(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)の比較を、時間的に相前後して求められた2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)において実施する、
請求項1に記載の方法。
前記2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)の比較を、該2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)相互間のシフトが生じているのか否かを求めるようにして実施する、
請求項1または2に記載の方法。
前記2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)の比較を、時間的に前に求められたポジション−圧力特性曲線(110,120)に対する時間的にあとで求められたポジション−圧力特性曲線(110,120)のシフトが、いっそう小さいアクチュエータポジションに向かっているのか否かを求めるようにして実施する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
前記比較を、予め定められた共通の比較圧力値のところで前記2つのポジション−圧力特性曲線(110,120)からそれぞれ生じる2つのポジション値の比較により実施する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
ブリーディング開口(18)周囲の予め定められたポジション範囲で、前記アクチュエータ経路に沿って前記アクチュエータ(3)によりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配(330)を求める、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
予め定められた圧力値において前記アクチュエータ経路に沿って、前記アクチュエータ(3)によりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配(330)を求め、前記予め定められた圧力値は、0.5bar〜6barである、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
予め定められた圧力範囲において前記アクチュエータ経路に沿って、前記アクチュエータ(3)によりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配(330)を求め、前記予め定められた圧力範囲は、0bar〜7.5barである、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を備えた方法、ならびに請求項13の上位概念に記載の特徴を備えたハイドロリック操作装置に関する。
【0002】
本発明は、保守サービスの際つまりたとえばサービス工場において、ハイドロリック操作装置特にハイドロリッククラッチシステムのハイドロリック操作装置の適正な充填状態を監視するために用いられる。
【0003】
ハイドロリッククラッチシステムは、圧力センサを備えたクラッチア作動機構によって作動され、これはたとえば
図1、DE 10 2010 047 800 A1 ならびにDE 10 2010 047 801 A1に示されている。この場合、クラッチ作動機構は、いわゆるハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCA(Hydrostatic Clutch Actuator)である。この種のハイドロスタティックアクチュエータとは、ハイドロスタティックな伝達区間を備えたアクチュエータのことであり、たとえばハイドロリック流体を含む圧力管路を備えたアクチュエータのことである。圧力管路の圧力は圧力センサによって捕捉される。ハイドロスタティックアクチュエータによって、このアクチュエータと結合された部材を動かそうとする場合、伝達区間ないしは圧力管路内でハイドロリック流体が動かされ、これはたとえばスレーブシリンダによって引き起こされ、スレーブシリンダはハイドロリック流体により結合されてマスタシリンダを動かす。この部材が自身のポジションを保持するようにすべきであるならば、伝達区間内のハイドロリック流体は静止し、アクチュエータの名称となったハイドロリック流体のハイドロスタティックな状態が生じる。
【0004】
クラッチの連結解除システムとして用いられるたとえばハイドロリッククラッチアクチュエータ(HCA)などのハイドロリッククラッチシステムは、問題のない機能を保証するために空気が含まれていないようにする必要がある。したがって、ハイドロリッククラッチ連結解除システムを備えた自動車の初稼動時に、真空充填を行うことが知られている。保守サービスの際、たとえばサービス工場などでは、このような複雑でコストのかかる補助手段を通常は利用できず、したがって相応の工場規則に従い、ハイドロリッククラッチ連結解除システムについて初稼動時と等価の再充填を可能にするフローが定められている。この場合、充填において重要であるのは、充填の形式にかかわらず、充填すべき区間が完全に充填されていること、つまりは残留空気が存在しないことである。
【0005】
部品の公差に起因して、充填量もしくは充填圧力の設定は条件付きでしか利用できない。ドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 087 684.7号ならびにドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 087 652.9号に記載されているように、従来技術によれば、残留空気がハイドロリック区間に残されたままとなる充填プロセスを、残留空気のない完全に充填されたシステムと十分明確には区別できない。ただし車両動作中も、本来であればハイドロリック流体しか存在すべきでない伝達区間もしくは圧力管路において、このような残留空気を検出できるようにすべきである。一般的に望まれているのは、伝達区間もしくは圧力管路内に存在するまたは形成されるガス状成分を検出できるようにすることである。基本的にこの種のガス状成分を排出するために、いわゆるブリーディング開口ないしはスニファ開口(ブリーディングホールないしはスニファホールとも称する)がサージタンクに対して設けられる。これは従来技術においてかなり以前から知られており、DE 10 2010 047 800 A1ならびにDE 10 2010 047 801 A1に記載されており、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 103 774.1号にも記載されている。この目的で、クラッチ制御装置はクラッチ作動機構を、ブリーディング開口に対し相対的な規定のポジションまで移動させて、伝達区間の空気を抜き出すことができるようにし、その際、伝達区間とサージタンクとの間の接続をブリーディング開口を介して開放し、空気を排出できるようにする。
【0006】
本願において「残留空気」という用語は、たとえばクラッチ作動機構または変速機作動機構などのハイドロリック操作装置におけるハイドロリック伝達区間内の他のすべてのガス状成分のことも意味する。
【0007】
それぞれ2つの圧力値P1とP2に対して生じる2つの経路差の相違は、クラッチ「標準」のケース(伝達区間が残留空気を含まない場合)と、クラッチ「残留空気」のケース(伝達区間が残留空気を含む場合)とでは著しく僅かであり、したがって従来技術によればこれらのケースを十分確実には区別できない。
【0008】
保守サービスの際、たとえばサービス工場などでクラッチを交換する場合、ハイドロスタティックシステムの真空圧充填は実施されない。そこでは空気排出のための排気手順(クラッチを継続的に開閉するためのポジション傾斜ないしはポジションランプ)を用いて、ハイドロリック区間の空気が抜き出される。このような排気プロセスを監視し、最終的に終了させる必要がある。
【0009】
本発明の課題は、保守サービスの際たとえばサービス工場などにおいて、真空圧充填を行わないハイドロリック操作装置たとえばハイドロスタティッククラッチシステムのハイドロリック操作装置の適正な充填を監視する方法を提案することである。特に、ハイドロリック操作装置内の残留空気を確実に識別する方法を提供することにある。
【0010】
この課題は、請求項1に記載された特徴を備えた方法ならびに請求項13に記載された特徴を備えたハイドロリック操作装置によって解決される。
【0011】
本発明による方法ならびに本発明によるハイドロリック操作システムによれば、ハイドロリック伝達区間におけるガス状の物質の識別特に残留空気の識別をさらに改善することができる。
【0012】
方法に関する技術的な観点において、上述の課題は以下で説明する方法によっても解決される。
【0013】
ポジション−圧力特性曲線ならびに変位−圧力特性曲線という用語は、本発明では同義語として扱う。また、変位またはポジションという用語は、アクチュエータ経路に関連して用いられる概念であって、このアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータにおいてクラッチを動かす部材たとえばスレーブシリンダ内のピストンが移動する。
【0014】
本発明は、ハイドロリック操作システムの適正な充填を検査する方法に関する発明に関する。この場合、ハイドロリック操作システムには、制御装置によりアクチュエータを用いて操作可能な、シリンダ内のピストンと、シリンダ内の圧力を測定するための第1のセンサと、アクチュエータ経路に沿って移動するアクチュエータのポジションを検出する第2のセンサとが設けられている。本発明によれば、圧力媒体によるハイドロリック操作システムの適正な充填を検査するために、以下の検査ステップを実施する。すなわち、
・アクチュエータを予め定められた最大アクチュエータポジションまで移動させ、最大アクチュエータポジションにおける圧力を測定し、測定された圧力を予め定められた最大圧力値と比較する検査ステップを実施し、測定された圧力が予め定められた最大圧力値と第1の許容範囲内で一致していれば、この検査ステップが成功したものとみなし、そうでなければこの検査ステップは成功しなかったものとみなし、不適正な充填が行われていると判定する。
・ポジション−圧力特性曲線の最大圧力勾配を、この特性曲線の予め定められた範囲において求める検査ステップを実施し、求められた最大圧力勾配が、第2の許容範囲を考慮に入れて、予め定められた圧力勾配閾値よりも大きければ、この検査ステップが成功したものとみなし、そうでなければこの検査ステップは成功しなかったものとみなし、不適正な充填が行われていると判定する。
・ポジション−圧力特性曲線を、2つのポジション−圧力特性曲線が得られるまで求め、この2つのポジション−圧力特性曲線を比較する検査ステップを実施し、この2つのポジション−圧力特性曲線が第3の許容範囲内で一致していれば、この検査ステップが成功したものとみなし、そうでなければこの検査ステップは成功しなかったとみなし、不適正な充填が行われていると判定する。
その際、これら3つの検査ステップすべてが成功していれば、適正な充填が行われていると判定する。
【0015】
最大圧力勾配が圧力勾配閾値を下回っていれば、まだ確実にシステム内に空気が存在している。この閾値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0016】
本発明の格別有利な実施形態によれば、2つのポジション−圧力特性曲線の比較が、時間的に相前後して求められた2つのポジション−圧力特性曲線において実施される。
【0017】
本発明のさらに別の格別有利な実施形態によれば、2つのポジション−圧力特性曲線の比較は、この2つのポジション−圧力特性曲線相互間のシフトが生じているのか否かを求めるようにして実施される。
【0018】
さらに本発明の別の有利な実施形態によれば、2つのポジション−圧力特性曲線の比較が、時間的に前に求められたポジション−圧力特性曲線に対する時間的にあとで求められたポジション−圧力特性曲線のシフトが、いっそ小さいアクチュエータポジションに向かっているのか否かを求めるようにして実施される。
【0019】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、上記の比較が、予め定められた共通の比較圧力値のところで2つのポジション−圧力特性曲線からそれぞれ生じる2つのポジション値の比較により実施される。
【0020】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、上記の比較が、2つのポジション−圧力特性曲線からそれぞれ生じる2つのサンプリングポイントの比較により実施される。
【0021】
本発明のさらに別の格別有利な実施形態によれば、不適正な充填が行われていた場合には、制御装置により排気すなわち空気排出を行わせる。これは直後に行われ、あるいは次の機会に行われる。
【0022】
本発明のさらに別の格別有利な実施形態によれば、アクチュエータ経路に沿ってアクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められる。
【0023】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ブリーディング開口周囲の予め定められたポジション範囲で、アクチュエータ経路に沿ってアクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められる。この場合、アクチュエータ経路を求めるためにたとえば、シリンダ内のピストンの流体側の端面を利用することができる。
【0024】
本発明のさらに別の択一的な有利な実施形態によれば、予め定められた圧力値においてアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められ、予め定められた圧力値は、有利には0.5bar〜6barである。予め定められた圧力値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態によれば、別の選択肢として、あるいはさらに付加的に、予め定められた圧力範囲においてアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められ、予め定められた圧力範囲は、有利には0bar〜7.5barであり、殊に有利には0bar〜5.5barである。予め定められた圧力範囲の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0026】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムを圧力媒体で新たに充填した後あるいは再充填した後、適正な充填を検査するための方法が実施される。
【0027】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムの可用性をチェックするために適正な充填を検査する方法は、規則的な間隔で実施される。
【0028】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、本発明による検査方法は、ハイドロリック操作システムの操作による特定の走行状況中に実施される。
【0029】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、適正な充填を検査するための方法は、テストルームコンピュータ、テスタ、あるいはハイドロリック操作システムが組み込まれた機構に設けられた制御装置によって実施される。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、適正なおよび/または不適正な検査の結果がエラーメモリに格納され、および/またはディスプレイに表示される。
【0031】
装置に関する技術的な観点において、上述の課題は以下で説明するハイドロリック操作システムによっても解決される。
【0032】
本発明によれば、以下の構成を備えたハイドロリック操作システムが提案される。すなわちこのハイドロリック操作システムには、制御装置によりアクチュエータを介して操作可能な、シリンダ内のピストンと、シリンダ内の圧力を測定する第1のセンサと、アクチュエータのポジションを検出する第2のセンサとが設けられている。本発明によれば、圧力媒体によるハイドロリック操作システムの適正な充填を検査するために、既述の方法が実施される。
【0033】
本発明の1つの格別有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムはハイドロリッククラッチ操作システムである。
【0034】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムはハイドロリック変速機操作システムである。
【0035】
ただし本発明によるハイドロリック操作システムは、ハイドロリッククラッチ操作システムまたはハイドロリック変速機操作システムにおいて用いられるだけでなく、変速機システムにおける変速段切換装置においても、また、スロットルバルブ、補助装置、補助駆動装置のためのエンジンシステム内の操作システムとしても、ならびに排気ガスシステムおよびチャージシステム、ブレーキシステムにおける操作システムとしても、さらに、輸送用車両などの商用車あるいは建設機械や土木機械における操作のためにも、有効に用いることができる。
【0036】
以下の図面ならびにそれらの図面の説明には、本発明のさらに別の利点ならびに有利な実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ハイドロスタティッククラッチシステムの構造を示す図
【
図2】ハイドロリック区間内の種々の空気量における変位−圧力特性曲線を示す図
【
図3】
図2による4つの変位−圧力特性曲線の下方の圧力範囲における最大圧力勾配を示す図
【
図4】本発明による方法の実施例を説明するための圧力と経路の特性曲線を示す図
【
図5】検査に関連する領域に目印を付けた変位−圧力特性曲線を示す図
【
図6】最大圧力勾配を有する下方の圧力範囲における変位−圧力特性曲線を示す図
【0038】
図1には、ハイドロリックのハイドロスタティッククラッチアクチュエータ(HCA)の一例として、ハイドロリッククラッチシステム1の構造が示されている。ハイドロリッククラッチシステム1には供給側15に、アクチュエータ3を制御する制御装置2が設けられている。アクチュエータ3とシリンダ4内のピストン19の位置が、アクチュエータ経路に沿って右側に変化すると、シリンダ4の容積が変化する。それによってシリンダ4内に圧力Pが形成され、この圧力は圧力媒体7によりハイドロリック管路9を介してハイドロリッククラッチシステム1のマスタ側16へ伝達される。ハイドロリック管路9の長さと形状は、車両の構造スペースに整合されている。マスタ側16において、シリンダ4′内の圧力媒体7の圧力Pによって距離が変化し、クラッチ8の操作のために、この変化がクラッチ8に伝達される。ハイドロリッククラッチシステム1のスレーブ側15におけるシリンダ4内の圧力Pは、第1のセンサ5によって求めることができる。第1のセンサ5は、有利には圧力センサである。アクチュエータ3がアクチュエータ経路に沿って辿る移動距離は、第2のセンサ6によって求められる。
【0039】
本発明による1つの実施形態は、ブリーディング開口領域のすぐ近くでクラッチを閉じたときに圧力上昇を評価する方法である。
【0040】
クラッチが閉じられたときに変位−圧力特性曲線が求められる。
図2には、4つのこの種の変位−圧力特性曲線が示されている(110,120,130,140)。
図2には、クラッチの閉鎖(経過特性曲線のそれぞれ上方部分)についても、クラッチの開放(経過特性曲線のそれぞれ下方部分)についても、それらに典型的なヒステリシス作用とともにそれぞれ描かれている。妨害作用を低減するために、変位信号と圧力信号がそのまま分析されるのではなく、それらがいくらかフィルタリングされる(たとえばPT1フィルタ)。
【0041】
フィルタリングされた信号から、圧力勾配(圧力差と変位差の比)が求められる。圧力勾配を求めるために、これに代わる手法(たとえばカルマンフィルタ)を使用することもできる。
【0042】
ハイドロリック区間にまだ空気が存在しているならば、ブリーディング開口領域でクラッチが閉じられたときに小さい圧力勾配が生じる。
【0043】
ブリーディング開口領域および変位−圧力特性曲線の安定領域のすぐ近くでクラッチが閉じられたときに達成可能な最大圧力、最大圧力勾配を評価する方法である。
【0044】
排気手順の一部分として、クラッチが規則的に完全に開放され、すなわちブリーディング開口が開かれ、これによってハイドロリック補償が可能となり、これは完全に閉じられるまで、すなわち最大変位または最大許容圧力に達するまで行うことができ、ついで再び開放される。
【0045】
・ステップ1:達成可能な最大圧力の監視
ハイドロリック区間に多量の空気が存在していると、最大のアクチュエータポジション170(
図2の22mm)であっても、最大要求圧力180(
図2の40bar)に到達しない(
図2の変位−圧力特性曲線140)。ハイドロリック区間において空気量が減少していくと、達成可能な最大圧力が上昇していき、最終的には最大要求圧力に達する(
図2の変位−圧力特性曲線130)。
【0046】
・ステップ2:ブリーディング開口領域のすぐ近くでクラッチを閉じたときの最大圧力勾配の監視
クラッチが閉じられると、ブリーディング開口閉鎖後、板ばねプリロードの領域(
図2の約5bar)まで、最初の圧力上昇が発生する。ドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 087 652.9などに記載されている方法によれば、この領域において最大圧力勾配が求められ、監視のために利用される。
図3には、個々の変位−圧力特性曲線110,120,130,140に対して求められた最大圧力勾配210,220,230,240が示されている。この監視ステップを首尾よく行うためには、最大圧力勾配が予め定められた閾値250(たとえば
図3の3bar/mm)を上回る必要がある。ただしこの基準は、最適な排気(
図2の変位−圧力特性曲線120)を識別するためには、まだ十分ではない。
【0047】
最大圧力勾配を以下のようにして求めることができる:
ハイドロリック区間にまだ空気が存在しているならば、ブリーディング開口領域でクラッチが閉じられたときに小さい圧力勾配が生じる。評価のために2つの選択肢AとBがある。
【0048】
A.圧力が一定のとき(たとえば2bar)、圧力勾配が固定的に定められた閾値と比較される。この閾値を下回っているならば、空気はまだシステム内に確実に存在している。このことがクラッチ制御装置へ通知され、それによってさらに排気を行わせることができる。つまりこのプロセスフローAによれば、クラッチアクチュエータ3はクラッチ閉鎖方向で、有利には0.5bar〜6barの圧力範囲の設定圧力が生じるようなポジションに動かされ、殊に有利には2barの設定圧力が生じるようなポジションに動かされる。このポジションにおいて、圧力勾配がたとえば直前に測定された変位値と圧力値から求められ、あるいは別の選択肢として、クラッチ閉鎖方向での小さい運動が予め定められた圧力の範囲で実行され、これによって予め定められた圧力の範囲における圧力勾配を求めるための測定値を得ることができる。このようにして求められた圧力勾配は、以降のプロセスフローに対し最大圧力勾配とみなされる。ついで求められた最大圧力勾配が予め定められた圧力勾配閾値250と比較される。求められた最大圧力勾配の値が予め定められた圧力勾配閾値250よりも小さければ、ガス状の成分が伝達区間内に存在しているとみなされる。予め定められた圧力の値の具体的な設定ならびに圧力勾配閾値250の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。なぜならば、クラッチにおけるハイドロリック操作システムの技術的な個別ケースならびにガス状成分の特性を、圧力に留意して考慮しなければならないからである。その際に当業者は、予期される圧力勾配がブリーディング開口付近で著しく大きくなるような圧力値を設定することになる。
【0049】
B.下方のポジション範囲(たとえばブリーディング開口周辺の拡張領域、すなわちピストン19の流体側の端面がシリンダ4内においてブリーディング開口18の拡張領域に位置する場合)、および/または下方の圧力領域(たとえば0〜5bar)において、フィルタリングされた変位−圧力特性曲線110の最大圧力勾配210が求められる。この最大圧力勾配が、予め固定的に定められた閾値250と比較される。この閾値250を下回っているならば、空気はまだシステム内に確実に存在している。このことがクラッチ制御装置へ通知され、それによってさらに排気を行わせることができる。つまりフローBによれば、クラッチアクチュエータ3はクラッチ閉鎖方向でポジション移動されて、ピストン19の流体側端面がシリンダ4内で、ブリーディング開口18の拡張領域の予め定められたポジション範囲の始端に位置するようになる。ここでブリーディング開口の拡張領域とは、ブリーディング開口周囲のポジション範囲のことであり、本発明によればこの範囲では最大の圧力勾配が見込まれ、たとえば
図2または
図3に示されているように、有利には−2.5mm〜+12.0mmのポジション範囲に該当する。このポジション範囲の設定に対する別の選択肢として、あるいはこのことに加えて、クラッチアクチュエータ3がクラッチ閉鎖方向でポジション移動され、有利には0barから7.5bar殊に有利には0bar〜5.5barである予め定められた圧力範囲のうち、最も低い圧力(予め定められた圧力範囲の始端)となるポジションに動かされる。ブリーディング開口の拡張領域における予め定められたポジション範囲において、または別の選択肢として、予め定められた圧力範囲において、あるいはさらに別の選択肢として、予め定められたポジション範囲のポジションにもあり予め定められた圧力範囲の圧力にもあるとき、そのつど予め定められた範囲にある最大圧力勾配が求められる。この場合、最大圧力勾配を求めるために、予め定められた上述の範囲をアクチュエータがクラッチ閉鎖方向で通過するようにして、変位−圧力特性曲線が求められ、この特性曲線から最終的に、予め定められた範囲に対する最大圧力勾配が求められる。ついで求められた最大圧力勾配が、(有利にはフローAの場合と同じ値を有する)予め定められた圧力勾配閾値250と比較される。求められた最大圧力勾配の値が予め定められた圧力勾配閾値250よりも小さければ、フローAの場合のように、ガス状の成分が伝達区間内に存在しているとみなされる。ブリーディング開口付近の予め定められたポジション範囲の具体的な設定、予め定められた圧力範囲の具体的な設定、ならびに圧力勾配閾値250の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。なぜならば、クラッチにおけるハイドロリック操作システムの技術的な個別ケース、ならびにガス状成分の特性を、圧力に留意して考慮しなければならないからである。その際に当業者は、予期される圧力勾配がブリーディング開口付近で著しく大きくなるような範囲を設定することになる。
【0050】
・ステップ3:変位−圧力特性曲線の安定性の監視
次の監視ステップでは、相前後する空気排出傾斜において、変位−圧力特性曲線がいっそう小さいアクチュエータポジションにシフトするか否かがチェックされる(
図2の変位−圧力特性曲線110と変位−圧力特性曲線120との比較)。簡単にするためこの比較は、予め定められた圧力において実施される(たとえば
図2の20barのところ)。対応するアクチュエータポジションが格納される。相前後する空気排出傾斜においてそれらのアクチュエータポジションが一定に保持されていれば、あるいは少なくとも狭い許容範囲内に維持されていれば、空気排出が成功したとみなすことができる。
【0051】
予め定められた圧力のときではなく、別の選択肢として、比較すべき圧力−変位特性曲線110,120の位置ないしは状態を、これらの特性曲線110,120を辿りながら評価することもできる。
【0052】
さらに別の選択肢として、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 088 430.0などによって求められるような個々の変位−圧力特性曲線の識別されたサンプリングポイントに基づき、比較を評価することもできる。
【0053】
・ステップ4:空気排出手順の終了
空気排出が成功したとみなされたならば、空気排出手順を終了させることができる。これに加え空気排出手順の終了が、クラッチ制御装置ならびに空気排出手順をスタートさせたテスタに通知される。
【0054】
ここで述べた数ステップにわたる方法により、保守サービスにおいてハイドロスタティッククラッチシステムの適正な充填を確実に監視することができる。これらのステップによる方法を用いることで、どのような時点においても目下の空気排出状態を推定することができる。このことは、ステップ3を単独で使用したとしても不可能である。
【0055】
ここで提案されるのは、ブリーディング開口領域および変位−圧力特性曲線の安定領域のすぐ近くでクラッチが閉じられたときに達成可能な最大圧力、最大圧力勾配の評価に基づき、ハイドロリック操作システム特にハイドロスタティッククラッチシステムの適正な充填を監視する方法である。
【0056】
本発明は、請求項15の上位概念に記載の特徴を備えた方法にも関する。
【0057】
本発明は、ハイドロスタティック操作システムの制御に用いられ、たとえば自動化された変速機特にツインクラッチ変速機におけるハイドロスタティッククラッチ操作システムの制御に関する。
【0058】
ハイドロリッククラッチシステムは、圧力センサならびに変位センサを備えたクラッチアクチュエータ機構によって作動され、これはたとえば
図1、DE 10 2010 047 800 A1 ならびにDE 10 2010 047 801 A1に示されている。クラッチ作動機構は、いわゆるハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCA(Hydrostatic Clutch Actuator)である。この種のハイドロスタティックアクチュエータとは、ハイドロスタティックな伝達区間を備えたアクチュエータのことであり、たとえばハイドロリック流体を含む圧力導管を備えたアクチュエータのことである。圧力導管の圧力は圧力センサによって捕捉される。ハイドロスタティックアクチュエータによって、このアクチュエータと結合された部材を動かそうとする場合、伝達区間ないしは圧力管路内でハイドロリック流体が運動し、これはたとえばスレーブシリンダによって引き起こされ、スレーブシリンダはハイドロリック流体により結合されてマスタシリンダを動かす。この部材が自身のポジションを保持するようにすべきであるならば、伝達区間内のハイドロリック流体は静止し、アクチュエータの名称となったハイドロリック流体のハイドロスタティックな状態が生じる。
【0059】
クラッチ特にツインクラッチシステムの操作のために、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCAがクラッチ連結解除システムとして用いられる。このアクチュエータはピストンから成り、このピストンは、相応の機械的接続部材を介して電動モータにより駆動され、ハイドロリック区間を介してクラッチの連結解除システムを操作する。クラッチは通常、(クラッチアクチュエータによる支援なくばね機構により)自律的に開放されるクラッチ(ノーマリ−・オープン・クラッチnormaly open clutch)であり、他方、このクラッチはハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCAによって、ばね機構のばね力に抗して閉鎖される。ハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCAは、すでに述べたように、アクチュエータ変位を捕捉する内部変位センサと、ハイドロリック区間内の圧力を捕捉する内部圧力センサとを装備している。
【0060】
自動的には調整できないクラッチの操作を耐用期間全体にわたり保証できるようにする目的で、ハイドロスタティック連結解除システムには、十分に大きいアクチュエータ変位のリザーブが設けられており、ないしはアクチュエータ変位に余裕が設けられている。クラッチの摩耗および/またはハイドロスタティックシステムにおける漏れが生じることによって、要求されるクラッチトルクと実際に伝達されるクラッチトルクとの間に偏差が引き起こされる。工場においてそのつど原因に従い、ハイドロスタティックシステムにおける漏れを取り除かなければならず、あるいは摩耗したクラッチパーツを交換しなければならない。目下のところ、ハイドロスタティックシステムにおいて、クラッチの摩耗もしくはハイドロリッククラッチの故障つまりクラッチアクチュエータとクラッチ連結装置との間の漏れを識別する方法は存在しない。また、これら両方の故障の可能性は区別されない。つまりドライバにとっては、要求されたクラッチトルクが遵守されない、という結果だけしか感じとれない。
【0061】
工場での検査に伴い、多大な手間やコストが生じる。この場合、エラーエントリは存在しない。クラッチが故障し場合には、ハイドロリック区間が故障したときとは別の修理措置を講じなければならない。
【0062】
本発明が基礎とする課題は、クラッチが故障した場合にエラー原因の検出と区別を行えるようにすることである。すなわち工場でのエラー分析の負担を軽減するために、早期のクラッチ摩耗の検出およびクラッチシステムにおける漏れの識別、ならびにこれら双方のエラーの可能性の区別を行えるようにした解決手段を見つけ出すことである。
【0063】
この課題は、請求項15に記載された方法によって解決される。
【0064】
本発明によれば、ハイドロリッククラッチ操作システムおよびこのシステムによって操作される摩擦クラッチにおけるエラー検出方法が提供される。このハイドロリッククラッチ操作システムは、制御装置によりアクチュエータを介して操作可能な、圧力媒体を含むシリンダ内のピストンと、圧力媒体の圧力を測定する第1のセンサと、アクチュエータ経路を辿るアクチュエータのポジションを検出する第2のセンサを備えている。この場合、本発明によれば、以下の条件のうち1つまたは複数の条件が満たされているならば、ハイドロリッククラッチ操作システムまたはこのシステムによって操作される摩擦クラッチにおいてエラーが発生していると判定される。すなわち、
・アクチュエータの予め定められたポジションにおける圧力媒体の圧力が、予め定められた最小圧力限界値よりも小さい。
・クラッチの目下のサンプリングポイントのポジションと、アクチュエータ経路上の予め定められたポジションとの間の距離が、予め定められたポジション差限界値よりも小さい。
・クラッチのサンプリングポイントに対し、直前の測定時点ないしは最終測定時点で終了する予め定められた期間内に求められた値の変化速度が、予め定められたサンプリングポイント変化速度限界値よりも大きい。ここでサンプリングポイントの変化速度は、サンプリングポイントに対し求められた値の時間経過特性の時間勾配である。
・クラッチトルクが予め定められた出力クラッチ目標トルクから予め定められた別のクラッチ目標トルクに高められたときに、エンジン回転数が、出力回転数と予め定められたエンジン回転数値との和を超えている。
・クラッチの摩擦値に対し、直線の測定時点ないしは最終測定時点で終了する予め定められた期間内に求められた値の変化速度が、予め定められた摩擦値変化速度限界値を超えている。ここで摩擦値の変化速度は、摩擦値に対し求められた値の時間経過特性の時間勾配である。
【0065】
このようにして有利には、ハイドロリッククラッチ操作システムにおけるエラーつまりハイドロリッククラッチ操作システムにおける漏れを検出することができ、および/または摩擦クラッチにおけるエラーつまりクラッチライニングの摩耗を検出することができる。
【0066】
個々の条件は、互いに代替となる選択肢を成している。本発明による方法は、選択肢すべてを順次実施しようというものではなく、1つの格別有利な実施形態によれば、単一の条件だけによって、またはいくつかの条件だけによって、本発明による方法を実施するのが有利である。1つまたは複数の有利な条件の選択は、技術的な個別ケースを考慮して当業者の手に委ねられる。
【0067】
本発明による方法のさらに別の格別有利な実施形態によれば、アクチュエータポジションが一定のときに時間の経過に伴う圧力降下が、予め定められた圧力降下限界値よりも大きいならば、ハイドロリッククラッチ操作システムにおけるエラーであると判定される。
【0068】
このようにして有利には、ハイドロリッククラッチ操作システムにおけるエラーつまり漏れを検出することができる。
【0069】
本発明による方法のさらに別の格別有利な実施形態によれば、以下の条件のうち1つまたは複数の条件が満たされているならば、ハイドロリッククラッチ操作システムにおいてエラーが発生していると判定される。すなわち、
・アクチュエータポジションが一定のときに、予め定められたアクチュエータのポジションにおいて、時間の経過に伴う圧力降下が、予め定められた漏れ−圧力降下限界値よりも大きい。
・時間が経過していく中で生じるクラッチのそれぞれ目下のサンプリングポイントと、アクチュエータ経路上の予め定められたポジションとの間の、時間の経過に伴う距離の変化が、予め定められたポジション差変化限界値よりも大きい。ここでサンプリングポイントの変化速度は、サンプリングポイントに対し求められた値の時間経過特性の時間勾配である。
・クラッチのサンプリングポイントに対し、直前の測定時点ないしは最終測定時点で終了する予め定められた期間内に求められた値の変化速度が、予め定められた漏れ−サンプリングポイント変化速度限界値よりも大きい。
【0070】
このようにして有利には、ハイドロリッククラッチ操作システムにおけるエラーつまりハイドロリッククラッチ操作システムにおける漏れを、個々の条件各々に従って検出することができ、摩擦クラッチにおけるエラーと区別することができ、つまりクラッチライニングの摩耗が個々の条件各々によれば生じていないことと、区別することができる。
【0071】
個々の条件は、互いに代替となる選択肢を成している。本発明による方法は、これらすべての選択肢を順次実施しようというものではなく、1つの格別有利な実施形態によれば、単一の条件だけによって、またはいくつかの条件だけによって、本発明による方法を実施するのが有利である。1つまたは複数の有利な条件の選択は、技術的な個別ケースを考慮して当業者の手に委ねられる。
【0072】
本発明による方法のさらに別の格別有利な実施形態によれば、以下の条件のうち1つまたは複数の条件が満たされているならば、ハイドロリッククラッチ操作システムによって操作される摩擦クラッチおいてエラーが発生していると判定される。すなわち、
・予め定められたアクチュエータのポジションにおける圧力媒体の圧力が、予め定められた最小圧力限界値よりも小さく、かつアクチュエータポジションが一定のときの、アクチュエータの予め定められたポジションにおける時間の経過に伴う圧力降下が、予め定められた漏れ−圧力降下限界値よりも小さい。
・クラッチの目下のサンプリングポイントのポジションと、アクチュエータ経路上の予め定められたポジションとの間の距離が、予め定められたポジション差限界値よりも小さく、かつ時間が経過していく中で生じるクラッチのそれぞれ目下のサンプリングポイントと、アクチュエータ経路上の予め定められたポジションとの間の、時間の経過に伴う距離の変化が、予め定められた漏れ−ポジション差変化限界値よりも小さい。ここでサンプリングポイントの変化速度は、サンプリングポイントに対し求められた値の時間経過特性の時間勾配である。
・クラッチのサンプリングポイントに対し、直前の測定時点ないしは最終測定時点で終了する予め定められた期間内に求められた値の変化速度が、予め定められたサンプリングポイント変化速度限界値よりも大きく、かつクラッチのサンプリングポイントに対し、直前の測定時点ないしは最終測定時点で終了する予め定められた期間内に求められた値の変化速度が、予め定められた漏れ−サンプリングポイント変化速度限界値よりも小さい。
【0073】
このようにして有利には、摩擦クラッチにおけるエラーつまりクラッチライニングの摩耗を、個々の条件各々に従って検出することができ、ハイドロリッククラッチ操作システムにおけるエラーと区別することができ、つまりハイドロリック操作システムにおける漏れが個々の条件各々によれば生じていないことと、区別することができる。
【0074】
個々の条件は、互いに代替となる選択肢件を成している。本発明による方法は、選択肢すべてを順次実施しようというものではなく、1つの格別有利な実施形態によれば、単一の条件だけによって、またはいくつかの条件だけによって、本発明による方法を実施するのが有利である。1つまたは複数の有利な条件の選択は、技術的な個別ケースを考慮して当業者の手に委ねられる。
【0075】
本発明による方法のさらに別の格別有利な実施形態によれば、アクチュエータ経路上の予め定められたポジションは、クラッチ閉鎖方向における最大アクチュエータ変位である。
【0076】
本発明による方法のさらに別の有利な実施形態によれば、クラッチ閉鎖方向で時間的に相前後して行われた2つのサンプリングポイント測定間のサンプリングポイント変化だけが考慮される。
【0077】
本発明による方法のさら別の有利な実施形態によれば、予め定められたエンジン回転数限界値が、出力回転数に依存して求められ、および/または予め定められたクラッチ目標トルクと出力クラッチ目標トルクとの間のトルク差に依存して求められる。
【0078】
本発明による方法のさらに別の有利な実施形態によれば、漏れ−圧力降下限界値および/または最小圧力限界値が、予め定められたアクチュエータのポジションに依存して求められる。
【0079】
本発明による方法のさらに別の有利な実施形態によれば、サンプリングポイント変化速度限界値は、漏れ−サンプリングポイント変化速度限界値よりも小さい。
【0080】
以下の図面ならびにそれらの図面の説明には、本発明のさらに別の利点ならびに有利な実施形態が示されている。
【0081】
図面の簡単な説明
図1は、ハイドロスタティッククラッチシステムの構造を示す図、
図4は、本発明による方法の実施例を説明するための圧力と経路の特性曲線を示す図。
【0082】
図1には、ハイドロリックのハイドロスタティッククラッチアクチュエータ(HCA)の一例として、ハイドロリッククラッチシステム1の構造が示されている。ハイドロリッククラッチシステム1にはスレーブ側15に、アクチュエータ3を制御する制御装置2が設けられている。アクチュエータ3とシリンダ4内のピストン19の位置が、アクチュエータ経路に沿って右方向に変化すると、シリンダ4の容積が変化する。それによってシリンダ4内に圧力Pが形成され、この圧力は圧力媒体7によりハイドロリック管路9を介してハイドロリッククラッチシステム1のマスタ側16へ伝達される。ハイドロリック管路9の長さと形状は、車両の構造スペースに整合されている。マスタ側16において、シリンダ4′内の圧力媒体7の圧力Pによって距離が変化し、クラッチ8の操作のために、この変化がクラッチ8に伝達される。ハイドロリッククラッチシステム1のスレーブ側15におけるシリンダ4内の圧力Pは、第1のセンサ5によって求めることができる。第1のセンサ5は、有利には圧力センサである。アクチュエータ3がアクチュエータ経路に沿って辿る移動距離は、第2のセンサ6によって求められる。この図では、ただ1つのクラッチのためのハイドロリッククラッチシステム1が描かれている。ツインクラッチシステムであれば、第2のクラッチが同様に操作される。
【0083】
ハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCAによるハイドロスタティックな操作によって、個々のクラッチに特徴的なクラッチ特性曲線(圧力およびトルクの特性曲線)が生じる。これらの特性曲線は、たとえばアクチュエータ変位または加わるクラッチ力(圧力)の関数のダイアグラムとして表すことができる。ハイドロスタティックシステム内の圧力変化つまりは操作すべきクラッチの位置変化に続いて、内部の電動モータによるハイドロスタティッククラッチアクチュエータが操作される。
【0084】
特徴的なクラッチ−トルク特性曲線は圧力信号として表れ、この信号は、ハイドロスタティッククラッチシステム内に存在する内部の圧力センサによって測定技術的に捕捉され評価される。
図4の曲線Aとして、ハイドロスタティックに操作されるクラッチの典型的な圧力−変位特性曲線が描かれている。
【0085】
図4において曲線Aは、室温で正常に機能しているクラッチの典型的な圧力−変位特性曲線を表している。ハイドロスタティックシステム内に存在する流体の温度が上昇すると、クラッチ特性曲線はいっそう小さいアクチュエータポジションにシフトし(このことは曲線Bによって表されている)、要求されるクラッチトルクは、システム内の流体が膨張することですでに小さいアクチュエータ変位において達成される。ハイドロスタティックシステムにおいて漏れが発生した場合、および/または予想より早くクラッチが摩耗してしまった場合、特徴的な圧力−変位特性曲線がいっそう大きいアクチュエータポジションにシフトされ(これは曲線Cにより表されている)、ドライバによって最大に要求されたクラッチトルクはもはや達成されず、このことは感じ取れる程度に走行特性に表れる。
【0086】
「ハイドロスタティック区間における漏れ」および/または「予想よりも早いクラッチ摩耗」という故障原因を検出し、両者を区別するために、複数の評価ルーチンを考慮することができる。
【0087】
a)最大アクチュエータ変位距離におけるハイドロスタティッククラッチアクチュエータのアクチュエータ変位の関数としての圧力信号の監視:
摩耗したクラッチおよび/またはハイドロスタティッククラッチ連結解除システムにおける漏れに特徴的であるのは、最大可能なアクチュエータ変位Smax1120の場合、低減された最大圧力P(Smax)1150,1180となることである。故障したクラッチの圧力値P(Smax)C 1180は、最大可能なアクチュエータ変位Smax1120の場合、規定の最小圧力すなわち予め定められた最小圧力限界値1200を下回り、これは流体の漏れおよび/または対象となるクラッチ部材の予想よりも早い損耗によって引き起こされる。これに対しSmax1120のときには、および圧力信号P(Smax)A 1150のSmaxよりも小さいアクチュエータポジションのときにも、正常に機能しているクラッチの規定の最小圧力1200を上回る。したがって最大アクチュエータ変位距離Smax1120において規定の最小圧力1200を下回った場合には、クラッチが故障しているとすることができる。
【0088】
b)クラッチ接触ポイントと最大可能なアクチュエータ変位との間のアクチュエータ距離の監視:
a)の代わりに、クラッチ接触ポイントTP 1130,1160(これは継続的に整合される)と、最大可能なアクチュエータ距離Smax1120との間の変位距離を評価することができる。クラッチが故障していない場合、差分距離は、クラッチが故障している場合(S(TP)C 1170)よりも著しく大きい(S(TP)A 1140)。したがってa)と同様、限界値(ここではポジション差限界値1210)を規定して予め設定することができる。この値は、それを下回っている場合は「ハイドロスタティック区間における漏れ」および/または「早期のクラッチ摩耗」に特徴的な状態でありし、上回っている場合は、クラッチが正常であることを表す。
【0089】
両方の限界値の設定すなわち最小圧力限界値1200とポジション差限界値1210の設定は、技術的な個別のケースを考慮しながら、殊にクラッチの仕様を考慮しながら、当業者の手に委ねざるを得ない。
【0090】
c)変化方向を考慮に入れた接触ポイント整合の監視:
温度変化、クラッチ摩耗など動作条件の変化に対し反応できるようにする目的で、クラッチ制御装置は動作時間中、接触ポイントを整合させる。この接触ポイントの変化速度を、変化方向を考慮しながら監視することによって(大きい変化ポジションへ向かう接触ポイントの変化のみが重要)、クラッチの故障を検出することができる。接触ポイントの変化が大きすぎる場合、このことは「ハイドロスタティック区間における漏れ」および/または「早期のクラッチ摩耗」を表す。摩耗は耐用年数による作用である。漏れは短期間の作用である。
【0091】
d)アクチュエータ変位距離がほぼ一定のときの圧力信号の監視:
「ハイドロスタティック区間における漏れ」を検出するためのさらに別の可能性は、アクチュエータ変位距離がほぼ一定のときに圧力信号を監視することである。漏れが発生した場合、アクチュエータポジションが同じままで急速な圧力降下を監視することができ、これはハイドロスタティックシステムにおける漏れの発生に起因して生じる。ポジションがほぼ一定のときの規定の最大圧力降下値を超えたならば、つまりはシステムに漏れが発生しているはずである。
【0092】
e)エンジン回転数の監視:
クラッチの故障を検出するためのさらに別の測定量として、エンジン回転数を評価することができる。クラッチの摩耗および/またはハイドロスタティックシステムにおける漏れが発生した場合、要求されたクラッチトルクが達成されず、つまりはエンジンから供給されるトルクが伝達されず、その結果として、エンジン回転数の上昇もしくは「意図しない吹き上がりないしは空ぶかし」"Wegtouren"が生じる。クラッチ目標トルクとクラッチ実際トルクが異なるときに、エンジン回転数が出力回転数に関する正の回転数限界値を超えたならば、クラッチシステムが故障しているとすることができる。
【0093】
f)クラッチ摩耗値の監視:
クラッチ摩耗値変化勾配が閾値を超えたならば、クラッチシステムにおいて重大なエラーが発生したと推定される。
【0094】
評価手法a)〜c)によって、エラーの原因である「クラッチシステムにおける漏れ」と「クラッチの摩耗」とを付加的に区別することができる。すなわちこの場合、測定量(Smaxにおける最大圧力、接触ポイントとSmaxとの差分距離、接触ポイント整合値)の急速な変化によってシステム内の漏れが表される一方、クラッチ摩耗の徴候はそれよりも著しく緩慢に現れる。したがってこれらの点を考慮すれば、もしくは関連する測定量の変化勾配を評価すれば、エラーの原因に関する情報を供給することができる。
【0095】
種々の測定量(圧力信号、変位信号、エンジン回転数)を評価することによって、もしくはクラッチ操作システムのモデルパラメータ(接触ポイント値、摩耗値)を評価することによって、正常なクラッチと故障したクラッチとを区別することができる。さらに測定量履歴(変化勾配)を考慮することで、エラー原因である「クラッチシステム内の漏れ」と「クラッチの摩耗」とを区別することができ、したがって向上におけるエラー分析を軽減することができる。
【0096】
本発明は、請求項24の上位概念に記載の特徴を備えた方法、ならびに請求項32の上位概念に記載の特徴を備えたハイドロリック操作装置にも関する。
【0097】
本発明は、生産ライン終端において、および/または走行動作中、特にハイドロスタティッククラッチシステムにおけるハイドロスタティック操作システムの適正な充填状態を識別するために用いられる。
【0098】
ハイドロリッククラッチシステムは、圧力センサを備えたクラッチアクチュエータ機構によって作動され、これはたとえば
図1、DE 10 2010 047 800 A1 ならびにDE 10 2010 047 801 A1に示されている。クラッチ作動機構は、いわゆるハイドロスタティッククラッチアクチュエータHCA(Hydrostatic Clutch Actuator)である。この種のハイドロスタティックアクチュエータとは、ハイドロスタティックな伝達区間を備えたアクチュエータのことであり、たとえばハイドロリック流体を含む圧力導管を備えたアクチュエータのことである。圧力導管の圧力は圧力センサによって捕捉される。ハイドロスタティックアクチュエータによって、このアクチュエータと結合された部材を動かそうとする場合、伝達区間ないしは圧力管路内でハイドロリック流体が運動し、これはたとえばスレーブシリンダによって引き起こされ、スレーブシリンダはハイドロリック流体により結合されてマスタシリンダを動かす。この部材が自身のポジションを保持するようにすべきであるならば、伝達区間内のハイドロリック流体は静止し、アクチュエータの名称となったハイドロリック流体のハイドロスタティックな状態が生じる。
【0099】
クラッチの連結解除システムとして用いられるたとえばハイドロリッククラッチアクチュエータ(HCA)などのハイドロリッククラッチシステムは、問題のない機能を保証するために空気が含まれていないようにする必要がある。したがって、ハイドロリッククラッチ連結解除システムを備えた自動車の初稼動時に、真空充填を行うことが知られている。保守サービスの際、このような複雑でコストのかかる補助手段を通常は利用できず、したがって相応の工場規則に従い、ハイドロリッククラッチ連結解除システムについて自動車の初稼動時と等価の再充填を可能にするフローが定められている。この場合、充填において重要であるのは、充填の形式にかかわらず、充填すべき区間が完全に充填されていること、つまりは残留空気が存在しないことである。部品の公差に起因して、充填量もしくは充填圧力の設定は条件付きでしか利用できない。ドイツ連邦共和国特許出願第10 2010 055 906.7に記載されているように、従来技術によれば、残留空気がハイドロリック区間に残されたままとなる充填プロセスを、残留空気のない完全に充填されたシステムと十分明確には区別できない。ただし車両動作中も、本来であればハイドロリック流体しか存在すべきでない伝達区間もしくは圧力管路において、このような残留空気を検出できるようにすべきである。一般的に望まれているのは、伝達区間もしくは圧力管路内に存在するまたは形成されるガス状成分を検出できるようにすることである。基本的にこの種のガス状成分を排出するために、いわゆるブリーディング開口ないしはスニファ開口(ブリーディングホールないしはスニファホールとも称する)がサージタンクに対して設けられる。これは従来技術においてかなり以前から知られており、DE 10 2010 047 800 A1ならびにDE 10 2010 047 801 A1に記載されており、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2011 103 774.1号にも記載されている。
【0100】
この目的で、クラッチ制御装置はクラッチ作動機構を、ブリーディング開口に対し相対的な規定のポジションまで移動させて、伝達区間の空気を抜き出すことができるようにし、その際、伝達区間とサージタンクとの間の接続をブリーディング開口を介して開放し、空気を排出できるようにする。
【0101】
それぞれ2つの圧力値P1とP2に対して生じる2つの経路差の相違は、クラッチ「標準」のケース(伝達区間が残留空気を含まない場合)と、クラッチ「残留空気」のケース(伝達区間が残留空気を含む場合)とでは著しく僅かであり、したがって従来技術によればこれらのケースを十分確実には区別できない。
【0102】
本願において「残留空気」という用語は、たとえばクラッチ作動機構または変速機作動機構などのハイドロリック操作システムにおけるハイドロリック伝達区間内の他のすべてのガス状成分のことも意味する。
【0103】
したがって本発明の課題は、ハイドロスタティック操作システム特にハイドロスタティッククラッチシステムにおける残留空気を確実に識別するための方法を提供することにある。
【0104】
この課題は、請求項24に記載の特徴を備えた方法、ならびに請求項32に記載された特徴を備えたハイドロリック操作システムによって解決される。
【0105】
本発明による方法ならびに本発明によるハイドロリック操作システムによれば、ハイドロリック伝達区間におけるガス状の物質の識別特に残留空気の識別をさらに改善することができる。
【0106】
方法に関する技術的な観点において、上述の課題は以下で説明する方法によっても解決される。
【0107】
本発明によれば、ハイドロリック操作システムの適正な充填を検査する方法が提供される。この場合、ハイドロリック操作システムには、制御装置によりアクチュエータを介して操作可能な、シリンダ内のピストンと、シリンダ内の圧力を測定する第1のセンサと、アクチュエータ経路を辿るアクチュエータのポジションを検出する第2のセンサとが設けられている。本発明によれば、圧力媒体によるハイドロリック操作システムの適正な充填を検査するために、ポジション−圧力特性曲線の最大圧力勾配を、この特性曲線の予め定められた範囲において求め、求められた最大圧力勾配が、予め定められた圧力勾配閾値よりも大きければ、適正な充填が行われていると判定する。
【0108】
ポジション−圧力特性曲線ならびに変位−圧力特性曲線という用語は、本発明では同義語として扱う。また、変位またはポジションという用語は、アクチュエータ経路に関連して用いられる概念であって、このアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータにおいてクラッチを動かす部材たとえばスレーブシリンダ内のピストンが移動する。
【0109】
本発明の格別有利な実施形態によれば、最大圧力勾配が圧力勾配閾値よりも小さければ、不適正な充填が行われていると判定される。この閾値を下回っているならば、空気はまだシステム内に確実に存在している。この閾値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0110】
本発明のさらに別の格別有利な実施形態によれば、不適正な充填が行われていた場合には、制御装置により排気すなわち空気排出を行わせる。これは直後に行われ、あるいは次の機会に行われる。
【0111】
本発明のさらに別の格別有利な実施形態によれば、アクチュエータ経路に沿ってアクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められる。
【0112】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、ブリーディング開口周囲の予め定められたポジション範囲で、アクチュエータ経路に沿ってアクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められる。この場合、アクチュエータ経路を求めるためにたとえば、シリンダ内のピストンの流体側の端面を利用することができる。
【0113】
本発明のさらに別の択一的な有利な実施形態によれば、予め定められた圧力値においてアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められ、予め定められた圧力値は、有利には0.5bar〜6barである。予め定められた圧力値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0114】
本発明のさらに別の実施形態によれば、別の選択肢として、あるいはさらに付加的に、予め定められた圧力範囲においてアクチュエータ経路に沿って、アクチュエータによりクラッチを閉鎖方向に動かすことにより、最大圧力勾配が求められ、予め定められた圧力範囲は、有利には0bar〜7.5barであり、殊に有利には0bar〜5.5barである。予め定められた圧力範囲の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。それというのも、技術的な個々のケースを考慮しなければならないからである。
【0115】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムを圧力媒体で新たに充填した後あるいは再充填した後、適正な充填の検査が実施される。
【0116】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムの可用性をチェックするための適正な充填の検査は、規則的な間隔で実施される。
【0117】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムの操作による特定の走行状況中に検査が実施される。
【0118】
本発明のさらに別の実施形態によれば、適正なおよび/または不適正な検査の結果がエラーメモリに格納され、および/またはディスプレイに表示される。
【0119】
装置に関する技術的な観点において、上述の課題は以下で説明するハイドロリック操作システムによっても解決される。
【0120】
本発明によれば、以下の構成を備えたハイドロリック操作システムが提案される。すなわちこのハイドロリック操作システムには、制御装置によりアクチュエータを介して操作可能な、シリンダ内のピストンと、シリンダ内の圧力を測定する第1のセンサと、アクチュエータのポジションを検出する第2のセンサとが設けられている。本発明によれば、圧力媒体によるハイドロリック操作システムの適正な充填を検査するために、既述の方法が実施される。
【0121】
本発明の1つの格別有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムはハイドロリッククラッチ操作システムである。
【0122】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ハイドロリック操作システムはハイドロリック変速機操作システムである。
【0123】
ただし本発明によるハイドロリック操作システムは、ハイドロリッククラッチ操作システムまたはハイドロリック変速機操作システムにおいて用いられるだけでなく、変速機システムにおける変速段切換装置においても有効に用いることができるし、スロットルバルブ、補助装置および補助駆動装置のためのエンジンシステム内の操作システムとしても、また、排気ガス案内システムおよびチャージシステム、ブレーキシステムにおける操作システムとしても、さらには輸送用車両などの商用車あるいは建設機械や土木機械における操作のためにも、有効に用いることができる。
【0124】
以下の図面ならびにそれらの図面の説明には、本発明のさらに別の利点ならびに有利な実施形態が示されている。
【0125】
図面の簡単な説明
図1は、ハイドロスタティッククラッチシステムの構造を示す図、
図5は、検査に関連する領域に目印を付けた変位−圧力特性曲線を示す図、
図6最大圧力勾配を有する下方の圧力範囲における変位−圧力特性曲線を示す図。
【0126】
図1には、ハイドロリックのハイドロスタティッククラッチアクチュエータ(HCA)の一例として、ハイドロリッククラッチシステム1の構造が示されている。ハイドロリッククラッチシステム1には供給側15に、アクチュエータ3を制御する制御装置2が設けられている。アクチュエータ3とシリンダ4内のピストン19の位置が、アクチュエータ経路に沿って右側に変化すると、シリンダ4の容積が変化する。それによってシリンダ4内に圧力Pが形成され、この圧力は圧力媒体7によりハイドロリック管路9を介してハイドロリッククラッチシステム1のマスタ側16へ伝達される。ハイドロリック管路9の長さと形状は、車両の構造スペースに整合されている。マスタ側16において、シリンダ4′内の圧力媒体7の圧力Pによって距離が変化し、クラッチ8の操作のために、この変化がクラッチ8に伝達される。ハイドロリッククラッチシステム1のスレーブ側15におけるシリンダ4内の圧力Pは、第1のセンサ5によって求めることができる。第1のセンサ5は、有利には圧力センサである。アクチュエータ3がアクチュエータ経路に沿って辿る移動距離は、第2のセンサ6によって求められる。
【0127】
本発明による1つの実施形態は、ブリーディング開口領域のすぐ近くでクラッチを閉じたときに圧力上昇を評価する方法である。
【0128】
クラッチが閉じられたときに変位−圧力特性曲線が求められる。
図5には、この種の変位−圧力特性曲線が示されている。
図5には、クラッチの閉鎖(上方部分)についても、クラッチの開放(下方部分)についても、それらに典型的なヒステリシス作用とともに描かれている。
図5には、本発明による検査に関連する領域に、楕円360で目印が付けられている。妨害作用を低減するために、変位信号と圧力信号310がそのまま分析されるのではなく、それらがいくらかフィルタリングされる(たとえばPT1フィルタ)。このことは
図6に示されており、
図6には関連する領域が
図5よりも拡大されて描かれている。
【0129】
フィルタリングされた信号から、圧力勾配(圧力差と変位差の比)が求められる。圧力勾配を求めるために、これに代わる手法(たとえばカルマンフィルタ)を使用することもできる。
【0130】
ハイドロリック区間にまだ空気が存在しているならば、ブリーディング開口領域でクラッチが閉じられたときに小さい圧力勾配が生じる。評価のために2つの選択肢AとBがある。
【0131】
A.圧力が一定のとき(たとえば2bar)、圧力勾配が固定的に定められた閾値と比較される。この閾値を下回っているならば、空気はまだシステム内に確実に存在している。このことがクラッチ制御装置へ通知され、それによってさらに排気を行わせることができる。つまりこのプロセスフローAによれば、クラッチアクチュエータ3はクラッチ閉鎖方向で、有利には0.5bar〜6barの圧力範囲の設定圧力が生じるようなポジションに動かされ、殊に有利には2barの設定圧力が生じるようなポジションに動かされる。このポジションにおいて、圧力勾配がたとえば直前に測定された変位値と圧力値から求められ、あるいは別の選択肢として、クラッチ閉鎖方向での小さい運動が予め定められた圧力の範囲で実行され、これによって予め定められた圧力の範囲における圧力勾配を求めるための測定値を得ることができる。このようにして求められた圧力勾配は、以降のプロセスフローに対し最大圧力勾配とみなされる。ついで求められた最大圧力勾配が予め定められた圧力勾配閾値と比較される。求められた最大圧力勾配の値が予め定められた圧力勾配閾値よりも大きければ、ガス状の成分は伝達区間内に存在していないとみなされる。予め定められた圧力の値の具体的な設定ならびに圧力勾配閾値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。なぜならば、クラッチにおけるハイドロリック操作システムの技術的な個別ケースならびにガス状成分の特性を、圧力に留意して考慮しなければならないからである。その際に当業者は、予期される圧力勾配がブリーディング開口付近で著しく大きくなるような圧力値を設定することになる。
【0132】
B.下方のポジション範囲(たとえばブリーディング開口周辺の拡張領域、すなわちピストン19の流体側の端面がシリンダ4内においてブリーディング開口18の拡張領域に位置する場合)、および/または下方の圧力領域(たとえば0〜5bar)において、フィルタリングされた変位−圧力特性曲線320の最大圧力勾配330が求められる(
図6参照)。この最大圧力勾配が、予め固定的に定められた閾値と比較される。この閾値を下回っているならば、空気はまだシステム内に確実に存在している。このことがクラッチ制御装置へ通知され、それによってさらに排気を行わせることができる。つまりフローBによれば、クラッチアクチュエータ3はクラッチ閉鎖方向でポジション移動されて、ピストン19の流体側端面がシリンダ4内で、ブリーディング開口18の拡張領域の予め定められたポジション範囲の始端に位置するようになる。ここでブリーディング開口の拡張領域とは、ブリーディング開口周囲のポジション範囲のことであり、本発明によればこの領域では最大の圧力勾配が見込まれ、たとえば
図5または
図6に示されているように、有利には−2.5mm〜+2.0mmのポジション範囲に該当する。このポジション範囲の設定に対する別の選択肢として、あるいはこのことに加えて、クラッチアクチュエータ3がクラッチ閉鎖方向でポジション移動され、有利には0barから7.5bar殊に有利には0bar〜5.5barである予め定められた圧力範囲のうち、最も低い圧力(予め定められた圧力範囲の始端)となるポジションに動かされる。このポジション範囲の設定に対する別の選択肢として、あるいはこのことに加えて、クラッチアクチュエータ3がクラッチ閉鎖方向でポジション移動され、有利には0barから7.5bar殊に有利には0bar〜5.5barである予め定められた圧力範囲のうち、最も低い圧力(予め定められた圧力範囲の始端)となるポジションに動かされる。ブリーディング開口の拡張領域における予め定められたポジション範囲において、または別の選択肢として、予め定められた圧力範囲において、あるいはさらに別の選択肢として、予め定められたポジション範囲のポジションにもあり予め定められた圧力範囲の圧力にもあるとき、そのつど予め定められた範囲にある最大圧力勾配が求められる。この場合、最大圧力勾配を求めるために、予め定められた上述の範囲をアクチュエータがクラッチ閉鎖方向で通過するようにして、変位−圧力特性曲線が求められ、この特性曲線から最終的に、予め定められた範囲に対する最大圧力勾配が求められる。ついで求められた最大圧力勾配が、(有利にはフローAの場合と同じ値を有する)予め定められた圧力勾配閾値と比較される。求められた最大圧力勾配の値が予め定められた圧力勾配閾値よりも大きければ、フローAの場合のように、ガス状の成分が伝達区間内に存在していないとみなされる。ブリーディング開口付近の予め定められたポジション範囲の具体的な設定、予め定められた圧力範囲の具体的な設定、ならびに圧力勾配閾値の値の具体的な設定は、当業者の手に委ねざるを得ない。なぜならば、クラッチにおけるハイドロリック操作システムの技術的な個別ケース、ならびにガス状成分の特性を、圧力に留意して考慮しなければならないからである。その際に当業者は、予期される圧力勾配がブリーディング開口付近で著しく大きくなるような範囲を設定することになる。
【0133】
この検査を、車両工場および/または変速機工場の生産ライン終端で実施することができ、さらに走行動作中に実施することができる。
【0134】
別の選択肢として、要求された最大圧力がクラッチ閉鎖時に達成されるか否かを検査することもできる。この検査は、比較的簡単でありかつ効果的であるが、ハイドロリックシステムにおいて識別可能な残留空気量は、圧力勾配を用いた方法の場合よりも著しく多くなる。
【0135】
圧力勾配および/または達成可能な最大圧力の評価に基づき、ハイドロスタティッククラッチシステムの具体的な充填状態を識別するための方法が提案される。