(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238886
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】新規な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20171120BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20171120BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20171120BHJP
A61K 8/03 20060101ALI20171120BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20171120BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
A61K8/02
A61K8/03
A61K8/365
A61K8/34
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-501584(P2014-501584)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-512349(P2014-512349A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012055451
(87)【国際公開番号】WO2012130863
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月23日
(31)【優先権主張番号】1105408.7
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】397009934
【氏名又は名称】グラクソ グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(72)【発明者】
【氏名】ブリスケ,カーリン マリア
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,マーク イェウアン
(72)【発明者】
【氏名】グラシア,ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】キング,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】リンドマン,ビョルン オロフ
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−506436(JP,A)
【文献】
特表平09−508143(JP,A)
【文献】
特表平06−505705(JP,A)
【文献】
特開2009−242346(JP,A)
【文献】
米国特許第03954962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/02
A61K 8/03
A61K 8/34
A61K 8/365
A61Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温以下で液体であり、体温で二相の曇った系を形成する、象牙質知覚過敏症の治療における使用のための口腔ケア組成物であって、組成物において38℃より高くない温度に曇点を有する水溶性の非イオン性ポリマーと、塩、湿潤剤及びそれらの混合物から選択される曇点変更剤とを含み、非イオン性ポリマーがヒドロキシプロピルセルロース(HPC)であり、非イオン性ポリマーが、組成物の0.1重量%〜10重量%の量で存在する、前記組成物。
【請求項2】
非イオン性ポリマーが、組成物において32℃〜38℃に曇点を有する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
曇点変更剤が塩である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
塩が、組成物の0.1重量%〜10重量%の量で存在する、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
塩が、組成物の0.1重量%〜5重量%の量で存在する、請求項3又は4に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
塩がクエン酸ナトリウムを含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
曇点変更剤が湿潤剤である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
湿潤剤が、組成物の1重量%〜40重量%の量で存在する、請求項7に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
湿潤剤が、組成物の2重量%〜10重量%の量で存在する、請求項7又は8に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
湿潤剤が、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール及びそれらの混合物から選択される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
湿潤剤がグリセリンを含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
ヒドロキシプロピルセルロースが、80,000〜370,000の範囲内の平均分子量を有するヒドロキシプロピルセルロースから選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
ヒドロキシプロピルセルロースが、140,000の平均分子量を有するヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項12に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
非イオン性ポリマーが、組成物の1重量%〜5重量%の量で存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性ポリマーを含む口腔ケア組成物、及びその象牙質知覚過敏症の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症はありふれているが、成人人口の18%〜42%に影響を与える疼痛を伴う状態であり、「他のいずれの種類の歯の欠陥又は病変にも帰することができない、典型的には熱、低温、揮発性、触覚性、浸透性、若しくは化学的刺激に暴露された象牙質から生じる短く鋭い疼痛」として定義されている(Int. Dent. J. 2002; 52: 367-375)。その主な原因は、保護エナメル層の欠損又は歯肉の後退に続いて象牙質が暴露されることに由来することが、一般に合意されている。
【0003】
ヒト象牙質の最も目立った形態学的な特徴は、その管状構造である。象牙細管は数マイクロメーターオーダーの直径を有し、歯髄を、エナメル質と象牙質の結合部とつなぐ。健常者では、これらの管は液体で満たされている。この歯液が、象牙質から下部のニューロンへの疼痛刺激の伝達において積極的な役割を果たしていると推定されている。動水力学説として知られるこの広く受け入れられている理論によれば、象牙細管が周囲の環境に暴露されたとき、外刺激が歯液の移動を引き起こし、これが次に歯髄中の機械受容器を刺激する。狭い管を通る液体の移動は、象牙芽細胞、歯髄ニューロン、さらには象牙芽細胞下(subdontoblastic)の血管をはじめとする管の基部近傍の細胞を刺激する。何人かの研究者が、液体の移動が歯髄神経からのカルシトニン遺伝子関連ペプチド放出をもたらし、これが局所的な神経性の炎症症状を発生させることを示している。
【0004】
象牙質知覚過敏症の治療のためには、二つの作用機構に基づく、二つのカテゴリーの療法が存在する。第一のカテゴリーである神経脱分極剤は、疼痛刺激の神経伝達を阻害することで機能する硝酸カリウム等の医薬品である。
【0005】
遮蔽剤として知られる第二のカテゴリーは、象牙細管の暴露された末端を物理的に塞ぎ、それにより歯液の移動を抑制し、かつ動水力学説によって説明されるせん断応力に伴う刺激を抑制することで機能する。
【0006】
遮蔽アプローチは、典型的に、象牙細管の中、又は上に沈着層を形成する、化学的若しくは物理的手段による歯の処置を含む。この層は機械的に管を遮蔽し、かつニューロンの刺激が達成されない程度まで、管の中の液体の移動を妨げるか又は制限する。遮蔽活性物質の例として、カルシウム塩、シュウ酸塩、第一スズ塩、ガラス、無機酸化粒子、例えばSiO
2、Al
2O
3、及びTiO
2、並びにポリマー、例えばメチルメタクリレートベースのワニス等が挙げられる。
【0007】
米国特許第5,270,031号(Block)は、脱感作作用を有する、水溶液中において一以上の荷電基を有することができる官能基を含む水溶性又は水膨潤性のポリマーに関する。かかるポリマーは、陰イオン性、陽イオン性、又は両性であり得る。陰イオン性官能基の一例は、ポリマー、例えばポリアクリル酸、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、メタクリル酸とアクリル酸のコポリマー、アルキルビニルエーテルとマレイン酸若しくはマレイン酸無水物のコポリマーにおいて見られるカルボキシレート基である。
【0008】
米国特許第5,885,551号(Block)は、アルギン酸又はアルギン酸塩を含む口腔ケア組成物の投与による象牙質知覚過敏症の治療法に関する。
【0009】
米国特許第6,096,292号(Block)は、脱感作剤としての超吸収性アクリルポリマーの使用に関する。
【0010】
米国特許第6,241,972号(Block)は、カルボン酸、ジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物等の親水性モノマー、並びに少なくとも8つの炭素原子を有するアルファオレフィン、その完全及び部分加水分解物、並びにその完全及び部分塩からなる疎水性モノマーの反復単位を有するコポリマーを含む組成物、並びにその象牙質知覚過敏症の治療における使用に関する。
【0011】
上記提案にも関わらず、象牙質知覚過敏症を軽減する代替治療が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,270,031号
【特許文献2】米国特許第5,885,551号
【特許文献3】米国特許第6,096,292号
【特許文献4】米国特許第6,241,972号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Int. Dent. J. 2002; 52: 367-375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、象牙質知覚過敏症を治療する(すなわち、妨げ、阻害し、及び/又は治療するのに役立つ)ための組成物の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の側面は、室温以下で液体であり、体温で二相の曇った系(cloudy system)を形成する、象牙質知覚過敏症の治療のための口腔ケア組成物であって、組成物において約39℃より高くない温度、好適には約32℃〜約38℃の温度に曇点を有する水溶性の非イオン性ポリマーを含む前記組成物を提供する。一実施形態では、非イオン性ポリマーはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0016】
象牙質知覚過敏症が、水溶液においてポリマーが口腔で接する温度以下に曇点を有する非イオン性ポリマーの水溶液によって軽減され得る事が見出された。いかなる理論によっても拘束されるものではないが、溶液が口に取り込まれた時に、非イオン性ポリマーが沈殿し、その後象牙細管を遮蔽すると考えられる。
【0017】
本発明の一側面では、組成物において約38℃より高くない温度に曇点を有する水溶性の非イオン性ポリマーを含み、室温以下で液体であり、体温で二相の曇った系を形成する、象牙質知覚過敏症の治療に有用な口腔ケア組成物を提供する。
【0018】
別の側面では、組成物において約38℃より高くない温度に曇点を有する水溶性の非イオン性ポリマーを含み、室温以下で液体であり、体温で二相の曇った系を形成する口腔ケア組成物を、それを必要とする個人に投与する事を含む、象牙質知覚過敏症の治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に従う組成物は、水溶性の非イオン性ポリマーを含み、ここで該ポリマーは組成物において口腔で接する温度以下に曇点を有する。本発明における使用のために好適な非イオン性ポリマーには、水溶性の非イオン性セルロース誘導体、例えば非イオン性の水溶性セルロースエーテル、例えばメチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、非イオン性のセルロース誘導体は、HPCを含む。重合度及び分子量の異なる、商業的に利用可能な幾つかの異なるグレードのHPCが存在する。約80,000〜約370,000、例えば約90,000〜約150,000の範囲内の平均分子量(M.W.)を有する好適なグレードのHPCが用いられ得る。好適な例として、商業的に利用可能なもの、例えばHercules Incorporated(Aqualon Division, Hercules Plaza, 1313 North Market Street, Wilmington, DE 19894-0001, 米国)から入手可能なKlucel GF(M.W.≒370,000)、Klucel JF(M.W.≒140,000)、Klucel LF(M.W. ≒95,000)、及びKlucel EF (M.W.≒80,000)が挙げられる。好適には本発明における使用のための非イオン性ポリマーは、組成物の0.1重量%〜10重量%、例えば1重量%〜5重量%の量で使用される。
【0021】
WPIアブストラクトアクセッション番号(WPI Abstract Accession No.)2000-518334/47及びJP2000178151Aは、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムから選択される一以上の塩、並びにヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びエチルヒドロキシエチルセルロースから選択される少なくとも一つのセルロースポリマーを含む口腔組成物を開示する。該組成物は、口腔の洗浄における使用のために開示されている。かかる組成物が体温で曇った相を示すこと、あるいはそれらが象牙質知覚過敏症の治療のために使用され得ることは、開示も示唆もされていない。
【0022】
EP 0558586 B1は、40℃より高くない曇点を有する水溶性の非イオン性セルロースエーテルを含む組成物を開示するが、かかる組成物は本発明の使用にとって好適ではない。EP 0558586 B1に従う組成物は、40℃より高くない、好適には35℃より高くない曇点を有する水溶性の非イオン性セルロースエーテル、荷電した界面活性剤、及び任意に添加剤を水中に含むことにより特徴づけられる。EP 0558586 B1の組成物は体温まで温められた時に、ゲルを形成し、粘度の増加を示す。EP 0558586 B1によれば、ゲルの起源は、組成物中の荷電した界面活性剤と組み合わされたポリマーの存在、及び、本来共同的であり、通常のミセル形成に類似するこの二つの間の強い疎水性相互作用にある。対照的に、本発明に従う組成物は、体温まで温められた時に、ゲルを形成せず、粘度の減少を示す。本発明に従う組成物は、荷電した界面活性剤を本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、荷電した界面活性剤が全く存在しないか、又は存在する場合には、体温まで温められた時に組成物のゲル化を引き起こすのには不十分な少ない量しか存在しないことを意味する。本発明に従う一実施形態では、組成物はいかなる荷電した界面活性剤も含まない。別の実施形態では、組成物中に少量の荷電した界面活性剤が許容され得、かかる界面活性剤の非イオン性ポリマーに対する比は、少なくとも1:40、例えば1:40〜1:100である。
【0023】
「曇点(Cloud Point(CP))」とは、非イオン性ポリマーの透明な水溶性が曇り、バルク相の分離が生じる温度を意味する。いかなる理論によっても拘束されるものではないが、相分離は、例えば温度が室温から体温まで上昇した時に生じ得るように、ポリマーと水の相互作用があまり好ましくないものとなった時に生じる。曇点は、非イオン性ポリマーの水溶液が曇るか又は濁る温度を観察することによって、視覚的に決定され得る。あるいは、相分離は粘度の低下をもたらすので、レオロジーの技術も曇点を決定するのに用いられ得る。例えば、0.3mm間隙を有する(蒸気トラップを有する)50mm直径のパラレルプレート、20/sのせん断速度、及び20℃〜45℃の温度勾配を利用するAnton-Paarの空気ベアリングレオメーターを用いる温度−粘度曲線を描くことによって、曇点を決定し得る。
【0024】
本発明に従う組成物は、室温で均一な液体の形態であるが、口腔体温、すなわち約37℃では組成物は相転移を起こし、一つの相が他の相に分散した二相の曇った系を形成する。室温以下で均一な液体の形態であり、体温で二相の曇った系の形態であるためには、本発明において使用される非イオン性ポリマーは、組成物において約39℃又は約38℃より高くないCPを有している必要がある。一実施形態では、非イオン性ポリマーは約32℃〜約38℃で曇点を示す。
【0025】
一側面では、本発明に従う組成物は曇点変更剤(cloud point modifying agent)を含む。曇点変更剤は、非イオン性ポリマーの固有のCPを所望の温度、例えば約45℃から約39℃以下に変更するために用いられ得る。「固有のCP」とは、単純な水溶液におけるCPを意味する。一実施形態では、曇点変更剤は固有のCPを約41℃から約32℃へ変更する。好適な曇点変更剤として、溶媒の質に影響を与える塩又は湿潤剤等の薬剤が挙げられる。
【0026】
本発明において使用するための好適な塩として、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウム並びにそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、曇点変更剤はクエン酸ナトリウムを含む。
【0027】
好適には塩は、組成物の0.1重量%〜10重量%の量で、典型的には0.5重量%〜5重量%で用いられ得る。一実施形態では、組成物の0.1重量%〜1重量%の量が用いられ得る。
【0028】
一側面では、本発明の組成物はさらに湿潤剤を含み得る。好適な湿潤剤として、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール、若しくはポリエチレングリコール、又はそれらの混合物から選択されるものが挙げられる。一実施形態では、湿潤剤はグリセリンを含む。好適には湿潤剤は、組成物の1重量%〜40重量%、例えば組成物の1重量%〜30重量%、典型的には組成物の2重量%〜15重量%、例えば組成物の2重量%〜10重量%の量で用いられ得る。
【0029】
本発明の組成物は、一以上の口腔に許容可能な担体又は賦形剤を含む。かかる担体及び賦形剤として、かかる目的の為に口腔ケア組成物の分野において慣習的に用いられているものから選択される適切な製剤化剤(formulating agent)、例えば研磨剤、界面活性剤、増粘剤、香味剤、甘味剤、乳白剤又は着色剤、pH緩衝剤、及び保存料が挙げられる。かかる剤の例は、EP 929287又はWO 6/013081に記載されている。
【0030】
本発明の口腔組成物は、典型的に口内洗浄液、スプレー、又は口腔トレーのための水溶液の形態で製剤化される。一実施形態では、口腔組成物は口内洗浄液の形態である。
【0031】
本発明に従う組成物は、成分を都合の良い任意の順に適切な相対量で混合し、必要であればpHを所望の値、例えば4.0〜9.5、例えば5.5〜9.0、例えば6.0〜8.0、又は6.5〜7.5となるように調整することによって、調製され得る。
【0032】
本発明はまた、本明細書で先に定義した組成物を有効量、それを必要とする個人に適用することを含む、象牙質知覚過敏症の治療方法を提供する。
【0033】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明される:
【実施例】
【0034】
実施例1
HPC溶液のレオロジー評価
以下の水溶液(処方1〜4)を調製した:
方法
粘度を、処方1〜4について、0.3mm間隙を有する(蒸気トラップを有する)50mm直径のパラレルプレート、20/sのせん断速度、及び最初の20℃〜30℃の静置期間(settling periood)に続いて、20℃〜45℃の温度勾配を用いるAnton-Paarの空気ベアリングレオメーターを用いて決定した。
【0035】
結果
HPCの水溶液の粘度に対する温度上昇の影響の結果を、以下の表1に示す。粘度に対する塩及び湿潤剤の添加の影響もまた示す。
【0036】
結論
ポリマーのみを含む溶液の粘度は、その曇点に達し、ポリマーの相転移に起因する大幅な低下が観察されるときである、約42.5℃になるまで温度の上昇と共にゆっくり減少する。他の処方は、曇点のシフト及びそれに対応するポリマーの沈殿をもたらす相転移の変化の結果として、より低い温度でこの粘度の低下を示す。
【0037】
実施例2
曇点の視覚による決定
以下のさらなる水溶液(処方5〜12)を調製した:
曇点の決定
曇点を、所定の温度で水浴におけるサンプルの平衡化によって決定した。サンプルを視覚的に検査し、サンプルが濁った温度を記録した。
【0038】
結果
結果を以下の表2に示す。
【0039】
結論
結果は、HPCを含まないか又はHPCのみを含む溶液と比較して、観察される曇点がより低いことを示す。これはある範囲のHPC濃度及び分子量で生じ、処方の成分を含むことの影響を実証する。
【0040】
実施例3
透水係数(Hydraulic Conductance)
サンプル溶液(処方5〜11)の透水係数(HC)を決定した。
【0041】
方法
透水係数の試験を、口腔における状態をシミュレーションするために、35〜36℃及び70%相対湿度で行った。サンプルを室温で塗布し、その後、象牙質ディスクの表面に接している状態で熱した。ベースライン測定後アール(Earles)溶液の象牙質ディスクへの流入が減少した。試験溶液で3回処置し、水ですすいだ。処置は、象牙質ディスクへの試験溶液の適用、及び1分間隔(5分間)での透水係数の再測定からなる。得られた平均値を、特定の試験溶液についての浸透性割合の低下を計算するのに用いた。
【0042】
結果
HCの結果を、以下の表3に示す。全てのサンプルを、3つの異なる象牙質ディスクにおいて3回測定した。平均透水係数を、各処置番号に対して計算し、3回目の処置の後の値を、HPCを含まない組成物と統計的に比較した。
【0043】
結果は、低減された曇点を有する全ての溶液において、それに応じて高いレベルで透水係数が減少し、対照とは有意に(p≦0.05)異なることを示す。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)室温以下で液体であり、体温で二相の曇った系(cloudy system)を形成する、象牙質知覚過敏症の治療における使用のための口腔ケア組成物であって、組成物において約38℃より高くない温度に曇点を有する水溶性の非イオン性ポリマーを含む前記組成物。
(2)非イオン性ポリマーが、組成物において32℃〜38℃に曇点を有する、(1)に記載の口腔ケア組成物。
(3)一以上の曇点変更剤をさらに含む、(1)又は(2)に記載の口腔ケア組成物。
(4)曇点変更剤が塩若しくは湿潤剤又はそれらの混合物を含む、(3)に記載の口腔ケア組成物。
(5)塩を含む、(4)に記載の口腔ケア組成物。
(6)塩が、組成物の0.1重量%〜10重量%の量で存在する、(5)に記載の口腔ケア組成物。
(7)塩が、組成物の0.1重量%〜5重量%の量で存在する、(4)〜(6)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(8)塩がクエン酸ナトリウムを含む、(4)〜(7)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(9)湿潤剤を含む、(4)に記載の口腔ケア組成物。
(10)湿潤剤が、組成物の1重量%〜40重量%の量で存在する、(9)に記載の口腔ケア組成物。
(11)湿潤剤が、組成物の2重量%〜10重量%の量で存在する、(9)又は(10)に記載の口腔ケア組成物。
(12)湿潤剤が、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール及びそれらの混合物から選択される、(9)〜(11)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(13)湿潤剤がグリセリンを含む、(9)〜(12)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(14)非イオン性ポリマーが、水溶性の非イオン性セルロースエーテルである、(1)〜(13)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(15)非イオン性セルロースエーテルが、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びそれらの混合物から選択される、(14)に記載の口腔ケア組成物。
(16)非イオン性セルロースエーテルがヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む、(15)に記載の口腔ケア組成物。
(17)ヒドロキシプロピルセルロースが、Klucel GF(M.W.≒370,000)、Klucel JF(M.W.≒140,000)、Klucel LF(M.W. ≒95,000)、及びKlucel EF (M.W.≒80,000)から選択される、(16)に記載の口腔ケア組成物。
(18)ヒドロキシプロピルセルロースがKlucel JFを含む、(17)に記載の口腔ケア組成物。
(19)非イオン性ポリマーが、組成物の0.1重量%〜10重量%の量で存在する、(1)〜(18)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
(20)非イオン性ポリマーが、組成物の1重量%〜5重量%の量で存在する、(1)〜(19)のいずれかに記載の口腔ケア組成物。