【実施例】
【0035】
I.実験材料および方法
1.実験材料
ケトプロフェンはBoehinger−Ingelheimから入手した。
【0036】
他のすべての材料は様々な化学物質供給会社から入手した。
【0037】
2.クリームアッセイおよび透過試験についてのHPLC分析方法
クロマトグラフィ条件:
無勾配逆相HPLCシステムを用いてケトプロフェン製剤の安定性および光安定性を測定した。HPLC装置はAgilent 1100であった。WatersからのNovaPak(登録商標)4.6×300mm C18カラムを使用した。移動相は、塩酸でpH2.3に調整したギ酸緩衝液(0.025M)とアセトニトリルの混合物(50:50)から成った。流量は1.0ml/分であった。検出は220nmと254nmで実施した。注入量は25μlに設定した。これらの条件下で、ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの保持時間はそれぞれ約5分および13分であった。ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの検量線の濃度範囲は、それぞれ7−210μg/mlおよび120−480μg/mlであった。試料の実行時間は20分であった。
【0038】
試料の調製:
安定性試験のために、それぞれ5%および10%のケトプロフェンを含有する組成物についての試料約75または50mgを25mlメスフラスコに直接量り取った。移動相約20mlを各フラスコに添加し、この後3分間ボルテックスして、移動相を容積まで満たし、十分に振とうした。
【0039】
光安定性試験に関しては、試料約150mgを磁性るつぼに量り取り、容器の底部全体に均一に広げた。るつぼを、1分当たり7から8回通過の速度で移動するコンベアベルト上で5分間、UV硬化システム(Fusion UV Curing LC6B with H Lamp,Fusion Systems,Rockville,MD)に通した。UV光の強度はデジタル照度計(YF−1065F型)を用いて測定し、この値は一貫して250から300フートキャンドルにわたった。比較すると、実験室における光の強度はわずかに2から3フートキャンドルであった。次にるつぼ中の組成物を移動相で150mlビーカー中に5回洗い流し入れ、50mlメスフラスコに移して3回洗浄した。フラスコを3分間ボルテックスし、移動相を容積まで満たして、十分に振とうした。希釈した試料を10分間遠心分離した後、分析のためにHPLCバイアルに満たした。
【0040】
3.ケトプロフェンの透過を評価するための方法
デルマトームで採皮した死体皮膚(Science Care,Aurora,CO)を、さらなる処理を行わずに使用した。ブタ皮膚(Lampire Biological Laboratories,Pipersville,PA)をデルマトームで標準的な厚さに採皮した。改変フランツセルを用いて37℃で約1.3cm
2の露出皮膚膜表面積で透過試験を実施し、2、4および22時間目に試料を採取して、HPLCによって検定した。各々のフランツセルに約100mgのクリーム試料の1つの小さなアリコートを添加し、ガラス棒を用いて皮膚膜表面に軽く広げて、水分の喪失を防ぐためにカバーディスクで覆った。レセプタ相はpH7.4のリン酸緩衝液を含んだ。
【0041】
4.ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの光分解を評価するための方法
調製物を超高強度UV光源(300ルクスまで)に5分間または10分間暴露した。この暴露レベルでヒト皮膚は容易に熱傷する。暴露したクリームのアリコートを、前述したHPLC手順を用いてケトプロフェンおよびオキシベンゾンに関して検定した。
【0042】
5.凍結/融解安定性を評価するための方法
試料を0℃で24時間保存し、次いで25℃で24時間解凍した。試料を各サイクル後に相分離に関して観測した。各々の試料について、5回のサイクルを評価した。
【0043】
製剤研究試験−ケトプロフェンの透過
1.許容される安定化ポリマー増粘剤を見出すためおよび凍結/融解の失敗を最小限に抑えるこれらのポリマーの最適レベルを見出すために一連の試験を実施した。これらの試験を以下に示す。
【0044】
a.選択したポリマー:Carbopol(登録商標)980、Carbopol(登録商標)Ultrez 10およびCarbopol(登録商標)Ultrez 20ならびにこれらの組合せの、ヒト死体皮膚を通してのケトプロフェンの透過への影響。
【0045】
【表2】
【0046】
前記調製物はすべて同様の透過を示した。観測結果を
図1および2に示す。
【0047】
b.1.75重量%のレベルのCarbopol(登録商標)Ultrez 10単独の、ヒト死体皮膚を通してのケトプロフェンの透過への影響。
【0048】
【表3】
【0049】
1.75%のレベルのUltrez 10単独を含有する前記組成物は、4時間後および22時間後に改善された透過を示した。観測結果を
図3に示す。
【0050】
c.ブタ皮膚を通してのケトプロフェンの透過に関するCarbopol(登録商標)Ultrez 10とCarbopol(登録商標)980の組合せの評価。
【0051】
【表4】
【0052】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10とCarbopol(登録商標)980の組合せは、対照製剤と比較して改善された透過を示した。2つのポリマーの比率はケトプロフェン透過の最適化のために重要である。観測結果を
図4に示す。
【0053】
d.1%/0.75%のCarbopol(登録商標)980/Carbopol(登録商標)Ultrez 10比を用いたより大きな(kg)バッチからのケトプロフェン透過。
【0054】
【表5】
【0055】
10%クリームは、すべての時点でより高いケトプロフェン透過を有していた。観測結果を
図5に示す。
【0056】
e.ケトプロフェン透過へのCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980比の影響の評価(100グラムバッチ)。
【0057】
【表6】
【0058】
すべての調製物に関して良好な透過が達成された。データは、比較的高い量のCarbopol(登録商標)Ultrez 10が比較的高いケトプロフェン透過をもたらすことを示す。観測結果を
図6に示す。
【0059】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10組成物の美的外観も、より高い量のポリマーの存在によって改善する。
【0060】
f.1.25%/0.5%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980比で作製した1kgバッチからのケトプロフェン透過。
【0061】
【表7】
【0062】
透過結果を
図7に示す。
【0063】
g.ブタ皮膚を通してのケトプロフェンの透過への、Carbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10の比率の影響の評価。
【0064】
【表8】
【0065】
透過結果を
図8に示す。結果は、架橋ポリアクリル酸共重合体と架橋ポリアクリル酸ホモポリマーの組合せが、ホモポリマーだけを増粘剤とした場合と比較して改善されたケトプロフェンの透過を提供することを指し示す。
【0066】
II.凍結/融解安定性
1.種々の比率のCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する組成物に関して凍結/融解安定性試験を実施した。
【0067】
a.Carbopol(登録商標)980だけを含有する組成物における凍結−融解結果。
【0068】
【表9】
【0069】
結果を
図9に示す。3回の凍結/融解サイクル後、すべての調製物が多少の相分離を示した。
【0070】
b.5重量%のケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980を含有する組成物ならびに10%ケトプロフェンを含有する1つの製剤の凍結−融解結果。
【0071】
【表10】
【0072】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10およびCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10の組合せは、相分離に対して多少の抵抗性を示した。025%Carbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する10%ケトプロフェン組成物に関しては、3回のサイクル後に相分離が観測結果を
図10に示す。
【0073】
c.10重量%のケトプロフェンおよび1.75%のCarbopol(登録商標)980または1.5%のCarbopol(登録商標)980プラス0.25%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10のいずれかを含有する製剤ならびに0%ケトプロフェンを含有する1つの製剤(対照組成)の凍結−融解結果。
【0074】
【表11】
【0075】
対照組成物は5回のサイクル後に漏出を示さなかった。Carbopol(登録商標)Ultrez 10単独組成物およびCarbopol(登録商標)980単独組成物は2回のサイクル後に不成功であった。Carbopol(登録商標)Ultrez 10単独組成物はCarbopol(登録商標)980単独組成物よりも良好な外観を有していた。結果を
図11に示す。
【0076】
d.10重量%ケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する製剤の凍結−融解結果。
【0077】
【表12】
【0078】
比較的低い共重合体/ホモポリマー重量比を有する組成物はより高い相分離を示した。結果を
図12に示す。
【0079】
e.10重量%ケトプロフェン、Carbopol(登録商標)980およびCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有するが、Carbopol(登録商標)980含量がより低い組成物の凍結−融解結果。
【0080】
【表13】
【0081】
5回の凍結/融解サイクル後、2.5:1の共重合体/ホモポリマー重量比では相分離を認めなかった。結果を
図13に示す。
【0082】
f.10重量%ケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)980/Carbopol(登録商標)Ultrez 10を含有するが、アルコールの量がより低い組成物の凍結−融解結果。
【0083】
【表14】
【0084】
より高いポリマーレベルおよび様々なアルコールレベルは、通常の室温条件で美学的には好ましく見えるが、凍結/融解試験で相分離を示した。この群の最も凍結/融解抵抗性の製剤は、1.25%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10、0.75%のCarbopol(登録商標)980および15%のエタノールを含有した。結果を
図14に示す。
【0085】
III.組成物の安定性
1.3か月の安定性−5重量%のケトプロフェン−1kgバッチ
【0086】
【表15】
【0087】
オキシベンゾンを含まないこの組成物は、40℃で3か月まで物理的および化学的に安定である;しかし、光安定性
ではない。
【0088】
2.3か月の安定性−10重量%のケトプロフェン−kgバッチ
【0089】
【表16】
【0090】
オキシベンゾンおよび抗酸化剤を含まない、10%ケトプロフェンを含有するこの組成物は、40℃で3か月後に約8%のケトプロフェンの分解を示し、すべての時点で有意の光分解を示す。
【0091】
3.3か月の安定性−5%オキシベンゾンおよび2%BSAと5重量%のケトプロフェン
【0092】
【表17】
【0093】
この組成物は、25℃および40℃で3か月後に化学的に安定であった。40℃で保存した試料に関して光分解が見られたが、回収率は3か月後にまだ90%以上であった。
【0094】
4.3か月の安定性−5%オキシベンゾンおよび2%大豆タンパク質と5重量%のケトプロフェン
【0095】
【表18】
【0096】
調製物は、25℃および40℃で3か月後に化学的に安定であった。試料を40℃で保存した場合に光分解が見られたが、ケトプロフェン回収率は3か月後にまだ90%以上であった。
【0097】
前記組成物は、クリーム状の粘度を有する水中油型エマルションであり、1日用量当たり約500mgまでの量でケトプロフェンを提供するために投与した場合、片頭痛による疼痛を緩和するために有用である。
【0098】
本発明の組成物は、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、血管状態によって引き起こされる頭痛等のような頭痛に関連する痛みを治療するのに特に良好に適する。好ましくは、治療有効量の本発明のケトプロフェン含有組成物を、眼窩孔、三叉神経の耳介側頭枝の基部、大後頭神経の耳介側頭枝、耳介後部領域、鼻内三叉神経終末、鼻副交感神経終末に沿った部位、またはこれらの組合せに投与する。
【0099】
本発明の組成物はまた、関節痛、筋痛、末梢神経障害、変形性関節症疼痛、慢性腰痛、炎症性疼痛、整形外科的外傷による痛み、反射性交感神経性ジストロフィ(RSD)、末梢神経炎、線維筋痛症、糖尿病性神経障害等の治療にも良好に適する。
【0100】
本明細書および付属の特許請求の範囲で使用される「治療有効量」という用語は、疼痛を軽減するうえで治療的有用性を有するのに十分なケトプロフェンの量を提供する本発明の組成物の量を意味する。典型的にはこのような量は、各適用当たりケトプロフェン約100ミリグラムから約300ミリグラムの範囲内である。
【0101】
前記説明は例示を目的とするものであり、限定と解釈されるべきではない。本発明の精神および範囲内でさらなる他の変形が可能であり、当業者には容易に明らかである。