(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238874
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20171120BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20171120BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20171120BHJP
H01R 11/12 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H01R4/38 B
!H01R11/12 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-232022(P2014-232022)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-96674(P2016-96674A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊亨
(72)【発明者】
【氏名】丸井 崇義
(72)【発明者】
【氏名】岡本 唯祐
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−149077(JP,A)
【文献】
特開平06−310198(JP,A)
【文献】
特開2013−146123(JP,A)
【文献】
特開2013−146124(JP,A)
【文献】
特開2009−189082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01R 4/38
H01R 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を構成する導通部材を収容した箱本体と、
前記箱本体の周壁の一部が内方に凹まされた凹所を含んで構成され、L字状に屈曲された金属片の先端部にボルト挿通孔を有する接続部が形成され基端部に電線が接続されたボルト締め端子が装着されるボルト締め端子装着部と、
前記ボルト締め端子に装着されて該ボルト締め端子を覆う合成樹脂製の端子カバーとを備え、
前記箱本体の前記凹所に前記端子カバーを組み付けることにより、前記凹所の開口部が前記端子カバーによって覆蓋されると共に、前記ボルト締め端子が前記ボルト締め端子装着部に配設された前記導通部材に位置決めされてボルト締結されるようになっている電気接続箱において、
前記端子カバーが、中央の隔壁部を挟んだ両側に設けられた2つのボルト締め端子収容部を備えており、
各前記ボルト締め端子収容部は、接続部側収容領域と基端部側収容領域を備えている一方、
各前記接続部側収容領域が、前記接続部を全周に亘って囲む環状壁部によって画成されていると共に、
前記環状壁部に、前記ボルト締め端子と前記導通部材を締結するボルト又はナットの締結端位置を示す目印が設けられている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記環状壁部に設けられた前記締結端位置を示す目印が、前記環状壁部の突出端面によって構成されている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記端子カバーの前記隔壁部が、装着される前記ボルト締め端子の前記接続部と平行に延びる第1隔壁と、該第1隔壁に直交して前記ボルト締め端子の前記基端部側に延びる第2隔壁が側面視でL字状に連結されて構成されており、
前記第1隔壁を挟んだ両側に各前記ボルト締め端子収容部の前記接続部側収容領域を画成する各前記環状壁部が設けられている一方、
各前記環状壁部が、前記第1隔壁と、該第1隔壁の基端部および先端部から前記第1隔壁の長さ方向に直交する方向に延びる基端側横壁と先端側横壁と、前記基端側横壁と前記先端側横壁の各延出端部を連結する外壁とを含んで構成されており、
前記外壁において前記先端側横壁から前記基端側横壁に向かって該基端側横壁に至らない長さで延びる位置決めリブが設けられており、該位置決めリブの少なくとも延出端部が前記ボルト締め端子の前記接続部に当接して、前記第1隔壁と前記位置決めリブの間で前記接続部を位置決め保持するようになっている請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記箱本体の前記ボルト締め端子装着部に、前記導通部材に挿通された2つのスタッドボルトが立設されている一方、前記ボルト締め端子装着部と前記端子カバーに一対の案内嵌合部が設けられており、前記スタッドボルトが前記ボルト締め端子の前記ボルト挿通孔へ挿通するよりも前に、前記案内嵌合部が嵌合して、前記ボルト締め端子の前記ボルト挿通孔を前記スタッドボルトに位置決めするようになっている請求項1〜3の何れか1項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末に圧着されたボルト締め端子が装着されるボルト締め端子装着部を備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電装系に用いられる電気接続箱は、電気回路を構成するバスバー等の導通部材を収容する箱本体を備えており、かかる箱本体の一部に、給電用等の外部電線に圧着されたボルト締め端子が装着されるボルト締め端子装着部が設けられた構造が知られている。例えば、特開2001−155798号公報(特許文献1)には、箱本体の一部に凹所を設け、かかる凹所においてボルト締め端子および当該端子が圧着された電線を収容配置すると共に、凹所に配設された導通部材にボルト締め端子をボルト締結するようにしたボルト締め端子装着部を備えた構造が提案されている。
【0003】
ところで、ボルト締め端子装着部に装着されるボルト締め端子は、特許文献1に記載のように略L字状に屈曲された金属片の先端部にボルト挿通孔を有する接続部が形成され、基端部に設けられた加締め部が電線端末に露呈した芯線に圧着された構造とされている。従って、ボルト挿通孔にボルトが挿通されてボルト締め端子の接続部が箱本体の導通部材に締結された際には、ボルト締め端子の基端側や加締め部が露呈された状態となり、水掛かりによる電流のリーク等が発生するおそれがある。それ故、特許文献1に記載のようにボルト締め端子を合成樹脂製の端子カバーに装着してボルト締め端子の基端側や加締め部を端子カバーで覆うと共に、箱本体に端子カバーを組み付けることにより、ボルト締め端子を導通部材に位置決めして凹所の開口部を端子カバーで覆蓋する構造が採用されている。
【0004】
ところが、従来構造の電気接続箱では、端子カバーからボルト締め端子の接続部が突出して露呈しているため、ボルト締め端子装着部への組付作業時に、接続部が他部材と干渉する問題を内在していた。また、端子カバーを箱本体の凹所に組み付けた状態でボルト締め端子の接続部を箱本体の導通部材にボルト締結することから、ボルト締め端子と導通部材を締結するボルトとナットが完全に締結されたかどうか確認が難しいという問題も内在していた。
【0005】
加えて、従来構造の電気接続箱では、端子カバーに1つのボルト締め端子しか収容できないことから、装着されるボルト締め端子が複数ある場合には、複数の端子カバーをそれぞれ組み付ける必要があり、部品点数の増大や組付作業の煩雑化を招くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−155798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、箱本体に複数のボルト締め端子が装着される場合に、ボルト締め端子と導通部材の締結を簡便且つ確実に行うことができると共に、ボルト締め端子を有利に保護することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、電気回路を構成する導通部材を収容した箱本体と、前記箱本体の周壁の一部が内方に凹まされた凹所を含んで構成され、L字状に屈曲された金属片の先端部にボルト挿通孔を有する接続部が形成され基端部に電線が接続されたボルト締め端子が装着されるボルト締め端子装着部と、前記ボルト締め端子に装着されて該ボルト締め端子を覆う合成樹脂製の端子カバーとを備え、前記箱本体の前記凹所に前記端子カバーを組み付けることにより、前記凹所の開口部が前記端子カバーによって覆蓋されると共に、前記ボルト締め端子が前記ボルト締め端子装着部に配設された前記導通部材に位置決めされてボルト締結されるようになっている電気接続箱において、前記端子カバーが、中央の隔壁部を挟んだ両側に設けられた2つのボルト締め端子収容部を備えており、各前記ボルト締め端子収容部は、接続部側収容領域と基端部側収容領域を備えている一方、各前記接続部側収容領域が、前記接続部を全周に亘って囲む環状壁部によって画成されていると共に、前記環状壁部に、前記ボルト締め端子と前記導通部材を締結するボルト又はナットの締結端位置を示す目印が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、端子カバーに2つのボルト締め端子収容部が設けられていることから、2つのボルト締め端子が装着された1つの端子カバーを箱本体の凹所に組み付ける単一の作業により、2つのボルト締め端子をボルト締め端子装着部に装着することができ、且つ凹所の開口部を覆蓋できる。これにより、少ない部品点数且つ少ない作業工数により複数のボルト締め端子の装着を簡便に行うことが可能となる。
【0011】
しかも、各ボルト締め端子収容部における接続部側収容領域が接続部を全周に亘って囲む環状壁部によって画成されている。それ故、組付作業時等には、端子カバーの環状壁部が他部材と干渉することにより、ボルト締め端子収容部に収容されたボルト締め端子の接続部が他部材と直接接触することが未然に防止されており、ボルト締め端子を有利に保護すると共に、接続部の変形等を防止して、接続安定性の向上を図ることができる。
【0012】
加えて、環状壁部には、ボルト締め端子と導通部材を締結するボルト又はナットの締結端位置を示す目印が設けられていることから、端子カバーを用いてもボルトとナットの完全締結の確認が容易となり、ボルト締め端子と導通部材の確実な締結が容易に実現され得る。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記環状壁部に設けられた前記締結端位置を示す目印が、前記環状壁部の突出端面によって構成されているものである。
【0014】
本態様によれば、環状壁部の突出端面により締結端位置を示す目印が構成されていることから、ボルト締め端子と導通部材を締結するボルト又はナットの端面が環状壁部の突出端面と面一になるまで締結することで、ボルト締め端子と導通部材の完全な締結を目視にて容易に確認できる。加えて、環状壁部の突出高さを必要最低限に抑えつつ締結端位置を示すことができ、電気接続箱の小型化にも寄与し得る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記端子カバーの前記隔壁部が、装着される前記ボルト締め端子の前記接続部と平行に延びる第1隔壁と、該第1隔壁に直交して前記ボルト締め端子の前記基端部側に延びる第2隔壁が側面視でL字状に連結されて構成されており、前記第1隔壁を挟んだ両側に各前記ボルト締め端子収容部の前記接続部側収容領域を画成する各前記環状壁部が設けられている一方、各前記環状壁部が、前記第1隔壁と、該第1隔壁の基端部および先端部から前記第1隔壁の長さ方向に直交する方向に延びる基端側横壁と先端側横壁と、前記基端側横壁と前記先端側横壁の各延出端部を連結する外壁とを含んで構成されており、前記外壁において前記先端側横壁から前記基端側横壁に向かって該基端側横壁に至らない長さで延びる位置決めリブが設けられており、該位置決めリブの少なくとも延出端部が前記ボルト締め端子の前記接続部に当接して、前記第1隔壁と前記位置決めリブの間で前記接続部を位置決め保持するようになっているものである。
【0016】
本態様によれば、環状壁部の外壁に設けられた位置決めリブと第1隔壁の間でボルト締め端子の接続部が位置決め保持されるようになっている。これにより、端子カバーにボルト締め端子を装着することのみにより、2つのボルト締め端子を端子カバーの正規位置に保持することができる。これにより、端子カバーを箱本体に装着することで、2つのボルト締め端子の接続部のボルト挿通孔をボルト締め端子装着部に配設されたボルトや導通部材のボルト挿通孔等に容易に位置決めすることができる。
【0017】
しかも、位置決めリブが環状壁部の外壁において、先端側横壁から基端側横壁に至らない長さで形成されている。これにより、外壁が撓み変形し易くなっており、第1隔壁と位置決めリブの間への接続部の嵌め入れが容易に行い得るようになっている。
【0018】
特に、位置決めリブが変位量が大きくなる接続部の先端側を確実に保持できることから、嵌入容易性と確実な位置決めの両立を有効に図ることができるのである。
【0019】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記箱本体の前記ボルト締め端子装着部に、前記導通部材に挿通された2つのスタッドボルトが立設されている一方、前記ボルト締め端子装着部と前記端子カバーに一対の案内嵌合部が設けられており、前記スタッドボルトが前記ボルト締め端子の前記ボルト挿通孔へ挿通するよりも前に、前記案内嵌合部が嵌合して、前記ボルト締め端子の前記ボルト挿通孔を前記スタッドボルトに位置決めするようになっているものである。
【0020】
本態様によれば、ボルト締め端子装着部に、ボルト締め端子と導通部材を締結する締結部品の一方であるスタッドボルトが立設されており、スタッドボルトをボルト締め端子のボルト挿通孔に挿通する難しい作業が必要となる。本態様では、ボルト締め端子装着部と端子カバーに設けられた案内嵌合部の嵌合がスタッドボルトのボルト挿通孔への挿通よりも前に行われる。それ故、案内嵌合部の嵌合により、箱本体と端子カバーが予め位置決めされ、それによりスタッドボルトとボルト締め端子のボルト挿通孔の位置決めが確実に為される。従って、スタッドボルトのボルト挿通孔への挿通を困難なく行うことができ、更なる作業性の向上が図られ得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、端子カバーに2つのボルト締め端子収容部が設けられていることから、単一の作業により、2つのボルト締め端子をボルト締め端子装着部に装着することができ、且つ凹所の開口部を覆蓋できる。すなわち、少ない部品点数且つ少ない作業工数で複数のボルト締め端子の装着を簡便に行える。しかも、ボルト締め端子収容部において、ボルト締め端子の接続部が全周に亘って環状壁部によって囲まれている。それ故、組付作業時等に、ボルト締め端子の接続部が他部材と直接接触することが未然に防止されることから、接続部の変形等を防止して、接続安定性の向上を図ることができる。加えて、環状壁部には、ボルト締め端子と導通部材を締結するボルト又はナットの締結端位置を示す目印が設けられていることから、端子カバーを用いてもボルトとナットの完全締結の確認が容易であり、ボルト締め端子と導通部材の確実な締結が容易に実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱を示す斜視図。
【
図8】
図6に示す端子カバーの斜視図((a)右斜め下方から見た場合、(b)左斜め下方から見た場合)。
【
図9】
図6に示す端子カバーにボルト締め端子が装着された状態の斜視図((a)右斜め下方から見た場合、(b)左斜め下方から見た場合)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1〜9に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、箱本体12と、箱本体12の上面14と下面16をそれぞれ覆蓋する図示しないアッパカバーとロアカバー、とを含んで構成されている。以下の説明において、上方とは、
図2中の上方、下方とは、
図2中の下方を言い、前方とは、
図2中の左方、後方とは、
図2中の右方を言うものとする。
【0025】
箱本体12は、全体として長手矩形ブロック形状を呈しており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の絶縁性の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。
図3に示されているように、箱本体12の上面14には、複数のリレー装着部18a,18bやヒューズ装着部20a,20bが、上方に向かって開口形成されている。なお、図示は省略するが、箱本体12の下面16には、複数の端子収容孔が下方に向かって開口形成されている。すなわち、導通部材としての電線の端末に圧着された圧着端子等が端子収容孔に収容配置されるようになっていると共に、電気回路を構成する導通部材としてのバスバー24等がバスバー収容溝等に装着支持されるようになっている。
【0026】
そして、箱本体12の上面14側から、各リレー装着部18a,18bや各ヒューズ装着部20a,20bに対して、図示しないリレーやヒューズやコネクタが装着される。これにより、かかるリレーやヒューズから突出する図示しないタブ端子が上述の電線の端末の圧着端子やバスバー24等に接続されて導通されるようになっている。
【0027】
箱本体12の周縁部には、全周に亘って鉛直方向に延出することで略矩形筒状とされた周壁部26が設けられている。
図1〜4に示されているように、周壁部26の前方の周壁26aの周方向中央部分には、ボルト締め端子装着部28が設けられている。より詳細には、ボルト締め端子装着部28は、周壁26aの一部が内方に凹まされることにより前方及び上下方向に開口する正面視で略矩形状の凹所30と、凹所30に隣接する箱本体12の上面14に形成され、後述するボルト締め端子40が装着されるスタッドボルト装着部32と、を含んで構成されている。
【0028】
スタッドボルト装着部32には、2つのスタッドボルト34がそれぞれ、図示しないヘッド部を図示しないボルト収容孔に嵌め込まれた状態で立設されている。2つのスタッドボルト34には、バスバー24のバスバー端子36が挿通配置されている。より詳細には、バスバー24は、導電性金属板の打抜加工等で形成されたプレートであって、その先端部にボルト挿通孔38を有するバスバー端子36を備えており、かかるバスバー端子36は略直角に屈曲して形成されている。そして、かかるボルト挿通孔38を2つのスタッドボルト34のねじ軸部35にそれぞれ挿通することにより、2つのスタッドボルト34のねじ軸部35にバスバー24のバスバー端子36が挿通されつつヘッド部上に載置されるようになっているのである。
【0029】
図1及び
図2に示されているように、凹所30には、2つのボルト締め端子40が装着されて2つのボルト締め端子40を覆う合成樹脂製の端子カバー42が組み付けられるようになっている。なお、凹所30の周壁26aへの開口部の鉛直方向中央部分の両側縁部には、逆L字状に突設された突部43によって画成された内方に開口する案内凹溝44が形成されている(
図3参照)。
【0030】
図2に示されているように、ボルト締め端子40は、電線45と、電線45の端末に露呈された芯線46に固着された金属片からなる端子金具48とを含んで構成されている。電線45は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線46が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆で覆われた構造とされている。一方、端子金具48はL字状に屈曲されて形成されており、その基端部には、電線45の絶縁被覆に対して圧着された被覆圧着部50と、電線45の端末から延出する芯線46が固着された芯線固着部52が設けられている。また、端子金具48の先端部には、ボルト挿通孔54を有する接続部56が設けられている。なお、理解を容易とするため、
図2では、電線45と芯線46を仮想線で記載している。
【0031】
端子カバー42は、
図2に示されているように、中央に隔壁部58を有する略枠体形状とされており、隔壁部58を間に挟んだ両側には2つのボルト締め端子収容部60が設けられている(
図8及び
図9参照)。隔壁部58は、装着されるボルト締め端子40の接続部56と平行(
図2中、右側)に延びる略横長平板状の第1隔壁62と、第1隔壁62に直交してボルト締め端子40の基端部側(
図2中、下側)に延びる略縦長平板状の第2隔壁64から構成されている。これにより、全体として第1隔壁62と第2隔壁64が側面視でL字状に連結された構成とされている。
【0032】
一方、ボルト締め端子収容部60は、第1隔壁62側に位置する接続部側収容領域66と第2隔壁64側に位置する基端部側収容領域68から構成されている。接続部側収容領域66は、ボルト締め端子40の接続部56を全周に亘って囲む環状壁部70によって画成されており、第1隔壁62を間に挟んだ両側に設けられている(
図8及び
図9参照)。
【0033】
より詳細には、環状壁部70は、
図6に示されているように、第1隔壁62と、第1隔壁62の基端部および先端部から第1隔壁62の長さ方向に直交する方向に延びる基端側横壁72と先端側横壁74と、それら横壁72,74の各延出端部を連結する外壁76とを含んで構成されている。なお、理解を容易とするため、
図6では、ボルト締め端子40の接続部56を仮想線で記載している。そして、
図8に示されているように、外壁76の下端部において、先端側横壁74から基端側横壁72に向かって基端側横壁72に至らない長さで延びる位置決めリブ78が、鉛直方向下方に向かって突出すると共に環状壁部70の内方に向かって延出して形成されている。位置決めリブ78は略台形断面形状とされており、外面が外壁76の外面から内方に向かって傾斜するテーパ面80とされている。さらに、第1隔壁62の下端部において、第1隔壁62の略全長に亘って延びる位置決めリブ82が、鉛直方向下方に向かって突出すると共に環状壁部70の内方に向かって延出して形成されている。
【0034】
一方、基端部側収容領域68は、第2隔壁64に支持されて第2隔壁64を挟んだ両側に隙間を隔てて平行に延出する内方縦壁部84と外方縦壁部86によって画成されており、第2隔壁64を間に挟んだ両側に設けられている(
図8及び
図9参照)。内方縦壁部84は略矩形平板状とされており、外方縦壁部86よりも上下方向の長さ寸法がやや長めに形成されている。一方、外方縦壁部86は略矩形平板状とされており、内面には上下方向に離隔して内方に向かって突出する圧接リブ88a,88bが設けられている。また、外方縦壁部86は、第2隔壁64を間に挟んだ片側(
図2中、奥側)に対してより長く延び出して形成されている。さらに、外方縦壁部86の両側の下端部側において、正面視で逆L字状に突設されたリブ90によって囲まれた領域によって案内板部92が形成されている。
【0035】
なお、
図1〜3に示されているように、周壁部26のうち、箱本体12の長手方向で対向する周壁26a,26cには、箱本体12の上方開口部近傍においてロック部94や被ロック部96が突設されている。かかるロック部94や被ロック部96はそれぞれ、図示しないアッパカバーの被ロック部やロック部と嵌合することにより、箱本体12の上面14を覆蓋状態でロックできるようになっている。一方、周壁部26のうち、箱本体12の幅方向で対向する周壁26b,26dには、箱本体12の下方開口部近傍においてロック部98、100が突設されている。ロック部98は、図示しないロアカバーの被ロック部と嵌合することにより、箱本体12の下面16を覆蓋状態でロックできるようになっている。一方、ロック部100が図示しない固定ブラケットに嵌合されることにより、電気接続箱10を固定ブラケットに対して固定できるようになっている。
【0036】
また、周壁部26の周壁26aには、下方に向って略短冊状に延びる取付脚部102が形成されており、取付脚部102の下端側には外方に向かって略矩形平板状に延び出すボルト固定部104が設けられている。そして、かかるボルト固定部104を車両の所定位置にボルト固定することにより、電気接続箱10を車両の所望の位置に対して配設できるようになっている。
【0037】
このような構成とされた端子カバー42を箱本体12の凹所30に組み付ける際には、先ず、
図2に示されているように、端子カバー42の両側(
図2中、手前側及び奥側)からボルト締め端子40を装着する。より詳細には、
図8及び
図9に示されているように、端子カバー42の両側面に向かって開口するボルト締め端子収容部60に対して、ボルト締め端子40の接続部56を接続部側収容領域66側に位置させ、ボルト締め端子40の基端部を基端部側収容領域68側に位置させた状態で、ボルト締め端子40を挿入する。かかる挿入の際、接続部側収容領域66においては、先ず接続部56が位置決めリブ78のテーパ面80に当接することにより、位置決めリブ78が上方に向かって撓み変形されて、さらなる押し込みが許容される。そして、ボルト締め端子40をボルト締め端子収容部60側に向かってさらに押し込むと、接続部56が位置決めリブ78を乗り越えることにより、位置決めリブ78が弾性復帰する。この結果、
図6に示されているように、接続部56は、位置決めリブ78の延出端部105に当接された状態で、第1隔壁62の位置決めリブ82と外壁76の位置決めリブ78の間で位置決め保持されるのである。一方、挿入の際、基端部側収容領域68においては、基端部の被覆圧着部50と芯線固着部52が圧接リブ88a,88bに圧接された状態で、押し込みが行われる。この結果、
図9に示されているように、ボルト締め端子40の基端部は、基端部の被覆圧着部50と芯線固着部52が圧接リブ88a,88bに圧接された状態で、基端部側収容領域68に対して安定して保持されるのである。
【0038】
次に、このように2つのボルト締め端子40が装着された端子カバー42が、箱本体12の凹所30に組み付けられる。より詳細には、先ず、端子カバー42の両側の下端部側に設けられた案内板部92を、凹所30の開口部の両側縁部に設けられた案内凹溝44に挿入する。これにより、ボルト締め端子40のボルト挿通孔54をスタッドボルト34に対して位置決めできるようになっている。本実施形態では、このように、案内板部92と案内凹溝44によって一対の案内嵌合部が構成されているのである。続いて、端子カバー42を鉛直方向下方に向かってさらに押し込むことにより、ボルト締め端子40のボルト挿通孔54にスタッドボルト34が挿通され、ボルト締め端子40のボルト挿通孔54がボルト締め端子装着部28に配設されたバスバー24のバスバー端子36に位置決めされた状態で配設されるようになっているのである。そして、最後に、
図1及び
図2に示されているように、スタッドボルト34の上方からナット106を組み付けることにより、ボルト締め端子40がバスバー端子36に対してボルト締結されるようになっている。
【0039】
なお、ボルト締結の際には、ボルト締め端子40とバスバー端子36を締結するナット106の上端面が環状壁部70の突出端面108と面一になるまで締結すればよい。それ故、ボルト締め端子40とバスバー端子36の完全な締結を目視にて容易に確認できる。従って、環状壁部70の突出高さを必要最低限に抑えつつ締結端位置を示すことができ、電気接続箱10の小型化にも寄与し得るのである。このように、本実施形態では、環状壁部70に設けられた締結端位置を示す目印が、環状壁部70の突出端面108によって構成されているのである。また、以上の結果、箱本体12の周壁26aに設けられた凹所30の開口部が、外方縦壁部86によって覆蓋されるようになっている。
【0040】
このような構造とされた本実施形態の電気接続箱10によれば、端子カバー42に2つのボルト締め端子収容部60が設けられていることから、単一の作業により、2つのボルト締め端子40を箱本体12のボルト締め端子装着部28に装着することができ、且つ箱本体12の凹所30の開口部を覆蓋できる。これにより、部品点数を少なくできると共に、少ない作業工数で2つのボルト締め端子40を箱本体12に簡便に組み付けることができるのである。また、ボルト締め端子収容部60の接続部側収容領域66では、環状壁部70によって接続部56が全周に亘って囲まれていることから、組付作業時等に、接続部56が他部材と直接接触することが未然に防止されている。それ故、接続部56を有利に保護すると共に変形等を防止して、接続安定性の向上を図ることができる。
【0041】
さらに、端子カバー42にボルト締め端子40を装着するだけで、ボルト締め端子40の接続部56が、外壁76の位置決めリブ78と第1隔壁62の位置決めリブ82の間で位置決め保持されるようになっている。それ故、端子カバー42を箱本体12に組み付ける際に、2つのボルト締め端子40の接続部56のボルト挿通孔54をボルト締め端子装着部28に配設されたスタッドボルト34やバスバー24のバスバー端子36のボルト挿通孔38等に容易に位置決めすることができる。しかも、位置決めリブ78が環状壁部70の外壁76の先端側横壁74から基端側横壁72に至らない長さで形成されていることから、位置決めリブ78が撓み変形し易くなっている。それ故、接続部56の接続部側収容領域66への嵌め入れを容易に行うことができる。また、電線45に加わる外力等により比較的変位量が大きいと考えられるボルト締め端子40の接続部56の先端側が、位置決めリブ78が当接することによって確実に保持されるようになっている。以上のことから、嵌入容易性と確実な位置決めの両立を有効に図ることができる。
【0042】
また、ボルト締め端子装着部28に立設されているスタッドボルト34にボルト締め端子40のボルト挿通孔54を挿通する前に、端子カバー42の案内板部92が、凹所30の開口部の両側縁部に設けられた案内凹溝44に嵌合される。これにより、ボルト締め端子40のボルト挿通孔54がスタッドボルト34に対して位置決めされることから、スタッドボルト34のボルト締め端子40のボルト挿通孔54への挿通を困難なく行うことができ、更なる作業性の向上が図られ得る。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本実施形態では、スタッドボルト34に挿通されたボルト締め端子40とバスバー24がナット106によって締結されていたが、ナット106上に配設されたボルト締め端子40とバスバー24がボルトによって締結されてもよい。また、本実施形態では、端子カバー42に嵌合部(案内板部92)が設けられる一方、箱本体12に被嵌合部(案内凹溝44)が設けられていたが、勿論逆でもよい。
【符号の説明】
【0044】
10:電気接続箱、12:箱本体、24:バスバー(導通部材)、26a〜d:周壁、28:ボルト締め端子装着部、30:凹所、34:スタッドボルト、40:ボルト締め端子、42:端子カバー、44:案内凹溝(案内嵌合部)、45:電線、48:端子金具(金属片)、54:ボルト挿通孔、56:接続部、58:隔壁部、60:ボルト締め端子収容部、62:第1隔壁、64:第2隔壁、66:接続部側収容領域、68:基端部側収容領域、70:環状壁部、72:基端側横壁、74:先端側横壁、76:外壁、78:位置決めリブ、92:案内板部(案内嵌合部)、105:延出端部、106:ナット、108:突出端面