(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238868
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】乗客コンベヤの非常制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20171120BHJP
B66B 23/02 20060101ALI20171120BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20171120BHJP
F16D 59/02 20060101ALI20171120BHJP
F16H 7/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F16D63/00 H
B66B23/02 A
B66B23/02 B
B60T1/06 G
F16D59/02
F16H7/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-209037(P2014-209037)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-80005(P2016-80005A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】原 茂壽
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−143424(JP,A)
【文献】
実開昭50−156993(JP,U)
【文献】
米国特許第02709504(US,A)
【文献】
実開昭54−036238(JP,U)
【文献】
国際公開第2015/198445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
B60T 1/00−7/10
B66B 21/00−31/02
F16H 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動スプロケットと同軸に設けられ、周囲に複数の歯部を有し、前記駆動スプロケットとともに回転するラチェットホイールと、
前記歯部と係合する係合位置と前記歯部から径方向外側に離れる退避位置との間で変位するラチェットポールと
を備え、
前記ラチェットポールには、前記ラチェットポールの位置が前記係合位置である場合に前記歯部を厚さ方向について挟むように前記歯部が挿入される凹部が形成されていることを特徴とする乗客コンベヤの非常制動装置。
【請求項2】
前記ラチェットポールは、ラチェットポール本体と、前記ラチェットポール本体に着脱可能に設けられ、前記ラチェットポール本体に取り付けられている場合に前記凹部の一対の側面を構成する一対の側壁部を含むラチェットポール係合部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤの非常制動装置。
【請求項3】
前記凹部の一対の側面は、前記凹部の底面に近づくにつれて互いに近づくように前記底面に対して傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベヤの非常制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏段を制動する乗客コンベヤの非常制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動スプロケットと同軸に設けられ、周囲に複数の歯部を有し、駆動スプロケットとともに回転するラチェットホイールと、歯部と係合する係合位置と歯部から径方向外側に離れる退避位置との間で変位するラチェットポールとを備えたエスカレータの非常制動装置が知られている。駆動チェーンの延びまたは切断が発生した場合に、駆動チェーンに載せられたシューが下方に移動することによって、ラチェットポールが退避位置から係合位置に変位して、駆動スプロケットが制動される。これにより、踏段が制動される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−143424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラチェットポールが歯部と係合する場合に、ラチェットポールがラチェットホイールの回転方向についてのみ歯部に対向するので、ラチェットポールを支持する連結棒の軸にぶれが発生した場合に、ラチェットポールが歯部に対してラチェットホイールの厚さ方向にスライドしてしまい、ラチェットポールと歯部との間の係合が解除されてしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、ラチェットポールと歯部との間の係合をより確実にすることができる乗客コンベヤの非常制動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの非常制動装置は、駆動スプロケットと同軸に設けられ、周囲に複数の歯部を有し、駆動スプロケットとともに回転するラチェットホイールと、歯部と係合する係合位置と歯部から径方向外側に離れる退避位置との間で変位するラチェットポールとを備え、ラチェットポールには、ラチェットポールの位置が係合位置である場合に歯部を厚さ方向について挟むように歯部が挿入される凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベヤの非常制動装置によれば、ラチェットポールには、ラチェットポールの位置が係合位置である場合に歯部を厚さ方向について挟むように歯部が挿入される凹部が形成されているので、ラチェットポールを支持する連結棒の軸にぶれが発生した場合に、ラチェットポールが歯部に対してラチェットホイールの厚さ方向にスライドすることが規制される。これにより、ラチェットポールと歯部との間の係合をより確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの要部を示す側面図である。
【
図3】
図1の非常制動装置を示すブロック図である。
【
図4】
図1のラチェットポールを示す正面図である。
【
図5】
図4のラチェットポールを示す底面図である。
【
図6】この発明の実施の形態2に係る非常制動装置のラチェットポールを示す正面図である。
【
図7】
図6のラチェットポールを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータの要部を示す側面図、
図2は
図1のエスカレータを示す平面図である。図において、エスカレータ(乗客コンベヤ)は、主枠1に設けられた駆動装置2と、主枠1に設けられた非常制動装置(乗客コンベヤの非常制動装置)3とを備えている。
【0010】
駆動装置2は、主枠1に回転可能に設けられ幅方向に延びた主軸21と、主軸21と一体に設けられた主軸側駆動スプロケット(駆動スプロケット)22と、駆動機23と、駆動機23の出力軸に一体に設けられた駆動機側駆動スプロケット24と、主軸側駆動スプロケット22と駆動機側駆動スプロケット24とに渡って巻き掛けられた駆動チェーン25とを備えている。この例で、幅方向とは、主枠1についての幅方向であって、
図2の矢印Aの方向である。
【0011】
主軸21には、踏段チェーン(図示せず)が巻き掛けられた踏段プロケット(図示せず)が一体に設けられている。踏段チェーンには、複数の踏段(図示せず)が取り付けられている。駆動機23が駆動することによって、駆動機23の動力が駆動チェーン25を介して主軸側駆動スプロケット22に伝達される。これにより、主軸21が回転し、踏段スプロケットが回転する。その結果、踏段チェーンとともに踏段が循環移動する。
【0012】
非常制動装置3は、主軸21に一体に設けられたラチェットホイール31と、主枠1に回転可能に設けられ幅方向に延びた連結棒32と、連結棒32に設けられ、ラチェットホイール31と係合するラチェットポール33Aと、連結棒32に設けられたレバー34と、レバー34に設けられ、駆動チェーン25に載せられるシュー35とを備えている。
【0013】
ラチェットホイール31は、主軸側駆動スプロケット22と同軸に設けられている。したがって、ラチェットホイール31は、主軸側駆動スプロケット22とともに回転する。ラチェットホイール31は、周囲に複数の歯部311を有している。歯部311は、ラチェットホイール31の周方向に並べて配置されている。
【0014】
ラチェットポール33Aは、連結棒32に対して固定されている。したがって、ラチェットポール33Aは、連結棒32が回動することによって、連結棒32を中心にして回動する。ラチェットポール33Aは、連結棒32を中心に回動することによって、歯部311と係合する係合位置と歯部311から径方向外側に離れる退避位置との間で変位する。この例で、径方向とは、ラチェットホイール31についての径方向であって、
図1の矢印Bの方向である。
【0015】
レバー34は、連結棒32に対して固定されている。したがって、レバー34は、連結棒32を中心に回動する場合に、連結棒32を回動させる。
【0016】
シュー35は、駆動チェーン25に延びが発生した場合または切断が発生した場合に、駆動チェーン25の変形にともなって下方へ移動する。シュー35が下方へ移動することによって、レバー34は、連結棒32を中心に回動する。これにより、ラチェットポール33Aは、退避位置から係合位置に変位する。
【0017】
図3は
図1の非常制動装置3を示すブロック図である。非常制動装置3は、ラチェットポール33Aとともに回動するカム36と、カム36の回動に基づいて、径方向についてのラチェットポール33Aと歯部311との間の距離が予め設定された値以下となったことを検出するマイクロスイッチ37と、マイクロスイッチ37の検出結果を取得する制御装置38とを備えている。制御装置38には、駆動機23が接続されている。制御装置38は、径方向についてのラチェットポール33Aと歯部311との間の距離が予め設定された値以下となったことをマイクロスイッチ37が検出した場合に、駆動機23の駆動を停止させる。
【0018】
駆動チェーン25に延びが発生した場合または切断が発生し、ラチェットポール33Aが退避位置から係合位置に変位する際に、ラチェットポール33Aが係合位置に達する前に、径方向についてのラチェットポール33Aと歯部311との間の距離が予め設定された値以下となったことをマイクロスイッチ37が検出し、制御装置38が駆動機23の駆動を停止させる。これにより、ラチェットポール33Aが歯部311に係合した状態で駆動機23が駆動することを防止することができる。
【0019】
図4は
図1のラチェットポール33Aを示す正面図、
図5は
図4のラチェットポール33Aを示す底面図である。ラチェットポール33Aには、ラチェットポール33Aの位置が係合位置である場合に歯部311を厚さ方向について挟むように歯部311が挿入される凹部331が形成されている。
【0020】
ラチェットポール33Aは、ラチェットポール本体332と、ラチェットポール本体332に着脱可能に設けられ、ラチェットポール本体332に取り付けられている場合に凹部331の一対の側面を構成する一対の側壁部333を含むラチェットポール係合部334と、ラチェットポール係合部334をラチェットポール本体332に固定するボルト335とを有している。
【0021】
次に、非常制動装置3の動作について説明する。駆動チェーン25に延びが発生した場合または切断が発生した場合、シュー35が下方へ移動して、ラチェットポール33Aが退避位置から係合位置への変位を開始する。
【0022】
径方向についてのラチェットポール33Aと歯部311との間の距離が予め設定された値以下となると、マイクロスイッチ37が径方向についてのラチェットポール33Aと歯部311との間の距離が予め設定された値以下となったことを検出し、駆動機23の駆動が停止される。
【0023】
その後、ラチェットポール33Aの位置が係合位置となると、ラチェットポール33Aが歯部311と係合する。このとき、ラチェットポール33Aを支持する連結棒32の軸にぶれが発生した場合であっても、ラチェットポール33Aが歯部311に対してラチェットホイール31の厚さ方向にスライドすることが規制される。これにより、ラチェットホイール31の回転が規制され、主軸21の回転が規制される。その結果、踏段チェーンとともに踏段が制動される。
【0024】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る非常制動装置3によれば、ラチェットポール33Aには、ラチェットポール33Aの位置が係合位置である場合に歯部を厚さ方向について挟むように歯部が挿入される凹部331が形成されているので、ラチェットポール33Aを支持する連結棒32の軸にぶれが発生した場合に、ラチェットポール33Aが歯部311に対してラチェットホイール31の厚さ方向にスライドすることが規制される。これにより、ラチェットポール33Aと歯部311との間の係合をより確実にすることができる。
【0025】
また、ラチェットポール33Aは、ラチェットポール本体332と、ラチェットポール本体332に着脱可能に設けられ、ラチェットポール本体332に取り付けられている場合に凹部331の一対の側面を構成する一対の側壁部333を含むラチェットポール係合部334とを有しているので、歯部311との係合によって損傷するラチェットポール係合部334のみを交換することができる。
【0026】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係る非常制動装置のラチェットポール33Bを示す正面図、
図7は
図6のラチェットポール33Bを示す底面図である。ラチェットポール33Bに形成された凹部331の一対の側面は、凹部331の底面に近づくにつれて互いに近づくように底面に対して傾斜して配置されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0027】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る非常制動装置3によれば、凹部331の一対の側面は、凹部331の底面に近づくにつれて互いに近づくように底面に対して傾斜して配置されているので、ラチェットポール33Bを支持する連結棒32の軸にぶれが発生した場合に、ラチェットポール33Bが歯部311に対してラチェットホイール31の厚さ方向にスライドすることが規制されるとともに、厚さ方向についてのラチェットポール33Bの中心部分を歯部311に対して回転方向により確実に対向させることができる。これにより、ラチェットポール33Bと歯部との間の係合をより確実にすることができる。
【0028】
なお、各上記実施の形態では、乗客コンベヤの非常制動装置3として、エスカレータの非常制動装置3について説明したが、動く歩道の非常制動装置であってもよい。
【0029】
また、各上記実施の形態では、ラチェットポール本体332とラチェット係合部334とを有するラチェットポールの構成について説明したが、凹部が形成されたラチェットポールであればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 主枠、2 駆動装置、3 非常制動装置(乗客コンベヤの非常制動装置)、21 主軸、22 主軸側駆動スプロケット、23 駆動機、24 駆動機側駆動スプロケット、25 駆動チェーン、31 ラチェットホイール、32 連結棒、33A、33B ラチェットポール、34 レバー、35 シュー、36 カム、37 マイクロスイッチ、38 制御装置、311 歯部、331 凹部、332 ラチェットポール本体、333 側壁部、334 ラチェットポール係合部、335 ボルト。