特許第6238889号(P6238889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238889insitu抑制を有する電気めっきによって金属粒子を成長させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238889
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】insitu抑制を有する電気めっきによって金属粒子を成長させる方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/50 20060101AFI20171120BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20171120BHJP
   C25D 5/34 20060101ALI20171120BHJP
   C25B 11/08 20060101ALI20171120BHJP
   C25B 11/03 20060101ALI20171120BHJP
   C25B 11/12 20060101ALI20171120BHJP
   C25D 5/18 20060101ALN20171120BHJP
   C25D 5/54 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   C25D3/50 101
   C25D7/00 R
   C25D5/34
   C25D7/00 Z
   C25B11/08
   C25B11/03
   C25B11/12
   !C25D5/18
   !C25D5/54
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-506822(P2014-506822)
(86)(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公表番号】特表2014-516389(P2014-516389A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】EP2012057087
(87)【国際公開番号】WO2012146520
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年3月31日
(31)【優先権主張番号】1153606
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(73)【特許権者】
【識別番号】513269756
【氏名又は名称】キング サウード ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】フォウダ−オ−ナナ、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ギレ、ニコラ
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−036897(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0202871(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/110246(WO,A2)
【文献】 米国特許第04183790(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02261398(EP,A1)
【文献】 特開2004−270028(JP,A)
【文献】 特開昭53−122633(JP,A)
【文献】 特開2009−001846(JP,A)
【文献】 特表2011−526655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩で電気めっきして金属粒子を電極の表面に形成する工程を含む、金属粒子をベースとした電気導電性触媒電極を製造するための方法において、
− 前記金属塩の電気めっきの工程が、前記金属粒子の表面上への高い吸収力を有し且つ前記金属塩の還元電位よりも高い酸化電位を有する、被酸化性のブロッキング化学種の存在下で行なわれ、
・ その結果、前記ブロッキング化学種が、前記金属塩の還元反応の間そのブロッキング力を保存し、
・ 前記電気導電性触媒電極を構成する形成された前記金属粒子の大きさを低減する工程と、
− 前記金属塩の平衡電位よりも大きい電位を前記ブロッキング化学種に印加し、前記種を酸化させて、前記ブロッキング化学種を脱着する工程と
を特徴とする方法であり、
前記金属が白金であり、
前記被酸化性のブロッキング化学種が、SOまたはNOまたはNOまたはNOまたはHSであり、
前記ブロッキング化学種を脱着する工程が、0.76VERHよりも大きい電位を印加することによって行なわれること
を特徴とする方法。
【請求項2】
金属塩で電気めっきして金属粒子を電極の表面に形成する工程を含む、金属粒子をベースとした電気導電性触媒電極を製造するための方法において、
− 前記金属塩の電気めっきの工程が、前記金属粒子の表面上への高い吸収力を有し且つ前記金属塩の還元電位よりも高い酸化電位を有する、被酸化性のブロッキング化学種の存在下で行なわれ、
・ その結果、前記ブロッキング化学種が、前記金属塩の還元反応の間そのブロッキング力を保存し、
・ 前記電気導電性触媒電極を構成する形成された前記金属粒子の大きさを低減する工程と、
− 前記金属塩の平衡電位よりも大きい電位を前記ブロッキング化学種に印加し、前記種を酸化させて、前記ブロッキング化学種を脱着する工程と

を特徴とする方法であり、
前記金属が白金であり、
電着が前記ブロッキング化学種SOの存在下で行なわれ、
前記電着が、
− HPtClの酸性溶液、
− 硫酸、
− NaSOの存在下で行なわれることを特徴とする電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項3】
前記ブロッキング化学種を脱着する工程が、酸性溶液中のボルトアンペアメトリ掃引によって行なわれることを特徴とする、請求項に記載の電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項4】
電着が多孔性電極上で行なわれることを特徴とする、請求項1または3に記載の電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項5】
前記多孔性電極の表面上への微孔性層の堆積を含むことも特徴とする、請求項に記載の電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項6】
前記電着の前に前記電極上の親水性表面の製造を含むことを特徴とする、請求項またはに記載の電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項7】
前記表面が、カーボンブラックおよびアルコールをベースとしたインクを堆積することによって親水性にされることを特徴とする、請求項に記載の電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【請求項8】
金属塩で電気めっきして金属粒子を電極の表面に形成する工程を含む、金属粒子をベースとした電気導電性触媒電極を製造するための方法において、
− 前記金属塩の電気めっきの工程が、前記金属粒子の表面上への高い吸収力を有し且つ前記金属塩の還元電位よりも高い酸化電位を有するブロッキング化学種の存在下で行なわれ、
・ その結果、前記ブロッキング化学種が、前記金属塩の還元反応の間そのブロッキング力を保存し、
・ 前記電気導電性触媒電極を構成する形成された前記金属粒子の大きさを低減する工程と、
− 前記ブロッキング化学種の脱着の工程と
を特徴とする方法であり、
前記金属が白金であり、
電着が前記ブロッキング化学種SOの存在下で行なわれ、
前記電着が、
− HPtClの酸性溶液、
− 硫酸、
− NaSOの存在下で行なわれることを特徴とする電気導電性触媒電極を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、特に、燃料電池の電極の形成のためにまたはその有効電極表面が大きくなければならない電気化学反応の大部分(水の電気合成、電気分解、電気化学センサ、スーパーキャパシタ等)において使用される任意のタイプの電極のために使用される、金属粒子を電気化学的に堆積させるための方法の技術分野である。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜低温燃料電池(PEMFC)の開発に限界を与えているものの1つは、酸素還元反応(ORR)および水素酸化反応(HOR)を触媒するために十分に活性である材料を使用する必要性にある。
【0003】
現在、これらの2つの反応のために見出されている最良の触媒は、白金およびそれと遷移金属(Ru、Ni、Co等)との合金の一部である。一般的な用途に適合している運転条件下で最適な性能を得るために、電極に比較的多量の貴金属(0.1〜0.3mg/cm)を充填することが現在は必要である。
【0004】
燃料電池において使用された貴金属のみのコストは現在、スタックのコストの50%および燃料電池システムの全コストの20%〜25%であると推定される。
【0005】
従って、電池の性能を一定に保ったまま同時に白金の量を低減することは、燃料電池のカソードのための触媒の研究開発の際に主要な課題である。この問題に際して、方法の1つは白金をその活性が最大になる領域にだけ置くことである。同時に関与する電気化学反応は試薬ガス、電子およびプロトンを要するので、これらの領域は少なくとも1つのイオン接触および1つの電気的接触を有する。触媒部位が十分に有効であるために、それはまた、試薬ガス(水素または酸素)に接触可能である必要がある。これらの2つの基準を満たす選択肢の1つは、電気めっきとしても公知の電気化学堆積物を使用することを含む。方法は、金属塩(イオンの形態の白金、例えば、
【化1】
)を、堆積物のための基材として機能する電極上に堆積された金属粒子に還元するためにガルバノ信号または制御電位の信号を印加することを含む。
【0006】
白金の堆積のための反応収支は以下のように記載される。
【化2】
【0007】
Vilimbi N.R.K.、Anderson E.B.、およびTaylor E.J.の米国特許第5084144号明細書、またはE.J.Taylor、E.B.Anderson、N.R.K.Vilambi、Journal of the Electrochemical Society 1992、139L45−L46.に記載された研究によって立証されているように、当該技術は多年にわたり使用されているが、電気めっきによって作製されたこれらの電極の性能を改良する方法は研究され続けている。当該主題に関する主要な研究のなかでも、以下の論文:S.M.Ayyadurai、Y.S.Choi、P.Ganesan、S.P.Kumaraguru、B.N.Popov、Journal of the Electrochemical Society2007、154 B1063−B1073、H.Kim、B.N.Popov、Electrochemical and Solid State Letters 2004、7A71−A74を挙げることができ、そこにおいて0.32mgPt/cmが充填された電極は、大気圧下で80℃においてH−Oを使用して電池を作動させることによって700mVで900mA/cmの電流密度を達成することを可能にした。
【0008】
しかしながら、多くの場合、これらの電極の粒子の大きさは、標準的な化学的方法によって作製された電極の粒子の大きさの最大でも10倍の粗さであると思われる。この現象は触媒活性には非常に有害であり、その理由は、関与する反応が金属粒子の表面において生じる反応であり、一定の充填量において、これらの粒子の展開された表面は、粒子の直径が大きくなればなるほど比例して小さくなるからである。したがって、粒子が非常に粗くなる場合、粒子の最適な配置に伴なう効率の利得を失うリスクがある。
【0009】
したがって、電気めっき技術の最適化の主な目的の1つは、粒子の大きさを化学的または物理的合成によって得られた直径と同等の直径、すなわち10nm未満に低減するように操作することである。明らかに、先行技術は、その大きさが数ナノメートルのオーダーである粒子で電気めっきによって電極が作製されている研究を特色としているが、しかしながら、多くの場合、充填量は非常に低く、燃料電池のカソードとして使用可能でない(150〜200μgPt/cm程度の充填量が最適な機能のために必要である)。粒子の大きさを低減する別の方法は、金属イオンの拡散を抑制するために粘性剤を電解槽に添加することに存し、それは以下の論文に記載されているように粒子の大きさをかなり(5〜30nmだけ)低減する: Ayyadurai,Y.S.Choi、P.Ganesan、S.P.Kumaraguru、B.N.Popov、Journal of the Electrochemical Society 2007、154 B1063−B1073またはW.Zhu,D.Ku、J.P.Zheng、Z.LIANG、B.Wang、C.Zhang、S.Walsh、G.Au、E.J.Plichta、Electrochimica Acta 2010、55 2555−2560。
【0010】
この選択肢は非常に興味深い結果をもたらすが、これらの粘性剤(グリセロールまたはエチレングリコール)を電極から清浄化する問題を生じる。具体的には、電極の拡散層に高濃度でそれらが存在することは、電気めっきの間のPtイオンの拡散を阻止するだけでなく、活性部位に酸素が達するのも阻止し、したがって、電池の性能を実質的に低下させる一因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の理由から、以上を背景として、本発明の一主題は金属粒子の大きさを制限するための新規な解決法である。それは、粒子の成長を制限すると共に電気めっきの間に発芽相(germination phases)を助長させるために金属上に容易に且つ強く吸着される性質を有する化学種を使用することを含む。さらに、金属の表面上に吸着されたこの化学種を(例えば電気化学酸化によって)容易に脱着させることができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より具体的には、本発明の一主題は、金属塩で電気めっきして金属粒子を電極の表面に形成する工程を含む、金属粒子をベースとした電気導電性触媒電極を製造するための方法方法において、
− 金属塩の電気めっきの工程が、前記金属粒子の表面上への高い吸収力を有し且つ前記金属塩の還元電位よりも高い酸化電位を有するブロッキング化学種の存在下で行なわれ、
・ その結果、ブロッキング化学種が、前記金属塩の還元反応の間そのブロッキング力を保存し、
・ 前記電気導電性触媒電極を構成する形成された金属粒子の大きさを低減する工程と、
− ブロッキング化学種の脱着の工程と
を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
強い吸収力は、Ptの印加された電圧Eに対してボルタモグラムiのピークが存在しないこと、別の種による白金吸着部位のブロッキングを示すボルタモグラムのこれらのピークが存在しないことを特徴とする場合があり、一般に使用される用語「ボルタモグラム」は、用語「ボルトアンペログラム」に相当する。
【0014】
ボルタメトリは、2つの特定電極の間の電位差の制御された変化の影響下で溶液中に存在している化合物の還元または酸化から生じた電流フローの測定に基づいた電気分析法であることが思い出される。それにより、多数の化合物を同定および定量的に測定することと、これらの化合物を含む化学反応を調べることとが可能になる。
【0015】
本発明の一変形形態によると、金属は白金である。
【0016】
本発明の一変形形態によると、電着はSOブロッキング化学種の存在下で行なわれる。
【0017】
本発明の一変形形態によると、電着は、
− HPtCl酸性溶液、
− 硫酸、
− NaSOの存在下で行なわれる。
【0018】
本発明の一変形形態によると、電着はNO、NO、NOなどのニトロブロッキング化学種の存在下で行なわれる。
【0019】
本発明の一変形形態によると、電着はHSなどの硫黄化合物などのタイプのブロッキング化学種の存在下で行なわれる。
【0020】
本発明の一変形形態によると、ブロッキング化学種の脱着は前記種の酸化によって行なわれる。
【0021】
本発明の一変形形態によると、酸化工程は、堆積される金属の平衡電位に対して十分に高い、典型的に約0.76VERHより大きい電位を印加することによって行なわれる。具体的には、平衡電位が、
【数1】
である白金酸塩からPtが堆積されるこの場合、ブロッキング種の選択に関する条件は、その酸化電位が0.76VERHより大きくなければならない。
【0022】
本発明の一変形形態によると、酸化工程は酸性溶液中のボルトアンペアメトリ掃引(voltamperometric sweep)によって行なわれる。
【0023】
本発明の一変形形態によると、酸化工程は熱処理によって行なわれる。
【0024】
本発明の一変形形態によると、電着工程は多孔性電極上で行なわれる。
【0025】
本発明の一変形形態によると、本方法はまた、多孔性電極の表面上への微孔性層の堆積を含む。
【0026】
本発明の一変形形態によると、本方法は、電着の前に電極上の親水性表面の製造を含む。
【0027】
本発明の一変形形態によると、表面は、カーボンブラック、グリセロールおよびイソプロパノール中のNafionの懸濁液をベースとしたインクを堆積することによって親水性にされる。
【0028】
したがって、本発明の方法によって、電極、特に燃料電池の電極の作製の間、粒子の大きさを低減することができる。当該方法は、電気めっきによって第1の種子を形成した後に金属上へのその良好な吸収性質で知られている化学種を使用する。これらの種子は、成長に対してはそれほど有利ではないが新しい金属粒子の形成を助長する部位になる。
【0029】
したがって、本発明の方法は特に以下の利点を有する。
− 粒子の大きさ。基本的には成長抑制種の量および吸着力だけが粒子の大きさに影響を与えるはずであるので、これは理論においては金属の充填とは関わりがないため。
−特に簡単な酸化によってブロッキング種を容易に除去できること。これは、Pt上への水素の吸着および脱着を示すPt電極の電気化学的特徴に関して固有領域に相当する表面の0.05V〜0.3VERHの間の増加をモニタすることにより電極の表面がブロッキングガスを全く含有しないかどうかin situ観察することによって行なわれる。Eに対してボルタモグラムiにこれらのピークが存在しないことは、サイクルを繰り返した後で別の種による白金の吸着部位のブロッキングを示す。
− 燃料電池の文脈において、そして粘性液体の使用が触媒効果に強く影響を与える場合がある先行技術において行なわれているものとは逆に、ガス種を使用することによって酸素の還元のために同様に関与させられる部位に達することができること。
【0030】
本発明は、非限定的な方法でおよび添付した図面によって与えられる、以下の説明を読むとより明確に理解され、その他の利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ブロッキング剤を用いないHPtClの溶液のボルタメトリ曲線およびブロッキング剤(SO)を用いる0.5MのHSO溶液中のPtのボルタモグラムを示す。
図2a-d】本発明の方法の実施例の様々な工程を示す。
図3】印加されたパルス化信号に対して、時間の関数として測定された電圧の曲線を示す。
図4】SOの酸化が白金の電気化学応答に与える効果を示す。
図5】電解槽中でブロッキング化学種SOを用いずにおよび用いて得られたPt粒子の大きさを示す。
図6】ブロッキング化学種SOを用いておよび用いずに電気めっきによって得られた電極のボルタメトリ曲線の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般的には、本発明の方法は、堆積される種とブロッキング化学種との間の電位の選択を必要とする。堆積される金属は、ブロッキング化学種の酸化電位よりも低い還元電位を有さなければならない。SOと比較して、他のガスが白金の場合のこの役割を果たすことができる場合がある。
【0033】
これらの中でも、Jean St−Pierre、Nengyou Jia、Reza Rahmaniによる論文、Journal of The Electrochemical Society,2008、155、4、B315−B32に記載されているように、NO、NO、NOなどのニトロ種が特に挙げられてもよく、それらは0.9VERHを超える電位において酸化される。
【0034】
同様に、R.Mohtadi、W.−k.Lee、S.Cowan、J.W.Van Zee、Mahesh Murthyによる論文、Electrochemical and Solid−State Letters、2003、6、12、A272−A274に記載されているようにその酸化電位が0.8VERHより大きい硫化水素(HS)などの硫黄化合物もまた、電気めっきを行なう間の白金粒子の分散体の別の選択肢となる場合がある。
【0035】
Yannick Garsanyらによる論文“Impact of Sulfur Dioxide on the Performance of the PEMFC Cathodes”ECS Transactions、3(1)685−694(2006)DOI:10.1149/1.2356189]またはJeremy J. Pietronらによる論文“Impact of Sulfur Dioxide on the performance of PEMFC cathode”ECS Transactions、1(8)103−109(2006);DOI:10.1149/1.2214547またはJ.Fuらによる論文/Journal of Power Sources 187(2009)32−38に記載されているように、二酸化硫黄(SO)は、1に近い白金吸着部位の回復度を有し、白金上に室温において不可逆的に吸着されることが知られていることを本出願人は明記する。
【0036】
同様に、硫化水素(HS)もまた、白金の表面上に不可逆的に吸着され、したがってその表面において反応機構をブロックする化合物であることが知られている。したがって、R.Mohtadiらによる論文/Applied Catalysis B: Environmental 56(2005)37−42]に記載されているように50℃において測定された白金のHS吸着反応速度定数(kPH2S)は、0.0025min−1程度であり、活性化エネルギーは28kJ.モル−1程度である。吸着されたHSは50℃において0.98V超で酸化される。
【0037】
Jean Sait−Pierreらによる論文“PEMFC Contamination Model: Competitive Adsorption Demonstrated with NO”Journal of The Electrochemical Society、155 4 B315−B320(2008)に記載されているように酸化窒素NO、NOおよびNOもまた場合によっては興味深く、高い電位において酸化されることが知られている。
【0038】
J.M.Mooreら“The effects of battlefield contaminants on PEMFC performance”Journal of Power Sources 85 2000 254−260に記載された、燃料電池の主な汚染物質に関するJ.M.Mooreらによる研究は使用されてもよい汚染物質化合物の考え方を提起する。
− COは、空気中で20ppmで白金吸着部位のほとんど完全なブロッキング(96%)を可能にする。
− 酸化窒素については、たった400ppbで全ての吸着部位の固定化が得られる。
− 二酸化硫黄については、同じ結果を得るために500ppbが必要である。
− プロパンもまた重要であり得、90ppmで当該部位を全てブロッキングする。
【0039】
【表1】
【0040】
選択されたブロッキング化学種に応じて、ブロッキング部位と成長部位とが異なっていてもよく、それは異なった形状の粒子をもたらす場合がある。したがって、ブロッキング化学種の関数として所望の触媒の適用のために分布を改良することおよび金属粒子の大きさを制御することが可能になる。
【0041】
COが白金に対して十分でない場合、0.7VERH未満の還元電位を有する、とりわけ銅、ニッケルまたはスズなどの他の金属が有利であると判明する場合があることにさらに留意すべきである。
【実施例】
【0042】
本発明の方法の実施の実施例
電気化学的堆積が商用拡散層(Sigracet(商標)製のSGL“Gas Diffusion Layer”GDL)などの多孔性炭素支持体上の電気めっきセル内で行われる。電気めっきセルは、その上に堆積が行われる作用電極から1cm離れたタンタルフォーム対向電極を含む。
【0043】
Ag/AgCl電極が参照電極として使用される。電解槽は、0.5Mの硫酸中に希釈された20mMの白金酸HPtCl溶液から構成される。以下の反応によって飽和SO溶液を得るために3.75gのNaSOが電解槽に添加される。
【化3】
【0044】
当該方法の新規性は、抑制性ブロッキング化学種の選択にある。具体的には、金属粒子を効率的に清浄化できるように容易に被酸化性であることに加えて、このガスの酸化電位は、
【化4】
イオンのPtへの還元電位より絶対に大きくなければならない。この条件が満たされない場合、抑制性ガスは白金イオンの還元が始まる前に酸化され、その場合、ガスのブロッキング効果が生じないことがあり得る。
【0045】
図1は、この方法において二酸化硫黄の選択の妥当性を示す。具体的には、曲線C1aによって示されるように、以下の反応の存在下でSO
【化5】
への酸化電位が1VERH(略語ERHは参照電極を意味する)において生じ、それはPtイオンの還元電位よりもかなり高い(曲線C1a)ことが明らかに見られる。
【化6】
【0046】
曲線C1bは、種SOの存在しない場合のHPtClの20mM溶液のボルタメトリによる測定の変化を示す。
【0047】
従って、SOの汚染物質効果は白金イオンの還元の間も影響されない。
【0048】
例として、本発明の方法の実施例の様々な工程が図2a、2b、2cおよび2dに概略的に示される。
【0049】
多孔性炭素拡散層Cであり得る電極から出発して、微孔性層Cが堆積され、その多孔度は、想定された用途、この実施例においては燃料電池の層に適合される。この微孔性層は典型的に、バインダーと炭素粉末とを含んでもよいが、疎水性であるという欠点を有する。次に、図2aに示されるようにインクタイプの層Cを堆積させて、表面処理を実施して前記層を親水性にする。
【0050】
最後に、25cmの商用拡散層SGLであってもよい第1の拡散層Cを処理して表面を親水性にする。図2bに示されるように、この処理は噴霧であり、インクCの様々な成分の質量比は以下の通りである:カーボンブラック(CB)、Nafion、イソプロパノールおよびグリセロール、それぞれについて1/0.5/45/1。次に、この堆積物を30分間80℃において溶剤を全て蒸発させるために炉内に置く。
【0051】
次に、図2cに示されるようにPtが電気化学的に堆積され、Pt粒子の層C’を形成する。
【0052】
図3に示されるようにパルス化信号で電流を制御することによって、前述の電解槽内で堆積が行われる。
【0053】
信号は、パラメータが以下の通りである「パルス化」電流を印加することを含む。
pcは、パルスの間に印加された電流:100mA/cmである。
θonはパルス時間であり、10msに等しい。
θoffは2つのパルスの間の時間:180msである。
peaksはパルス数であり、この実施例においてそれは24である。
【0054】
ピーク数が達せられると、信号は停止され、システムを平衡状態に戻す。この緩和時間の間、
【化7】
濃度は電極の領域において0でない値に戻る。θDTと記載されたこの緩和時間は45秒である。
【0055】
loosと記載されたこれらの信号の繰り返し(パルス化信号+緩和時間)は10である。
【0056】
図3aは、パルス化信号とその後の緩和時間の図である。このガルバノ信号に対する電圧応答が図3bに示され、そこにおいて電圧のそれぞれの降下が信号(パルス化電流)に相当し、電圧のそれぞれのジャンプが、パルス化信号が停止される時間(緩和時間)に相当する。
【0057】
様々なパラメータの値がパラメトリック分析の後におよび同じくファラデーの法則の関数として決められる。
【数2】
【0058】
粒子の大きさを低減するために、2つの堆積の間に1mlの親水性インクを噴霧することによって、堆積信号を2回印加してもよい。
【0059】
したがって、これは0.48C/cmの充填量を使用することになり、それは0.24mgPt/cmの白金の理論充填量になる。
【0060】
Pt堆積物が拡散層の表面に形成される時にSOによる電解質の飽和を仮定すると、白金上のその吸着力で知られている二酸化硫黄が、このように形成された金属粒子に付着し、層C’の形成をもたらす。Ptの成長はSOで完全に覆われた白金種子の表面において阻止されるので、これは白金粒子の分布を大きくする。
【0061】
酸素還元の触媒作用のために好ましくないSOのこの抑制性は、電気めっきによって調製された金属粒子のより良い分布のための利点になる。
【0062】
堆積が終了すると、可能な限り大きい触媒表面を得るために、且つ図2dに示されるように改良された層C’’を形成するために利用可能なPtの全表面を回復させるためにSOが酸化される必要がある。
【0063】
SOの酸化は、窒素などの不活性ガスで飽和された0.5Mの硫酸溶液中で−50mVERH〜1400mVERHの間で20mV/sにおいて簡単なボルトアンペアメトリ掃引によって行なわれる。数サイクル後、Eに対して信号iは安定し、Ptの電気化学的特徴が明らかに観察可能である。次に、二酸化硫黄は図4に示されるように0.5MのHSO溶液中で完全に硫酸塩に酸化されると考えられる。拡散層の表面においてのPt粒子の存在は、活性層中に存在している微量のグリセロールを除去するために次いで熱処理を受ける必要がある電極を得ることを可能にする。曲線C4aは第1のサイクルに関し、図C4bは予備吸着されたSOを完全に除去するための最終サイクルに関し、したがって、Pt上への水素の吸着および脱着を示すPt電極の電気化学的特徴に関して固有領域に相当する表面Hupdの0.05V〜0.3VERHの間の増加をモニタすることができることを示す。Eに対してボルタモグラムiのこれらのピークが存在しないことは、サイクルを繰り返した後で別の種による白金の吸着部位のブロッキングを示す。図5に示されるように、ブロッキング化学種SOが存在するおよび存在しない堆積方法を比較することによって、粒子の平均の大きさの1/8への低下が観察される。従って、等価電荷において(電荷はファラデーの法則から推定され、同じクーロン電荷の同じ条件下で、同じPt充填量が得られると考えられる)、しかしより小さな粒子の大きさによって、図6において観察できるように、活性表面(グレーの領域)はより大きくなる。曲線C6aは、ブロッキング種を使用して行なわれた堆積に関し、曲線C6bは、ブロッキング種を使用せずに行なわれた堆積に関する。面積AC6aおよびAC6bは所与のX軸に対してこのように形成された金属粒子の大きさを表わし、面積が大きくなればなるほど、粒子の大きさが小さくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6