(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238918
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】異物付着防止方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F24F 9/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
F24F9/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-21097(P2015-21097)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-142508(P2016-142508A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066219
【氏名又は名称】株式会社ケイズベルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】里薗 勝成
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−263021(JP,A)
【文献】
特開2001−245796(JP,A)
【文献】
特表2000−512730(JP,A)
【文献】
特開昭63−169435(JP,A)
【文献】
特開2014−163630(JP,A)
【文献】
特開2013−145104(JP,A)
【文献】
特開2009−220958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
B08B 17/02
B65G 45/22
F24F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者又は利用者が近付くベルトコンベア、作業台、食材載置台その他のテーブルを含む物品載置部上に置かれた物品に対する異物の付着を防止するための方法であって、
吐出口と吸気口とを有する送風装置を一対、一方の前記送風装置を他方の前記送風装置と上下逆にして、前記物品載置部を挟むように配置することにより、前記物品載置部を垂直方向に包囲する空気の流れを生成することを特徴とする異物付着防止方法。
【請求項2】
作業者又は利用者が近付くベルトコンベア、作業台、食材載置台その他のテーブルを含む物品載置部を挟むように一対の送風装置を配置して成る装置であって、
前記各送風装置は吐出口と吸気口とを有していて、一方の前記送風装置の吐出口は前記物品載置部の上側に開口するように配置されると共に、その吸気口は前記物品載置部の下側に開口するように配置され、他方の前記送風装置の吐出口は前記物品載置部の下側に開口するように配置されると共に、その吸気口は前記物品載置部の上側に開口するように配置され、前記一方の送風装置の吐出口から吐出された空気が前記物品載置部の上を通って前記他方の送風装置の吸気口に吸入され、前記他方の送風装置の吐出口から吐出された空気が前記物品載置部の下を通って前記一方の送風装置の吸気口に吸入されるようにしたことを特徴とする異物付着防止装置。
【請求項3】
前記送風装置内にエアフィルターが配設される、請求項2に記載の異物付着防止装置。
【請求項4】
前記吐出口と吸気口は、前記物品載置部の長さ方向に伸びるスリットである、請求項2又は3に記載の異物付着防止装置。
【請求項5】
前記吐出口と吸気口はそれぞれ複数設けられる、請求項2乃至4のいずれかに記載の異物付着防止装置。
【請求項6】
前記一方の送風装置の吐出口から吐出される空気は斜め上方に向けられる、請求項2乃至5のいずれかに記載の異物付着防止装置。
【請求項7】
前記一方の送風装置の吐出口から吐出される空気は水平方向に向けられる、請求項2乃至5のいずれかに記載の異物付着防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物付着防止方法及び装置に関するものであり、より詳細には、例えば、食品工場、薬品工場、精密機器組み立て工場等におけるベルトコンベアや作業台、あるいは、回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイル(バイキング形式)の飲食店における食材バット配置テーブル等に付設され、作業者や利用者の髪の毛、まつ毛、眉毛、塵埃その他の異物が、ベルトコンベアや作業台等の上の食品、薬品、精密部品、あるいは、蓋を開けた食材バット内の食材に付着することを防止するための異物付着防止方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品工場や薬品工場、あるいは、精密機器製造工場等において、食品、薬品等の加工品をベルトコンベアで搬送する際に、加工品に作業者の髪の毛等が付着しないようにするために、作業者はキャップを被ることが多い。しかし、その場合髪の毛の落下付着を防ぐことができるとしても、まつ毛や眉毛、あるいは、衣服に付着し又は浮遊している塵埃等の異物の落下付着まで防止することはできない。
【0003】
これらの異物が搬送中の加工物に付着することを防止する手段として、コンベアベルト及び作業者に向けてエアを吹き付けるエアシャワー方式が考えられる。この方式を提唱するものとして、例えば、特許文献1(特許第3892109号公報)に記載の発明がある。
【0004】
その発明は、風上側より粗塵用フィルターおよび熱交換器を併設した本体ユニットと、1ユニットにつき送風機と高効率フィルターを備えた送風ユニットと、前記本体ユニットの吹出口と連通し、前記各送風ユニットに冷風を搬送するためのダクトユニットを配し、また、本体ユニット内部に送風機と、冷風風路とは別の風路を設け、各送風ユニットの両側に前記本体ユニットから連通する送風専用ダクトを備え、送風ユニットにより、作業ラインのみに冷却された清浄空気を供給し、本体ユニットの送風機より排出される冷却されない空気を作業者に当たるように吹き出して、作業者から発生する粉塵を排除する構成とした食品工場用空気調和システムである。
【0005】
しかるに、このシステムは構成が複雑且つ大型なものとなるため、設置にコストが嵩むだけでなく、設置個所がかなり制約されて一般的ではなく、本体ユニットが天井等に設置されるため、ベルトコンベアの移設に対処困難という問題がある。また、本体ユニット上に溜まった塵埃が加工物上に落下するおそれがあり、更に、このシステムの場合は、エアを加工物に直接吹きかけるため、加工物を不必要に乾燥させるだけでなく、バクテリア等の付着を誘発するおそれもある。
【0006】
また、この方式は、回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイルの飲食店における食材バット配置テーブル等に対して実施することは、実際上困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3892109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、食品工場や薬品工場等において加工物をベルトコンベアで搬送したり、作業用テーブル上において加工する際に、加工物に髪の毛類や塵埃等が付着することを防止するための手段として従来提唱されているシステムの場合、構成が複雑且つ大型なものとなるため、設置にコストが嵩むだけでなく、設置個所がかなり制約されて一般的ではなく、本体ユニットが天井等に設置されるため、ベルトコンベアの移設に対処困難という問題があり、また、本体ユニット上に溜まった塵埃が加工物上に落下するおそれがあり、更に、加工物を乾燥させたり、バクテリア等の付着を誘発するおそれがあるといった問題があった。
【0009】
本発明は、従来技術におけるこれらの問題を解決するためになされたもので、シンプル且つコンパクトな構成で設置場所の制約がなく、食品工場、薬品工場、精密機器製造工場等において、物品に対して搬送しながら手作業にて加工作業を行うような場合、あるいは、客が回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイルの飲食店における食材バットに近付いた際等に、作業者や利用者の髪の毛、まつ毛、眉毛その他の身体付着物や浮遊塵埃等が物品や食材上に落ちることを防止することができ、しかも、その際エアによる悪影響が物品や食材に及ぶおそれがない、異物付着防止方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、作業者又は利用者が近付くベルトコンベア、作業台、食材載置台その他のテーブルを含む物品載置部上に置かれた物品に対する異物の付着を防止するための方法であって、吐出口と吸気口とを有する送風装置を一対、一方の前記送風装置を他方の前記送風装置と上下逆にして、前記物品載置部を挟むように配置することにより、前記物品載置部を垂直方向に包囲する空気の流れを生成することを特徴とする異物付着防止方法である。
【0011】
また、上記課題を解決するための請求項2に係る発明は、作業者又は利用者が近付くベルトコンベア、作業台、食材載置台その他のテーブルを含む物品載置部を挟むように一対の送風装置を配置して成る装置であって、前記各送風装置は吐出口と吸気口とを有していて、一方の前記送風装置の吐出口は前記物品載置部の上側に開口するように配置されると共に、その吸気口は前記物品載置部の下側に開口するように配置され、他方の前記送風装置の吐出口は前記物品載置部の下側に開口するように配置されると共に、その吸気口は前記物品載置部の上側に開口するように配置され、前記一方の送風装置の吐出口から吐出された空気が前記物品載置部の上を通って前記他方の送風装置の吸気口に吸入され、前記他方の送風装置の吐出口から吐出された空気が前記物品載置部の下を通って前記一方の送風装置の吸気口に吸入されるようにしたことを特徴とする異物付着防止装置である。
【0012】
一実施形態においては、前記送風装置内にエアフィルターが配設される。
【0013】
一実施形態においては、前記吐出口と吸気口は、前記物品載置部の長さ方向に伸びるスリットとされる。また、前記吐出口と吸気口は、それぞれ複数設置されることがある。また、一実施形態においては、前記一方の送風装置の吐出口から吐出される空気は斜め上方に向けられ、他の実施形態においては、前記一方の送風装置の吐出口から吐出される空気は水平方向に向けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る方法及び装置は、シンプル且つコンパクトな構成で設置場所の制約がなく、食品工場、薬品工場等における物品の搬送ライン、あるいは、回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイルの飲食店における食材バット等を筒状に囲むように循環するエアバリアが生成されるため、物品に対して搬送しながら手作業を行うような場合、あるいは、ビュッフェスタイルの飲食店において利用者が食材バットに近付いた際等に、このエアバリアにより、作業者や利用者の髪の毛、まつ毛、眉毛その他の身体付着物や浮遊塵埃等が物品や食材上に落下付着することが防止され、また、エアバリアは物品や食材に触れない方向に生成されるため、エアによる悪影響が物品や食材に及ぶことがないという効果がある。
【0015】
また、本装置をベルトコンベアに設置した場合は、ベルトコンベアが狭隘なトンネル等の通路を通過するような場合においても何ら邪魔にならず、ベルトコンベアの移設の際にも何ら問題が起こらないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る異物付着防止装置を備えたベルトコンベアの斜視図である。
【
図2】本発明に係る異物付着防止装置を備えたベルトコンベアの要部を示す縦断面図である。
【
図3】本発明に係る異物付着防止装置を備えたベルトコンベアの他の構成例の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る異物付着防止方法及び装置は、食品工場、薬品工場、精密機器製造工場等におけるベルトコンベアや作業台、あるいは、回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイルの飲食店における食材バット配置テーブル等に対して適用されるものである。
【0018】
本発明に係る異物付着防止方法は、作業者又は利用者が近付くベルトコンベア、作業台、食材載置台その他のテーブルを含む物品載置部上に置かれた物品に対する異物の付着を防止するための方法であって、吐出口と吸気口とを有する送風装置を一対、一方の前記送風装置を他方の前記送風装置と上下逆にして、前記物品載置部を挟むように配置することにより、前記物品載置部を垂直方向に包囲する空気の流れを生成することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る異物付着防止装置は、上記方法を実施するためのもので、図示した例は、本装置をベルトコンベアに設置した場合のものである。
図1は、本発明に係る異物付着防止装置を備えたベルトコンベアの一構成例の斜視図であり、それは一般のベルトコンベアと同様に、脚フレーム1と、脚フレーム1の上部両側に配備される側板2、3と、側板2、3の端部間に渡される駆動軸4及び従動軸5と、駆動軸4を回転駆動するモーターを内蔵する駆動部6と、駆動軸4及び従動軸5に掛け回されるコンベアベルト7とを備えて成り、一般のベルトコンベアと同様の搬送動作をする。本発明に係る異物付着防止装置は、このような構成の既設のベルトコンベアの側板2、3に予め設置され、あるいは、後付け設置される。
【0020】
本装置は、物品載置部であるコンベアベルト7を挟むように送風装置11、12を対にして配置して成るものである。送風装置11、12はそれぞれ、密封された箱型形状のケース13、14の上面又は側面上端部に吐出口15、16を設けると共に、その下面又は側面下端部に吸気口17、18を設け、内蔵の又は外付けのファン19、20の作用で、吸気口17、18から吸入した空気を吐出口15、16から吐出可能にしたものである。吐出口15、16と吸気口17、18はそれぞれ、斜め上方に開口するようにされ(
図1、2参照)、あるいは、水平方向に開口するようにされる(
図3参照)。
【0021】
図示した例では、ファン19は吸気口17、18近くに配置されているが、吐出口15、16近くに配置することとしてもよい。吐出口15、16と吸気口17、18は、例えば、長さ方向に伸びるスリット状の開口を有していて、空気が帯状に吐出するものとされる。また、吐出口15、16と吸気口17、18はそれぞれ、図示したように複数(図示した例では2個)並設することとしてもよい。
【0022】
ケース13、14内にはエアフィルター21、22が配備され、吸気口17、18から吸入された空気が、エアフィルター21、22で濾過された後に吐出口15、16から吐出されるように構成される。エアフィルター21、22は、本装置の用途に応じ、HEPA、高性能フィルター等を使い分ける。また、脱臭・消臭機能を有するフィルターや、殺菌作用を有するフィルター等の使用も有効である。
【0023】
本装置を構成する一対の送風装置11、12は、一方の送風装置11については、その吐出口15がコンベアベルト7の上側に開口し、その吸気口17がコンベアベルト7の下側に開口するようにして、一方の側板2に設置される。また、他方の送風装置12については、上下逆にして、その吐出口16がコンベアベルト7の下側に開口し、その吸気口18がコンベアベルト7の上側に開口するようにして、他方の側板3に設置される。即ち、コンベアベルト7の上側において送風装置11の吐出口15と送風装置12の吸気口18とが対向し、コンベアベルト7の下側において送風装置12の吐出口16と送風装置11の吸気口17とが対向するように設置される。
【0024】
このように設置された送風装置11、12を同時に作動させると、送風装置11の吐出口15から吐出された空気の多くは、コンベアベルト7上の物品の上を通って送風装置12の吸気口18に吸入され、送風装置12の吐出口16から吐出された空気の多くは、コンベアベルト7の下を通って送風装置11の吸気口17に吸入される。かくして、コンベアベルト7を垂直方向に囲むように循環する円筒状、四角筒状等の筒状のエアバリアが生成される。
【0025】
この構成の場合、コンベアベルト7上を搬送されてくる物品8に対し、送風装置11の吐出口15から吐出される空気が、斜め上方向(
図1、2参照)又は水平方向(
図3参照)に吹き出されて反対側の吸気口18に向かうため、物品8上に落下しようとし、あるいは、物品8上を浮遊する髪の毛、まつ毛、眉毛、塵埃等が吹き飛ばされ、それらが落下して物品8に付着することが防止される。また、吐出口15から吹き出される空気は斜め上方又は水平方向に向けられて、直接物品8に当たることはないので、空気が直接当たることによって物品8が乾燥したり、不必要に冷やされたり、あるいは、バクテリア等の付着を誘発したりするおそれはない。
【0026】
また、コンベアベルト7がワイヤーベルトのように搬送面に通気性があるものの場合は、浮遊する、あるいは、床上等の塵埃を巻き込んだ空気が、下方から舞い上がるおそれがあるが、本発明に係る装置の場合は、コンベアベルト7の下側にも、吐出口16から吸気口17へ向かう空気の流れによるエアカーテンができるので、床上等の塵埃を巻き込んだ空気が下方から物品8に当たるおそれもない。
【0027】
以上の説明は、本装置をベルトコンベアに設置した場合のものであるが、本装置を食品工場や薬品工場等における作業台、あるいは、回転寿司店における寿司搬送コンベアやビュッフェスタイルの飲食店における食材バット配置台、その他のテーブル類に設置する場合の構成及び作用も、上述したところに準ずる。
【0028】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0029】
1 脚フレーム
2、3 側板
4 駆動軸
5 従動軸
6 駆動部
7 コンベアベルト
8 物品
11、12 送風装置
13、14 ケース
15、16 吐出口
17、18 吸気口
19、20 ファン
21、22 フィルター