【実施例】
【0026】
以下では、添付図面を参照して実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
図1は、タワー102とナセル104を備えた風力発電装置100を示す。ナセル104には、3枚のロータブレード108とスピナ110を有するロータ106が設けられている。ロータ106は風によって駆動されて回転運動を行い、これによりナセル104内の発電機を駆動する。
【0028】
以下、
図2(a)ないし
図2(c)を参照して説明する。
【0029】
電圧(および電流)の基本周波数は、フェーザを用いて対称成分で表現される。
これらは、通常、以下のように変換される。
【0030】
非対称性の尺度となる非対称性レベルは、逆相電圧フェーザの正相電圧フェーザに対する比、および、零相電圧フェーザの正相電圧フェーザに対する比で与えられる。
【0031】
電力網に接続されたインバータ(Wechselrichter)は、基本周波数および(準)定常動作条件に関して、典型的な(時間および状態に依存する)等価回路によって解釈することができる。インバータの非孤立動作条件に対して適用しうる選択肢として、インピーダンス等価回路(
図2(a))がある。試験的な電力系統における変圧器ベクトル群によると、零相成分はインバータには無関係である。正相インピーダンスは、インバータに対する標準的な電力制御レイヤであるFACTS(Flexible Alternating Current Transmission System)制御アーキテクチャによって決定される。一方、逆相インピーダンスは、追加的なACI(Asymmetrical Current Injection)制御によって制御される(
図2(c))。
【0032】
両相成分(正相および逆相)のインピーダンスは、同時に物理的な振る舞いに影響を及ぼす。両相成分のインピーダンスは実際の端子相(成分)電圧およびインバータの電流の実際の振幅と参照値に依存し、正相および逆相について互いに独立に制御される(
図2(b))。逆相インピーダンスの負の実部は、電力網への有効電力の注入を表す。一方、対応する負の虚部は、無効電力を表す。なお、この表示に関する解釈は、インバータの非孤立動作条件の場合に限定される。
【0033】
相電圧の振幅に関して、正常運転時におけるインバータと電力網の間の電力の交換は、専ら正相によって支配される。すなわち、正常運転時における正相インピーダンスは、実際の全インバータ電力と実際の端子正相電圧による結果として解釈することができる。
【0034】
独立にACIを考慮して規定された逆相インピーダンスは、逆相インバータ電流を介して、実際の端子逆相電圧に依存して達成される。この機能は付加的なACI制御モジュールを提供する。かかるモジュールは、適用されるインバータ制御のアーキテクチャの電力制御レイヤに属する(
図2(a)右側)。ベクトル制御により、通常のようにPWM(Pulse Width Modulation)制御に対する入力信号の制御が行われる。
【0035】
略語ACIは、非対称電流注入(Asymmetrical Current Injection)を表す。なお、念のために、FACTSは英語でも(専門家であれば)ドイツ語でも、Flexible AC Transmission Systemという共通の概念を表すことを指摘しておく。
【0036】
図2(a)は、一実施例に係るインバータ2に対する制御部の構成を示す。ここでは、正相インピーダンスの制御および注入部4と、逆相インピーダンスの制御および注入部6とが分離されている。このことは、正相について、
によって定義され、負の実部を有する(正相)インピーダンス
が制御されることを意味する。同様に、逆相については、(逆相)インピーダンス
、すなわち、値
(によって定義されたインピーダンス
)を用いる。
【0037】
両インピーダンス
および
の意味は、
図2(b)の複素平面上に示されている。
【0038】
図2(c)は、一部をブロック図とした回路図により、一実施例における注入動作を示す。
【0039】
文字a、b、cを付した位相を有する3相電力網8において、3つの位相の電圧v(t)は測定場所10で測定され、分解ブロック12に供給される。分解ブロック12は、測定した3相電圧を、正相成分電圧
および逆相成分電圧
に分解する。結果は、電圧の正相成分および逆相成分とともに、さらに他の計算ブロック14を経由して、無効電力Qなどの必要な値を決定する注入予設定値ブロック16に送出される。次に、注入予設定値ブロック16は、注入すべき電流の正相部分および逆相部分を決定する。このため、注入予設定値ブロック16は、正相電流および逆相電流のそれぞれについてd軸成分およびq軸成分を決定する。これを、d-, q-, d+およびq+のような省略形式で示すこともできる。また、DCリンク電圧Vdcに関する情報も、注入予設定値ブロック16に供給される。このようにして、計算ブロック14、および、特に注入予設定値ブロック16は、電力制御ブロック18を構成する。
【0040】
電力制御ブロック18、特に注入予設定値ブロック16から収集した値は、ベクトル制御ブロック20に供給される。逆相ブロック22および正相ブロック24は、それぞれ、注入される各位相を制御するための対応するベクトルを決定する。また、逆相ブロック22および正相ブロック24は、分解ブロック12との間で情報を交換する。このため、変換ブロック26は、注入すべき正相電流および逆相電流の2つのベクトルを注入すべき相電流の具体的な予設定値(パラメータ)に変換して、かかる情報を位相ブロック28a、28b、28cに供給する。そのため、変換ブロック26は、式i
aref = i-
aref + i+
aref, i
bref = i-
bref + i+
bref, i
cref = i-
cref + i+
crefに従って個々の電流i
aref, i
bref, i
crefを決定する。次に、これらの値は、インバータブロック32に含まれる許容バンド制御ブロック30a、30b、30cに供給される。次に、許容バンド制御ブロック30a、30b、30cは、既知の許容バンド制御によりインバータ34のインバータブリッジを具体的に動作させ、また、この過程において実際の電流i(t)を考慮することができる。
【0041】
図3は、一実施例に係る制御の開始点となる電力網50を示す。電力網50は、特に測定を通じて、電力網制御ブロック52として示された一般的な制御に作用する。かかる一般的な電力網制御において、インピーダンス
を調整するために、調整係数
または
と調整位相角
または
を予設定してもよい。ここで、添字ABは電力網50の正常動作、すなわち、系統障害を伴わない動作を意味する。ただし、何らかの非対称性が生じていてもよい。
【0042】
また、
図3は非対称性障害が生じた場合、調整係数
または
に一定値(例えば2)が設定されることを示す。このとき、調整位相角
または
に90°が予設定される。ここで、VNSRはVoltage Negative Sequence Reactanceを表し、これにより、障害が生じた場合における逆相に対するリアクタンスが予設定される。電力網において非対称性障害が生じた場合、可変な調整位相角
を用いる代わりに、単にリアクタンスを負荷として用いる。
【0043】
インバータ制御ブロック54は、インバータ2を制御する。
図3のインバータ2は、
図2(a)のインバータ2に対応する。また、インバータ制御ブロック54に対する参照符号54は、
図2(a)においても使用する。ただし、
図2(a)および
図3は概略図であり、細部においては相違する。
【0044】
図3に示すように、インバータ制御ブロック54によるインバータ2の制御は様々な制御過程を含む。そこで、
図2(c)において説明した制御過程を再度参照されたい。なお、インピーダンスの予設定の説明に関して、
図3は調整係数
と調整位相角
のインバータ2への供給または作用を示すにすぎない。しかしながら、インバータの制御は、これらの値を予設定することのみに限定されない。
【0045】
破線矢印は、インバータ2、または、インバータ出力部56に存在する要因から生じうるインバータ制御ブロック56、すなわちインバータ制御への反作用を示す。次に、インバータ2は、インバータ出力部56において注入するための3相の非対称電流を出力する。出力された非対称電流は、図示した変圧器58を経由して電力網接続点60において電力網50に注入される。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、図示した形態に限定することを意図するものではなく、専ら理解を助けるためのものである。
また、本発明において、さらに以下の形態が可能である。
[形態1]
3相電力網(8)に電気エネルギーを注入する方法であって、
注入部(2)を用いて電力網接続点(60)に電流を注入するステップと、
電力網(8)における非対称性、特に電力網(8)における逆相成分を検出するステップと、
前記検出された非対称性を少なくとも部分的に補償するために、非対称電流部分を電力網(8)に注入するステップと、を含み、
前記非対称電流部分の注入は、前記注入部(2)が負荷(6)として振る舞うようにして行われる、
ことを特徴とする方法。
[形態2]
逆相における負荷(6)はインピーダンスZ-として関係式
で表され、Znはインピーダンス値、
は調整位相角、
はスカラー調整係数を表す、
形態1に記載の方法。
[形態3]
前記インピーダンスに含まれる前記調整係数
および/または前記調整位相角
は、電力網の少なくとも1つの特性に基づいて設定される、
形態2に記載の方法。
[形態4]
前記調整位相角
は0°ないし90°の範囲で設定され、前記電力網接続点における電力網のレジスタンスに対するリアクタンスの比(X/R比)が大きくなるに従って大きい値に設定される、
形態2または3に記載の方法。
[形態5]
電力網(8)の等価回路図が注入点(10)に対して作成され、
負荷(6)または負荷(6)を表すインピーダンスが作成した等価回路図を用いて設定され、特に、調整位相角
および/または調整係数
は把握した等価回路図に依存して設定される、
形態1ないし4のいずれか一に記載の方法。
[形態6]
非対称性は電力網(8)における電圧の逆相成分
を検出することによって検出され、かつ/または、前記非対称電流部分は逆相成分として注入される、
形態1ないし5のいずれか一に記載の方法。
[形態7]
前記注入部(2)はインバータ(2)であるか、または、インバータ(2)を備える、
形態1ないし6のいずれか一に記載の方法。
[形態8]
電力網(8)において非対称障害が存在するか否かを調べ、
非対称障害が検出されない場合、注入部(2)が負荷として振る舞うように非対称注入が行われる、
形態1ないし7のいずれか一に記載の方法。
[形態9]
中間電圧の電力網に電流を注入するために、前記調整位相角
は40°ないし70°、特に50°ないし60°の範囲の値に設定され、かつ/または、前記調整係数
は0ないし10の範囲の値に設定される、
形態2ないし8のいずれか一に記載の方法。
[形態10]
風力エネルギーから得られた電気エネルギーを電力網(8)に注入する風力発電装置(100)であって、
形態1ないし9のいずれか一に記載の方法を用いる風力発電装置(100)。
[形態11]
注入を行うために、注入部(2)としてインバータ(2)を備える、
形態10に記載の風力発電装置(100)。
[形態12]
電力網(8)に電気エネルギーを注入するインバータ(2)であって、
形態1ないし9のいずれか一に記載の方法を用い、特に風力発電装置とともに動作させるために設けられたインバータ(2)。