(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空間に設置された空調制御対象の空調設備の消費電力の算出に用いる情報、空間における快適性を示す快適性指標値の算出に用いる情報及び空調設備と空間の利用者との関係に関連する情報を入力として予め決められた多目的最適化演算を行うことで、空間の快適性と空調設備の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出し、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を設定値候補として設定値候補記憶手段に登録するパレート最適解算出手段と、
前記設定値候補記憶手段に登録された設定値候補の中から管理者により指定された条件に合致する設定値を選択する設定値選択手段と、
前記設定値選択手段により選択された設定値に基づき空調設備の運転を制御する空調制御手段と、
空間の利用者がそれぞれ利用する利用者端末から送信されてくる当該利用者の快適性を示す快適度情報を受け付け、その受け付けた快適度情報を集計することにより前記空間の利用者の快適性に関する要望を数値化して求めた情報を前記設定値選択手段に送る快適度情報受付手段を有し、
前記設定値選択手段は、前記快適度情報受付手段から送られてきた情報を参照して空調制御に用いる設定値を選択することを特徴とする空調制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空調の運転状態や外部環境からの影響等によって空間の利用者が暑い又は寒いなど空間内が快適でないと感じた際に空調制御を調整したい場合、快適と考えられる所定範囲を変更して最適運用関数を作成し直さなければならない。このように、空間の快適性と消費電力との関係を見直し空調制御に反映させるには、手間がかかり、また即座に対応することができない、
【0007】
本発明は、空間の快適性と空調設備の消費電力との調整を容易にできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調制御装置は、空間に設置された空調制御対象の空調設備の消費電力の算出に用いる情報、空間における快適性を示す快適性指標値の算出に用いる情報及び空調設備と空間の利用者との関係に関連する情報を入力として予め決められた多目的最適化演算を行うことで、空間の快適性と空調設備の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出し、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を設定値候補として設定値候補記憶手段に登録するパレート最適解算出手段と、前記設定値候補記憶手段に登録された設定値候補の中から
管理者により指定された条件に合致する設定値を選択する設定値選択手段と、前記設定値選択手段により選択された設定値に基づき空調設備の運転を制御する空調制御手段と、
空間の利用者がそれぞれ利用する利用者端末から送信されてくる当該利用者の快適性を示す快適度情報を受け付け、その受け付けた快適度情報を集計することにより前記空間の利用者の快適性に関する要望を数値化して求めた情報を前記設定値選択手段に送る快適度情報受付手段を有し、前記設定値選択手段は、前記快適度情報受付手段から送られてきた情報を参照して空調制御に用いる設定値を選択するものである。
【0013】
また、前記設定値選択手段は、前記快適度情報に基づき空間が現在より快適となる設定値を選択するものである。
【0014】
また、前記快適度情報受付手段
が前記設定値選択手段に送る情報を管理者に提示する提示手段を有し、前記設定値選択手段は、現在空調制御に用いられている設定値を、前記提示手段により提示され
た情報を参照した管理者により選択された設定値に変更するものである。
【0016】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、空間に設置された空調制御対象の空調設備の消費電力の算出に用いる情報、空間における快適性を示す快適性指標値の算出に用いる情報及び空調設備と空間の利用者との関係に関連する情報を入力として予め決められた多目的最適化演算を行うことで、空間の快適性と空調設備の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出し、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を設定値候補として設定値候補記憶手段に登録するパレート最適解算出手段、前記設定値候補記憶手段に登録された設定値候補の中から
管理者により指定された条件に合致する設定値を選択する設定値選択手段、前記設定値選択手段により選択された設定値に基づき空調設備の運転を制御する空調制御手段、
空間の利用者がそれぞれ利用する利用者端末から送信されてくる当該利用者の快適性を示す快適度情報を受け付け、その受け付けた快適度情報を集計することにより前記空間の利用者の快適性に関する要望を数値化して求めた情報を前記設定値選択手段に送る快適度情報受付手段、として機能させ
、前記設定値選択手段は、前記快適度情報受付手段から送られてきた情報を参照して空調制御に用いる設定値を選択するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空間の快適性と空調機の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出し、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を求めて設定値候補とし、その設定値候補の中から空調制御に用いる設定値を選択できるようにしたので、空間の快適性と空調設備の消費電力との調整を容易に行うことができる。
【0018】
また、制限条件に従い空調機の運転制御に用いる設定値の取り得る範囲を制限することができる。
【0019】
また、空間の利用者の快適度を参考にして設定値候補の中から空調制御に用いる設定値を選択することができる。
【0020】
また、現在、空間に実際にいる利用者の温度に関する個人情報を参考にして設定値候補の中から空調制御に用いる設定値を選択することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る空調制御装置の一実施の形態を含む施設内に設置されたシステムの全体構成図である。
図1には、空調制御装置10、入退管理サーバ2、空調コントローラ3、入退コントローラ4及び利用者端末5がLAN1に接続された構成が示されている。また、空間を形成する部屋6には、部屋6に設置された空調制御対象の空調機7と部屋6の利用者により使用される利用者端末5とが設置されている。また、部屋6の出入口(図示せず)には、入退コントローラ4に接続されたカードリーダ(CR)8が設置されている。
【0024】
なお、複数台の空調コントローラ3及び入退コントローラ4をLAN1に接続してもよいが、それぞれは同様の構成を有していればよいので、本実施の形態では、便宜的に1台ずつ図示した。また、本実施の形態では、
図1では便宜的に空調制御対象を室内に設置した空調機(室内機)としているが、電力を消費する室外機等の空調設備も当然ながら空調制御対象となることは言うまでもない。
【0025】
空調コントローラ3には、1又は複数の空調機7が接続されており、空調制御装置10は、空調コントローラ3を介して空調機7の運転制御を行うことで空調制御を行う。利用者が部屋6の入退室時に各自が携帯するICカードをカードリーダ8に読み取らせると、入退コントローラ4は、カードリーダ8から送られてくる情報に基づき、入室又は退室した利用者を識別するユーザID及びその入退室時の時間を含む入退情報を入退管理サーバ2へリアルタイムに送信する。入退管理サーバ2は、入退コントローラ4から送信されてくる入退情報を参照して部屋6の在室者を把握するなどの入退管理を行う。また、入退管理サーバ2は、各利用者のパーソナルデータ(個人情報)を保持管理する。個人情報には、例えば暑がり、寒がりなどの温度に関する個人情報が含まれている。利用者端末5は、汎用的なパーソナルコンピュータ(PC)で実現可能である。
【0026】
図2は、本実施の形態における空調制御装置10を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。本実施の形態において空調制御装置10を形成するコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、
図2に示したようにCPU31、ROM32、RAM33、ハードディスクドライブ(HDD)34、入力手段として設けられたマウス35とキーボード36、及び表示装置として設けられたディスプレイ37をそれぞれ接続する入出力コントローラ38、通信手段として設けられたネットワークコントローラ39を内部バス40に接続して構成される。
【0027】
図3は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素は図から省略している。後述する実施の形態においても同様である。本実施の形態における空調制御装置10は、設定値計算部11、条件受付部12、設定値選択部13、空調制御部14、空調システムモデル記憶部21、情報記憶部22及び設定値候補記憶部23を有している。
【0028】
設定値計算部11は、パレート最適解算出手段として設けられ、空調システムモデル記憶部21及び情報記憶部22に記憶された情報を入力として予め決められた多目的最適化演算を行うことで、空間の快適性と空調機7の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出し、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を、空調性に用いる設定値候補として設定値候補記憶部23に登録する。多目的最適化演算としては、多目的遺伝的アルゴリズム(MOGA)や多目的粒子群最適化(MOPSO)等の既存の手法を用いてよい。快適性の計算には、既存の温冷感指標(PMV,SET,UTCI等)を用いてよい。
【0029】
設定値計算部11は、消費電力計算部111、快適性計算部112及び多目的最適化計算部113を含むが、このうち消費電力計算部111は、各記憶部21,22に記憶されている空調機7の消費電力の算出に用いる情報に基づき各空調機7の消費電力を算出する。快適性計算部112は、空間における快適性を示す快適性指標値の算出に用いる情報に基づき空間の快適性を示す快適性指標値を算出する。また、多目的最適化計算部113は、各計算部111,112の計算結果を参照に多目的最適化演算を行うことで前述した設定値を設定値候補として設定値候補記憶部23に登録する。本実施の形態における多目的最適化計算部113は、複数の設定値を必ず求めるようにしている。
【0030】
設定値選択部13は、設定値選択手段として設けられ、設定値候補記憶部23に登録された設定値候補の中から空調制御に用いる設定値を選択する。条件受付部12は、設定値選択部13が設定値候補の中から空調制御に用いる設定値を選択するために、管理者により入力指定された設定値又は設定値の選択条件等を受け付ける。空調制御部14は、空調制御手段として設けられ、設定値選択部13により選択された設定値に基づき空調機7の運転を制御する。
【0031】
空調システムモデル記憶部21には、部屋6の利用者と空調機7との関係に関連する情報が記憶されている。部屋6の利用者と空調機7との関係に関連する情報として、例えば、空調機7を能力Aで運転させると利用者の快適性は快適性Bに変更されるというような空調機7の運転状況に対する利用者への影響度合いを示す情報が含まれている。
【0032】
情報記憶部22には、空調システムモデル記憶部21に記憶された情報以外の、設定値計算部11がパレート最適解を算出するために必要な各種情報が記憶されている。例えば、空調機7のシステム構成情報、建物情報、外気温情報等が記憶される。空調機7のシステム構成情報には、各空調機7の機種、性能、使用年数等空調機7に関する様々な情報、各空調機7と空調コントローラ3との接続関係を示す情報、各空調機7の設置場所等施設や部屋6との関係を示す情報等が含まれている。建物情報には、建物(施設)にある各部屋6の位置(階数、向き)、大きさ、形状、窓の数、向き、大きさ、すきま風に関する情報、更に利用者の座席位置等建物全般及び建物の利用に関する情報が含まれている。外気温情報には、外気温の値(実測値又は必要の場合により予測値)に関する情報が含まれている。
【0033】
空調制御装置10における各構成要素11〜14は、空調制御装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU31で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部21〜23は、空調制御装置10に搭載されたHDD34にて実現される。あるいは、RAM33又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0034】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0035】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0036】
まず、空調制御部14が消費電力と快適性を考慮した空調機7の運転制御を開始する前に、設定値計算部11は、空調システムモデル記憶部21及び情報記憶部22に記憶された各種情報を参照して多目的最適化演算を行うことで、空間の快適性と空調機7の消費電力との関係における複数のパレート最適解を算出する。そして、設定値計算部11は、各パレート最適解における快適性と消費電力とを実現する設定値を空調制御に用いる設定値の候補群(設定値候補)として設定値候補記憶部23に登録する。
【0037】
図4は、本実施の形態における設定値計算部11が算出した設定値を示した概念図である。空調機7のシステム構成等によって消費電力の上限値(Pmax)と下限値(Pmin)は決められており、また、消費電力の上下限値が決められていることに伴い、部屋6における快適性を示す快適性指標値の上限値(Cmax)と下限値(Cmin)も決まる。多目的最適化計算部113は、各上下限値に基づき設定される空調制御可能範囲41の中で、
図4に示したように快適性優先、消費電力優先、またその間でなるべく快適性がよく、かつ低消費電力となる複数のパレート最適解を設定値S1〜Spとして算出する。多目的最適化計算部113は、このようにして算出した設定値S1〜Spを設定値候補記憶部23に登録する。
【0038】
図5は、本実施の形態における設定値候補記憶部23に登録された設定値のデータ構成例を示した図である。
図5には、8つの設定値S1〜S8が設定登録された場合の例が示されている。各設定値S1〜S8は、当該パレート最適解における快適性と消費電力と、それを実現する設定値群で構成されており、その設定値群には、空調機7の設定温度及び風量が含まれる。
【0039】
以上のようにして、本実施の形態では、空調制御を実施する前に、複数の設定値S1〜Spを実際に空調制御に用いる設定値の候補として設定値候補記憶部23に登録しておく。
【0040】
続いて、設定値候補記憶部23に登録された設定値の候補の中から実際に空調制御に用いる設定値を選択する、本実施の形態における処理について説明する。
【0041】
空調制御を行う際、本実施の形態では、管理者が空調制御装置10を操作して設定値候補記憶部23に登録された設定値の候補の中からいずれか1つを選択する。具体的には、所定のユーザ操作に応じて条件受付部12が起動されると、条件受付部12は、予め設定された選択条件をディスプレイ37にリスト表示する。例えば、「(a)デマンドを抑えるために省エネ運転したいので、快適性を一定範囲内でかつ消費電力を一定値以下にする。」、「(b)電力の余力があるので、ある消費電力範囲の中で快適性を最大にする。」などである。管理者は、リスト表示された条件の中から所望の条件を選択する。なお、条件(a)のように一定範囲や一定値等のデータ設定が別途必要となるような選択条件が選択された場合、条件受付部12は、その付加的なデータの入力を管理者に求める。
【0042】
選択された条件また必要により入力された条件値が条件受付部12により受け付けられると、設定値選択部13は、設定値候補記憶部23に登録された設定値の候補の中から条件受付部12が受け付けた条件に最も合致する設定値を選択して空調制御部14へ送る。空調制御部14は、設定値選択部13から送られてきた設定値に基づき空調機7の運転制御を行う。例えば、条件(b)であれば、PMVが最も良い(PMV=0)設定値S3が選択されることになる。
【0043】
この結果、本実施の形態によれば、消費電力と快適性の関係におけるパレート最適解の中から管理者により指定された設定値に基づく消費電力にて空調機7は運転され、これに伴い、部屋6は管理者により指定された快適性が実現される。
【0044】
なお、本実施の形態では、設定値候補記憶部23に登録された選択候補の中から1つの設定値を選択させるための条件を管理者に入力させたが、例えば、
図5に例示した消費電力、快適性等の各設定値の組を設定値候補記憶部23から取り出してディスプレイ37にリスト表示し、その中から所望の設定値を管理者に選択させるようにしてもよい。
【0045】
ここで、現在選択された設定値に基づき空調機7が運転制御されているときに、消費電力を変更したい、あるいは快適性をもっと向上させたい場合、本実施の形態では、パレート最適解を設定値計算部11に再計算させることなく、設定値候補記憶部23に登録された選択候補の中から他の設定値を管理者に選択させるだけで消費電力と快適性の調整を容易に行うことができる。
【0046】
ところで、空調運転させるための設定値は、管理者が条件を再入力して設定値を変更しない限り、
図6(a)に示したように設定温度は同じ値のままである。ただ、外気温は、
図6(d)に例示したように時間によって変化するので、これに応じて消費電力や快適性も変化することが容易に予想できる。
【0047】
そこで、外気温等時間の遷移に応じた変化に対応可能なように、例えば1日や就業時間等の所定時間長を複数の時間帯に分割し、設定値選択部13は、現在時刻を含む時間帯に応じて空調機7への設定温度を変化させることができるように、設定値候補の中から現在選択されている設定値とは異なる設定値を自動選択し、その選択した設定値で空調制御部14に空調制御させるようにしてもよい。
【0048】
空調制御させるパターンとして、
図6には(b),(c)という2つのパターンを例示した。
【0049】
図6(b)は、外気温の変化に合わせた設定値となるよう空調制御させるための設定温度の遷移を示した例である。なお、ここで用いる外気温は予測値である。設定値選択部13が外気温の変化に合わせた設定値となるよう現時間帯に対応した設定値を自動選択し、空調制御部14に空調制御させることで、部屋6を入退する際の急激な温度変化による影響(血圧の急変等)を抑えるようにしてもよい。
図6(b)の例だと、12時で22℃に設定されている場合、設定値選択部13は、15時になると設定温度がプラス2℃の24℃となる設定値を設定値候補の中から自動選択する。
【0050】
図6(c)は、
図6(b)とは逆に外気温と室温との温度差が付くよう空調制御させるための設定温度の遷移を示した例である。温度差が付くよう空調制御することで、空調機7が運転していることを印象づけ、空調の価値向上を図れるようにしてもよい。外気温と室温との温度差を付けるということは、冷房運転時に室温を低く設定することで冷房効果を感じさせたり、暖房運転時に室温を高く設定することで暖房効果を感じさせたりすることである。
【0051】
あるいは、設定値計算部11は1組の設定値候補のみを用意していたが、時間帯それぞれに対応した設定値候補を用意することによって複数の設定値候補の組を設定値候補記憶部23に登録する。この場合、設定値選択部13は、現在時刻を含む時間帯対応の設定値候補の組に切り替え、管理者に選択させるようにしてもよい。
【0052】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、消費電力の上下限値及び快適性指標値の上下限値の範囲全体(空調制御可能範囲41)の中から設定値が得られていた。ただ、管理者や利用者の必要とする空調設定の範囲(消費電力の範囲、快適性の範囲)が予めわかっていれば、空調設定の範囲外は設定値の選択候補として予め選択されないようにしてもよい。本実施の形態は、空調設定の範囲外の設定値は、空調制御部14による空調制御のために用いる設定値として選択されないようにしたことを特徴としている。
【0053】
図7は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。前述した実施の形態と同じ構成要素には、同じ符号を付け説明を適宜省略する。後述する実施の形態においても同様とする。
【0054】
本実施の形態における空調制御装置10は、設定値計算部11に範囲制限部114を設けた構成を有している。範囲制限部114は、制限手段として設けられ、予め設定された制限条件に従い、空調制御部14による空調機7の運転制御に用いる設定値の取り得る範囲を制限する。
【0055】
図8は、本実施の形態における設定値計算部11が算出した設定値を示した概念図であり、実施の形態1における
図4に対応する図である。例えば、管理者や利用者の必要とする空調設定として消費電力の範囲がRと制限されていたとする。実施の形態1では、制限範囲Rという制限条件が予め設定されていないので、空調制御可能範囲全体の中からパレート最適解(設定値)が得られていた。本実施の形態のように制限範囲Rが設定されている場合、範囲制限部114は、多目的最適化計算部113が求めるパレート最適解の範囲を制限範囲Rと制限する。この結果、
図8に例示したように、設定値計算部11は、制限範囲Rに含まれるパレート最適解(設定値)Sr1〜Srpを設定値候補として設定値候補記憶部23に登録する。
【0056】
以上説明した処理が、空調制御部14が消費電力と快適性を考慮した空調機7の運転制御を開始する前に実施されることになるが、以上のようにして空調制御の選択候補の設定値が設定値候補記憶部23に登録された後の処理は、実施の形態1と同じでよいので説明を省略する。
【0057】
本実施の形態によれば、制限範囲Rの範囲外のパレート最適解(設定値)が空調機7の運転制御のための設定値として選択されなくすることができる。
【0058】
実施の形態3.
図9は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。本実施の形態は、実施の形態2と同様に空調設定の範囲外の設定値は、空調制御部14による空調制御のために用いる設定値として選択されないようにしたことを特徴としているが、そのための実現手段として設定値抽出部15を設けている。本実施の形態における設定値抽出部15は、制限手段として設けられ、予め設定された制限条件に従い、空調制御部14による空調機7の運転制御に用いる設定値の取り得る範囲を制限する。
【0059】
実施の形態2では、制限範囲内の設定値のみを設定値候補記憶部23に登録するようにしたが、本実施の形態では、実施の形態1と同様に空調制御可能範囲の中から算出したパレート最適解(設定値)をそのまま設定値候補記憶部23に登録する。そして、設定値抽出部15は、設定値候補記憶部23に登録された設定値候補の中から管理者により選択しうる設定値候補を制限する。例えば、設定値選択部13が管理者により入力指定された条件に最も合致する設定値を選択する際、その選択候補を制限する。あるいは、設定値候補をリスト表示する際、リスト表示させる設定値を制限する。
【0060】
図10は、本実施の形態における設定値計算部11が算出した設定値を示した概念図であり、実施の形態1における
図4に対応する図である。
図10では、設定値計算部11は実施の形態1と同様に設定値S1〜Spを設定値候補記憶部23に登録するが、設定値抽出部15は、このうち制限範囲R内の設定値Sr1〜Srqのみを設定値選択部13による選択候補として設定値候補記憶部23から抽出することを示している。すなわち、設定値S1、S(q+1)〜Spは設定値選択部13に提供されない。
【0061】
本実施の形態によれば、制限範囲Rの範囲外のパレート最適解(設定値)が空調機7の運転制御のための設定値として選択されなくすることができる。
【0062】
実施の形態4.
上記各実施の形態においては、管理者のみの意向で設定値が選択されていた。本実施の形態では、部屋6の利用者の快適性に関する意向が空調制御に反映されるようにしたことを特徴としている。
【0063】
図11は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。本実施の形態は、実施の形態1に示した構成に快適度情報受付部16を追加した構成を有している。本実施の形態における快適度情報受付部16は、快適度情報受付手段として設けられ、部屋6の利用者により入力された当該利用者の快適度を示す快適度情報を受け付ける。
【0064】
快適度情報というのは、例えば利用者端末5に画面表示される入力画面(図示せず)から指定される、「暑い」あるいは「寒い」など部屋6の快適性を示す情報である。なお、快適度は「暑い」と「寒い」の2段階ではなく3以上のレベルで示されてもよい。利用者が快適度情報を入力すると、利用者端末5は、その入力された快適度情報を空調制御装置10へ送信する。空調制御装置10における快適度情報受付部16は、利用者端末5から送信されてくる快適度情報を収集すると、その収集した快適度情報を集計して利用者の快適性に関する要望を求める。利用者の要望は、例えば「暑い」、「寒い」などの快適度を数値化し、それらの平均値を算出するなどして求めた情報である。例えば設定温度を1ランク上げる、又は下げるなどの情報である。そして、その求めた要望を設定値選択部13に送る。
【0065】
設定値選択部13は、快適度情報受付部16から送られてくる利用者の要望を参照して、設定値を変更する。例えば、現在消費電力の低減を優先していることで快適性が低下している場合、部屋6が現在より快適となる設定値(PMVが0に近付く設定値)を、設定値候補記憶部23に記憶された設定値候補の中から自動選択して、空調制御部14へ送る。
【0066】
空調制御部14は、このようにして利用者からの快適度情報に基づき設定値選択部13により変更された設定値に基づき空調機7の運転を制御する。
【0067】
本実施の形態によれば、以上のようにして利用者の快適性に関する意向が反映された設定値が自動選択されるようにしたので、快適性をより向上させた空調制御を行うことができる。
【0068】
実施の形態5.
上記実施の形態4では、部屋6の利用者の快適性に関する意向が反映されるようにした。ただ、この場合、管理者の快適性に関する設定が無効にされてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、管理者と利用者双方の意向が反映されやすくするようにした。
【0069】
図12は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。本実施の形態は、実施の形態4に示した構成に要望提示部17を追加した構成を有している。本実施の形態における要望提示部17は、提示手段として設けられ、快適度情報受付部16により受け付けられた快適度情報に基づく要望を管理者に提示する。つまり、要望提示部17は、快適度情報受付部16により作成された利用者の快適性に関する要望を、設定値選択部13ではなく管理者に提示する。
【0070】
管理者は、設定値選択のための条件を入力する際、要望提示部17により提示された要望を参照する。そして、管理者としての立場に加えて、利用者の要望を考慮して条件を入力することになる。これにより、設定値選択部13は、要望を参照した管理者により指定された条件に最も合致する設定値を選択し、現在空調制御に用いられている設定値を、その選択した設定値で変更する。空調制御部14は、このようにして設定値選択部13により選択された設定値に基づき空調機7の運転を制御する。
【0071】
なお、本実施の形態における要望提示部17は、快適度情報受付部16により作成された要望を管理者に提示するようにしたが、快適度情報受付部16により受け付けられた快適度情報を受け取り、その快適度情報を利用者の要望として管理者に提示するようにしてもよい。
【0072】
実施の形態6.
上記各実施の形態では、部屋6の利用者に関する情報、例えば部屋6における各利用者の座席の位置情報等を参照してパレート最適解を求めている。ただ、部屋6の利用者に関する情報を参照していても、実際の在室者及び在室者数は考慮されていないため、例えば在室者数が少ないときでも必要以上に設定温度を上げていたり、あるいは下げていたりする場合が生じうる。そこで、本実施の形態においては、入退システムと連携して部屋6の在室者数、更に部屋6の在室者のパーソナルデータ(個人情報)を参照して、部屋6の快適性をより向上できるようにした。本実施の形態において用いる個人情報には、利用者の、空間の環境(温度、湿度、風速、輻射)に対する好みや体質等の温度に関する個人情報が含まれている。また、利用者の状態(代謝量・着衣量)に関する情報を含めてもよい。
【0073】
図13は、本実施の形態における空調制御装置10を示したブロック構成図である。本実施の形態は、実施の形態1に示した構成に入退情報取得部18を追加した構成を有している。本実施の形態における入退情報取得部18は、情報取得手段として設けられ、部屋6の入退者及び在室者の温度に関する個人情報を入退管理サーバ2から取得する。
【0074】
すなわち、入退管理サーバ2は、部屋6に入室した利用者及び部屋6から退室した利用者をリアルタイムに把握しているので、入退情報取得部18は、その情報を入退管理サーバ2から取得し、在室者の座席位置や在室者数を認識する。更に、在室者の温度に関する個人情報、例えば暑がり、寒がりなどの個人情報を入退管理サーバ2から取得する。
【0075】
そして、上記在室者に関する情報を入退情報取得部18から取得すると、設定値選択部13は、現在空調制御に用いられている設定値を、入退情報取得部18より取得された情報に基づき変更する。例えば、部屋の利用者としては、暑がり体質の方が寒がり体質より多くても、現時点で寒がり体質の方が多く在室している場合、設定値選択部13は、部屋6の設定温度を上げる設定値を設定値候補記憶部23に記憶された設定値候補の中から自動的に選択する。そして、空調制御部14は、設定値選択部13により選択された設定値に基づき空調機7の運転を制御する。
【0076】
本実施の形態によれば、実際の在室者の構成及び在室者の温度に関する個人情報を考慮して快適性をより向上させることができる。
【0077】
なお、上記各実施の形態において説明した構成は、適宜組み合わせて使用してもよい。