特許第6238960号(P6238960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238960スナップスルー座屈を予測する方法、及び、耐スナップスルー座屈性を実行、予測する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238960
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】スナップスルー座屈を予測する方法、及び、耐スナップスルー座屈性を実行、予測する装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20171120BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G06F17/50 612H
   G06F17/50 612C
   G06F17/50 680Z
   B62D25/06 Z
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-505842(P2015-505842)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公表番号】特表2015-514277(P2015-514277A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013035696
(87)【国際公開番号】WO2013155026
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】13/442,166
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510008765
【氏名又は名称】アルセロールミタル インベスティガシオン イ デサローロ,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】サダゴパン シリラム
(72)【発明者】
【氏名】ランツィ オスカー
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−259194(JP,A)
【文献】 特開2008−185347(JP,A)
【文献】 特開2007−239769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0004850(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0172224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
B62D 25/06
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部的な荷重条件下で印加される荷重(26、33)に対するシートメタルパネル(12)のスナップスルー座屈を予測する方法であって、
前記シートメタルパネル(12)は特定の規定された形状を有し、
前記方法は、装置による以下のステップを含む。
前記シートメタルパネル(12)の第1の主曲率半径(R1)を特定し、
前記シートメタルパネル(12)の第2の主曲率半径(R2)を特定し、
前記シートメタルパネル(12)の厚さ(t)を特定し、
構造的支持体(32)間の前記シートメタルパネルの部分の距離(L2)を特定し、
スナップスルー座屈に対する荷重たわみ挙動を決定するために数学関数を作成し、
数学的方法論曲線と組み合わせて、前記第1及び第2の主曲率半径(R1、R2)、前記シートメタルパネル(12)の厚さ(t)、前記構造的支持体(32)間の前記シートメタルパネル(12)の部分の距離(L2)のパラメータを入力して、初期曲線と不安定点と当該不安定点に続く荷重たわみ曲線とを含む全体的な荷重たわみ曲線を回帰分析を用いて予測し生成することにより、様々な局部的に印加された荷重(26、33)下のスナップスルー座屈特性を表示するための前記シートメタルパネル(12)の尤度を決定する。
【請求項2】
前記第1の主曲率半径(R1)は、前記シートメタルパネル(12)の正面曲率半径である、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項3】
前記第2の主曲率半径(R2)は、前記シートメタルパネル(12)の側面曲率半径である、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項4】
前記シートメタルパネル(12)は、ルーフパネル(30)であり、
前記厚さ(t)は、前記ルーフパネル(30)の厚さである、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項5】
前記距離(L2)は、前記ルーフパネル(30)を支持するルーフボウ(32)間の長さである、
請求項4に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項6】
前記回帰分析によって決定された、更なる分析に用いられる構造の決定に基づいて、前記シートメタルパネル(12)に印加される局部的な荷重(26)プロセスのFEAモデル(10)を装置により作成するステップを更に含む、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項7】
プレート形状変数の入力及び局部的な荷重(26)プロセスのFEAモデル(10)に基づいて、前記シートメタルパネル(12)の仮想実験を装置により実行するステップをさらに含む、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項8】
前記方法は、安定応答曲線及び崩壊又は座屈応答曲線を含むハードオイルキャンニングを示す荷重たわみ曲線を装置により生成する、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項9】
前記方法は、安定応答曲線及び崩壊又は座屈応答曲線を含むソフトオイルキャンニングを示す荷重たわみ曲線を装置により生成する、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項10】
前記方法は、安定応答曲線のみを有するオイルキャンニングなしを示す荷重たわみ曲線を装置により生成する、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項11】
前記荷重は、平面圧子(33a)を用いて印加される、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【請求項12】
局部的な荷重条件下で印加される荷重(26、33)に対するシートメタルパネル(12)の耐スナップスルー座屈性を実行、予測する装置であって、
前記シートメタルパネル(12)は特定の規定された形状を有し、
前記装置は、
少なくとも一つの曲率を有する前記シートメタルパネル(12)の規定された形状を近似する手段、
前記シートメタルパネル(12)の少なくとも一つの曲率(R1、R2)に印加される局部的な荷重(26)プロセスのFEAモデル(10)を作成する手段、
オイルキャンニングの耐性へ前記シートメタルパネル(12)に影響する形状変数、少なくとも一つの曲率値を含む曲率(R1、R2)を入力する手段、
入力された変数及び局部的な荷重プロセス(26)のFEAモデル(10)に基づいて、前記シートメタルパネル(12)の仮想実験を実行する手段、
前記仮想実験から回帰モデルを開発する手段、
を備え、
前記回帰モデルは、局部的な荷重プロセス(26)下での前記シートメタルパネル(12)の耐オイルキャンニング性を予測して示すと共に、初期曲線と不安定点と当該不安定点に続く荷重たわみ曲線とを含む全体的な荷重たわみ曲線を生成する。
【請求項13】
前記シートメタルパネル(12)の規定された形状は、正面曲率半径(R1)、側面曲率半径(R2)、前記シートメタルパネル(12)の支持体(32)間の長さ(L2)、前記シートメタルパネル(12)の厚さ(t)を含む、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記印加された荷重(26)は、平面圧子(33a)によって与えられる、
請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記構造的支持体の配置を調整してスナップスルー座屈を回避するために、前記荷重たわみ曲線の結果を用いる、
請求項1に記載のスナップスルー座屈を予測する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ルーフパネルの耐デント性及び耐オイルキャンニング性を同時予測するシステム及び方法に関し、特に、ルーフボウの配置、パネルルーフの曲率、ルーフの厚さ、鋼種が、どのように耐デント性及び耐オイルキャンニング性に影響を及ぼすかに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のパネル、特にルーフパネルに生じうる性能上の問題には、スナップスルー座屈としても知られるオイルキャンニング(飛び移り座屈)及びデントがある。スナップスルー座屈は、特に自動車のルーフパネル等の幅広い平坦部を有する軽量定型金属製品に特有のものである。スナップスルー座屈やデントは、明らかに、パネルの外観を損ない、異音を生じさせ、消費者の満足度を低下させうる。
【0003】
スナップスルー座屈は比較的平坦なパネルで発生する複雑な不安定現象であり、大きな浅いパネルを扱う多くの業界で経験されている。基本的に、スナップスルー座屈は、円弧アーチにおける圧縮応力のために発生する。これらの圧縮応力は、外部荷重によって、又は、製造に起因する残留応力によって引き起こされることがある。この不安定性の結果は、荷重、パネルの曲率、支持構造の遵守、並びに他の変数の種類に依存する。浅いアーチにおけるスナップスルー座屈の問題は、ある程度詳細に以前に研究されている。スナップスルー座屈の現象を説明するのに有用であるが、先行の研究で用いられた境界と荷重条件は、自動車業界において経験される稼働中の荷重条件の模擬ではない。したがって、この結果を、自動車のパネルの耐スナップスルー座屈性を評価するために使用することはできなかった。
【0004】
デント及びスナップスルー座屈の耐性は、クロージャーパネルの重要な特性である。自動車のクロージャーパネルの耐デント性は広範囲にわたって研究されており、鋼種、厚さ及びパネルの曲率に依存することが知られている。多くの場合、厚さを低減することにより軽量化を達成するための高強度の鋼種の能力は、パネルの剛性とスナップスルー座屈への耐性によって制限される。スナップスルー座屈は、与えられたたわみの増加に伴ってパネルの耐性が突然減少するときのパネルの荷重で発生する現象である。いくつかの例では、ドロップイン荷重は音の放出を伴う。
【0005】
歴史的には、耐デント性及び耐スナップスルー座屈性は、自動車/鋼鉄パートナーシップガイドライン(Auto/Steel partnership guidelines)に従って、パネルの物理試験によって評価されていた。多くのプロトタイプ部品の物理試験は、稼働中に予測される耐デント性及び耐スナップスルー座屈性の最も良い指標を与えるが、かなりの時間と努力が必要となる。さらに、プロトタイプとなる異なるタイプの鋼鉄が特定され、試験のために製鋼所から調達する必要がある。スタンピングや組立試験は既存の生産工程の途中で調整を必要とし、その後、最終的に、プロトタイプ部品を実際に試験することができる。過去10年間にわたり、有限要素解析(Finite Element Analysis:FEA)は、広くこれらの性能測定基準の評価に使用されてきた。分析方法及び合否試験は製造業者によって異なり、また、パネルタイプや車両クラスに依存する。一般的には、車両全体構造モデルは、露出パネル構造モデルを得るために切り捨てられる。このモデルは、その後さらに荷重の局部的な領域で精緻化されて分析され、その結果は後処理される。この典型的なアプローチを用いると、分析者は、与えられた露出パネルの厚み−鋼種の組み合わせを決定するための適切な解に到達するまでに数週間かかる場合がある。
【0006】
耐スナップスルー座屈性、剛性、耐デント性を満たす要件は、露出パネルの材料の決定において、ほとんどの自動車の相手先商標製品製造会社(Original Equipment Manufacturer:OEM)の重要な推進力となる。説明したように、耐デント性は、パネルの曲率、鋼種、厚さ及びスタンピングプロセス中にパネルドアに付与された伸張に依存することが示されている。鋼種の焼付硬化は、耐デント特性を満たしつつ、アウターパネルの重量を減少させる、パネル強度を増加させる方法の一つであり、塗装焼付サイクルによるパネル強度の増加は効果的に用いられてきた。
【0007】
本特許出願の所有者は、以前に多くの鋼種の耐デント性を予測するためのモデルを開発した。当該モデルは、物理試験結果と比較して合理的に正確であることが示されている。しかしながら、これまで、このモデルはドアのみに適用されてきた。そのシステム及び方法は、米国特許第7158922号(Sadagopan et al.)に開示されている。
【0008】
スナップスルー座屈は、局部的な荷重条件下で与えられたたわみに応じたパネルの耐性の低下によって特徴づけられる。シートメタルの厚さが低下するにつれて、スナップスルー座屈の耐性もまた低下する。いくつかの場合、耐性の低下はかなりの異音を伴う。耐デント性と異なり、スナップスルー座屈の耐性はパネル形状、支持状態及び厚さに依存する。鋼種は、スナップスルー座屈に対して比較的重要ではない。多くの例において、パネルを薄肉化する能力はその耐スナップスルー座屈性によって制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ルーフパネルの耐スナップスルー座屈性の予測ガイドラインを提供することである。本発明の他の目的は、以前ドアパネル用に開発されたオンライン耐デント性モデルに拡大することである。このようなツールの利用は、パネルの剛性、耐スナップスルー座屈性及び耐デント性の基準を満たす車両開発のスタイリング段階で、曲率半径、鋼種、厚さ、設計上の決定の最適化及び選択を可能にする。本発明の利点は、OEMが、プログラム開発の後半で高価な修正、調整、変更の必要性を最小限に抑えつつ、大幅な分析時間を費やすことを避けるようにすることである。本発明のさらなる目的は、従来の分析技術が許容するよりもはるかに短い時間枠内で行うことができる、鋼種、鋼の厚さ、パネルのスタイリング、設計オプションに関連する可能性のある状況を分析するために、理想的な形状及び荷重条件のための合理的な結果を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、自動車のルーフパネル用のスナップスルー座屈及びデントの耐性の予測モデルを提供することである。そのモデルは、単一のユーザーインターフェイスに組み合わせることができる。本発明の他の目的は、荷重がパネルの中央に位置しているときに、予測モデルがFEAと良好に相関することである。予測モデルは、ルーフパネルのスナップスルー座屈への耐性が適切なルーフボウの配置によって影響を受け、ルーフボウを互いに近接して配置することによってスナップスルー座屈を回避することができることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡略化されたツールは、ルーフボウの配置、ルーフパネルの曲率、ルーフの厚さ、鋼種の影響を含む、ルーフパネルの耐デント性及び耐スナップスルー座屈性を同時に予測するために設けられている。一実施形態では、局部的な荷重条件下で適用される荷重に対するシートメタルパネルの耐スナップスルー座屈性の予測方法が提供される。シートパネルは、特定の規定された形状を有する。本方法は、以下のステップを含む。シートメタルパネルの第1の主曲率半径を特定し、シートメタルパネルの第2の主曲率半径を特定し、シートメタルパネルの厚さを特定し、構造支持体間のシートパネルの部分の距離を特定し、スナップスルー座屈に対して標準化された荷重下での荷重たわみ挙動(以下、この挙動を「荷重たわみ挙動」とする)を決定するために数学関数を作成し、数学関数と組み合わせて、2つの主曲率半径、パネルの厚さ、構造支持体間のシートパネルの部分の距離のパラメータを入力することにより、様々な局部的に適用された荷重下のスナップスルー座屈を表示するために、シートメタルパネルの尤度を決定する。
【0012】
第1の主曲率半径はシートメタルパネルの正面曲率半径であってもよく、第2の主曲率半径はシートメタルパネルの側面曲率半径であってもよい。シートメタルパネルはルーフパネルであってもよいし、距離はルーフパネルを支持するルーフボウとの間の長さでありうる。
【0013】
本発明の上述及び他の特徴及び目的、これらを得るための方法は、より明らかになるであろう。また、本発明自体は、添付の図面と併せて、本発明の実施の形態の以下の説明を参照することによってより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】適用された荷重に対するドアパネルのたわみを示すグラフである。
図2】スナップスルー座屈分析のための荷重位置を示すルーフパネルである。
図3A】予測モデル内の変数である幾何学的特徴を示すルーフ構造のパネルの代表的な領域である。
図3B】ルーフボウの詳細を示す近接図である。
図4】分析に用いられる境界条件を示すルーフのパネルモデルの代表領域である。
図5A】スナップスルー座屈分析に用いられる圧子を示す図である。
図5B】耐デント性分析に用いられる圧子を示す図である。
図6】分析に用いられる材料の真応力と真塑性ひずみのグラフである。
図7A】ハードオイルキャンニングの場合の、適用された荷重に対するたわみを示す図である。
図7B】ソフトオイルキャンニングの場合の、適用された荷重に対するたわみを示す図である。
図7C】オイルキャンニグなしの場合の、適用された荷重に対するたわみを示す図である。
図7D】ソフトオイルキャンニングの場合及びオイルキャンニグなしの場合の、適用された荷重に対するたわみを示す図である。
図8A】耐デント性を評価するための試験パネルを示す図である。
図8B】耐デント性を評価するための試験装置と試験パネルの配置を示す図である。
図9A】1%二軸延伸のFEAシミュレーション手法の物理的なデント試験結果を示すグラフである。
図9B】2.5%二軸延伸のFEAシミュレーション手法の物理的なデント試験結果を示すグラフである。
図10】ルーフパネルの耐デント性とオイルキャンニングを一体化したモデルのためのユニットユーザインターフェースを示す図である。
図11A】荷重とたわみとの関係の、代表的な領域を用いたFEA予測を示すグラフである。
図11B】適用された荷重とたわみの関係の、与えられた形状及び支持されていないボウ間の長さの異なる値に対する予測モデル出力を示すグラフである。
図12】フルパネルFEAと予測モデル間の適用された荷重に基づく荷重たわみ挙動の比較を示すグラフである。
図13】他のフルパネルFEAと予測モデル間の適用された荷重に基づく荷重たわみ挙動の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
対応する参照符号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。図面は、本発明の実施形態を表すが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、特定の特徴は本発明をよりよく例示し、説明するために、誇張されている場合がある。本明細書に記載の例示は本発明の実施形態を示し、このような例示は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
本発明の原理の理解を促進する目的で、以下に説明される図面に示される実施形態が参照される。しかしながら、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。本発明は、本発明に関係する当業者が通常思いつく、例示された装置及び説明された方法の変更及び更なる修正、本発明の原理の更なる応用を含む。
【0017】
以下に開示する実施形態は、網羅的であること、又は、以下の詳細な説明に開示された正確な形態に本発明を限定することを意図していない。むしろ、実施形態は、選択され、他の当業者がその教示を利用できるように記載されている。
【0018】
以下の詳細な説明は、アルゴリズムや、英数字又は他の情報を表すコンピュータメモリ内の信号に対する動作の記号表現の観点から、部分的に示されている。これらの説明および表現は、最も効果的に他の当業者にこれらの動作の内容を伝えるために、データ処理技術の当業者によって使用される手段である。
【0019】
アルゴリズムは、一般に、所望の結果につながるステップの自己矛盾のないシーケンスであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的な操作を必要とする。通常、必須ではないけれども、これらの量は、格納、転送、結合、比較、その他の操作が可能な電気信号又は磁気信号の形をとる。主に一般的な使用の理由から、これらの信号をビット、値、シンボル、文字、表示データ、用語、数字等として参照することが時に便利であることがわかる。しかし、これら及び類似の用語の全ては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、これらの量に適用される便利なラベルとして単にここで使用されていることに留意すべきである。
【0020】
いくつかのアルゴリズムは、情報の入力及び所望の結果の生成の両方のためのデータ構造を使用することができる。データ構造は大幅にデータ処理システムによるデータ管理を容易にし、精緻なソフトウェアシステムを介することを除いてアクセスすることができない。データ構造は、メモリの情報内容ではなく、メモリに格納された情報の物理的な編成を伝える特定の電子構成要素を表している。単なる抽象化ではなく、データ構造は、正確に複雑なデータを表すと同時にコンピュータ操作の効率向上を提供する、メモリ内の特定の電気的又は磁気的な構成要素である。
【0021】
さらに、実行される操作は、しばしば比較や追加などの用語で呼ばれ、一般的に人間のオペレータによって実行される知的操作と関連する。人間のオペレータのこのような能力は、本発明の一部を形成する、本明細書で説明するいずれの操作においても必要なく、ほとんどの場合望ましくない。操作は、機械操作である。本発明の操作を実行するのに有用な機械は、汎用デジタルコンピュータ又は他の同様の装置を含む。全ての場合において、コンピュータの操作における方法操作と、計算自体の方法との区別が認識されるべきである。本発明は、他の所望の物理信号と結果を生成するために、電気的又は他の(例えば、機械的、化学的)物理的な信号を処理する際に、コンピュータを操作する方法及び装置に関する。
【0022】
本発明はまた、これらの操作を実行する装置にも関する。この装置は、特に必要な目的のために構成されてもよく、又は、選択的に起動又はコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって再構成される汎用コンピュータを含んでもよい。本明細書で提示されるアルゴリズムは、本質的に、いかなる特定のコンピュータ又は他の装置に関連していない。特に、様々な汎用マシンを本明細書の教示に従って書かれたプログラムを用いて使用することができる。又は、要求される方法ステップを実行するためにより特化した装置を構築する方が好ましい。これらのマシンに必要な構成は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0023】
開発の一目的は、主曲率半径と材料の厚さの関数として理想化されたパネルの形状のために、スナップスルー座屈荷重の数値を提供することであった。図1は、平面圧子を用いて試験されたドアパネルの荷重たわみ挙動を示している。図は、いずれもスナップスルー座屈に対応する、増加したたわみに対する荷重の低下の2つの例を示している。100−140Nの荷重で発生するスナップスルー座屈の第1の例では音が聞こえなかったのに対し、300−400Nの第2の例では大きな音が聞こえた。スナップスルー座屈の例では、荷重の急激な減少がある。
【0024】
開発の別の態様は、図1に示される試験結果と同様の曲線を提供するために、スナップスルー座屈荷重と荷重たわみの予測におけるルーフボウの効果を決定し、ドアパネルのために開発された耐デント性モデルと同様のルーフのための予測モデルを開発することであった。FEAは、主に物理試験の実施の代わりに使用された。
【0025】
図2を参照すると、ルーフ構造の代表的なFEAモデルは、概して10として示されている。ルーフ構造10は、概して12として示されるパネル、ルーフボウ14、ヘッダ16、ウインドシールドヘッダ18、ルーフレール20を含む。図に示すように、ルーフ構造は、フロントパネル部22、リアパネル部24を含む支持されていないパネル12の2つのスパンを提供する。荷重26は、スナップスルー座屈の分析のために、フロントパネル部22に印加されるように示されている。パネル12は、ウインドシールドヘッダ、リアヘッダ、ルーフレールにスポット溶接されている。典型的な4人乗りセダンの場合、ルーフボウ14は、ピラー28の位置でルーフレール20間の幅に架け渡されている。ルーフボウ14は、ルーフレール20にスポット溶接され、また、塗料ベースのサイクル(paint based cycle)中に硬化するマスチックでルーフパネル12に取り付けられている。図3、4、5Aに示すように、圧子は、26において荷重を適用するために用いられる。図示の例では、圧子及び荷重が、ウインドシールドヘッダ18とルーフボウ14との間のルーフパネル12の支持されていないフロントパネル部22の中央に配置されている。予測モデルを開発するために、パラメトリック解析を考慮しつつ、ルーフ及び境界条件の形状を詳しく近似するパネルの代表領域(Representative Area of the Panel、RAP)を定義する必要があった。図2のRAPは、フロントパネル部22の破線の輪郭で表されている。
【0026】
図3Aを参照すると、ルーフパネルのRAPは、概して30として示されている。RAPの幅はWとして、長さはLとして示されている。2つの代表的なルーフボウ32は、RAPを支持して示されている。圧子で適用される荷重は、概して33で示されている。本実施例の目的のために、ルーフボウの形状は変化しない。変数は、正面曲率半径R1、側面曲率半径R2及びルーフボウ間の支持されていない長さL2を含んでいる。ボウ32は、底部34、2つの傾斜脚36、傾斜脚36から延びるフランジ38を含む。図3Bを参照すると、ルーフボウ14の詳細は、ボウの上部幅tw、ボウの底部幅bw、ボウの深さdb、ボウのフランジの長さbfを含む。底部34と傾斜脚36の間の角度は、baで示される。マスチック40は、ボウ32のフランジ38とRAP30との間に位置している。マスチック40の厚さは、mtで示される。ボウの寸法は、第1の例に関して固定されている。
【0027】
個々のFEAモデルは、これらの固定された変数及びR1、R2、L2に関連する与えられた値に基づいて作成された。R1、R2、L2の値は、以下にさらに記載されている実験計画(DOE)マトリックスに基づいていた。
【0028】
図4、5A、5Bを参照すると、FEAモデルにおける境界条件及び2つの異なる荷重の場合の圧子が示される。図4において、RAP30は、44においてピン止め又は支持されている。図5Aにおいて、平面圧子33aはスナップスルー座屈分析のために用いられ、直系25.4mmの半球圧子(図5B)はデント分析に用いられた。耐デント性に関して、25.4mm圧子の使用は北米の自動車及びサプライヤー業界において「標準」として受け入れられてきた。しかし、耐スナップスルー座屈に関して、圧子は、パネル、車両クラス、メーカー間で大きく異なる。
【0029】
図6を参照すると、RAP30として考慮される材料である、3つの鋼種、すなわち、DDQプラス(DDQ+)、BH210、BH250の塑性ひずみデータに対する真応力のグラフが示される。ルーフボウは、絞り用鋼(drawing quality steel)としてモデル化されている。
【0030】
DOEに関して、オイルキャンニングの耐性を決定するために、ルーフパネルの正面曲率半径R1、側面曲率半径R2、ルーフボウ間の支持されていない長さL2及び厚さ(t)を含む4つの変数が分析された。耐デント性のために、変数は、正面曲率半径R1、側面曲率半径R2だけでなく、材料厚さを含むが、ルーフボウ間の支持されていない長さの代わりに有効ひずみ
【数1】
が含まれる変数が用いられた。耐デント性に対するルーフボウ間の長さL2の影響を検討するいくつかのスクリーニングのシミュレーションでは、その因子に対する依存性が示されなかったため、それはデント性に対するDOEに含まれていない。正面及び側面曲率半径に関して、曲率(1/R1、1/R2)の値が等間隔になるように変数の中央値が選択された。ルーフボウ間の支持されていない長さL2として、その因子に対するオイルキャンニング挙動の複雑な依存性のため、より多くのレベルが選択された。
【0031】
スナップスルー座屈やデントのためのDOEは、完全に直交したL27(以下、「L27」と呼ばれる)設計であり、第4の変数を繰り返し処理する。説明のために、スナップスルー座屈のためのDOEは、正面及び側面曲率半径ならびに厚さが変数であるL27であった。このDOEは、ルーフボウ間の長さL2に対して繰り返され、243の個々のシミュレーション結果となった。デントに関して、L27は、厚さの三つの値に対して繰り返された変数として、正面及び側面曲率半径及び有効ひずみに基づいており、L81設計となった。デントに対して、この設計は、FEAモデルの説明の便宜のために採用された。
【0032】
耐スナップスルー座屈性の二つの尺度は、性能特性、すなわち、荷重たわみ挙動とスナップスルー座屈荷重であることが決定された。
【0033】
たわみ挙動への荷重の3つの状況は、モデルにおいて考慮されなければならない。これらは、たわみのある範囲にわたって追加のたわみとともに実際の荷重が減少する真のスナップスルー座屈に対応する「ハード」オイルキャンニング(“hard” oil canning)(図7A)、インクリメンタルレジスタンス(incremental resistance)は減少するが、実際の荷重の減少は発生しない「ソフト」オイルキャンニング(“soft” oil canning)(図7B)、及びオイルキャンニングなし(no oil canning)(図7C)である。荷重たわみ曲線は、二成分の曲線で構成されていると考えられる。これらは、安定した応答曲線と、崩壊又は座屈応答曲線である。これらの曲線のそれぞれは、曲線状の特定の点を特定するために、回帰分析を用いてフィッティングされており、続いて、フィッティッドポイント間の折れ線(piece wise)、二次(quadratic)、又は三次多項式(cubic polynomials)を用いた補間がなされる。
【0034】
全ての場合において、フィッティングは実験曲線に対して直接行われていない。むしろ、それは、その創作について上述したFEAで生成された曲線に対して行われる。この選択は、2つの理由のためになされる。第1に、独立した試験は、FEAの結果がこのような比較が可能である実験曲線と一致することを示している。第2に、このような多数の場合に対して制御された試験を合理的な時間内で行うことは実現可能ではない。
【0035】
上述したように、オイルキャンニングの3つの状況は、モデルにおいて考慮されなければならない。すなわち、上記定義したように、「ハード」オイルキャンニング、「ソフト」オイルキャンニング、オイルキャンニングなし、である。安定、及び、崩壊応答の定義、これらの間の遷移点は、これら3つの状況のそれぞれの観点において開発されなければならない。
【0036】
図7Aに示すように、ハードオイルキャンニングにおいては、観察された荷重−たわみ曲線の逆転がある。座屈及び非座屈(unbuckling)プロセスは、AからDの崩壊曲線の最初の部分においてひずみ(deformation)への耐性が負となる、すなわち曲線の傾きが上向きから下向きになる、という事実と関連し、これは本質的に不安定な状態を表す。
【0037】
図7Bに示すように、ソフトオイルキャンニングにおいては、Aにおけるひずみに対する耐性が減少する。しかし、ここでひずみに対する耐性がいずれにおいても正であるので、座屈は回避される。点AとCのみが特定可能である。安定した応答はゼロからAに及び、崩壊した応答がそこから引き継ぐ。
【0038】
最後に、図7Cにおいては、いずれの点でもひずみに対する耐性の低下がない。これは「オイルキャンニングなし」と呼ばれている。安定した応答は、荷重−たわみ曲線全体で連続的に適用される。しかし、数学的モデリングの目的のためには、遷移点と崩壊曲線を特定することが依然として必要である。モデルは、オイルキャンニングなしの場合、「崩壊」曲線が、安定した曲線に滑らかに合流し、1つのみの滑らかな曲線を残すように構成されている。
【0039】
崩壊応答は、最初にフィッティングされる。そのフィッティングからの出力が安定応答とこれらの間の遷移点のフィッティングに影響を与えるためである。
【0040】
一般的な曲線にフィットさせるために、曲線状のいくつかの定義された点がフィッティングされ、フィッティングされた値の間が補間される。ここで選択された補間方法は、エルミートスプライン補間であり、定義された各点での値及び導関数の両方を必要とする。崩壊応答に関して、定義された点は、2、3、4、5、6、7、8、及び9mmにおける遷移点と荷重であると解釈される。固定されたたわみ点(2〜9mm)へのフィッティングについて最初に説明する。そのフィッティングからの結果は、遷移点での値と傾きにフィットさせるために用いられる。
【0041】
2〜9mmにおけるたわみに関して、FEA演算から決定された荷重は、以下の式にしたがってフィッティングされる。
【数2】
【0042】
ここで、yは荷重(N)であり、Ajklmは各たわみで独立して評価される係数、tは厚さ(mm)、R及びRは正面及び側面半径(mm)、Lはルーフボウ間の距離(mm)である。整数j、k、l、及びmは、合計わずか2である非負の整数である。このように、定数、線形及び二次の項が、回帰に含まれている。半径及びルーフボウ間の距離の場合には、指数が負の符号を有するように見える。これは、回帰において用いられる量が、実際はそれらの量の値ではなく、それらの乗法の逆元であるためである。これは、我々がフラットパネルや支柱間の長い距離に対して期待する有限の制限値を与える。対数は、フィットされた荷重値を与えるために累乗される。対数関数を使用することは試行錯誤によって発見され、荷重予測において、特に、ハードオイルキャンニングの曲線の低荷重部において、最も一致するパーセント誤差を与える。
【0043】
傾きは、次の式に従って、同様にフィッティングされる。
【数3】
【0044】
この式の左辺は、荷重値のフィッティングに用いた対数の導関数である。右辺には、A係数と互いに独立している、係数Bjklmの新しいセットを有する。座標xは、たわみを表す。フィッティング関数は対応する荷重値で乗算され、導関数d(y)/dxが得られる。
【0045】
回帰方法論は10mmの変位で破たん(breaks down)する。その変位におけるFEAデータがあまりにも疎であるためである。このため、10mmにおける荷重及びその導関数を得るために、ln(y)及びdy/(y dx)の値は、8及び9mmにおけるそれらの値から単に直線的に外挿される。これは、次の式を導出する。
【数4】
【0046】
ここで、添字8、9、10は、mm単位の変位の値を参照する。方程式の右辺は、8及び9mmにおいて適用された、これら2つの変位に関する回帰[1]、[2]を形成する、ln(y)、dy/y dxのフィッティングされた値からくる。
【0047】
2〜9mmの点で決定された荷重及び導関数を用いて、三次エルミート補間がそれらをフィットさせるために用いられる。各間隔ごとに、三次多項式は決定すべき4つの係数を必要とする。これは、間隔の両端でフィッティングされた荷重値及びフィッティングされた傾きの両方をマッチングすることによって得られる。
【0048】
遷移点に関して、荷重とたわみは、いずれも回帰によってフィッティングされなければならない。荷重は、二次項とともにいくつかの三次項を含む回帰にフィッティングされる。
【数5】
【0049】
ここで、yの添字tは、荷重が遷移点において評価されていることを示す。総和記号の添字は、すべての指数の合計が3以下であることを条件として、指数mが3の値を取ることが許容されている一方、指数j、k及びlが2の最大値に制限されていることを示している。したがって、三次項は、(L−1)の少なくとも1つの因子を含むものである。たわみは、式[1]に類似する回帰にフィッティングされる。
【数6】
たわみxは、遷移点を示すtが添字付けられている。
【0050】
これは、ハード又はソフトオイルキャンニングが発生することを前提としている。図7Dに示されているように、これは、遷移点を超えて増加するxに応じて導関数が減少することに対応し、同様に、図2において、xmaxで示された特定の最大値よりも小さいたわみを要求する。xmaxでの値は、ゼロから遷移点の安定応答の二次補間を仮定すると、2mm変位のフィッティングされた荷重値及び導関数、安定応答曲線の傾き(次のセクションを参照)から計算される。この計算の結果は、次式で与えられる。
【数7】
【0051】
この式で、y及びsの値は、2mmでフィッティングされた荷重及び傾きを表し、sは(以下に決定される)ゼロ荷重及びたわみでの安定した応答の傾きである。[6]式で与えられる回帰値が式[7]で与えられる最大値を超える場合、後者が前者の代わりに使用される。遷移点を調査した全ての場合において、2mm未満の変位が発生する。
【0052】
フィッティングされた遷移荷重とたわみを用いて、遷移点と2mm変位の間の三次補間の代わりに、二次補間が用いられる。低次の多項式は、遷移点での変位が2mmに近い場合に発生しうる悪条件を回避する。補間は、再度、間隔(遷移点と2mm変位点)の両端で荷重値と一致することが要求されるが、傾きは2mm変位でフィッティングされた値に一致することとなる。二次補間曲線は自動的に遷移点における崩壊曲線の傾きを与え、(遷移点における崩壊応答の負の傾きによって示される)ハードオイルキャンニングが発生したか否かを判定する。
【0053】
安定した応答は、ゼロから遷移点まで単に二次曲線であると仮定される。曲線は、原点を通過しなければならず、荷重の値は式[5]による遷移点に固定されているため、一つの自由パラメータのみが決定されないままである。これは、原点における曲線の傾きである。これは、式[1]又は[6]に類似した回帰式によって決定される。
【数8】
このフィッティングされた傾きは、式[7]で使用されるs値であり、オイルキャンニングなしの場合の遷移点でのたわみを制限する。
【0054】
0.1mmのデントに関する荷重での耐デント性の単一の性能測定が選択された。耐デント性の予測モデルを決定するための手順は、以前に本発明者らによって発表されたが、そのハイライトが完全を期すために本明細書に含まれている。予測モデルには、5つの因子が含まれていた。それらは、材料(離散変数)、厚さ(t)、スタンピング中に付与される有効塑性ひずみ
【数9】
、正面曲率半径R1、及び側面曲率半径R2である。材料は別として、他のすべての変数は、連続的であり、同時に応答曲面設計に組み込まれている。応答曲面モデルは、直交多項式で用いられる直交項の和として構成されており、次の形式の式によって特徴づけられる。
【数10】
【0055】
ここで、パラメータk、l、m及びnは、k≦2、l≦2、m≦2、n≦2、k+l+m+n≦2の制約を有する0〜2の整数である。これらの制約は、すべての因子に対して線形及び二次の依存のみを含むことに相当する。k、l、m、n、又はそれらいずれかの組み合わせのゼロ値は許容されている。これらは、対応する因子が項に含まれていない場合に相当する。定数項は、k=l=m=n=0とすることによって上述の回帰式に含まれる。式(1)のYが、従属変数である0.1mmデント深さの荷重である。
【0056】
図8Aは、図5Bに示すように、半球圧子33bを用いてデントの形成が実行される、自動車/鋼鉄パートナーシップ手順を使ったデント試験に使用される試験パネル60を示している。試験パネルは、1%×1%及び2.5%×2.5%の均衡のとれた二軸予ひずみを生成するために、完全な荷重状態下で、5080mmのポンチ半径を用いて(図8(B)に示すように)形成された。保持機構は、概して64で示されている。図9A、9Bは、1%、2.5%二軸延伸レベルの多数の材料に対する、FEAを用いたデント試験の相関関係を示している。比較で示されるように、耐デント性のためのFEA法はよく相関する。
【0057】
スナップスルー座屈の荷重たわみ挙動を活用するために、上述した数学的手順と組み合わせて、本明細書中に記載されたFEA手順を使用して、スナップスルー座屈の予測モデルが作成された。耐デント性の予測モデルは、ドアパネルに対する以前の研究と類似する、DDS、BH210に対して作成された。予測モデルを組み合わせることで、LabVIEW(登録商標)を用いたユーザーインターフェイスが作成された。LabVIEW(登録商標)はナショナルインスツルメンツの製品であり、プログラミングに使用することができるGUIツールを各種取り揃えている。コードは、任意のデスクトップ上で独立して実行することができる、スタンドアローンの実行可能ファイルを作成するためにコンパイルされうる。図10は、概して70として示される、開発されたインターフェイスを示している。
【0058】
インタフェースは、ダイヤルやスライダなどの、ユーザが、設計意図の変数、すなわち、正面半径R1、側面半径R2、厚さ(t)、ボウ間の長さL2、の値を入力することができる、動的制御を含む。インタフェースは、また、メジャー及びマイナーひずみを用いたスタンピング効果を含み、荷重たわみ挙動、オイルキャンニングの荷重、デントの深さ0.1mmの荷重を得る。ユーザーは、ローカルコンピュータに結果を保存して、短時間で多数の設計状況評価を行うことができる。一方、従来の分析アプローチを用いると、一つの設計オプションに対して前処理、分析、後処理を含む、オイルキャンニング及びデント性の分析の両方を決定するのに数日かかることがある。両方の要件を満たす最適化された解に到達するために多くのオプションを評価するのには、かなりの時間がかかることがある。このため、予測ツールを利用することにより、ユーザーははるかに短い時間枠内での分析を行うことが可能であり、生産性を高め、完全な構造モデルが利用できない場合に、設計プロセスの初期段階で詳細な情報に基づいた意思決定を可能にする。
【0059】
FEAと予測モデルの相関に関して、相関の第1のステップは、いくつかの特定の幾何学的形状のRAPモデルのFEA結果と予測モデルの結果を比較することである。図11Aは、FEA予測を用いて出力された荷重たわみ挙動を示し、図11Bは、R1、R2、厚さの値の一つのセットに対する予測モデル、及び、L2としてボウ間の長さの異なる値を示している。図11A、11Bのグラフの比較は、予測モデルがFEA予測に十分匹敵することを示している。
【0060】
相関関係の第1段階に続いて、次の段階は、ルーフ構造のフルパネルFEA(Full Panel FEA)との予測モデル(predictive model)を相関させることだった。図12、13は、フルパネルFEAと予測モデルの両方について、2つの異なるパネルに加えられた荷重に基づいた荷重たわみ挙動の比較を示す。主にルーフパネルの中央に当てはまる、一定の曲率の領域として理想化された条件にモデルを適用した場合、相関はFEA予測と非常に良好であり、合理的である。曲率に有意な突然の変化の領域が存在する場合、又は、荷重位置がルーフレール又はボウに近い場合、予測が成功する可能性が低い。
【0061】
従って、FEA、DOEと数学的曲線フィッティングの組み合わせを用いて、耐スナップスルー座屈性、耐デント性の予測モデルが作成される。耐スナップスルー座屈性のモデルは、正面曲率半径R1、側面曲率半径R2、厚さ(t)、及びルーフはり間の支持されていない長さ(L2)に基づいて、荷重たわみ曲線をもたらす。0.55mmのルーフパネル厚さであっても、ルーフボウの適切な配置によりスナップスルー座屈を回避することができることが見出された。ルーフパネルにおける耐デント性の結果は、ドアパネルのための以前の結果と一致していた。フルパネルFEAとの予測モデルの相関は、良好な相関を示している。
【0062】
開発された予測モデルは、自動車のルーフパネルのオイルキャンニング及び耐デント性を予測するために、ウェブサイトにインストールされているインタラクティブなインターフェースを用いて利用されうる。結果は、開発の初期段階において、自動車メーカーに設計ガイダンスを提供するために使用されうる。ツールは、自動車の設計者に、効果的に「もしも(whatif)」の状況を決定し、専用のFEAの時間の長さとは対照的に、瞬く間にリアルタイムで結果を得る能力を提供する。予測モデルでかなりの節約が実現できると考えられる。
【0063】
本発明は、これらの実施形態を具体的に参照して教示されているが、当業者は、変更が本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細においてなされ得ることを認識するであろう。説明された実施形態は、すべての点において単なる例示であり、限定されるものではない。このように、本発明の範囲は、明細書によってというよりは、以下の特許請求の範囲によって示されている。
【0064】
本出願は、2012年4月9日に出願された米国特許出願番号13/442,166の利益を主張する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13