特許第6238991号(P6238991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238991
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】局所ケトプロフェン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61K31/192
   A61K9/107
   A61K47/32
   A61P29/00
   A61P25/06
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-534599(P2015-534599)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-531374(P2015-531374A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】US2013061403
(87)【国際公開番号】WO2014052313
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】61/706,163
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/826,706
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512159867
【氏名又は名称】アケリオス セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブユックティムキン,セルベット
(72)【発明者】
【氏名】ブユックティムキン,ナーディル
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ジェームズ・エル
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−155111(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/123136(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02804024(FR,A1)
【文献】 国際公開第2006/090833(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0228824(US,A1)
【文献】 Lubrizol Pharmaceutical Bulletin 21,2011年 5月31日,全文、特に第2頁
【文献】 Polimery w Medycynie,2009年,T.XXXIX,Nr4,p.39-44
【文献】 Journal of Dispersion Science and Techonology,2011年,Vol.32,p.380-388
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルションである局所組成物であって、重量ベースで
約0.5から約15パーセントのケトプロフェン、約0.01から約1パーセントのキレート剤、約0.15から約1.5パーセントの架橋ポリアクリル酸共重合体、約0.15から約1.5パーセントの架橋ポリアクリル酸ホモポリマー、約2.5から約6パーセントのオキシベンゾン、約0.25から約2.5パーセントの乳化剤、約5から約15パーセントの水混和性アルキレングリコール、約10から約30パーセントのC−Cアルカノール、約0.5から約2.5パーセントの化粧品防腐剤、約0.02から約2パーセントの抗酸化剤、約0.001から約0.1パーセントの皮膚軟化薬、該組成物のpH値を約4.5から約6の範囲内に維持するのに十分な量のpH調整剤、および残りは水
を含有する、局所組成物。
【請求項2】
水中油型エマルションが2000センチポアズから60000センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の局所組成物。
【請求項3】
水中油型エマルションである局所組成物であって、重量ベースで
約0.5パーセントから約10パーセントのケトプロフェン、約0.05パーセントのエチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩、約1.25パーセントの架橋ポリアクリル酸共重合体、約0.5パーセントの架橋ポリアクリル酸ホモポリマー、約5パーセントのオキシベンゾン、約0.5パーセントのPEG−40硬化ヒマシ油、約10パーセントのプロピレングリコール、約10パーセントの無水エタノール、約9パーセントのイソプロパノール、約1パーセントのベンジルアルコール、約0.05パーセントのビタミンE、約1パーセントのブチル化ヒドロキシトルエン、約3パーセントのミリスチン酸イソプロピル、約1.5パーセントのトリエタノールアミン、および残りは水
を含有する、局所組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の局所組成物であって、
約5パーセントのケトプロフェン、約0.05パーセントのエチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩、約1.25パーセントの架橋ポリアクリル酸共重合体、約0.5パーセントの架橋ポリアクリル酸ホモポリマー、約5パーセントのオキシベンゾン、約0.5パーセントのPEG−40硬化ヒマシ油、約10パーセントのプロピレングリコール、約10パーセントの無水エタノール、約9パーセントのイソプロパノール、約1パーセントのベンジルアルコール、約0.05パーセントのビタミンE、約1パーセントのブチル化ヒドロキシトルエン、約3パーセントのミリスチン酸イソプロピル、約1.5パーセントのトリエタノールアミン、および残りは水
を含有する、局所組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の局所組成物であって、
約0.5パーセントのケトプロフェン、約0.05パーセントのエチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩、約1.25パーセントの架橋ポリアクリル酸共重合体、約0.5パーセントの架橋ポリアクリル酸ホモポリマー、約5パーセントのオキシベンゾン、約0.5パーセントのPEG−40硬化ヒマシ油、約10パーセントのプロピレングリコール、約10パーセントの無水エタノール、約9パーセントのイソプロパノール、約1パーセントのベンジルアルコール、約0.05パーセントのビタミンE、約1パーセントのブチル化ヒドロキシトルエン、約3パーセントのミリスチン酸イソプロピル、約1.5パーセントのトリエタノールアミン、および残りは水
を含有する、局所組成物。
【請求項6】
疼痛を処置するための薬剤としての使用のための請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
薬剤が、1回適用当たり約500ミリグラムまでのケトプロフェンを含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、毎日の適用に適する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
片頭痛を処置するための薬剤としての使用のための請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物であって、薬剤が、片頭痛を患っている患者の前頭への適用向けである、組成物。
【請求項10】
組成物が、毎日の適用に適する、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、病的疼痛などの痛みの治療のため、ならびに片頭痛の痛みの治療のための非刺激性局所鎮痛組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は多くの医学的状態における主要症状であり、人の生活の質および全般的機能を大きく妨げ得る。疼痛の3つのカテゴリーが一般に認識されている:末梢神経線維の刺激によって引き起こされる侵害受容性疼痛;組織損傷および免疫細胞の浸潤に関連する炎症性疼痛;ならびに神経系への損傷によってまたは神経系の機能の異常によって引き起こされる疾患状態である病的疼痛(線維筋痛症、過敏性腸症候群、緊張型頭痛等におけるような、機能障害性疼痛)。急性疼痛は通常、鎮痛薬および麻酔薬などの薬剤で管理される。
【0003】
片頭痛は中等度から重度の頭痛と吐気を特徴とする慢性疾患である。この疾患は神経血管障害であると考えられている。片頭痛は、典型的には自律神経症状に関連する再発性の重度の頭痛を呈する。典型的な片頭痛は、一側性、拍動性で、中等度から重度であり、身体活動によって悪化し得る。初期治療は、頭痛に対しては鎮痛薬、吐気については制吐薬を用い、誘因を回避する。多くの鎮痛薬が片頭痛を治療するのに有効であり、これには非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);パラセタモール/アセトアミノフェン;およびカフェインを配合した単純鎮痛薬が含まれる。
【0004】
NSAIDは鎮痛および解熱(熱を下げる。)作用を提供し、より高用量では、抗炎症作用をもたらす。「非ステロイド系」という用語は、広範囲の作用の中でも特に、類似のエイコサノイド抑制性抗炎症作用を有するステロイド薬からこれらの薬剤を区別するものである。鎮痛薬として、NSAIDは、これらが非麻薬性であるという点で独特である。NSAIDは通常、疼痛および炎症が存在する急性または慢性状態の治療に適応される。NSAIDの幅広い使用は、これらの薬剤の有害作用も次第に広まりつつあることを意味している。NSAIDに関連する2つの主要な有害薬剤反応は、作用物質の胃腸作用および腎作用に関するものである。
【0005】
NSAIDは、これらの化学構造または作用機構に基づいて分類することができる。一般的なNSAID分類群には、サリチル酸塩、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、エノール酸誘導体、フェナム酸誘導体、選択的COX−2阻害剤およびスルホンアニリドが含まれる。群内のNSAIDは類似の特徴および忍容性を有する傾向がある。等用量で使用した場合、NSAIDの間で臨床効果にはほとんど差がない。むしろ、化合物間の差異は通常、投薬レジメン、投与経路および忍容性プロフィールに関連する。
【0006】
ケトプロフェンは非ステロイド系抗炎症性プロピオン酸誘導体である。ケトプロフェンは強力な抗炎症および鎮痛活性を有する。慣例的に、ケトプロフェンおよび他の関連薬剤は経口的に投与されてきた;しかし、これらは全身性副作用または胃腸刺激を伴う。これらの副作用を低減するため、これらの薬剤は経皮調製物として製剤化されている。これらのNSAIDの皮膚透過性が他のNSAIDより高いことは公知である。
【0007】
前記の難点を最小限に抑えるため、局所ケトプロフェン組成物を開発する試みが為されてきた。これらの試みは、光過敏性および安定性の問題ならびに光アレルギーの潜在的可能性のゆえに限られた成功しか収めていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、強い紫外線(UV)下ならびに凍結−融解条件において安定な、片頭痛などの状態に関連する疼痛を緩和するための局所NSAID組成物を提供する。この組成物は、局所クリームに製剤された生理的に許容される担体中にケトプロフェンを含有する。組成物は比較的高い皮膚透過性を有し、化学的および物理的に安定であり、ならびに光安定性である。
【0009】
本発明を具体化する組成物は、重量ベースで、約0.5から約15パーセントのケトプロフェン、約0.01から約1パーセントのキレート剤、約0.15から約1.5パーセントの架橋ポリアクリル酸ホモポリマー、約0.15から約1.5パーセントの架橋ポリアクリル酸共重合体、約2.5から約6パーセントのオキシベンゾン、約0.25から約2.5パーセントの乳化剤、約5から約15パーセントの水混和性アルキレングリコール、約10から約30パーセントのC−Cアルカノール、約0.5から約2.5パーセントの化粧品防腐剤、約0.02から約2パーセントの抗酸化剤、約0.001から約0.1パーセントの皮膚軟化薬、pH値を約4.5から約6の範囲内に維持するのに十分な量のpH調整剤、および残りは水を含有する。
【0010】
前記組成物のpH値は約4.5から約6の範囲内、好ましくは約5である。存在するグリコールおよび多価アルコールおよび一価アルコールの総量は、約35重量パーセントを超えない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、表2に示す組成物の適用の2時間後および4時間後に透過したケトプロフェンの透過量を示すヒストグラムである。
図2図2は、表2に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図3図3は、表3に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図4図4は、表4に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図5図5は、表5に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図6図6は、表6に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図7図7は、表7に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図8図8は、表8に示す組成物の適用の2時間後、4時間後および22時間後に透過したケトプロフェンの量を示すヒストグラムである。
図9図9は、表9で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
図10図10は、表10で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
図11図11は、表11で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
図12図12は、表12で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
図13図13は、表13で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
図14図14は、表14で特定される組成物の凍結−融解挙動を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、有効成分であるケトプロフェンを約0.5から約15重量パーセント、好ましくは約10重量パーセントの量で含有する水中油型エマルションである。水中油型エマルションは、クリーム状の粘度を有する粘性液体または半固体である。粘度は比較的広い範囲、通常は約2,000センチポアズから約60,000センチポアズにわたり得る。
【0013】
分子式C1614のケトプロフェンは、鎮痛作用と解熱作用の両方を有するプロピオン酸クラスのNSAIDの1つである。ケトプロフェンはプロスタグランジンの体内生成を阻害することによって作用する。ケトプロフェンは、シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−1およびCOX−2)酵素を可逆的に阻害し、次にプロ炎症性プロスタグランジン前駆体の産生を低下させる。
【0014】
エデト酸二ナトリウムはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二ナトリウム塩としても知られる。EDTAは、幾つかの塩形態、特にEDTA二ナトリウムおよびEDTAカルシウム二ナトリウムとして入手可能である。EDTAは、主として水溶液中の金属イオンを封鎖するために使用される。パーソナルケア製品において、EDTAは空気に対する製品の安定性を改善するために化粧品に添加される。EDTAは、本発明の組成物中で遊離基および不純物に結合するのを助けるキレート剤として働く。
【0015】
存在する架橋ポリアクリル酸ポリマーは、増粘剤としての役割を果たし、組成物に凍結−融解安定性も提供する。本発明の目的に適する架橋ポリアクリル酸ホモポリマーは、アリルスクロース、アリルペンタエリスリトール等のような糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルで架橋したアクリル酸の高分子量ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)980 NF等である。Carbopol(登録商標)980 NFはLubrizol Advanced Materials,Inc.,Cleveland,Ohioから市販されている。本発明の目的に適する架橋ポリアクリル酸共重合体は、異種ポリマーを含有する糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルで架橋したアクリル酸とC−C24アルキルメタクリレートの高分子量共重合体、例えばポリエチレングリコールと長鎖、例えばC−C24アルキル酸エステルのブロック共重合体、例えばCarbopol(登録商標)Ultrez 10 NF等である。Carbopol(登録商標)Ultrez 10 NFはLubrizol Advanced Materials,Inc.,Cleveland,Ohioから市販されている。最適な凍結−融解安定性のためには、組成物中の共重合体−ホモポリマーの重量比は約2.5:1である。
【0016】
PEG−40硬化ヒマシ油は、ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体である。本発明の組成物中で、PEG−40硬化ヒマシ油は乳化剤として働く。これはまた、通常は溶解しない溶媒中での成分の溶解を助ける。
【0017】
ビタミンEは、トコフェロールとトコトリエノールの両方を含む8つの脂溶性化合物の群を指す。ビタミンEは多くの生物学的機能を有する;抗酸化機能は最も重要で最もよく知られている機能である。ビタミンEは本発明の組成物中で前記のように働く。
【0018】
適切な水混和性アルキレングリコールは、多価アルコール、例えばグリセロール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール等である。プロピレングリコールが好ましい水混和性アルキレングリコールである。
【0019】
プロピレングリコールは、無色でほぼ無臭の透明な粘性液体である。プロピレングリコールは本発明の製剤中で溶媒および抗菌剤として働く。プロピレングリコールと混合した場合、水素結合の可能性が増大するため水の凝固点が低下する。
【0020】
適切な一価アルカノールアルコールは、CおよびCアルカノール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール等である。イソプロピルアルコールが好ましいアルコールである。
【0021】
イソプロピルアルコールは無色の引火性化合物である。水、アルコール、エーテルおよびクロロホルムに混和性である。イソプロピルアルコールは広範囲の無極性化合物を溶解する。イソプロピルアルコールはまた、代替的な溶媒に比べて、速やかに蒸発し、比較的非毒性である。本発明の組成物中で、イソプロピルアルコールは溶媒および透過促進剤として働く。
【0022】
適切な皮膚軟化薬は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン等である。ミリスチン酸イソプロピルが好ましい皮膚軟化薬である。
【0023】
イソプロピルアルコールは、本発明の組成物中で溶媒、安定剤ならびに皮膚軟化薬として働く。
【0024】
適切な化粧品防腐剤は、パラベン、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノール誘導体、例えばフェノキシエタノール、ベンジルアルコール等である。ベンジルアルコールが好ましい防腐剤である。
【0025】
ベンジルアルコールは水に部分的に可溶であり、アルコールおよびジエチルエーテルに完全に混和性である。ベンジルアルコールは、本発明の組成物中で静菌防腐剤として働く。
【0026】
分子式C1412のオキシベンゾンは、UVBおよびUVA(紫外線)照射を吸収する。オキシベンゾンは、大部分の有機溶媒に易溶性の無色結晶を形成し、組成物の光安定性に寄与する。
【0027】
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、親油性有機化合物であり、化学的にはフェノールの誘導体である。BHTは、本発明の製剤中で抗酸化および抗菌性化合物として働く。
【0028】
トリエタノールアミンは、第三級アミンおよびトリオールの両方である有機化合物である。他のアミンと同様に、トリエタノールアミンは強塩基であり、本発明の組成物中でpH調整剤として機能する。トリエタノールアミンは主として乳化剤および界面活性剤として使用される。トリエタノールアミンは、脂肪酸を中和し、pHを調整および緩衝して、油および水に十分に可溶でない他の成分を可溶化する。
【0029】
組成物中に存在するアルコールは皮膚透過に寄与する;しかし、総アルコール濃度は、最適な皮膚透過を維持するために30重量%を超えるべきではない。総プロピレングリコール濃度は、透過および物理的安定性への負の影響を避けるために10重量%を超えるべきではない。
【0030】
場合により大豆タンパク質等のような植物由来タンパク質、またはウシ血清アルブミン(BSA)等のような動物由来タンパク質を、所望する場合は、溶解促進剤として本発明の組成物に添加することができる。
【0031】
表1は、10重量パーセントのケトプロフェン、5重量パーセントのケトプロフェンおよび0.5重量パーセントのケトプロフェンを含有する好ましい組成物の成分を列挙する。
【0032】
【表1】
【0033】
好ましい組成物は、最初の2時間以内に比較的高い皮膚透過を有し、22時間まで優れた持続的透過を有する。
【0034】
本発明を以下の実験データによって例示する。
【実施例】
【0035】
I.実験材料および方法
1.実験材料
ケトプロフェンはBoehinger−Ingelheimから入手した。
【0036】
他のすべての材料は様々な化学物質供給会社から入手した。
【0037】
2.クリームアッセイおよび透過試験についてのHPLC分析方法
クロマトグラフィ条件:
無勾配逆相HPLCシステムを用いてケトプロフェン製剤の安定性および光安定性を測定した。HPLC装置はAgilent 1100であった。WatersからのNovaPak(登録商標)4.6×300mm C18カラムを使用した。移動相は、塩酸でpH2.3に調整したギ酸緩衝液(0.025M)とアセトニトリルの混合物(50:50)から成った。流量は1.0ml/分であった。検出は220nmと254nmで実施した。注入量は25μlに設定した。これらの条件下で、ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの保持時間はそれぞれ約5分および13分であった。ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの検量線の濃度範囲は、それぞれ7−210μg/mlおよび120−480μg/mlであった。試料の実行時間は20分であった。
【0038】
試料の調製:
安定性試験のために、それぞれ5%および10%のケトプロフェンを含有する組成物についての試料約75または50mgを25mlメスフラスコに直接量り取った。移動相約20mlを各フラスコに添加し、この後3分間ボルテックスして、移動相を容積まで満たし、十分に振とうした。
【0039】
光安定性試験に関しては、試料約150mgを磁性るつぼに量り取り、容器の底部全体に均一に広げた。るつぼを、1分当たり7から8回通過の速度で移動するコンベアベルト上で5分間、UV硬化システム(Fusion UV Curing LC6B with H Lamp,Fusion Systems,Rockville,MD)に通した。UV光の強度はデジタル照度計(YF−1065F型)を用いて測定し、この値は一貫して250から300フートキャンドルにわたった。比較すると、実験室における光の強度はわずかに2から3フートキャンドルであった。次にるつぼ中の組成物を移動相で150mlビーカー中に5回洗い流し入れ、50mlメスフラスコに移して3回洗浄した。フラスコを3分間ボルテックスし、移動相を容積まで満たして、十分に振とうした。希釈した試料を10分間遠心分離した後、分析のためにHPLCバイアルに満たした。
【0040】
3.ケトプロフェンの透過を評価するための方法
デルマトームで採皮した死体皮膚(Science Care,Aurora,CO)を、さらなる処理を行わずに使用した。ブタ皮膚(Lampire Biological Laboratories,Pipersville,PA)をデルマトームで標準的な厚さに採皮した。改変フランツセルを用いて37℃で約1.3cmの露出皮膚膜表面積で透過試験を実施し、2、4および22時間目に試料を採取して、HPLCによって検定した。各々のフランツセルに約100mgのクリーム試料の1つの小さなアリコートを添加し、ガラス棒を用いて皮膚膜表面に軽く広げて、水分の喪失を防ぐためにカバーディスクで覆った。レセプタ相はpH7.4のリン酸緩衝液を含んだ。
【0041】
4.ケトプロフェンおよびオキシベンゾンの光分解を評価するための方法
調製物を超高強度UV光源(300ルクスまで)に5分間または10分間暴露した。この暴露レベルでヒト皮膚は容易に熱傷する。暴露したクリームのアリコートを、前述したHPLC手順を用いてケトプロフェンおよびオキシベンゾンに関して検定した。
【0042】
5.凍結/融解安定性を評価するための方法
試料を0℃で24時間保存し、次いで25℃で24時間解凍した。試料を各サイクル後に相分離に関して観測した。各々の試料について、5回のサイクルを評価した。
【0043】
製剤研究試験−ケトプロフェンの透過
1.許容される安定化ポリマー増粘剤を見出すためおよび凍結/融解の失敗を最小限に抑えるこれらのポリマーの最適レベルを見出すために一連の試験を実施した。これらの試験を以下に示す。
【0044】
a.選択したポリマー:Carbopol(登録商標)980、Carbopol(登録商標)Ultrez 10およびCarbopol(登録商標)Ultrez 20ならびにこれらの組合せの、ヒト死体皮膚を通してのケトプロフェンの透過への影響。
【0045】
【表2】
【0046】
前記調製物はすべて同様の透過を示した。観測結果を図1および2に示す。
【0047】
b.1.75重量%のレベルのCarbopol(登録商標)Ultrez 10単独の、ヒト死体皮膚を通してのケトプロフェンの透過への影響。
【0048】
【表3】
【0049】
1.75%のレベルのUltrez 10単独を含有する前記組成物は、4時間後および22時間後に改善された透過を示した。観測結果を図3に示す。
【0050】
c.ブタ皮膚を通してのケトプロフェンの透過に関するCarbopol(登録商標)Ultrez 10とCarbopol(登録商標)980の組合せの評価。
【0051】
【表4】
【0052】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10とCarbopol(登録商標)980の組合せは、対照製剤と比較して改善された透過を示した。2つのポリマーの比率はケトプロフェン透過の最適化のために重要である。観測結果を図4に示す。
【0053】
d.1%/0.75%のCarbopol(登録商標)980/Carbopol(登録商標)Ultrez 10比を用いたより大きな(kg)バッチからのケトプロフェン透過。
【0054】
【表5】
【0055】
10%クリームは、すべての時点でより高いケトプロフェン透過を有していた。観測結果を図5に示す。
【0056】
e.ケトプロフェン透過へのCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980比の影響の評価(100グラムバッチ)。
【0057】
【表6】
【0058】
すべての調製物に関して良好な透過が達成された。データは、比較的高い量のCarbopol(登録商標)Ultrez 10が比較的高いケトプロフェン透過をもたらすことを示す。観測結果を図6に示す。
【0059】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10組成物の美的外観も、より高い量のポリマーの存在によって改善する。
【0060】
f.1.25%/0.5%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980比で作製した1kgバッチからのケトプロフェン透過。
【0061】
【表7】
【0062】
透過結果を図7に示す。
【0063】
g.ブタ皮膚を通してのケトプロフェンの透過への、Carbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10の比率の影響の評価。
【0064】
【表8】
【0065】
透過結果を図8に示す。結果は、架橋ポリアクリル酸共重合体と架橋ポリアクリル酸ホモポリマーの組合せが、ホモポリマーだけを増粘剤とした場合と比較して改善されたケトプロフェンの透過を提供することを指し示す。
【0066】
II.凍結/融解安定性
1.種々の比率のCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する組成物に関して凍結/融解安定性試験を実施した。
【0067】
a.Carbopol(登録商標)980だけを含有する組成物における凍結−融解結果。
【0068】
【表9】
【0069】
結果を図9に示す。3回の凍結/融解サイクル後、すべての調製物が多少の相分離を示した。
【0070】
b.5重量%のケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)Ultrez 10/Carbopol(登録商標)980を含有する組成物ならびに10%ケトプロフェンを含有する1つの製剤の凍結−融解結果。
【0071】
【表10】
【0072】
Carbopol(登録商標)Ultrez 10およびCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10の組合せは、相分離に対して多少の抵抗性を示した。025%Carbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する10%ケトプロフェン組成物に関しては、3回のサイクル後に相分離が観測結果を図10に示す。
【0073】
c.10重量%のケトプロフェンおよび1.75%のCarbopol(登録商標)980または1.5%のCarbopol(登録商標)980プラス0.25%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10のいずれかを含有する製剤ならびに0%ケトプロフェンを含有する1つの製剤(対照組成)の凍結−融解結果。
【0074】
【表11】
【0075】
対照組成物は5回のサイクル後に漏出を示さなかった。Carbopol(登録商標)Ultrez 10単独組成物およびCarbopol(登録商標)980単独組成物は2回のサイクル後に不成功であった。Carbopol(登録商標)Ultrez 10単独組成物はCarbopol(登録商標)980単独組成物よりも良好な外観を有していた。結果を図11に示す。
【0076】
d.10重量%ケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)980とCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有する製剤の凍結−融解結果。
【0077】
【表12】
【0078】
比較的低い共重合体/ホモポリマー重量比を有する組成物はより高い相分離を示した。結果を図12に示す。
【0079】
e.10重量%ケトプロフェン、Carbopol(登録商標)980およびCarbopol(登録商標)Ultrez 10を含有するが、Carbopol(登録商標)980含量がより低い組成物の凍結−融解結果。
【0080】
【表13】
【0081】
5回の凍結/融解サイクル後、2.5:1の共重合体/ホモポリマー重量比では相分離を認めなかった。結果を図13に示す。
【0082】
f.10重量%ケトプロフェンおよび様々な比率のCarbopol(登録商標)980/Carbopol(登録商標)Ultrez 10を含有するが、アルコールの量がより低い組成物の凍結−融解結果。
【0083】
【表14】
【0084】
より高いポリマーレベルおよび様々なアルコールレベルは、通常の室温条件で美学的には好ましく見えるが、凍結/融解試験で相分離を示した。この群の最も凍結/融解抵抗性の製剤は、1.25%のCarbopol(登録商標)Ultrez 10、0.75%のCarbopol(登録商標)980および15%のエタノールを含有した。結果を図14に示す。
【0085】
III.組成物の安定性
1.3か月の安定性−5重量%のケトプロフェン−1kgバッチ
【0086】
【表15】
【0087】
オキシベンゾンを含まないこの組成物は、40℃で3か月まで物理的および化学的に安定である;しかし、光安定性ではない
【0088】
2.3か月の安定性−10重量%のケトプロフェン−kgバッチ
【0089】
【表16】
【0090】
オキシベンゾンおよび抗酸化剤を含まない、10%ケトプロフェンを含有するこの組成物は、40℃で3か月後に約8%のケトプロフェンの分解を示し、すべての時点で有意の光分解を示す。
【0091】
3.3か月の安定性−5%オキシベンゾンおよび2%BSAと5重量%のケトプロフェン
【0092】
【表17】
【0093】
この組成物は、25℃および40℃で3か月後に化学的に安定であった。40℃で保存した試料に関して光分解が見られたが、回収率は3か月後にまだ90%以上であった。
【0094】
4.3か月の安定性−5%オキシベンゾンおよび2%大豆タンパク質と5重量%のケトプロフェン
【0095】
【表18】
【0096】
調製物は、25℃および40℃で3か月後に化学的に安定であった。試料を40℃で保存した場合に光分解が見られたが、ケトプロフェン回収率は3か月後にまだ90%以上であった。
【0097】
前記組成物は、クリーム状の粘度を有する水中油型エマルションであり、1日用量当たり約500mgまでの量でケトプロフェンを提供するために投与した場合、片頭痛による疼痛を緩和するために有用である。
【0098】
本発明の組成物は、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、血管状態によって引き起こされる頭痛等のような頭痛に関連する痛みを治療するのに特に良好に適する。好ましくは、治療有効量の本発明のケトプロフェン含有組成物を、眼窩孔、三叉神経の耳介側頭枝の基部、大後頭神経の耳介側頭枝、耳介後部領域、鼻内三叉神経終末、鼻副交感神経終末に沿った部位、またはこれらの組合せに投与する。
【0099】
本発明の組成物はまた、関節痛、筋痛、末梢神経障害、変形性関節症疼痛、慢性腰痛、炎症性疼痛、整形外科的外傷による痛み、反射性交感神経性ジストロフィ(RSD)、末梢神経炎、線維筋痛症、糖尿病性神経障害等の治療にも良好に適する。
【0100】
本明細書および付属の特許請求の範囲で使用される「治療有効量」という用語は、疼痛を軽減するうえで治療的有用性を有するのに十分なケトプロフェンの量を提供する本発明の組成物の量を意味する。典型的にはこのような量は、各適用当たりケトプロフェン約100ミリグラムから約300ミリグラムの範囲内である。
【0101】
前記説明は例示を目的とするものであり、限定と解釈されるべきではない。本発明の精神および範囲内でさらなる他の変形が可能であり、当業者には容易に明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14