(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
針葉樹クラフトサザンパイン繊維を含み、0.59g/cc〜0.65g/ccの密度を有し、該繊維が、少なくとも92%のISO明度、少なくとも85のCIE白色度、および87.5%〜90%のR18値を有し、そして該繊維が輝度向上剤を含まない、パルプ板。
【背景技術】
【0004】
背景
セルロース繊維および誘導体は、紙、吸収性製品、食品または食品関連用途、医薬品において、および工業用途において広く使用されている。セルロース繊維の主な源は、木材パルプおよびコットンである。セルロース源およびセルロース加工条件により一般に、セルロース繊維特性が、したがって、その繊維のある特定の最終用途への適用性が決まる。加工するのに相対的に安価であるが、非常に多目的に使用でき、様々な用途で使用することを可能にするセルロース繊維の必要性が存在する。
【0005】
化学クラフトパルプ化法によって生産されるクラフト繊維は、良好な明度特性および強度特性を有する最終製品を一般にもたらすセルロース繊維の安価な源を提供する。したがって、これは、紙用途において広く使用されている。しかし、標準的なクラフト繊維は、標準的なクラフトパルプ化および漂白から生じるセルロースの化学構造に起因して、セルロース誘導体生産などの下流用途における適用性が限られている。一般に、標準的なクラフト繊維は、繊維のその後の物理的変更および/または化学修飾を妨げ得る、過剰の残留ヘミセルロースおよび他の天然に存在する物質を含有する。さらに、標準的なクラフト繊維は、限られた化学官能性を有し、一般に剛性であり、それほど圧縮性でない。
【0006】
標準的なクラフトプロセスでは、脱リグニンを実施するために、「白液」と呼ばれる化学試薬が蒸解釜内で木材チップと合わされる。脱リグニンは、セルロース繊維に結合したリグニンが、高温アルカリ性溶液中で溶解度が高いために除去されるプロセスを指す。このプロセスは、「蒸煮」と呼ばれることが多い。一般に、白液は、水酸化ナトリウム(NaOH)および硫化ナトリウム(Na
2S)のアルカリ性水溶液である。使用される樹種および所望の最終製品に応じて、白液は、木材の乾燥重量に基づいて所望の総アルカリチャージをもたらすのに十分な量で木材チップに添加される。
【0007】
一般に、蒸解釜内の木材/液混合物の温度は、約1〜3時間の総反応時間にわたって約145℃〜170℃に維持される。蒸解が完了すると、得られるクラフト木材パルプは、使用済みの化学物質および溶解したリグニンを含む廃液(黒液)から分離される。慣例的に、黒液は、再使用のためにナトリウム化合物質および硫黄化学物質を回収するためにクラフト回収プロセスにおいて燃やされる。
【0008】
この段階では、クラフトパルプは、セルロース繊維上に残っているリグニン残基のために特徴的な茶色がかった色を呈する。蒸解および洗浄後に、繊維はしばしば漂白されて、余計なリグニンが除去され、繊維が白くされ、明るくされる。漂白化学物質は、蒸煮化学物質よりはるかに高価であるので、一般に、可能な限り多くのリグニンが蒸煮プロセスの間に除去される。しかし、リグニンが除去されすぎると、セルロース劣化が増大し得るので、これらのプロセスは、バランスが取れている必要があることが理解される。蒸煮後かつ漂白前の針葉樹の一般的なκ数(パルプ中の残留リグニンの量を求めるのに使用される尺度)は、28〜32の範囲内である。
【0009】
蒸解および洗浄後に、繊維は一般に、多段階シーケンスで漂白され、多段階シーケンスは、漂白シーケンスの最後または最後付近の少なくとも1つのアルカリ性ステップを含む、強酸性漂白ステップおよび強アルカリ性漂白ステップを伝統的に含む。木材パルプの漂白は、一般に、物理的性質に悪影響を及ぼすことなくリグニンおよび他の不純物を除去することによって、パルプの白色度および明度を選択的に増大させる目的で一般に行われる。クラフトパルプなどの化学パルプの漂白は、一般に、良好な選択性とともに所望の明度を実現するためにいくつかの異なる漂白段階を必要とする。一般に、漂白シーケンスは、pH範囲を交互させて行われる段階を使用する。この交互は、例えば、リグニン分解の生成物を可溶化することによって、漂白シーケンス中に生成される不純物の除去に役立つ。したがって一般に、順に3つの酸性段階など、漂白シーケンス中に一連の酸性段階を使用すると、酸性−アルカリ性−酸性などの酸性/アルカリ性段階を交互させるのと同じ明度がもたらされないことが予期される。例えば、一般的なDEDEDシーケンスは、DEDADシーケンスより明るい製品をもたらす(ここでAは酸処理を指す)。
【0010】
伝統的に、吸収性製品またはティッシュペーパーの生産に有用であったセルロース源は、セルロースエーテルおよびセルロースエステルなどの下流セルロース誘導体の生産にも有用であるということはなかった。標準的なクラフト繊維などの、高粘度セルロース原料からの低粘度セルロース誘導体の生産は、大きなコストを加えると同時に望まれない副生成物を付与し、セルロース誘導体の全体的な品質を低減する追加の製造ステップを必要とする。コットンリンターおよび高αセルロース含量亜硫酸パルプは、一般に高い重合度を有し、セルロースエーテルおよびエステルなどのセルロース誘導体の製造において一般に使用される。しかし、高い重合度(DP)および/または粘度を有するコットンリンターおよび亜硫酸繊維の生産は、1)コットンの場合における出発原料のコスト、2)亜硫酸パルプの場合におけるパルプ化および漂白の高いエネルギーコスト、化学物質コスト、および環境コスト、ならびに3)両方の場合に該当する大規模な精製プロセスが要求されることに起因して高価である。高コストに加えて、市場で入手可能な亜硫酸パルプの供給が徐々に減少している。したがって、これらの繊維は、例えば、より高い純度またはより高い粘度のパルプが必要とされ得る場合、非常に高価であり、パルプおよび紙の用途における適用性が限られている。セルロース誘導体製造者にとって、これらのパルプは、その全体的な製造コストのかなりの部分を構成する。したがって、セルロース誘導体の生産に使用することができる、高純度の白く明るい低コストの、クラフト繊維などの繊維の必要性が存在する。
【0011】
微結晶性セルロースの製造に使用することができる安価なセルロース材料の必要性もある。微結晶性セルロースは、食品、医薬品、化粧品、および工業の用途において広く使用されており、部分的に解重合されたセルロースの精製結晶形である。大規模な漂白後加工ステップを加えることなく、微結晶性セルロース生産においてクラフト繊維を使用することは、これまで限られていた。微結晶性セルロース生産は一般に、セルロース鎖の非晶質セグメントを除去するために酸加水分解された、高度に精製されたセルロース出発原料を必要とする。Battistaらの米国特許第2,978,446号(特許文献1)およびBraunsteinらの米国特許第5,346,589号(特許文献2)を参照。セルロースの非晶質セグメントを除去した後の鎖の低重合度は、「レベルオフDP」と呼ばれ、しばしば微結晶性セルロース生産の出発点であり、その数値は、セルロース繊維の源および加工に主に依存する。標準的なクラフト繊維から非晶質セグメントが溶解すると、一般に、1)残存不純物、2)十分に長い結晶性セグメントがないこと、または3)これにより、微結晶性セルロースの生産に有用とするには高すぎる(一般に200〜400の範囲の)重合度を有するセルロース繊維がもたらされること、のうちの少なくとも1つに起因して、ほとんどの用途に対して不適切になる程度に繊維が劣化する。例えば、αセルロース含量が増加したクラフト繊維は、微結晶性セルロースの生産および用途により大きい汎用性をもたらすことができるので、望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明
I.方法
本開示は、セルロース繊維を生産するための新規方法を提供する。本方法は、セルロースをクラフトパルプ化ステップ、酸素脱リグニンステップ、および漂白シーケンスに供することを含む。一実施形態では、セルロースが加工される条件により、高いαセルロース含量を維持しながら高い白色度および高い明度を呈する針葉樹繊維がもたらされる。
【0016】
本明細書に記載の方法で使用されるセルロース繊維は、針葉樹繊維に由来し得る。針葉樹繊維は、マツ属、トウヒ属、およびモミ属を含むがそれだけに限定されない任意の公知の源に由来し得る。いくつかの実施形態では、セルロース繊維は、サザンパインに由来する。
【0017】
本開示における「セルロース繊維」または「クラフト繊維」への言及は、異なると特に示されているか、または当業者がこれらを異なると理解するはずである場合を除いて互換性である。
【0018】
本発明の一方法では、セルロース、好ましくは、サザンパインは、Lo−Solids(商標)蒸煮を用いて、2ベッセル液圧式蒸解釜(two-vessel hydraulic digester)
内で、約17〜約21の範囲のκ数まで蒸解される。得られたパルプは、約8以下のκ数に到達するまで酸素脱リグニンに供される。最後に、セルロースパルプは、少なくとも約92のISO明度に到達するまで、多段階漂白シーケンスで漂白される。
【0019】
一実施形態では、本方法は、並流下降流構成を有する連続蒸解釜内でセルロース繊維を蒸解するステップを含む。白液チャージのうちの有効アルカリは、少なくとも約16%、例えば、少なくとも約16.4%、例えば、少なくとも約16.7%、例えば、少なくとも約17%、例えば、少なくとも約18%である。一実施形態では、白液チャージは、含浸装置内でセルロースに加えられる一部分の白液と蒸解釜内でパルプに加えられる残りの白液とに分割される。一実施形態によれば、白液は、50:50の比で加えられる。別の実施形態では、白液は、90:10〜30:70の範囲内、例えば、50:50〜70:30の範囲内、例えば、60:40で加えられる。一実施形態によれば、白液は、一連の段階において蒸解釜に添加される。一実施形態によれば、蒸解は、約320°F〜約335°F、例えば、約325°F〜約330°F、例えば、約325°F〜約328°Fの間の温度で実施され、セルロースは、約17〜約21の間の目標κ数に到達するまで処理される。通常より高い有効アルカリ(「EA」)およびより高い温度により、通常より低いκ数が実現された。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、蒸解釜は、セルロースが蒸解釜に入るにつれて液体と木材との比を本質的に増大させるプッシュフロー(push flow)を増大させて運転される。白液のこうした添加は、液圧(hydraulic)平衡で蒸解釜を維持するのに役立ち、蒸解釜内で連続下降流条件を実現するのに役立つ。
【0021】
一実施形態では、本方法は、セルロース繊維が約17〜約21のκ数に蒸煮された後、漂白の前にリグニン含量をさらに低減し、κ数をさらに低減するためにセルロース繊維を酸素脱リグニンするステップを含む。酸素脱リグニンは、当業者に公知の任意の方法によって実施することができる。例えば、酸素脱リグニンは、従来の2段階酸素脱リグニンであってもよい。有利には、脱リグニンは、約8以下、より具体的には、約6〜約8の目標κ数まで実施される。
【0022】
一実施形態では、酸素脱リグニンの間、加えられる酸素は、約2%未満、例えば、約1.9%未満、例えば、約1.7%未満である。一実施形態によれば、新鮮な苛性アルカリ(caustic)が酸素脱リグニンの間にセルロースに添加される。新鮮な苛性アルカリは、約2.5%〜約3.8%、例えば、約3%〜約3.2%の量で添加することができる。一実施形態によれば、酸素と苛性アルカリとの比は、標準的なクラフト生産に対して低減されるが、酸素の絶対量は同じままである。脱リグニンは、約200°F〜約220°F、例えば、約205°F〜約215°F、例えば、約209°F〜約211°Fの温度で実施した。
【0023】
繊維が約8以下のκ数に到達した後、繊維は、多段階漂白シーケンスに供される。多段階漂白シーケンスの段階は、任意の従来の、または後に発見される一連の段階を含むことができ、従来の条件下で行うことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、漂白の前に、セルロースのpHは、約2〜約6、例えば、約2〜約5、または約2〜約4、または約2〜約3の範囲のpHに調整される。
【0025】
pHは、当業者が認識する通りの任意の適切な酸(例えば、硫酸または塩酸)または多段階漂白プロセスの二酸化塩素(D)段階などの漂白プロセスの酸性漂白段階からの濾液を使用して調整することができる。例えば、セルロース繊維は、外部からの酸を添加することによって酸性化することができる。外部からの酸の例は、当該技術分野で公知であり、これらとして、硫酸、塩酸、および炭酸が挙げられるが、それだけに限定されない。いくつかの実施形態では、セルロース繊維は、漂白ステップからの廃棄濾液などの酸性濾液で酸性化される。少なくとも1つの実施形態では、セルロース繊維は、多段階漂白プロセスのD段階からの酸性濾液で酸性化される。
【0026】
いくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、DEDEDシーケンスである。いくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、D(EoP)D(EP)Dである。いくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、D
0E1D1E2D2シーケンスである。いくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EoP)D1E2D2シーケンスである。いくつかの実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EO)D1E2D2である。
【0027】
一実施形態によれば、セルロースは、D(EoP)D(EP)D漂白シーケンスに供される。一実施形態によれば、漂白シーケンスの第1D段階(D
0)は、少なくとも約135°F、例えば、少なくとも約140°F、例えば、少なくとも約150°F、例えば、少なくとも約160°Fの温度で、かつ約3未満、例えば、約2.5のpHで実施される。二酸化塩素は、約1%より多く、例えば、約1.2%より多く、例えば、約1.5%の量で加えられる。酸は、pHを維持するのに十分な量で、例えば、少なくとも約20lb/トン、例えば、少なくとも約23lb/トン、例えば、少なくとも約25lb/トンの量でセルロースに加えられる。
【0028】
一実施形態によれば、第1E段階(E
1)は、少なくとも約170°F、例えば、少なくとも約172°Fの温度で、かつ約11より高い、例えば、11.2より高い、例えば、約11.4のpHで実施される。苛性アルカリは、約0.8%超、例えば、約1.0%超、例えば、約1.25%の量で加えられる。酸素は、少なくとも約9.5lb/トン、例えば、少なくとも約10lb/トン、例えば、少なくとも約10.5lb/トンの量でセルロースに加えられる。過酸化水素は、少なくとも約7lb/トン、例えば、少なくとも約7.3lb/トン、例えば、少なくとも約7.5lb/トン、例えば、少なくとも約8lb/トン、例えば、少なくとも約9lb/トンの量でセルロースに加えられる。当業者は、任意の公知の過酸素(peroxygen)化合物を使用して過酸化水素の一部またはすべ
てと置き換えることができることを認識する。
【0029】
いくつかの実施形態では、κ数は、第1のD段階後に通常より高い場合がある。本発明の一実施形態によれば、その後の(then)D(EoP)段階後のκ数は、約2.2以下である。
【0030】
一実施形態によれば、漂白シーケンスの第2のD段階(D
1)は、少なくとも約170°F、例えば、少なくとも約175°F、例えば、少なくとも約180°Fの温度で、かつ約4未満、例えば、約3.7のpHで実施される。二酸化塩素は、約1%未満、例えば、約0.8%未満、例えば、約0.7%の量で加えられる。苛性アルカリは、所望のpHに調整するのに有効な量で、例えば、約0.3lb/トン未満、例えば、約0.2lb/トン未満、例えば、約0.15lb/トンの量でセルロースに加えられる。
【0031】
一実施形態によれば、第2のE段階(E
2)は、少なくとも約170°F、例えば、少なくとも約172°Fの温度で、かつ約10.5より高い、例えば、約11より高い、例えば、約11.5より高いpHで実施される。苛性アルカリは、約0.6%未満、例えば、約0.5%未満、例えば、約0.4%の量で加えられる。過酸化水素は、約0.3%未満、例えば、約0.2%未満、例えば、約0.1%の量でセルロースに加えられる。当業者は、任意の公知の過酸素化合物を使用して過酸化水素の一部またはすべてと置き換えることができることを認識する。
【0032】
一実施形態によれば、漂白シーケンスの第3のD段階(D
2)は、少なくとも約170°F、例えば、少なくとも約175°F、例えば、少なくとも約180°Fの温度で、かつ約5.5未満、例えば、約5.0未満のpHで実施される。二酸化塩素は、約0.5%未満、例えば、約0.3%未満、例えば、約0.15%の量で加えられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、漂白プロセスは、少なくとも約91%、例えば、少なくとも約92、例えば、少なくとも約93%の最終ISO明度を目標とする条件下で行われる。
【0034】
一実施形態によれば、本発明のクラフト繊維の見掛け密度は、少なくとも約0.59g/cm
3、例えば、少なくとも約0.60g/cm
3、例えば、少なくとも約0.65g/cm
3である。見掛け密度とは、パルプ繊維が乾燥機で緻密化された後のパルプ繊維の密度を指す。クラフト繊維板の厚さ(caliper)は、約1.2mm未満、例えば、約1.19mm未満、例えば、約1.18mm未満である。一実施形態によれば、厚さは、カレンダーローディング(calendar loading)を300pliに増やすことによって
得ることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、5段階漂白プロセスの各段階は、(当業者に公知であるように)少なくともミキサー、反応器、および洗濯機を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、フラッフパルプを生産するための方法であって、本開示のクラフト繊維を提供するステップと、次いでフラッフパルプを生産するステップとを含む、方法を提供する。例えば、本方法は、多段階漂白プロセスでクラフト繊維を漂白するステップと、次いでフラッフパルプを形成するステップとを含む。少なくとも1つの実施形態では、この繊維は、多段階漂白プロセスの後に精錬されない。
【0037】
いくつかの実施形態では、クラフト繊維は、少なくとも1種の超吸収性ポリマー(SAP)と合わされる。いくつかの実施形態では、SAPは、臭気低減剤(odor reductant)である場合がある。本開示に従って使用することができるSAPの例としては、BASF社によって販売されているHysorb(商標)、Sumitomo社によって販売されているAqua Keep(登録商標)、およびEvonik社によって販売されているFAVOR(登録商標)が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0038】
II.クラフト繊維
「標準的な」、「従来の」、または「伝統的な」、クラフト繊維、クラフト漂白繊維、クラフトパルプ、またはクラフト漂白パルプを本明細書で参照する。このような繊維またはパルプは、本発明の改善された性質を定義するための参照点としてしばしば記載される。本明細書で使用する場合、これらの用語は、互換性であり、組成が同一で、同様の標準的な様式で加工された繊維またはパルプを指す。本明細書で使用する場合、標準的なクラフトプロセスは、当該技術分野において認識されている条件下での蒸煮段階および漂白段階の両方を含む。標準的なクラフト加工は、蒸解の前に事前加水分解段階を含まない。
【0039】
本明細書で述べるクラフトセルロース繊維の物理的特性(例えば、純度、明度、繊維長、および粘度)は、実施例の節で示されるプロトコールに従って測定される。
【0040】
本開示のクラフト繊維は、少なくとも約91%、約92%、または約93%のISOの明度を有する。いくつかの実施形態では、明度は約92%である。いくつかの実施形態では、明度は、約91%〜約93%、または約92%〜約93%の範囲に及ぶ。
【0041】
本開示のクラフト繊維は、少なくとも約84、例えば、少なくとも約85、例えば、少なくとも約86、例えば、少なくとも約87のCIE白色度を有する。CIE白色度は、TAPPI法T560に従って測定される。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示によるセルロースは、約87.5%〜約88.4%の範囲内のR18値を有し、例えば、R18は、少なくとも約88.0%、例えば、約88.1%の値を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示によるクラフト繊維は、約86%〜約87.5%、例えば、約86.0%〜約87.0%、例えば、約86.2%〜約86.8%の範囲に及ぶR10値を有する。R18およびR10の内容は、TAPPI T235に記載されている。R10は、10重量パーセントの苛性アルカリでパルプを抽出した後に残っている残留不溶解材料を表し、R18は、18%の苛性アルカリ溶液でパルプを抽出した後に残っている不溶解材料の残留量を表す。一般に、10%の苛性アルカリ溶液では、ヘミセルロースおよび化学的に分解された短鎖セルロースが溶液中で溶解され、除去される。対照的に、18%の苛性アルカリ溶液中では、一般にヘミセルロースのみが溶解され、除去される。したがって、R10値とR18値との差(R=R18−R10)は、パルプ試料中に存在する化学的に分解された短鎖セルロースの量を表す。
【0044】
いくつかの実施形態では、改質セルロース繊維は、約12.5%〜約14.5%、または約13%〜約14%の範囲のS10苛性アルカリ溶解度を有する。いくつかの実施形態では、改質セルロース繊維は、約11.5%〜約14%、または約12%〜約13%の範囲に及ぶS18苛性アルカリ溶解度を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示のクラフト繊維は、標準的なクラフト繊維より圧縮性であり、かつ/またはエンボス加工可能である。いくつかの実施形態では、クラフト繊維は、等価量の標準的なクラフト繊維で生成される構造体よりも薄く、かつ/または高い密度を有する構造体を生成するのに使用することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示のクラフト繊維は、成形してパルプシートにし、プレス成形し、圧縮することができる。パルプのこれらのシートは、約0.59g/cc以上、例えば、約0.59〜0.60g/ccの密度、および約1.2mm未満、例えば、約1.9mm未満、例えば、約1.18mm未満の厚さを有する。
【0047】
本開示は、低粘度および超低粘度を有するクラフト繊維を提供する。別段の指定のない限り、「粘度」は、本明細書において使用される場合、そのプロトコールで参照されている通りにTAPPI T230−om99に従って測定される0.5%キャピラリーCED粘度を指す。
【0048】
別段の指定のない限り、「DP」は、本明細書において使用される場合、TAPPI T230−om99に従って測定された0.5%キャピラリーCED粘度から計算される重量平均重合度(DPw)を指す。例えば、J.F. Cellucon Conference、 The Chemistry and Processing of Wood and Plant Fibrous Materials、155頁、test
protocol 8、1994年(Woodhead Publishing Ltd.、Abington Hall、Abinton Cambridge CBI 6AH England、J.F. Kennedyら編)を参照。「低DP」は、約116
0〜約1860の範囲に及ぶDP、または約7〜約13mPa・sの範囲に及ぶ粘度を意味する。「超低DP」繊維は、約350〜約1160の範囲に及ぶDP、または約3〜約7mPa・sの範囲に及ぶ粘度を意味する。
【0049】
いくつかの実施形態では、改質セルロース繊維は、約7.0mPa・s〜約10mPa・sの範囲に及ぶ粘度を有する。いくつかの実施形態では、粘度は、約7.5mPa・s〜約10mPa・sの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、粘度は、約7.0mPa・s〜約8.0mPa・sの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、粘度は、約7.0mPa・s〜約7.5mPa・sの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、粘度は、10mPa・s未満、8mPa・s未満、7.5mPa・s未満、7mPa・s未満、または6.5mPa・s未満である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示のクラフト繊維は、漂白プロセスの間、その繊維長を維持する。
【0051】
「繊維長」および「平均繊維長」は、繊維の性質を記述するのに使用される場合、互換的に使用され、長さ加重平均繊維長を意味する。したがって、例えば、2mmの平均繊維長を有する繊維は、2mmの長さ加重平均繊維長を有する繊維を意味すると理解されるべきである。
【0052】
いくつかの実施形態では、クラフト繊維が針葉樹繊維であるとき、セルロース繊維は、以下の実施例の節で記載する試験プロトコール12に従って測定された場合の約2mm以上である平均繊維長を有する。いくつかの実施形態では、平均繊維長は、約3.7mm以下である。いくつかの実施形態では、平均繊維長は、少なくとも約2.2mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、約2.9mm、約3.0mm、約3.1mm、約3.2mm、約3.3mm、約3.4mm、約3.5mm、約3.6mm、または約3.7mmである。いくつかの実施形態では、平均繊維長は、約2mm〜約3.7mm、または約2.2mm〜約3.7mmの範囲に及ぶ。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の改質クラフト繊維は、標準的なクラフト繊維と比べてカルボキシル含量が増加している。
【0054】
いくつかの実施形態では、改質セルロース繊維は、約2meq/100g〜約4meq/100gの範囲に及ぶカルボキシル含量を有する。いくつかの実施形態では、カルボキシル含量は、約3meq/100g〜約4meq/100gの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、カルボキシル含量は、少なくとも約2meq/100g、例えば、少なくとも約2.5meq/100g、例えば、少なくとも約3.0meq/100g、例えば、少なくとも約3.5meq/100gである。
【0055】
本開示のクラフト繊維は、標準的なクラフト繊維より可撓性である場合があり、伸ばし、かつ/または曲げ、かつ/または弾性を呈し、かつ/またはウィッキングを増大させることができる。さらに、本開示のクラフト繊維は、標準的なクラフト繊維より柔軟であり、例えば、おむつおよび絆創膏の用途などの吸収性製品用途におけるその適用性を増強すると期待される。
【0056】
III.クラフト繊維から作製される製品
本開示は、本明細書に記載のクラフト繊維から作製される製品を提供する。いくつかの実施形態では、製品は、標準的なクラフト繊維から一般に作製されるものである。他の実施形態では、製品は、コットンリンター、事前加水分解クラフト(pre−hydrolsis kraft)、または亜硫酸パルプから一般に作製されるものである。より具体的には、本発明の繊維は、吸収性製品の生産において、ならびにエーテルおよびエステルなどの化学物質誘導体の調製における出発原料として、さらに改質することなく使用することができる。これまで、コットンおよび亜硫酸パルプなどの高α含量セルロース、ならびに伝統的なクラフト繊維に取って代わるのに有用な繊維は入手可能でなかった。
【0057】
語句「コットンリンター(または亜硫酸パルプ)と置き換わり得る...」、および「コットンリンター(または亜硫酸パルプ)と互換性がある...」、および「コットンリンター(または亜硫酸パルプ)の代わりに使用することができる...」などは、コットンリンター(または亜硫酸パルプもしくは事前加水分解クラフト繊維)を使用して通常作製される最終用途において使用するのに適した性質をその繊維が有することを意味するにすぎない。この語句は、その繊維がコットンリンター(または亜硫酸パルプ)とすべて同じ特性を必ず有することを意味することを意図していない。
【0058】
いくつかの実施形態では、製品は、創傷ケア(例えば、絆創膏)を含めた医療用デバイス、赤ちゃん用おむつ、授乳パッド、成人用失禁製品、例えば、生理用ナプキンおよびタンポンを含めた女性用衛生製品、エアレイド不織製品、エアレイド複合材料、「卓上」ワイパー、ナプキン、ティッシュペーパー、タオルなどが挙げられるがそれだけに限定されない吸収性製品である。本開示による吸収性製品は、使い捨てであってもよい。これらの実施形態では、本発明による繊維は、これらの製品の生産において一般に使用される漂白広葉樹繊維または漂白針葉樹繊維の全体的代替品または部分的代替品として使用することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明のクラフト繊維は、フラッフパルプの形態であり、吸収性製品においてクラフト繊維を従来のフラッフパルプよりも有効にする1つ以上の性質を有する。より具体的には、本発明のクラフト繊維は、現在入手可能なフラッフパルプ繊維の代替品として本発明のクラフト繊維を望ましいものとする改善された圧縮性を有し得る。本開示の繊維の改善された圧縮性のおかげで、本開示の繊維は、より薄く、よりコンパクトな吸収性構造体を生産しようとする実施形態において有用である。当業者は、本開示の繊維の圧縮可能な性質を理解すれば、この繊維を使用することができる吸収性製品を容易に想定することができる。例として、いくつかの実施形態では、本開示は、本開示のクラフト繊維を含む超薄衛生製品を提供する。超薄フラッフコアは、例えば、女性用衛生製品または赤ちゃん用おむつにおいて一般に使用される。本開示の繊維を用いて生産することができる他の製品は、吸収性コアまたは圧縮吸収性層を必要とする任意のものであり得る。圧縮されたとき、本発明の繊維は、吸収性の喪失もその実質的な喪失もまったく呈さないが、可撓性の改善を示す。
【0060】
本発明の繊維は、さらに改質することなく、ティッシュペーパー、タオル、ナプキン、および伝統的な製紙機で形成される他の紙製品が挙げられるがそれだけに限定されない吸収性製品の生産においても使用することができる。伝統的な製紙プロセスでは、フォーミングワイヤー上に一般に堆積され、そこでその後、水が除去される、水性繊維スラリーの調製を含む。本開示のクラフト繊維は、これらの繊維を含む製品において製品特性の改善を提供することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の改質クラフトは、さらに改質することなく、約2950〜約3980の非常に高いDP(すなわち、0.5%キャピラリーCEDによって測定した場合に約30mPa・s〜約60mPa・sの範囲に及ぶ粘度を有する繊維)、および非常に高い百分率のセルロース(例えば、95%以上)を有する繊維(例えば、コットンリンターに由来するもの、および酸性亜硫酸パルプ化プロセスによって生産される漂白針葉樹繊維に由来するものなど)の全体的または部分的な代替品としてのセルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース)およびエステルの製造において使用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示は、コットンリンターまたは亜硫酸パルプの全体的または部分的な代替品として使用することができるクラフト繊維を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、セルロースエーテル、酢酸セルロース、および微結晶性セルロースの製造においてコットンリンターまたは亜硫酸パルプの代替品として使用することができるクラフト繊維を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、クラフト繊維は、セルロースエーテルの製造に適している。したがって、本開示は、記載した通りのクラフト繊維に由来するセルロースエーテルを提供する。いくつかの実施形態では、セルロースエーテルは、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルメチルセルロースから選ばれる。本開示のセルロースエーテルは、セルロースエーテルが伝統的に使用される任意の用途において使用することができると考えられる。例えば、かつ限定するものではないが、本開示のセルロースエーテルは、コーティング、インク、バインダー、制御放出薬錠剤、およびフィルムにおいて使用することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、クラフト繊維は、セルロースエステルの製造に適している。したがって、本開示は、本開示のクラフト繊維に由来する酢酸セルロースなどのセルロースエステルを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本開示のクラフト繊維に由来する酢酸セルロースを含む製品を提供する。例えば、かつ限定するものではないが、本開示のセルロースエステルは、ホームファニシング(home furnishing)、タバコ、インク、吸収性製品、医療用デバイス、ならびに例えば、LCDおよびプラズマスクリーンを含めたプラスチック、ならびにウィンドシールド(windshield)において使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、クラフト繊維は、微結晶性セルロースの製造に適している。微結晶性セルロース生産は、相対的に清潔な、高度に精製された出発セルロース材料を必要とする。したがって伝統的に、高価な亜硫酸パルプがその生産に主に使用されている。本開示は、本開示のクラフト繊維に由来する微結晶性セルロースを提供する。したがって、本開示は、微結晶性セルロース生産用の対費用効果の高いセルロース源を提供する。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースは、約87.5%〜約90%、例えば、約88%〜約90%、例えば、約88%〜約89%の範囲に及ぶR18値を有するクラフト繊維に由来する。
【0066】
本開示のセルロースは、微結晶性セルロースが伝統的に使用されている任意の用途で使用することができる。例えば、かつ限定するものではないが、本開示のセルロースは、医薬品もしくは栄養補助食品用途、食品用途、化粧用途、紙用途で、または構造用複合材料として使用することができる。例えば、本開示のセルロースは、バインダー、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、錠剤化助剤、安定剤、テキスチャー付与剤(texturizing agent)、脂肪代替物、増量剤、アンチケーキング剤、発泡剤、乳化剤、増粘剤、分離剤、ゲル化剤、担体材料、乳白剤、または粘度調整剤であり得る。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースはコロイドである。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明のクラフト繊維は、ビスコースの製造に適している。したがって、本開示は、記載したとおりのクラフト繊維に由来するビスコース繊維を提供する。いくつかの実施形態では、ビスコース繊維は、本開示のクラフト繊維から生成され、本開示のクラフト繊維は、アルカリおよび二硫化炭素で処理されてビスコースと呼ばれる溶液が作製され、次いでこれが希硫酸および硫酸ナトリウム中で糸状に加工されて、ビスコースがセルロースに再変換される。本開示のビスコース繊維は、ビスコース繊維が伝統的に使用される任意の用途で使用することができると考えられる。例えば、かつ限定するものではないが、本開示のビスコース繊維は、レーヨン、セロハン、フィラメント、食品ケーシング、およびタイヤコードにおいて使用することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明のクラフト繊維は、ニトロセルロースの製造に適している。したがって、本開示は、記載したとおりのクラフト繊維に由来するニトロセルロースを提供する。いくつかの実施形態では、ニトロセルロースは、硫酸および硝酸または別のニトロ化化合物で処理される本開示のクラフト繊維から生成される。本開示のニトロセルロースは、ニトロセルロースが伝統的に使用される任意の用途で使用することができると考えられる。例えば、かつ限定するものではないが、本開示のニトロセルロースは、軍需品、銃綿、マニキュア液、コーティング、およびラッカーにおいて使用することができる。
【0069】
本開示によるクラフト繊維に由来するセルロース誘導体および微結晶性セルロースを含む他の製品も、当業者によって想定され得る。このような製品は、例えば、化粧用途および工業用途において見出すことができる。
【0070】
本明細書において使用される場合、「約」は、実験誤差に起因する変動を説明することを意味する。すべての測定値は、別段に特に表明されていない限り、「約」が明示的に記載されていても、そうでなくても、単語「約」によって修飾されることが理解される。したがって、例えば、「2mmの長さを有する繊維」という表現は、「約2mmの長さを有する繊維」を意味することが理解される。
【0071】
本発明の1つ以上の限定されない実施形態の詳細を以下の実施例に示す。本発明の他の実施形態は、本開示を考慮した後には当業者に明らかになるはずである。
【実施例】
【0072】
A.試験プロトコール
1.苛性アルカリ溶解度(R10、S10、R18、S18)は、TAPPI T235−cm00に従って測定される。
2.カルボキシル含量は、TAPPI T237−cm98に従って測定される。
3.アルデヒド含量は、Econotech Services LTDの特許権によって保護された手順ESM 055Bに従って測定される。
4.銅価は、TAPPI T430−cm99に従って測定される。
5.カルボニル含量は、Biomacromolecules、2002年、3巻、969〜975頁か
らの式:カルボニル=(銅価−0.07)/0.6に従って、銅価から計算される。
6.0.5%キャピラリーCED粘度は、TAPPI T230−om99に従って測定される。
7.固有粘度は、ASTM D1795(2007年)に従って測定される。
8.DPは、The Chemistry and Processing Of Wood And Plant Fibrous Materials、155頁、woodhead Publishing Ltd、Abington Hall、Abington、Cambridge CBI 6AH、England、J.F. Kennedyら編で公開された1994年Cellucon Conferenceからの式:DPw=−449.6+598.4ln(0.5%キャピラリーCED)+
118.02ln
2(0.5%キャピラリーCED)によって0.5%キャピラリーCED粘度から計算される。
9.炭水化物は、Dionexイオンクロマトグラフィーによる分析を用いてTAPPI T249−cm00に従って測定される。
10.セルロース含量は、TAPPI Journal 65巻(12号):78〜80頁、1982年からの式:セルロース=グルカン−(マンナン/3)に従って炭水化物組成から計算される。
11.ヘミセルロース含量は、糖の合計−セルロース含量から計算される。
12.繊維長および粗さは、製造者の標準手順に従って、OPTEST(Hawkesbury、Ontario)製Fiber Quality Analyzer(商標)で決定される。
13.DCM(ジクロロメタン)抽出物は、TAPPI T204−cm97に従って決定される。
14.鉄含量は、酸消化およびICPによる分析によって決定される。
15.灰分含量は、TAPPI T211−om02に従って決定される。
16.ペルオキシド残留物は、Interox手順に従って決定される。
17.明度は、TAPPI T525−om02に従って決定される。
18.多孔度は、TAPPI 460−om02に従って決定される。
19.繊維長および形状係数は、製造者の標準手順に従って、Lorentzen &
Wettre(Kista、スウェーデン)製L&W Fiber Testerで決定される。
20.汚れ(dirt)および結束繊維(shives)は、TAPPI T213−om01に従って決定される。
21.CIE白色度は、TAPPI法 T560に従って決定される。
【0073】
(実施例1)
本開示の繊維を調製する方法
1599T/Dのパルプ生産速度で稼働する、並流液流(co-current liquor flow)を用いる連続蒸解釜内でサザンパインセルロースを蒸解した。16.7%の有効アルカリをパルプに添加した。白液チャージを、含浸装置と蒸解釜との間にチャージの半分をそれぞれに加えて分布させた。20.6のκ数に到達した。
【0074】
次いでセルロース繊維を洗浄し、従来の2段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を1.6%の割合で加え、苛性アルカリを2.1%の割合で加えた。脱リグニンを205.5°の温度で実施した。ブレンドチェストにおいて測定した場合のκ数は、7.6であった。
【0075】
D(EOP)D(EP)Dのシーケンスを用いて、5段階漂白プラントで、脱リグニンしたパルプを漂白した。第1のD段階(D
0)を、144.3°Fの温度でかつ2.7のpHで実施した。二酸化塩素を0.9%の量で加えた。酸を17.8lb/トンの量で加えた。
【0076】
第1のE段階(E
1)を、162.9°Fの温度でかつ11.2のpHで実施した。苛性アルカリを0.8%の量で加えた。酸素を10.8lb/トンの量で加えた。過酸化水素を6.7lb/トンの量で加えた。
【0077】
第2のD段階(D
1)を、約161.2°Fの温度でかつ3.2のpHで実施した。二酸化塩素を0.7%の量で加えた。苛性アルカリを、0.7lb/トンの量で加えた。
【0078】
第2のE段階(E
2)を、164.8°Fの温度でかつ10.7のpHで実施した。苛性アルカリを0.15%の量で加えた。過酸化水素は、0.14%の量であった。
【0079】
第3のD段階(D
2)を、176.6°Fの温度でかつ4.9のpHで実施した。二酸化塩素を0.17%の量で加えた。
【0080】
結果を以下の表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
(実施例2)
1676T/Dのパルプ生産速度で稼働する、並流液流を用いる連続蒸解釜内でサザンパインセルロースを蒸解した。16.5%の有効アルカリをパルプに添加した。白液チャージを、含浸装置と蒸解釜との間に、チャージの半分をそれぞれに加えて分布させた。20.9のκ数に到達した。
【0083】
次いでセルロース繊維を洗浄し、従来の2段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の割合で加え、苛性アルカリを2.9%の割合で加えた。脱リグニンを、206.1°の温度で実施した。ブレンドチェストにおいて測定した場合のκ数は、7.3であった。
【0084】
D(EOP)D(EP)Dのシーケンスを用いて、5段階漂白プラントで、脱リグニンしたパルプを漂白した。第1のD段階(D
0)を144.06°Fの温度でかつ2.3のpHで実施した。二酸化塩素を1.9%の量で加えた。酸を36.5lb/トンの量で加えた。
【0085】
第1のE段階(E
1)を、176.2°Fの温度でかつ11.5のpHで実施した。苛性アルカリを1.1%の量で加えた。酸素を10.9lb/トンの量で加えた。過酸化水素を8.2lb/トンの量で加えた。
【0086】
第2のD段階(D
1)を、178.8°Fの温度でかつ3.8のpHで実施した。二酸化塩素を0.8%の量で加えた。苛性アルカリを0.07lb/トンの量で加えた。
【0087】
第2のE段階(E
2)を、178.5°Fの温度でかつ10.8のpHで実施した。苛性アルカリを0.17%の量で加えた。過酸化水素は、0.07%の量であった。
【0088】
第3のD段階(D
2)を、184.7°Fの温度でかつ5.0のpHで実施した。二酸化塩素を0.14%の量で加えた。
【0089】
結果を以下の表に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
(実施例3)
1715T/Dのパルプ生産速度で稼働する、並流液流を用いる連続蒸解釜内でサザンパインセルロースを蒸解した。16.9%の有効アルカリをパルプに添加した。白液チャージを、含浸装置と蒸解釜との間に、チャージの半分をそれぞれに加えて分布させた。蒸解は、329.2°Fの温度で実施した。19.4のκ数に到達した。
【0092】
次いでセルロース繊維を洗浄し、従来の2段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の割合で加え、苛性アルカリを3.2%の割合で加えた。脱リグニンを、209.4°の温度で実施した。ブレンドチェストにおいて測定した場合のκ数は、7.5であった。
【0093】
D(EOP)D(EP)Dのシーケンスを用いて、5段階漂白プラントで、脱リグニンしたパルプを漂白した。第1のD段階(D
0)を、142.9°Fの温度でかつ2.5のpHで実施した。二酸化塩素を1.3%の量で加えた。酸を24.4lb/トンの量で加えた。
【0094】
第1のE段階(E
1)を、173.0°Fの温度でかつ11.4のpHで実施した。苛性アルカリを1.21%の量で加えた。酸素を10.8lb/トンの量で加えた。過酸化水素を7.4lb/トンの量で加えた。
【0095】
第2のD段階(D
1)を、少なくとも約177.9°Fの温度でかつ3.7のpHで実施した。二酸化塩素を0.7%の量で加えた。苛性アルカリを0.34lb/トンの量で加えた。
【0096】
第2のE段階(E
2)を、175.4°Fの温度でかつ11のpHで実施した。苛性アルカリを0.4%の量で加えた。過酸化水素は、0.1%の量であった。
【0097】
第3のD段階(D
2)を、178.2°Fの温度でかつ5.4のpHで実施した。二酸化塩素を0.15%の量で加えた。
【0098】
結果を以下の表に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
(実施例4)
1680T/Dのパルプ生産速度で稼働する、並流液流を用いる連続蒸解釜内で1680トンのサザンパインセルロースを蒸解した。18.0%の有効アルカリをパルプに添加した。白液チャージを、含浸装置と蒸解釜との間に、チャージの半分をそれぞれに加えて分布させた。17のκ数に到達した。
【0101】
次いでセルロース繊維を洗浄し、従来の2段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の割合で加え、苛性アルカリを3.15%の割合で加えた。脱リグニンを、210°の温度で実施した。ブレンドチェストにおいて測定した場合のκ数は、6.5であった。
【0102】
D(EOP)D(EP)Dのシーケンスを用いて、5段階漂白プラントで、脱リグニンしたパルプを漂白した。第1のD段階(D
0)を、140°Fの温度で実施した。二酸化塩素を1.3%の量で加えた。酸を15lb/トンの量で加えた。
【0103】
第1のE段階(E
1)を、180°Fの温度で実施した。苛性アルカリを1.2%の量で加えた。酸素を10.5lb/トンの量で加えた。過酸化水素を、8.3lb/トンの量で加えた。
【0104】
第2のD段階(D
1)を、少なくとも約180°Fの温度で実施した。二酸化塩素を0.7%の量で加えた。苛性アルカリは加えなかった。
【0105】
第2のE段階(E
2)を、172°Fの温度で実施した。苛性アルカリを0.4%の量で加えた。過酸化水素は、0.08%の量であった。
【0106】
第3のD段階(D
2)を、180°Fの温度で実施した。二酸化塩素を0.18%の量で加えた。
【0107】
結果を以下の表に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
(実施例5)
白色度および明度を含めた、上記実施例によって生成した繊維試料の特性を測定した。結果を以下に報告する。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
(実施例6)
実施例1〜4と一致する方法によって生成した繊維の溶解度を、S10、S18、R10、およびR18の値について試験した。結果を以下に示す。
【0113】
【表7】
【0114】
(実施例7)
実施例5の方法によって生成した繊維の炭水化物含量を測定した。以下の最初の2つの表では、2つの決定の平均に基づくデータを報告する。第1の表は、本発明の繊維であり、第2の表は対照である。第2の2つの表は、100%に正規化した値である。
【0115】
【表8】
【表9】
【0116】
いくつかの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本開示の趣旨および目的から逸脱することなく、様々な改変を行うことができることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の目的の範囲内である。