特許第6239014号(P6239014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239014
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A47J27/00 103H
   A47J27/00 103G
   A47J27/00 103J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-4560(P2016-4560)
(22)【出願日】2016年1月13日
(62)【分割の表示】特願2014-162821(P2014-162821)の分割
【原出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-47483(P2016-47483A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2016年1月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荒津 百合子
(72)【発明者】
【氏名】永田 滋之
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−150068(JP,A)
【文献】 特開2006−296908(JP,A)
【文献】 特開2009−078190(JP,A)
【文献】 特開平08−038347(JP,A)
【文献】 特開平11−009447(JP,A)
【文献】 特開2012−200346(JP,A)
【文献】 特開2007−236517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00−27/13
A47J 33/00−36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する鍋状容器と、
上面を開口し、内部に前記鍋状容器を収容する本体と、
前記本体の上面の開口を開閉可能に覆う蓋体と、
前記鍋状容器を加熱する加熱手段と、を備える炊飯器であって、
前記鍋状容器は、外周側面に鍔部が設けられた羽釜形状を有し、
前記鍔部は、前記鍋状容器の上端より下方に設けられ、
前記鍋状容器の前記鍔部より上方に位置する上方部と、前記本体または前記蓋体の前記上方部に対向する部分との間の距離は、前記鍋状容器の外周側面からの前記鍔部の突出長さ以上であり、
前記上方部と、前記本体または前記蓋体の前記上方部に対向する部分との間の空間は、前記蓋体が閉じられた状態において、外部と連通し、
前記本体または前記蓋体に、前記外部と連通するスリットが形成されることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記鍔部は、前記炊飯器における最大容量の前記被加熱物を炊きあげたときの前記被加熱物の高さに設けられることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記スリットは、開閉可能であることを特徴とする請求項に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記鍋状容器の前記上方部を冷却するための冷却手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記蓋体に設けられたファンであることを特徴とする請求項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記冷却手段として、前記鍋状容器の前記上方部の少なくとも一部を、前記鍋状容器の前記鍔部よりも下方の部分に比べて熱伝導率が大きい素材で構成することを特徴とする請求項またはに記載の炊飯器。
【請求項7】
前記冷却手段として、前記鍋状容器の前記上方部の少なくとも一部の厚みを、前記鍋状容器の前記鍔部よりも下方の部分の厚みに比べて薄くすることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の食品を入れた鍋状容器を加熱調理する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、米を均一に加熱して美味しく炊飯するために内釜(鍋状容器)を羽釜形状とすることが知られている。羽釜形状の内釜を有する炊飯器の一例として、特許文献1には、内釜の鍔部を、炊飯器の最大容量の米を炊飯する際に設定される水位の近傍に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−65456号公報(段落[0019]、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される炊飯器で最大容量の米を炊飯した場合、炊飯により米粒は膨らんで体積が増えるため、炊飯の後半では上部の米は鍔部よりも上方に位置し、加熱不足となる。このように、米の場所によって加熱に違いが生じると、炊きむらなどにより美味しい炊飯調理ができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、以上のような課題を背景としてなされたものであり、被加熱物の全体を十分に加熱して美味しく炊き上げることが可能な炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、被加熱物を収容する鍋状容器と、上面を開口し、内部に前記鍋状容器を収容する本体と、前記本体の上面の開口を開閉可能に覆う蓋体と、前記鍋状容器を加熱する加熱手段と、を備える炊飯器であって、前記鍋状容器は、外周側面に鍔部が設けられた羽釜形状を有し、前記鍔部は、前記鍋状容器の上端より下方に設けられ、前記鍋状容器の前記鍔部より上方に位置する上方部と、前記本体または前記蓋体の前記上方部に対向する部分との間の距離は、前記鍋状容器の外周側面からの前記鍔部の突出長さ以上であり、前記上方部と、前記本体または前記蓋体の前記上方部に対向する部分との間の空間は、前記蓋体が閉じられた状態において、外部と連通し、前記本体または前記蓋体に、前記外部と連通するスリットが形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器によれば、鍋状容器の鍔部より上方に位置する上方部と、本体または蓋体の上方部に対向する部分との間の距離が、鍋状容器の外周側面からの鍔部の突出長さ以上であるため、鍋状容器の上方部と、本体または蓋体の上方部に対向する部分との間に大きな空間を設けることができ、鍋状容器の上方部を冷却することができる。これにより、炊飯中の吹きこぼれを抑制し、大火力での加熱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の構成を概略的に示す断面模式図である。
図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の最大量炊飯時における鍋状容器を示す断面模式図である。
図3】本発明の実施の形態2における炊飯器の構成を概略的に示す断面模式図の一部を拡大した図である。
図4】本発明の実施の形態3における炊飯器の構成を概略的に示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る炊飯器について図面を参照して説明する。なお、この図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器100の構成を概略的に示す断面模式図である。本実施の形態における炊飯器100は、被加熱物である食品(図1の例では米200および水201)を加熱して炊き上げる家庭用炊飯器である。図1に示すように、炊飯器100は、外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部開口を開閉する蓋体10と、本体1の内部に収容される羽釜形状の鍋状容器5と、を備えている。
【0011】
(本体1)
本体1は、容器カバー2と、加熱手段としての加熱コイル3と、鍋底温度センサー4と、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、時間計測手段7と、各部および各装置を駆動制御して炊飯工程を実行する制御手段8とを備えている。
【0012】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、鍋底温度センサー4が挿入される孔部2aが設けられている。また、容器カバー2の側面には鍋状容器5を置くための肩部2bが設けられている。さらに、肩部2bには鍋状容器5との密閉性を高めるための弾性部材2c(たとえばシリコン)が設けられている。容器カバー2の肩部2bに鍋状容器5の鍔部5aを置くことで、容器カバー2と鍋状容器5との間は閉ざされた空間となる。この状態で加熱コイル3を加熱すると、閉ざされた空間によって断熱されるため、鍋状容器5の鍔部5aより下方に位置する部分と、その中に収容されている米200の温度が冷めにくくなり効率的に加熱することができる。
【0013】
また、本体1の外装部材19と容器カバー2との間の空間には断熱材18が設けられている。断熱材18は、容器カバー2の肩部2bの下方に配置される。これにより、容器カバー2と鍋状容器5の鍔部5aより下方に位置する部分との間の空間の断熱性を向上させることができる。
【0014】
加熱コイル3は、制御手段8により通電制御され、鍋状容器5を誘導加熱するものである。なお、加熱手段として、加熱コイル3に代えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けても良い。また、図1の例では、鍋状容器5の底面近傍に加熱コイル3を配置しているが、加熱コイル3の配置は図示のものに限定されず、例えば鍋状容器5の底面近傍に加えて鍋状容器5の側面に沿って加熱コイル3を設けても良い。
【0015】
鍋底温度センサー4は、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の温度を検知する。本実施の形態の鍋底温度センサー4は、バネ等の弾性手段(図示せず)によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接する。鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。なお、鍋底温度センサー4の具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用しても良い。
【0016】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(図1の紙面左側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。なお、本体1に、炊飯器100を運搬するためのハンドル(図示せず)を設けておいても良い。ハンドルを設ける場合には、ハンドルを本体1の側面上部の略前後中央に軸支し、ハンドルの回転方向を蓋体10の回動方向と一致させると良い。そうすれば、炊飯器100を運搬する際には、使用者はハンドルの軸支点のほぼ直上に位置するようにハンドルを回転させて持ち上げ、ハンドルのみを持って炊飯器100を運搬することが可能となる。
【0017】
時間計測手段7は、制御手段8からの指示信号に基づいて経過時間をカウントする。時間計測手段7がカウントした経過時間は、制御手段8に出力される。
【0018】
制御手段8は、鍋底温度センサー4、ならびに蓋体10に設けられた操作表示部15および内部温度センサー16からの出力に基づいて、加熱コイル3に通電する高周波電流を制御する。そのほか、制御手段8は、炊飯器100の動作全般を制御する。制御手段8は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することができ、またはマイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0019】
(蓋体10)
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有する。外蓋11には、着脱できるカートリッジ14が設けられ、外蓋11の上面には操作表示部15が設けられている。また、外蓋11の一端(図1の紙面右側)には、鍋状容器5の鍔部5aより上方に位置する上方部5bを冷やすための冷却手段としてファン17が設けられている。ファン17は、制御手段8の制御の下、鍋状容器5の上方部5bと容器カバー2との間の空間SP1に外部の空気を送る。
【0020】
外蓋11は、蓋体10の上部および側部を構成し、外蓋11の下面(鍋状容器5に対向する面)には、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材13を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周との密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12には、内部温度センサー16を挿入させる孔部12aが形成され、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度センサー16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。さらに、内蓋12には、鍋状容器5内で発生した蒸気が通る蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。
【0021】
カートリッジ14には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ流出する。カートリッジ14内を流れる過程において蒸気は冷却されて復水するので、炊飯器100の外へ流出する蒸気量を減らすことができる。
【0022】
操作表示部15は、外蓋11の上面に設けられている。この操作表示部15は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態を表示する。操作表示部15に対して設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、取り消し、炊飯予約、炊飯メニューがある。炊飯メニューの具体例としては、白米炊飯または玄米炊飯等の米の種類に関するもの、標準炊飯または早炊き炊飯等の炊飯時間に関するもの、かためまたはやわらかめ等の炊き上がりの米飯のかたさに関するもの等が挙げられる。操作表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中または予約待機中等の炊飯器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米の量等が挙げられる。なお、ここで示した操作表示部15の具体的構成は一例であり、本発明を限定するものではない。
【0023】
操作表示部15に対して使用者が操作入力を行うと、本体1に内蔵された制御手段8は、入力された炊飯メニューおよび炊飯する米の量に合わせた炊飯プログラムに従って、加熱コイル3を動作させて炊飯工程を実行する。
【0024】
内部温度センサー16は、鍋状容器5内の温度を検知する温度検知手段であり、外蓋11に取り付けられている。内部温度センサー16の一部は内蓋12の孔部12aに挿入されており、内部温度センサー16は孔部12aを介して鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16は、例えばサーミスタで構成することができる。内部温度センサー16が検知した鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0025】
(鍋状容器5)
鍋状容器5は、有底円筒形状を有し、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。鍋状容器5の内部には、被加熱物である米200および水201が収容される。また、本実施の形態の鍋状容器5は羽釜形状を有し、外周側面には、外側へ突出する鍔部5aが全周にわたって設けられる。鍋状容器5の鍔部5aを容器カバー2の側面に設けられた肩部2bに置くことで、鍋状容器5が容器カバー2内に収容される。
【0026】
図2は、炊飯器100の最大容量の米200を炊飯したとき(以下、「最大量炊飯時」という)の鍋状容器5を示す断面模式図である。図2に示すように、本実施の形態では、鍋状容器5の鍔部5aが、鍋状容器5の上端より下方であって、最大量炊飯時に炊きあがった米飯202の高さ以上の位置に設けられる。鍔部5aをこの位置に設けることにより、最大量炊飯時でも、鍔部5aによって米200全体の温度を高温に保持することができる。
【0027】
また、鍔部5aを鍋状容器5の上端またはその近傍に設けると、米飯202の上部の空間SP2(図2において破線で囲われた空間)の温度も、鍔部5aによって高温に保持されることになる。この場合、空間SP2の温度が高いことで、炊飯中の沸騰によってせりあがってきた泡やおねばの上昇を抑えることができず、吹きこぼれにつながってしまう可能性がある。これに対し、本実施の形態では、鍔部5aを最大量炊飯時の米飯202の高さに設けることで、空間SP2の温度上昇を抑制することも可能となる。なお、鍔部5aは「最大量炊飯時の米飯202の高さ」に設けられるとしているが、この場合の「最大量炊飯時の米飯202の高さ」は、最大量炊飯時の米飯202の高さと同一の位置だけでなく、最大量炊飯時の米飯202の高さの近傍の位置も含む。
【0028】
続いて、本実施の形態における炊飯器100の炊飯工程の動作について説明する。
【0029】
本実施の形態における炊飯器100の炊飯工程は、吸水工程と、昇温工程と、沸騰維持工程と、蒸らし工程とを含む。吸水工程とは、鍋状容器5内の米200の内部にまで吸水を促す工程である。その次の昇温工程とは、吸水工程終了後から鍋状容器5内の水201が沸騰するまでの工程である。鍋状容器5内の水201が沸騰すると、制御手段8は、次の沸騰維持工程に移行する。この沸騰維持工程では、鍋状容器5内の温度が沸騰温度を保持するように加熱し、米200のデンプンの糊化を促進する。最後の蒸らし工程とは、鍋状容器5内の米200を蒸らすことにより米粒中心部まで糊化を進行させ、且つ、米粒内の水分の分布を均一にする工程である。
【0030】
沸騰維持工程の際、熱と水201とによって米200は膨張するため、鍋状容器5内での被加熱物の体積は炊飯工程の前半と後半とで変化する。ここで、本実施の形態では、鍋状容器5の鍔部5aの位置を最大量炊飯時の被加熱物の炊きあがりの高さとしている。そのため、最大量炊飯時に米200が膨張した場合も、米200全体が鍋状容器5の鍔部5aと同じ位置またはその下方に位置する。これにより、炊飯工程を通して米200全体が高温に保持され、炊きむらのない美味しい炊飯が可能となる。なお、最大量炊飯時以外の場合でも、最大量炊飯時と同様に、炊飯工程を通して米200の全体が加熱されるため、美味しい炊飯調理を行うことが可能である。
【0031】
また、一般に、大火力で沸騰維持工程を実行すると美味しいご飯を得ることができるが、その分、泡やおねばの動きが激しくなって吹きこぼれが起きてしまう。このような吹きこぼれを防ぐために、火力を抑えて炊飯することも考えられるが、この場合は美味しく炊けなくなってしまう恐れがある。そこで、本実施の形態では、沸騰維持工程が始まると、制御手段8がファン17を駆動し、図1に示す空間SP1に外気を送り込む。これにより、鍋状容器5の鍔部5aより上方に位置する上方部5bが冷却され、図2に示す鍋状容器5内部の米飯202上部の空間SP2も冷却される。その結果、炊飯中に沸騰によって泡やおねばがせり上がってきた場合にも、これらの上昇を抑え、吹きこぼれを抑制することができる。そのため、沸騰維持工程においても、所望の火力(すなわち大火力)で加熱を実行することができる。
【0032】
沸騰維持工程が終了すると、制御手段8は、ファン17を停止する。このように、吹きこぼれが発生し得ないタイミングではファン17を止めることで鍋状容器5の不必要な温度低下を抑えることができる。
【0033】
このように、本実施の形態では、鍋状容器5の鍔部5aを最大量炊飯時の被加熱物の炊きあがりの高さに設けることで、炊飯工程を通して米全体を十分に加熱することができ、炊きむらのない美味しい炊飯調理を行うことが可能となる。また、鍋状容器5内部の鍔部5aよりも上方の空間SP2の温度上昇を抑えることで、吹きこぼれを抑制することができ、大火力での加熱も可能となる。
【0034】
実施の形態2.
続いて、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本発明の実施の形態2における炊飯器100Aの構成を概略的に示す断面模式図の一部を拡大した図である。本実施の形態における炊飯器100Aは、本体1Aにスリット20が形成される点において、実施の形態1と相違する。その他の炊飯器100Aの構成および炊飯工程については、実施の形態1と同様である。
【0035】
本実施の形態では、本体1Aが備える容器カバー2Aおよび外装部材19Aにスリット20が形成される。スリット20は、ファン17の反対側であって、鍋状容器5の上方部5bに対向する位置(図3の破線で囲った部分)に形成される。スリット20は、等間隔に配置された複数のスリットからなる。スリット20を形成することによって、鍋状容器5の上方部5bの熱が本体1Aの外部に排出される。これにより、鍋状容器5内部の空間SP2(図2)をさらに冷やすことができ、吹きこぼれをより一層抑制することが可能となる。
【0036】
実施の形態3.
続いて、本発明の実施の形態3について説明する。図4は、実施の形態3における炊飯器100Bの構成を概略的に示す断面模式図である。図1に示される実施の形態1の炊飯器100では、鍋状容器5の全体が本体1に収容される構成となっていたが、本実施の形態の炊飯器100Bは、図4に示すように鍋状容器5の一部が本体1Bから突出する構成となっている。その他、炊飯器100Bにおいて図1と同じ番号が付された構成および炊飯工程については、実施の形態1と同様である。
【0037】
本実施の形態における本体1Bが備える容器カバー2Bは、鍋状容器5の鍔部5aより下方の部分を収容するよう構成される。また、蓋体10Bは、鍋状容器5の鍔部5aよりも上方の上方部5bを覆うための側壁30を有する。側壁30は、蓋体10Bの外周に沿って下方に突出して設けられる。
【0038】
さらに、蓋体10Bの側壁30には、スリット21が形成される。スリット21は、ファン17の反対側であって、鍋状容器5の上方部5bに対向する位置(図4の破線で囲った部分)に形成される。スリット21は、実施の形態2のスリット20と同様に、等間隔に配置された複数のスリットからなり、スリット21により、鍋状容器5の上方部5bの熱が外部に排出される。これにより、本実施の形態の場合も、実施の形態2と同様に、鍋状容器5の鍔部5aよりも上方の空間SP2(図2)をさらに冷やすことができ、吹きこぼれをより一層抑制することが可能となる。
【0039】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形または組み合わせが可能である。例えば、上記実施の形態では、空間SP2を冷却するための手段として、ファン17に加えてスリット20またはスリット21を形成する構成となっているが、スリット20またはスリット21のみを形成し、ファン17を省略する構成としても良い。この場合は電気を使う必要がなく、省エネルギーを実現することができる。また、スリット20および21の周方向の位置は、上記実施の形態で述べたファン17の反対側に限定されるものではなく、本体1Aまたは蓋体10Bの外周上の任意の位置、または外周全周にわたって形成されても良い。
【0040】
また、スリット20およびスリット21を開閉可能な構成としても良い。この場合、空間SP2を冷却する必要がある沸騰維持工程にのみ、制御手段8によってスリット20またはスリット21を開放し、それ以外の工程では閉じるように制御する。このような構成とすることで、不必要に鍋状容器5の熱を排出することがなく、省エネルギーを実現することができる。
【0041】
また、鍋状容器5の上方部5bを冷却するための手段として、ファン17およびスリット20、21に加えて(または替えて)、鍋状容器5の上方部5bの熱抵抗が鍔部5aより下方の部分の熱抵抗に比べて小さくなるよう構成しても良い。例えば、鍋状容器5の上方部5bの少なくとも一部を熱伝導率が大きい材料で構成することで、放熱を促すことができる。この場合、鍔部5aより下方の部分の熱伝導率は、上方部5bの熱伝導率に比べて小さい。または、鍋状容器5の上方部5bの厚みを鍔部5aより下方の部分の厚みに比べて薄くしても良い。さらに、複数個の鍔部5aを形成し、表面積を広げることによって放熱を促す構成としても良い。
【符号の説明】
【0042】
1、1A、1B 本体、2、2A、2B 容器カバー、2a 孔部、2b 肩部、2c 弾性部材、3 加熱コイル、4 鍋底温度センサー、5 鍋状容器、5a 鍔部、5b 上方部、6 ヒンジ部、7 時間計測手段、8 制御手段、9 蓋パッキン、10、10B 蓋体、11 外蓋、11a パッキン、12 内蓋、12a 孔部、12b 蒸気口、13 係止材、14 カートリッジ、14a 蒸気取入口、14b 蒸気排出口、15 操作表示部、16 内部温度センサー、17 ファン、18 断熱材、19、19A 外装部材、20、21 スリット、30 側壁、100、100A、100B 炊飯器。
図1
図2
図3
図4