特許第6238896号(P6238896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238896
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】セラミック組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   C04B38/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-526448(P2014-526448)
(86)(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公表番号】特表2014-529567(P2014-529567A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012065879
(87)【国際公開番号】WO2013026742
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年2月25日
【審判番号】不服2016-2978(P2016-2978/J1)
【審判請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】102011081536.8
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100129735
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 顕学
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シューベアト
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 瀧口 博史
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−315869(JP,A)
【文献】 特開平3−131577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00 - 35/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性成形方法のためのセラミック組成物であって、
17体積%以上48体積%以下の少なくとも1つのセラミック成分、
28体積%以上58体積%以下の少なくとも1つの結合剤成分、および
6体積%以上37体積%以下の少なくとも1つの細孔形成成分、
を含んでいて、セラミック成分、結合剤成分、および細孔形成成分の割合は合計して100体積%であり、
セラミック成分がケイ酸マグネシウム、Al23、またはZrO2であり、
結合剤成分がポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリアクリレート、またはポリエチレンであり、
細孔形成成分がフェノール樹脂、デンプン、ヤシ殻、またはこれらの混合物であり、
前記セラミック組成物は水不含かつ溶剤不含である、前記組成物。
【請求項2】
前記細孔形成成分が、繊維状に形が整えられている、請求項1に記載のセラミック組成物。
【請求項3】
前記繊維が、1以下:30の直径の長さに対する比を有していて、および/または該繊維が、400μm以下の長さを有している、請求項に記載のセラミック組成物。
【請求項4】
塑性成形方法の使用下で、請求項1からまでのいずれか1項に記載のセラミック組成物を用い、かつ水及び溶媒を用いないセラミック部品の製造方法であって、該塑性成形方法が、押出法、射出成形法、ローラー成形法または平板プレス技術法からなる群から選択されている前記製造方法。
【請求項5】
ガス透過性の電極の製造のための請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック組成物ならびにセラミック組成物の使用に関する。本発明は、特にセラミック部品、例えば電極の、塑性成形方法による製造のためのセラミック組成物に関する。
【0002】
電極、例えばガス活性(gasaktiv)の高温電極の製造のためには、電極に必要な機械的安定性を与える担体材料が有利である。特に、運転に伴う機械的応力を吸収しうるためには、担体材料の可能な限り高い強度が有利である、それというのは、そうでないと部品損傷が発生しうるからである。ここで、使用される担体材料にとって、特にガス活性電極のために使用する場合に、ガスが反応性の電極側で反応できるように、ガスのための必要な最低透過率が有益である。
【0003】
通常、このような担体材料のためには、基本的に、密に焼結されていない、したがってガス透過性のセラミック材料が使用される。しかし、これらの密に焼結性ではない材料は、ほとんどの場合、わずかな強度しか有しておらず、担体基材を有する部品、つまり特に電極の早過ぎる機能損失をもたらしうる。
【0004】
刊行物DE10031123A1からは、全般的に多孔性の基材の製造方法が公知であり、この方法では、前記基材は、セラミックスラリー系のフィルムキャスティングにより製造される。このスラリー系は、気孔率を調節するために、さらに可燃性のスペースホルダー、つまりグラファイトまたは炭素繊維を含んでいてよい。ここで使用されるスラリー系は、さらに二酸化ジルコニウム粉末および酸化ニッケル粉末を含んでいて、安定化された二酸化ジルコニウム粉末は、粗粒と細粒含分とからの混合物の形態で大きく離れている二峰性の分布を有している。これにより、焼結プロセスは、高い割合の開放気孔率が得られるように変えられるものとする。
【0005】
本発明の対象は、塑性成形方法のためのセラミック組成物であって、
・少なくとも1つのセラミック成分、
・少なくとも1つの結合剤成分、
・少なくとも1つの細孔形成成分、および
・特に少なくとも1つの分散剤成分
を含んでいて、少なくとも1つの有機化合物を細孔形成成分として含んでいる前記組成物である。
【0006】
セラミック組成物は、本発明の範囲において、特に、セラミック成形体もしくはセラミック部品にさらに加工可能な組成物であってよい。特に、このセラミック組成物は、成形方法により成形されて、燃焼プロセスで高められた温度下に焼結されてセラミック成形体にすることができる。したがって、前記セラミック組成物は、例えば、セラミック原料に用いられてよい。セラミック成形体は、ここで本発明の範囲において、特に、実質的に無機および非金属の性質である成形体であってよい。
【0007】
前記セラミック組成物は、ここで特に、少なくとも1つのセラミック成分を含んでいてよい。したがって、このセラミック成分は、特に、実際のセラミック原料に用いられてよい。前記セラミック成分は、ここで本発明の範囲において、特に無機で非金属の工業原料から形成されている、もしくはこの工業原料を含んでいる材料を含んでいてよい。セラミック材料は、ここで例えばケイ酸塩ベースの材料、酸化物、例えば金属酸化物、窒化物または炭化物を含んでいてよい。本発明の範囲において例えば使用することができる例示的なセラミック成分は、例えば、フォルステライト、ケイ酸マグネシウム、または二酸化ジルコニウムを含んでいる。ここで、このセラミック組成物は、1つまたは好適な複数のセラミック成分を含んでいてよい。
【0008】
本発明によるセラミック組成物は、さらに少なくとも1つの結合剤成分を含んでいる。結合剤成分は、セラミック組成物中で、特に、この組成物中に含まれている成分を互いに結合するのに用いることができる。ここで、1つの結合剤成分のみ、つまり結合剤として用いられる1つの物質のみが前記セラミック組成物中に設けられていてよい。さらに、2つまたは2つ超の異なる、結合剤として用いられる物質からの好適な混合物が設けられていてよい。例えば、前記セラミック組成物は、1つもしくは複数の水不溶性の結合剤、およびさらにまたはそれとは別に1つもしくは複数の水溶性の結合剤を含んでいてよい。水溶性の結合剤成分には、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンが好適であり、他方、水不溶性の結合剤成分には、例えば、ポリビニルブチラール、ポリアミドまたはポリエチレンが好適である。
【0009】
前記セラミック組成物は、さらに少なくとも1つの細孔形成成分を含んでいる。細孔形性成分は、ここで、特に、前記セラミック組成物から作り出されるセラミック部品もしくはセラミック成形体において、好適かつ所望の、特に定義された気孔を形成するために用いられる材料であってよい。このようにして、生成されるセラミック成形体の所望のガス透過性が得られ、このことは、例えばガス活性電極としての使用、もしくはその担体基材に好適である。したがって、気孔という概念は、特に開放気孔であると解釈してよいことが当業者には明らかである。それにより、細孔形成成分は、有利な実施態様において、前記材料の内部だけでなく、同じく外部範囲もしくは外側との界面にも存在している。さらに、細孔形成成分の個々の構造は、構造の内部で接していてよい。それにより、好ましくは、貫通したチャンネルを細孔形成成分に設けることができるため、後々の燃焼時に貫通したガスチャンネルが現れうる。これを達成するために、細孔形成成分は、特に、セラミック成形体の生成のためのセラミック化合物の燃焼プロセスもしくは焼結工程時に、熱分解可能である、または気体状態に移行する有機化合物である。ここで、前記セラミック組成物中には、1つの細孔形成成分のみ、または好適な複数の細孔形成成分が設けられていてよい。
【0010】
有機の細孔形成成分もしくは有機の成分それ自体は、本発明の範囲において、成分もしくはその分子構造が、炭素、水素および酸素を含んでいる、もしくはそれらからなってよい特に1つの成分であると解釈されてよい。ここで、成分もしくはその分子構造が、炭素、水素および酸素からなる1つの成分は、90%以上、特に95%以上、例えば99%以上が前記材料からなる1つの成分を含んでいてもよい。ここで、例えば10%未満、特に5%未満、例えば1%未満の別の物質は、例えば分子レベルで、または不純物、例えば窒素もしくは硫黄の不純物として、有機の細孔形成成分中に存在していてよい。このようにして、細孔形成成分は、一方では所望の気孔率を調節するために、焼結工程で好ましくは確実に、かつ実質的に残留物なしに組織から取り除くことができる。さらに、このような有機の細孔形成成分を設ける場合、特に焼結工程で一般的な条件では、妨げになる、またはそればかりか毒性の化合物もしくは有害物質、例えば有害な硫黄化合物もしくは窒素化合物の形成をはるかに低下させる、またはそればかりか回避することができる。
【0011】
したがって、有機材料をベースとする細孔形成成分は、特に、純粋に炭素材料、例えばグラファイトまたは炭素繊維をベースとする細孔形成成分ではないことが、当業者には理解できる。このような化合物は、本発明によれば、有機材料もしくは有機の細孔形成成分には含まれない。
【0012】
さらに、本発明によるセラミック組成物は、特に分散剤成分を含んでいてよい。分散剤成分は、本発明の範囲において、特に、本発明によるセラミック組成物を均質化するために、もしくは特に塑性成形方法のために充分な混合性を生じるために用いられてよい。したがって、分散剤成分の添加により、相応の成形方法の特に均質なプロセスを得ることができ、品質的に特に均質の、およびしたがって特に有利なセラミック部品を生成することができる。これは、ここで、特に塑性成形方法での使用に特に好適でありうる。ここで、本発明の範囲において、分散剤成分は存在していなくてよい、1つの分散剤成分が存在していてよい、または好適な複数の分散剤成分が存在していてよい。分散剤成分として本発明の範囲において特に有利に使用できる好適な物質は、例えば、オレイン酸または商品名EFKA5207(BASF社、Ludwigshafen)で市販されているヒドロキシル官能性不飽和変性カルボキシル酸を含んでいる。さらに好適であるのは、ポリアルキレングリコールエーテル、例えば、商品名Brij、例えばBrij72(ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)(Uniqema Americas LLC社、Wilmington Del.,US)で市販されているポリアルキレングリコールエーテルである。
【0013】
塑性成形方法は、ここで本発明の範囲において、特に、有機セラミックコンパウンドが溶融液体相を介して一成形法(Urformverfahren)に供される方法であってよい。好適な塑性成形方法であって、本発明によるセラミック組成物が特に好適な前記方法は、例えば、押出法、射出成形法、ローラー成形法または平板プレス技術法(Plattenpresstechnikverfahren)を含んでいてよい。
【0014】
本発明によるセラミック組成物は、特に有利には、特に塑性成形方法との組合せで、高強度のセラミック材料もしくは高強度のセラミック部品を生成するのに好適である。これらは、ここで、多数の適用に好適であるガス透過性を有していてよい。詳しくは、有機添加物もしくは有機の細孔形成成分をセラミック組成物中に設けることにより、ガス透過性を生成するための好適な気孔を有しているセラミック部品を製造することができる。この有機の細孔形成成分から、ここで、その燃焼後に、特に焼結工程の間に空隙が残り、この空隙は、燃焼時または燃焼後、もしくは焼結工程時または焼結工程後に再び閉じられないものである。前記細孔形成成分の個々の構造が接し、それによってセラミック部品の製造のさらなる過程では、個々の生成された空隙も接する場合、このようにして開放気孔を生成することができ、これによりガスの透過性を生じることができる。
【0015】
さらに、本発明によるセラミック組成物から、特に塑性成形方法の使用下に、特に簡単かつ経済的に、所望のセラミック部品が製造される。
【0016】
1つの実施態様の範囲において、前記組成物は、少なくとも1つのポリマーを有機化合物として含んでいてよい。特に有機ポリマーは、細孔形成成分の構造を提供することができ、この構造は、セラミック部品の製造のさらなる過程において、ガス透過性に特に好適である、空隙およびそれによる気孔を作り出す。ここで、ポリマーは、その構造において、多くの場合それぞれの適用分野に好適に適合可能である、もしくは使用するポリマーは好適に選択可能である。これによりこの実施態様では、ガス透過性の特に再現可能な結果が作り出される。
【0017】
さらなる実施態様の範囲において、前記組成物は、有機化合物を細孔形成成分として含んでいてよく、この有機化合物は、炭素と酸素とから、炭素と水素とから、または炭素、酸素および水素とから形成されている、もしくは、なっている。特に、このような細孔形成成分では驚くべきことに、前記成分が、塑性成形方法における使用の場合に、高いガス透過性を、例えば成形されたセラミック部品のガス活性電極としての使用時に可能にするために、特に好ましい孔もしくは空隙を形成できることが判明した。ここで、これらは、セラミック部品のさらなる製造プロセスにおいて、特に焼結工程もしくは燃焼時に、有害またはそればかりか毒性の化合物、例えば硫黄化合物または窒素化合物、特に酸化物を形成することなく、セラミック組織から取り除くことができる。ここで、相応の物質の存在は、特に分子レベル、つまり、有機化合物の分子構造における存在が意味されていてよい。
【0018】
さらなる実施態様の範囲において、前記細孔形成成分は、450℃以下、特に300℃以下、例えば200℃以下の温度で分解する、または気相に移行することができる。したがって、この実施態様においては、前記細孔形成成分の除去は、すでに慣用の焼結工程で一般的な温度でセラミック組織から実現することができる。ここで、この温度は、前記細孔形成成分の除去が、最大到達温度よりもはるかに低い温度ですでに開始する程度に低くてよい。このようにして、前記細孔形成成分が、完全にセラミック組織から取り除かれ、これにより所望のガス透過性が確実に調節されることが特に保証されうる。
【0019】
さらなる実施態様の範囲において、前記細孔形成成分は、樹脂、特にフェノール樹脂、炭水化物、特にセルロースおよびデンプン、ならびに/またはヤシ殻、またはこれらの物質の任意の混合物からなる群から選択されていてよい。このような材料の、細孔形成成分としての使用では、多数の適用範囲に好適である、特に有利なガス透過性を得ることができる。さらに、このような材料は、特に有利に加工可能である。詳しくは、前記セラミック組成物のきわめて均質な混合物は、例えば、分散剤成分の添加なしにも生成され、均質なセラミック部品がもたらされうる。さらに、このような材料は、慣用の焼結工程で一般的な温度でも、セラミック組織から問題なく、かつ完全に除去可能であり、これは所望のガス透過性を保証するものである。さらに、前記材料は、好適な構造に形が整えられる、もしくは提供されうる。
【0020】
さらなる実施態様の範囲において、前記組成物は、
・17体積%以上48体積%以下のセラミック成分;および/または
・28体積%以上58体積%以下の結合剤成分;および/または
・6体積%以上37体積%以下の細孔形成成分;および/または
・特に1体積%以上7体積%以下の分散剤成分
を含んでいてよく、前記成分は合計して特に100体積%で加えられてよい。
【0021】
これは、特に有利なセラミック組成物であって、特に塑性成形方法との関連において加工可能な前記組成物である。このような組成物を使用して、特に有利には製造において、所望のガス透過性を大きな機械的安定性と同時に有している、均質なセラミック部品が製造されうる。
【0022】
さらなる実施態様の範囲において、前記組成物は、溶剤不含であってよい。それにより、前記セラミック組成物は、さらなる成分の組み込みおよび除去なしに、所望通りに加工されうる。したがって、この実施態様においては、材料および作業工程を節約することができ、これによって、前記セラミック組成物の、特にセラミック部品の製造のための使用が、特に経済的かつ簡単に行われる。さらに、溶剤なしで済ませることにより環境負荷が軽減される。ここで、溶剤不含の組成物は、本発明の範囲において、特に、例えばシート射出成形法で溶剤として慣用の方法で使用される成分が存在していないことを意味しうる。詳しくは、この実施態様において、前記組成物には、40℃未満の温度で液体である成分は、特に前記セラミック組成物の加工の工程では存在していないことを意味しうる。
【0023】
さらなる実施態様の範囲において、前記細孔形成成分は繊維状に形が整えられていてよい。前記細孔形成成分の繊維状の形態もしくは前記細孔形成成分の個々の構造により、特に、例えば球状の細孔形成剤と比べて、使用される細孔形成成分の比較可能な体積分率では、改善された、つまり、より高いガス透過性が達成されうる。基本的に、球状の細孔形成成分も本発明の範囲において確かに可能であり、ここで排除されないが、しかし、繊維状の細孔形成剤は、改善された達成されるガス透過性のゆえに好ましい。球状または繊維状の細孔形成成分が存在しているかに関わらず、前記細孔形成成分の個々の構造は、なおも様々な形状を有していてよい。例えば、前記構造は、滑らかな表面、亀裂のある表面、または不規則な表面を有していてよい。繊維状の構造は、ここで、本発明の範囲において、特に、直径と比べてより長い長さを有していてよい、つまり最大の寸法として特に縦長の拡がりを有している構造であってよい。ここで、この繊維状の細孔形成成分は、例えば、米粒状または管状の構造を有していてよく、当然、この形態からの逸脱は、本発明の範囲に含まれている。
【0024】
ここで、前記繊維が、1以下:30、特に1以下:15、例えば1以下:10の直径の長さに対する比を有している場合、および/または前記繊維が、400μm以下、特に300μm以下の長さを有している場合に、実施態様において有利でありうる。特に、このような繊維の場合、細孔形成剤構造が相接している組成物は、問題なく製造可能であり、それにより、ガスが広範囲に妨げられることなく孔を流れることができる気孔が得られる。したがって、特に有利なガス透過性が得られる。
【0025】
本発明は、さらに本発明によるセラミック組成物の、セラミック部品、特にガス透過性の電極の製造のための、塑性成形方法の使用下での使用に関し、この塑性成形方法は、特に、押出法、射出成形法、ローラー成形法または平板プレス技術法からなる群から選択されていてよい。特に、このような成形方法により、本発明によるセラミック組成物は、特に有利な方法で簡単かつ経済的に成形されうる。詳しくは、例えば不活性担持される燃料電池または燃料電池の電極のための不活性の担体基材が製造されうる。
【0026】
図面および実施例
本発明による対象のさらなる利点および有利な実施態様を、図により具体的に説明し、以下の記載にて説明する。ここで、これらの図は、記載された性質を有するにすぎず、本発明を何らかの形態に限定する意図はないことに注意されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるセラミック組成物の実施態様から製造されるセラミック部品の断面図
図2】球状の細孔形成成分の孔を示している、本発明によるセラミック組成物の実施態様から製造されるセラミック部品の断面図
図3】繊維状の細孔形成成分の孔を示している、本発明によるセラミック組成物の実施態様から製造されるセラミック部品の断面図
【0028】
図1は、本発明によるセラミック組成物の実施態様から製造されるセラミック部品1の断面図を示している。このセラミック部品1は、セラミックマトリックスもしくは基本構造2を含んでいて、その中に多数の空隙もしくは孔3が配置されている。図1に記載の孔3は、管状構造を有している。
【0029】
セラミック部品1は、本発明によるセラミック組成物から、塑性成形方法の使用下に製造することができ、この塑性成形方法は、特に押出法、射出成形法、ローラー成形法または平板プレス技術法からなる群から選択されていてよい。ここで、セラミック部品1は、例えば、ガス透過性の電極もしくはその担体基材であってよい。
【0030】
本発明によるセラミック組成物は、特にセラミック部品1のための出発材料として、少なくとも1つのセラミック成分、少なくとも1つの結合剤成分、細孔形成成分として少なくとも1つの有機化合物、および特に少なくとも1つの分散剤成分を含んでいる。
【0031】
ここで、前記細孔形成成分は、有機化合物として少なくとも1つのポリマーを含んでいる、または少なくとも1つのポリマーであってよい。実施態様において、前記組成物は、有機化合物を細孔形成剤として含んでいてよく、この有機化合物は、炭素と酸素とから、炭素と水素とから、または炭素、酸素および水素とから形成されている。純粋に例として、前記細孔形成成分は、樹脂、特にフェノール樹脂、炭水化物、特にセルロースおよびデンプン、ならびに/またはヤシ殻、またはこれらの物質の任意の混合物からなる群から選択されていてよい。
【0032】
前記細孔形成成分の除去を後述の通り改善するために、前記細孔形成成分は、さらに450℃以下、特に300℃以下、例えば200℃以下の温度で分解してよい、または気相に移行してよい。
【0033】
前記セラミック組成物は、詳しくは:
・17体積%以上48体積%以下のセラミック成分;および/または
・28体積%以上58体積%以下の結合剤成分;および/または
・6体積%以上37体積%以下の細孔形成成分;および/または
・特に1体積%以上7体積%以下の分散剤成分
を含んでいてよく、前記割合は100体積%で加えることができる。
【0034】
ここで、セラミック組成物の典型的な配合は、セラミック成分としてセラミック粉末(32.4体積%);細孔形成成分(21.6体積%);結合剤(43体積%、例えば2つの異なる水不溶性結合剤(それぞれ9.5体積%)と1つの水溶性結合剤(24体積%)とからの混合物が設けられていてよい)、ならびに分散剤成分(3体積%)を含んでいてよい。ここで、例えばセラミック成分として、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、フォルステライト(ケイ酸マグネシウム)または二酸化アルミニウム(Al23)が使用されてよい。結合剤として、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリアクリレートが使用されてよい。細孔形成剤には、例えばフェノール樹脂繊維が好適であり、分散剤には、オレイン酸または商品名EFKA5207(BASF社、Ludwigshafen)で市販されているヒドロキシル官能性不飽和変性カルボキシル酸が好適である。さらに好適であるのは、ポリアルキレングリコールエーテル、例えば、商品名Brij、例えばBrij72(ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル)(Uniqema Americas LLC社、Wilmington Del.,US)で市販されているようなポリアルキレングリコールエーテルである。
【0035】
上述のことから、前記セラミック組成物が、完全に溶剤なしで済ますことができる、つまり、溶剤不含であってよいことが明らかである。
【0036】
本発明によるセラミック組成物は、例えば、まず好適な塑性成形方法、例えば射出成形法または押出法により成形されてよい。それに引き続き、得られた加工対象物(Rohling)は、結合剤が、例えば熱作用により、または溶剤により取り除かれることによって、脱バインダーすることができる。したがって、脱バインダーされた加工対象物は、焼結されてよく、前記細孔形成成分は、燃焼によりセラミック組織から取り除かれる。このようにして、図1に示された、孔3もしくは空隙を含んでいる基本構造2を形成することができる。
【0037】
典型的な組成物は、ここで以下を含んでいてよい:
【表1】
【0038】
異なる細孔形成成分の使用下に、前記組成物を用いて得られたガス透過性を第1表に示す。
【表2】
【0039】
第1表によれば、番号1から番号3では、繊維状の細孔形成成分が示されていて、それと比べて、番号4および番号5は、球状の細孔形成成分を示している。ここで、特に優れた値は、滑らかで、幾何学的に規則的な、人工的に製造されたフェノール樹脂繊維で得ることができた。この繊維状の細孔形成成分、特にフェノール樹脂は、塑性成形方法、押出もしくは射出成形の使用下に、8.0E−10cm2までのきわめて高いガス透過性を生成できることが分かる。しかし、球状の細孔形成成分、例えばデンプンまたはヤシ殻によっても、1.1−10cm2もしくは6.0E−11cm2のなおも優れたガス透過性が達成されうる。
【0040】
前記生成されたガス透過性を図2および図3に示す。図2および図3では、ここで特に、セラミック基本構造2に配置されている、セラミック部品1における孔3が示されている。図2は、ここで、球状の細孔形成成分により生成された孔3もしくは空隙を示しており、それと比べて図3では、繊維状の細孔形成成分により生成された孔3もしくは空隙が示されている。
【0041】
全気孔率の他にガス透過性にとっては、ガスが、セラミック部品1を貫流するために、多数の小さな狭路を流れなければならないかどうかが、むしろ決定的でありうることを示すことができた。このような狭路は、ここで特に、前記細孔形成成分の元の接点もしくはその個々の構造であってよい。したがって、このような接点は、特に球状の細孔形成剤の場合に存在しており、それと比べて繊維状の細孔形成成分から生じた管状の空隙は、すでに構造的に広い範囲を狭路を含まずに有していて、この範囲は、ガス流への影響が明らかにより少ない。
【0042】
それに応じて、図2は、球状の細孔形成成分により生成された孔3を有するセラミック部品1を通るガス分子の経路(矢印4で表示)を示している。図2では、このガス分子は、球状の細孔形成成分の元の接点により形成される多数の小さなゲート(Pforte)を流れる。
【0043】
相応して、図3は、繊維状の細孔形成成分により生成された孔3を有するセラミック部品1を通るガス分子の経路(矢印5で表示)を示している。図3では、このガス分子は、長い区間でも比較的大きな抵抗なしに、繊維状の細孔形成成分により形成された管状の孔3を流れることができる。
【0044】
さらに、所定のガス流区間に対して、傾向上、繊維状の細孔形成剤の使用時よりも大きい割合の球状の細孔形成剤が必要とされることが判明した。それにより、繊維状の細孔形成剤の使用では、さらに材料を節約することができ、このことは、繊維状の細孔形成剤のさらなる利点を提供する。
図1
図2
図3