特許第6238964号(P6238964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238964
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】目にしみない乳幼児用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20171120BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20171120BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20171120BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20171120BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/60
   A61K8/73
   A61Q19/10
   C11D3/20
   C11D1/68
   C11D3/48
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-509059(P2015-509059)
(86)(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公表番号】特表2015-521165(P2015-521165A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】US2013037576
(87)【国際公開番号】WO2013163074
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/636,984
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/787,739
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514268718
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】セレン,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー,パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ミロスラヴ,マイセン
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02366376(EP,A1)
【文献】 特開2003−055128(JP,A)
【文献】 特開2003−286130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/68
C11D 3/20
C11D 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
)5〜30質量%のポリグリセリン部分エステル、その際、該部分エステルが、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10、カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−4、ラウリン酸ポリグリセリル−5、ラウリン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−10、ヤシ脂肪酸ポリグリセリル−10、ミリスチン酸ポリグリセリル−10、オレイン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ポリグリセリル−10及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される
)20〜60質量%のアルキルポリグルコシド;
c)任意に、0.5〜4質量%の防腐剤
d)任意に、pH調整化合物、及び
e)疎水性皮膚軟化剤、その際、該疎水性皮膚軟化剤は、成分a)とは異なるグリセリン脂肪酸エステルであり、かつモノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びそれら混合物からなる群から選択されるグリセリンモノエステルである;
を含む洗浄剤濃縮物であって、該濃縮物は水中で非イオン界面活性剤としての成分a)および成分b)が40質量%を超えている安定な分散物であり、全ての質量%は濃縮物の全質量に基づくものである、洗浄剤濃縮物。
【請求項2】
成分a)の部分エステルが、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群から選択される、請求項1記載の洗浄剤濃縮物。
【請求項3】
成分b)のアルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが1〜4の平均重合度を有する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の洗浄剤濃縮物。
【請求項4】
請求項1に記載の洗浄剤濃縮物を希釈して個人用洗浄剤を提供することを含む、個人用洗浄剤の目への刺激性を減少させる方法。
【請求項5】
前記個人用洗浄剤が、a)ポリグリセリン部分エステル及びb)ポリグルコシド以外にさらなる界面活性剤を含まない、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記部分エステルが、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群から選択される、請求項又はのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
記アルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが1〜4の平均重合度を有する、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
b)がデシルグルコシドである、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
目にしみない、シャンプー又は肌洗浄剤を製造するための、請求項1に記載の洗浄剤濃縮物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願に係る請求項は、2012年4月23日に提出した米国仮出願第61/636,984号及び2013年3月13日に提出した米国仮出願第61/787,739号に基づく優先権を享受するものであり、該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
本願は、濃縮形態での界面活性剤の独特な組合せに関する。詳細には、アルキルポリグルコシド及びポリグリセリン脂肪酸エステルを特定の組合せで併用すると洗浄剤濃縮物を生じ、これを希釈することにより目にしみない又は低刺激性の洗浄剤が形成される。
【背景技術】
【0003】
乳幼児用スキンケア及び洗面用品は、乳幼児ケア市場における重要部である。安全性は、この市場において販売される製品の必要不可欠な条件である。特に、乳幼児及び若年の小児用洗浄剤製品は、使用時にある一定の非刺激性基準を満たす必要がある。例えば、少量の製剤が目に触れたとき、シャンプー及び肌洗浄剤は「目にしみず」、無刺痛であり得る。もちろん、乳幼児の肌は成人の肌と比較していくぶんより敏感で繊細であり、マイルドで非刺激性であるがそれでも洗浄効果をもたらす製剤のみに触れる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市場には、「目にしみない」要件を満たした製品が数多くある。しかしながら、それらの多くは好ましくない付加成分を含んでいる。例えば、多くの製品は、硫酸塩界面活性剤、エチレンオキシド及び/又はポリエチレングリコール界面活性剤を含んでいる。
【0005】
製造業者の個々の製剤に単に加えるだけで、硫酸塩、エチレンオキシド及び/又はポリエチレングリコール界面活性剤といった成分無しで、希釈により洗浄効果を得る「目にしみない」濃縮物(水が70%未満)を提供できることは大変有益であろう。
【0006】
さらに、透明かつ低粘度な界面活性剤の高濃縮物ブレンドを提供することは、非常に有利となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがC8−C22、特に
8−C10部分エステルであるポリグリセリン部分エステル;
b)約20〜約60質量%、好ましくは約25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;及び
d)任意に、pH調整化合物、
を含み、70質量%未満、好ましくは60質量%未満、より好ましくは50質量%未満、特には45質量%未満の水を含み、質量%は濃縮物の全質量に基づくものである、洗浄剤濃縮物、好ましくは透明な濃縮物。
【0008】
上記濃縮物は希釈するとシャンプー又は肌洗浄剤を形成し、標準的な眼科試験によって目にしみないと評価される製品となる。
【0009】
この高濃縮界面活性剤ブレンドの第一の利点のひとつは、透明で低粘度なことである。ここで高濃縮とは、水が60%未満、好ましくは50質量%未満、最も好ましくは45質量%未満であることを意味する。これより、40%、50%又は65%固体より高い固体濃度となる。固体とは、水以外の任意の成分のことを言う。
【0010】
さらに、上記濃縮物は、乳幼児又は小児、又は敏感肌の成人用洗浄剤としての使用に適した非刺激性界面活性剤の固有のブレンドである。
【0011】
従って、本発明は、
a)少なくとも1〜約8質量%、好ましくは約1.5〜約5質量%のポリグリセロール部分エステル、及び
b)約8〜約20質量%、好ましくは約10〜約16質量%のアルキルポリグルコシドにより特定される非イオン性界面活性剤を個人用洗浄剤に添加することにより、個人用洗浄剤、特にシャンプーの目への刺激性を減少させる方法であって、質量%は個人用洗浄剤の全質量に基づくものであり、部分エステルがC8−C22である、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的の「濃縮物」とは、非イオン性界面活性剤の濃度が、濃縮物の全質量に基づき、30、40、50又は55質量%を超えている分散物であって、水中での高濃度で安定な界面活性剤の分散物を意味する。
【0013】
上記濃縮物は比較的低粘度で、製剤中で使用しやすい。
【0014】
上記濃縮物の粘度は変化するが10,000cpsを超えてはならない。より好ましくは、濃縮物の粘度が5,000cps未満であり、より好ましくは2500cps未満であり、最も好ましくは1200cps未満である。よって、濃縮物の粘度は、約1200cpsから約10,000cpsまで変化するであろう。
【0015】
粘度は、Brookfield RVT スピンドル#4を用いて、20RPMで測定する。
【0016】
上記濃縮物の希釈により、乳幼児への使用に充分マイルドな、目にしみない又は目にしみにくい洗浄剤系が生じる。一例として、この濃縮物は硫酸塩を含まない。一例として、この乳幼児洗浄剤系は硫酸塩を含まない。一例として、この濃縮物はEO/POを含まない。一例として、この乳幼児洗浄剤系はエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド(EO/PO)を含まない。
【0017】
それゆえに、好ましくは、上記濃縮物は硫酸塩を含まない。最も好ましくは、この濃縮物は硫酸塩及びEO/POを含まず、特に、硫酸塩、EO/PO及びポリエチレングリコール(PEG)を含まない。
【0018】
他の典型的な成分を上記濃縮物に加えてもよいが、この濃縮物は成分a)及びb)の両方を含む。
【0019】
「個人用洗浄剤」という句が用いられたとき、上記「濃縮物」ではなく、最終的なシャンプー又は身体洗浄剤を意味する。従って、a)及びb)の質量%は、最終的な個人用洗浄剤において必然的により小さくなるであろう。例えば、成分a)は通常約1〜約8質量%、好ましくは約1.5〜約5質量%のポリグリセロール部分エステルであり、約8〜約20質量%、好ましくは約10〜約16質量%である。
【0020】
上記「濃縮物」でのa)の質量%は約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであり、b)の質量%は約20〜約60質量%、好ましくは約25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシドである。
【0021】
ポリグリセリン部分エステル

ポリグリセロール部分エステルは、ポリグリセロール又は単一のグリセロールを、6〜22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐脂肪酸と反応させることにより得られる。有利に用いられるポリグリセロール混合物は、2〜12、好ましくは2〜10の平均縮合度を有する。
【0022】
ポリグリロール混合物のエステル化度は、縮合したグリセロールのヒドロキシ基に基づき、例えば5〜70%であり、好ましくは10〜30%である。
【0023】
特に興味深いのは、C8−C18ポリグリセリルモノエステルである。例えば、カプリル
酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10、カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−4、ラウリン酸ポリグリセリル−5、ラウリン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−10、ヤシ脂肪酸ポリグリセリル−10、ミリスチン酸ポリグリセリル−10、オレイン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ポリグリセリル−10及びそれらの2つ以上の組合せである。
【0024】
特に興味深いのは、C8−C18ポリグリセリル部分エステルである。例えば、カプリル
酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10、カプリン酸ポリグリセリル−4、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10である。
【0025】
アルキルポリグルコシド

アルキルポリグルコシド(APGs)は当業者に周知であり、BASF SEから商品名Plantaren(登録商標)で購入できる。
【0026】
アルキルポリグルコシド及びアルキルグルコシドという語は、置き換え可能である。
【0027】
アルキルポリグリコシドは、グルコース及び脂肪族アルコールの反応で形成する。アルキルポリグリコシド化合物は、疎水部(炭素鎖)及び親水部(グリコシドユニット又は基)を有する。アルキルポリグリコシドを記述する場合、平均重合度(DP)が言及される。例えば、アルキルポリグリコシド又はアルキルグリコシドにおいて、DPが約1.4の化合物は、それぞれのアルキル基に対し平均して1.4ユニットのグルコースを有する。アルキルポリグルコシド又はアルキルグルコシドは通常、分子のグルコースユニットの量を変化させた混合物である。1.4DPは、それぞれの分子が1.4ユニットのグルコースを有することを意味するわけではない、ということがわかる。
【0028】
アルキルポリグルコシドは、次の一般式:R1−−O−−(R2O)b−(Z)aによって表すことができ、ここで、R1は約6〜約30個の炭素原子を有する1価の有機基であり
、R2は2〜4個の炭素原子を有する2価のアルキレン基であり、Zは5又は6個の炭素
原子を有するサッカリド残基であり、bは0〜約12の数であり、aは1〜6の数である。
【0029】
さらに適したアルキルポリグルコシドとして、アルキル基が8〜10個の炭素原子を含み1.7の平均DPを有するGLUCOPON(登録商標)225DK;アルキル基が12〜16個の炭素原子を有し1.6の平均DPを有するGLUCOPON(登録商標)625UP;アルキル基が9〜11個の炭素原子を有し1.5の平均DPを有するAPG(登録商標)325N;アルキル基が12〜16個の炭素原子を有し1.4の平均DPを有するGLUCOPON(登録商標)600UP;アルキル基が8〜16個の炭素原子を有し1.5の平均DPを有するPLANTAREN2000(登録商標);アルキル基が12〜16個の炭素原子を有し1.6の平均DPを有するPLANTAREN1300(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
アルキルポリグルコシドは通常、酸触媒存在下で糖を高級アルコールと反応させる、又は、糖を低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)と反応させることにより低級アルキルグリコシドを得たのち、高級アルコールと反応させることにより形成する。高級アルコールは一般的に、式R1O(R2O)xHを有し、こ
こでR1は8〜22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基又は直鎖もしくは
分岐アルケニル基を表し、R2は2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、x
は0〜10の平均値である。
【0031】
高級アルコールの非限定的具体例は、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、メチルペンタノール、メチルヘキサノール、メチルヘプタノール、メチルオクタノール、メチルデカノール、メチルウンデカノール、メチルトリデカノール、メチルヘプタデカノール、エチルヘキサノール、エチルオクタノール、エチルデカノール、エチルドデカノール、2−ヘプタノール、2−ノナノール、2−ウンデカノール、2−トリデカノール、2−ペンタデカノール、2−ヘプタデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルオクタノール、2−オクチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール及び/又は2−オクチルデカノールなどの直鎖又は分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール及びオクタデセノールなどのアルケノールである。これらのアルコールは、単独で、又はこれら2つ以上の混合物で使うことができる。
【0032】
好ましいアルキルグルコシドは、1分子あたり約1〜約6、好ましくは1〜4のグルコース残基を含む。好ましいグルコシドは、デシルアルコールとグルコースポリマー又は単一のグルコース残基の縮合生成物であり、BASF Corporation of Florham Park,NJから商品名Plantaren(登録商標)で市販されている、デシルグルコシドである。他の好ましい例として、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド及びそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
疎水性皮膚軟化剤

有利には、上記濃縮物は、成分a)、b)、c)及びd)に加えて、成分e)の疎水性皮膚軟化剤も含んでよい。
【0034】
興味のある疎水性皮膚軟化剤は、脂肪族(カルボン)酸のエステルである。脂肪酸部は、およそC12-30の炭素鎖長を有してよい。C12-30カルボン酸という語は、純粋な酸又はそれらの混合物を含むことを意味する。炭素鎖は直鎖又は分岐でよく;飽和又は不飽和(すなわち、1つ以上の2重結合を有する)でよい。脂肪酸成分は、1つ以上の、例えば2つの、ヒドロキシ基も含んでよい。これらの酸は、いわゆる脂肪酸、すなわち天然脂肪か
ら誘導される酸を含む。
【0035】
特に好ましい疎水性皮膚軟化剤は、脂肪酸及びグリセロールのエステルである。実施形態の1つでは、疎水性皮膚軟化剤はトリグリセリドであるが、特定の実施形態では、組成物はトリグリセリドを含まない。好ましい実施形態では、疎水性皮膚軟化剤は、直鎖、飽和C12-30モノ−もしくはジグリセリドなどの、C12-30モノ−もしくはジグリセリド又はそれらの混合物などの、モノ−もしくはジグリセリドである。このような混合物中のモノ−及び/又はジグリセリドの量は変化してよく、0〜100%でよい。
【0036】
好ましいのは、50%より多くのモノグリセリドを含む混合物、特に70%より多くの後者を含む混合物である。特に重要なのは、グリセロール及び脂肪酸のエステルが少なくとも80%、特に少なくとも90%、さらに特には少なくとも95%、なおさらには少なくとも99%のC12-30カルボン酸モノグリセリドである組成物である。
【0037】
実施形態の1つでは、ジグリセリドは2つの異なるカルボン酸を含む。これら混合のジグリセリドは、(モノ−C12-30カルボン酸)(モノ−オレイン酸)グリセリドも含む。
その例は、(モノ−パルミトレイン酸)(モノ−オレイン酸)グリセリドである。
【0038】
好ましくは、カルボン酸は約16〜約22個の炭素原子、より好ましくは約16〜約20個の炭素原子、さらにより好ましくは約16〜約18個の炭素原子を有する。特に興味があるのは、18個の炭素原子を含むものである。特に好ましいグリセロール及び脂肪酸のエステルは、モノ−又はジオレイン酸グリセリルである。特に好ましい優れた低刺激性及び皮膚感触を有するグリセロール及び脂肪酸のエステルは、BASF Corporation,Florham Park,NJから商品名LAMESOFT PO 65で市販され、C8−C18ココグルコシド及び水と混合した約31%のモノオレイン酸グリセ
ロールの混合物である、モノオレイン酸グリセリル(約3.8のHLB値)である。LAMESOFT PO 65は、唇層増強剤と呼ばれることもある。
【0039】
上記疎水性皮膚軟化剤は、成分a)とは異なる。例えば、この疎水性皮膚軟化剤は通常、グリセロールの>=C16脂肪酸エステルである。
【0040】
本発明の組成物は、脂肪酸部分に12〜22個のC原子を有する、少なくとも1つのモノグリセリドを含む。脂肪酸部分は、飽和又は1〜3のエチレン結合を有する不飽和であってよい。好ましいモノグリセリドは脂肪酸部位に14〜18個のC原子を有し、最も好ましくは16〜18個のC原子を有する。本発明の組成物に適した、ふさわしいモノグリセリドの非限定例は、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びそれらの混合物である。好ましいのは、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びそれらの混合物である。
【0041】
本発明の洗浄剤濃縮物におけるモノグリセリドの濃度は、全濃度を基にして計算した質量で、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2.5質量%、最も好ましくは0.25〜2質量%である。
【0042】
ココグリセリドなどの追加の皮膚軟化剤は、個人用洗浄剤(シャンプー又は身体洗浄剤)に優れた付加を行う。このような製品は、販売名Myritol(登録商標)331で、BASF Corporation,Florham Park,NJから購入できる。個人用洗浄剤中の通常量は、個人用洗浄剤の約.5〜約3質量%で変化してよい。
【0043】
従って、請求する洗浄剤濃縮物、
好ましくは透明な濃縮物は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがC8−C22、特
にはC8−C10部分エステルであるポリグリセリン部分エステル;
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;及び
d)任意に、pH調整化合物、
を含み、この濃縮物は70質量%未満、好ましくは60質量%未満、より好ましくは50質量%未満、特には45質量%未満の水を含み、質量%は濃縮物の全質量に基づく。
【0044】
上記洗浄剤濃縮物の好ましい実施形態は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10から選択されるポリグリセリン部分エステル。
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;及び
d)任意に、pH調整化合物、
を含み、この濃縮物は70質量%未満、好ましくは60質量%未満、より好ましくは50質量%未満、特には45質量%未満の水を含み、質量%は濃縮物の全質量に基づく。
【0045】
上記洗浄剤濃縮物の2番目に好ましい実施形態は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10から選択されるポリグリセリン部分エステル。
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシドであって、アルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが約1〜4、最も好ましくは1〜3、特には1
〜2の平均重合度を有するアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;及び
d)任意に、pH調整化合物、
を含む。
【0046】
上記洗浄剤濃縮物の3番目に好ましい実施形態は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10から選択されるポリグリセリン部分エステル;
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシドであって、アルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが約1〜4、最も好ましくは1〜3、特には1
〜2の平均重合度を有するアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;
d)任意に、pH調整化合物;及び
e)成分a)と異なるグリセロール脂肪酸エステルを含む、疎水性皮膚軟化剤、
を含む。
【0047】
上記洗浄剤濃縮物のさらに好ましい実施形態は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10から選択されるポリグリセリン部分エステル;
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシドであって、アルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが約1〜4、最も好ましくは1〜3、特には1
〜2の平均重合度を有するアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;
d)任意に、pH調整化合物;及び
e)約0.01〜5質量%の、グリセロールの>=C16脂肪酸エステルを含む疎水性皮膚軟化剤であって、e)が成分a)と異なる疎水性皮膚軟化剤、
を含む。
【0048】
最も好ましい洗浄剤濃縮物は、
a)約5〜約30質量%、好ましくは約10〜約25質量%、最も好ましくは約12〜約18質量%のポリグリセリン部分エステルであって、部分エステルがカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−4、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10及びカプリン酸ポリグリセリル−4からなる群、特にカプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10から選択されるポリグリセリン部分エステル;
b)約20〜約60質量%、好ましくは25〜約50質量%、最も好ましくは約28〜約42質量%のアルキルポリグルコシドであって、アルキルポリグルコシドのアルキルがC8−C16アルキル基であり、グルコシドが約1〜4、最も好ましくは1〜3、特には1
〜2の平均重合度を有するアルキルポリグルコシド;
c)任意に、約0.5〜約4質量%の防腐剤;
d)任意に、pH調整化合物;及び
e)約0.01〜5質量%の、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びそれらの混合物からなる群、好ましくはステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、モノパルミトレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びそれらの混合物からなる群、最も好ましくはモノオレイン酸グリセリル、から選択されるモノグリセリドである疎水性皮膚軟化剤、
を含む。
【0049】
前述のとおり本発明は、
a)少なくとも1〜約8質量%、好ましくは約1.5〜約6質量%のポリグリセロール部分エステル、及び
b)約8〜約20質量%、好ましくは約10〜約16質量%のアルキルポリグルコシドにより特定される非イオン性界面活性剤を個人用洗浄剤に添加することにより、個人用洗浄剤、特にシャンプーの目への刺激性を減少させる方法であって、質量%は個人用洗浄剤の全質量に基づくものであり、該部分エステルがC8−C22である、方法にも関する。
【0050】
上記方法の好ましい実施形態は、さらなる非イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤を含まない、個人用洗浄剤の最終製剤である。
【0051】
使用

上記濃縮物を希釈するとシャンプー又は肌洗浄剤を形成するために使用でき、標準的な眼科試験によって目にしみないと評価される製品となる。製剤されたシャンプー又は肌洗浄剤は(この濃縮物を添加後)、一般的にゲル、液体、ペースト又は固体といった任意の形態でありうる。この濃縮物は希釈して、洗浄に使用するためのふき取り用布又は不織布を湿らせることができる。
【0052】
上記濃縮物は、ペットの洗浄、顔洗浄剤、敏感肌用製剤等にも適用できる。この濃縮物は、敏感肌の成人用としてはもちろん、小児及び乳幼児製品の製剤に適している。
【実施例】
【0053】
濃縮物製剤
実施例1
US−00842−125
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2
US−00842−104
【0056】
【表2】
【0057】
乳幼児用洗浄剤中の希釈された濃縮物

約18〜20%の上記濃縮物(実施例1)を約78〜80質量%の水に加え、乳幼児用洗浄剤を製造した。
実施例3
【0058】
【表3】
【0059】
シャンプー剤は、以下に記載される標準的な方法により、眼刺激性の検査を受けた。
【0060】
健常被験者を、滅菌水中の上記製品の10%溶液で検査した。10%溶液をボランティアの顔(わずかに後ろに寄りかかっている)の正面上に注いだ。被験者は検査中、目が確実に溶液と接するように目を開いた状態にした。実験中、目視可能な涙を記録した。乾燥後、ボランティアに対し、刺激、焼けるような感覚、かゆみ、及び/又は涙といった不快感に関する体験について質問した。続いて監督眼科医によって、視覚的及び眼底細隙灯顕微鏡検査により、目及び一般的な目の範囲の刺激の兆候を検査した。
【0061】
結果

涙という形態で検査製品に対する反応を示した被験者はおらず、そして、刺激、焼けるような感覚又はかゆみという不快感は報告されず、故に検査製品US−00813−20
7B及びUS−00813−207Cの刺激性効果は示唆されなかった。これは眼科的検査により確かめられた。検査後、瞼への刺激の兆候が検出された被験者もいなかった。
【0062】
製剤A、B及びCは全て目にしみなかった。しかしながら、B及びCのみが刺激性を示さなかった。A製剤と、B及びC製剤の相違点はB及びCがいずれもポリグリセロール部分エステル(カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10)を含むことであり、これが刺激性の保護をもたらすことがわかった。