(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、あるいは携帯電話等の、携帯可能な電子機器(携帯機器)の内部には、硬質基板やフレキシブルプリント基板などの各種の電気基板(あるいは電気回路基板ともいう)が配設されている。そして、こうした電気基板は、携帯機器本体や携帯機器外装部材に対して、例えば複数箇所をビス止めすることにより固定されている。
【0003】
ところで、撮影者が携帯機器を例えば取り落として落下させると、着地時に携帯機器外装に衝撃が加わるだけでなく、内部に配設された基板等にも衝撃が加わることになる。
【0004】
図9は従来の固定法の電気基板91に衝撃が加わった瞬間に、電気基板91が変形している形状の例を示す図である。
【0005】
図9に示す例においては、矢印で示す部分がビス止めで固定されているものとする。すると、落下時に携帯機器外装が地面等に接触して急停止しても、電気基板91には落下時の慣性力が働いているために、ビス止め固定された部分以外はそのまま運動しようとして、電気基板91に応力が加わることになる。
図9はこうした応力により電気基板91が撓む様子を示しており、ビス止め固定された部分以外は、2点鎖線で示すように形状が撓み、特に中央部は静止状態の位置から大きく変位し、引いては電気基板91自体の変形量が大きくなっている。電気基板91上には、衝撃に弱い部品(例えばCPUやメモリ等の電気部品92)が実装されていることもあるために、このような大きな変形が例え瞬間的であっても電気基板91に生じることは当然にして好ましくない。
【0006】
そこで、電気基板に加わる衝撃を緩和するための提案がなされている。
【0007】
例えば、特開2006−270834号公報には、落下時などにプリント基板に加わる衝撃を軽減することができ、かつ、プリント基板とケースのグランド接続を確実に行うことができる携帯端末機におけるプリント基板の保持構造が提案されている。
【0008】
該公報に記載されたプリント基板の保持構造は、フロントケース(1)とリアケース(2)との少なくとも一方のボス部(1a、2a)の頭部に、導電性および衝撃吸収性を兼ね備えた導電性ゴムなどからなるダンパ−ボス(5)を被せて、プリント基板(3)のボス部(3a)をフロントケース(1)のボス部(1a)とリアケース(2)のボス部(2a)とで挟み込み、ネジ(4)により一緒に締結固定するものである。そして、ダンパ−ボス(5)によって、ケース(1、2)に印加された衝撃荷重を緩和し、また、電気を伝えるようになっている。
【0009】
ここに、ダンパ−ボス(5)が導電性ゴムにより形成されているのは、次の理由による。
【0010】
カメラや携帯端末機等の携帯機器内に配設された電気基板には、CPUやメモリ等の電気部品(電気素子)が実装されている。こうした電気部品は高周波で駆動されるために、電磁的幅射を発生する。
【0011】
この電磁的幅射が電気基板の固定に用いられているビスに到達すると、ビス自体がアンテナの役割を果たして、電磁的幅射をさらに二次幅射してしまう。従って、電気基板を固定するビスはアースされている必要があり、このために導電性ゴム等の導電性部材を用いているのである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
【0019】
図1から
図8は本発明の実施形態1を示したものであり、
図1は基板ユニットおよびレンズユニットが組み付けられた前カバーユニットの構成をカメラの背面側から示す斜視図、
図2は前カバーユニット、基板ユニット、およびレンズユニットをカメラの背面側から示す分解斜視図、
図3は前カバーユニットと分解した基板ユニットとをカメラの背面側から示す斜視図、
図4は基板ユニットおよびレンズユニットが組み付けられた前カバーユニットの構成を示す背面図、
図5は
図4のA−A断面図、
図6は
図5における電気基板取付部分Bを示す要部拡大断面図、
図7は電気基板の構成を示す背面図、
図8は衝撃が加わった瞬間に電気基板が変形している形状の例を示す図である。
【0020】
なお、本実施形態においては携帯機器としてカメラ1を例に挙げるが、これに限定されるものではなく、電気基板を備える携帯可能な電子機器であればどのようなものであっても構わない。
【0021】
図1、
図2、
図4等に示すように、カメラ1は、固定部材である前カバーユニット2と、基板ユニット3と、レンズユニット4とを備えている。なお、本実施形態においては携帯機器としてカメラ1を例に挙げているために、固定部材の例が例えば前カバーユニット2となっているが、後カバーユニットでも良いし、カメラ本体等であっても構わない。固定部材をより一般的にいえば、携帯機器本体等の固定状態にある筐体であれば良い。
【0022】
カメラ1を背面から見たときに、前カバーユニット2の左側収納部2aに基板ユニット3が、右側収納部2bにレンズユニット4が、それぞれ組み込まれるようになっている(
図2等参照)。この前カバーユニット2の左側収納部2aの左端部には第1のビス穴2dが、右上角部には第2のビス穴2eが、右下角部には第3のビス穴2fが、それぞれ設けられていて、基板ユニット3はこれらのビス穴2d〜2fを介して後述するように前カバーユニット2に対して固定される。
【0023】
また、前カバーユニット2の中央部には、レンズユニット4に設けられているレンズ鏡筒4aの前面側が露呈するための鏡筒用孔2cが形成されている。なお、レンズ鏡筒4aは、曲折光学系を採用したものとなっており、
図2に示すように、水平方向(左右方向)の光軸を直角に折り曲げて被写体側への光軸に変換するためのプリズム光学系4bを備えている。さらに、レンズユニット4の左下角部には、ビス23により基板ユニット3との共締めを行うためのビス孔4fが形成されている。
【0024】
一方、基板ユニット3は、
図3に示すように、背面側から前面側へ向かって順に、例えば硬質基板として構成された電気基板11と、第1のアース部材12と、第2のアース部材13と、第3のアース部材14と、を備えている。
【0025】
電気基板11は、カメラ1の内部に配置されていて、各種の電気部品が実装された電気回路基板である。具体的には例えば
図7に示すように、コネクタ31〜33や、CPU35、メモリ36,37、コネクタ38、カードスロット39等の電気部品が電気基板11に実装されている。ここに、例えばCPU35やメモリ36,37は、電磁的幅射が発生する電気部品である。この電気基板11の左端部には第1のビス孔11dが、右上角部には第2のビス孔11eが、右下角部には第3のビス孔11fが、それぞれ形成されている。これらの第1〜第3のビス孔11d〜11fは、少ない箇所でしっかり固定することができるように、なるべく正三角形に近付くような配置となっている。
【0026】
第1のアース部材12は、カメラ1の電気回路の基準電位(アース、あるいはグランド)に導通された接地部材であり、具体的には、電気基板11上のコネクタ38やカードスロット39(
図7等参照)のケーシングなどを電気基板11のグランドに接続するためのものである。この第1のアース部材12には、電気基板11の第1〜第3のビス孔11d〜11fにそれぞれ対応する位置に、第1〜第3のビス孔12d〜12fが形成されている。
【0027】
また第2のアース部材13も、カメラ1の電気回路の基準電位に導通された接地部材であり、具体的には、図示しないカメラ外装の金属部分をカメラ1内部のグランドに接続するためのものである。この第2のアース部材13は、第1のアース部材12に比して小型であるために、電気基板11の第1のビス孔11dのみに対応する位置に、ビス孔13dが形成されている。
【0028】
さらに第3のアース部材14も、カメラ1の電気回路の基準電位に導通された接地部材であり、具体的には、図示しないスピーカや液晶保持板等をグランドに接続するためのものである。この第3のアース部材14も、第1のアース部材12に比して小型であるために、電気基板11の第1のビス孔11dのみに対応する位置に、ビス孔14dが形成されている。
【0029】
そして、第2のアース部材13と第3のアース部材14との少なくとも一方が第1の接地部材であり、第1のアース部材12と第2のアース部材13との少なくとも一方が第1の接地部材と電気基板11との間に挟まれた第3の接地部材である。
【0030】
このような構成において、金属等の導電性素材により形成されたねじ部材である第2のビス22は、第2のビス孔11eおよび第2のビス孔12eを貫通した後に、第2のビス穴2eに対して螺合し締結される。同様に導電性素材により形成されたねじ部材である第3のビス23は、
図2に示すようにレンズユニット4の左下角部のビス孔4fを貫通し、さらに
図3に示すように第3のビス孔11f、および第3のビス孔12fを貫通した後に、第3のビス穴2fに対して螺合し締結される。
【0031】
これに対して、同様に導電性素材により形成されたねじ部材である第1のビス21は、ダンパー押え25およびダンパー24を用いた上で、第1のビス孔11d、第1のビス孔12d、ビス孔13d、ビス孔14dを貫通した後に、第2のビス穴2eに対して螺合し締結されるようになっている。
【0032】
この第1のビス21の締結部分は、
図5や、
図5において一点鎖線円Bで囲んだ部分の拡大図となる
図6に示すようになっている。
【0033】
まず、ダンパー24は、電気基板11の第1のビス孔11dの周縁部上(カメラ1の背面側)に配置される衝撃緩衝部材であり、本実施形態においては非導電性の弾性素材、例えば非導電性ゴム等を用いて円筒形状に形成されており、内部の円筒孔がビス孔24dである。
【0034】
また、ダンパー押え25は、圧縮平面部25aと、この圧縮平面部25aからビス21を貫通させる軸と平行方向に延出する接触片部25bと、圧縮平面部25aに穿設されたビス孔25dと、を有し、導電性素材(例えば金属等)により形成された第2の接地部材である。ここに、圧縮平面部25aはビス21のねじ頭21aと当接し、ダンパー24を圧する部分である。また、接触片部25bは、
図6に示すように、第3のアース部材14と第2のアース部材13とに電気的に接触する部分である。すなわち、本実施形態においては、接触片部25bは一対設けられていて、一方の接触片部25bが第3のアース部材14に電気的に接触し、他方の接触片部25bが第2のアース部材13に電気的に接触するようになっている。従って、一方の接触片部25bは、他方の接触片部25bよりも第2のアース部材13の肉厚分だけ長く延出されている。
【0035】
そして、
図6に示すように、前面側から背面側へ向かって順に、第3のアース部材14、第2のアース部材13、第1のアース部材12、電気基板11、ダンパー24を順次重ねた状態で、さらにダンパー24と接触させてダンパー押え25を取り付けた上で、ビス21を、ビス孔24d、ビス孔25d、第1のビス孔11d、第1のビス孔12d、ビス孔13d、ビス孔14dを貫通した後に、第2のビス穴2eに対して螺合させる。
【0036】
この螺合時に、
図6の2点鎖線で示す螺合方向の自然長であったダンパー24は、圧縮平面部25aにより、
図6の実線で囲むハッチング部分に示すような長さ(すなわち、電気基板11と圧縮平面部25aとで挟まれた部分の長さ)に圧縮される。つまり、ビス21を螺合していくと、ビス21のねじ頭21aが圧縮平面部25aの背面に当接(この当接は、電気的接続を伴う接触となる)して圧縮平面部25aを前面側へ押圧し、さらにこの圧縮平面部25aの前面によりダンパー24が前面側へ押圧されるが、ダンパー24の前面は電気基板11により前面側への移動を規制されているために、結局、弾性を有するダンパー24が圧縮されることになる。
【0037】
そして、一方の接触片部25bが第3のアース部材14に当接(この当接は、電気的接続を伴う接触となる)し、他方の接触片部25bが第2のアース部材13に当接(この当接も、電気的接続を伴う接触となる)したところで、固締め程度の余裕分を除いてビス21をそれ以上は螺合することができない状態になる。これにより、ダンパー押え25は、ビス21が前カバーユニット2の第1のビス穴2d内に螺合する深さを規制し、過剰な深さまで螺合するのを防止している。なお、固締め時には、自然体では平面となっている圧縮平面部25aが、ビス21のねじ頭21aの当接により撓まされて、前面側に凸状に湾曲するような幾らかの歪みを受けることになる。
【0038】
これにより、第3のアース部材14、第2のアース部材13、第1のアース部材12、電気基板11、ダンパー24、ダンパー押え25が、ビス21により固定部材である前カバーユニット2に対して固定される。
【0039】
そしてこのときには、ダンパー押え25は、第1のアース部材12と電気基板11とダンパー24とを挟んで、第3のアース部材14および第2のアース部材13に電気的に接触している。また、
図6に示すように、第2のアース部材13と第1のアース部材12とは電気的に接触している。
【0040】
従って、ビス21は、ダンパー押え25を介して、第3のアース部材14、第2のアース部材13、および第1のアース部材12に対して電気的に接続され、すなわち、カメラ1の電気回路の基準電位に導通されていることになる。
【0041】
なお、第2のビス22および第3のビス23も、別途の構成により基準電位に導通されていることはいうまでもない。
【0042】
次に、電気基板11に実装された部品と、ビス固定の位置との関係について、
図7を参照して説明する。
【0043】
電気基板11に上述したように実装された電気部品の内の、例えばコネクタ31〜33は、衝撃が加わったときであっても接続が外れないことが必要である。そして、これらのコネクタ31〜33は、例えばレンズユニット4と通信を行うためのものであるために、電気基板11のコネクタ31〜33が実装されている部分は、前カバーユニット2に対して確実に固定されていることが望ましい。
【0044】
一方、例えばメモリ36,37やCPU35は、素子パッケージから多数の端子が延出されて電気基板11に対して半田付けされる構成であるために、より堅固に電気基板11に対して実装された他の電気部品に比較して、応力を受けた場合に剥離してしまう可能性がある。従って、電気基板11のメモリ36,37やCPU35が実装されている部分は、衝撃が加わったときであっても応力を受けない構成であることが望ましい。
【0045】
このために、本実施形態においては、電気基板11を主面内の辺縁部における3点、例えば、背面側から見て、右下角部(ビス23が対応)、右上角部(ビス22が対応)、左側面部(ビス21が対応)においてビス止めしており、しかもこれら3点が、上述したように、なるべく正三角形に近い配置となるように構成している。
【0046】
そして、確実に固定されることが望ましいコネクタ31〜33を挟む2箇所である右下角部のビス23による固定部、および右上角部のビス22により固定部は、ダンパー等を用いない通常のビス固定としている。
【0047】
これに対して、応力を受けないことが望ましいメモリ36,37やCPU35の近傍となる左側面部のビス21による固定部は、ダンパー24付きビス固定としている。
【0048】
次に、上述したような電気基板接続構造を採用した場合の、電気基板11が衝撃を受けたときの様子を
図8を参照して説明する。
【0049】
落下時等に衝撃を受けると、電気基板11は、実線で示す通常時に対して、例えば2点鎖線で示すような形状に一時的に変位する。このときには、コネクタ31〜33の近傍であるビス22,23の部分の変位は小さく、ダンパー24付きで固定されたビス21の部分の変位はやや大きいが、
図9に示した従来例に比して、電気基板11全体の平面性は比較的保たれている。
【0050】
従って、衝撃を受けたときの電気基板11の撓みが従来よりも軽減され、メモリ36,37やCPU35の剥離を効果的に防止することが可能となっている。
【0051】
なお、上述では電気基板11の2点をビス締めとし、反対側の1点をダンパー24を介したビス固定(緩衝構造)としているが、このような3点支持の構成に限るものではなく、1点がビス締め、他の2点が緩衝構造であっても構わない。さらに、電気基板11の一端側が固定端、他端側が自由端となるような固定法であれば、4点以上の支持であっても良い。
【0052】
このような実施形態1における携帯機器の電気基板接続構造によれば、落下時等において携帯機器であるカメラ1に衝撃が加わった際に、電気基板11が大きく撓むのを防ぐことができ、電気基板11の破壊や電気部品の剥離を防ぐことができる。従って、電気基板11の耐衝撃性が確保される。
【0053】
そして、衝撃を受けたときの電気基板11におけるコネクタ31〜33が実装されている部分の変位は小さいために、コネクタ接続が外れるのを抑制することができる。
【0054】
また、ダンパー24を形成する際に非導電性の弾性素材を用いているために、設計の自由度が比較的高く、低価格化を図ることができる。
【0055】
しかも、非導電性のダンパー24を用いても、ビス21はダンパー押え25を介して接地部材に接続され、すなわちアースされているために、メモリ36,37やCPU35からの電磁的幅射をビス21が受けても、ビス21に発生する電流をアース側へ流すことができる。従って、ビス21からの電磁的二次幅射を抑制することができる。
【0056】
そして、電気基板11と前カバーユニット2とは、ビス21により直接に固定されるのではなく、第1〜第3のアース部材12〜14やダンパー24、ダンパー押え25等を介して固定されているために、間に配置される部材を変更するなどが可能であり、制約条件を少なくして設計の自由度を比較的高く保つことができる。
【0057】
こうして、本実施形態の携帯機器の電気基板接続構造によれば、電気基板の耐衝撃性を確保しながら、不要な電磁的二次幅射を抑制することができ、かつ設計の自由度が比較的高くなる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。