特許第6238927号(P6238927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238927
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】皮むき器
(51)【国際特許分類】
   A47J 17/14 20060101AFI20171120BHJP
   B26B 3/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A47J17/14
   B26B3/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-71096(P2015-71096)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-189889(P2016-189889A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591128970
【氏名又は名称】プリンス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】高野 富雄
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−527262(JP,A)
【文献】 実開昭50−005842(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3105520(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3053381(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0227013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 17/14
B26B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握持部の先端部に一対の支持腕部を設け、この一対の支持腕部間に刃体を挟持状態に支持すると共に、この刃体は、両端部に設けた回動軸を、一対の支持腕部に設けた軸受孔に軸支して一対の支持腕部間で回動自在に設け、この刃体が接触することにより刃体の回動を制限する回動ストッパーを前記支持腕部に設けた皮むき器において、前記支持腕部に、一対の支持腕部間の内側に向けて切り起こし片を切り起こし形成して、この切り起こし片を前記回動ストッパーとし、この回動ストッパーの切り起こしにより支持腕部に形成される切跡孔を前記軸受孔としたことを特徴とする皮むき器。
【請求項2】
前記一対の支持腕部のいずれか一方に、この一方の支持腕部から他方の支持腕部に向けて切り起こし片を切り起こし形成して、この切り起こし片を前記回動ストッパーとし、この回動ストッパーの切り起こしにより一方の支持腕部に形成される切跡孔を前記軸受孔としたことを特徴とする請求項1記載の皮むき器。
【請求項3】
前記回動ストッパーは、この回動ストッパーに接触した前記刃体が皮むき対象物の皮むきに適した角度で回動停止するように、前記支持腕部からの切り起こし位置を設定構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の皮むき器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材の皮むき器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な皮むき器は、握持部の先端に一対の支持腕部を突設し、この一対の支持腕部間に皮むき用の刃体を架設状態にして回動自在に支持した構成となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このように刃体を回動自在に支持した皮むき器は、皮むき対象物外形の丸みや凹凸に追従して刃体が回動するために良好な皮むきが行われるが、この刃体が自由に回動可能な構成であると、いざ皮むきを行おうとする際に刃体が適正な向きになく、その是正作業を強いられるなどの不都合がある。
【0004】
そこで、この不都合を解消するために、支持腕部に内向きの回動ストッパー(突起)を突設し、この回動ストッパーで刃体の回動範囲を必要最低限の範囲に制限した皮むき器も従来から実施されている(特許文献1にも開示あり。)。
【0005】
この刃体の回動ストッパーについて簡単に説明すると、特許文献1のように支持腕部からその対向内側に向けて一体に切り起こし突出させたものや、支持腕部の外側面をその対向内側に向けてプレスすることによって支持腕部の内側面から一体に押し出させたものや、別部品のピンを支持腕部に付設することによって支持腕部の対向内側に向けて突出させたものなど、様々な構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−92579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種皮むき器に設けられる刃体の回動ストッパーは、上記いずれの構造であっても、支持腕部に刃体の軸受孔の形成とは別の加工が必要となるので、その分製作工程が増えてしまう。
【0008】
また、回動ストッパーを支持腕部からの切り起こしや押し出しによって一体に形成するものにあっては、軸受孔とは別の孔が形成される(孔が多くなる)ために洗浄しにくく不衛生になり易いという懸念があると共に、回動ストッパーは、良好なストッパー機能を確保するためにその突出度をできるだけ大きくしたいが、この突出度が支持腕部の厚みや幅に左右されてしまう上に、軸受孔を避けるようにして形成しなければならない制約もあって、突出度を大きくすることが困難であった。
【0009】
本発明は、このような刃体の回動範囲を制限する回動ストッパーを備えた皮むき器の改良に係るもので、支持腕部に刃体の軸受孔の形成と同時に回動ストッパーを形成できる構成としたことにより上記従来の問題点を解消できる皮むき器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
握持部1の先端部に一対の支持腕部2を設け、この一対の支持腕部2間に刃体3を挟持状態に支持すると共に、この刃体3は、両端部に設けた回動軸4を、一対の支持腕部2に設けた軸受孔5に軸支して一対の支持腕部2間で回動自在に設け、この刃体3が接触することにより刃体3の回動を制限する回動ストッパー6を前記支持腕部2に設けた皮むき器において、前記支持腕部2に、一対の支持腕部2間の内側に向けて切り起こし片6を切り起こし形成して、この切り起こし片6を前記回動ストッパー6とし、この回動ストッパー6の切り起こしにより支持腕部2に形成される切跡孔5Aを前記軸受孔5としたことを特徴とする皮むき器に係るものである。
【0012】
また、前記一対の支持腕部2のいずれか一方に、この一方の支持腕部2から他方の支持腕部2に向けて切り起こし片6を切り起こし形成して、この切り起こし片6を前記回動ストッパー6とし、この回動ストッパー6の切り起こしにより一方の支持腕部2に形成される切跡孔5Aを前記軸受孔5としたことを特徴とする請求項1記載の皮むき器に係るものである。
【0013】
また、前記回動ストッパー6は、この回動ストッパー6に接触した前記刃体3が皮むき対象物の皮むきに適した角度で回動停止するように、前記支持腕部2からの切り起こし位置を設定構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の皮むき器に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、回動ストッパーの形成と同時に軸受孔(切跡孔)を形成でき、これにより回動ストッパーと軸受孔とを別々に形成していた従来の皮むき器に比して製作容易となると共に、支持腕部には軸受孔以外の孔がないので、衛生管理を回動ストッパーなしの従来品と同等に容易に行うことができ、しかもこの回動ストッパーは、軸受孔の孔縁に形成されるので、その切り起こし位置を変更するだけで刃体の回動停止位置を調整設定でき、従って皮むき対象物に対して良好な切断性能を発揮できる回動角度で刃体が回動停止する構成を簡易に設計実現可能となり、その上本発明は、支持腕部を有効利用して回動ストッパーを形成可能であるため、この回動ストッパーの突出度を大きく設定でき、これにより回動ストッパーに刃体が確実に接触できて回動制限機能を良好且つ確実に発揮できる構成を簡易に設計実現可能となるなど、極めて実用性に優れた皮むき器となる。
【0015】
また、請求項2記載の発明においては、一対の支持腕部のいずれか一方にだけ回動ストッパーを形成するため、一対の支持腕部の双方に回動ストッパーを形成する構成に比して製作容易となる上、回動ストッパーの突出度を大きく設定して一つの回動ストッパーでも回動制限機能を良好に発揮できる構成を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用性に優れた構成の皮むき器となる。
【0016】
また、請求項3記載の発明においては、刃体が皮むき対象物の皮むきに適した角度で確実に回動制限されると共に、この構成を回動ストッパーの切り起こし位置設定により容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の皮むき器となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例を示す斜視図である。
図2】本実施例の要部を示す部分拡大説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
本発明の皮むき器は、握持部1の先端部に設けた一対の支持腕部2間に、刃体3を挟持状態に支持すると共に、この刃体3の両端部に設けた回動軸4を、一対の支持腕部2に設けた軸受孔5に軸支することにより一対の支持腕部2間で刃体3を回動自在に設け、更にこの刃体3が接触することにより刃体3の回動を制限する回動ストッパー6を前記支持腕部2に設けて、この刃体3が不都合に回動してしまうことを防止している。
【0020】
また、本発明の皮むき器は、前記支持腕部2に、一対の支持腕部2間の内側に向けて切り起こし片6を切り起こし形成して、この切り起こし片6を前記回動ストッパー6とし、この回動ストッパー6の切り起こしにより支持腕部2に形成される切跡孔5Aを前記軸受孔5としている。
【0021】
即ち、本発明は、回動ストッパー6の形成と同時に軸受孔5(切跡孔5A)が形成されることになるので、回動ストッパー6と軸受孔5とを別々に形成していた従来の皮むき器に比して製作容易となる(言い換えると、回動ストッパー6付でありながら、回動ストッパー6を有しない皮むき器と同等の製作容易性を発揮する。)。
【0022】
また、支持腕部2には軸受孔5以外の孔が形成されないため、洗浄性は回動ストッパーなしの従来品と変わらず、衛生管理が容易に行われる。
【0023】
また、この回動ストッパー6は、軸受孔5(切跡孔5A)の孔縁に形成されるので、切り起こし片6の切り起こし位置を変更するだけで刃体3の回動停止位置を調整設定可能である。そのため、皮むき対象物に対して良好な切断性能を発揮できる回動角度で刃体3が回動ストッパー6により回動停止する構成を簡易に設計実現可能である。
【0024】
また、この回動ストッパー6は、従来品のように軸受孔5を避けて設けることを想定する必要がなく、支持腕部2の幅や厚み等を有効に利用して形成可能であるので、この回動ストッパー6の突出度を大きく設定することが容易に可能となる。従って、回動ストッパー6を支持腕部2の一方に形成するだけでも回動ストッパー6に刃体3が確実に接触できて回動制限機能を良好に発揮する構成や、何らかの要因で刃体3が脱落しない程度に一対の支持腕部2間が広がるような変形を支持腕部2に生じた場合でも回動ストッパー6に刃体3が確実に接触できて回動制限機能を良好に発揮する構成等も、簡易に設計実現可能である。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例の皮むき器は、図1に示すように、握持部1の先端部に一対の支持腕部2を突設し、この一対の支持腕部2間に刃体3を挟持状態に支持している。
【0027】
具体的には、一枚の帯状の金属板材をU字状に折り返し折曲することで、基端側がU字状の前記握持部1となる本体フレーム7を形成し、この本体フレーム7の途中部を補強桟8で連結して保形すると共に、この補強桟8より先端側の遊離両端部を前記一対の支持腕部2としている。
【0028】
また、この一対の支持腕部2は、その基部側(補強桟8付近)から先端側へ行く程互いの対向間隔が広くなる外開き形状に折曲し、この各支持腕部2の先端部に夫々軸受孔5を貫通形成して、この一対の支持腕部2の各軸受孔5に前記刃体3の両端部に突設した回動軸4を軸支することで、この一対の支持腕部2間に刃体3を挟持状態にして回動自在に支持した構成としている。
【0029】
本実施例は、前記支持腕部2に、前記刃体3が接触することにより刃体3の回動を制限する回動ストッパー6を設けている。
【0030】
具体的には、一対の支持腕部2のいずれか一方(図1における奥側の支持腕部2)の先端部に、この一方の支持腕部2から他方の支持腕部2に向けて(一対の支持腕部2の対向内側に向けて)切り起こし片6を切り起こし突出形成して、この切り起こし片6を前記回動ストッパー6としている。
【0031】
そして、この回動ストッパー6が形成される一方の支持腕部2には、この回動ストッパー6の切り起こしにより切跡孔5Aが貫通形成されるが、この切跡孔5Aを一方の支持腕部2では前記軸受孔5としている。尚、この回動ストッパー6は、一対の支持腕部2の一方にだけでなく、双方に形成して支持腕部2の双方に切跡孔5Aが形成される(支持腕部2の双方の軸受孔5が切跡孔5Aとなる)構成としても良い。
【0032】
即ち、回動ストッパー6の形成と同時に軸受孔5(切跡孔5A)が形成されることになる構成としているもので、これによりこの回動ストッパー6は、従来品のように軸受孔5を避けて形成する必要がなく、支持腕部2の幅や厚み等を有効に利用して形成可能であるので、この回動ストッパー6の突出度を大きく設定することが容易に可能となる。具体的には、本実施例の回動ストッパー6は、支持腕部2の一方に形成するだけでも刃体3が確実に接触できて回動制限機能を発揮することになる突出度に設定している。
【0033】
この回動ストッパー6について更に詳しく説明すると、図2に示すように、前記支持腕部2にコ字状若しくはU字状(図面はU字状)の切り込みを形成し、この切り込みを介してプレスにより一対の支持腕部2間の内側に切り起こし片6(回動ストッパー6)を切り起こし突出形成した構成としている。尚、この回動ストッパー6の切り起こし方法は、本実施例に限定されるものではなく、例えば切り起こし片6が生じるようにプレス打ち抜き加工を施すようにしても良いし、その他の切り起こし方向を採用しても良く、適宜設計変更可能である。
【0034】
また、この回動ストッパー6は、図1図2における上側方向(皮むき器を横にした際の上方向)に切り起こし形成した構成とし、刃体3を皮むき対象物に押し当てた際に、この回動ストッパー6に刃体3の図1図2における上側部分が接触して回動停止するように構成しているが、本実施例では、この刃体3の回動停止角度が、皮むき対象物の皮むきに適した角度となるように、前記支持腕部2からの回動ストッパー6の切り起こし位置を設定構成している。
【0035】
図中符号9は芽とりである。
【0036】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0037】
例えば、図示していないが、前記一対の支持腕部2間の対向間隔を広狭調整して前記刃体3を着脱可能な広間隔と、刃体3を挟持支持可能な狭間隔とに切替操作し得る広狭切替機構を備えた替刃式の皮むき器に適用しても良い。この替刃式とした場合には、回動ストッパー6の突出度を大きくしたり、回動ストッパー6を一対の支持腕部2の双方に形成するなどして、何らかの要因で刃体3が脱落しない程度に一対の支持腕部2間が広がってしまっても、簡単には回動制限機能が失われないように構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 握持部
2 支持腕部
3 刃体
4 回動軸
5 軸受孔
5A 切跡孔
6 回動ストッパー・切り起こし片
図1
図2