグラムおよびヒストグラムが表示される。
【0100】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、
図11、
図12、
図13、
図16の特徴パラメータ空間に順に粒子をプロットすることで細胞を分類する構成について述べたが、これに限定されるものではない。つまり、特徴パラメータ空間の所定の範囲にプロットされた粒子を抽出して、抽出した粒子を次の特徴パラメータ空間にプロットするという処理を繰り返す必要はない。
【0101】
例えば、一の粒子をある種類の細胞として識別する条件として、「第1の特徴パラメータ空間において規定された範囲内のパラメータを有し、且つ、第2の特徴パラメータ空間において規定された範囲内のパラメータを有すること」と定義する。このような条件を、細胞の種類毎に定義する。いずれかの条件を満たす粒子を、条件に対応する細胞種として識別する。具体的な例を挙げると、
図12の領域R21に入るFSCPおよびFLHP1を有し、且つ、
図13の領域R32に入るFSCWおよびFLLAを有する有核有形成分を、白血球として検出する。
図12の領域R21に入るFSCPおよびFLHP1を有し、
図13の領域R31に入るFSCWおよびFLLAを有し、且つ、
図16の領域R41に入るFSC−DS/PおよびFL−DS/Pを有する有核有形成分を、異型細胞として検出する。他の種類の細胞についても同様にして、細胞種の識別を行うことができる。
【0102】
上述した実施の形態においては、2次元の特徴パラメータ空間を例示したが、3次元あるいはさらに高次元の特徴パラメータ空間に粒子をプロットしてもよい。
【0103】
上述した実施の形態においては、第1有核成分分類処理(
図10)において分類した第3群の有核有形成分を、さらに白血球凝集と異型細胞に分類したが、これは好ましい一例に過ぎない。
図24に示すように、FSCW−FLLA空間において白血球の分布領域R32および上皮細胞の分布領域R33とともに、異型細胞の分布領域R34を規定し、FSCWとFLLAとを用いて、領域R34にプロットされる粒子を異型細胞として検出するようにしてもよい。
【0104】
上述した実施の形態においては、異型細胞の計数値を出力したが、計数値を出力しなくてもよい。異型細胞の計数結果に応じて、定性的な測定結果として、異型細胞の有無を示す情報のみを出力してもよい。白血球凝集が所定数より多く検出された場合に、白血球凝集の計数値と共に、白血球凝集が存在することを示す情報を出力するようにしてもよい。白血球凝集の計数値を出力することなく、白血球凝集の計数結果に応じて、定性的な測定結果として、白血球凝集の有無を示す情報を出力するようにすることもできる。
【0105】
上述した実施の形態においては、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pの両方を用いて、異型細胞を白血球凝集と区別して検出したが、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0106】
上述した実施の形態においては、異型細胞を白血球凝集と区別して検出するための特徴パラメータとして、FSC−DS/PおよびFL−DS/Pを用いたが、これに代えて、パルスが単峰性であるか多峰性であるかを示す他の特徴パラメータを利用してもよい。例えば、前方散乱光信号または蛍光信号のパルスにおける谷の面積、谷の幅、ピークの数を代わりに用いることができる。
【0107】
上述した実施の形態においては、FSCWを用いて白血球、上皮細胞、および第3群の粒子集団を分類したが、FSCWに代えて、SSCW、FSCP、SSCP、FSCA、またはSSCAを用いてもよい。
【0108】
上述した実施の形態においては、FLLAを用いて白血球、上皮細胞、および第3群の粒子集団を分類したが、FLLAに代えて、FLLWを用いてもよい。
【0109】
上述した実施の形態においては、尿検体分析装置において尿中の異型細胞を検出する形態について述べたが、これに限定されるものではない。尿検体分析装置において、白血球、上皮細胞等の他の細胞と区別して体液中の異型細胞を検出してもよい。体液とは、血液および尿を除く、生体内を満たし、または循環する液体である。体液として、たとえば、脳脊髄液(CSF:脳室とくも膜下腔に満たされている液)、胸水(胸膜液、PE:胸膜腔に溜まった液)、腹水(腹膜腔に溜まった液)、心嚢液(心膜腔に溜まった液)、関節液(滑液:関節、滑液嚢、腱鞘に存在する液)、などが挙げられる。腹膜透析(CAPD)の透析液や腹腔内洗浄液なども他の体液の例として挙げられる。この場合、尿検体分析装置は、尿を分析する尿分析モードと体液を分析する体液分析モードによって選択的に動作可能に構成することができる。
【0110】
上述した実施の形態においては、測定試料調製処理、無核成分測定処理、有核成分測定処理、および測定データ解析処理を順番に実行する構成について述べたが、他の順序で上記処理を実行することも可能である。例えば、第2測定試料を調製した後、無核成分測定処理を実行し、さらに第1無核成分分類処理および第2無核成分分類処理を実行し、続いて、第1測定試料を調製し、有核成分測定処理を実行し、第1有核成分分類処理、異型細胞検出処理、第2有核成分分類処理、および細菌検出処理を実行する構成とすることも可能である。
【0111】
上述した実施の形態においては、情報処理部13が測定データの解析を行ったが、代わりに、測定ユニット10のマイクロコンピュータ11が測定データを解析してもよい。