(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0018】
以下の明細書ではさらなる理解を促すために、図面に示された実施形態に基づいて本発明の原理を説明する。なお本開示は、本発明の権利範囲の限定を意図したものではないことを理解されたい。さらに本開示は、例示された実施形態に対する何らかの変更や修正を含み、通常一般に当業者が思いつくような開示原理のさらなる応用も含むことを理解されたい。
【0019】
図3には、エンジン102を含むエンジンシステム100が示されている。このエンジンは、少なくとも1つのシリンダ104を含んでいる。ここでは1つのシリンダ104と関連する構成要素しか示されていないが、別の実施形態では、複数のシリンダ104が組み込まれていてもよい。前記シリンダ104には、エンジン吸気バルブ106と、エンジン排気バルブ108と、点火プラグ110とが対応付けられている。スロットル112は、シリンダ104内への燃料の流入を制御している。
【0020】
前記エンジンシステム100は、さらにメモリ114とプロセッサ116を含んでいる。メモリ114には、以下でさらに詳細に説明する様々なプログラム命令がプログラミングされている。プロセッサ116は、前記メモリ114内にプログラミングされているこれらのプログラム命令を実行するように動作可能である。プロセッサ116は、エンジン吸気バルブ106と、エンジン排気バルブ108と、スパークプラグ110と、スロットル112に動作可能に接続されている。プロセッサ116は、その他のセンサと制御器にも動作可能に接続されており、それらのいくつかはさらに以下で詳細に説明する。
【0021】
プロセッサ116は、
図4に示されているコマンド構造120を提供するために、前記メモリ114内に記憶されているプログラム命令を実行する。従ってプロセッサ116は、エンジン102を制御するために用いられるフィードフォワード機能部126とフィードバック機能部128とを含んだ閉ループ制御器124と推定器122とを備えている。基本的に、エンジン102に供給される開ループコマンド130は、所望の出力132を受け取るフィードフォワード機能部126にも供給される。フィードバック機能部128は、エンジン102の出力に基づいて状態を推定する推定器122から状態の形態の入力信号を受け取る。フィードバック機能部128からの信号とフィードフォワード機能部126からの信号が結合された出力は、エンジン102を制御するためと推定器122への入力として使用される。
【0022】
前記閉ループ制御器124は、状態を観察するために(例えば燃焼位相または仕事出力などの)エンジンからの出力を使用する推定器122によって生成された状態量(例えば混合気温度、反応生成物濃度など)の推定に基づいて動作する。例えばプロセッサによって使用される2つの状態量、例えば酸素濃度と温度は、この実施形態では直接測定されたものではない。むしろこれらの値は、“CA
50”の測定に使用される推定器122に基づいて推定されている。この“CA
50”とは、燃焼からのエネルギーの50%が放出されたクランク角度として定義される。
【0023】
この制御ストラテジは、HCCIモードと同様の低リフト量のバルブプロファイルを伴ったSI運転モードを含んだ取り組みに基づいている。それ故に燃焼モードの切り替えに伴う動特性も、
図2に関連して上述したように、SIモードにおいて用いられる典型的な高リフト量、長期間のプロファイルの切り替えバルブプロファイルの動特性から離れてHCCIモードに対して使用される低リフト量、短期間のプロファイルの動特性に代わる。ここでは各遷移中に定められた3つの制御/推定モードを伴う切り替え制御方式が提供される。
【0024】
図5には、
図1のライン14に沿った手順の場合の一般的な制御プロセスを示している。プロセッサ116は、最初にエンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108を、高バルブリフトSIモード136に制御する。遷移のときにはプロセッサ116はエンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108とを低バルブリフトSIモード138に制御する。一度HCCIモードの条件が満たされると、プロセッサ116は、エンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108とを低バルブリフトHCCIモード140に制御する。
【0025】
図6には、
図1のライン20に沿った手順の場合の一般的な制御プロセスを示している。プロセッサ116は、最初にエンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108を低バルブリフトHCCIモード142に制御する。遷移が要求された場合には、プロセッサ116は、エンジン吸気バルブ106と、エンジン排気バルブ108とを低バルブリフトSIモード144に制御する。その後プロセッサ116は、エンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108とを高バルブリフトSIモード146に制御する。
【0026】
低バルブリフトSIモード138/144の組み込みにより、2つの燃焼モード間のスムーズな移行が、燃焼モード切り替え動特性からバルブ切り替え動特性を切り離すことによって可能になっている。この切り離しは、純粋なSI燃焼時に発生するバルブリフトプロファイル切り替えの降格による制御の問題を簡素化させる。燃焼モード切り替えのための制御手順は、制御器126/推定器122に対する3つの運転モードの指定に基づいている。第1の運転モードは、
図7に示されている。
【0027】
図7では、システム120がSIモードで機能し、SIモード推定器として機能する推定器122、SI閉ループコマンド150と開ループコマンド152が、エンジン102をSIモードで制御するために使用されている。この構成では制御器124は、×印によって示されているように活動していない。それにもかかわらずSI推定器122は、燃焼の位相としての測定値に基づいて状態の推定値を得るために使用される。これらの推定値は、遷移モード中にターンオンされたときにHCCI制御器に供給される。
【0028】
遷移モードは
図8に示されている。ここでは推定器122は、遷移モード推定器として機能する。このコマンド構造120は遷移モードで機能し、それ以外では
図4に関連して説明したコマンド構造の機能に類似している。遷移モード制御は、混合気温度や残留質量などかぎとなる状態の推定に基づいて決定される。遷移中に制御される出力には、エンジンサイクル毎の燃焼位相と仕事出力とが含まれる。推定器122は、このモードに対してSI推定器とHCCI推定器の2つの要素を持っている(下記参照)。なぜなら燃焼は主に火炎伝播(SI)によって起こっているからであり、HCCIのような動作は次のサイクルで自己着火につなげられる。一実施形態によれば、遷移モードは単一のサイクルの間継続する。
【0029】
最終的な運転モードは、
図9に示したHCCIモードである。
図9では、推定器122がHCCIモード推定器として機能している。このコマンド構造120はHCCIモードで機能し、それ以外は
図4に関連して説明した上記コマンド構造に類似する。このモードでは、HCCI閉ループ制御器124は、エンジン102の所望の仕事出力と燃焼位相とを追跡するために、燃料噴射タイミングなどの入力の制御に使用される。
【0030】
前記閉ループ制御部124は、一実施形態によれば、以下でより詳細に議論するようにHCCI制御指向のモデルに基づいて設計される。ここでの一次閉ループ制御入力は、燃料噴射タイミングである。なぜならそれはサイクル毎及びシリンダ個別に制御ノブとして使用することができるからである。但しその他の閉ループ入力は別の実施形態では、バルブタイミングや燃料量などを含む。
【0031】
図7乃至
図9に示したモードは、
図10A及び
図10Bに示すプロセスに基づいてプロセッサ116によって実施される。制御器124と推定器122は、各エンジンサイクル毎に一度、典型的には燃焼プロセスの後に更新され、燃焼位相などの重要な測定値の推定が利用可能になる。制御器124はモードを切り替えるためにコマンドをチェックする。このモードを切り替えるためのコマンドは、現在のモード及びエンジン出力、並びに、例えばアクセルペダル位置によって示される所望のエンジン出力など様々な入力量に基づいて、プロセッサ116によって生成される。ステップ162において切り替えモードなしの指令がなされた場合には、当該プロセスはステップ164に続き、切り替えのためのコマンドを待機する。
【0032】
前記ステップ162でのチェックの際にモードを切り替えるためのコマンドが発せられている場合には、当該プロセスはステップ166に進み、プロセッサ116は、現在エンジン102がSIモードで制御されているか否かを決定する。SIモードで制御されている場合には、当該プロセス160はステップ168に進み、現在のモードをチェックする。モードが切り替えられなかったためにシステムは依然としてSIモードのままである場合には、当該プロセスはブロック170に続き、SI推定器122が状態の推定のために動作する。閉ループ切り替え制御器はオフ状態を維持する。遷移シーケンスのための開ループ入力は、ステップ172で開始される(SIモードにおける化学量論とトルク中立性を維持するために必要ないくつかの閉ループ入力と共に)。有利な実施形態によれば、これらの開ループ入力には、バルブタイミング、スロットル開度、点火時期や燃料量などの入力が含まれる。
【0033】
当該プロセス160は、その後サイクルインデックスが増分されるステップ174に進み、さらにこのプロセスはステップ168に続く。サイクルはステップ174においてインデックスが作成されているので、このときの現在モードは遷移モードになる。したがって、当該プロセスはステップ178に続き、遷移推定器は、現在の測定値、及び最後に得られた状態の推定値(SI推定器からの)に基づいて状態を更新するために動作する。更新された状態の推定値は、ステップ180において、低バルブリフト時のバルブ106/108と共に開ループ入力に加えて、閉ループ切り替え制御器によって使用される。一次閉ループ制御入力は、燃料噴射タイミングであるが、他の閉ループ入力は、好適な実施形態ではバルブタイミング、燃料量などを含む。
【0034】
ステップ182では、HCCI制御器は、次のモード、すなわちHCCIモードに対するサイクルインデックスの増分(ステップ174)に従って実行される。その後、当該プロセスはステップ168へ進む。
【0035】
サイクルは、二度目のステップ174に対してインデックスが作成されているので、ステップ168における現下のモードはHCCIモードである。したがって当該プロセスはステップ184に続き、HCCI推定器は、現下の測定値と最後に入手した状態の推定値(遷移推定器からの)とに基づいて状態を更新すべく実行される。更新された状態の推定値は、ステップ186における開ループ入力に加えて所定の閉ループ入力のコマンドのために閉ループ切り替え制御器によって使用される。一次閉ループ制御入力は、燃料噴射タイミングであるが、他の閉ループ入力は、好適な実施形態ではバルブタイミング、燃料量などを含む。ステップ188では、HCCI制御器が実行されます。このプロセスは、次にステップ164に続き、新たなモード切り替えコマンドを待つ。
【0036】
ステップ166でエンジンがSIモードで制御されていない場合には、モード切り替えは、HCCIモードから上述した切り替えに類似のSIモードに切り替わる。一般には、当該プロセスがステップ192(
図10B)に続く。モードは切り替えられていないので、システムはまだHCCIモードにあり、当該プロセスはステップ194に続き、HCCI推定器が実行される。ステップ196では、開ループコマンドが実施され、HCCI制御器は、ステップ198で実施される。
【0037】
当該プロセス160は、その後サイクルインデックスが減分されるステップ200に進み、さらにこのプロセスはステップ192に続く。このサイクルは、ステップ200において減分されたので、ステップ192における現行モードは遷移モードになる。したがって、当該プロセスはステップ202に続き、遷移推定器が実行される。ステップ204では、開ループコマンドが実施され、遷移サイクルは低リフトのバルブ106/108を用いて実行される。ステップ206では、サイクルインデックスの減分(ステップ200)に従ってHCCI制御器が、次のモードへ、すなわちSIモードへ実行される。当該プロセスはその後ステップ192に進む。
【0038】
サイクルはステップ200において二度減分されているので、ブロック192における現在のモードはSIモードである。したがって、当該プロセスはステップ208に続き、SI推定器が実行される。好適な実施形態によれば、状態がSI運転のために必要ないのでステップ208が省略され、新しい状態はステップ170でHCCIモードへの切り替え時に生成される。いずれの場合においても、ブロック210において、開ループコマンドが実装され、初期SIサイクルが実行される。続いて当該プロセスはブロック164に続き、新たなモード切り替えコマンドを待機する。
【0039】
上記のプロセス160では、SI推定器は、いくつかの実施形態では、この燃焼モードの主な特徴をキャプチャし、そのような混合気温度や反応生成物濃度のような状態に対する燃焼位相や仕事出力のような測定に関するSI燃焼モデルに基づいている。またHCCI推定器は、いくつかの実施形態では、この燃焼モードの主な特徴をキャプチャし、混合気温度や反応生成物濃度のような状態に対する燃焼位相や仕事出力のような測定に関するHCCI燃焼モデルに基づいている。遷移推定器は、SI推定器とHCCI推定器の両方の部分を含む。なぜなら遷移サイクルはSIモードのような燃焼を有しているが、サイクルの残りの期間中の動作は後続サイクルのHCCI燃焼を生じさせるからである。それ故に、測定された燃焼パラメータ(例えば燃焼位相)に基づいて状態を更新する推定器の一部は、HCCI推定器から取り入れられ、一方、供給入力に関する部分はSI推定器から取り入れられる。例えばカルマンフィルタを使用する場合、測定値の更新はSI推定器に基づき、それに対して時間の更新はHCCI推定器に基づく。
【0040】
遷移サイクルに制御器を切り替えるときの決定は、許容可能な任意の方法で行われてもよい。いくつかの実施形態においては、温度閾値が、自己着火の発生する可能性がある温度を超えて設定され、推定された状態の温度がこの閾値を超えると、遷移サイクルモード推定器が開始される。またいくつかの実施形態では、この決定が、捕捉された排気の量、排気バルブタイミング、又はその他の類似の指標量に基づいてなされる。
【0041】
プロセス160の間、エンジンサイクルは、純粋なSI燃焼又は純粋なHCCI燃焼のいずれかのみに従う必要はない。いくつかの実施形態によれば、遷移中のいくつかの中間サイクルは、火炎伝播と自己着火の両方の現象を示す(例えば火花支援圧縮着火“spark-assisted compression ignition”;以下SACIモードとも称する)。しかしながら前記制御器/推定器は、SIモード、HCCIモード、又は遷移サイクルモードのいずれかで動作する。さらにいくつかの実施形態によれば、前記制御器/推定器は、SIモードとSACIモードの間、及び、SACIモードとHCCIモードの間で画定される遷移サイクルモードに沿って、SACIモードにおいても動作する。したがって前記制御器/推定器は、サイクルに含まれているモードに応じて任意の所定のサイクルで動作する。
【0042】
先にも述べたように、エンジンがSIモードとHCCIモードの間で動作するときには2つの大きな制御問題が存在する。第1の制御問題は、SIモードにおける化学量論の維持(これは三元触媒の最大変換効率のために必要とされる)にあり、それに対してバルブは、それらのSIモード位置とHCCIモード位置との間で、スロットル位置の制御によってランピングされる。
図3の実施形態によれば、この化学量論的制御問題は、任意の所期の方法で取り組まれる(実質的にはガス交換動態の対処)。
【0043】
第2の制御問題は、SIモードからHCCIモードへの遷移中の望ましい燃焼位相と一定の負荷の維持である。プロセス160によって対処されるこの制御問題は、シリンダ104内の燃焼動特性に着目され、したがって遷移中の全ての開ループ制御されるバルブタイミング、スロットル開度、点火時期に焦点が向けられる。バルブに対するランプレートは、期待される電動カム位相器のランプレートに基づいた固定値に設定される(2000rpmにおいて約12度のクランク角CAD/サイクル)。
【0044】
従来のシステムでは、単純に12度のクランク角CAD/サイクルのランプレートを開ループ制御で用いた結果、望ましくない動特性を引き起こしていた。例えば
図11には、サイクル45から開始される12度のクランク角CAD/サイクルのランプレートのバルブ位置を伴った、定常状態SI条件とHCCI条件との間の開ループ制御された遷移に対するエンジンサイクルの関数として、正味平均有効圧力(net mean effective pressure;以下単に「NMEP」とも称する)で表される仕事出力が示されている。サイクル50は自己着火を伴う最初のサイクルである。最初の2つのHCCIサイクルにおける燃料噴射は、SIモードの高い排気温度を補償するために遅いタイミングで維持される(このことは燃焼位相を進める)。それに続く噴射タイミングは、安定した燃焼の維持のために早期に設定される。
図11から明らかなように、いくつかの望ましくない動特性が遷移中に存在している。例えばいくつかのサイクルは非常に早い燃焼位相(上死点“TDC”前)を有し、これはNMEPの急激な低下を引き起こす。早過ぎる燃焼位相はノッキングの増大につながる。
【0045】
したがって
図4の実施形態では、閉ループ制御器124は、一定のNMEPの維持と、非常に早い燃焼位相を伴ったサイクルの防止のために、サイクル毎の燃料噴射タイミングの制御によって所望の位相を追っている。この燃料噴射タイミングは、様々な理由から燃焼位相の一次制御入力として使用される。一つの理由は、噴射タイミングが再圧縮位相中の燃料の反応により燃焼位相に強い影響を及ぼすからである。さらに燃料噴射は、多気筒エンジンのサイクル毎やシリンダ個別の制御入力として使用することができ、そのためにバルブタイミングなどの入力量が全てのシリンダに対してカム位相器位置に基づいて設定される。
【0046】
それに応じて、メモリ114内に格納されているプログラム命令は、低リフトバルブを伴って動作する絞られたスロットルのSIモードから、低リフトバルブを伴った絞られないスロットルのHCCIモードへの移行を可能にする。そのためデュアルカム位相器システムにおいて、高リフトから低リフトへの切り替えの動特性は、SIモードからHCCIモードへの切り替えの動特性から分離される。従ってプロセス160に関連して上述したSIモードからHCCIモードへのモード切り替えは、プロセッサ116の制御のもとで、メモリ104に格納されているプログラム命令により以下のシーケンスに沿って実行される:
1.スロットル112は大きく開かれた位置に操作される
2.吸排気バルブ106,108は、複数のサイクルにわたって定常状態SIモード位置からHCCIモード位置にランピングされる。このランプレートは、所期の電動カム位相器システムのための最大許容ランプレートに基づいて固定される
3.前記吸排気バルブ106,108がHCCIモード位置に近い場合には、燃料噴射量と噴射タイミングとがSIモード値からHCCIモード値に切り替えられ、点火プラグ110はターンオフされる。
【0047】
この結果として得られる遷移は、
図12に概略的に示されている。この
図12では、プロセッサ116は、最初にSIモードでエンジン102を制御する。このSIモードでは、理論空燃比と実際の空燃比との間の割合いを表すラムダ値と内部排気再循環(EGR)量または捕捉された排気ガス量とが典型的には化学量論(λ=1)で低い内部EGR量でもって実行される。SIモードは、通常は、スロットルの部分的閉鎖(化学量論の維持)と、吸排気バルブの高リフトカム動作(通流量の最大化)とによって制御されている。
【0048】
HCCIモードは、それとは対照的に通常はリーン側(λ>1)で高い内部EGR量で実行される。そのためHCCIモードは、スロットル112の全開(これによりポンプロスが最小化)と、吸排気バルブ106/108の低リフトカム動作(シリンダ104内の残留ガスの適切な捕捉を可能にするため)とによって制御される。
【0049】
図12において動作パラメータライン220によって示されているSIモードからの遷移に対して、プロセッサ116はスロットル112を開き、それに対してエンジン吸気バルブ106とエンジン排気バルブ108はランピングされる。それにより動作パラメータライン220の領域222において内部EGRの割合が増加している間化学量論は維持される。一度EGRが動作パラメータライン220の領域224まで上昇すると、自己着火可能にするための十分なEGRが存在する。従ってプロセッサ116は、HCCIモードへの切り替えを開始する。
【0050】
以下の表1は、単気筒エンジンにおいて、2000rpmのエンジン回転速度、の4barのNMEP負荷での1つのモード切り替えに対するSIモードとHCCIモードにおける定常状態の運転条件を示している:
【表1】
【0051】
前記表1のデータには、SIモードへの切り替えが必要とされる、HCCI運転範囲の上端(例えば
図1の点18)に向けた運転状態が示されている。すべてのクランク角度は、燃焼中の上死点(TDC)位置である0度のクランク角度CADを基準にしている。
【0052】
表1は、SIモードでの吸気バルブ106の閉鎖位置(IVC)と排気バルブ108の閉鎖位置(EVC)とが、比較的少量の負のバルブオーバーラップ(NVO)を伴ったバルブタイミングプロファイルで提供されている。しかしながらHCCIモードでは、HCCIバルブタイミングプロファイルは、大きな負のバルブオーバーラップ(NVO)を提供し、それ故に、残留質量を捕捉する。SIモードでの吸気圧は、スロットルが絞られているために大気圧よりも低い。一方HCCIモードではスロットルは絞られないので、それよりも圧力は高い。
【0053】
さらにHCCIモードでは、HCCIのより高い効率化のために、同じ負荷に対してより少ない燃料が噴射される。またこの燃料はSIモードと比べてかなり早期の時点でHCCIモードにて噴射される。これは噴射開始(SOI)タイミングとも称される。実際のところHCCIモードにおける燃料は、再圧縮プロセス中に噴射され、そこでは高い圧力と高い温度条件とが燃料の部分的な反応を可能にしている。このような再圧縮の反応は、後続のエンジンサイクルの燃焼位相に作用する。
【0054】
上述したモード移行中のシリンダ104内の圧力は、
図13に示されている。
図13は、SIモード運転中の圧力の第1の領域230を含んでいる。SIモード運転の場合、制御器124は、ターンオフされる。線形化されたSIモデル(以下に詳述)に基づいた推定器122は、サイクル毎に酸素状態及び温度状態の推定値を計算する。この推定器122は、制御器124がターンオンした場合にフィードバック機能部128に最新の状態の推定値を提供する。
【0055】
図13の領域232は、遷移モード中のシリンダ104内の圧力を示している。このサイクルは、SI燃焼を伴う最後のサイクルである。推定器122はまだ動作中である。なぜならこのサイクルの燃焼が概ね火炎伝播によってであり、自己着火ではないからである。このサイクルでは、制御器124がターンオンされる。従ってフィードフォワード機能126とフィードバック機能128が動作している。これらの両方は以下で詳細に説明する線形化されたHCCIモデルを組み込む。フィードバック制御入力は、最新のSI状態推定値に基づいており、それに対してフィードフォワード入力は、次の(HCCI)サイクルに対する所望のCA
50に基づいている。このモードは、ちょうどこの1つのサイクルに対して動作する。
【0056】
図13中の領域234は、遷移サイクルに直接続くHCCIサイクルを示している。このモードでは、制御器124と推定器122の両方が、線形化されたHCCIモデルに基づいている。
【0057】
一実施形態によれば、メモリ114内に記憶され、プロセッサ116によって実行される線形化されたモード切り替えアルゴリズムは、例えばラヴィ等による文献“IEEE Transactions on Control Systems Technology 18,2010,pp.1289-1302,;Model Based control of HCCI engines using exhaust recompression”に記載されたHCCI用制御指向モデルに基づいている。このラヴィモデルは、各サイクルベースでHCCI動態を捕捉する離散時間非線形モデルである。
図14には、HCCI中にトレースされる、典型的なシリンダ内圧に関連した非線形モデル240のグラフィカルな概要が示されている。この非線形モデルの一次出力は、時点242のCA
50燃焼位相である。燃焼プロセスを制御するために考慮された入力は燃料量及び噴射時期、並びに吸気及び排気バルブタイミングである。
【0058】
この非線形モデルの時点244における状態は、以下の式、
x=[[O
2]
ST
S[f]
SV
IVCK
th]
T (1)
で与えられる。これらの状態は、圧縮行程中(この例ではθ
s=−60CAD(TDC燃焼前の60CAD)のIVC(時点246での入力)後の固定位置θ
sで定義される。ただし、前記[O
2]
S及び[f]
Sは、それぞれ酸素と燃料濃度を表し、前記T
Sは混合気温度を表す。前記V
IVCは、IVCにおけるシリンダ容積である。最終的な状態K
thは、ラヴィらによる文献“Modelling and control of exhaust recompression hcci: Split fuel injection for cylinder-individual combustion control, IEEE Control Systems Magazine, 32, 2012, pp.26-42”に記載されているように、アレニウスの反応速度積分を介した燃焼位相上の燃料噴射タイミングの効果をキャプチャした状態である。
【0059】
特定のエンジンサイクルの状態とCA
50の状態との間並びに次のサイクルの状態との間の関係は、単一のHCCIサイクルを複数の別個のプロセスに分解することによって得られる。それらの各々は単純な熱力学的仮定を用いてモデル化可能である。圧縮と膨張はポリトロープであると仮定され、有限時間の燃焼プロセスは、熱伝達のために失われる燃料の発熱量の一部と仮定される。排気プロセスは、排気マニホールドに伝達されるボリュームベースのマスによって追従される瞬時ブローダウンによってモデル化される。誘導モデルは、インテークマニホールドと、排気から捕捉した空気とIVCにおける燃料との間の瞬時混合で流体力学的平衡を仮定している。統合されたアレニウスモデルは着火の捕捉のために使用されている。
【0060】
上記のプロセスを介してステップを実行すれば、以下の2式に示す5状態非線形状態空間モデルが与えられる:
x
k+1=F
HCCI(x
k,u
k)
y
k=G
HCCI(x
k) (2)
状態ベクトルxは、式(1)で与えられ、出力yはCA
50であり、さらに入力ベクトルuは次式、
[m
fV
EVCV
IVCu
th]
T
で与えられる。但しラヴィらによる文献“"Modeling and control of an exhaust recompression hcci engine using split injection", Journal of Dynamic Systems, Measurement, and Control, 2012, 134.”に記載されているように、前記m
fは、噴射された燃料の質量であり(時点250での入力)、前記V
EVC及び前記V
IVCは、排気バルブ閉鎖時点(時点248での入力)と吸気バルブ閉鎖次点(時点246での入力)のシリンダ容積であり、前記u
thは、時点250でのSOI入力に対応している。これらの入力量と状態は、吸気バルブ閉鎖時点246′とモデル更新244′によって表されるようにサイクル毎に更新される。
【0061】
この非線形モデルは、アレニウスベースの点火モデルを、SIを段階的に導入するための直接のコントロールノブとして機能する点火時期の関数としての点火のための経験的モデルと置き換えることによって、SI燃焼のために拡張される
θ
SOC=a
1θ
spk+a
2 (3)
式(3)においては、θ
SOCは燃焼位置の開始を表し、θ
spkは点火時期を表す。不活性残留物は火炎伝播を遅くし、燃焼持続時間を長くするので第2の量はSI燃焼に重要な影響を持っている。また燃焼の持続時間は、次式に示すように、
Δθ
SOC=b
1θ
SOC+b
2EGR+b
3 (4)
燃焼の開始と内部EGR率の関数として実験データからパラメータ化することが可能である。
【0062】
制御指向の非線形モデルの他の構成要素は、SIモードとHCCIモードの間では本質的に同じである。そのようなポリトロープ指数などのようなパラメータは異なっているが、実験データに基づいて調整される。非線形モデルは、次式、
x
k+1=F
SI(x
k,u
k)
y
k=G
SI(x
k,u
k) (5)
で表すことができる。
【0063】
状態および出力はHCCIモデルと同じであるが、但し入力ベクトルは次式、
[m
fV
EVCV
IVCθ
spk]
T
で与えられる。ここでは前記噴射タイミング入力が点火時期入力に置き換えられている。点火時期入力は燃焼位相に直接影響を与えるので、出力方程式はここではダイレクトフィードスルータームを有する。
【0064】
SI制御モデルとHCCI制御モデルを備えたモード切り替えをシミュレートするために、2つの非線形モデルが、それぞれの定常状態条件に調整され、その後、遷移中に一緒にステッチされる。自動着火が発生する直前のサイクルは遷移サイクルとして定義される。それ故、SI燃焼後のこの遷移サイクルにおいてはモデルがHCCIモードに切り替えられ、当該遷移サイクルの残りは、HCCIパラメータによって実行される。
【0065】
図4の実施形態では、上述した非線形モデルは、モード切り替え前後で定常状態SI動作点とHCCI動作点の周りで線形化されている。この線形化は、次式、
【数1】
の任意の状態量a
kに対する一次式を用いて数値的に行われる。ここで前記
は、公称動作条件下での状態量aの値を表し、さらに前記
は、前記動作点からの正規化偏差を示す。線形化されたSIモデルとHCCIモデルは、以下の式、
【数2】
【0066】
【数3】
から与えられる。ここで前記A
SI、B
SI、C
SI、D
SI、A
HCCI、B
HCCI、C
HCCIは、それぞれの線形化点の関数である行列である。
【0067】
なお、上記2つの方程式のセットにおける状態量、入力量、出力量は、それぞれの公称動作点の周辺で正規化された値であることに留意すべきである。公称動作点は、SIモードとHCCIモードとでは異なるため、同じ絶対状態量、絶対入力量、絶対出力量の正規化された値も、SIモードとHCCIモードとで異なることになる。例示的な制御設計で使用される線形化点は、前述の表1における、2000rpm,4バールNMEPの動作点で行ったものである。
【0068】
図3の実施形態によるプロセッサ116は、3つの全ての動作モードの状態を推定するカルマンフィルタ構造を使用している。CA
50の測定値は燃焼直後に得られ、そのサイクルの制御入力量(噴射タイミング)が決定される以前である。そのため、カルマンフィルタの現下の推定形態が使用される。SI又は遷移サイクルモードの場合は、時間と測定の更新は、それぞれ次式のような形態、
【数4】
を有している。ここで、前記M
SIは、カルマンフィルタの補正利得である。制御器124は、前述の、
(すなわちサイクルkの測定値によって与えられたサイクルkの推定値)によって与えられる現下の状態推定値を使用する。なお、そのようなセットアップは、測定された出力に対する制御入力量の直接的なフィードスルーが存在しない場合にのみ動作することに留意されたい(それ以外の場合は、代数ループが作成されるので)。現下のモード切り替えモデルでは、フィードスルーされる唯一の入力量は、フィードバック制御器により閉ループ制御されていない点火時期なので問題はない。
【0069】
以下に示す類似した式は、
【数5】
HCCIモードの時に使用されるHCCIモデルに基づいて得られるものである。ここではそれらの各推定器によって生成されるこれらの状態推定値が、異なる公称動作点周りで正規化されたものなので、再正規化は、遷移サイクルの後でSI推定器からHCCI推定器に状態量の推定が引き継がれるときに行う必要がある点に留意すべきである。
【0070】
閉ループ制御器は、線形化されたHCCIモデルに基づいている。このフィードバック入力は、推定器から得られた現下の状態推定値に基づいており、さらにLQR制御利得に基づいている。フィードフォワード入力は、1994年、アディソンウェスリー社から出版されたフランクリンらによる文献“Feedback Control of Dynamic Systems, 3rd edition ed.”で開示されているように、基準入力制御構造によって決定され、それは所望のCA
50と開ループ入力に基づいている。CA
50エラーに基づく積分成分は、遷移後に位相が所望の値に収束することを確実にするために付加される。
【0071】
制御入力は次式、
【数6】
によって与えられる。ここで前記r
kは基準入力(所望のCA
50を表す)であり、前記K
LQRはフィードバック制御利得であり、前記K
Iは積分利得あり、前記N
u及びN
xは、線形システムが任意の定数入力に対してゼロでもって定常状態エラーを返した制約から得られたフィードフォワード行列である。
【0072】
プロセッサ116によって実行される制御ストラテジは、圧縮比が11:1の単気筒HCCIエンジンでテストされたものである。吸気バルブと排気バルブ(各々2つ)は、各サイクル毎のバルブの完全にフレキシブルな動作を可能にする電気油圧式可変バルブ作動システム(VVAシステム)によって制御されている。このシステムは、カム位相器をエミュレートするために使用され、燃料噴射タイミングのみが変更されるように一定のバルブプロファイルを維持している。エンジンは、直噴システムを備えている。筒内圧は、キスラー圧電圧力トランスデューサを使用して測定される。ここで開示する全てのテストは、吸気と排気の両方において4mmのバルブリフト量を使用して実行されたものである。さらに燃料噴射圧力は60バールに設定され、エンジン冷却水温度は90℃の温度で一定に保たれている。
【0073】
図15と
図16には、4バールのNMEPと2000rpmでのモード切り替え中の開ループ制御応答(
図11に示す)の結果に伴うテスト結果が、エンジンサイクル10前のSI運転とエンジンサイクル11後のHCCI運転と共に示されている。
図15においてライン260は、閉ループ制御下で閉じられる排気バルブを示しており、それに対してライン262は、開ループ制御下で閉じられる排気バルブを示している。またライン264は、閉ループ制御下で閉じられる吸気バルブを示しており、それに対してライン266は、開ループ制御下で閉じられる吸気バルブを示している。これらのラインに見られるように、これらのバルブタイミングは、SIモードにおけるそれらの定常状態位置からHCCIモードにおける定常状態位置まで複数のサイクルにわたってランピングされており、これは、市販のカム位相器によって達成可能な典型的なランプを表している。
【0074】
さらにライン268は、閉ループ制御下での点火プラグのタイミングを示しており、それに対してライン270は、開ループ制御下での点火プラグのタイミングを示している。最後に、ライン272は、閉ループ制御下で噴射された燃料量を示しており、それに対してライン274は、開ループ制御下で噴射された燃料量を示している。ここでのスパークは、サイクル12でターンオフされ、燃料質量は、サイクル10でより少ない値に切り替えられる(HCCIモードの高い効率のため)。
図15は、開ループ入力と閉ループ入力との間にほとんど差がなかったことを示している。
【0075】
図16には、関心のある2つの出力量、CA
50及びNMEPと、閉ループ制御入力量、SOI(噴射タイミングの開始)が示されている。
図16は、閉ループ制御のためのCA
50を示したライン280と、それに対して開ループ制御のためのCA
50を示したライン282と、所望のCA
50を示したライン284とを含んでいる。さらにライン286は、閉ループ制御のためのNMEPを示しており、それに対してライン288は、開ループ制御のためのNMEPを示している。最後にライン290は、閉ループ制御のためのSOIを示しており、それに対してライン292は、開ループ制御のためのSOIを示している。
【0076】
図16では、モード切り替え後の所望のCA
50が、上死点TDC後の7度CADで設定されている。
図16では、制御器/推定器は、サイクル1乃至10に対してはSIモードで実行され、サイクル11では遷移モードで実行され、サイクル12以降はHCCIモードで実行されている。SIモードでは、閉ループ制御動作はなく、すべての入力量は、開ループで命令されている。閉ループ制御器は、サイクル11の間に投入され、このサイクルはいくつかの自己着火を伴う最初のサイクルである。
【0077】
重要なことは、閉ループ制御(ライン290)のためのSOIの軌道は、開ループコマンド(ライン292)から著しく異なっていることである。具体的には、HCCI燃焼を安定化させる早期噴射の2サイクル後に、噴射タイミングが遅延方向に動かされ、それによって燃焼位相も遅延する。この遅延は2つの重要な効果を有している。
【0078】
第1の効果は、NMEPにおける急峻な低下が回避されることである。対照的に開ループ制御のケース(ライン288)は、時点294で急峻に低下する。従って閉ループ制御は、モード切り替えの間に比較的安定した仕事出力を維持する(さらに遅い燃焼位相のために全体的な効率が向上している事実)。
【0079】
第2の効果は、非常に早期の燃焼位相が伴うサイクルが回避されることである。この早期の燃焼位相は、NMEPにおける急峻な低下だけでなくノッキングも引き起こす。例えば
図17には、開ループ制御の下でのSI運転からの切り替えに続くHCCI運転の最初の4つのサイクルにわたるシリンダ内の圧力のグラフ300が示されている。この
図17では、ライン302が第1のサイクル、ライン304は第2のサイクル、ライン306は第3のサイクル、ライン308は第4のサイクルである。
図17は、ノッキングが発生していることを示している。
【0080】
図18には、閉ループ制御の下でのSI運転からの切り替えに続くHCCI運転の最初の4つのサイクルにわたるシリンダ内の圧力のグラフ310が示されている。この
図18では、ライン312が第1のサイクル、ライン314は第2のサイクル、ライン316は第3のサイクル、ライン318は第4のサイクルである。
図18は、
図17よりもノッキングが低減していることを示している。
【0081】
したがって制御器124は、開ループ制御を用いた応答を超える大きな改善を提供する。
図16は、所望のCA
50のアンダーシュートを示している(ライン284の真下のライン280)。必要に応じてこのアンダーシュートは、より積極的なフィードバック制御器によって、あるいは、さらなるバルブタイミング制御の導入によって、低減することが可能である。
【0082】
さらなる制御ストラテジを検証するために、システム100は今度は1500rpmのエンジン回転速度と2.3バールのNMEP負荷のもとで試験がなされた。この点において制御器124は何らかの調整なしで実施されている。その結果は
図19に示されている。
図19には、閉ループ制御のためのCA
50を示したライン330と、それに対して開ループ制御のためのCA
50を示したライン332と、所望のCA
50を示したライン334とが含まれている。さらにライン338は、閉ループ制御のためのNMEPを示し、それに対してライン340は、開ループ制御のためのNMEPを示している。最後にライン342は、閉ループ制御のためのSOIを示し、それに対してライン344は開ループ制御のためのSOIを示している。
図19の条件下であっても、制御器は負荷変動の低減を伴ってスムーズな遷移を提供している。
【0083】
図19の実施例では、閉ループ制御器124により提供される応答は、開ループ制御の場合と類似している。しかしながら制御器124は、サイクル10から始まる噴射タイミングの早期側への移動によって、より望ましい遷移応答を達成し、さらに開ループ制御で見られるサイクル11での非常に遅い位相も回避している。これらの結果は、制御器124がSIモードからHCCIモードへの堅固なモード切り替えを十分に達成できることを示している。
【0084】
従って前記制御器124は、非常に早い位相(これはノッキングを引き起こす可能性がある)と非常に遅い位相(これは失火を引き起こす可能性がある)のいずれかを伴うサイクルを防止し、開ループ制御システムよりも狭い範囲内に燃焼位相を維持する。制御器124の性能は、パラメータ化された場所から大きく異なる動作点での何らかの調整を必要とすることなく、制御ストラテジの堅牢性を示している。
【0085】
上述の制御システムによれば、
1)燃焼モード切り替え動特性からのバルブ切り替え動特性の切り離しが提供され、それによって全体としてシンプルな制御構造が可能となり、
2)燃料噴射タイミングのようなアクチュエータの閉ループ制御が提供され、それによって遷移中のサイクルごと及びシリンダ個別の堅固な制御が可能となり、
3)SIモードとHCCIモードの間の遷移中の切り替え制御/推定スキーマの使用が提供され、それによって、SIモード、HCCIモード、自己着火開始前の最後のサイクルのための中間遷移モード、として定義される3つの異なるモードが存在し、
4)遷移サイクル用に設計された推定器が提供され、それがSI推定器とHCCI推定器の両要素に組み込まれ、さらに
5)混合気温度のような状態量に基づく閾値を介して、自己着火前の遷移サイクルの開始を推定するための構想が提供される。
【0086】
本発明は、図面に示され前述の説明において詳細に説明してきたが、同じような特徴はあくまでも例示的なものであって、限定と捕らえるべきではない。ここでは好適な実施形態のみを提示してきたが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、あらゆる変更、改善およびさらなる応用が保護されることが望まれる。例えば本開示は、SIモードとHCCIモードの間の、スパーク支援された圧縮着火(SACI)などのような他の中間モードへの移行に対しても有意である。