(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、難燃性樹脂組成物には、ケーブルをはじめとする種々の用途に適用できるようにするため、難燃性のみならず、機械的特性及び耐候性にも優れることが要求されるようになってきている。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物は優れた難燃性を有しているものの、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させるという点では改善の余地を有していた。
【0008】
このため、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、本発明者らは、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されるベース樹脂に対し、シリコーン化合物、脂肪酸含有化合物及びヒンダードアミン系化合物をそれぞれ所定の割合で配合するとともに、ポリエチレンを高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンで構成し、ベース樹脂中の高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンの含有率をそれぞれ所定の割合とし、ヒンダードアミン系化合物を2種類のヒンダードアミン系化合物で構成することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されるベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物と、ヒンダードアミン構造を有するヒンダードアミン系化合物とを含み、前記ポリエチレンが高密度ポリエチレンと、中密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとからなり、前記高密度ポリエチレンの密度が945kg/m
3以上であり、前記中密度ポリエチレンの密度が914kg/m
3以上945kg/m
3未満であり、前記低密度ポリエチレンの密度が864kg/m
3以上914kg/m
3未満であり、前記ベース樹脂中の前記高密度ポリエチレンの含有率が40質量%以上60質量%以下であり、前記ベース樹脂中の前記中密度ポリエチレンの含有率が1質量%以上35質量%以下であり、前記ベース樹脂中の前記低密度ポリエチレンの含有率が10質量%以上30質量%以下であり、前記ベース樹脂中の前記酸変性ポリオレフィンの含有率が1質量%以上20質量%以下であり、前記シリコーン化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸含有化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.2質量部以上2.4質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物が第1ヒンダードアミン系化合物と、前記第1ヒンダードアミン系化合物と異なる第2ヒンダードアミン系化合物とからな
り、前記第1ヒンダードアミン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.2質量部以下の割合で配合され、前記第2ヒンダードアミン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.2質量部以下の割合で配合され、前記第1ヒンダードアミン系化合物において、前記ヒンダードアミン構造の窒素原子が酸素原子と結合しており、前記第2ヒンダードアミン系化合物において、前記ヒンダードアミン構造の窒素原子が水素原子又は炭素原子と結合している、難燃性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる。
【0013】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、上記の効果が得られる理由については以下のように推察している。
【0014】
すなわち、難燃性樹脂組成物中にシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物が含まれていると、難燃性樹脂組成物の燃焼時に、ベース樹脂の表面に、主としてシリコーン化合物、脂肪酸含有化合物及びこれらの分解物からなるバリア層が形成され、ベース樹脂の燃焼が抑制され、優れた難燃性が確保されるものと考えられる。さらに、ベース樹脂に結晶性の高い高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンが含まれることで、優れた機械的特性が確保されるものと考えられる。さらにまた、低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンと比較して、光によって、主鎖にラジカルが発生する可能性が低いため、光によって主鎖が開裂することによる物性の低下が起こりにくい。従って、ベース樹脂に低密度ポリエチレンが含まれることで、優れた耐候性が確保されるものと考えられる。また、ベース樹脂に酸変性ポリオレフィンが含まれることで、より優れた難燃性が得られる。これは、難燃剤の分散性が向上するためではないかと考えられる。
【0016】
また、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、第1ヒンダードアミン系化合物においてはより優れた難燃性が得られ、第2ヒンダードアミン系化合物においては優れた耐候性が得られる。従って、難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性及び耐候性が得られる。
【0017】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記第1ヒンダードアミン系化合物が、下記式(1A)で表される基を有することが好ましい。
【化1】
(上記式(1A)において、R
1〜R
4は各々独立に、炭素数1〜8のアルキル基であり、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜25のアラルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。)
【0018】
この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0019】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記第1ヒンダードアミン系化合物が、下記式(2A)で表されることが好ましい。
【化2】
(上記式(2A)において、R
6〜R
8は各々独立に、下記式(3A)で表される基を表す)
【化3】
(上記式(3A)において、R
9及びR
10は各々独立に、上記式(1A)で表される基を表し、R
11及びR
12は各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基を表す)
【0020】
この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0021】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記第2ヒンダードアミン系化合物が、下記式(4A)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【化4】
(上記式(4A)において、R
13は窒素原子を含む基を表し、R
14及びR
15は各々独立に、下記式(5A)で表される基を表し、nは1〜8の整数を表す)
【化5】
(上記式(5A)において、R
16は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜25のアラルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表し、R
17〜R
20は各々独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す)
【0022】
この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0025】
上記難燃性樹脂組成物が炭酸カルシウムをさらに含み、前記炭酸カルシウムが前記ベース樹脂100質量部に対して0質量部より大きく60質量部以下の割合で配合されることが好ましい。
【0026】
この場合、難燃性樹脂組成物において、炭酸カルシウムが配合されていない場合と比べて、より優れた難燃性が得られる。また、炭酸カルシウムがベース樹脂100質量部に対して60質量部より多く配合される場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。
【0027】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記酸変性ポリオレフィンが無水マレイン酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0028】
この場合、酸変性ポリオレフィンが無水マレイン酸変性ポリオレフィン以外の酸変性ポリオレフィンである場合に比べて、難燃性樹脂組成物がより優れた機械的特性を有する。
【0029】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記シリコーン化合物がシリコーンガムであることが好ましい。
【0030】
この場合、シリコーン化合物がシリコーンガム以外のシリコーン化合物である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、ブルームがより起こりにくくなる。
【0031】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0032】
この場合、脂肪族含有化合物がステアリン酸マグネシウム以外の脂肪酸含有化合物である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、少ない添加量でより優れた難燃性が得られる。
【0033】
また本発明は、金属導体と、前記金属導体を被覆する絶縁層とを備え、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成される絶縁電線である。
【0034】
また、本発明は、金属導体、及び前記金属導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆する被覆層とを備え、前記絶縁層及び前記被覆層の少なくとも一方が、上記難燃性樹脂組成物で構成されるメタルケーブルである。
【0035】
さらに本発明は、光ファイバと、前記光ファイバを被覆する被覆部とを備え、前記被覆部が、前記光ファイバを直接被覆する絶縁体を有し、前記絶縁体が、上述した難燃性樹脂組成物で構成される光ファイバケーブルである。
【0036】
また本発明は、上記難燃性樹脂組成物で構成される成形品である。
【0037】
本発明の成形品によれば、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる。
【0038】
なお、本発明において、高密度ポリエチレンが、密度の異なる複数種類の高密度ポリエチレンの混合物で構成される場合、その密度は、各高密度ポリエチレンごとに以下の式で算出される値Xを合計した値を言うものとする。
X=高密度ポリエチレンの密度×混合物中の高密度ポリエチレンの含有率(単位:質量%)
【0039】
また、本発明において、中密度ポリエチレンが、密度の異なる複数種類の中密度ポリエチレンの混合物で構成される場合、その密度は、各中密度ポリエチレンごとに以下の式で算出される値Yを合計した値を言うものとする。
Y=中密度ポリエチレンの密度×混合物中の中密度ポリエチレンの含有率(単位:質量%)
【0040】
さらに、本発明において、低密度ポリエチレンが、密度の異なる複数種類の低密度ポリエチレンの混合物で構成される場合、その密度は、各低密度ポリエチレンごとに以下の式で算出される値Zを合計した値を言うものとする。
Z=低密度ポリエチレンの密度×混合物中の低密度ポリエチレンの含有率(単位:質量%)
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0044】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るメタルケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、メタルケーブルとしての丸型ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するチューブ状の被覆層3とを備えている。そして、絶縁電線4は、金属導体としての内部導体1と、内部導体1を被覆するチューブ状の絶縁層2とを有している。
【0045】
ここで、チューブ状の絶縁層2及び被覆層3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されるベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物と、ヒンダードアミン構造を有するヒンダードアミン系化合物とを含んでいる。この難燃性樹脂組成物においては、ポリエチレンが高密度ポリエチレンと、中密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとからなり、高密度ポリエチレンの密度が945kg/m
3以上であり、中密度ポリエチレンの密度が914kg/m
3以上945kg/m
3未満であり、低密度ポリエチレンの密度が864kg/m
3以上914kg/m
3未満であり、ベース樹脂中の高密度ポリエチレンの含有率が40質量%以上60質量%以下であり、ベース樹脂中の中密度ポリエチレンの含有率が1質量%以上35質量%以下であり、ベース樹脂中の低密度ポリエチレンの含有率が10質量%以上30質量%以下であり、ベース樹脂中の酸変性ポリオレフィンの含有率が1質量%以上20質量%以下である。またシリコーン化合物はベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、脂肪酸含有化合物はベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物がベース樹脂100質量部に対して0.2質量部以上2.4質量部以下の割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物は、第1ヒンダードアミン系化合物と、第1ヒンダードアミン系化合物と異なる第2ヒンダードアミン系化合物とからなる。
【0046】
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁層2及び被覆層3は、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる。従って、丸型ケーブル10は、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる。
【0047】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述した丸型ケーブル10の製造方法について説明する。
【0048】
<金属導体>
まず金属導体としての内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0049】
<難燃性樹脂組成物>
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されるベース樹脂と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物と、ヒンダードアミン系化合物とを含む。
【0050】
(1)ベース樹脂
上述したように、ベース樹脂は、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されている。すなわち、ベース樹脂中のポリエチレンの含有率及び酸変性ポリオレフィンの含有率の合計は100質量%である。
【0051】
また、上述したようにポリエチレンは、高密度ポリエチレンと、中密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとからなる。
【0052】
(1−1)高密度ポリエチレン
上述した通り、高密度ポリエチレンの密度は、945kg/m
3以上である。但し、高密度ポリエチレンの密度は964kg/m
3以下であることが好ましい。この場合、高密度ポリエチレンの密度が964kg/m
3より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性と機械的特性とを両立できる。
【0053】
また上述した通り、ベース樹脂中の高密度ポリエチレンの含有率は、40質量%以上60質量%以下である。この場合、ベース樹脂中の高密度ポリエチレンの含有率が40質量%未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。またベース樹脂中の高密度ポリエチレンの含有率が60質量%より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性が得られる。ベース樹脂中の高密度ポリエチレンの含有率は、45質量%以上55質量%以下であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性と機械的特性とを両立できる。
【0054】
(1−2)中密度ポリエチレン
上述した通り、中密度ポリエチレンの密度は914kg/m
3以上945kg/m
3未満である。中密度ポリエチレンの密度は914kg/m
3以上930kg/m
3以下であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0055】
また上述した通り、ベース樹脂中の中密度ポリエチレンの含有率は1質量%以上35質量%以下である。この場合、ベース樹脂中の中密度ポリエチレンの含有率が1質量%未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。またベース樹脂中の中密度ポリエチレンの含有率が35質量%より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。ベース樹脂中の中密度ポリエチレンの含有率は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性と機械的特性とを両立できる。
【0056】
(1−3)低密度ポリエチレン
上述した通り、低密度ポリエチレンの密度は864kg/m
3以上914kg/m
3未満である。低密度ポリエチレンの密度は880kg/m
3以上905kg/m
3以下であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、優れた耐候性と機械的特性とを両立できる。
【0057】
低密度ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン又はこれらの混合物であってもよい。但し、成形加工が容易となることから、低密度ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0058】
また上述した通り、ベース樹脂中の低密度ポリエチレンの含有率は10質量%以上30質量%以下である。この場合、ベース樹脂中の低密度ポリエチレンの含有率が10質量%未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。またベース樹脂中の低密度ポリエチレンの含有率が30質量%より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。ベース樹脂中の低密度ポリエチレンの含有率は10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、優れた耐候性と機械的特性とを両立できる。
【0059】
(1−4)酸変性ポリオレフィン
ベース樹脂中の酸変性ポリオレフィンの含有率は1質量%以上20質量%以下である。この場合、ベース樹脂中の酸変性ポリオレフィンの含有率が1質量%未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。またベース樹脂中の酸変性ポリオレフィンの含有率が20質量%より大きい場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。
【0060】
酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを酸又は酸無水物で変性したものである。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。酸としては、例えば酢酸、アクリル酸及びメタクリル酸などのカルボン酸が挙げられ、酸無水物としては、例えば無水マレイン酸などの無水カルボン酸が挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体及び無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましい。この場合、酸変性ポリオレフィンが無水マレイン酸変性ポリオレフィン以外の酸変性ポリオレフィンである場合と比べて、難燃性樹脂組成物がより優れた機械的特性を有する。
【0061】
(2)シリコーン化合物
シリコーン化合物は、難燃助剤として機能するものであり、シリコーン化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、エチル基及びプロピル基などのアルキル基;ビニル基及びフェニル基などのアリール基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、シリコーン化合物がシリコーンガム以外のシリコーン化合物である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、ブルームがより起こりにくくなる。
【0062】
シリコーン化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される。この場合、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が3質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。またベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、シリコーン化合物がベース樹脂に均等に混ざりやすくなり、部分的に塊が発生するということが起こりにくくなるため、難燃性樹脂組成物においてシリコーン化合物のブリードをより十分に抑制できるとともに、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0063】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は5質量部以上であることが好ましい。この場合、シリコーン化合物の配合割合が5質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、さらに優れた難燃性が得られる。但し、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合は7質量部以下であることが好ましい。
【0064】
(3)脂肪酸含有化合物
脂肪酸含有化合物は難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0065】
脂肪酸含有化合物は脂肪酸の金属塩であることが好ましい。脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より少ない添加量でより優れた難燃性が得られる。
【0066】
脂肪酸含有化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の割合が3質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。またベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、脂肪酸含有化合物のブリードをより十分に抑制できるとともに、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0067】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合は3質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が3質量部未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。但し、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合は8質量部以下であることが好ましい。
【0068】
(4)ヒンダードアミン化合物
ヒンダードアミン系化合物は、ヒンダードアミン構造を有するものを言う。また、ヒンダードアミン系化合物は、上述したように、第1ヒンダードアミン系化合物と、第1ヒンダードアミン系化合物と異なる第2ヒンダードアミン系化合物とからなる。
【0069】
ヒンダードアミン系化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して0.2質量部以上2.4質量部の割合で配合される。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性、耐候性及び機械的特性が得られる。
【0070】
ヒンダードアミン系化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.6質量部以上2.0質量部以下の割合で配合されることが好ましい。
【0071】
(4−1)第1ヒンダードアミン系化合物
第1ヒンダードアミン系化合物はヒンダードアミン構造を有する化合物であれば特に制限されるものではないが、第1ヒンダードアミン系化合物としては、ヒンダードアミン構造の窒素原子が酸素原子と結合していることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。ヒンダードアミン構造の窒素原子が酸素原子と結合している第1ヒンダードアミン系化合物は、下記式(1A)で表される基を有することが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。また、第1ヒンダードアミン系化合物は、下記式(2A)で表されることがさらに好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【化6】
(上記式(1A)において、R
1〜R
4は各々独立に、炭素数1〜8のアルキル基であり、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜25のアラルキル基、炭素数6〜12のアリール基である。)
【化7】
(上記式(2A)において、R
6〜R
8は各々独立に、下記式(3A)で表される基を表す)
【化8】
(上記式(3A)において、R
9及びR
10は各々独立に、上記式(1A)で表される基を表し、R
11及びR
12は各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基を表す)
【0072】
第1ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、上記式(1A)におけるR
1〜R
4がメチル基、R
5がシクロヘキシル基、上記式(3A)におけるR
11及びR
12がブチル基であり、R
6〜R
8が互いに同一であり、R
9及びR
10が互いに同一である化合物、及び、HOSTAVIN NOW(クラリアント社製)などが挙げられる。中でも、第1ヒンダードアミン系化合物としては、上記式(1A)におけるR
1〜R
4がメチル基、R
5がシクロヘキシル基、上記式(3A)におけるR
11及びR
12がブチル基であり、R
6〜R
8が互いに同一であり、R
9及びR
10が互いに同一である化合物が好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0073】
第1ヒンダードアミン系化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.2質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合が0.1質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。またベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合が1.2質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。
【0074】
ベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合は0.2質量部以上であることがより好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合が0.2質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0075】
また、ベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合は1.0質量部以下であることがより好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第1ヒンダードアミン系化合物の配合割合が1.0質量部を超える場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0076】
(4−2)第2ヒンダードアミン系化合物
第2ヒンダードアミン系化合物は、ヒンダードアミン構造を有し且つ第1ヒンダードアミン系化合物と異なるものであれば特に制限されるものではないが、第1ヒンダードアミン系化合物においてヒンダードアミン構造の窒素原子が酸素原子と結合している場合には、第2ヒンダードアミン系化合物としては、ヒンダードアミン構造の窒素原子が水素原子又は炭素原子と結合しているものが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0077】
ここで、第2ヒンダードアミン系化合物は、下記式(4A)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【化9】
(上記式(4A)において、R
13は窒素原子を含む基を表し、R
14及びR
15は各々独立に、下記式(5A)で表される基を表し、nは1〜8の整数を表す)
【化10】
(上記式(5A)において、R
16は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜25のアラルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表し、R
17〜R
20は各々独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す)
【0078】
上記式(4A)で表される繰返し単位の数は特に制限されるものではないが、1〜6であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、より優れた耐候性が得られる。
【0079】
第2ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、上記式(4A)で表される繰返し単位を6個有する化合物であって、上記式(5A)におけるR
16〜R
20がメチル基、上記式(4A)におけるR
13がモルホリノ基であり、R
14及びR
15が互いに同一であり、n=6である化合物、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、並びに、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。中でも、第2ヒンダードアミン系化合物としては、上記式(4A)で表される繰返し単位を6個有する化合物であって、上記式(5A)におけるR
16〜R
20がメチル基、上記式(4A)におけるR
13がモルホリノ基であり、R
14及びR
15が互いに同一であり、n=6である化合物が好ましい。この場合、酸との拮抗作用がないため、難燃性樹脂組成物において、第2ヒンダードアミン系化合物の失活をより十分に抑制することができる。
【0080】
第1ヒンダードアミン系化合物がベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.2質量部以下の割合で配合される場合には、第2ヒンダードアミン系化合物が、ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.2質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物において、ブルームの発生をより十分に抑制することができる。
【0081】
ベース樹脂100質量部に対する第2ヒンダードアミン系化合物の配合割合は0.3質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第2ヒンダードアミン系化合物の配合割合が0.3質量部未満である場合に比べて、より優れた耐候性が得られる。
【0082】
また、ベース樹脂100質量部に対する第2ヒンダードアミン系化合物の配合割合は1.0質量部以下であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する第2ヒンダードアミン系化合物の配合割合が1.0質量部を超える場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、ブルームの発生をより十分に抑制することができる。
【0083】
(5)炭酸カルシウム
上記難燃性樹脂組成物は、炭酸カルシウムをさらに含み、炭酸カルシウムはベース樹脂100質量部に対して0質量部より大きく60質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、炭酸カルシウムが配合されていない場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。また、この場合、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードアミン系難燃剤の配合割合が60質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。
【0084】
ベース樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの配合割合は40質量部以下であることがより好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの配合割合が40質量部を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた機械的特性が得られる。但し、ベース樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの配合割合は8質量部以上であることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの配合割合が8質量部未満である場合と比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。
【0085】
シリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物は炭酸カルシウムの表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物の偏析がより起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0086】
炭酸カルシウムの表面にシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を付着させる方法としては、例えば炭酸カルシウムの表面にシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0087】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤などの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0088】
上記難燃性樹脂組成物は、ポリエチレン及び酸変性ポリオレフィンで構成されるベース樹脂、シリコーン化合物、脂肪酸含有化合物、ヒンダードアミン系化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン化合物の分散性を向上させる観点からは、ポリエチレンの一部とシリコーン化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのベース樹脂、脂肪酸含有化合物、ヒンダードアミン系化合物等と混練してもよい。
【0089】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
【0090】
<被覆層>
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、この絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製した被覆層3で被覆する。被覆層3は、いわゆるシースであり、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0091】
以上のようにして丸型ケーブル10が得られる。
【0092】
[成形品]
本発明は、上述した難燃性樹脂組成物で構成される成形品である。
【0093】
この成形品は、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができる。
【0094】
上記成形品は、射出成形法、押出成形法などの一般的な成形法によって得ることができる。
【0095】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではメタルケーブルとして、1本の絶縁電線4を有する丸型ケーブル10が用いられているが、本発明のメタルケーブルは丸形ケーブルに限定されるものではなく、被覆層3の内側に絶縁電線4を2本以上有するケーブルであってもよい。また被覆層3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
【0096】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、被覆層3のみが、上記の難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
【0097】
さらに、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物は、光ファイバと、光ファイバを直接被覆する絶縁体を有する被覆部とを備える光ファイバケーブルの被覆部又は絶縁体としても適用可能である。例えば
図3は、本発明の光ファイバケーブルの一実施形態としてのインドア型光ファイバケーブルを示す断面図である。
図3に示すように、インドア型光ファイバケーブル20は、2本のテンションメンバ22,23と、光ファイバ24と、これらを被覆する被覆部25とを備えている。ここで、光ファイバ24は、被覆部25を貫通するように設けられているここで、被覆部25は、光ファイバ24を直接被覆する絶縁体で構成され、絶縁体は、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成される。
【0098】
なお、光ファイバケーブル20においては、被覆部25が絶縁体で構成されているが、被覆部25は、絶縁体を被覆する被覆体をさらに有していてもよい。ここで、被覆体は、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよいし、構成されていなくてもよいが、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
(実施例1〜22及び比較例1〜17)
ポリエチレン(以下、「ポリエチレンA」と呼ぶ)、酸変性ポリオレフィン、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸含有化合物、炭酸カルシウム、ヒンダードアミン系化合物を、表1〜8に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。ここで、シリコーンMBはポリエチレン(以下、「ポリエチレンB」と呼ぶ)とシリコーンガムとの混合物である。なお、表1〜8において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜8において、ポリエチレンAの配合量及び酸変性ポリオレフィンの配合量の合計が100質量部となっていないが、ベース樹脂中のポリエチレンは、ポリエチレンAとシリコーンMB中のポリエチレンBとの混合物で構成されており、ポリエチレンAの配合量とシリコーンMB中のポリエチレンBの配合量とを合計すれば、その合計は100質量部となる。
【0101】
上記ポリエチレンA、酸変性ポリオレフィン、シリコーンMB、脂肪酸含有化合物、炭酸カルシウム、ヒンダードアミン系化合物としては具体的には下記のものを用いた。
(1)ポリエチレンA
(1−1)高密度ポリエチレン
HDPE:高密度ポリエチレン:日本ポリエチレン社製、密度951kg/m
3
(1−2)中密度ポリエチレン
MDPE:中密度ポリエチレン:住友化学社製、密度920kg/m
3
(1−3)低密度ポリエチレン
LDPE1:直鎖状低密度ポリエチレン:住友化学社製、密度913kg/m
3
LDPE2:直鎖状低密度ポリエチレン:宇部丸善ポリエチレン社製、密度904kg/m
3
LDPE3:直鎖状低密度ポリエチレン:三井化学社製、密度893kg/m
3
LDPE4:直鎖状低密度ポリエチレン:三井化学社製、密度864kg/m
3
(2)酸変性ポリオレフィン
無水マレイン酸変性ポリエチレン:三井化学社製
(3)シリコーンMB
信越化学工業社製
(50質量%シリコーンガムと50質量%ポリエチレンB(中密度ポリエチレン:密度915kg/m
3)とを含有)
(4)炭酸カルシウム
日東粉化工業社製(平均粒径1.7μm)
(5)脂肪酸含有化合物
ステアリン酸マグネシウム:ADEKA社製
(6)ヒンダードアミン系化合物
(6−1)第1ヒンダードアミン系化合物
上記式(2A)で表される化合物であって、上記式(1A)におけるR
1〜R
4がメチル基、R
5がシクロヘキシル基、上記式(3A)におけるR
11及びR
12がブチル基であり、R
6〜R
8が互いに同一であり、R
9及びR
10が互いに同一である化合物:BASFジャパン社製
(6−2)第2ヒンダードアミン系化合物
上記式(4A)で表される繰返し単位を6個有する化合物であって、上記式(5A)におけるR
16〜R
20がメチル基、上記式(4A)におけるR
13がモルホリノ基であり、R
14及びR
15が互いに同一であり、n=6である化合物:CYTEC社製
【0102】
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜22及び比較例1〜17の難燃性樹脂組成物について、機械的特性、耐候性及び難燃性の評価を行った。
【0103】
なお、難燃性は、実施例1〜22及び比較例1〜17の難燃性樹脂組成物を用いて以下のようにして光ファイバケーブルを作製し、この光ファイバケーブルについて評価した。
【0104】
(難燃性評価用光ファイバケーブルの作製)
実施例1〜22及び比較例1〜17の難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(25mmφ押出機、マース精機社製)に投入して混練し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、光ファイバ心線1心上に、断面が短径1.6mm、長径2.0mmの楕円形となるように被覆した。こうして難燃性評価用光ファイバケーブルを作製した。
【0105】
<機械的特性>
機械的特性は、実施例1〜22及び比較例1〜17の難燃性樹脂組成物を用いてJIS K6251に準拠した3号ダンベル試験片を作製し、この3号ダンベル試験片について評価した。具体的には、上記の3号ダンベル試験片を5つ用意し、これら5つの3号ダンベル試験片について、JIS C3005により引張試験を行い、測定された降伏点強度及び伸び率を機械的特性の指標とした。結果を表1〜8に示す。なお、表1〜8においては、破断強度も併記した。また、降伏点強度及び伸び率の合格基準は下記の通りとした。また引張試験は、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの条件で行った。
(合格基準)降伏点強度が10MPa以上で且つ伸び率が600%以上であること
【0106】
<耐候性>
耐候性は、実施例1〜22及び比較例1〜17の難燃性樹脂組成物を用いて、機械的特性の評価で用いた3号ダンベル試験片と同様の3号ダンベル試験片を作製し、この3号ダンベル試験片について評価した。具体的には、まず上記の3号ダンベル試験片を5つ用意し、これら5つの3号ダンベル試験片について、促進耐候性(S−UV)試験を行った。このとき、S−UV試験は、メタルハライドランプ式耐候性試験機を用いて行い、試験条件は下記の通りとした。
(試験条件)
ブラックパネル温度:63℃
照射強度:0.53kW/h
照射波長:300−400nm
照射時間:150時間
そして、S−UV試験後の5つのダンベル試験片について、機械的特性の評価に際して行った引張試験と同様にして引張試験を行い、引張破断強度及び引張伸びを測定した。このとき、5つのダンベル試験片の引張破断強度の平均値及び引張伸びの平均値をそれぞれ引張破断強度及び引張伸びの値とした。続いて、S−UV試験前の引張破断強度に対するS−UV試験後の引張破断強度の比率(残率)を強度残率として算出した。またS−UV試験前の引張伸びに対するS−UV試験後の引張伸びの比率(残率)を伸び残率として算出した。そして、強度残率及び伸び残率を耐候性の指標とした。結果を表1〜8に示す。なお、耐候性の合格基準は下記の通りとした。
(合格基準)強度残率が50%以上で且つ伸び残率が50%以上であること
【0107】
<難燃性>
上記のようにして得られた10本の難燃性評価用光ファイバケーブルについて、JIS C3005に準拠した60°傾斜燃焼試験を行った。そして、10本の難燃性評価用光ファイバケーブルのうち自己消火した難燃性評価用光ファイバケーブルの割合を合格率(単位:%)として下記式に基づいて算出し、この合格率を難燃性の評価指標とした。結果を表1〜8に示す。
合格率(%)=100×自己消火した難燃性評価用光ファイバケーブルの本数/試験を行った難燃性評価用光ファイバケーブルの総数(10本)
なお、難燃性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準)合格率が100%であること
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0108】
表1〜8に示す結果より、実施例1〜22の難燃性樹脂組成物は、機械的特性、耐候性及び難燃性について合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜17の難燃性樹脂組成物は、機械的特性、耐候性及び難燃性のうち少なくとも1つについて合格基準に達していなかった。
【0109】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物が、優れた難燃性、機械的特性及び耐候性を同時に満足させることができることが確認された。
【解決手段】高密度ポリエチレンの含有率が40〜60質量%、中密度ポリエチレンの含有率が1〜35質量%、低密度ポリエチレンの含有率が10〜30質量%、酸変性ポリオレフィンの含有率が1〜20質量%のベース樹脂100質量部に対して、シリコーン化合物が3〜10質量部、脂肪酸含有化合物が3〜10質量部、ヒンダードアミン系化合物が0.2〜2.4質量部の割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物が第1ヒンダードアミン系化合物と、第1ヒンダードアミン系化合物と異なる第2ヒンダードアミン系化合物である、難燃性樹脂組成物。ヒンダードアミン構造のNが、第1ヒンダードアミン系化合物ではOと結合し、第2ヒンダード系化合物ではH又はCと結合している、難燃性樹脂組成物。