特許第6239089号(P6239089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239089無電解めっきのための銅表面の活性化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239089
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】無電解めっきのための銅表面の活性化方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20171120BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C23C18/18
   H05K3/18 B
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-504516(P2016-504516)
(86)(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公表番号】特表2016-515666(P2016-515666A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014050158
(87)【国際公開番号】WO2014154365
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】13160785.5
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(72)【発明者】
【氏名】アーント キリアン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ヴェークリヒト
(72)【発明者】
【氏名】ドニー ラウタン
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−011448(JP,A)
【文献】 特開平04−365877(JP,A)
【文献】 特開2011−042836(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073783(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0245080(US,A1)
【文献】 特表2014−528518(JP,A)
【文献】 特表2005−538246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法であって、以下の段階
i. 銅または銅合金表面を含む基板を準備する段階、
ii. 前記基板と以下の成分:
a. パラジウムイオン源を含有する水溶液、
b. ホスホネート化合物を含有する水溶液、
c. ハロゲン化物イオン源を含有する水溶液
とを接触させる段階、および
iii. 段階iiによって得られた、活性化された銅または銅合金表面上に金属または金属合金層を、無電解めっきによって堆積させる段階
をこの順で含み、その際、段階iiにおいて、ホスホネート基を有さずにカルボキシル基を含む有機酸またはその塩は使用されない、前記方法。
【請求項2】
前記基板を、段階iiにおいて、パラジウムイオン源、少なくとも1つのホスホネート化合物、およびハロゲン化物イオンを含む1つの水溶液と接触させる、請求項1に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項3】
パラジウムイオンの濃度が0.01〜1g/lの範囲である、請求項2に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項4】
少なくとも1つのホスホネート化合物の濃度が0.3〜20mmol/lの範囲である、請求項2または3に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項5】
ハロゲン化物イオンの濃度が0.1〜100mg/lの範囲である、請求項2から4までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項6】
ハロゲン化物イオンが塩化物イオンである、請求項2から5までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項7】
前記基板を、段階iiにおいて、パラジウムイオン源および少なくとも1つのホスホネート化合物を含み、ハロゲン化物イオン不含の第一の水溶液と接触させ、その後、ハロゲン化物イオンを含む第二の水溶液と接触させる、請求項1に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項8】
第一の水溶液中のパラジウムイオンの濃度が0.01〜1g/lの範囲である、請求項7に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項9】
第一の水溶液中での少なくとも1つのホスホネートの濃度が0.3〜20mmol/lの範囲である、請求項7または8に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項10】
第二の水溶液中のハロゲン化物イオンが塩化物イオンである、請求項7から9までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項11】
パラジウムイオン源が水溶性のパラジウム塩である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項12】
少なくとも1つのホスホネート化合物が、1−ヒドロキシエタン−1,1,−ジホスホン酸、ヒドロキシエチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、カルボキシメチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)および2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を含む群から選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【請求項13】
段階iiiにおいて堆積される金属または金属合金が、パラジウム、パラジウム合金、ニッケル合金およびコバルト合金を含む群から選択される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の無電解めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金表面上に堆積させる方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属または金属合金を上に引き続き無電解(自己触媒)めっきするための銅または銅合金表面の活性化方法に関する。この方法は、プリント回路板およびIC基板の製造、並びに半導体の金属被覆工程において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
無電解(自己触媒)めっきによって銅または銅合金製の造形物上への様々な金属および金属合金の選択的な堆積は、プリント回路板およびIC基板の製造、並びに例えばマイクロチップの製造における半導体素子の金属被覆において一般的な方法である。パラジウムは、そのような銅または銅合金の造形物の上に堆積されるべき金属の例である。この目的のための金属合金の例は、ニッケル合金、例えばNi−P合金およびコバルト合金、例えばCo−Mo−PおよびCo−W−P合金である。
【0003】
銅または銅合金の表面は、その上での金属または金属合金の無電解(自己触媒)堆積の前に活性化される必要がある。銅または銅合金表面を活性化するための最も卓越した手段は、パラジウムの浸漬型めっきによるパラジウムシード層の堆積であり、それは銅が酸化され且つ活性化溶液中に存在するパラジウムイオンが金属状態へと還元されるレドックス反応である。その後、パラジウムの前記シード層は、無電解(自己触媒)めっきによって金属または金属合金層を銅または銅合金の造形物上に堆積するためのめっきの下地としてはたらく。使用される活性化溶液は通常、酸性である。
【0004】
金属または金属合金を上に引き続き無電解堆積するための銅または銅合金表面の活性化方法は、US7285492号B2内に開示されている。まず基板を、カルボキシル基含有有機酸またはその塩および界面活性剤の水溶液を含む洗浄溶液と接触させる。次に、前記の洗浄された基板を、パラジウムイオンおよびカルボキシ基含有有機酸またはその塩を含む処理溶液と接触させる。その後、金属または金属合金層を活性化された基板上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積することができる。
【0005】
酸性溶液からのパラジウムの浸漬型のめっきは、活性化された銅または銅合金の造形物の表面領域において望ましくないボイドの形成を引き起こす。前記ボイドは、銅または銅合金の造形物がはんだ付けまたはワイヤボンディングのために使用されるコンタクトパッドである場合、例えばはんだ接合またはワイヤボンディングの信頼性を低下させる。
【0006】
発明の課題
本発明の課題は、銅または銅合金表面を、引き続く無電解(自己触媒)めっきのためのパラジウムイオンを含む酸性の活性剤溶液で活性化する際に望ましくないボイドの形成を抑制することである。
【0007】
発明の概要
この課題は、無電解(自己触媒)めっきによって金属または金属合金層を上に堆積するために銅または銅合金表面を活性化するための方法であって、以下の段階
i. 銅または銅合金表面を含む基板を準備する段階、
ii. 前記基板と以下の成分:
a. パラジウムイオン源を含有する水溶液、
b. ホスホネート化合物を含有する水溶液、
c. ハロゲン化物イオン源を含有する水溶液
とを接触させる段階、および
iii. 段階iiによって得られた、活性化された銅または銅合金表面上に金属または金属合金層を、無電解めっきによって銅堆積する段階
をこの順で含み、その際、段階iiにおいて、ホスホネート基を有さずにカルボキシル基を含む有機酸またはその塩は使用されない、前記方法によって解決される。
【0008】
銅または銅合金表面において望ましくないボイドの形成は、本発明による方法によってうまく抑制される。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明による方法によって活性化されるべき銅および銅合金表面は、例えばプリント回路板、IC基板または半導体基板、例えばシリコンウェハのコンタクト領域である。
【0010】
本発明の第一の実施態様において、銅または銅合金表面を含む基板を、パラジウムイオン源、少なくとも1つのホスホネート化合物およびハライドイオンを含む水溶液と接触させ、その際、前記溶液は、カルボキシル基含有ホスホネート化合物、例えば2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボキシレートを除き、いかなるカルボキシル基含有有機酸またはそれらの塩も含まない。
【0011】
第一の実施態様による方法は、以下の段階
i. 銅または銅合金表面を含む基板を準備する段階、
ii. 前記基板を、パラジウムイオン源、少なくとも1つのホスホネート化合物およびハロゲン化物イオンを含む水溶液と接触させる段階、および
iii. 段階iiによって得られた、活性化された銅または銅合金表面上に金属または金属合金層を、無電解めっきによって堆積させる段階
をこの順で含み、その際、段階iiにおいて、ホスホネート基を有さずにカルボキシル基を含む有機酸またはその塩は使用されない。
【0012】
本発明の第一の実施態様の水溶液中のハロゲン化物イオンは、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される。最も好ましくは、第一の実施態様の水溶液のハロゲン化物イオンは塩化物イオンである。ハロゲン化物イオン源は、好ましくは相応の酸またはアルカリ金属、またはアンモニウム塩、例えばHCl、NaCl、KClおよびNH4Clから選択される。第一の実施態様の水溶液中のハロゲン化物イオンの濃度は、好ましくは0.1〜100mg/l、より好ましくは0.5〜50mg/l、最も好ましくは5〜30mg/lの範囲である。
【0013】
ハロゲン化物イオンの濃度が高すぎる場合、活性化が弱く、且つ活性化段階は、引き続く無電解(自己触媒)めっきのための自己触媒反応を開始させられないことがあることが判明した。
【0014】
本発明の第二の実施態様において、銅または銅合金表面を含む基板を、パラジウムイオン源および少なくとも1つのホスホネート化合物を含む第一の水溶液と接触させ、その際、前記第一の溶液は、ホスホネート基を有さずにカルボキシル基を含有する有機酸またはその塩を含まず、且つハロゲン化物イオンも含まない。
【0015】
第二の実施態様の第一の水溶液は、ハロゲン化物イオンを含まないこと以外、第一の実施態様の段階iiにおいて施与されるものと同じ溶液である。
【0016】
その後、前記基板を、ハロゲン化物イオンを含む第二の水溶液と接触させる。
【0017】
特に第一の水溶液と第二の水溶液との間に濯ぎが適用されない場合、パラジウムイオンは使用の間に第一の水溶液から第二の水溶液に移ることがある。
【0018】
本発明の第二の実施態様による第二の水溶液は、さらにホスホネート化合物を含むことができる。
【0019】
第二の実施態様による方法は、以下の段階
i. 銅または銅合金表面を含む基板を準備する段階、
ii. 前記基板を、パラジウムイオン源および少なくとも1つのホスホネート化合物を含む第一の水溶液と接触させる段階、
iii. 前記基板を、少なくとも1つのハロゲン化物イオンを含む第二の水溶液と接触させる段階、および
iv. 段階iiによって得られた、活性化された銅または銅合金表面上に金属または金属合金層を、無電解(自己触媒)めっきによって堆積させる段階
をこの順で含み、その際、ホスホネート基を有さずにカルボキシル基を含む有機酸またはその塩は、段階iiにおいて適用される第一の水溶液中で使用されない。
【0020】
好ましくは、段階iiiにおいて施与される第二の水溶液は、添加されるパラジウムイオンを含まない。「添加される」とは、パラジウムイオン源が提供されることを意味し、且つ、第一の水溶液から第二の水溶液へと基板を移すことによって第一の水溶液から第二の水溶液中に引き込まれ得るパラジウムイオンを考慮に入れていない。
【0021】
本発明の第二の実施態様の第二の水溶液中のハロゲン化物イオンは、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される。最も好ましくは、第一の実施態様の水溶液のハロゲン化物イオンは塩化物イオンである。ハロゲン化物イオン源は、好ましくは相応の酸またはアルカリ金属、またはアンモニウム塩、例えばHCl、NaCl、KClおよびNH4Clから選択される。
【0022】
第二の実施態様の第二の水溶液中のハロゲン化物イオン濃度は、第二の水溶液の作業温度に強く依存する。20℃で、ハロゲン化物イオンの濃度は、好ましくは1〜50g/l、より好ましくは2〜20g/l、最も好ましくは5〜15g/lの範囲である。第二の水溶液が使用の間に30℃に加熱される場合、ハロゲン化物イオンの濃度は好ましくは1〜1000mg/l、より好ましくは2〜300mg/l、最も好ましくは10〜150mg/lに低下されるべきである。温度範囲20〜30℃における第二の水溶液中で必要とされるハロゲン化物イオンについての作業濃度範囲は、通常の実験によって得ることができる。
【0023】
本発明の第二の実施態様の第二の水溶液中のハロゲン化物イオン濃度が、浴のそれぞれの作業温度のためには高すぎる場合、活性化が弱く、且つ活性化段階が引き続く自己触媒反応を開始させられないことがあることが判明した。
【0024】
本発明の第二の実施態様における第二の水溶液のpH値は、温度および処理時間が選択されたpH値に適切に適合されていれば、広い範囲で選択することができる。好ましくは、pHは、1.0〜7.0、より好ましくは1.5〜5.0の範囲である。
【0025】
本発明の両方の実施態様のためのパラジウムイオン源は、水溶性のパラジウム塩、例えば硫酸パラジウムから選択される。両方の実施態様のそれぞれの水溶液中のパラジウムイオンの濃度は、好ましくは0.01〜1g/l、より好ましくは0.05〜0.3g/lの範囲である。本発明によるホスホネート化合物は、−C−PO(OH)2および/または−C−PO(OR2)基を含有する有機化合物である。
【0026】
本発明の両方の実施態様のための少なくとも1つのホスホネート化合物は、好ましくは1−ヒドロキシエタン−1,1,−ジホスホン酸、ヒドロキシエチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、カルボキシメチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミノテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)および2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を含む群から選択される。
【0027】
本発明の両方の実施態様のための少なくとも1つのホスホネート化合物の濃度は、好ましくは0.3〜20mmol/l、より好ましくは1.5〜8mmol/lの範囲である。
【0028】
本発明の両方の実施態様のためのパラジウムイオンを含む水溶液のpH値は、好ましくは0.5〜4.0、より好ましくは1.0〜2.0の範囲である。
【0029】
本発明の両方の実施態様において使用される水溶液中のさらなる随意の成分は、例えば界面活性剤、水溶液を所望のpHに調節するための酸または塩基、緩衝剤およびパラジウムイオンのための錯化剤である。パラジウムイオンのための適した錯化剤は窒素化された有機化合物、例えばヒドロキシエチルアミンである。
【0030】
本発明の第一および第二の実施態様によるパラジウムイオンを含む水溶液は、銅または銅合金表面を含む基板が前記水溶液と接触される際、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜45℃の範囲の温度で保持される。
【0031】
銅または銅合金表面を含む基板を本発明の第一および第二の実施態様によるパラジウムイオンを含む水溶液と、好ましくは20〜180秒、より好ましくは45〜90秒間接触させる。
【0032】
本発明の第二の実施態様の段階iiiにおいて施与される水溶液は、銅または銅合金表面を含む基板が前記水溶液と接触される際、好ましくは15〜50℃、より好ましくは18〜38℃の範囲の温度で保持される。本発明の第二の実施態様における相応の接触は、好ましくは20〜180秒、より好ましくは45〜90秒の範囲である。
【0033】
銅または銅合金表面を含む基板を、本発明の第一および第二の実施態様において施与される(単数若しくは複数の)水溶液と、例えば基板を前記(単数若しくは複数の)水溶液中に浸漬させることによって、または前記(単数若しくは複数の)水溶液を基板上に噴霧することによって、接触させることができる。
【0034】
その後、銅または銅合金表面を、パラジウムシード層で活性化し、それが引き続くその上の金属または金属合金層の無電解(自己触媒)めっきのためのめっき下地としてはたらく。
【0035】
好ましくは、活性化された銅または銅合金表面を含む基板を水で濯ぎ、その後、金属または金属合金層を無電解(自己触媒)めっきによって堆積する。
【0036】
活性化された銅または銅合金表面上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積される金属または金属合金層は、パラジウム、パラジウム合金、ニッケル合金およびコバルト合金を含む群から選択される。
【0037】
適した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、少なくとも1つの金属イオン源、還元剤、1つまたはそれより多くの錯化剤、および好ましくは1つまたはそれより多くの安定化剤を含む。
【0038】
活性化された銅または銅合金表面上に純粋なパラジウム層を堆積するための無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、好ましくはパラジウムイオン源、例えば塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ギ酸、それらの誘導体またはそれらの塩から選択される還元剤、および窒素化錯化剤、例えばエチレン−ジアミン、1,3−ジアミノ−プロパン、1,2−ビス(3−アミノ−プロピル−アミノ)−エタン、2−ジエチル−アミノ−エチル−アミン、ジエチレン−トリアミン、ジエチレン−トリアミン−五酢酸、ニトロ酢酸、N−(2−ヒドロキシ−エチル)−エチレン−ジアミン、エチレン−ジアミン−N,N−二酢酸、2−(ジメチル−アミノ)−エチル−アミン、1,2−ジアミノ−プロピル−アミン、1,3−ジアミノ−プロピル−アミン、3−(メチル−アミノ)−プロピル−アミン、3−(ジメチル−アミノ)−プロピル−アミン、3−(ジエチル−アミノ)−プロピル−アミン、ビス−(3−アミノ−プロピル)−アミン、1,2−ビス(3−アミノ−プロピル)−アルキル−アミン、ジエチレン−トリアミン、トリエチレン−テトラミン、テトラ−エチレン−ペンタミン、ペンタ−エチレン−ヘキサミンおよびそれらの混合物を含む。パラジウム層を堆積するための前記の無電解めっき浴組成物および適しためっき条件は、EP0698130号B1およびEP11184919.6号内に開示されている。
【0039】
Pd−P合金層を活性化された銅または銅合金表面上に堆積するための適した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、還元剤として次亜燐酸イオンを含む。
【0040】
Pd−B合金層を活性化された銅または銅合金表面上に堆積するための適した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、還元剤としてボラン化合物を含む。
【0041】
Ni−P合金層を堆積するための適しためっき浴組成物は、ニッケルイオン源、還元剤としての次亜リン酸イオン、錯化剤、例えばヒドロキシルカルボン酸、またはそれらの塩、および少なくとも1つの安定化剤、例えば鉛イオン、アンチモンイオン、および硫黄含有有機安定化剤を含む。Ni−P合金を堆積するための適した無電解(自己触媒)めっき条件は当該技術分野において公知である。
【0042】
Ni−B合金層を堆積するための適した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、還元剤としてボラン化合物を含む。
【0043】
三元系のニッケル合金Ni−M−PまたはNi−M−B(前記Mは金属、例えばモリブデンまたはタングステンである)を堆積するための敵した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、さらに、Mイオン源を含む。
【0044】
三元系のコバルト合金Co−M−PまたはCo−M−B(前記Mは金属、例えばモリブデンまたはタングステンである)を堆積するための敵した無電解(自己触媒)めっき浴組成物は、好ましくはコバルトイオン源、Mイオン源、還元剤、例えば次亜リン酸イオン(リン含有合金)またはボラン化合物(ホウ素含有合金)、少なくとも1つの錯化剤、例えばヒドロキシルカルボン酸またはその塩、および少なくとも1つの安定化剤を含む。三元系コバルト合金層を堆積するための敵した電解(自己触媒)めっき浴組成物は、例えばEP12159365.1号内に開示されている。
【0045】
銅または銅合金層において望ましくないボイドの形成は、本発明の両方の実施態様において抑制される。さらには、活性化された銅または銅合金表面上への金属または金属合金層の無電解(自己触媒)めっきの間の望ましくないスキップめっきまたは不要なめっき(extraneous plating)が観察されない。活性化された銅または銅合金表面を含む基板の上に堆積される金属または金属合金層は、その上への充分な付着性も有する。
【0046】
ここで、本発明を以下の限定されない例を参照して説明する。
【実施例】
【0047】
銅表面を含むプリント回路基板を全ての例にわたって使用した。前記基板をまず、硫酸および過酸化水素を含む水溶液で洗浄した。次に、銅表面を種々の方法によって活性化し、水で濯ぎ、且つパラジウム層を前記の活性化された銅表面上に無電解(自己触媒)めっきによって、パラジウムイオン源、還元剤としてのギ酸ナトリウム、および窒素化された錯化剤を含む水性めっき浴組成物から堆積した。
【0048】
望ましくないボイドの存在を、パラジウム層の堆積後に光学顕微鏡およびめっきされた基板の断面試料を用いて調査した。
【0049】
例1(比較)
基板の銅表面を、洗浄後に、100ppmのパラジウムイオンおよび硫酸を含有する水溶液で活性化した。次に、基板を水で濯ぎ、且つ厚さ約100nmを有するパラジウム層を活性化された銅表面上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積した。
【0050】
望ましくないボイドが、銅表面と、無電解(自己触媒)めっきによって堆積されたパラジウム層との界面に存在する。該試料をテープ試験にも供し、その際、堆積されたパラジウム層は、下にある銅から外れて剥離した。従って、銅表面と、無電解(自己触媒)めっきによってその上に堆積されたパラジウム層との間の付着性は充分ではない。
【0051】
例2(比較)
基板の銅表面を、洗浄後に、pH値1.5を有する、100ppmのパラジウムイオンおよび1g/lのクエン酸の水溶液を用いて活性化した。かかる活性化溶液はUS7285492号B2内に開示されている。活性剤溶液を、活性化の間、35℃で保持し、且つ前記基板を1分間、活性剤溶液中に浸漬した。次に、活性化された基板を水で濯ぎ、且つ厚さ約100nmを有するパラジウム層を活性化された銅表面上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積した。
【0052】
該試料をテープ試験に供し、その際、堆積されたパラジウム層は、下にある銅から外れて剥離した。従って、銅表面と、無電解(自己触媒)めっきによってその上に堆積されたパラジウム層との間の付着性は充分ではない。
【0053】
例3
基板の銅表面を、洗浄後に、本発明の第一の実施態様によって、pH値1.5を有する100ppmのパラジウムイオン、1g/lのアミノトリメチルホスホネートおよび15ppmの塩化物イオンの水溶液を用いて活性化した。活性剤溶液を、活性化の間、35℃で保持し、且つ前記基板を1分間、活性剤溶液中に浸漬した。次に、活性化された基板を水で濯ぎ、且つ厚さ約100nmを有するパラジウム層を活性化された銅表面上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積した。
【0054】
該試料をテープ試験に供し、その際、パラジウム層の、下にある銅上での良好な付着性が判明した。銅表面と、無電解(自己触媒)めっきによって堆積されたパラジウム層との界面において、ボイドは検出されなかった。
【0055】
例4
基板の銅表面を、洗浄後に、本発明の第二の実施態様によって100ppmのパラジウムイオンおよび1g/lのアミノトリメチルホスホネートの第一の水溶液中に基板を1分間浸漬させることによって活性化した。この水溶液は、ハロゲン化物イオンを含有しなかった。第一の水溶液のpH値は1.5であり、且つ温度は35℃であった。次に、前記基板を、1g/lのアミノトリメチルホスホネートおよび10g/lの塩化物イオンの第二の水溶液中に1分間浸漬させた。第二の水溶液のpHは4.5であり、且つ温度は20℃であった。次に、活性化された基板を水で濯ぎ、且つ厚さ約100nmを有するパラジウム層を活性化された銅表面上に無電解(自己触媒)めっきによって堆積した。
【0056】
該試料をテープ試験に供し、その際、パラジウム層の、下にある銅上での良好な付着性が判明した。銅表面と、無電解(自己触媒)めっきによって堆積されたパラジウム層との界面において、ボイドは検出されなかった。