特許第6238903号(P6238903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238903少なくとも1つの流体を医療デバイスから送達するための医療デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238903
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの流体を医療デバイスから送達するための医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20171120BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61M5/315
   A61M5/24
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-543904(P2014-543904)
(86)(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公表番号】特表2014-533599(P2014-533599A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012074055
(87)【国際公開番号】WO2013079643
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】11191263.0
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・ムーア
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520569(JP,A)
【文献】 特表2009−526565(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/091246(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/136218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバ(2、90、100)と、
栓(8、94、104)と、
ピストン(10、514、516)と、
電気機械的デバイス(12、530、536)と、
制御ユニット(14、520)とを備え、
ここで、前記リザーバ(2、90、100)、前記栓(8、94、104)、前記ピストンおよび前記制御ユニット(14、520)によって制御される前記電気機械的デバイス(12、530、536)は、前記栓(8、94、104)をピストン(10、514、516)を介して所定の距離にわたって動かすように前記電気機械的デバイス(12、530、536)に指示することができるように、また、流体が、前記栓(8、94、104)の前進運動によって前記リザーバ(2、90、100)から放出可能であるように配置され、
前記制御ユニット(14、520)は、ピストン(10、514、516)が後退される前に、送達される用量に対応する所望の位置に前記栓(8、94、104)が到達していない場合は、電気機械的デバイス(12、530、536)が第2の前方運動によって動かされるように構成され、
前記制御ユニット(14、520)は、前記ピストン(10、514、516)の前記前進運動後の滞留時間後、前記ピストン(10、514、516)が、前記電気機械的デバイス(12、530、536)によって後退されるように構成される、医療デバイス。
【請求項2】
前記栓(8、94、104)が前記電気機械的デバイス(12、530、536)によって伝動配置(540、546)によって動かされるように配置された、該伝動配置(540、546)をさらに備える、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
薬物送達デバイスおよび/または携帯型医療デバイスである、請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記電気機械的デバイスは、ステッパ・モータまたはブラシレスDCモータである、請
求項1〜3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記滞留時間は、予め決定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記滞留時間は、可変的に調整され得るように構成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記滞留時間は、少なくとも4秒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記滞留時間は、少なくとも6秒である、請求項7記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記滞留時間は、少なくとも10秒である、請求項8に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記ピストン(10、514、516)の前記前進運動が前記ピストン(10、514、516)の以前の後退を反映するように構成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
動き検出器(18、522、544)をさらに備え、また、
前記ピストン(10、514、516)の前記前進運動後、前記電気機械的デバイス(12、530、536)の電源が切られ、
前記電気機械的デバイス(12、530、536)の後方運動が、前記電気機械的デバイス(12、530、536)の電源が切られている間に検出され、
前記第2の前方運動が、前記検出された後方運動から決定されるように構成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
第2のリザーバ(2、90、100)と、
第2の栓(8、94、104)と、
第2のピストン(10、514、516)とをさらに備え、
ここで、該第2のリザーバ(2、90、100)、該第2の栓(8、94、104)、該第2のピストン(10、514、516)および制御ユニット(14、520)によって制御される電気機械的デバイス(12、530、536)は、該第2の栓(8、94、104)を第2のピストン(10、514、516)を介して所定の距離にわたって動かすように電気機械的デバイス(12、530、536)に指示することができるように、また、第2の流体が、該第2の栓(8、94、104)の前進運動によって該第2のリザーバ(2、90、100)から放出され得るように配置される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
第2の電気機械的デバイス(12、530、536)をさらに備え、
ここで、各々のピストン(10、514、516)は、別個の電気機械的デバイス(12、530、536)によって駆動される、請求項12に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの流体を医療デバイスから送達するための医療デバイスおよび方法に関する。より詳細には、本特許出願は、少なくとも1つの薬作用物質をリザーバから、特に2つの薬作用物質を別個のリザーバから送達するための医療デバイスに関する。そのような薬作用物質は、第1および第2の薬剤を含むことができる。医療デバイスは、薬作用物質をユーザによって自動的にまたは手動で送達するための用量設定機構(dose setting mechanism)を含む。
【背景技術】
【0002】
医療デバイスは、1つまたはそれ以上の複数回用量カートリッジからの医薬品の注射による投与をもたらす種類の注射器である、たとえば手持ち式注射器、特にペン型注射器などの注射器になることができる。特に、本発明は、ユーザが用量を設定することができるそのような注射器に関する。
【0003】
薬作用物質は、独立した(単一の薬物化合物)または事前混合された(共製剤化された複数の薬物化合物)薬作用物質を各々が含む、2つまたはそれ以上の複数回用量リザーバ、容器、またはパッケージ内に含まれ得る。
【0004】
特定の疾患状態は、1つまたはそれ以上の異なる薬剤を用いた治療を必要とする。一部の薬物化合物は、最適な治療用量を送達するために、互いに特有の関係で送達される必要がある。本特許出願は、組み合わせ治療が望ましく、それだけに限定されないが、安定性、治療的性能の低下および毒性などの理由のために、単一製剤では可能でない場合に特に有益なものである。
【0005】
たとえば、一部の場合、(第1のまたは一次の薬剤として称されることもある)長期作用インスリンを(第2の薬物または二次の薬剤とも称されることもある)GLP−1またはGLP−1類似体などのグルカゴン様ペプチド1と共に用いて糖尿病患者を治療することが有益になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、薬物送達デバイスの複雑な物理的操作を必要とせずにユーザが実行することが簡単である単回の注射または送達工程で、2つまたはそれ以上の薬剤を送達するための装置を提供することが必要である。提案された薬物送達デバイスは、2つまたはそれ以上の活性薬作用物質のための別個の貯蔵容器またはカートリッジ保持器を提供する。これらの活性薬作用物質は、次いで、単一の送達手順中に組み合わせられ、および/または、患者に送達される。これらの活性作用物質は、組み合わせられた用量で一緒に投与されてよく、または代替的には、これらの活性作用物質は、連続的な方法で、順々に組み合わせられてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
薬物送達デバイスはまた、薬剤の量を変動させる機会をもたらす。たとえば、1回の流体量は、注射デバイスの特性を変更する(たとえば、ユーザ可変用量を設定する、またはデバイスの「固定された」用量を変更する)ことによって変動させることができる。第2の薬剤量は、各々の可変要素が第2の活性作用物質の異なる体積および/または濃度を含む、さまざまな二次薬物含有パッケージを製造することによって変更することができる。
【0008】
薬物送達デバイスは、単一の投薬インターフェースを有することができる。このインターフェースは、少なくとも1つの薬作用物質を含む薬剤の一次リザーバおよび二次リザーバと流体連通するように構成され得る。薬物投薬インターフェースは、2つまたはそれ以上の薬剤がシステムを出て、患者に送達されることを可能にするタイプの出口になることができる。
【0009】
別個のリザーバからの化合物の組み合わせは、両頭ニードル・アセンブリを介して体内に送達され得る。これは、ユーザの観点から見ると、標準的なニードル・アセンブリを使用する現在利用可能な注射デバイスに厳密に適合した方法で薬物送達を達成する、組み合わせ薬物注射システムを提供する。1つの可能な送達手順は、以下の工程を伴うことができる:
1.投薬インターフェースを電気機械的注射デバイスの遠位端部に装着する。投薬インターフェースは、第1および第2の近位針を備える。第1および第2の針は、一次化合物を含む第1のリザーバおよび二次化合物を含む第2のリザーバをそれぞれ穿孔する。
2.両頭ニードル・アセンブリなどの用量投薬器を投薬インターフェースの遠位端部に装着する。このようにして、ニードル・アセンブリの近位端部は、一次化合物と二次化合物の両方と流体連通する。
3.たとえば、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)によって、注射デバイスからの一次化合物の所望の用量をダイヤルアップ/設定する。
4.ユーザが一次化合物の用量を設定した後、マイクロプロセッサ制御された制御ユニットは、二次化合物の用量を決定または算出することができ、好ましくはこの第2の用量を、事前に記憶された治療用量プロファイルに基づいて決定または算出することができる。次いでユーザによって注射されるのは、この算出された薬剤の組み合わせとなる。治療用量プロファイルは、ユーザ選択可能でよい。あるいは、ユーザは、二次化合物の所望の用量をダイヤルまたは設定することができる。
5.場合により、二次用量が設定された後、デバイスは、準備(armed)状態に置かれてもよい。任意選択の準備状態は、制御パネル上の「OK」または「準備」ボタンを押すおよび/または保持することによって達成され得る。準備状態は、組み合わせられた用量を投薬するためにデバイスを使用できる間の所定の期間設けられてよい。
6.次いで、ユーザは、用量投薬器(たとえば、両頭ニードル・アセンブリ)の遠位端部を所望の注射部位内に挿入またはあてる。一次化合物および二次化合物(場合によっては第3の薬剤)の組み合わせの用量は、注射ユーザ・インターフェース(たとえば注射ボタン)を作動させることによって投与される。
【0010】
両方の薬剤は、1つの注射針または用量投薬器を介して、1回の注射工程で送達され得る。これは、2つの別個の注射を投与することに比べてユーザ工程が低減されるということに関して、ユーザに好都合な利益を提供する。
【0011】
注射後、薬剤またはリザーバの数とは関係無く、電気機械的デバイスを使用して用量を送達する場合に医療デバイスからの薬剤の漏出という問題が存在することがある。この場合の電気機械的デバイスは、伝動配置(gearing arrangement)を介して栓(bung)上に圧力を及ぼし、この栓は、リザーバの内側で動き、したがって薬剤を対応するリザーバから押し出す。薬剤の送達が完了したとき、電気機械的デバイスは流体薬剤上に圧力を維持している。したがって、電気機械的デバイスの動きの後、(流体薬剤上に圧力を及ぼす)栓が、注射後、栓と薬剤を含むカートリッジとの間の摩擦が事後にわずかに減少され得るために拡張し得るので、少量の液体が依然として医療デバイスから出て行く。したがって、電気機械的デバイスの指示された動きがない場合でも、連続的な放出は起こっている。
【0012】
通常、この問題は、放出の単なる機械的作動を用いるときには、たとえばユーザが用量のボタンを押すときには起こらない。ユーザが用量ボタンを再度解放したとき、圧力は低減されて機械的デバイスからのさらなる液体のいかなる放出も防止する。しかし、電気機械的デバイスでは、モータおよび伝動配置は、すでに上記で述べたように圧力を栓上に維持し得る。加えて、伝動配置の機械的部品は、モータによって発生したエネルギーの一部を貯蔵し、モータが停止した後にこれをゆっくりと解放することができ(張力をかけたばねと同様に)、そのために栓をさらに少量動かし、それによって薬剤のさらなる放出または漏出を引き起こす。
【0013】
現況技術では、いわゆる「後だれ(after−dripping)」の問題を解決するための手法が存在している。たとえば、米国特許文献の米国特許第6,613,019号は、注射時間を短縮し、液体医薬品送達システムの用量精度を改良するための方法を説明している。ピストン・ロッドが、意図されたものより多い用量に対応する位置に動かされることが説明されている。この後すぐに、このピストン・ロッドは、意図された用量に対応する位置に戻される。
【0014】
たとえば、ピストン・ロッドまたは栓の機能不全または傾斜の場合、ピストンの戻り運動が可能でないことがあり、その結果、過剰用量の投与となり得る。加えて、上記で説明したように、流体薬剤上の圧力は、電気機械的デバイスを使用している場合は依然として維持されている。したがって、たとえば温度変動などの場合、栓または液体のその後の拡張が、少量の液体のさらなる放出を依然として導いている。
【0015】
また、流体の放出をより良好に制御し、流体上の圧力が十分少量である、またはデバイスが停止されるときに漏出をさらに確実に防止するために、圧力によって作動される弁が、医療デバイスの流路内に設けられ得る。しかし、そのような弁は、流体上の圧力が使用中に電気機械的デバイスによって維持されるとき、弁の閉鎖圧力ちょうどに保たれるので、使用時に医療デバイスの漏出を防止することができない。温度または空気圧力などの環境条件における小さい変動が、ここでも容易に漏出を引き起こし得る。
【0016】
上述した点において、本発明は、後だれを防止し、それと同時に医療デバイスの安全性および用量精度を改良するという技術的課題に直面している。
【0017】
この技術的課題は、少なくとも1つの流体を医療デバイスから送達するための方法によって解決され、ここで流体は、栓の前進運動によってリザーバから放出され、電気機械的デバイスは、栓をピストンを介して所定の距離にわたって動かすように指示され、ピストンの前進運動後のある滞留時間(dwell time)後、ピストンは、電気機械的デバイスによって後退される。
【0018】
第1には、滞留時間をこのようにして送達プロセスに含めることにより、栓が拡張し、所望の目的地に到達するのに十分な時間が存在することが保証される。したがって、用量精度が改良される。所望の用量は、たとえば、患者の皮膚に注射されることが想定された液体のいかなるさらなる後だれも有することなく、デバイスから放出される。流体は、好ましくは薬剤または薬作用物質である。滞留時間中、ユーザは、医療デバイスの注射針を皮膚内に挿入したまま保つように指示を受けることができる。このようにして、ユーザは、たとえば、針を取り外す前に確実にその滞留時間の間待機することができる。栓は、送達される所望の用量に対応する位置よりさらに先には前進されないため、過剰用量の投与の危険性は著しく低減される。
【0019】
第2には、ピストンの前進運動後の滞留時間後、電気機械的デバイスによってピストンを後退させることにより、圧力は、流体から取り除かれまたは低減される。滞留期間後、たとえばユーザが医療デバイス、または特に注射針を注射部位から取り外したときでも、
医療デバイスからのいかなる流体の漏出も少なくとも低減されまたはさらには防止される。その後であっても、流体上の圧力はピストンの後退によって低減されているため、温度または圧力の小さい変動が、流体の漏出を直接的には引き起こすことはない。この目的のために、ピストンは、特に、流体に直接接触する要素、たとえば栓に固定式に装着されなくてよく、それにより、流体がそこから放出されるリザーバ内にアンダープレッシャ(underpressure)または負圧を作り出すことなくピストンを後退させることができる。
【0020】
表現「栓」の意味は、幅広い意味で理解されるものであり、それにより、栓はまた、たとえばストッパ、プラグまたはペグになることもできる。また、ピストンから流体に力を伝達するためにそのような要素の組み合わせが存在することもできる。
【0021】
たとえばインスリン・ペンを機械的に作用させるユーザは、医療デバイスを取り外す前、針を皮膚内に保つ間の特定の滞留時間または期間の間、待機するのには慣れている。したがって、単に機械的に駆動される医療デバイスを電気機械的に駆動される医療デバイスに切り替えたとき、薬物を医療デバイスから投与するための工程はほぼ同じままであるため、ユーザは適応する必要はない。
【0022】
本発明による方法を使用して、2つ以上の流体、特に2つの流体を医療デバイスから送達することが可能である。この場合、用語である流体、リザーバ、栓、電気機械的デバイスおよび/ピストンは、第1の流体、第1のリザーバ、第1の栓、第1の電気機械的デバイスおよび/または第1のピストンをそれぞれ意味すると理解される。本明細書で説明する本発明および実施形態による方法はまた、対応する第2の、第3の、またはそれ以上の要素にも適用可能である。
【0023】
電気機械的デバイス、ピストンおよび栓を使用して流体上に力を伝達することにより、機械的に駆動されるデバイスと比べてより正確な用量精度が達成され得る。さらに、電気機械的デバイスの動きは、センサによって、たとえば動き検出器(motion detector)によって監視されて、さらなる確実性および用量精度をもたらすことができる。
【0024】
本発明による方法の実施形態によれば、電気機械的デバイスは、ステッパ・モータまたはブラシレスDCモータである。これらのモータ・タイプは、機械的運動の正確な制御を可能にするので、たとえば連続的に駆動されるdcモータの代わりに単一の離散パルスにおいて制御され、したがって用量精度におけるさらなる改良を可能にするので、特に有利である。さらに、モータの正確に規定された前方運動および後方運動が可能になり、それによってピストン・ロッドの正確な前進運動および後退を可能にする。その結果、本方法のさらに改良された確実性および安全性が達成可能である。
【0025】
ピストンが伝動配置を介して電気機械的デバイスによって動かされる場合、さらに有利である。伝動配置を設けることにより、電気機械的デバイスのピストンを介した栓までの機械的運動は、栓の必要な動きまたは必要とされる投薬速度に従って正確に調整され得る。このようにして、用量精度のさらなる改良を、異なる(たとえばより高い)ギア比による正確性の向上によって達成することができ、または、より速い速度を達成して、たとえば流体の特定量を放出するのに必要とされる時間を低減することができる。
【0026】
本方法の別の実施形態によれば、滞留時間は予め決定される。所定の滞留時間を設けることにより、算出は医療デバイスによって行われる必要はない。これは、本方法が携帯型医療デバイスによって実行される場合は特に有利であり、その理由は、たとえば再充電が必要となる前には、電池は限定された量の電力しか算出のために供給できないためである。そのような滞留時間は、たとえば、医療デバイスのディスプレイ上に表示され得る。滞留時間はまた、事前にユーザに提供されてもよく、それにより、たとえば、投与中、医療デバイス上に滞留時間をユーザに表示するための手段は必要でなくなる。
【0027】
滞留時間が可変的に調整される場合、滞留時間は、後だれ効果を防止しながらも、たとえば短縮させることができる。そのような調整は、たとえば、放出される用量についての情報に基づいて算出することができる。また、流量センサを設けて、医療デバイスからの流体の実際の流れを測定し、それに従って滞留時間を短縮または延長することも可能である。
【0028】
本方法の別の実施形態によれば、滞留時間は少なくとも4秒、特に少なくとも6秒、好ましくは少なくとも10秒である。少なくとも短い滞留時間を設けることにより、用量精度は、ユーザが注射針を早期に取り外した場合でも維持され得る。これは、後だれ効果が防止され、流体のすべての用量がユーザに投与され、たとえば、ユーザが注射針をあまりにも早期に取り外したという理由で環境に失われないからである。また、この短い滞留時間を設けることにより、よりすばやくよりユーザに優しい用量送達プロセスが提供され得る。滞留時間を増大させることにより、後だれも防止され、用量精度もさらに改良される。
【0029】
本発明による方法の次の実施形態によれば、電気機械的デバイスは、滞留時間内に第2の前方運動によって動かされる。これは、ピストンを別の前進運動によって動かす。これは、用量精度のさらなる改良を生じさせることができる。流体の特定量の放出後、流体の背圧が、送達される用量に対応する所望の位置に栓を到達させないことがある。たとえば、回転して伸張される嵌め込み式ピストン・ロッド(telescoping piston rod)が使用されているとき、ピストン・ロッド上に作用するトルクが、ピストン・ロッドもしくはたとえば駆動列もしくは伝動配置内の他の機械的要素をゆがませる、または捩じ曲げる(torsionally twist)ことがある。これらの部品が、前進運動が完了し、電気機械的デバイスへの電力が電力節減のために切られた後に再度伸張または弛緩するとき、たとえば、流体の圧力が栓の動きを妨げるのに十分な強さの場合、電気機械的デバイスの後方運動が結果として生じ得る。ピストンを前進させる電気機械的デバイスの別のまたは第2の前方運動により、所望の用量送達に対応する栓の所望の位置とのこの相違は、補償される。
【0030】
たとえば、動き検出器を用いることによって電気機械的デバイスの後方運動を検出することが特に可能である。このようにして、欠如した前進運動の正確な量は、電気機械的デバイスの第2の前方運動によって補償され得る。しかし、たとえば、実験的または理論的データに基づいて電気機械的デバイスの第2の前方運動、したがってピストンの第2の前進運動に関する固定された距離を規定することも可能である。
【0031】
電気機械的デバイスに供給される電力を保つことによって、電気機械的デバイスのこの後方運動を防止することも可能である。これは、いかなる後方運動も防止するのに十分な、電気機械的デバイスに対するトルクまたは力を維持し、したがって、栓は、最終的には、別の前進運動なしに所望の位置に到達する。
【0032】
好ましくは、ピストンの前記前進運動後、電気機械的デバイスの電源が切られ、電気機械的デバイスの後方運動が、電気機械的デバイスの電源が切られている間に検出され、第2の前方運動が、検出された後方運動から決定される。デバイスの電力消費は、このようにして減少する。
【0033】
他のまたは第2の前進運動後、ピストンは後退される。用量精度は、このようにしてさらに向上させることができ、それと同時に電力消費は最小限に保たれる。
【0034】
ピストンの前進運動後、滞留時間中の電気機械の第2の前方運動が実行される前のある期間、たとえば少なくとも1秒間待機することが有利である。したがって、第2の前方運動は、前進運動の直後に続かない。同様に、第2の前方運動後、ピストンが後退される前の特定の期間待機することも有利である。これらの待機間隔は、後だれおよび不正確な投与を生じさせる、栓の拡張などの弛緩効果を反映する。
【0035】
本方法の別の実施形態によれば、ピストンの前進運動がピストンの以前の後退を反映する。ピストンが、流体上の圧力を解放し、後だれを防止するために用量送達後に後退されたとき、その後の用量送達中、後退した運動は、その後の用量送達の開始時に補償される。その結果、次の用量送達の用量精度は、後退によって悪影響が及ぼされない。
【0036】
第2の流体が、第2の栓の前進運動によって第2のリザーバから放出されるとき、同じまたは別の電気機械的デバイスが、第2の栓を第2のピストンを介して所定の距離にわたって動かすように指示され、第2のピストンの前進運動後の滞留時間後、第1のピストンおよび第2のピストンが、それぞれの電気機械的デバイスによって後退されることがさらに好ましい。
【0037】
この場合、前述の流体、リザーバ、栓、およびピストンは、第1の対応する要素として考えられる。2つの流体を備えたそのような実施形態では、2つの流体は、2つのリザーバから別個の流体通路内に放出され、流体通路は、たとえば投薬インターフェース内で組み合わせられる。流体通路は、流体の放出をより良好に制御するために各々が弁を有することができる。最終的には、流体は、単一の出口から投薬される。滞留時間中、ピストンはまだ後退されていないため、各々の流体内で保たれる圧力は、流体間の交差汚染が存在するリスクを最小限に抑え、用量精度も向上させる。滞留時間は、第1または第2のピストンの前進運動後に開始する、両方の放出のための共通の滞留時間として理解することができる。また、各々のピストンまたは流体に対して別個の滞留時間が存在することもできる。したがって、ピストンが、各々のピストンが別の運動によって前進された後にのみ後退される場合は特に有利である。1つの流体を送達するための方法に関して、本明細書に説明する前述の実施形態および利点は、第2、第3、またはそれ以上の流体を送達するための対応する実施形態にも同様に適用可能である。たとえば、各々のピストンは、ステッパ・モータまたはブラシレスDCモータなどの電気機械的デバイス各々によって伝動配置を介して動かすことができる。
【0038】
第2のピストンが、第1のピストンの前進運動後に動かされることがさらに好ましい。このようにして、放出はより良好に制御され得る。2つの流体および2つの流路を有するデバイスでは、各々の流路内に弁が設けられてよい。弁は、カートリッジ内への逆流が防止されるようにして配置され得る。たとえば、1つの弁のみが一度に開かれ、デバイス内側の流体の流れは、2つ以上の流体が1回で放出される場合と比べてより予測可能である。したがって、交差汚染を防止することができ、用量のより精密な予測を行うことができる。
【0039】
各々のピストンは別個の電気機械的デバイスによって駆動されるが、切り替え伝動配置によって各々のピストンに連結する単一の電気機械的デバイスもまた可能であることが特に好ましい。個々の独立した電気機械的デバイスが、各々のピストンまたは流体に対して設けられる場合、いかなる切り替え機構も必要とされず、各々の電気機械的デバイスは、1つのピストンを個々に制御することができる。
【0040】
第1のピストンおよび第2のピストンが、順々に動かされる、たとえば前進されるおよび/または後退される場合、ピストンは、運動時間の間の電力消費量を2倍にすることがある同時では動かされないため、出力の低い電源を機械的デバイスに設けるだけで十分である。当然ながら、ピストンを動かす順序を変更することが可能である。
【0041】
第2のピストンが滞留時間内に別の前進運動によって動かされる場合は特に好ましい。これは、第2の流体の用量精度のさらなる改良も生じさせる。第1の栓に関連して説明したように、第2のピストンの別のまたは第2の前進運動により、所望の用量送達に対応する第2の栓の所望の位置に対する実際の位置との相違が、補償される。
【0042】
たとえば、第2の動き検出器を用いることによって第2の電気機械的デバイスの後方運動を検出することが特に可能である。そのような後方運動は、回転して伸張される嵌め込み式ピストン・ロッドが使用されるとき、ピストン・ロッド上に作用するトルクが、ピストン・ロッド、もしくはたとえば駆動列もしくは伝動配置内の他の機械的要素をゆがませる、または捩じ曲げる場合に結果として生じ得る。前進運動が完了し、電気機械的デバイスへの電力が電力節減のために切られた後、これらの部品が再度延長しまたは弛緩するとき、電気機械的デバイスの後方運動が結果として生じ得る。動き検出器によって検出された前進運動の欠如の正確な量は、他のまたは第2の前進運動によって補償され得る。他の前進運動後、第2のピストンは後退される。
【0043】
したがって、2つの流体を送達する方法では、好ましくは、最初に、第1のピストンの前進運動、その後第2のピストンの前進運動が存在する。滞留時間中、電力が、両方の電気機械的デバイスにおいて切られることがあり、その結果、電気機械的デバイスのわずかな後方運動が生じることがある。電気機械的デバイスは、滞留時間中だけでなく、それぞれ他の電気機械的デバイスが使用または動かされる間にも電源が切られ得る。この運動は、別個の動き検出器によって検出される。次いで、検出された後方運動を修正するための第1のピストンの他の前進運動、およびその後の第2のピストンの他の前進運動が存在し、またはその逆の順でも存在する。その後、好ましくは、第1のピストンの後退、およびその後第2のピストンの後退が存在し、またはその逆の順でも存在する。
【0044】
技術的課題はまた、特に、本発明よる方法を実行するための医療デバイスであって、リザーバ、栓、ピストン、電気機械的デバイス、および制御ユニットを備える医療デバイスによって解決される。リザーバ、栓、ピストン、および制御ユニットによって制御される電気機械的デバイスは、栓をピストンを介して所定の距離にわたって動かすように電気機械的デバイスに指示することができるように、また流体が栓の前進運動によってリザーバから放出されるように配置される。さらには、制御ユニットは、ピストンの前進運動後の滞留時間後、ピストンが電気機械的デバイスによって後退されるように構成される。
【0045】
一方で、滞留時間が設けられるように制御ユニットを構成することにより、栓が実質的には拡張し、所望の目的地に到達するのに十分な時間が存在する。したがって、用量精度が改良され得る。他方では、ピストンが、ピストンの前進運動後の滞留時間後に電気機械的デバイスによって後退可能であるように制御ユニットを構成することにより、圧力は流体から取り去られ、または解放される。滞留期間後、たとえばユーザが医療デバイス、または特に注射針を注射部位から取り外したときでも、医療デバイスからの流体のいかなる漏出も少なくとも低減され、またはさらには防止される。
【0046】
医療デバイスが、伝動配置によって電気機械的デバイスによって栓が動かされるように配置された伝動配置をさらに備える場合、伝動配置の設計によって所望の正確性が調整され得る。電気機械的デバイスの機械的運動の栓への伝達は、たとえば、所望の正確性に従って調整され得る。栓の動きの速度および流体を放出するのに必要とされる、栓によって流体上に及ぼされる力もまた、制御可能である。
【0047】
用量精度のさらなる改良は、制御ユニットが、滞留時間内に電気機械的デバイスが第2の前方運動によって動かされるように構成される場合に達成され得る。これは、所望の用量送達に対応する栓の所望の位置に対する実際の位置との相違を補償するために、別の前進運動によってピストンを動かす。
【0048】
動き検出器、たとえば、光源の交互遮断によって電気機械的デバイスの回転を検出する光学エンコーダを設けることが特に可能である。動き検出器によって検出された欠如した前進運動の正確な量は、次いで、別の前進運動によって補償され得る。別の前進運動後、ピストンは後退される。
【0049】
例示的な実施形態では、医療デバイスは、さらに、第2のリザーバ、第2の栓および第2のピストンをさらに備え、ここで第2のリザーバ、第2の栓、第2のピストンおよび制御ユニットによって制御される第2の電気機械的デバイスは、第2の栓を第2のピストンを介して所定の距離にわたって動かすように電気機械的デバイスに指示することができるように、また、第2の流体が、第2の栓の前進運動によって第2のリザーバから放出され得るように配置される。制御ユニットは、第2のピストンの前進運動後の滞留時間後、第1のピストンおよび第2のピストンが、電気機械的デバイスによって後退されるように構成され得る。滞留時間中、ピストンはまだ後退されていないため、各々の流体内に保たれる圧力は、流体間の交差汚染が存在するリスクを最小限に抑え、したがって用量精度も向上させる。1つまたは2つの流体を送達するための方法および医療デバイスに関して本明細書に説明する前述の実施形態および利点は、第2、第3、またはそれ以上の流体を送達するための医療デバイスの対応する実施形態にも同様に適用可能である。たとえば、複数の電気機械的デバイスの各々に対して、個々の制御ユニットが存在することができ、または共通の制御ユニットが存在することもできる。
【0050】
別の例示的な実施形態では、制御ユニットは、第2のピストンが、第1のピストンの前進運動後に動かされるように構成される。このようにして、放出をより良好に制御することができるため、より良好な用量精度が達成され得る。また、それほど強力でない電源を機械的デバイスに設けるだけで十分である。なぜなら、運動時間の間の電力消費量を2倍にする可能性があるピストンを同時に動かすことがないからである。
【0051】
電気機械的デバイスおよび/または制御ユニットが、第1のピストンおよび第2のピストンが同時に動かされないように構成されるとき、ピストンが同時に動かされることをソフトウェアまたはハードウェアによっても排除することができるため、安全性のさらなる改良を達成して、たとえば流体を相互混合する、または電池に過負荷をかけるまたは過度な負担をかけるというリスクを最小限に抑えることできる。
【0052】
医療デバイスまたは薬物送達デバイスは、携帯型医療デバイスでよい。デバイスの輸送および動きにより、その精度は容易に損なわれ得るため、携帯型デバイスの用量精度を確実に向上させることが特に望ましい。さらに、過剰および/または過少の用量は、ユーザに対して有害な結果を及ぼす可能性があるため、薬物用量はできるだけ正確である必要がある。さらには、携帯型デバイス内では限定された空間および電力しか利用可能でなく、それによって、特に、本発明による方法および医療デバイスを携帯型デバイスおよび/または薬物送達デバイスでの使用に適させる。
【0053】
本発明による方法および医療デバイスのさまざまな態様の上記ならびに他の利点は、添付の図を適切に参照して以下の詳細な説明を読み取ることにより、当業者には明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による医療デバイスの例示的な実施形態によって実行される本発明による方法の例示的な実施形態のさまざまな状態の概略図である。
図2】薬物送達デバイスと共に使用するための駆動機構の概略図である。
図3図2に示す駆動機構の別の概略図である。
図4図2に示す駆動機構と共に使用され得る動作検出システムを示す図である。
図5】薬物送達デバイスと共に使用するための代替の駆動機構の概略図である。
図6】特定の要素が取り外された、図5に示す代替の駆動機構の概略図である。
図7図6に示す嵌め込み式ピストン・ロッドおよび伝動配置の概略図である。
図8図7に示す嵌め込み式ピストン・ロッド配置の概略図である。
図9図7に示す1つのピストン・ロッド配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明による医療デバイスの例示的な実施形態によって実行される本発明による方法の例示的な実施形態のさまざまな状態の概略図を示している。医療デバイス1は、薬剤または薬作用物質4の形態の流体4を含むリザーバ2を備える。リザーバは、流体4をそこから放出することができる出口6を有する。流体4内の圧力を増大させ、したがって流体4をリザーバ2から出るように案内するために、栓8が、流体4上に圧力を及ぼすことができる。栓8は、ピストン10と接触しており、ピストン10は、モータの形態の電気機械的デバイス12の動きを栓8上に伝達することができる。当然ながら、図5に例示的に説明するような伝動配置またはピストン・ロッドもまた設けられ得る。モータ12は、接続16を介して制御ユニット14によって制御される。制御ユニット14は、たとえば、マイクロプロセッサまたは専用のモータ・ドライバになることができる。制御ユニットは、モータ12の実際の動きに関するフィードバックを、接続20を介して動き検出器18から受け取る。動き検出器18は、別個のユニットとして示されているが、動き検出器はまた、たとえば、モータ12のハウジング内に直接的に一体化されてもよい。動き検出器18は、送りねじの動作ではなく、モータ12の動作を直接的に検出するが、送りねじの動作の検出もまた、依然として別の可能な配置となる。
【0056】
図1aでは、栓8は、最上の鉛直線によって示すような位置Aにある。メモリ、別の制御ユニットまたはユーザ・インターフェースから受信され得る制御ユニット14の指示により、モータ12は、ピストン10を栓8に押し付けて駆動させ、それにより、栓は開口部6に向かって動き、流体4は、開口部6を通ってリザーバ2から部分的に放出される。
【0057】
それと同時に、モータ12の動き、たとえばモータ12のピニオンの動きは、動き検出器18によって監視され得る。
【0058】
栓8の前進運動後の状態が、図1bに示されている。栓8はこのとき、位置Bにある。栓8の後退前、システムがその間に平衡状態に近付くことができる滞留時間がこのとき存在する。滞留時間はたとえば10秒であることができる。この時間の間、たとえば栓が前方運動中に圧縮されていた場合、栓は拡張することができる。
【0059】
所望の用量に対応する栓8の所望の位置が、図1の最底線によって示すような位置Cである場合がある。モータ12がピストン10を十分遠くに駆動させた場合でも、栓8は、所望の位置Cに到達していないことがある。エネルギーの一部が、たとえば、回転するピストン10の可逆式の捩じ曲げに変換され得るという事実により、栓8は、所望の位置Cに到達せずに、位置Bのみに到達する。また、モータ12と栓8との間には、エネルギー、たとえば伝動配置内の貯蔵されたエネルギーが、栓8の前進運動にすべて伝えられないことがある、他の場所および原因もまた存在する。
【0060】
この状態もまた、図1bに示されている。栓は位置Bにあり、少ない投薬量しか投与されない。モータ12がオフに切り替えられたとき、ピストン・ロッド内に貯蔵されたエネルギーは、ピストン・ロッド10を巻き出し(ねじれ解除し)、このエネルギーは、栓8の前進運動の代わりにモータ12の後方運動に変換される。モータ12のこの後方運動は、動き検出器18によって検出され符号化され、次いで、たとえば制御ユニット14に伝えられる。
【0061】
制御ユニット14は、次いで、モータ12に指示して、ピストン10、したがって栓8を再度前進させて、モータ12の検出された後方運動を補てんする。また、滞留時間中、動き検出器18のフィードバックなしで別の前進運動を提供することも可能である。他の前進運動の量は、このとき、たとえば実験的データに基づくことができる。他の前進運動は任意選択のみであるが、これは、用量精度を向上させることができる。
【0062】
図1cに示すように、第1の前進運動の完了の、たとえば1秒後に起こり得る栓8の他の前進運動後、栓8は、このとき位置Cにある。ピストン10が、用量が完了した後にその位置に残される場合、ピストン10は、流体が膨張したときに栓8の上方向の動きを妨げ、したがって漏出を引き起こすことがあるため、医療デバイス1はさらに漏出を起こしやすい。
【0063】
したがって、図1dに示すように、ピストン10は、栓8の位置と比べて後方に下がった位置まで後退される。この場合、ピストン10は、栓8とはもはや直接接触しない。また、栓8およびピストン10を互いに装着したまま保ち、栓8を後退させることも可能である。このようにして、流体を出口6から後退させることができ、それにより、漏出が防止される。
【0064】
さらなる送達中、ピストン10またはピストン10および栓8の後退の量は、たとえば、後退の量に等しい追加の量だけ栓を前進させることによって反映され補償される。
【0065】
次の図では、2つの薬物を送達するための薬物送達デバイスの構成要素が説明される。説明する特性は、特に、本発明および対応する実施形態による方法ならびに医療デバイスを組み合わせると特に有利である。
【0066】
図2は、電気機械的システム500の1つの好ましい配置を含む図1に示す薬物送達デバイス1のさまざまな内部構成要素を示している。図2はまた、デジタル・ディスプレイ80、印刷回路基板アセンブリ(PCBA)520を電源または電池510と共に示している。PCBA520は、デジタル・ディスプレイ80と電気機械的システム500との間に位置することができ、このとき、電池または電源510は、この電気機械的システムの下方に位置している。電池または電源510は、デジタル・ディスプレイ80、PCBA520および電気機械的システム500などの医療デバイスの電子構成要素に電力を供給するように電気的に接続される。図示するように、カートリッジ90、100の形態の第1および第2の両方のリザーバが、消費された状態で示されている。すなわち第1および第2のカートリッジは、最も遠位位置にある栓を有する空の状態で示されている。たとえば、(通常は第1の薬剤を含む)第1のカートリッジ90は、遠位置にある栓94を有するように示されている。(通常は第2の薬剤を含む)第2のカートリッジ100の栓104は、同様の位置で示されている。
【0067】
図2を参照すると、交換式電池またはその複数の電池などの電源510の適切な場所を画成する第1の領域が設けられることを見ることができる。電源510は、再充電可能な電源を含むことができ、電源510がデバイス内にあるままで再充電され得る。あるいは、電源510は、薬物送達デバイス10から取り外され、たとえば、遠隔電池充電器によって外部で再充電されてよい。この電源は、リチウム−イオンまたはリチウム−ポリマーの電源を含むことができる。この好ましい実施形態では、電池510は、略平坦で矩形の形状の電源を含むことができる。
【0068】
図3は、デジタル・ディスプレイ80とPCBA520の両方が省かれた、図2に示す電気機械的システムの第1の配置を示している。図3に示すように、電気機械的システム500は、一次薬剤を含む第1のカートリッジ90および二次薬剤を含む第2のカートリッジ100から用量を排出するように作動する。図3に示すように、第1および第2のカートリッジ90、100は、最も遠位置にある栓を有する空の状態で示されている。この電気機械的システム500では、システムは、各々のカートリッジ90、100用の独立した機械的ドライバを備える。すなわち、独立した機械的ドライバ502は、第1のカートリッジ90から用量を排出するように作動し、独立した機械的ドライバ506は、第2のカートリッジ100から用量を排出するように作動する。3つの異なる薬剤に対して作動する代替の電気機械的システムでは、3つの独立した機械的ドライバを設けることができる。独立した機械的ドライバは、たとえば、モータ・ドライバまたは制御ユニット14の制御下で作用する。
【0069】
第1の独立した機械的ドライバ502は、第1のカートリッジ90から用量を排出するように作動する。この第1のドライバ502は、第1の伝動配置540に動作可能に連結された第1のモータ530を備える。このモータ530に通電するために、コネクタ532が、モータ・ドライバ(図示せず)に電気的に接続する手段として設けられる。この第1の伝動配置540は、第1の嵌め込み式ピストン・ロッド514の近位部分と機械的にリンクされる。第1の嵌め込み式ピストン・ロッド514は、遠位端部521が第1のカートリッジ90の栓94上に作用する完全に伸張した位置で示されている。
【0070】
この伝動配置540が第1のモータ530の出力シャフトによって駆動されるとき、この配置540は、第1の嵌め込み式ピストン・ロッド514の近位部分518を回転させる。ピストン・ロッド514のこの近位部分518が回転するにつれて、ピストン・ロッド514の第2のまたは遠位部分519は、遠位方向に駆動される。
【0071】
好ましくは、嵌め込み式ピストン・ロッド514の近位部分518は、雄ねじ517を備える。このねじ山517は、遠位部分519の近位端部に短いねじ付きセクションを備える一体型ナットを有する遠位部分519と係合する。この遠位部分519は、キー溝内で作用するキーによって、回転することが防止される。たとえば、遠位部分519は、外側に、回転を防止する1つまたはそれ以上のスプラインを有することができる。したがって、第1のギアボックス配置540が、近位セクション518の回転を引き起こしたとき、近位部分518の回転は遠位端部521上に作用し、それによって嵌め込み式ピストン・ロッドの遠位部分を長手方向軸に沿って駆動して伸張させる。
【0072】
この遠位方向に動くことにより、ピストン・ロッド514の第2の部分519の遠位端部521は、第1のカートリッジ90内に収容された栓94上に力を及ぼす。ピストン・ロッド514の遠位端部521が栓上に力を及ぼしている状態において、第1の薬剤のユーザ選択された用量は、たとえば、カートリッジ90から押し出され、装着された投薬インターフェース(図示せず)に入り、そして結果的には装着されたニードル・アセンブリ(図示せず)を出る。
【0073】
この同様の注射作動は、コントローラが最初に、第2の薬剤の用量が求められることを決定し、この用量の量を決定する場合、第2の独立したドライバ506によって起こる。先に述べたように、特定の状況においては、コントローラは、第2の薬剤の用量が求められなくてよいと決定してもよく、したがってこの第2の用量は、「0」用量に「設定」される。
【0074】
好ましくは、モータ530、536は、電子整流(electronic commutation)に適したモータを備える。最も好ましくは、そのようなモータは、ステッパ・モータまたはブラシレスDCモータを含むことができる。
【0075】
一次および二次の薬剤の用量を注射するために、ユーザは最初、ディスプレイ80上のヒューマン・インターフェース構成要素によって一次薬剤の用量を選択する。一次薬剤からの薬物の用量が選択された後、マイクロコントローラは、事前に記憶されたアルゴリズムを利用して、第2の薬剤カートリッジからの第2の薬物の用量サイズを決定する。この所定のアルゴリズムは、たとえば事前選択された治療プロファイルに基づいて、第2の薬剤の用量の少なくとも一部を決定することに役立ち得る。1つの配置では、これらの治療プロファイルは、ユーザ選択可能である。あるいは、これらの治療プロファイルは、パスワード保護され、パスワードによって認証される人、たとえば医師または医療専門家によってのみ選択可能である。さらに別の配置では、治療プロファイルは、薬物送達デバイスの製造者または供給者によってのみ設定されてよい。したがって、薬物送達デバイスには、1つのプロファイルのみが設けられ得る。
【0076】
第1および第2の薬剤の用量サイズが確立されたとき、ユーザは、注射ボタンを押すことができる。このボタンを押すことにより、モータ・ドライバは、第1および第2のモータ530、536に通電して上記で説明した注射プロセスを実行させる。
【0077】
1つの配置では、第1および第2の両方のモータ530、536は、第1の薬剤のユーザ選択された用量および第2の薬剤の後で計算された用量を同時に投薬するように同時に作動する。すなわち、第1および第2の両方の独立した機械的ドライバ502、506は、それぞれのピストン・ロッド514、516を同時に駆動させることができる。このようにして、第1の薬剤は、本質的には第2の薬剤と同時に投薬インターフェース(図示せず)の保持チャンバに入る。そのような注射工程の1つの利点は、特定の混合度が、実際の用量投与の前に第1と第2の薬剤の間で起こり得ることである。
【0078】
好ましい代替の配置では、コントローラは、第1および第2の独立した機械的ドライバ502、506が、第1の薬剤または第2の薬剤を他方の薬剤の前に投薬するように作動され得るようにプログラムされ得る。その後、第2のまたは一次の薬剤が、次いで投薬され得る。1つの好ましい配置では、二次薬剤が一次薬剤の前に投与される。
【0079】
好ましくは、第1および第2のモータ530、536は、電子整流を含む。そのような整流は、モータ暴走状態のリスクを最小限に抑えるのに役立ち得る。そのようなモータ暴走状態は、不具合を抱えている標準的なブラシ付きモータを備えるシステムで起こり得る。モータ駆動システムの1つの実施形態では、ウオッチドッグ(watchdog)・システムが設けられてよい。そのようなシステムは、ソフトウェアの機能不全または電子ハードウェアの故障の発生時にモータのいずれかまたは両方への電力を除去する能力を有する。電力が除去されることを防止するために、電子ハードウェアおよび/またはマイクロコントローラ・ソフトウェアのいくつかのセクションからの正しい入力が、提供される必要がある。これらの入力パラメータの1つが正しくない場合、電力はモータから除去され得る。
【0080】
加えて、好ましくは両方のモータ530、536は、逆方向に作動され得る。この特性は、ピストン・ロッド514、516を第1と第2の位置の間で動かすことを可能にするために必要とされることがある。
【0081】
好ましくは、図3に示す第1の独立した機械的ドライバ502は、第1の動作検出システム522を備える。図4aは、図3に示す第1のモータ530の斜視図を示している。図4bは、デジタル・エンコーダ534と併用する、図4aに示す第1のモータ530を備える好ましい動作検出システム522を示している。
【0082】
図4aおよび4bに示すように、そのような動作検出システム522は、第1の独立したドライバ502からの作動上および位置上および/または方向上のフィードバックを薬物送達デバイスの制御ユニットに提供するために利用できるので、有益になり得る。たとえば、第1の独立したドライバ502に関して、好ましい動作検出システム522は、第1のモータ・ピニオン524の使用によって達成され得る。この第1のピニオン524は、第1のモータ530の出力シャフト531に動作可能に連結される。第1のピニオン524は、第1の伝動配置540の第1のギアを駆動する回転ギア部分526を備える(たとえば図3を参照)。第1のモータ・ピニオン524はまた、複数のフラグ528a〜bも備える。この第1の動作検出システム配置522では、第1のピニオン524は、第1のフラグ528aおよび第2のフラグ528bを備える。これらの2つのフラグ528a〜bは、モータが駆動されたときにモータ出力シャフト531、故に連結された第1のピニオン524が回転するにつれて、これらが第1の光学エンコーダ534を通り抜けるようにモータ・ピニオン524上に位置する。
【0083】
好ましくは、第1および第2のフラグ528a〜bが、第1の光学エンコーダ534を通り抜けるとき、エンコーダ534は、特定の電気パルスをマイクロコントローラに送信することができる。光学エンコーダ534は、モータ出力シャフト1回転あたり2つの電気パルスをマイクロコントローラに送信する。そのため、マイクロコントローラは、したがって、モータ出力シャフトの回転を監視することができる。これは、電気機械的システム妨害、投薬インターフェースもしくはニードル・アセンブリの正しくない取り付け、もしくは針が閉塞される場合などの、用量投与工程中に起こり得る位置エラーまたは事象を検出するのに有利になり得る。
【0084】
別の実施形態では、第1のピニオン524は、複数のフラグ528a〜b、たとえば3つもしくは4つのフラグまたはそれ以上を備える。さらなる実施形態では、光学エンコーダ534は、フラグ528a〜bによって遮断される2つの光路を備える。これは、単一の光源および互いに隣にある2つの光学検出器によって達成されてよく、それにより、これらは、ピニオン524が回転するときに順々にフラグ528a〜bによって遮られる。このようにして、回転方向が検出され得る。
【0085】
好ましくは、第1のピニオン524は、プラスチック射出成形ピニオンを備える。そのようなプラスチック射出成形部分は、出力モータ・シャフト531に装着され得る。光学エンコーダ534は、ギアボックス・ハウジングに位置付けられ装着され得る。そのようなハウジングは、第1の伝動配置540および光学エンコーダ534の両方を収容することができる。エンコーダ534は、好ましくは、場合によってはPCBAの可撓性部分を介して制御ユニットと電気連通する。好ましい配置では、図2および3に示す第2の独立した機械的ドライバ506は、第1の機械的ドライバ502の第1の動作検出システム522と同様の形で作動する第2の動作検出システム544を備える。
【0086】
フラグの数および検出器の数は、動き検出器の精度を向上させるために増やすことができる。好ましくは、5つのフラグが2つの検出器と共に動き検出器に設けられ、その結果、ピニオンの単回転あたり20の信号を生じさせる。
【0087】
図5は、好ましい代替の電気機械的システム600を含む薬物送達デバイスのさまざまな内部構成要素を示している。図5は、デジタル・ディスプレイ80、印刷回路基板アセンブリ(PCBA)620を電源または電池610と共に示している。PCBA620は、デジタル・ディスプレイ80と電気機械的システム600との間に位置することができ、このとき電池または電源610は、この電気機械的システムの下方に位置している。電池または電源610は、デジタル・ディスプレイ80、PCBA620および電気機械的システム600に電力を供給するように電気的に接続される。この代替の電気機械的システム600のデジタル・ディスプレイ80およびPCBA620は、先に説明したような同様の方法で作動する。
【0088】
図示するように、第1および第2の両方のカートリッジ90、100が、消費された状態で示されている。すなわち第1および第2のカートリッジは、最も遠位位置にある栓を有する空の状態で示されている。たとえば、(第1の薬剤を通常含む)第1のカートリッジ90は、端部または最も遠位位置にある栓94を有するように示されている。(通常は第2の薬剤を含む)第2のカートリッジ100の栓104は、同様の端部位置で示されている。
【0089】
図6は、デジタル・ディスプレイ80とPCBA620の両方が省かれた、図5に示す電気機械的システムを示している。図示するように、この代替の電気機械的システム600は、一次薬剤を含む第1のカートリッジ90および二次薬剤を含む第2のカートリッジ100から用量を排出するように作動する。この好ましい電気機械的システム600では、システムは、第1のカートリッジと第2のカートリッジの両方に対して独立した機械的ドライバを備える。すなわち、独立した機械的ドライバ602は、第1のカートリッジ90から用量を排出するように作動し、独立した機械的ドライバ606は、第2のカートリッジ100から用量を排出するように作動する。この好ましい電気機械的システム600が、3つの別個のカートリッジ内に含まれた3つの異なる薬剤に対して作動するように再構成された場合、3つの独立した機械的ドライバが、組み合わせられた用量を投与するために設けられ得る。独立した機械的ドライバは、制御ユニット14の制御下で、たとえば制御ユニット14によって制御されたモータ・ドライバによって作用する。
【0090】
第1の独立した機械的ドライバ602は、第1のカートリッジ90から用量を排出するように作動し、上記の図2および3に示した電気機械的システム500を参照して説明した独立したドライバ502、506と同じような方法で作動する。すなわち、この第1の独立したドライバ602は、第1の伝動配置640に動作可能に連結された第1のモータ630を備える。このモータ630に通電するために、コネクタ632が、モータ・ドライバ332に電気的に接続する手段として設けられる。この第1の伝動配置640は、嵌め込み式ピストン・ロッド614の近位部分に機械的にリンクされる。この伝動配置640が第1のモータ632の出力シャフトによって駆動されるとき、この配置640は、嵌め込み式ピストン・ロッド614の近位部分618を回転させる。ピストン・ロッド614のこの近位部分618が回転されるにつれて、ピストン・ロッド614の第2のまたは遠位の部分622は、遠位方向に駆動される。この遠位方向に動くことにより、ピストン・ロッド614の第2の部分622の遠位端部623は、第1のカートリッジ90内に収容された栓94上に力を及ぼす。ピストン・ロッド614の遠位端部623が栓94上に力を及ぼしている状態において、第1の薬剤のユーザ選択された用量の量は、先に論じたように、カートリッジ90から押し出され、装着された投薬インターフェース200に入り、そして結果的には装着されたニードル・アセンブリ400を出る。
【0091】
第2の独立した機械的ドライバ606は、第1の独立したドライバ602とは異なる方法で第2のカートリッジ100から用量を排出するように作動する。すなわち、この第2の機械的ドライバ606は、第2の伝動配置646に動作可能に連結された第2のモータ636を備える。このモータ636に通電するために、コネクタ638が、モータ・ドライバ334に電気的に接続する手段として設けられる。
【0092】
この独立した機械的ドライバ606は、嵌め込み式のピストン・ロッド616をさらに備える。第2の伝動配置646は、入れ子状のピストン・ロッド660の近位部分に機械的にリンクされる。この伝動配置646が第2のモータ636の出力シャフトによって駆動されるとき、この配置646は、嵌め込み式ピストン・ロッド616の近位部分660を回転させる。
【0093】
第2の伝動配置646は、嵌め込み式入力ピストン・ロッドと共に、複数の化合物ギア(ここでは4つの化合物ギア)を伴ったモータ・ピニオンを備える。化合物ギアの少なくとも1つは、この嵌め込み部が、用量をカートリッジから排出するために遠位方向に延びてカートリッジ栓104上に軸方向の圧力を及ぼすにつれて、入力ピストン・ロッドとの連続的な噛み合い係合を可能にするように細長くされる。細長いギアは、伝達シャフトと称されてもよい。ギアボックス配置は、好ましくは、124:1の比を有する。すなわち、嵌め込み式入力ねじの回転ごとに、第2のモータの出力シャフトは123回、回転する。図示する第2の伝動配置646では、この伝動配置646は、5段によって作り出される。当業者が認識するように、代替の伝動配置もまた使用されてよい。
【0094】
第2の伝動配置646は、3つの化合物低減ギア652、654、および656を備える。これらの3つの化合物低減ギアは、2つの平行なステンレス鋼ピン上に取り付けられ得る。残りの段は、成形プラスチック軸受け機能上に取り付けられてよい。モータ・ピニオン643は、第2のモータ636の出力シャフト上に設けられ、好ましくは締まりばめまたは摩擦ばめ連結によってこのシャフト637上に保持される。
【0095】
上記で説明したように、モータ・ピニオン643には、動作検出光学センサを遮断する、2つまたはそれ以上の取り付けられた「フラグ」機能が設けられ得る。フラグは、ピニオンの円柱軸の周りで対称的に離間される。
【0096】
駆動列の嵌め込み式ピストン・ロッド616が、図7に示され、入力ねじ680に動作可能に連結された嵌め込み式プランジャ644を備える。図8は、ラッチ・バレルに連結された嵌め込み式ピストン・ロッド616の斜視図を示している。図9は、ピストン・ロッド616が伸張した位置にある状態の独立した機械的ドライバの断面図を示している。
【0097】
図示するように、外側要素(嵌め込み式ピストン・ロッド・プランジャ644および嵌め込み部)は、嵌め込み式ピストン・ロッド616を表している。
【0098】
伝達シャフト670は、伝動配置646に動作可能にリンクされる。伝達シャフト670は回転することはできるが、軸方向に動くことはできない。図6に見ることができるように、伝達シャフト670は、第2の伝動配置646と連携し、第2のギアボックス配置646によって発生したトルクを嵌め込み式ピストン・ロッド616に伝達する。
【0099】
詳細には、伝達シャフト670が伝動配置646によって回転されるとき、伝達シャフト670は、入力ねじ680の近位端部にある一体化されたギア付きの部分681上に作用する。したがって、伝達シャフト670の回転は、入力ねじ680をその軸周りで回転させる。
【0100】
入力ねじ680の近位部分は、ねじ付きセクション682を備え、このねじ付きセクションは、ラッチ・バレル660のねじ付きセクションに嵌合される。したがって、入力ねじ690が回転するとき、これは、それ自体巻き戻し、またはねじ込んでラッチ・バレル660を出入りする。その結果、入力ねじ680がラッチ・バレルを出入りするように動くにつれて、ねじ680は伝達シャフト670に沿って摺動することが可能にされ、それにより、伝達シャフトおよびギアは嵌合されたままになる。
【0101】
嵌め込み式プランジャ644には、ねじ付きセクション645が設けられる。このねじ付きセクション645は、入力ねじ680の遠位端部内の短いセクションにねじ込まれる。プランジャ644は回転することから抑制されるので、これは、それ自体巻き戻して入力ねじ680に沿って出入りする。
【0102】
キー647が、プランジャ644が回転することを防止するために設けられる。このキー647は、ピストン・ロッド616の入力ねじ680の内部に設けられ得る。注射工程中、このキー647は、カートリッジ100の栓104に向かって軸方向に動くが、回転はしない。キー647には、ラッチ・バレル660内の長手方向スロット内を通る近位の径方向ペグが設けられる。したがって、キー647は、回転することはできない。キーはまた、プランジャ644内のスロットと係合する遠位の径方向ペグが設けられてもよい。
【0103】
好ましくは、薬物送達デバイスは、複数の異なる治療プロファイルを定義するために使用される複数のアルゴリズムを記憶するために、十分なメモリ記憶能力を備えるメモリデバイスを備える。1つの好ましい配置では、ユーザが一次薬剤の用量を設定した後、薬物送達デバイスは、第2の薬剤、および恐らくは第3の薬剤の用量を、記憶された治療プロファイルの1つに基づいて決定または計算するようにプログラムされる。1つの配置では、医療提供者または医師は、治療用量プロファイルを選択し、このプロファイルは、ユーザ変更可能でなくてよく、および/またはパスワード保護されてよい。すなわち、ユーザ、たとえば医療提供者または医師によって知られているパスワードのみが、代替のプロファイルを選択することができる。あるいは、1つの薬物送達デバイス配置では、用量プロファイルはユーザ選択可能である。本質的には、治療用量プロファイルの選択は、患者の個々の目標となる治療に応じたものになることができる。
【0104】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0105】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0106】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0107】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0108】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0109】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0110】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0111】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0112】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0113】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0114】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0115】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0116】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0117】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0118】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0119】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0120】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
図1a-1d】
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9