特許第6238895号(P6238895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238895
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】温度制御機能を有するコロナ点火器
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/16 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H01T13/16
【請求項の数】34
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-526270(P2014-526270)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-524647(P2014-524647A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012051553
(87)【国際公開番号】WO2013028603
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/525,379
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506146389
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・イグニション・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL IGNITION COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バローズ,ジョン・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】リコフスキー,ジェイムズ・ディ
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146636(JP,A)
【文献】 特開2006−156110(JP,A)
【文献】 特開平07−037672(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/081153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電(22)をもたらすためのコロナ点火器(20)であって、
電極末端部(34)から電極発火端部(36)へ長手方向に延在する中央電極(24)を備え、
前記中央電極(24)は、クラッド材(32)によって囲まれるコア材(30)を含み、前記中央電極(24)の前記材料(30,32)の各々は、熱伝導性を有し、前記コア材(30)の前記熱伝導性は、前記クラッド材(32)の前記熱伝導性よりも高く、コロナ点火器(20)はさらに、
前記中央電極(24)のまわりに配置される電気絶縁性材料から形成される絶縁体(26)と、
前記絶縁体(26)のまわりに配置される導電性材料から形成されるシェル(28)とを備え、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は、前記電極末端部(34)に配置され、
前記中央電極(24)は、前記電極末端部(34)から前記電極発火端部(36)へ長手方向に延在する電極長さ(l)を示し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は、前記電極末端部(34)と前記電極発火端部(36)との間で長手方向に延在するコア長さ(l)を示し、
前記コア材(30)の前記コア長さ(l)は前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の90%以上であり
前記コア材(30)の前記コア長さ(l)の少なくとも97%は前記絶縁体(26)によって囲まれる、コロナ点火器。
【請求項2】
前記コア材(30)は、前記クラッド材(32)によって前記電極発火端部(36)から封止される、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項3】
前記絶縁体(26)は、前記シェル(28)に面する絶縁体外表面(54)と前記中央電極(24)に面する絶縁体内表面(40)とを有し、前記絶縁体外表面(54)と前記
絶縁体内表面(40)との間は絶縁体厚さ(t)を示し、
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は、前記絶縁体内表面(40)に面するクラッド外表面(38)とコア材(30)に面するクラッド内表面(42)とを有し、前記クラッド外表面(38)と前記クラッド内表面(42)との間はクラッド厚さ(tcl)を示し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は、前記クラッド内表面(42)に面するコア外表面(44)を有し、前記コア外表面(44)はコア直径(D)を示し、
前記クラッド厚さ(tcl)は前記絶縁体厚さ(t)の5%以上であり、前記コア直径(D)は前記絶縁体厚さ(t)の30%以上である、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項4】
前記シェル(28)は前記絶縁体(26)に面するシェル内表面(72)を有し、前記シェル内表面(72)はシェル直径(D)を示し、
前記絶縁体厚さ(t)は前記シェル直径(D)の20%以上である、請求項3に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項5】
前記絶縁体厚さ(t)は2.5mmから3.4mmであり、前記クラッド厚さ(tcl)は0.25mmから0.35mmであり、前記コア直径(D)は1.4mmから1.7mmである、請求項3に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項6】
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は前記絶縁体(26)に面するクラッド外表面(38)を有し、前記クラッド外表面(38)はクラッド直径(Dcl)を示し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は前記クラッド内表面(42)に面するコア外表面(44)を有し、前記コア外表面(44)はコア直径(D)を示し、
前記コア直径(D)は前記クラッド直径(Dcl)の65%以上である、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項7】
前記中央電極(24)は前記電極末端部(34)から前記電極発火端部(36)へ延在する電極長さ(l)を示し、
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも40%は上部分(46)を形成し、前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも40%は底部分(48)を形成し、
前記上部分(46)は前記電極末端部(34)から前記底部分(48)へ延在し、
前記底部分(48)は前記クラッド材(32)によって囲まれる前記コア材(30)を含み、
前記上部分(46)は全体が前記コア材(30)から構成される、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項8】
前記中央電極(24)は前記コア材(30)で満たされた前記クラッド材(32)から形成される管を含む、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項9】
前記シェル(28)は、シェル上端(58)からシェル下方端(70)へ長手方向に延在し、
前記絶縁体(26)は、絶縁体外径(Di1)を示す絶縁体外表面(54)を有し、絶縁体上端(50)から絶縁体先端(52)へ長手方向に延在し、
前記絶縁体(26)は、前記シェル上端(58)から前記絶縁体上端(50)へ外側に延在する絶縁体第1領域(56)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体中部領域(60)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体第2領域(62)を含み、
前記絶縁体中部領域(60)の前記絶縁体外径(Di1)は、前記絶縁体第1領域(56)および前記絶縁体第2領域(62)の前記絶縁体外径(Di1)よりも大きく、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)と前記絶縁体中部領域(60)との間に絶縁体上方ショルダー部(64)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)と前記絶縁体第2領域(62)との間に絶縁体下方ショルダー部(66)を含み、
前記シェル(28)は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)、前記絶縁体中部領域(60)、および前記絶縁体上方ショルダー部(64)を囲んで前記シェル(28)を前記絶縁体(26)に固定し、
前記中央電極(24)は、前記電極末端部(34)から前記電極発火端部(36)へ延在する電極長さ(l)を示し、
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも80%は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)と前記絶縁体先端(52)との間に配置される、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項10】
前記絶縁体(26)と前記シェル(28)との間に配置される一対のガスケット(68)をさらに備え、前記ガスケット(68)の一方は前記絶縁体上方ショルダー部(64)に沿って配置され、他方は前記絶縁体下方ショルダー部(66)に沿って配置される、請求項9に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項11】
前記コア材(30)は銅または銅合金から構成され、前記クラッド材(32)はニッケルまたはニッケル合金から構成される、請求項1に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項12】
コロナ放電(22)をもたらすためのコロナ点火器(20)であって、
電極末端部(34)から電極発火端部(36)へ長手方向に延在する電極長さ(l)を有する中央電極(24)を備え、
前記中央電極(24)は、クラッド材(32)によって囲まれるコア材(30)を含み、前記中央電極(24)の前記材料(30,32)の各々は熱伝導性を有し、前記コア材(30)の前記熱伝導性は前記クラッド材(32)の前記熱伝導性よりも高く、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は、前記電極末端部(34)と前記電極発火端部(36)との間で長手方向に延在するコア長さ(l)を有し、コロナ点火器はさらに、
前記中央電極(24)のまわりに配置され、絶縁体上端(50)から絶縁体先端(52)へ長手方向に延在する電気絶縁性材料から形成される絶縁体(26)と、
前記絶縁体(26)のまわりに配置される導電性材料から形成されるシェル(28)とを備え、
前記コア材(30)の前記コア長さ(l)は前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の90%以上であり、前記コア材(30)の前記コア長さ(l)の少なくとも97%が前記絶縁体(26)に囲まれている、コロナ点火器。
【請求項13】
前記コア材(30)は、前記クラッド材(32)によって前記電極発火端部(36)から封止される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項14】
前記絶縁体(26)は、前記シェル(28)に面する絶縁体外表面(54)と前記中央電極(24)に面する絶縁体内表面(40)とを有し、前記絶縁体外表面(54)と前記絶縁体内表面(40)との間は絶縁体厚さ(t)を示し、
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は、前記絶縁体内表面(40)に面するクラッド外表面(38)と前記コア材(30)に面するクラッド内表面(42)とを有し、前記クラッド外表面(38)と前記クラッド内表面(42)との間はクラッド厚さ(tcl)を示し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は、前記クラッド内表面(42)に面するコア外表面(44)を有し、前記コア外表面(44)はコア直径(D)を示し、
前記クラッド厚さ(tcl)は前記絶縁体厚さ(t)の5%以上であり、前記コア直径(D)は前記絶縁体厚さ(t)の30%以上である、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項15】
前記シェル(28)は前記絶縁体(26)に面するシェル内表面(72)を有し、前記シェル内表面(72)はシェル直径(D)を示し、
前記絶縁体厚さ(t)は前記シェル直径(D)の20%以上である、請求項14に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項16】
前記絶縁体厚さ(t)は2.5mmから3.4mmであり、前記クラッド厚さ(tcl)は0.25mmから0.35mmであり、前記コア直径(D)は1.4mmから1.7mmである、請求項14に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項17】
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は前記絶縁体(26)に面するクラッド外表面(38)を有し、前記クラッド外表面(38)はクラッド直径(Dcl)を有し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は前記クラッド内表面(42)に面するコア外表面(44)を有し、前記コア外表面(44)はコア直径(D)を示し、
前記コア直径(D)は前記クラッド直径(Dcl)の65%以上である、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項18】
前記中央電極(24)の前記電極発火端部(36)は前記絶縁体先端(52)の外側に配置される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項19】
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも40% は上部分(46)
を形成し、前記電極長さ(l)の少なくとも40%は底部分(48)を形成し、
前記上部分(46)は前記電極末端部(34)から前記底部分(48)へ延在し、
前記底部分(48)は前記クラッド材(32)によって囲まれる前記コア材(30)を含み、
前記上部分(46)は全体が前記コア材(30)で構成される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項20】
前記中央電極(24)は、前記コア材(30)で満たされた前記クラッド材(32)から形成される管を含む、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項21】
前記シェル(28)は、シェル上端(58)からシェル下方端(70)へ長手方向に延在し、
前記絶縁体(26)は、絶縁体外径(Di1)を示して絶縁体上端(50)から絶縁体先端(52)へ長手方向に延在する絶縁体外表面(54)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記シェル上端(58)から前記絶縁体上端(50)へ外側に延在する絶縁体第1領域(56)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体中部領域(60)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体第2領域(62)を含み、
前記絶縁体中部領域(60)の前記絶縁体外径(Di1)は、前記絶縁体第1領域(56)の前記絶縁体外径(Di1)および前記絶縁体第2領域(62)の前記絶縁体外径(Di1)よりも大きく、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)と前記絶縁体中部領域(60)との間に絶縁体上方ショルダー部(64)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)と前記絶縁体第2領域(62)との間に絶縁体下方ショルダー部(66)を含み、
前記シェル(28)は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)、前記絶縁体中部領域(60)、および前記絶縁体上方ショルダー部(64)を囲んで前記シェル(28)を前記絶縁体(26)に固定し、
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも80%は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)と前記絶縁体先端(52)との間に配置される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項22】
前記絶縁体(26)と前記シェル(28)との間に配置される一対のガスケット(68)をさらに備え、前記ガスケット(68)の一方は前記絶縁体上方ショルダー部(64)に沿って配置され、他方は前記絶縁体下方ショルダー部(66)に沿って配置される、請求項21に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項23】
前記コア材(30)は銅または銅合金から構成され、前記クラッド材(32)はニッケルまたはニッケル合金から構成される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項24】
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は前記電極末端部(34)に配置される、請求項12に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項25】
コロナ放電(22)をもたらすためのコロナ点火器(20)であって、
電極末端部(34)から電極発火端部(36)へ長手方向に延在する中央電極(24)を備え、
前記中央電極(24)はクラッド材(32)によって囲まれるコア材(30)を含み、前記中央電極(24)の前記材料(30,32)の各々は熱伝導性を有し、前記コア材(30)の熱伝導性は前記クラッド材(32)の熱伝導性よりも高く、コロナ点火器はさらに、
前記中央電極(24)のまわりに配置される電気絶縁性材料から形成される絶縁体(26)と、
前記絶縁体(26)のまわりに配置される導電性材料から形成されるシェル(28)とを備え、
前記絶縁体(26)は、前記シェル(28)に面する絶縁体外表面(54)と前記中央電極(24)に面する絶縁体内表面(40)とを有し、前記絶縁体外表面(54)と前記絶縁体内表面(40)との間には絶縁体厚さ(t)が示され、
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は、前記絶縁体内表面(40)に面するクラッド外表面(38)と前記コア材(30)に面するクラッド内表面(42)とを有し、前記クラッド外表面(38)と前記クラッド内表面(42)との間にはクラッド厚さ(tcl)が示され、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は前記クラッド内表面(42)に面するコア外表面(44)を有し、前記コア外表面(44)はコア直径を示し、
前記クラッド厚さ(tcl)は前記絶縁体厚さ(t)の5%以上であり、前記コア直径(D)は前記絶縁体厚さ(t)の30%以上である、コロナ点火器。
【請求項26】
前記シェル(28)は前記絶縁体(26)に面するシェル内表面(72)を有し、前記シェル内表面(72)はシェル直径(D)を示し、
前記絶縁体厚さ(t)は前記シェル直径(D)の20%以上である、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項27】
前記絶縁体厚さ(t)は2.5mmから3.4mmであり、前記クラッド厚さ(tcl)は0.25mmから0.35mmであり、前記コア直径(D)は1.4mmから1.7mmである、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項28】
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は、前記絶縁体内表面(40)に面するクラッド外表面(38)を有し、クラッド直径(Dcl)を示し、
前記中央電極(24)に隣接する前記絶縁体外径(Di1)は7.0mmから12.5mmであり、前記クラッド直径(Dcl)は2.0mmから2.8mmである、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項29】
前記中央電極(24)の前記クラッド材(32)は前記絶縁体(26)に面するクラッド外表面(38)を有し、前記クラッド外表面(38)はクラッド直径(Dcl)を示し、
前記中央電極(24)の前記コア材(30)は前記クラッドに面するコア外表面(44)を示し、前記コア外表面(44)はコア直径(D)を示し、
前記コア直径(D)は前記クラッド直径(Dcl)の65%以上である、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項30】
前記中央電極(24)は前記電極末端部(34)から前記電極発火端部(36)へ延在する電極長さ(l)を示し、
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも40%は上部分(46)を形成し、前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも40%は底部分(48)を形成し、
前記上部分(46)は前記電極末端部(34)から前記底部分(48)へ延在し、前記底部分(48)は前記クラッド材(32)によって囲まれる前記コア材(30)を含み、
前記上部分(46)は全体が前記コア材(30)から構成される、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項31】
前記中央電極(24)は前記コア材(30)を囲む前記クラッド材(32)から形成される管を含む、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項32】
前記シェル(28)は、シェル上端(58)からシェル下方端(70)へ長手方向に延在し、
前記絶縁体外表面(54)は、絶縁体外径(Di1)を示し、絶縁体上端(50)から絶縁体先端(52)へ長手方向に延在し、
前記絶縁体(26)は、前記シェル上端(58)から前記絶縁体上端(50)へ外側に延在する絶縁体第1領域(56)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体中部領域(60)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)から前記絶縁体先端(52)に向けて延在する絶縁体第2領域(62)を含み、
前記絶縁体中部領域(60)の前記絶縁体外径(Di1)は、前記絶縁体第1領域(56)および前記絶縁体第2領域(62)の前記絶縁体外形(Di1)よりも大きく、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体第1領域(56)と前記絶縁体中部領域(60)との間に絶縁体上方ショルダー部(64)を含み、
前記絶縁体(26)は、前記絶縁体中部領域(60)と前記絶縁体第2領域(62)との間に絶縁体下方ショルダー部(66)を含み、
前記シェル(28)は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)、前記絶縁体中部領域(60)、および前記絶縁体上方ショルダー部(64)を囲んで前記シェル(28)を前記絶縁体(26)に固定し、
前記中央電極(24)は、前記電極末端部(34)から前記電極発火端部(36)へ延在する電極長さ(l)を示し、
前記中央電極(24)の前記電極長さ(l)の少なくとも80%は、前記絶縁体下方ショルダー部(66)と前記絶縁体先端(52)との間に配置される、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項33】
前記絶縁体(26)と前記シェル(28)との間に配置される一対のガスケット(68)をさらに備え、前記ガスケット(68)の一方は前記絶縁体上方ショルダー部(64)に沿って配置され、他方は前記絶縁体下方ショルダー部(66)に沿って配置される、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【請求項34】
前記コア材(30)は銅または銅合金から構成され、前記クラッド材(32)はニッケルまたはニッケル合金から構成される、請求項25に記載のコロナ点火器(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本件出願は、2010年4月13日に出願された米国特許仮出願第61/323,458号および2011年1月13日に出願された米国特許仮出願第61/432,501号の優先権を主張する2011年4月13日に出願された米国特許出願第13/085,991号の一部継続出願であり、これらの内容の全体が引用によりここに援用される。また、本件出願は2011年8月19日に出願された米国特許仮出願第61/525,379号の利益も主張し、その内容の全体が引用によりここに援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して無線周波電界を放射することで燃料空気混合気をイオン化してコロナ放電をもたらすコロナ点火器に関し、より特定的には運転時におけるコロナ点火器の温度の制御に関する。
【0003】
2.関連技術
コロナ放電点火システムのコロナ点火器は、電源から電圧を受け、コロナを形成する電界を放射することによって内燃機関の燃料と空気との混合気をイオン化する。点火器は、電極末端部から電極発火端部へ長手方向に延在する中央電極を含む。絶縁体が中央電極に沿って配置され、シェルが絶縁体に沿って配置される。
【0004】
電極末端部は電源から電圧を受け、電極発火端部はコロナを形成する電界を放射する。電界は、コロナを形成する少なくとも1つの吹き流しを含み、通常は複数の吹き流しを含む。コロナ点火器は、電極発火端部に接近した位置にいかなる接地電極要素も含まない。むしろ、空気と燃料との混合気は、電極発火端部から発生する高電界の全長にわたって点火される。コロナ点火器の例は、本件の発明者であるLykowskiらによる米国特許出願公開第2010/0083942号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関での用途において、コロナ点火器の温度、特に発火端部の温度は、点火性能に影響を与える。先行技術のコロナ点火器では、発火端部において950℃を超える温度などの望ましくない温度に達する場合が多い。このような高い温度は、点火の質を劣化させやすい。コロナ点火器は、耐久性が弱くなり、他の燃焼に関する問題を起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一局面においては、コロナ放電をもたらすためのコロナ点火器が提供される。コロナ点火器は、電極末端部から電極発火端部へ長手方向に延在する中央電極を含む。中央電極は、クラッド材によって囲まれるコア材を含む。中央電極の材料の各々は、熱伝導性を有し、コア材の熱伝導性は、クラッド材の熱伝導性よりも高い。電気絶縁性材料から形成される絶縁体が、中央電極のまわりに配置される。導電性材料から形成されるシェルが、絶縁体のまわりに配置される。本実施形態において、中央電極のコア材は、電極末端部に配置される。
【0007】
本発明の他の局面においては、電極末端部から電極発火端部へ長手方向に延在する電極長さを有する中央電極を含むコロナ点火器が提供される。中央電極は、クラッド材によって囲まれるコア材を含み、中央電極の材料の各々は熱伝導性を有し、コア材の熱伝導性はクラッド材の熱伝導性よりも高い。中央電極のコア材は、電極末端部と電極発火端部との間で長手方向に延在するコア長さを有する。また、コロナ点火器は、中央電極のまわりに配置され、絶縁体上端から絶縁体先端へ長手方向に延在する電気絶縁性材料から形成される絶縁体を含む。導電性材料から形成されるシェルが絶縁体のまわりに配置される。コア材のコア長さは中央電極の電極長さの少なくとも90%に等しく、コア材のコア長さの少なくとも97%が絶縁体に囲まれている。
【0008】
さらに他の局面においては、電極末端部から電極発火端部へ長手方向に延在する中央電極を含むコロナ点火器が提供される。中央電極はクラッド材によって囲まれるコア材を含む。材料の各々は熱伝導性を有し、コア材の熱伝導性はクラッド材の熱伝導性よりも高い。電気絶縁性材料から形成される絶縁体が中央電極のまわりに配置され、導電性材料から形成されるシェルが絶縁体のまわりに配置される。絶縁体は、シェルに面する絶縁体外表面と中央電極に面する絶縁体内表面とを有する。絶縁体外表面と絶縁体内表面との間には絶縁体厚さが示される。中央電極のクラッド材は、絶縁体内表面に面するクラッド外表面とコア材に面するクラッド内表面とを有する。クラッド外表面とクラッド内表面との間にはクラッド厚さが示される。中央電極のコア材はクラッド内表面に面するコア外表面を有し、コア外表面はコア直径を示す。クラッド厚さは絶縁体厚さの少なくとも5%に等しく、コア直径は絶縁体厚さの少なくとも30%に等しい。
【発明の効果】
【0009】
高い熱伝導性を有するコア材を含むコロナ点火器の中央電極は、向上した形状ならびにクラッド材およびコア材を有さない先行技術のコロナ点火器と比して、絶縁体および中央電極の形状と共にコロナ点火器の発火端部における動作温度を低下させる。試験結果は、本発明のコロナ点火器の電極発火端部における動作温度が先行技術のコロナ点火器の電極発火端部における動作温度よりも約100℃以上低くなり得ることを示した。また、試験結果は、本発明のコロナ点火器の絶縁体先端における動作温度も先行技術の温度よりも著しく低くなり得ることを示した。
【0010】
添付の図面と関連付けて考慮されると、以下の詳細な説明を参照することによって本発明の他の利点がより良好に理解されるので、容易に真価が認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一局面に係るコロナ点火器を示す断面図である。
図1A図1のコロナ点火器の一部を示す拡大図である。
図2】本発明の他の局面に係るコロナ点火器を示す断面図である。
図3】本発明のさらに他の局面に係るコロナ点火器を示す断面図である。
図4】先行技術のコロナ点火器を示す断面図である。
図5A】先行技術のコロナ点火器の有限要素解析(FEA)を示す図である。
図5B】先行技術の他のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図5C】本発明の一局面に係るコロナ点火器のFEAを示す図である。
図6】本発明のさらに他の局面に係るコロナ点火器を示す断面図である。
図6A図6のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図6B図6のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図6C図6のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図6D図6のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図6E図6のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図7】比較のコロナ点火器を示す断面図である。
図7A図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図7B図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図7C図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図7D図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図7E図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図8】本発明のさらに他の局面に係るコロナ点火器を示す断面図である。
図8A図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図8B図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図8C図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図8D図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図8E図7のコロナ点火器のFEAを示す図である。
図9図6から図8のFEA試験結果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明は、アークの形成を抑制し、コロナ放電22を生む強い電界の生成を促す電気源を意図的に作り出すように設計されたコロナ放電点火システムにおいて使用される、図1から図3に示されるようなコロナ点火器20を提供する。コロナ点火器20は、中央電極24と、中央電極24を囲む絶縁体26と、絶縁体26を囲むシェル28とを含む。中央電極24は、ニッケルまたはニッケル合金などのクラッド材32によって囲まれる銅または銅合金などのコア材30を含む。コア材30およびクラッド材32は熱伝導性を有し、コア材30の熱伝導性はクラッド材32の熱伝導性よりも高い。中央電極24のこの特徴により、向上した形状ならびにクラッド材およびコア材を有さない先行技術のコロナ点火器と比して、絶縁体26および中央電極24の形状と共にコロナ点火器20の発火端部における動作温度が低下する。
【0013】
ある実施形態において、中央電極24は電極末端部34から電極発火端部36へ延在し、中央電極24のコア材30は電極末端部34に配置される。他の実施形態において、中央電極24は電極末端部34から電極発火端部36へ延在する電極長さlを有し、コア材30は電極末端部34と電極発火端部36との間で長手方向に延在するコア長さlを有する。コア材30のコア長さlは、中央電極24の電極長さlの少なくとも90%に等しく、コア材30のコア長さlの少なくとも97%は絶縁体26によって囲まれている。さらに他の実施形態において、中央電極24は、絶縁体厚さ(t)の少なくとも5%に等しいクラッド厚さ(tcl)と絶縁体厚さ(t)の少なくとも30%に等しいコア直径(D)とによってもたらされる増大した直径を有する。これらの実施形態の各々は、先行技術のコロナ点火器の温度と比してコロナ点火器20の発火端部における温度の低下をもたらす。
【0014】
中央電極を囲む絶縁体を含み、中央電極がニッケルのクラッドと銅のコアとを含むスパークプラグを先行技術は提供しているが、スパークプラグに関連する先行技術により教示される絶縁体および中央電極の形状は、コロナ点火システムに適しておらず、主題の発明によって実現される動作温度の低下をもたらさない。先行技術のスパークプラグにおける絶縁体および中央電極がコロナ点火システムに使用された場合、大きな寄生容量が発生する。加えて、先行技術のコロナ点火器に使用される絶縁体は、コア材の使用を妨げるような小さい直径を有する中央電極が必要となる場合が多い。
【0015】
本発明のコロナ点火器20は、通常は自動車または産業機械の内燃機関に使用される。図1に示されるように、コロナ点火器20は、シリンダー中心軸の周方向に延在して筒形状の空間を示す側壁を有するシリンダーブロック内に通常は配置される。シリンダーブロックの側壁は上部開口を囲む上端を有し、シリンダーヘッドは上端に配置され、上部開口にわたって延在する。ピストンは、筒状空間内において、内燃機関の動作時に側壁に沿って摺動するためのシリンダーブロックの側壁に沿って配置される。ピストンは、シリンダーブロックとシリンダーヘッドとピストンとがそれらの間に燃焼室をもたらすように、シリンダーヘッドから間隔を空けられる。燃焼室は、コロナ点火器20によってイオン化される燃焼可能な燃料空気混合気を収容する。シリンダーヘッドは、コロナ点火器20を受けるアクセスポートを含み、コロナ点火器20は燃焼室内に横断して延在する。コロナ点火器20は、電源(図示せず)から高い無線周波電圧を受け、無線周波電界を放射することによって、燃料空気混合気の一部をイオン化し、コロナ放電22を形成する。コロナ放電点火システムの点火事象は、約1メガヘルツで伝わる複数の放電を含む。
【0016】
コロナ点火器20の中央電極24は、電極末端部34から電極発火端部36へ中心軸に沿って長手方向に延在する電極長さlを示す。電極末端部34は、通常は40,000ボルトに至る電圧、1アンペア未満の電流、および0.5から5.0メガヘルツの周波数を伴う高い無線周波AC電圧のエネルギを受ける。
【0017】
中央電極24のコア材30は通常は銅または銅合金であるが、クラッド材32よりも高い熱伝導性を有する任意の材料を含み得る。同様に、クラッド材32は通常はニッケルまたはニッケル合金であるが、クラッド材32はコア材30より低い熱伝導性を有する任意の材料を含み得る。また、クラッド材32は、コア材30より高い導電性および耐食性を有するのが好ましい。中央電極24の材料30,32は、1,200nΩ・m未満の電気抵抗を有するべきである。
【0018】
コロナ点火器20のクラッド材32は、絶縁体内表面40に面するクラッド外表面38とコア材30に面するクラッド内表面42とを有する。クラッド外表面38とクラッド内表面42との間にはクラッド厚さtclが示される。コア材30は、クラッド内表面42に面するコア外表面44を有し、コア外表面44はコア直径Dを示す。また、コア材30は、電極末端部34と電極発火端部36との間で長手方向に延在するコア長さlを示す。
【0019】
ある実施形態においては、図1に示すように、コア材30は電極末端部34においてクラッド材32から外側に延在する。また、コア材30は、クラッド材32によって電極発火端部36から軸方向に約2mmの間隔が空けられる。この実施形態において、コア長さlは、電極長さlの約90%に等しく、全体のコア長さlは、絶縁体26によって囲まれる。
【0020】
図2の実施形態において、中央電極24は、上部分46と底部分48とを含む。中央電極24の電極長さlの少なくとも40%が上部分46を形成し、中央電極24の電極長さlの少なくとも40%が底部分48を形成する。この場合において、上部分46は電極末端部34から底部分48へ延在し、底部分48は上部分46から電極発火端部36へ延在する。底部分48は、クラッド材32によって囲まれたコア材30を含み、上部分46は全体がコア材30からなる。2つの部分46,48は、適した熱接触および電気接触ならびに機械的安定性をもたらす任意の方法によって接合され得る。例示的な方法として、共押し出し、溶接、ろう付け、はんだ付け、および圧着が含まれる。
【0021】
さらに他の実施形態において、図3に示されるように、中央電極24は、コア材30を囲む、またはコア材料30で満たされた、クラッド材32で形成された管を含む。この実施形態の中央電極24は、電極末端部34にヘッドも含み得る。ある実施形態において、ヘッドは管のコア材30を塞ぎ、これは据込み、スエージング、または他の処理によって行われる。コア材30は、クラッド材32によって電極末端部34から間隔を空けることができ、燃焼環境から封止することができる。この実施形態において、クラッド直径Dclが電極発火端部36に向けて小さくなる。コア材30を電極発火端部36から封止するために、スエージング、圧着、ろう付け、はんだ付け、溶接、または他の構成部品によるキャッピングなど、いくつかの方法を使用することができる。
【0022】
中央電極24は、図1から図3に示されるように、通常は電極発火端部36を囲んで隣接する、無線周波電界を放射することによって燃料空気混合気の一部をイオン化して燃焼室にコロナ放電22をもたらすための発火先端部49を含む。発火先端部49は、高い温度において優れた熱的性能をもたらす導電性材料からなり、たとえば元素周期表の第4族から12族の中で選択される少なくとも1つの元素を含む材料からなる。発火先端部49は、発火先端部49の直径が中央電極24のよりも大きくなるように、複数の突起部を含み得る。この実施形態において、発火先端部49は、スターともいえる。
【0023】
コロナ点火器20の中央電極24は、絶縁体26によって囲まれる。絶縁体26は、絶縁体上端50から絶縁体先端52へ長手方向に延在する。絶縁体26の一部は、中央電極24のまわりを環状に、かつ中央電極24に沿って長手方向に配置される。絶縁体先端52は、通常は発火先端部49に隣接して、または発火先端部49から僅かに間隔を空けて配置される。
【0024】
絶縁体26は、電気絶縁性材料から形成され、通常はアルミナを含むセラミック材料から形成される。絶縁体26は、中央電極24およびシェル28の導電性より低い導電性を有する。ある実施形態において、絶縁体26は、14kV/mmから25kV/mmの絶縁耐力を有する。また、絶縁体26は電荷を保持することができる比誘電率を有し、通常は6から12の比誘電率を有する。ある実施形態において、絶縁体26は2×10−6/℃から10×10−6/℃の熱膨張係数(CTE)を有する。
【0025】
絶縁体26は、中央電極24に面して絶縁体上端50から絶縁体先端52へ電極中心軸に沿って長手方向に延在する絶縁体内表面40を含む。図1から図3に示されるように、絶縁体内表面40は、中央電極24を受ける絶縁体ボアを示し、中央電極24のヘッドを支持するための電極座部を含み得る。コロナ点火器20は、絶縁体26と中央電極24との間、または絶縁体26とシェル28との間に空隙を含み得る。これらの隙間は、エネルギ損失を減少させるために金属もしくはセラミック担持エポキシなどの熱伝導性材料で満たされても良い。
【0026】
コロナ点火器20の絶縁体26は、対向する絶縁体内表面40に面する絶縁体外表面54を含む。絶縁体26は、絶縁体内表面40と絶縁体外表面54との間の絶縁体厚さtも示す。絶縁体外表面54は、シェル28に向けて外側に、かつ中央電極24から離れる方向に面する。ある実施形態において、絶縁体26は、シェル28に確実に嵌合するように設計される。
【0027】
図1から図3に示されるように、絶縁体26はシェル28から絶縁体上端50へ外側に延在する絶縁体第1領域56を含む。また、絶縁体26は、絶縁体第1領域56から絶縁体先端52に向けて延在する絶縁体中部領域60と、絶縁体中部領域60から絶縁体先端52に向けて延在する絶縁体第2領域62とを含む。絶縁体中部領域60の絶縁体外径Di1は、絶縁体第1領域56の絶縁体外径Di1よりも大きく、絶縁体第2領域62の絶縁体外径Di1よりも大きい。ある実施形態において、中央電極24に隣接する絶縁体第2領域62の絶縁体外径Di1は、7.0mmから12.5mmである。
【0028】
また、絶縁体26は、絶縁体第1領域56と絶縁体中部領域60との間の絶縁体上方ショルダー部64と、絶縁体中部領域60と絶縁体第2領域62との間の絶縁体下方ショルダー部66とを含む。絶縁体上方ショルダー部64は、絶縁体第1領域56から絶縁体中部領域60へ径方向外側に延在し、絶縁体下方ショルダー部66は、絶縁体中部領域60から絶縁体第2領域62へ径方向内側に延在する。コロナ点火器20は、通常は絶縁体26とシェル28との間に配置された一対のガスケット68を含み、ガスケット68の一方は絶縁体上方ショルダー部64に沿って配置され、他方は絶縁体下方ショルダー部66に沿って配置される。絶縁体の形状およびガスケット68の設置により、絶縁体26は、優れた機械的および電気的強度をもたらし、コロナ点火器20から寄生容量を減少させるのに十分に大きい絶縁体厚さtを有することができる。また、絶縁体の形状およびガスケット68の設置により、先行技術の中央電極に比して増大した直径を有する中央電極24を絶縁体ボア内に配置することができる。
【0029】
絶縁体26は、絶縁体第2領域62から絶縁体先端52へ延在する絶縁体先端領域69も含む。絶縁体先端領域69の絶縁体外径Di1は、絶縁体第2領域62から絶縁体先端52へ向けて先細っている。絶縁体先端52における絶縁体外径Di1は、通常は発火先端部49の直径よりも小さい。
【0030】
コロナ点火器20は、絶縁体ボア内に受けられる導電性材料から形成される端子71も含む。端子71は、電源(図示せず)に電気的に接続される端子線(図示せず)に接続される第1端子端部を含む。端子71は、中央電極24と電気的に連通する第2端子端部も含む。したがって、端子71は、電源から高い無線周波電圧を受け、高い無線周波電圧を中央電極24に伝達する。端子71から中央電極24にエネルギが伝達されるように端子71と中央電極24との間に導電性材料から形成された導電封止層73が配置され、端子71と中央電極24とが電気的に接続される。
【0031】
コロナ点火器20のシェル28は、絶縁体26のまわりに環状に配置される。シェル28は、鉄鋼などの導電金属材料から形成される。ある実施形態において、シェル28は1,200nΩ・m未満の低い電気抵抗を有する。図1に示されるように、シェル28はシェル上端58からシェル下方端 70へ絶縁体26に沿って長手方向に延在する。シェル28は、絶縁体外表面54に面し、絶縁体第1領域56から、絶縁体上方ショルダー部64、絶縁体中部領域60、絶縁体下方ショルダー部66、および絶縁体第2領域62に沿って、絶縁体先端領域69に隣接するシェル下方端70へ長手方向に延在する、シェル内表面72を含む。シェル内表面72は、絶縁体26を受けるシェルボアを示す。シェル内表面72は、シェルボアにわたって延在するシェル直径Dも示す。シェル直径Dは、絶縁体先端領域69および絶縁体第2領域62の絶縁体外径Di1よりも大きい。したがって、絶縁体26は、シェルボア内に挿入することができ、絶縁体先端領域69の少なくとも一部がシェル下方端70から外側に突出する。シェル28は、絶縁体下方ショルダー部66、絶縁体中部領域60、および絶縁体上方ショルダー部64を囲む。シェル上端58は、通常は絶縁体上方ショルダー部64でガスケット68のまわりに挟まれ、シェル28を絶縁体28に対して所定の位置に固定する。
【0032】
コロナ点火器20は、先行技術のコロナ点火器と比して低下した動作温度をもたらすいくつかの異なる形状を含むことができる。図1から図3は、好ましい形状の例を示す。動作温度の低下は、中央電極24のコア材30が中央電極24のかなりの部分に沿って延在した場合にも実現され得る。コア材30のコア長さlは、通常は中央電極24の電極長さlの少なくとも90%に等しい。さらに、コア長さlの少なくとも97%が絶縁体26によって径方向に囲まれている。動作温度の低下は、クラッド厚さtclが絶縁体厚さtの少なくとも5%または少なくとも13%であってコア直径Dが絶縁体厚さtの少なくとも30%に等しい場合など、中央電極24が増大した直径を有する場合にも実現され得る。他の実施形態において、コア直径Dは絶縁体厚さtの少なくとも65%または少なくとも68%に等しい。
【0033】
優れた熱伝達および温度低下は、コア直径Dがクラッド直径Dclの少なくとも65%に等しい場合にも実現することができる。また、中央電極24は、電極長さlの少なくとも80%が絶縁体下方ショルダー部66と絶縁体先端52との間に配置されるように設計されるのが好ましい。電極末端部34を含む中央電極24の小さい部分は、絶縁体先端52の外側に配置され得る。好ましくは、電極長さlの5%未満が絶縁体先端52の外側に配置される。
【0034】
絶縁体厚さtも先行技術と比した発火端部における温度の低下およびコロナ点火器20からの寄生容量の減少に寄与する。絶縁体厚さtは、通常はシェル直径Dの少なくとも20%に等しい。ある実施形態において、絶縁体厚さtは2.5mmから3.4mmである。この絶縁体厚さtの増大は、増大した絶縁体外径Di1を有する絶縁体中部領域60に隣接する絶縁体ショルダー部64,66にガスケット68を設置することによって一部が実現される。ある好ましい実施形態において、シェル直径Dは11.75mmから12.25mmであり、絶縁体厚さtは2.75mmから3.00mmであり、クラッド厚さtclは0.25mmから0.35mmであり、コア直径Dは1.4mmから1.7mmである。他の好ましい実施形態において、絶縁体外径Di1は中央電極24に隣接して7.0mmから12.5mmであり、絶縁体内径Di2は中央電極24に隣接して2.19mmから2.25mmであり、クラッド直径Dclは絶縁体26に沿って2.14mmから2.18mmである。
【0035】
図4は、先行技術のコロナ点火器を示し、図5A図4のコロナ点火器の有限要素解析(FEA)を示す。図5Bは先行技術のコロナ点火器の他のFEAを示し、図5Cは本発明のコロナ点火器のFEAを示す。全ての点火器は、点火器によってもたらされる温度制御を比較できるように、同じ動作条件下で試験が行われた。
【0036】
図5Aに示す先行技術のコロナ点火器の中央電極は、全体がニッケル合金から構成され、本発明のコロナ点火器の直径よりも小さい直径を有する。FEA解析は、この点火器の発火端部における動作温度が理想的な点火性能ではない950℃に達することを示す。時間の経過に伴い、この高い温度は耐久性の低下およびエンジンの損傷を引き起こし得る。
【0037】
図5Bは、スパークプラグに使用される中央電極と同様の大きな中央電極を有している点以外は図4のコロナ点火器と同様の先行技術のコロナ点火器のFEA解析である。この場合において、中央電極の温度は図5Aの中央電極よりも低いが、電極発火端部および絶縁体先端における温度が依然として900℃を超えている。
【0038】
図5Cは、本発明の一実施形態に係るコロナ点火器20のFEA解析であり、中央電極24は、具体的にはニッケル合金であるクラッド材32によって囲まれた具体的には銅であるコア材料30を含む。この実施形態において、コア材30は電極末端部34に配置され、コア長さlは電極長さlの少なくとも90%に等しく、コア長さlの少なくとも97%は絶縁体26によって囲まれ、中央電極24は図5Aの電極直径と比して増大した電極直径を有する。FEA解析は、電極発火端部36および絶縁体先端52における温度が先行技術の温度よりも著しく低いことを示している。本発明のコロナ点火器20の絶縁体先端52における温度は最高で約870.25℃であり、これに対して先行技術の点火器の絶縁体先端における温度は最高で947.2℃および最高で907.59℃である。本発明のコロナ点火器20の電極発火端部36における温度は最高で約700℃であり、これに対して先行技術の点火器の電極発火端部における温度は最高で947.2℃および最高で907.59℃である。
【0039】
図6は、本発明の一実施形態に係るコロナ点火器20を示す断面図であり、中央電極24のコア材30が電極末端部34に配置されている。この実施形態において、コア材30は銅であり、クラッド材32はニッケルである。コア材30のコア長さlは中央電極24の電極長さlの少なくとも90%に等しく、コア材30のコア長さlの少なくとも97%は絶縁体26によって囲まれている。また、この実施形態において、上部分46は全体がコア材30によって構成され、中央電極24のヘッドは全体がコア材30によって構成される。中央電極24の底部分48はクラッド材32によって囲まれるコア材30を含む。図6Aから図6Eは、各々が図6のコロナ点火器20の断面の有限要素解析(FEA)を含む。
【0040】
図7は比較のコロナ点火器を示す断面図であり、コア材は銅であり、クラッド材はニッケルであるが、コア材は中央電極の底部分のみにあり、上部分は全体がクラッド材によって構成される。図7Aから図7Eは、各々が図7のコロナ点火器20の断面の有限要素解析(FEA)を含む。
【0041】
図8は本発明の他の実施形態に係るコロナ点火器20を示す断面図であり、コア材30はクラッド材32によって囲まれ、コア材30のコア長さlは中央電極24の電極長さlの少なくとも90%に等しく、コア材30のコア長さlの少なくとも97%が絶縁体26によって囲まれている。この実施形態において、コア材30は銅であり、クラッド材32はニッケルである。また、この実施形態において、中央電極24のコア材30は電極末端部34に配置されている。図8Aから図8Eは各々が図8のコロナ点火器20の断面の有限要素解析(FEA)を含む。
【0042】
図9図6から図8のFEA試験結果をグラフで示す図である。試験結果は、図6から図8のコロナ点火器20が図7の比較のコロナ点火器と比して電極発火端部36、絶縁体先端52、および発火先端部49において、ならびにコア材30およびクラッド材32に沿って低い動作温度をもたらすことを示す。図9において、「CE」は中央電極を意味する。
【0043】
当然ながら、本発明の多くの変更例および変形例が上述の教示に照らして可能であり、添付の請求項の範囲内で具体的に説明されるもの以外の方法で実施され得る。加えて、請求項における参照符号は単に便宜上のものであり、限定的に読みとられるるものではない。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9