特許第6238940号(P6238940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238940
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】調理鍋
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20171120BHJP
   A47J 36/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A47J27/00 101B
   A47J36/06 E
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-170521(P2015-170521)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-46760(P2017-46760A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】517025132
【氏名又は名称】株式会社サニーナレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(72)【発明者】
【氏名】土方 智晴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敬行
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−060126(JP,U)
【文献】 特開平07−275128(JP,A)
【文献】 特開2011−161034(JP,A)
【文献】 特開平09−037952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
36/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容し加熱調理する調理鍋であって、
底面部、及び前記底面部の周縁から上方に延び上端部に本体側当接面が形成された側面部を有し、前記底面部と前記側面部とによって被調理物を収容する収容空間を形成する鍋本体と、
前記本体側当接面と当接する蓋側当接面を下面に有し、前記収容空間を着脱自在に覆う鍋蓋と、を備え、
前記本体側当接面と蓋側当接面とは加熱初期において全周に渡って当接するように構成され、
前記鍋本体には前記本体側当接面と交わるように本体側シール面が設けられる一方で、前記鍋蓋には前記蓋側当接面と交わるように蓋側シール面が設けられており、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが一部において離隔し、残部において当接するように構成されており、
加熱調理を行うことによって、前記鍋蓋が前記鍋本体から離隔するように前記本体側シール面及び前記蓋側シール面に沿って移動し、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが前記残部において当接した状態を保ったまま、前記本体側当接面から前記蓋側当接面が離隔することで、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが離隔している前記一部を経由して蒸気が外部に導出される、調理鍋。
【請求項2】
前記鍋蓋は、その上面のうち前記一部と対応する部位に表示部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の調理鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を収容し、該被調理物を加熱調理する調理鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や肉類等の被調理物を収容して加熱調理する調理鍋が広く普及している。このような調理鍋としては、先行技術文献を例示するまでもなく、被調理物の収容空間を形成する鍋本体と、当該収容空間を覆う鍋蓋と、を備えるものが知られている。鍋蓋は、その下面において鍋本体の上端部と当接することで、収容空間の上部を覆う。
【0003】
このような調理鍋では、鍋本体の上端部と鍋蓋の下面とを密接させて収容空間を覆う構成とすることで、収容空間の気密性を高めることができる。これにより、加熱調理中に収容空間内の圧力を適度に高め、短時間で調理を完了させたり、被調理物が含む水分等が蒸発して発生する蒸気を調理に利用したりすることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の調理鍋では、収容空間内の圧力が過度に上昇し、それによって鍋蓋が押し上げられると、鍋蓋と鍋本体との間に形成される隙間から液体が泡状になって吹き出す所謂「吹きこぼれ」が顕著に生じるという課題があった。
【0005】
また、押し上げられた鍋蓋と鍋本体との間に形成される隙間からは、蒸気が排出される。排出されたこの蒸気が調理場の壁面等にかかると、高温の蒸気によって当該壁面等を損傷させるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸気を導出することで収容空間内の過度の圧力上昇を抑制しつつ、蒸気の導出部位を制御することが可能な調理鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理鍋は、被調理物を収容し加熱調理する調理鍋であって、底面部、及び前記底面部の周縁から上方に延び上端部に本体側当接面が形成された側面部を有し、前記底面部と前記側面部とによって被調理物を収容する収容空間を形成する鍋本体と、前記本体側当接面と当接する蓋側当接面を下面に有し、前記収容空間を着脱自在に覆う鍋蓋と、を備える。前記本体側当接面と蓋側当接面とは加熱初期において全周に渡って当接するように構成されている。前記鍋本体には前記本体側当接面と交わるように本体側シール面が設けられる一方で、前記鍋蓋には前記蓋側当接面と交わるように蓋側シール面が設けられており、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが一部において離隔し、残部において当接するように構成されている。加熱調理を行うことによって、前記鍋蓋が前記鍋本体から離隔するように前記本体側シール面及び前記蓋側シール面に沿って移動し、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが前記残部において当接した状態を保ったまま、前記本体側当接面から前記蓋側当接面が離隔することで、前記本体側シール面と前記蓋側シール面とが離隔している前記一部を経由して蒸気が外部に導出される。

【0012】
また本発明に係る調理鍋では、前記鍋蓋は、その上面のうち前記切欠きと対応する部位に表示部が設けられていることも好ましい。
【0013】
この好ましい態様によれば、使用者は、鍋蓋の下面に形成された切欠きの位置を上方から容易に把握することができる。これにより、使用者は、鍋蓋が鍋本体の収容空間を覆っている状態でも、蒸気の導出部位を更に容易に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸気を導出することで収容空間内の過度の圧力上昇を抑制しつつ、蒸気の導出部位を制御することが可能な調理鍋を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る調理鍋を示す斜視図である。
図2図1の調理鍋の断面図である。
図3図1の鍋蓋の底面図である。
図4図1の調理鍋の断面図である。
図5図1の調理鍋の断面図である。
図6】第2実施形態に係る調理鍋の断面図である。
図7図6の調理鍋の断面図である。
図8】第3実施形態に係る調理鍋の断面図である。
図9図8の調理鍋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
本発明の第1実施形態に係る調理鍋100について、図1乃至図5を参照しながら説明する。調理鍋100は、調理場等で加熱調理に用いられる調理器具であり、図2に示されるように、例えば電磁調理器IH上に載置して使用される。調理鍋100は、鍋本体200と鍋蓋300とを備えている。
【0022】
尚、理解を容易にするため、図1に示される加熱調理中の状態において、鍋本体200と鍋蓋300とが並ぶ方向(すなわち鉛直上方向)をZ方向とし、当該Z方向に直交する方向(すなわち水平方向)をX方向及びY方向とする直交座標を用いて説明することがある。当該直交座標は、図2以降においても対応するものを用いる。また、方向に基づいて説明する場合では、当該方向は図1に示される加熱調理中の状態におけるものとする。
【0023】
鍋本体200は、金属材料を用いた鋳造によって形成されている。図2に示されるように、鍋本体200は、底面部210と側面部220と有している。底面部210は円板形状を呈しており、その下面において電磁調理器IHや焜炉と当接して熱の供給を受ける。底面部210の上面や下面には、熱の伝達性能を高めるための凹凸が形成されている。側面部220は、底面部210の周縁から上方に向かって延びるように形成され、環状を呈している。側面部220の外側面には、使用者が把持するための一対のハンドル240がY方向及び−Y方向に突出するように形成されている。底面部210と側面部220とで囲まれる上部開放の空間は、野菜や肉類等の被調理物Fを収容する収容空間230となる。
【0024】
図4に示されるように、鍋本体200の上端部は拡径されている。図4は、調理鍋100の断面のうち、図2のA部及びB部を拡大して示している。鍋本体200の上端部の最上部には、本体側当接面222が形成されている。本体側当接面222は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された環状の面である。本体側当接面222の法線方向はZ方向である。
【0025】
上端部の内周側には、本体側シール面223が形成されている。本体側シール面223は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された環状の面である。本体側シール面223の法線方向は略水平方向である。
【0026】
鍋蓋300は、金属材料を用いた鋳造によって形成されている。鍋蓋300の周縁には、外方に突出するフランジ部310が形成されている。鍋蓋300は、このフランジ部310が鍋本体200の上端部と当接することで収容空間230を覆う。また、図1に示されるように、フランジ部310の外側面には、使用者が把持するための一対のハンドル340がY方向及び−Y方向に突出するように形成されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、フランジ部310の下面には蓋側当接面311が形成されている。蓋側当接面311は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された環状の面である。
【0028】
また、フランジ部310の下面側には環状突起320が形成されている。環状突起320は、その断面が矩形状で、全体として環状を呈する突起である。環状突起320は、フランジ部310から下方に向けて突出するように形成されている。
【0029】
鍋蓋300の環状突起320の外周側には、蓋側シール面321が形成されている。蓋側シール面321は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成される環状の面である。蓋側シール面321の法線方向は略水平方向である。
【0030】
鍋蓋300の環状突起320は、その一部に切欠き322が形成されている。図3に示されるように、切欠き322は、一対のハンドル340からオフセットした位置に幅Wに亘って形成されている。切欠き322は、環状突起320の蓋側シール面321から鍋蓋300の中央部側に向けて部分的に切り欠いた形状を呈している。また、鍋蓋300の上面であって、切欠き322と対応する位置には、表示突起330が形成されている。図4に示されるように、表示突起330は、鍋蓋300の上面から上方に向けて突出するように形成されている。
【0031】
以上説明したように形成された鍋蓋300は、その蓋側当接面311が鍋本体200の本体側当接面222と上下方向に当接することで収容空間230を上方から覆う。このように鍋蓋300が収容空間230を覆っている状態では、鍋蓋300の蓋側シール面321と鍋本体200の本体側シール面223とが略水平方向に当接する。本体側当接面222と蓋側当接面311とが上下方向に当接するとともに、本体側シール面223と蓋側シール面321とが略水平方向に当接する構造としたことで、鍋本体200と鍋蓋300とが密接して収容空間230の気密性が高められる。
【0032】
使用者は、蓋側シール面321を本体側シール面223に対してスライドさせるように鍋蓋300を回転させて、鍋蓋300の姿勢を変更することによって、切欠き322の位置を変更することができる。使用者は、鍋蓋300の表示突起330を目印として、切欠き322の位置を上方から把握することができる。
【0033】
また、鍋蓋300が収容空間230を覆っている状態では、図4に示されるように、蒸気導出部400が形成される。蒸気導出部400は、鍋蓋300の切欠き322と鍋本体200の本体側シール面223との間に予め形成されている隙間である。蒸気導出部400は、収容空間230と連通している。
【0034】
続いて、調理鍋100の作用効果について説明する。電磁調理器IHから供給される熱によって被調理物Fが加熱されると、被調理物Fが含む水分等が蒸発して収容空間230内に蒸気が発生する。前述したように、鍋蓋300が収容空間230を覆っている状態では収容空間230の気密性が高められているため、加熱調理の初期は、この蒸気は収容空間230内に封入される。
【0035】
電磁調理器IHからの熱の供給に伴い、収容空間230内の蒸気が加熱されて温度上昇し、その圧力が高まる。この蒸気の圧力は、収容空間230内から鍋蓋300を押し上げるように作用するが、鍋蓋300はその自重によって圧力に抗する。これにより、蒸気が収容空間230内に封入された状態が維持される。
【0036】
収容空間230内の蒸気がさらに加熱され、その圧力によって鍋蓋300に重量以上の力が上向きに作用すると、鍋蓋300が上方に移動し始める。このとき、鍋蓋300は、その蓋側シール面321が本体側シール面223に対してスライドするように移動するため、鍋蓋300の水平方向への移動が規制される。これにより、鍋蓋300は安定した姿勢で上方に移動する。
【0037】
図5に示されるように、収容空間230内の圧力Pの高まりによって鍋蓋300が押し上げられると、鍋蓋300の蓋側当接面311と鍋本体200の本体側当接面222とが離反し、両者の間に隙間CL1が形成される。図5は、図4同様に、調理鍋100の断面のうち、図2のA部及びB部を拡大して示している。
【0038】
この隙間CL1は、前述した蒸気導出部400と連通する。したがって、収容空間230が、蒸気導出部400及び隙間CL1を介して調理鍋100の外部と連通する状態となる。このため、矢印S1で示されるように、収容空間230内の蒸気を外部に導く流路が形成される。
【0039】
一方、蒸気導出部400以外の部位では、前述した鍋蓋300のスライド移動により、蓋側シール面321と本体側シール面223との当接が維持される。このため、蒸気導出部400以外の部位では、収容空間230内の蒸気を外部に導く流路が形成されることはない。すなわち、蒸気導出部400に形成される隙間CL1の断面積の増加量は、蒸気導出部400以外の部位に形成される隙間の断面積の増加量と比べて大きくなる。
【0040】
以上説明したように、調理鍋100によれば、加熱調理に伴って収容空間230内の圧力が上昇し、鍋蓋300が押し上げられると、収容空間230内で発生した蒸気は、断面積の増加量が比較的大きい蒸気導出部400に形成される隙間CL1から積極的に導出される。したがって、この構成によれば、蒸気導出部400に形成される隙間CL1から蒸気を導出することで、収容空間230内の過度の圧力上昇を抑制して吹きこぼれを抑制しつつ、蒸気の導出部位を制御することが可能となる。
【0041】
また、調理鍋100では、鍋蓋300は、その下面の一部に切欠き322が形成され、蒸気導出部400は、切欠き322と鍋本体200の上端部との間に形成される。したがって、鍋蓋300の姿勢を変更してこの切欠き322の位置を変更することで、蒸気導出部400の位置を変更し、蒸気の導出部位を容易に制御することが可能となる。
【0042】
仮にこのような切欠きを鍋本体200に設けた場合は、重量が比較的大きい鍋本体200を移動させたり、その姿勢を変更したりして切欠きの位置を変更する必要があり、その作業は使用者にとって大きな負担となる。これに対し、重量が比較的小さい鍋蓋300に切欠き322を形成した本態様では、このような作業の負担が軽微なものとなり、蒸気の導出部位を容易に制御することが可能となる。
【0043】
また、調理鍋100では、鍋蓋300は、その上面のうち切欠き322と対応する部位に表示突起330が設けられている。この構成によれば、使用者は、鍋蓋300の下面に形成された切欠き322の位置を上方から容易に把握することができる。これにより、使用者は、鍋蓋300が鍋本体200の収容空間230を覆っている状態でも、蒸気の排出部位を更に容易に制御することが可能となる。
【0044】
尚、使用者に切欠き322の位置を把握させるための手段としては、表示突起330に限られない。例えば、鍋蓋300の上面のうち切欠き322と対応する部位に、下面に切欠き322が形成されていることを示す塗装や加工を施した場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、調理鍋100では、鍋本体200は、略水平方向を法線方向とする本体側シール面223が上端部に形成される。鍋蓋300は、略水平方向を法線方向とする蓋側シール面321が下面に形成される。調理鍋100は、本体側当接面222と蓋側当接面311とが当接している状態において、本体側シール面223と蓋側シール面321とが当接するように構成されている。この構成によれば、加熱調理に伴って収容空間230内の圧力が上昇し、鍋蓋300が押し上げられる際に、鍋蓋300の水平方向の移動が本体側シール面223と蓋側シール面321との当接によって規制される。これにより、鍋蓋300を安定した姿勢で上方に移動させるとともに、蒸気導出部400において蒸気を積極的に導出することが可能となる。
【0046】
次に、図6及び図7を参照しながら、第2実施形態に係る調理鍋100Aについて説明する。第2実施形態に係る調理鍋100Aは、前述した第1実施例に係る調理鍋100と同様に調理場等で加熱調理に用いられる調理器具であり、鍋本体200Aと鍋蓋300Aとを備えている。調理鍋100Aは、その鍋本体200Aと鍋蓋300Aとの当接の形態が調理鍋100のものと異なる。調理鍋100Aのうち、調理鍋100と同一の構成については適宜同一の符号を付して、説明を省略する。尚、図6及び図7は、図1に示される調理鍋100のII−II断面と対応する断面を示すとともに、図2に示されるA部及びB部と対応する部位を拡大して示している。
【0047】
図6に示されるように、調理鍋100Aの鍋本体200Aは、その側面部220の上端部に本体側当接面222Aが形成されている。本体側当接面222Aは、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された環状の面である。本体側当接面222Aの法線方向はZ方向である。
【0048】
また、鍋本体200Aの上端部の内周側には、本体側傾斜シール面224が形成されている。本体側傾斜シール面224は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された面であり、鍋本体200Aの中央部側に向かって下方に傾斜している。
【0049】
調理鍋100Aの鍋蓋300Aは、フランジ部310の下面に蓋側当接面311Aが形成されている。蓋側当接面311Aは、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された環状の面である。
【0050】
また、鍋蓋300Aのフランジ部310の下面には下方に向けて突出する環状突起320Aが形成されている。環状突起320Aの外周側には、蓋側傾斜シール面324が形成されている。蓋側傾斜シール面324は、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成される環状の面であり、鍋蓋300Aの中央部側に向かって下方に傾斜している。蓋側傾斜シール面324の傾斜角度は、前述した本体側傾斜シール面224と略同一である。
【0051】
鍋蓋300Aの環状突起320Aは、その一部に切欠き322Aが形成されている。切欠き322Aは、環状突起320Aの蓋側当接面311Aから鍋蓋300Aの中央部側に向けて部分的に切り欠いた形状を呈している。また、鍋蓋300Aの上面であって、切欠き322Aと対応する位置には、表示突起330が形成されている。表示突起330は、鍋蓋300Aの上面から上方に向けて突出するように形成されている。
【0052】
以上説明したように形成された鍋蓋300Aは、その蓋側当接面311Aが鍋本体200Aの本体側当接面222Aと上下方向に当接することで収容空間230を上方から覆う。このように鍋蓋300Aが収容空間230を覆っている状態では、鍋蓋300Aの蓋側傾斜シール面324と鍋本体200Aの本体側傾斜シール面224とが上下方向に対して傾斜した方向に当接する。本体側当接面222と蓋側当接面311とが上下方向に当接するとともに、本体側シール面223と蓋側シール面321とが上下方向に対して傾斜した方向に当接する構造としたことで、鍋本体200Aと鍋蓋300Aとが密接して収容空間230の気密性が高められる。
【0053】
また、鍋蓋300Aが収容空間230を覆っている状態では、図6に示されるように、蒸気導出部400Aが形成される。蒸気導出部400Aは、鍋蓋300Aの切欠き322Aと鍋本体200Aの本体側傾斜シール面224との間に予め形成されている隙間である。蒸気導出部400は、収容空間230と連通している。
【0054】
続いて、調理鍋100Aの作用効果について説明する。電磁調理器IH(図2参照)から供給される熱によって被調理物F(図1参照)が加熱されると、被調理物Fが含む水分等が蒸発して収容空間230内に蒸気が発生する。前述したように、鍋蓋300Aが収容空間230を覆っている状態では収容空間230の気密性が高められているため、加熱調理の初期は、この蒸気は収容空間230内に封入される。
【0055】
収容空間230内の蒸気が加熱されて温度上昇し、その圧力Pの高まりによって鍋蓋300Aが押し上げられると、鍋蓋300Aは図7に示されるように上方に移動する。このとき、鍋蓋300Aの蓋側当接面311Aは、−X方向側の端部が鍋本体200Aの本体側当接面222Aと当接したまま、蒸気導出部400Aが形成されているX方向側の端部が本体側当接面222から離反する。これにより、X方向側の端部において、蓋側当接面311Aと本体側当接面222Aとの間に隙間CL2が形成される。
【0056】
この隙間CL2は、蒸気導出部400Aと連通する。したがって、収容空間230が、蒸気導出部400A及び隙間CL2を介して調理鍋100Aの外部と連通する状態となる。このため、矢印S2で示されるように、収容空間230内の蒸気を外部に導く流路が形成される。
【0057】
一方、蒸気導出部400A以外の部位では、蓋側当接面311Aと本体側当接面222Aとの間に隙間が形成されても、その大きさは蒸気導出部400Aに形成される隙間CL2よりも小さなものとなる。すなわち、蒸気導出部400Aに形成される隙間CL2の断面積の増加量は、蒸気導出部400A以外の部位に形成される隙間の断面積の増加量と比べて大きくなる。
【0058】
以上説明したように、調理鍋100Aでは、鍋本体200Aは、鍋本体200Aの中央部側に向かって下方に傾斜する本体側傾斜シール面224が上端部の内周側に形成される。また、鍋蓋300Aは、鍋蓋300Aの中央部側に向かって下方に傾斜する蓋側傾斜シール面324が下面の外周側に形成される。調理鍋100Aは、本体側当接面222Aと蓋側当接面311Aとが当接している状態において、本体側傾斜シール面224と蓋側傾斜シール面324とが当接するように構成されている。
【0059】
この構成によれば、鍋蓋300Aは、その蓋側傾斜シール面324において本体側傾斜シール面224と当接する。本体側傾斜シール面224と蓋側傾斜シール面324は、いずれも中央部側に向かって下方に傾斜するように形成されている。したがって、使用者が鍋蓋300Aで収容空間230の上部を覆う際に、鍋蓋300Aの位置が本体側傾斜シール面224の傾斜によって調整され、鍋蓋300Aを鍋本体200Aの中央部に配置し易くなる。これにより、鍋蓋300Aの上方への移動に伴って、確実に蒸気導出部400Aから蒸気を導出することが可能になる。
【0060】
次に、図8及び図9を参照しながら、第3実施形態に係る調理鍋100Bについて説明する。第3実施形態に係る調理鍋100Bは、前述した第1実施例に係る調理鍋100と同様に調理場等で加熱調理に用いられる調理器具であり、鍋本体200Bと鍋蓋300Bとを備えている。調理鍋100Aは、その鍋本体200Aと鍋蓋300との当接の形態が、調理鍋100のものと異なる。調理鍋100Bのうち、調理鍋100と同一の構成については適宜同一の符号を付して、説明を省略する。尚、図8及び図9は、図1に示される調理鍋100のII−II断面と対応する断面を示すとともに、図2に示されるA部及びB部と対応する部位を拡大して示している。
【0061】
図8に示されるように、調理鍋100Bの鍋本体200Bは、その側面部220の上端部に本体側当接面222Bが形成されている。本体側当接面222Bは、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成された面であり、鍋本体200Bの中央部側に向かって下方に傾斜している。
【0062】
また、鍋蓋300Bのフランジ部310の下面側には下方に向けて突出する環状突起320Bが形成されている。環状突起320Bの外周側には、蓋側当接面311Bが形成されている。蓋側当接面311Bは、鋳造後に研磨によって平滑化することで形成される環状の面であり、鍋蓋300Bの中央部側に向かって下方に傾斜している。蓋側当接面311Bの傾斜角度は、前述した本体側当接面222Bと略同一である。
【0063】
鍋蓋300Bの環状突起320Bは、その一部に切欠き322Bが形成されている。切欠き322Bは、環状突起320Bの外周側から鍋蓋300Bの中央部側に向けて部分的に切り欠いた形状を呈している。また、鍋蓋300Bの上面であって、切欠き322Bと対応する位置には、表示突起330が形成されている。表示突起330は、鍋蓋300Bの上面から上方に向けて突出するように形成されている。
【0064】
以上説明したように形成された鍋蓋300Bは、その蓋側当接面311Bが鍋本体200Bの本体側当接面222Bと、上下方向に対して傾斜した方向に当接することで収容空間230を上方から覆う。
【0065】
また、鍋蓋300Bが収容空間230を覆っている状態では、図8に示されるように、蒸気導出部400Bが形成される。蒸気導出部400Bは、鍋蓋300Bの切欠き322Bと鍋本体200Bの本体側当接面222Bとの間に予め形成されている隙間である。蒸気導出部400Bは、収容空間230と連通している。
【0066】
また、フランジ部310の下面と側面部220の上端部との間には、予め隙間CL3が形成されており、この隙間CL3は蒸気導出部400Bと連通している。すなわち、第3実施形態に係る調理鍋100Bでは、矢印S31で示されるように、収容空間230内から蒸気導出部400B及び隙間CL3を介して調理鍋100Bの外部と連通し、蒸気を外部に導く流路が予め形成されている。
【0067】
続いて、調理鍋100Bの作用効果について説明する。電磁調理器IH(図2参照)から供給される熱によって被調理物F(図1参照)が加熱されると、被調理物Fが含む水分等が蒸発して収容空間230内に蒸気が発生する。前述したように、調理鍋100Bでは、収容空間230内の蒸気を、蒸気導出部400Bを介して外部に導く流路が予め形成されている。したがって、加熱調理の初期は、矢印S31で示されるように、収容空間230内の蒸気は比較的小さい流量で外部に導かれる。
【0068】
収容空間230内の蒸気が加熱されて温度上昇し、その圧力Pの高まりによって鍋蓋300Bが押し上げられると、鍋蓋300Bは図9に示されるように上方に移動する。このとき、鍋蓋300Bの蓋側当接面311Bは、−X方向側の端部が鍋本体200Bの本体側当接面222Bと当接したまま、蒸気導出部400Bが形成されているX方向側の端部が本体側当接面222Bからさらに離反する。これにより、X方向側の端部の隙間CL3がさらに大きくなる。このため、矢印S32で示されるように、収容空間230内から蒸気を外部に導く流路の断面積が大きくなり、導出される蒸気の流量が大きくなる。
【0069】
一方、蒸気導出部400B以外の部位では、蓋側当接面311Bと本体側当接面222Bとの間に隙間が形成されても、その大きさは蒸気導出部400Bに形成される隙間CL3よりも小さなものとなる。すなわち、蒸気導出部400Bに形成される隙間CL3の断面積の増加量は、蒸気導出部400B以外の部位に形成される隙間の断面積の増加量と比べて大きくなる。
【0070】
以上説明したように、鍋蓋300Bが収容空間230を覆っている状態において、蒸気を外部に導く流路が予め形成されている。当該流路の大きさを適宜設定することにより、収容空間230内の圧力を調整し、圧力が過度に高まることを確実に抑制することが可能となる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
100,100A,100B:調理鍋
200,200A,200B:鍋本体
210:底面部
220:側面部
222,222A,222B:本体側当接面
223:本体側シール面
224:本体側傾斜シール面
230:収容空間
300,300A,300B:鍋蓋
311,311A,311B:蓋側当接面
321:蓋側シール面
322,322A,322B:切欠き
324:蓋側傾斜シール面
330:表示突起(表示部)
400,400A,400B:蒸気導出部
CL1,CL2,CL3:隙間
F:被調理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9