(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のV字形の溝は、前記表示素子側に形成された第1の溝と、前記反射面側に形成された第2の溝であり、前記第1の溝の断面のV字形と、前記第2の溝の断面のV字形とは、逆向きに傾いている請求項1に記載の導光プリズム。
前記複数のV字形の溝は、前記表示素子側に形成された第1の溝と、前記反射面側に形成された第2の溝であり、前記V字形の溝の入射面側の溝面と該V字形の溝が形成された前記側面とが成す角度をθ1、前記V字形の溝の反射面側の溝面と該V字形の溝が形成された前記側面とが成す角度をθ2とするとき、前記第1の溝のθ1は、前記第2の溝のθ1より小さく、前記第1の溝のθ2は、前記第2の溝のθ2より大きい請求項1に記載の導光プリズム。
前記少なくとも4つの側面のうち、前記対向する2つの側面とは異なる他の対向する2つの側面のそれぞれに、他のV字形の溝が形成されている請求項4に記載の導光プリズム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による透明基板では、溝が形成できる面が観察者側の面およびその反対側の面の2つの側面に限られており、かつ、溝の形成できる導光方向(映像光の進行方向)の位置も限定されているため、十分な迷光やゴースト光の低減効果が得られないことが懸念される。
【0006】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、導光部材として使用できる、内側面での反射により生じる迷光やゴースト光を低減した導光プリズム、および、これを用いた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する導光プリズムの発明は、
表示素子からの映像光を観察者の眼球に導光し、観察者の視野内に前記表示素子の虚像を表示する
一方向に長い導光プリズムであって、
一端部から入射した映像光の光路を取り囲むように配置された少なくとも4つの側面と、
前記少なくとも4つの側面により導光された前記映像光を反射させる反射面と、
前記反射面で反射された前記映像光を、観察者の眼球に向けて射出する射出面と
を備え、
前記少なくとも4つの側面のうち少なくとも1つの側面には、前記映像光の進行方向において異なる位置に複数のV字形の溝が形成されており、該複数のV字形の溝は、V字形を形成する斜面の角度が互いに異なって
おり、
前記映像光の光路の光軸方向は、前記一端部と前記反射面との間で当該導光プリズムの長手方向に一致することを特徴とするものである。
【0008】
好ましくは、前記複数のV字形の溝は、前記表示素子側に形成された第1の溝と、前記反射面側に形成された第2の溝であり、前記第1の溝の断面のV字形と、前記第2の溝の断面のV字形とは、逆向きに傾いている。
【0009】
さらに好ましくは、前記複数のV字形の溝は、前記表示素子側に形成された第1の溝と、前記反射面側に形成された第2の溝であり、前記V字形の溝の入射面側の溝面と該V字形の溝が形成された前記側面とが成す角度をθ
1、前記V字形の溝の反射面側の溝面と該V字形の溝が形成された前記側面とが成す角度をθ
2とするとき、前記第1の溝のθ
1は、前記第2の溝のθ
1より小さく、前記第1の溝のθ
2は、前記第2の溝のθ
2より大きい。
【0010】
また、前記第1の溝と前記第2の溝とは、前記少なくとも4つの側面のうち対向する2つの側面にそれぞれ形成されることができる。
【0011】
さらに、前記少なくとも4つの側面のうち、前記対向する2つの側面とは異なる他の対向する2つの側面のそれぞれに、他のV字形の溝を形成しても良い。
【0012】
上記目的を達成する画像表示装置の発明は、
映像光を射出する表示素子と、
上述の導光プリズムと、
前記表示素子と前記導光プリズムとを観察者の頭部に固定支持するための支持部と
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
前記少なくとも4つの側面のうち少なくとも1つの側面には、前記映像光の進行方向において異なる位置に複数のV字形の溝が形成されており、該複数のV字形の溝は、V字形を形成する斜面の角度が互いに異なっているので、ゴースト光をカットすることができることに加え、逆入射光による表示素子の動作への悪影響やコントラストの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1参考例に係る画像表示装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の画像表示装置の光学系を眼球側から見た正面図である。
図2(b)は、
図1の画像表示装置の光学系の平面図である。
図2(c)は、
図1の画像表示装置の光学系を表示素子側から見た側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の第1の側面に設けられたプリズム溝を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の表示素子、プリズム溝のエッジが形成する枠、および、導光プリズムの入射窓の視野角の関係を説明する図である。
【
図5】
図5(a)は、第2参考例の画像表示装置の光学系を眼球側から見た正面図である。
図5(b)は、第2参考例の画像表示装置の光学系の平面図である。
図5(c)は、第2参考例の画像表示装置の光学系を表示素子側から見た側面図である。
【
図6】
図6(a)は、第3参考例の画像表示装置の光学系を眼球側から見た正面図である。
図6(b)は、第3参考例の画像表示装置の光学系の平面図である。
図6(c)は、第3参考例の画像表示装置の光学系を表示素子側から見た側面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の光学系を眼球側から見た正面図である。
図7(b)は、実施の形態の画像表示装置の光学系の平面図である。
【
図8】
図8(a)は、第4参考例の画像表示装置の光学系を眼球側から見た正面図である。
図8(b)は、第4参考例の画像表示装置の光学系の平面図である。
【
図9】
図9は、第5参考例の画像表示装置の光学系を示す正面図である。
【
図10】
図10は、第6参考例の画像表示装置の光学系を説明する図である。
【
図11】
図11(a)は、導光プリズムの入射側端部の変形例を眼球側から見た正面図である。
図11(b)は、導光プリズムの入射側端部の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1参考例)
図1は、本発明の第1参考例に係る画像表示装置の外観を示す斜視図である。この画像表示装置1は、眼鏡の形状を有し画像表示装置全体を観察者の頭部に固定支持するための支持部2と、支持部2のテンプル(側頭部のフレーム)に固定され表示素子31(
図2参照)が内蔵された本体部3と、本体部3により一端部で支持され、他方の端部が観察者に装着した状態において観察者の眼前まで延びる導光プリズム5を備える。
【0017】
本体部3には、表示素子31に加え、表示素子31に画像を表示するための電子回路や、本体部3の外部から有線または無線により映像データを受信するための通信機能等を備える。
【0018】
図2は、
図1の画像表示装置の光学系を示す図であり、
図2(a)は眼球側から見た正面図、
図2(b)は平面図、
図2(c)は表示素子側から見た側面図である。表示素子31は、観察すべき画像を表示する液晶表示素子や有機EL素子等であり、本体部3内に内蔵されている。この表示素子31に表示された画像の映像光は、導光プリズム5の入射面51に入射するように構成されている。表示素子31と導光プリズム5の入射面51との間には、表示素子31を保護するための保護窓(図示せず)を設けることが望ましい。
【0019】
導光プリズム5は、透明な樹脂からなる一方向に長いプリズムである。導光プリズム5は、映像光の進行方向である長手方向の両端に入射面51と反射面52とを備え、入射面51と反射面52との間には、映像光の光路を取り囲むように、第1の側面53a、第2の側面53b、第3の側面53c、および、第4の側面53dを有するとともに、第2の側面上に射出面54が形成されている。観察者が画像表示装置1を装着した状態で、第1の側面53aは観察者の正面に向いた面の反対側に位置し、第2の側面53bは観察者の正面に向いた面である。また、第3の側面53cは導光プリズムの上側の面であり、第4の側面53dは導光プリズムの下側の面である。すなわち、第1の側面53aと第2の側面53bとは互いに対向する面であり、第3の側面53cと第4の側面53dとは互いに対向する面である。
【0020】
図2では、第1〜第4の側面53a〜53dは平面として構成され、それぞれ入射面51と略直交している。しかし、第1〜第4の側面53a〜53dは多少の湾曲を有していても良く、また、反射面52側より入射面51側の方が幅広に構成されていてもよい。例えば、第3の側面53cと第4の側面53dとの間の距離は、入射面51側よりも反射面52側の方が狭くなるようにすることもできる。また、第1および第2の側面の観察者の眼球から見た幅は、好適には人間の平均的な瞳孔径である4mmより狭く、導光プリズム5よりも前方の外界の観察を妨げないように設定される。あるいは、画像を視野内により大きく表示するために、4〜9mm程度の幅としても良い。
【0021】
反射面52は、導光プリズム5の長手方向に対して、内側面を観察者側に向けて約45°傾斜した斜面として形成される。この反射面52は、導光プリズム5内を長手方向に進行する映像光が全反射されるように、アルミスパッタリングなどによってミラー面として形成される。なお、導光プリズム5の材料の屈折率および反射面の角度などの条件によっては、表面を反射膜でコーティングしなくとも、全反射面を形成することができる。
【0022】
また、第2の側面53bの反射面52に隣接する部分には、射出面54が設けられている。射出面54は、反射面52で反射された映像光の眼球への光路上に位置する凸面として形成される。この射出面54は、導光プリズム5と一体として形成される。樹脂を用いて一体成型することによって、導光プリズム5を大量且つ安価に製造することが可能になる。しかし、射出面54は、平面として形成された第2の側面53b上に、平凸レンズを接合して形成することも可能である。なお、
図2以降の図面において、射出面54の光軸を一点鎖線で示している。光軸は、反射面52で屈曲し表示素子31の中心を通る。反射面52と入射面51との間で、光軸の方向は、導光プリズム53の長手方向と一致している。
【0023】
導光プリズム5の第1〜第4の側面53a〜53dには、それぞれ、断面がV字形のプリズム溝61a〜61dが長手方向と垂直な方向に延びている。それぞれのプリズム溝61a〜61dは、隣接する側面のプリズム溝と繋がっており、全体として、導光プリズム5の4つの側面53a〜53dを通り映像光の光路の周りを一周するように形成されている。
【0024】
プリズム溝61a〜61dは、導光プリズム5の各側面に切り込むエッジを挟む2つの溝面により形成されている。
図3は、
図2の第1の側面53aに設けられたプリズム溝61aを拡大して示す断面図である。プリズム溝61aは、2つの溝面S
1,S
2により構成されている。これらの溝面S
1,S
2の傾斜角度θ
1,θ
2は、導光プリズム内で発生する迷光やゴースト光を、導光プリズム5の外部へ透過させ、あるいは、導光プリズム内に向けて反射させて他の側面から透過させることにより除去するように設計される。このため、各プリズム溝61a〜61dの断面のV字形は、入射面側と反射面側とで必ずしも左右対称な形状とはなっていない。なお、導光プリズム内の不所望な位置での反射により生じる望ましくない光を迷光と呼び、特に、観察しようとする正規の像以外の望ましくない像を生じさせる光をゴースト光と呼ぶ。
【0025】
図4は、
図2の表示素子、プリズム溝のエッジが形成する枠、および、導光プリズムの入射窓の視野角の関係を説明する図であり、
図2(b)の光学系を反射面52による屈曲を直線状に延ばして模式的に示している。
図4において、Dθ、VθおよびPθは、それぞれ、表示素子の表示領域の視野角、プリズム溝のV字形のエッジを結んで形成される領域の視野角、および、導光プリズムの入射窓枠の視野角を示している。これらの視野角は、射出面54の中央とそれぞれの領域の外周端部を結ぶ線を引くことによって確認することができる。ここで、Dθ、VθおよびPθは、
Dθ<Vθ<Pθ
の関係を満たすように形成される。なお、
図4の例で角視野角は、水平方向(第1の側面53aおよび第2の側面53bに対して垂直方向)の視野角であるが、導光プリズムは、垂直方向の視野角についても同様の関係を満たすようにすることが好ましい。
【0026】
以上のように構成されているので、本体部3の表示素子31から射出された映像光は、導光プリズム5の入射面51を透過して、導光プリズム5内に入射する。導光プリズム5に入射した映像光は、導光プリズム5内を長手方向に導光され反射面52で反射され、射出面54から観察者の眼球方向へ射出される。射出面54は正の屈折力を有しているので、観察者側から見ると、表示素子31に表示された画像が拡大された虚像として視野内に表示される。
【0027】
また、表示素子31から射出された映像光の一部は、プリズム溝61a〜61dが無い場合、第1〜第4の側面53a〜53dの不所望な位置で反射され、迷光やゴースト光を発生させる虞がある。しかし、本発明の導光プリズム5は、プリズム溝61a〜61dを第1〜第4の側面53a〜53dのそれぞれに形成したので、迷光やゴースト光を導光プリズム5の外部へ除去し、コントラストの低下や、表示画面の上下左右にゴースト画像が現れることを防ぐことができる。また、プリズム溝61a〜61dは、第1〜第4の側面53a〜53d上に、映像光の光路を周回するように配置されているので、この長手方向の位置において迷光およびゴースト光をより確実に除去することができる。
【0028】
さらに、
図4で示したように、Dθ、VθおよびPθを、それぞれ、表示素子の表示領域の視野角、プリズム溝のV字形のエッジを結んで形成される領域の視野角、および、導光プリズムの入射窓枠の視野角とするとき、Dθ、VθおよびPθは、
Dθ<Vθ<Pθ
の関係を満たすので、表示素子31の表示領域からの映像光が、プリズム溝61a〜61dによってケラレることがなく、且つ、プリズム溝61a〜61dと入射面51との間の側面で発生するゴースト光をカットすることができる。
【0029】
以上説明したように、本参考例によれば、映像光の光路を取り囲む導光プリズム5の4つの側面53a〜53dに、それぞれV字形のプリズム溝61a〜61dを形成したので、導光プリズム5の各内側面での反射による迷光やゴースト光を低減することができる。さらに、4つの側面53a〜53dを周回するようにプリズム溝61a〜61dが形成されていることから、より確実に迷光やゴースト光をカットできる。また、Dθ<Vθ<Pθの関係を満たすことで、有効な映像光がプリズム溝でケラレることを防ぐことができる。
【0030】
(第2参考例)
図5は、第2参考例の画像表示装置の光学系を示す図であり、
図5(a)は眼球側から見た正面図、
図5(b)は平面図、
図5(c)は表示素子側から見た側面図である。第2参考例の導光プリズム5は、
図1の第1参考例の導光プリズム5において、プリズム溝61a〜61dに代えて、第1の側面53aおよび第2の側面53bに設けられる一対のプリズム溝62aおよび62b(第1の対の溝)が互いに対向する位置に形成され、第3の側面53cおよび第4の側面53dに設けられる他の一対のプリズム溝62cおよび62d(第2の対の溝)が互いに対向する位置に形成される。ここで、プリズム溝62aおよび62bは、プリズム溝62cおよび62dに対して、導光プリズム5の長手方向の反射面52側に離間して配置されている。その他の構成は、第1参考例と同様であるので、同一または対応する構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0031】
本参考例によれば、映像光の光路を取り囲む導光プリズム5の4つの側面53a〜53dに、それぞれV字形のプリズム溝62a〜62dを形成したので、第1参考例と同様に、導光プリズム5の各側面での反射による迷光やゴースト光を低減することができる。さらに、プリズム溝62aおよび62bとプリズム溝62cおよび62dとの長手方向の位置をずらしているため、導光プリズム5を樹脂成型するとき樹脂の流動性が良く、第1〜第4の側面53a〜53dの各光学面の精度を向上することができる。
【0032】
(第3参考例)
図6は、第3参考例の画像表示装置の光学系を示す図であり、
図6(a)は眼球側から見た正面図、
図6(b)は平面図、
図6(c)は表示素子側から見た側面図である。第3参考例の導光プリズム5は、第1〜第4の側面53a〜53dに、それぞれ、
図5の第2参考例の導光プリズム5の各側面を横切るように延びるプリズム溝62a〜62dに代えて、第1〜第4の側面53a〜53dの長手方向と直交する方向の幅よりも短いプリズム溝63a〜63dを形成したものである。各プリズム溝63a〜63dは、それぞれ、第1〜第4の側面53a〜53dの面内に形成され、第1〜第4の側面53a〜53dの互いに隣接する側面との間の角部までは延びていない。
【0033】
また、導光プリズム5の何れかの側面(例えば、第2の側面53b)の幅をPw、当該側面に形成されたプリズム溝(プリズム溝63b)の長さをVw、表示素子の有効領域の当該側面に対応する方向の幅を長さをDwとするとき、
Dw<Vw<Pw
を満たすように構成する。
その他の構成は、第2参考例と同様であるので、同一または対応する構成要素、には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0034】
以上のような構成により、プリズム溝63a〜63dの長さを、表示素子31の対応する方向の有効径よりも長くしたので、漏れなくゴースト光をカットすることができる。また、プリズム溝63a〜63dの長さを、導光プリズム5の対応する各側面53a〜53dの幅より短くし、導光プリズム5の隣接する側面の間の角部分に溝を設けないようにしたので、導光プリズム5を本体部3に取り付けて使用する際の保持力を確保することができる。また、視度の調整を行うために、導光プリズム5を本体部3に対して長手方向にスライドさせるような場合も、導光プリズム5をスムーズに動作させることが可能になる。
【0035】
(実施の形態)
図7は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の光学系を示す図であり、
図7(a)は眼球側から見た正面図、
図7(b)は平面図である。本実施の形態の導光プリズム5は、
図6の第3参考例の導光プリズム5において、第3の側面53cおよび第4の側面53d上の、プリズム溝63a,63bよりも反射面52側の互いに対向する位置に、更にプリズム溝64cおよび64d(第3の対の溝)を形成したものである。ここで、入射面51側のプリズム溝63c、63dと、反射面52側のプリズム溝64c,64dとは、V字形を形成する溝面の角度を変えて形成する。具体的には、プリズム溝63c,63dは、表示素子31からの映像光による迷光やゴースト光をカットするように設計するのに対して、プリズム溝64c,64dは、射出面54や反射面53の縁部からの逆入射光が、表示素子31に到達して表示素子の動作に影響を与えたり、コントラストを低下させたりすることを防止するように設計される。この場合、反射面54側のプリズム溝64c,64dの溝面を入射面側のプリズム溝63c,63dの溝面と逆向きに傾かせる。言い換えれば、プリズム溝63c,63d,64c,64dについて、
図3に示したのと同様に、入射面側の溝面S
1、反射面側の溝面S
2のそれぞれの対応する側面に対する角度θ
1,θ
2を定義するとき、プリズム溝63c,63dとプリズム溝64c,64dとの間で、θ
1とθ
2との大小関係が異なるようにする。このようにすることによって、逆入射光をカットすることができる。その他の構成は、第3参考例と同様であるので、同一または対応する構成要素、には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第3および第4の側面53c,53dに2対のプリズム溝63c,63dおよび64c,64dを形成し、プリズム溝64c,64dは、逆入射光をカットするように構成したので、第3参考例の効果に加え、逆入射光による表示素子の動作への悪影響やコントラストの低下を防止することができる。
【0037】
なお、プリズム溝64c,64dを逆入射光の除去ではなく、迷光およびゴースト光の更なる除去のために用いることができる。その場合、各プリズム溝63c,63d,64c,64dの深さを第3参考例よりも浅くして、一対のプリズム溝63c,63dのみが形成されている場合と同様の効果を生じさせることもできる。この他にも、複数の対のプリズム溝を設けるとともに、入射面51からの距離に応じて溝面の角度を変えることにより、種々の効果を得ることができる。
【0038】
(第4参考例)
図8は、第4参考例の画像表示装置の光学系を示す図であり、
図8(a)は眼球側から見た正面図、
図8(b)は平面図である。
図8の導光プリズム5では、第3の側面53cに入射面51側から順に3つのプリズム溝65a,65c,65eが形成されている。これらのプリズム溝65a,65c,65eは、導光プリズムの長手方向に対して垂直方向ではなく、角度をつけて形成されている。特にプリズム溝65eは、反射面52の近傍に反射面の傾斜に沿って設けられている。また、第4の側面53dのプリズム溝65a,65c,65eに対向する位置にも、それぞれ同様のプリズム溝65b,65d,65fが形成される。
【0039】
上記のような構成により、表示素子31から射出された映像光のうち、光路から外れた光は、
図8(a)および
図8(b)のように、プリズム溝65a〜65fにより、観察者から見て鉛直方向や前後方向などの種々の方向成分を有して偏向される。これによって、より確実にゴースト光をカットすることが可能になる。また、反射面52に近い位置に反射面52の傾斜に沿うようにプリズム溝65e,65fを形成したので、映像光の外周部が反射面51の前後でプリズム溝65e,65fの近傍を2回通過することとなり、2倍の迷光およびゴースト光除去効果が得られる。
【0040】
第3の側面53cおよび第4の側面53dに設けたプリズム溝65a〜65fに加え、第1の側面53aおよび第2の側面53bにも、長手方向に垂直なプリズム溝や長手方向に対して角度をつけたプリズム溝を形成しても良い。
【0041】
(第5参考例)
図9は、第5参考例の画像表示装置の光学系を示す正面図である。導光プリズム5には、第2の側面53bに長手方向に対して角度をつけたプリズム溝66a〜66dを形成している。この場合、第1の側面53aの対向する位置にもプリズム溝を形成しているが、簡単のために図を省略する。第2の側面53bに形成されたプリズム溝のうち、プリズム溝66aおよび66bは、導光プリズム5の長手方向に対して反対方向に角度をつけた2つのプリズム溝が互いに交差している。このように、互いに反対方向に角度を付けたプリズム溝を交差させることによって、プリズム溝66aと66bとが、導光プリズムの長手方向に対して対称な形状となる。これにより、迷光やゴースト光を均等にカットすることが可能になる。
【0042】
(第6参考例)
図10は、第6参考例の画像表示装置の光学系を説明する図である。反射面52による反射を省略して、導光プリズム53を直線状に延ばして模式的に示している。第1の側面53aおよび第2の側面53bには、それぞれ、導光プリズム5の長手方向に直角で、各側面53a,53bを横断する4対のプリズム溝が形成されている。具体的には、
図10に示すように、入射面51側から順に、プリズム溝67a,67b、プリズム溝67c,67d、プリズム溝67e,67f、および、プリズム溝67g,67hがそれぞれ対を形成している。
【0043】
また、
図10では、表示素子31の表示領域から射出され、射出面54を通過する映像光の有効光束が通過する範囲を、2本の直線l
1およびl
2で挟まれた領域として示している。各プリズム溝67a〜67hは、上記有効光束が通過する範囲の外側に形成する。したがって、プリズム溝67a〜67hの深さは、入射面51に近いほど深く、反射面52に近いほど浅く形成する。また、入射面51側ではプリズム溝が深いのでプリズム溝間の間隔を広くし、反射面52側ではプリズム溝が浅いので、プリズム溝の間隔を狭く配置している。すなわち、
図10においては、プリズム溝67a,67bの深さをd
1とし、プリズム溝67g,67hの深さをd
2とすると、d
1>d
2となる。また、プリズム溝67a,67bとプリズム溝67c,67dとの間の間隔をP
1、プリズム溝67e,67fとプリズム溝67g,67hとの間隔をP
2とするとき、P
1>P
2となる。
【0044】
以上のような構成により、本参考例によれば、表示素子31から射出される映像光の有効光束の、プリズム溝67a〜67hによるケラレが発生することがない。また、プリズム溝の深さが浅いほど、プリズム溝間のピッチを狭くするので、迷光およびゴースト光を効率的に除去することができる。
【0045】
さらに、
図10において、入射面51に近い側に配置された一対の溝(プリズム溝67a,67b)をVa、この溝の射出面54側に隣接する他の一対の溝(プリズム溝67c,67d)をVbとするとき、他の一対の溝Vbの溝間の幅Vbwによる画角をVbθ、一対の溝Vaの形成される側面53a、53bに対して1対の溝Vaのエッジと対称な位置をVa’としたときの、Va’間の幅をVa’wとし、その幅Va’wによる視野角をVa’θとしたとき、
Vbθ<Va’θ
を満たすように溝Va、Vbの間の距離(P1)が設定される。このようにすることによって、一対の溝Vaと他の一対の溝Vbとの間で発生するゴースト光を除去することができる。
【0046】
なお、本参考例において、さらに第3の側面および第4の側面にも、第1の側面および第2の側面と同様の複数のプリズム溝を形成しても良い。その場合も、上述のような溝の深さ、溝の間隔の条件を満たすことにより、同様の効果が得られる。また、各側面のプリズム溝の数は4つに限られず、これより多数のプリズム溝を形成しても良い。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、導光プリズムの入射側端部には、導光プリズムの長手方向と直交する入射面が設けられていたが、導光プリズムの入射側の形状はこれに限られない。
図11は、
図2に示した第1参考例の導光プリズムの入射側端部を変更した導光プリズム5の変形例である。この導光プリズム5では、入射側端部にも、長手方向に対して傾斜した反射面71を形成するとともに、観察者の手前側の第2の側面53bの端部に入射面76を形成し、表示素子31を入射面76に対向して配置する。これにより、表示素子32から射出された映像光は、入射面76から導光プリズム5に入射し、反射面71で反射され、導光プリズム5内を長手方向に導光される。このように入射側端部を構成しても、上記各実施の形態と同様の作用、効果が得られる。この他にも、入射側端部は種々の構成が可能である。
【0048】
また、上記各実施の形態では、導光プリズムの第1の側面と第2の側面とに形成したプリズム溝は、互いに対向して配置されており、同様に、第3の側面と第4の側面とに形成されたと溝は、互いに対向して配置されている。しかし、本発明はこれに限られず、例えば、4つの側面の長手方向にそれぞれ異なる位置に溝を配置しても良い。さらに、導光プリズムの光軸は、長手方向に沿う方向である必要は無く、例えば、導光プリズム内の第1および第2の側面で複数回反射した映像光が、反射面で反射され射出面から射出されるように構成しても良い。その場合、第1および第2の側面におけるプリズム溝の位置は、有効な映像光の光路を遮らない位置に設定される。
【0049】
また、導光プリズムの側面は、4面により構成されるものとしたが、これに限られない。例えば、隣接する各側面の間の稜線部分の角を取ったり、丸みをつけたりした形状も含まれる。また、導光プリズムは、透明な樹脂より形成されるとしたが、これに限られず、ガラスなどの他の透明な光学部材により形成しても良い。さらに、上記実施の形態において、導光プリズムの射出面は凸面として形成されるものとしたが、これに限られない。例えば、反射面を正の屈折力を有する反射面として形成し、射出面は平面とすることも可能である。この場合も、観察者は表示素子に表示された画像の拡大された虚像を観察することが可能である。
【0050】
また、
図1において図示した画像表示装置は、観察者の右眼に向けて画像を表示するものであるが、左眼用や両眼用などの画像表示装置として構成することも可能である。さらに、画像表示装置は眼鏡型のものに限られず、本体部および導光プリズムをゴーグルやヘルメットのようなものに固定するなど、頭部に固定するための種々の形態が可能である。