特許第6239099号(P6239099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239099比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲルレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239099
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲルレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20171120BHJP
   C08F 220/58 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02C7/04
   C08F220/58
【請求項の数】12
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-518709(P2016-518709)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公表番号】特表2016-533405(P2016-533405A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】US2014057442
(87)【国際公開番号】WO2015048279
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】61/884,176
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/884,181
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/494,186
(32)【優先日】2014年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホァン,ジンユ
(72)【発明者】
【氏名】デソウサ,ライアン
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522265(JP,A)
【文献】 特表2011−508905(JP,A)
【文献】 特表2012−504182(JP,A)
【文献】 特表2013−525512(JP,A)
【文献】 特表平08−511566(JP,A)
【文献】 特開平11−287971(JP,A)
【文献】 特表2013−504682(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/116206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
C08F 220/00 − 220/70
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンヒドロゲル材料を含むソフトコンタクトレンズであって、シリコーンヒドロゲル材料は:
(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマーの第1の繰り返し単位;
(2)下記式(I)又は(II):
【化27】

〔式中、R’は、水素又はメチルであり、R”、R11及びR12は、各々互いに独立して、C−Cアルキルであり、r1及びr2は、互いに独立して、0又は1の整数であり、m1は、3〜10の整数であり、R及びR10は、互いに独立して、置換又は非置換C−C10アルキレン二価基であり、Xは、下記式:
【化28】

(式中、R”は、先に定義した通りであり、R12”及びR12’は、互いに独立して、C−Cアルキルである)の結合である〕
で示されるシロキサンビニルモノマーの第2の繰り返し単位;及び
(3)下記式(III):
【化32】

〔式中、E及びE’は、互いに独立して、メタクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、又はN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基であり、R、R10、X、r1、r2は上記と同義であり、n1及びn2は、互いに独立して、0〜200の整数であって、かつ(n1+n2)は、10〜200であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、C−C10アルキル、C−Cアルキル若しくはC−Cアルコキシ置換フェニル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、C−C18アリール基、又は−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−Cアルキルであり、n3は、1〜10の整数である)である〕
で示される直鎖状ポリシロキサンクロスリンカーの第3の繰り返し単
含み、
ここで、ソフトコンタクトレンズは、下記式:
【数19】

(式中、下記式:
【数20】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ、下記式:
【数21】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ誘発変化が10%以下でる、
ソフトコンタクトレンズ。
【請求項2】
(メタ)アクリルアミド型モノマーが、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド又はそれらの混合物である、請求項1記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項3】
少なくとも40barrersの酸素透過度;20重量%〜75重量%の、完全に水和した時の水分含量;及び、0.2MPa〜1.8MPaの弾性率を有する、請求項1又は2記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項4】
(I)において、R’が水素である;r1及びr2が0である;R”がメチルである;R10が置換又は非置換C−C10アルキレン二価基である;R11及びR12が、互いに独立してメチルである;又は、それらの組み合わせである、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項5】
シリコーンヒドロゲル材料が、下記式(Ia)〜(Ih)
【化29】

〔式中、R13は、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、又は下記式:
【化30】

のアルキレン二価基であり、R14は、−CHCH−又は−CHCHCH−の二価アルキレン基であり、R15は、下記式:
【化31】

の二価アルキレン基であり、R”、R12及びR11は、各々互いに独立して、C−Cアルキルであり、m2は、3〜5の整数である〕
いずれか一つで示されるシロキサンビニルモノマーの第2の繰り返し単位を含む、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項6】
(III)において、〜Rがメチルである;R〜R及びR〜Rはメチルであるが、Rは−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−C10アルキルであり、n3は、1〜10の整数である)である;又は、それらの組み合わせである、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項7】
シリコーンヒドロゲル材料が、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、又はそれらの組み合わせである架橋剤の第4の繰り返し単位をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項8】
シリコーンヒドロゲル材料が、UV吸収性ビニルモノマーの第5の繰り返し単位をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項9】
シリコーンヒドロゲル材料が:
(1)5〜60重量%の親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー;
(2)5〜50重量%の、式(I)及び/又は(II)のシロキサンビニルモノマー;
(3)5〜5重量%の、式(III)のポリシロキサンクロスリンカー;
(4)0.05%〜1.5重量%の光開始剤;
(5)0〜4重量%の、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤;及び
(6)0〜5重量%の、重合性UV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマー
を含むが、但し、上記の成分及び任意の追加成分は、合計で100重量%になる、レンズ配合物の重合生成物である、請求項1〜のいずれか一項記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項10】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法であって、下記工程:
(A)ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供する工程であって、型は、コンタクトレンズの前面を規定する第1の成形面を有する第1の半型及びコンタクトレンズの後面を規定する第2の成形面を有する第2の半型を有し、第1及び第2の半型は、第1及び第2の成形面の間に空隙を形成するように、互いに受容し合うように構成される工程;
(B)空隙にレンズ配合物を導入する工程であって、レンズ配合物は、
(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマーであって、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド又はそれらの混合物である親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー
(2)下記式(I)又は(II):
【化33】

〔式中、R’は、水素又はメチルであり、R”、R11及びR12は、各々互いに独立して、C−Cアルキルであり、r1及びr2は、互いに独立して、0又は1の整数であり、m1は、3〜10の整数であり、R及びR10は、互いに独立して、置換又は非置換C−C10アルキレン二価基であり、Xは、下記式:
【化34】

(式中、R”は、先に定義した通りであり、R12”及びR12’は、互いに独立して、C−Cアルキルである)の結合である〕
で示されるシロキサンビニルモノマー;
(3)下記式(III):
【化32】

〔式中、E及びE’は、互いに独立して、メタクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、又はN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基であり、R、R10、X、r1、r2は上記と同義であり、n1及びn2は、互いに独立して、0〜200の整数であって、かつ(n1+n2)は、10〜200であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、C−C10アルキル、C−Cアルキル若しくはC−Cアルコキシ置換フェニル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、C−C18アリール基、又は−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−Cアルキルであり、n3は、1〜10の整数である)である〕
で示される直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー;及び
(4)0.05重量%〜1.5重量%の光開始剤
を含み、レンズ配合物は、UV照度4.1mW/cm2のUV光により、100秒以内に硬化する能力を有することを特徴とする工程;及び
(C)レンズ配合物を架橋させてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成するように、型中のレンズ配合物を、100秒以下の間照射する工程
を含み、
ここで、製造されたソフトコンタクトレンズは、下記式:
【数22】

(式中、下記式:
【数23】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ;下記式:
【数24】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ処理誘発変化が10%以下であると特徴付けられる、方法。
【請求項11】
レンズ配合物が:
(1)5〜60重量%の親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー;
(2)5〜50重量%の、式(I)及び/又は(II)のシロキサンビニルモノマー;
(3)5〜5重量%の、式(III)直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー;
(4)0.05%〜1.5重量%の光開始剤;
(5)0〜4重量%の、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤;及び
(6)0〜5重量%の、重合性UV吸収性ビニルモノマー
を含むが、但し、列挙された成分及び任意の追加成分は、合計で100重量%になる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
形成されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも40barrersの酸素透過度(Dk)、20重量%〜75重量%の、完全に水和した時の水分含量、及び0.2MPa〜1.8MPaの弾性率を有する、請求項1又は1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲル眼科用レンズ(特にコンタクトレンズ)及びそのような眼科用レンズを製造する方法に関する。
【0002】
背景
近年、ソフトシリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズは、その高い酸素透過度及び快適さのために、ますます人気が高まっている。「ソフト」コンタクトレンズは、眼球の形状に追従することができるので、酸素がレンズ全体を取り巻くことは、容易にはできない。角膜は、他の組織のような血液供給からの酸素を受け取っていないので、ソフトコンタクトレンズは、周囲空気からの酸素(即ち酸素)が角膜に到達することを許すものでなければならない。十分な酸素が角膜に到達しないと、角膜膨潤が生じる。長期間の酸素欠乏は、角膜内での血管の望ましくない成長を引き起こす。シリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズは、高い酸素透過度を有することで、レンズを通して十分な酸素を角膜まで透過させ、角膜の健康状態に対する悪影響を最小限にする。
【0003】
典型的には、シリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズは、使い捨ての、又は再利用可能な型及びシリコーンヒドロゲルレンズ配合物(即ち、ビニルモノマー及び/又はビニルマクロマーの混合物)の使用を含む注型技術に従って製造される。シリコーンヒドロゲルレンズ配合物はしばしば、例えば、トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリルアルキル基を有するビニルモノマー(例えば、トリス(トリメチルシリルオキシ)−シリルプロピルアクリラート、トリス(トリメチルシリルオキシ)−シリルプロピルメタクリラート、トリス(トリメチルシリルオキシ)−シリルプロピルアクリルアミド、トリス(トリメチルシリルオキシ)−シリルプロピルメタクリルアミド、トリス−(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバマート等)といった、嵩高いシロキサン含有ビニルモノマーを含む。そのような嵩高いシロキサン含有ビニルモノマーは、製造中の、特に、型の中でモノマー混合物を比較的短い時間(例えば、約300秒未満)内にUV光で硬化させるときの操作に由来する光学的欠陥の排除に不可欠であることが報告されている。シリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズを製造するためのモノマー混合物から、そのような嵩高いシロキサン含有ビニルモノマーを排除すると、得られるレンズに、操作に起因する恒久的変形(光学的欠陥)が起こる可能性があるのに対し、そのような嵩高いシロキサン含有ビニルモノマーが存在すると、得られるレンズは、光学的欠陥を排除する「治癒」効果を示す(即ち、折り畳み跡は一過性となり、短時間、例えば約15分以内には消失しうる)。しかし、当技術分野において公知のレンズ配合物から製造されるシリコーンヒドロゲルレンズは、所望の熱安定性を有していない場合がある。
【0004】
従って、比較的長期の熱安定性を有し、レンズ配合物を型の中で比較的短い時間(例えば、100秒未満)内に硬化させることにより製造することができるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに対する需要が、依然として存在する。
【0005】
発明の概要
一つの態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を含むソフトコンタクトレンズであって、シリコーンヒドロゲル材料は:
(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー由来の第1の繰り返し単位;(2)シロキサンビニルモノマー由来の第2の繰り返し単位であって、シロキサンビニルモノマーが、ただ1つのN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基、及びビス(C−Cアルキルジメチルシリルオキシ)−C−Cアルキルシリル−C−Cアルキル基、又は、3〜10(好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5)個のジメチルシロキサン単位及び1個のC−Cアルキル末端基を有する直鎖状オリゴジメチルシロキサン鎖であるシロキサン含有基を有する、第2の繰り返し単位;(3)直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー由来の第3の繰り返し単位であって、直鎖状ポリシロキサンクロスリンカーは、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基を有し、かつ、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基の間の、ポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、又はウレア結合が全く存在しない、第3の繰り返し単位を含み、
ソフトコンタクトレンズは、下記式:
【数1】

(式中、下記式:
【数2】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ;下記式:
【数3】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ処理誘発変化が約10%以下(好ましくは約7.5%以下、より好ましくは約5%以下)であると特徴付けられる、比較的長期の熱安定性を有する、ソフトコンタクトレンズを提供する。
【0006】
他の一つの態様において、本発明は、比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。方法は、下記工程:ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供する工程であって、型は、コンタクトレンズの前面を規定する第1の成形面を有する第1の半型及びコンタクトレンズの後面を規定する第2の成形面を有する第2の半型を有し、第1及び第2の半型は、第1及び第2の成形面の間に空隙を形成して互いに受容し合うように構成される工程;空隙にレンズ配合物を導入する工程であって、レンズ配合物は、(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー、(2)シロキサンビニルモノマーであって、ただ1つのN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基、及びビス(C−Cアルキルジメチルシリルオキシ)−C−Cアルキルシリル−C−Cアルキル基、又は、3〜10(好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5)個のジメチルシロキサン単位及び1個のC−Cアルキル末端基を有する直鎖状オリゴジメチルシロキサン鎖であるシロキサン含有基を有する、シロキサンビニルモノマー、(3)直鎖状ポリシロキサンクロスリンカーであって、2個の末端(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、2個の末端(メタ)アクリロイル基の間の、ポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、又はウレア結合が全く存在しない、直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー、及び(4)約0.05%〜約1.5重量%の光開始剤を含む工程;及びレンズ配合物を架橋させてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成するように、型中のレンズ配合物を、約100秒以下(好ましくは約75秒以下、より好ましくは約50秒以下、さらにより好ましくは約30秒以下)の時間(好ましくは、化学線の空間的制限下で)照射する工程を含み、
ここで、製造されたソフトコンタクトレンズの比較的長期の熱安定性は、下記式:
【数4】

(式中、下記式:
【数5】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ、下記式:
【数6】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ処理誘発変化が約10%以下(好ましくは約7.5%以下、より好ましくは約5%以下)であると特徴付けられる。製造されたソフトコンタクトレンズは、少なくとも約40barrers(好ましくは少なくとも約50barrers、より好ましくは少なくとも約60barrers、さらにより好ましくは少なくとも約70barrers)の酸素透過度(Dk);約20重量%〜約75重量%(好ましくは約25重量%〜約70重量%、より好ましくは約30重量%〜約65重量%)の、完全に水和した時の水分含量;及び約0.2MPa〜約1.8MPa(好ましくは約0.3MPa〜約1.4MPa、より好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPa)の弾性率を有する。
【0007】
発明の実施態様の詳細な説明
特に断りない限り、本明細書において用いる技術用語及び学術用語はいずれも、本発明が属する分野における当業者が共通に理解するのと同じ意味を有する。一般に、本明細書において用いる命名法及び実験手順は周知であり、また当技術において共通に用いられるものである。これらの手順には、当技術において、また種々の一般的な参考文献において提供されているような、従来の方法が用いられている。ある用語が単数で用いられる場合、本発明者らは、その用語の複数形をも考慮している。本明細書において用いる命名法及び下記の実験手順は、周知であり、また当技術において共通に用いられるものである。
【0008】
本明細書において用いる「約」は、「約」と呼ばれた数が、言及された数に、その言及された数の1〜10%を加えたもの、又は前者から後者を引いたものを含むことを意味する。
【0009】
本明細書において用いる「眼科用装置」は、目に乗せて、目につけて、又は目の近傍で用いる、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼球内レンズ、角膜アンレー(corneal onlay)、その他の眼科用装置(例えば、ステント(stents)、緑内障シャント(shunt)等)を指す。
【0010】
「コンタクトレンズ」は、装着者の目に乗せる、又は目に入れることができる構造体を指す。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正し、改善し、又は変化させることができるが、これらが当てはまる必要はない。コンタクトレンズは、当分野において公知の、又は後になって開発された任意の適切な材料でできていてよく、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズでありうる。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。
【0011】
「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」は、水に不溶性であるが、完全に水和した時、少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができる架橋ポリマー材料を指す。
【0012】
「シリコーンヒドロゲル」又は「シリコーンヒドロゲル材料」は、水に不溶性であるが、完全に水和した時、少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができるシリコーン含有架橋ポリマー材料を指す。
【0013】
本明細書において用いる「親水性」は、脂質とよりも水と結びつきやすい材料又はその一部を記述するものである。
【0014】
「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基をただ1つ有し、溶媒に可溶性である化合物を指す。
【0015】
用語「可溶性」は、溶媒中の化合物又は材料に関して、化合物又は材料が室温(即ち、温度約20℃〜約30℃)で溶媒に溶解して、濃度少なくとも約0.5重量%の溶液を与えることができることを意味する。
【0016】
用語「不溶性」は、溶媒中の化合物又は材料に関して、化合物又は材料が室温(先に定義した通り)で溶媒に溶解して、濃度0.005重量%未満の溶液を与えることができることを意味する。
【0017】
本願において用いられる場合、用語「エチレン性不飽和基」は、本明細書においては広義で用いられ、少なくとも1個の>C=C<基を含む任意の基を包含することを意図している。例示的なエチレン性不飽和基には、(メタ)アクリロイル(下記式:
【化1】

のもの)、アリル、ビニル、スチレニル又はその他のC=C含有基が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「エン基」は、酸素又は窒素原子、若しくはカルボニル基と共有結合していないCH=CH−を含む一価の基を指す。
【0019】
用語「(メタ)アクリルアミド」は、下記式:
【化2】

(式中、Rは水素である)
で示されるエチレン性不飽和基を指し;用語「N’−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド」は、下記式:
【化3】

(式中、RはC−C−アルキルである)
で示されるエチレン性不飽和基を指す。
【0020】
本願において用いられる場合、「メタクリルオキシ」は、下記式:
【化4】

で示される一価の基を指す。
【0021】
本願において用いられる場合、用語「(メタ)アクリルアミド型モノマー」は、(メタ)アクリルアミド基をただ1つ含むビニルモノマーを指す。
【0022】
本明細書において、重合性組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合に関して、「化学線による」は、例えば、UV/可視光照射、電離放射(例えばガンマ線又はX線照射)、マイクロ波照射等といった化学線照射によって、硬化(例えば、架橋及び/又は重合した)が行われることを意味する。熱硬化又は化学線硬化法は当業者にとって周知である。
【0023】
本願において用いられる場合、用語「親水性ビニルモノマー」は、室温において、水溶性であるか、又は少なくとも10重量パーセントの水を吸収しうるホモポリマーを形成することができるビニルモノマーを指す。
【0024】
本願において用いられる場合、用語「疎水性ビニルモノマー」は、ホモポリマーとして、典型的には、室温において、水に不溶性であるか、又は10重量パーセント未満の水を吸収しうるポリマーを生成するビニルモノマーを指す。
【0025】
「マクロマー」又は「プレポリマー」は、2個以上のエチレン性不飽和基を含み、700ダルトン超の平均分子量を有する化合物又はポリマーを指す。
【0026】
「ポリマー」は、1種以上のビニルモノマー、マクロマー及び/又はプレポリマーを重合/架橋することによって形成される材料を意味する。
【0027】
本明細書において用いる、ポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を含む)の「分子量」は、そうではないことが具体的に示されているか、又は、試験条件がそうではないことを示しているのでない限り、数平均分子量を指す。
【0028】
本願において用いられる場合、用語「クロスリンカー」は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有し、室温において溶媒に可溶性である化合物又はポリマーを指す。「架橋剤」は、約700ダルトン以下の分子量を有するクロスリンカーを指す。
【0029】
「直鎖状オリゴジメチルシロキサン鎖」は、下記式:
【化5】

(式中、Rは、C−C−アルキルであり、m1は、3〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5の整数である)
で示される一価の基を指す。
【0030】
「ポリシロキサン」は、下記式:
【化6】

(式中、
n1及びn2は、互いに独立して、0〜500の整数であって、かつ(n1+n2)は、10〜500であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、C−C10アルキル、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシ置換フェニル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、C−C18アリール基、又は−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−C10アルキルであり、n3は、1〜10の整数である)
で示されるポリシロキサンセグメントを有する化合物を指す。
【0031】
本願において、ポリシロキサンセグメント、ポリマー、ポリマー鎖又は化合物に関しての用語「主鎖」は、ポリシロキサン、ポリマー、ポリマー鎖又は化合物の、共有結合で連結した原子の鎖ただ1つからなる主要な鎖を意味する。ペンダント基及び側鎖はいずれも、主鎖の一部とは見なされないことを理解すべきである。
【0032】
用語「流体」は、物質が、液体のように流れることができることを意味する。
【0033】
用語「アルキル」は、直鎖状又は分岐鎖状アルカン化合物から1個の水素原子を除去することにより得られる一価の基を指す。アルキル基(基)は、有機化合物中の1個の他の基と、1個の結合を形成する。
【0034】
用語「アルキレン二価基」又は「アルキレン二価基」又は「アルキル二価基」は、区別なく、アルキルから1個の水素原子を除去することにより得られる二価の基を指す。アルキレン二価基は、有機化合物中の他の基と、2個の結合を形成する。
【0035】
用語「アルキル三価基」は、アルキルから2個の水素原子を除去することにより得られる三価の基を指す。アルキル三価基は、有機化合物中の他の基と、3個の結合を形成する。
【0036】
用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」は、直鎖状又は分岐鎖状アルキルアルコールのヒドロキシル基から1個の水素原子を除去することにより得られる一価の基を指す。アルコキシ基(基)は、有機化合物中の1個の他の基と、1個の結合を形成する。
【0037】
本願において、アルキル二価基又はアルキル基に関しての用語「置換」は、そのアルキル二価基又はアルキル基が、少なくとも一個の置換基を含み、その置換基が、そのアルキル二価基又はアルキル基の1個の水素原子と置き換わっており、またヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、−NH、スルフヒドリル(−SH)、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ(アルキルスルフィド)、C−Cアシルアミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、ハロゲン原子(Br又はCl)及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを意味する。
【0038】
本願において、「オキサゾリン」は、下記式:
【化7】

(式中、Rは、水素、メチル又はエチル基である)
で示される化合物を指す。
【0039】
「ポリオキサゾリンセグメント」は、下記式:
【化8】

(式中、Rは、水素、メチル又はエチル基であり、qは、3〜500の整数である)
で示される二価の基を指し、開環重合で得られる。
【0040】
用語「アゼチジニウム」は、下記式:
【化9】

(式中、T及びTは直接結合である)
で示される、正に荷電した二価の基(又は基、又は部分)を指す。
【0041】
用語「アズラクトン」は、下記式:
【化10】

(式中、pは0又は1であり;T及びTは、互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)である)
で示される一価の基を指す。
【0042】
フリーラジカル開始剤は、光開始剤又は熱開始剤のいずれであることも可能である。「光開始剤」は、光の使用によりフリーラジカル架橋/重合反応を引き起こす化学物質を指す。「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を引き起こす化学物質を指す。
【0043】
フリーラジカル開始剤は、光開始剤又は熱開始剤のいずれであることも可能である。「光開始剤」は、光の使用によりフリーラジカル架橋/重合反応を引き起こす化学物質を指す。「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を引き起こす化学物質を指す。
【0044】
「化学線放射の空間的制限」は、光線の形態のエネルギー放射を、例えば、マスク又はスクリーン又はそれらの組み合わせによって指向させて、明確に画定された周辺境界を有する区域に、空間的に制限されたやり方で、衝突させる動作又は方法を指す。米国特許第6,800,225号(図1〜11)、並びに6,627,124号(図1〜9)、7,384,590号(図1〜6)、及び7,387,759号(図1〜6)(これらの全ては、全体が参照により組み込まれる)の図面に図解で説明されているように、UV/可視光放射の空間的制限は、放射線(例えば、UV/可視光)透過領域、放射線透過領域を囲む放射線(例えば、UV/可視光)不透過領域、及び放射線不透過領域と放射線透過領域の間の境界である投射輪郭を有するマスク又はスクリーンを用いることにより得られる。マスク又はスクリーンは、マスク又はスクリーンの投射輪郭により規定される横断形状を有する放射線(例えば、UV/可視線)のビームを空間的に投射させる。投射された放射線(例えば、UV/可視線)のビームは、投射されたビームの経路に位置するレンズ配合物に衝突する放射線(例えば、UV/可視線)を、型の第1の成形面から第2の成形面までに限定する。生じるコンタクトレンズは、第1の成形面により画定される前面、第2の成形面により画定される反対側の後面、及び投射されたUV/可視ビームの断面形状(即ち、放射線の空間的制限)により画定されるレンズエッジを含む。架橋に使用される放射線は、放射エネルギー、特にUV/可視線、γ線、電子線又は熱線であり、放射エネルギーは、好ましくは、一方では良好な制限を達成するために、そしてもう一方ではエネルギーの効率的な使用を達成するために実質的に平行ビームの形である。
【0045】
材料の固有「酸素透過度」、Dkは、酸素がある材料を通り抜ける速度である。本願において用いられる場合、ヒドロゲル(シリコーン又は非シリコーン)又はコンタクトレンズに関しての用語「酸素透過度(Dk)」は、本明細書に後述の実施例に示される手順による、境界層効果に起因する酸素フラックスに対する表面抵抗の下で測定され、これについて補正された酸素透過度(Dk)を意味する。酸素透過度は、従来からbarrerの単位で表されるが、ここで「barrer」は、[(cm酸素)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10として定義される。
【0046】
レンズ又は材料の「酸素伝達率」、Dk/tは、測定される面積でt[mmの単位]の平均厚さを有する特定のレンズ又は材料を酸素が通り抜ける速度である。酸素伝達率は、従来からbarrer/mmの単位で表され、ここで「barrer/mm」は、[(cm酸素)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9と定義される。
【0047】
コンタクトレンズ又は材料に関しての用語「モジュラス」又は「弾性率」は、コンタクトレンズ又は材料の剛性の尺度である、引張弾性率又はヤング率を意味する。モジュラスは、ANSI Z80.20規格に基づいた方法を用いて測定することができる。当業者は、シリコーンヒドロゲル材料又はコンタクトレンズの弾性率をどのようにして測定するかをよく承知している。例えば、全ての市販コンタクトレンズは、報告された弾性率の数値を有している。
【0048】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関しての用語「熱安定性」は、そのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、弾性率における有意なオートクレーブ誘発変化を起こすことなく(即ち、121℃、30分間で、1回だけのオートクレーブに付したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性率に対する、弾性率における増加又は低下が、約10%以下、好ましくは約5%以下である)、19回のオートクレーブ(各々121℃で30分間)に付すことができることを意味する。下記式:
【数7】

で示される項である、弾性率におけるオートクレーブ誘発変化は、下記式:
【数8】

(式中、下記式:
【数9】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ、下記式:
【数10】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
に基づいて計算される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの、弾性率におけるオートクレーブ誘発変化の試験は、室温での保存可能期間の等価物を測定するのに要する時間を有意に短縮するために、高められた温度(例えば、65℃〜95℃)での従来の加速保存可能期間調査の代替で用いることができると考えられる。
【0049】
一般に、本発明は、比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲル眼科用レンズ(特にコンタクトレンズ)に関する。本発明は、一部において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するためのモノマー混合物(レンズ配合物又はレンズ形成材料)において、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルアルキル(トリス)基を有する(メタ)アクリルアミド型ビニルモノマーを、ただ1つのN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基、及びビス(C−Cアルキルジメチルシリルオキシ)−C−Cアルキルシリル−C−Cアルキル基であるシロキサン含有基を有する別のビニルモノマーに置換すると、得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの熱安定性を有意に改善することができる、との意外な発見に基づいている。本発明はまた、一部において、ポリシロキサンクロスリンカーであって、2個の末端エチレン性不飽和基の間のポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、熱的に不安定な結合(例えば、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、及び/又はウレア結合)がないポリシロキサンクロスリンカーを、特に、ただ1つのN−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド基、及びビス(C−Cアルキルジメチルシリルオキシ)−C−Cアルキルシリル−C−Cアルキル基であるシロキサン含有基を有するシロキサンビニルモノマーと組み合わせて用いることにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの熱安定性を改善することができるとの発見に基づいている。
【0050】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造において、そのようなシロキサンビニルモノマーを用いることに関連する、いくつかの潜在的な固有の特徴がある。第1に、シリコーンヒドロゲルレンズ配合物において、そのようなシロキサンビニルモノマーを用いることにより、得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、型の中でレンズ配合物を比較的短い時間(例えば、約50秒未満)内に硬化させることによって得られるものであっても、製造中の操作に由来する光学的欠陥を排除しつつ、改善された熱安定性を有し得る。第2に、N−アルキル(メタ)アクリルアミド基があることにより、必要な硬化時間が短い(例えば、約50秒以下の時間内)UV/可視光重合法により適している。第3に、シリコーンヒドロゲルレンズ配合物中の、そのようなシロキサンビニルモノマー(ポリシロキサンクロスリンカーであって、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタシルオキシ(methacyloxy)基の間の、ポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、及び/又はウレア結合が全く存在しない、ポリシロキサンクロスリンカーと組み合わされている)は、そのシリコーンヒドロゲルレンズ配合物から製造されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの熱安定性を改善することができる。第4に、そのようなシロキサンビニルモノマーは、その分子中に親水性基及び疎水性基の両者が存在するため、光学的に透明なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するよう、レンズ配合物中の親水性及び疎水性の重合性成分と相溶性である。
【0051】
一つの態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料を含むソフトコンタクトレンズであって、シリコーンヒドロゲル材料は:(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー由来の(好ましくは、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、及びそれらの混合物からなる群より選択される(メタ)アクリルアミド型モノマー由来の、より好ましくは、N,N−ジメチルアクリルアミド由来の)第1の繰り返し単位;(2)下記式(I)又は(II)(好ましくは式(I)):
【化11】

〔式中、R’は、水素又はメチルであり、R”、R11及びR12は、各々互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)であり、r1及びr2は、互いに独立して、0又は1の整数であり、m1は、3〜10(好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5)の整数であり、R及びR10は、互いに独立して、置換又は非置換C−C10アルキレン二価基であり、Xは、下記式:
【化12】

(式中、R”は、先に定義した通りであり、R12”及びR12’は、互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)である)
の結合である〕
で示されるシロキサンビニルモノマー由来の第2の繰り返し単位;及び(3)直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー由来の第3の繰り返し単位であって、直鎖状ポリシロキサンクロスリンカーは、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基を有し、かつ、末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基の間の、ポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、又はウレア結合が全く存在しない、第3の繰り返し単位
を含み、
ここで、ソフトコンタクトレンズは、下記式:
【数11】

(式中、下記式:
【数12】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ;下記式:
【数13】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ誘発変化が約10%以下(好ましくは約7.5%以下、より好ましくは約5%以下)であると特徴付けられる、比較的長期の熱安定性を有する、ソフトコンタクトレンズを提供する。本発明のソフトコンタクトレンズは、少なくとも約40barrers(好ましくは少なくとも約50barrers、より好ましくは少なくとも約60barrers、さらにより好ましくは少なくとも約70barrers)の酸素透過度(Dk);約20重量%〜約75重量%(好ましくは約25重量%〜約70重量%、より好ましくは約30重量%〜約65重量%)の、完全に水和した時の水分含量;及び約0.2MPa〜約1.8MPa(好ましくは約0.3MPa〜約1.4MPa、より好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPa)の弾性率を有する。
【0052】
当業者は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの酸素透過度、及び水分含量及び弾性率をどのようにして測定するかをよく承知している。これらのレンズ特性は、全ての製造者により、彼らのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ製品に関して報告されている。
【0053】
本発明のこの態様における、一つの好ましい実施態様によれば、親水性(メタ)アクリルアミド型モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、又はそれらの混合物でありえ、好ましくはN,N−ジメチルアクリルアミドである。この発明においては、他の(メタ)アクリルアミド型モノマーもまた使用できると理解される。
【0054】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、第2の繰り返し単位は、好ましくは、式(I)のシロキサンビニルモノマー由来である。より好ましくは、式(I)において、R’が水素であり;r1及びr2が0であり;R10が置換又は非置換C−C10アルキレン二価基(好ましくはプロピレン二価基)であり;及び/又は、R11及びR12が、互いに独立してメチルである。そのような好ましいシロキサンビニルモノマーの例には、下記式:
【化13】

〔式中、R13は、下記式:
【化14】

のアルキレン二価基であり、R14は、−CHCH−又は−CHCHCH−の二価アルキレン基であり、R15は、下記式:
【化15】

の二価アルキレン基であり、R”、R12及びR11は、各々互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)であり、m2は、3〜5の整数である〕
のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
式(I)のシロキサンビニルモノマーは、下記式(IV):
【化16】

(式中、R12、R10及びR11は上記と同義であり、Eは、アミノ(−NH)、カルボキシル(−COOH)又はヒドロキシル基(−OH)である)
で示される単官能性トリシロキサンから、これを、カップリング反応において、(メタ)アクリル酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、(メタ)アクリル酸ハライド(クロリド又はブロミド)、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸、NH含有(メタ)アクリルアミド、カルボキシル含有(メタ)アクリルアミド又はアズラクトン含有ビニルモノマー(例えば、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン)と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得;次いで、米国特許第4835312号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法に従い、得られたN置換(メタ)アクリルアミドを、C−Cアルキルハライドと反応させて、N,N置換(メタ)アクリルアミドを得ることにより、調製することができる。
【0056】
例示を目的として、好ましくはアミノ基(−NHR(式中、Rは、H又はC−C10アルキルである))、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸ハライド基(−COX、X=Cl、Br又はI)、酸無水物基、アルデヒド基、アズラクトン基、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基及びチオール基からなる群より選択される、適合する互いに反応性である官能基の組の間の、種々の反応条件下におけるカップリング反応の限定的でない例を以下に示す。アミノ基は、アルデヒド基と反応してSchiff塩基(これはさらに還元され得る)を形成し;アミノ基−NHR(式中、Rは、H又はC−Cアルキルである)は、酸クロリド若しくはブロミド基と、又は酸無水物基と反応してアミド結合(−CO−NR−)を形成し;アミノ基−NHRは、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基と反応してアミド結合を形成し;アミノ基−NHRは、カップリング剤−カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、又はそれらの混合物)及びN−ヒドロキシスクシンイミドの存在下に、カルボン酸基と反応してアミド結合を形成し;アミノ基−NHRは、アズラクトン基と反応(開環)してアルキレン−ジアミド結合(−C(O)NH−アルキレン−C(O)NR−(Rは上記と同義である))を形成し;アミノ基−NHRは、イソシアナート基と反応してウレア結合(−NR−C(O)−NH−(Rは上記と同義である))を形成し;アミノ基−NHRは、エポキシ又はアジリジン基と反応してアミン結合(−C−R−(Rは上記と同義である))を形成し;ヒドロキシルは、イソシアナートと反応してウレタン結合を形成し;ヒドロキシルは、エポキシ又はアジリジンと反応してエーテル結合(−O−)を形成し;ヒドロキシルは、酸クロリド若しくはブロミド基と、又は酸無水物基と反応してエステル結合を形成し;ヒドロキシル基は、触媒の存在下にアズラクトン基と反応してアミドアルキレンカルボキシ結合(−C(O)NH−アルキレン−C(O)−O−)を形成し;カルボキシル基は、エポキシ基と反応してエステル結合を形成し;チオール基(−SH)は、イソシアナートと反応してチオカルバマート結合(−N−C(O)−S−)を形成し;チオール基は、エポキシ又はアジリジンと反応してチオエーテル結合(−S−)を形成し;チオール基は、酸クロリド若しくはブロミド基と、又は酸無水物基と反応してチオエステル結合を形成し;チオール基は、触媒の存在下にアズラクトン基と反応して結合(−C(O)NH−CR1212’−(CH)p−C(O)−S−)を形成し;チオール基は、チオール−エン反応条件下で、チオール−エン反応に基づきビニル基と反応してチオエーテル結合(−S−)を形成し;チオール基は、適切な反応条件下で、マイケル付加に基づきアクリロイル又はメタクリロイル基と反応してチオエーテル結合を形成し;アゼチジニウム基(
【化17】

)は、約40℃〜140℃の温度でアミノ基(−NHR)、カルボキシル、ヒドロキシル又はチオールと反応して結合(TN−CH−CH(OH)−CH−E−(E=NR、COO、O又はS))を形成する。
【0057】
上記カップリング反応の反応条件は、参考書に教示されており、また当業者にとって周知である。
【0058】
式(IV)の単官能性トリシロキサンは、下記式(V):
【化18】

(式中、R12及びR11は上記と同義である)
で示されるヒドロシロキサン含有トリシロキサンから、これを、当業者に公知の白金触媒ヒドロシリル化反応において、アミノ、カルボキシル又はヒドロキシル基を有するエン含有モノマーと反応させることにより、調製することができる。
【0059】
式(V)のヒドロシロキサン含有トリシロキサンは、欧州特許第2136622B1号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の手順に従って調製することができる。
【0060】
アミノ、カルボキシル又はヒドロキシル基を有するエン含有モノマーの例には、ビニル−C−C10アルキルカルボン酸(即ち、例えば3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸といった、CH=CH−(alk)t−COOH(式中、t=1〜10であり、alkは、置換又は非置換アルキル二価基である));ビニル−C−C12アルキルアミン(アリルアミン、3−ブテニルアミン、4−ペンテニルアミン、1−メチル−4−ペンテニルアミン、5−ヘキセニルアミン、5−ヘプテニルアミン、6−ヘプテニルアミン);N−アリル−C−C12アルキルアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタナミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタナミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタナミン、N−アリル−1−ヘキサナミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサナミン、N−アリル−1−ヘプタナミン、N−アリル−1−オクタナミン、N−アリル−1−エカナミン、N−アリル−1−ドデカナミン);アリル−C−C10アルキルアルコール(例えば、アリルアルコール、アリルカルビノール、アリルエチルアルコール、5−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−2−オール、9−デセン−1−オール);ビニル−C−C10アルキルハライド(例えば、アリルブロミド、4−ブロモ−1−ブテン、5−ブロモ−1−ペンテン、6−ブロモ−1−ヘキセン、7−ブロモ−1−ヘプテン、8−ブロモ−1−オクテン、9−ブロモ−ノネン、10−ブロモ−1−デセン);ビニル−C−C10アルキルエポキシド(例えば、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−1−ペンテン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−6−ヘプテン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−8−ノネン、1,2−エポキシ−9−デセン);及びアゼチジニウム含有エン含有モノマー(例えば、N−アリル−C−C12アルキルアミンとエピクロルヒドリンの反応生成物)が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
式(Ia)又は(Ib)のシロキサンビニルモノマーは、まず、EDC及びN−ヒドロキシスクシンイミドの存在下、式(IV)(式中、EはNHである)の単官能性トリシロキサンを、(メタ)アクリル酸クロリド(又はブロミド)、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル又は(メタ)アクリル酸と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得、次いで、得られたN置換(メタ)アクリルアミドを、アルキルハライドと反応させる(上記の通り)ことにより、調製することができる。
【0062】
式(Ic)又は(Id)のシロキサンビニルモノマーは、まず、式(IV)(式中、EはNHである)の単官能性トリシロキサンを、カルボキシル含有(メタ)アクリルアミド(例えば、(メタ)アクリル酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルと、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、3−アミノ酪酸、3−アミノイソ酪酸、3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、3−アミノシクロペンタンカルボン酸、β-ロイシン、β-イソロイシン、β-セリン、β-スレオニン又はスタチンからなる群より選択されるアミノ酸との反応生成物)、又は、アズラクトン含有ビニルモノマー(例えば、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン又は2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン)と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得、次いで、得られたN置換(メタ)アクリルアミドを、アルキルハライドと反応させる(上記の通り)ことにより、調製することができる。
【0063】
式(Ie)又は(If)のシロキサンビニルモノマーは、まず、式(IV)(式中、Eはカルボキシル基である)の単官能性トリシロキサンを、NH含有(メタ)アクリルアミド(例えば、(メタ)アクリルアミドエチルアミン又は(メタ)アクリルアミドプロピルアミン)と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得、次いで、得られたN置換(メタ)アクリルアミドを、アルキルハライドと反応させる(上記の通り)ことにより、調製することができる。
【0064】
式(Ig)又は(Ih)のシロキサンビニルモノマーは、式(IV)(式中、Eはヒドロキシル基である)の単官能性トリシロキサンを、アズラクトン含有ビニルモノマー(例えば、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン又は2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン)と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得、次いで、得られたN置換(メタ)アクリルアミドを、アルキルハライドと反応させる(上記の通り)ことにより、調製することができる。
【0065】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、第2の繰り返し単位が、好ましくは式(II)のシロキサンビニルモノマー由来である。より好ましくは、式(II)において、R’は水素であり;r1及びr2は0であり;R10は置換又は非置換C−C10アルキレン二価基であり;R”はC−Cアルキル(好ましくはメチル)であり;R11はC−Cアルキルである。
【0066】
式(II)のシロキサンビニルモノマーは、下記式(VI):
【化19】

(式中、R11、R10及びm1は上記と同義であり、Eは、アミノ(−NH)、カルボキシル(−COOH)又はヒドロキシル基(−OH)である)
で示される単官能性オリゴジメチルシロキサンから、これをまず、当業者に周知のカップリング反応(上記の通り)において、(メタ)アクリル酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、(メタ)アクリル酸ハライド(クロリド又はブロミド)、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸、NH含有(メタ)アクリルアミド、カルボキシル含有(メタ)アクリルアミド又はアズラクトン含有ビニルモノマー(例えば、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オン)、と反応させて、N置換(メタ)アクリルアミドを得、次いで、N置換(メタ)アクリルアミドを、アルキルハライドと反応させる(上記の通り)ことにより、調製することができる。
【0067】
式(VI)の単官能性オリゴジメチルシロキサンは、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの「リビング」重合を、アルキルリチウム(例えば、n−ブチルリチウム)を用いて開始し、ジメチルクロロシランを用いて反応をクエンチし、これに続くエン含有モノマー(例えば、アリルアミン、3−ブテニルアミン、4−ペンテニルアミン、5−ヘキセニルアミン、5−ヘプテニルアミン、6−ヘプテニルアミン、アリルアルコール、アリルカルビノール、アリルエチル アルコール、5−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−2−オール、9−デセン−1−オール、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸)とのヒドロシリル化により、調製することができる。
【0068】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、第3の繰り返し単位は、好ましくは下記式(III):
【化20】

(式中、E及びE’は、互いに独立して、メタクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、又はN−C1−C6アルキル(メタ)アクリルアミド基であり、R、R10、X、r1、r2は上記と同義であり、n1及びn2は、互いに独立して、0〜200の整数であって、かつ(n1+n2)は、10〜200であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、C−C10アルキル、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシ置換フェニル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、C−C18アリール基、又は−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−Cアルキルであり、n3は、1〜10の整数である)である)で示されるポリシロキサンクロスリンカー由来である。より好ましくは、R〜Rがメチルであるか;R〜R及びR〜Rはメチルであるが、Rは−alk−(OCn3−OR(式中、alkは、C−Cアルキレン二価基であり、Rは、H又はC−C10アルキルであり、n3は、1〜10の整数である)である。
【0069】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、本発明のソフトコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲル材料を含み、シリコーンヒドロゲル材料が、そのポリマーマトリックス中に、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤由来の第4の繰り返し単位をさらに含む。架橋剤は、構造的完全性及び機械的強度を向上するために用いてよい。
【0070】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、本発明のソフトコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲル材料を含み、シリコーンヒドロゲル材料が、そのポリマーマトリックス中に、紫外線(UV)及び高エネルギー紫色光(violet light)(HEVL)を吸収することができるビニルモノマー由来の第5の繰り返し単位をさらに含み、本発明において用いられている。UV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマー単位を有することにより、UV吸収性又はUV/HEVL吸収能を有するシリコーンヒドロゲルレンズを得ることができる。そのようなレンズは、紫外線(「UV」)及び場合により高エネルギー紫色光により引き起こされる障害から、角膜をある程度保護し得る。
【0071】
好ましいUV吸収性及びUV/HEVL吸収性の、ベンゾトリアゾール含有ビニルモノマーの例には:2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリリル(acrylyl)オキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリラート(WL−1)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリラート(WL−5)、3−(5−フルオロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリラート(WL−2)、3−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリラート(WL−3)、3−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリラート(WL−4)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メチル−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリラート(WL−6)、2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリラート(WL−7)、4−アリル−2−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−メトキシフェノール(WL−8)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−5’[3”−(4”−ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−エテニル−(UVAM)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2−プロペン酸、2−メチル−、2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルエステル、Norbloc)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−[3’−メタクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV13)、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−トリフルオロメチル−2H−ベンゾトリアゾール(CF−UV13)、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV6)、2−(3−アリル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV9)、2−(2−ヒドロキシ−3−メタリル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV12)、2−3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(3”−ジメチルビニルシリルプロポキシ)−2’−ヒドロキシ−フェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV15)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16A)、2−メチルアクリル酸 3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]−プロピルエステル(16-100、CAS#96478-15-8)、2−(3−(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ)エチルメタクリラート(16−102);フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)(CAS#1260141-20-5);2−[2−ヒドロキシ−5−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]−3−tert−ブチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール;フェノール、2−(5−エテニル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−、ホモポリマー(9CI)(CAS#83063-87-0)が含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、重合性組成物は、約0.2重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.3重量%〜約2.5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.8重量%のUV吸収剤を含む。
【0072】
本発明において、紫外線及び高エネルギー紫色光(HEVL)を吸収することができるビニルモノマーを用いる場合、フリーラジカル重合を開始するために、ゲルマン系(Germane-based)ノリッシュI型光開始剤及び約400〜約550nmの領域の光を含む光源が好ましく用いられる。本発明においては、約400〜約550nmの領域の光を含む光源による照射下で、フリーラジカル重合を開始することができる限り、任意のゲルマン系ノリッシュI型光開始剤を用いることができる。ゲルマン系ノリッシュI型光開始剤の例は、米国特許第7,605,190号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているアシルゲルマニウム化合物である。好ましくは、レンズ形成材料のモノマーは、以下のアシルゲルマニウム化合物のうちの少なくとも1種を含む。
【化21】
【0073】
本発明においては、レンズ配合物がUV吸収性ビニルモノマーを含む場合、光開始剤として、ベンゾイルホスフィンオキシド光開始剤が好ましく用いられる。好ましいベンゾイルホスフィン オキシド光開始剤には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。本発明においては、ベンゾイルホスフィンオキシド開始剤以外の任意の光開始剤を使用することができると理解される。
【0074】
本発明のソフトコンタクトレンズは、場合により、(メタ)アクリルアミド型ビニルモノマー以外の親水性ビニルモノマー、及び/又は非シリコーン疎水性ビニルモノマー由来の、少量の付加的な繰り返し単位(即ち、ソフトコンタクトレンズを製造するためのレンズ配合物中の全重合性成分の約5重量%未満)を含むことができると理解される。
【0075】
本発明においては、任意の親水性ビニルモノマーをほとんど使用することができる。適切な親水性ビニルモノマーは、ヒドロキシル置換低級アルキル(C〜C)アクリラート及びメタクリラート、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル−4,4’−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−及び4−ビニルピリジン、全部で3〜6個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)−(用語「アミノ」は、4級アンモニウムも含む)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)及びジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリラート及びメタクリラート、アリルアルコール、N−ビニルアルキルアミド、N−ビニル−N−アルキルアミド等である(ただし、これは完全なリストではない)。好ましい親水性ビニルモノマーのうち、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、メタクリル酸(トリメチルアンモニウム)2−ヒドロキシプロピル塩酸塩、メタクリル酸アミノプロピル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)、メタクリル酸グリセリン(GMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、アリルアルコール、ビニルピリジン、アクリル酸、重量平均分子量200〜1500のC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メタクリル酸、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、及びN−ビニルカプロラクタムである。より好ましくは、アミド型ビニルモノマー以外の親水性ビニルモノマーは、アクリラートモノマーである。
【0076】
ペンダント又は末端官能基を有する中間共重合体を調製するための化学線重合性組成物においては、ほとんど任意の疎水性ビニルモノマーを使用することができる。好ましい疎水性ビニルモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、メタクリル酸パーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロブチルが含まれる。
【0077】
本発明のこの態様における、他の一つの好ましい実施態様によれば、ソフトコンタクトレンズは、レンズ配合物の重合生成物であるシリコーンヒドロゲル材料を含み、レンズ配合物は、(1)約5%〜約60重量%、好ましくは約10%〜約50重量%、さらに好ましくは約15%〜約45重量%、さらに好ましくは約20%〜約40重量%の親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー;(2)約5%〜約50重量%、好ましくは約10%〜約40重量%、より好ましくは約15%〜約30重量%の式(I)及び/又は(II)のシロキサンビニルモノマー;(3)約5%〜約50%、好ましくは約10%〜約40重量%、より好ましくは約15%〜約35重量%の式(III)のα,ω−ジ(メタ)アクリルアミド末端ポリシロキサン;(4)約0.05%〜約1.5重量%、好ましくは約0.1%〜1.3重量%、より好ましくは約0.5%〜約1.1重量%の光開始剤;(5)0〜4重量%、好ましくは約0〜約3重量%、より好ましくは約0.05%〜約2.5%、さらに好ましくは約0.1%〜約2%の、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤;及び(6)0〜5重量%、好ましくは約0.2%〜5重量%、より好ましくは約0.5%〜約2.5重量%の重合性UV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマーを含む。前記の範囲の組み合わせは、一覧の成分と、任意の付加的な成分が、合計で100重量%になることを条件として提示されている。
【0078】
本発明においては、特に、レンズ配合物がUV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマーを全く含まない場合、上記ゲルマン系ノリッシュI型光開始剤及びベンゾイルホスフィンオキシド光開始剤に加え、他の適切な光開始剤、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びDarocur及びIrgacure型、好ましくはDarocur 1173(登録商標)、Irgacure 369(登録商標)、Irgacure 379(登録商標)及びIrgacure 2959(登録商標)といったものも用いることができる。次いで、化学線照射、例えば光、特に適切な波長のUV/可視光により重合を誘発することができる。スペクトル上の要件は、それが適切である場合には、適切な光増感剤の添加によりしかるべく制御することができる。
【0079】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するためのレンズ配合物は、抗菌剤、好ましくは抗菌性金属ナノ粒子、より好ましくは銀ナノ粒子をさらに含むことができる。
【0080】
本発明によれば、本発明のソフトコンタクトレンズは、可視性着色剤(visibility tinting agents)(例えば、染料、顔料、又はそれらの混合物)、抗菌剤(例えば、銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙液安定化剤等といった、当業者にとって公知である、種々の成分をさらに含むことができる。
【0081】
ポリマーマトリックス中に組み込まれる生物活性剤は、眼の病気を防止するか、又は眼の病気の症状を軽減させることができる任意の化合物である。生物活性剤は、薬剤、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシンなど)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、又はこれらの任意の組合せであってよい。本明細書で有用な薬剤の例には、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコレート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン、又は薬学的に許容しうるこれらの塩若しくはエステルを包含するが、これらに限定されない。生物活性剤の他の例は、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、α−ヒドロキシル酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸、並びにこれらの塩など)、リノール酸及びγ−リノール酸、並びにビタミン類(例えば、B5、A、B6など)を包含する。
【0082】
浸出性潤滑剤の例には、ムチン様物質(例えば、ポリグリコール酸)及び非架橋性親水性ポリマー(即ち、エチレン性不飽和基を持たない)が含まれるが、これらに限定されない。エチレン性不飽和基を持たない任意の親水性ポリマー又はコポリマーを、浸出性潤滑剤として使用することができる。非架橋性親水性ポリマーの好ましい例には、ポリビニルアルコール類(PVAs)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、1種以上の親水性ビニルコモノマーの存在下若しくは非存在下での少なくとも1種のビニルラクタムのコポリマー、アクリルアミド若しくはメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと1種以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(即ち、ポリエチレングリコール(PEG))、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチル−オキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。非架橋性親水性ポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜100,000である。
【0083】
浸出性涙液安定化剤の例には、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴ−糖脂質、脂肪族アルコール、脂肪酸、鉱油及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、涙液安定化剤は、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴ−糖脂質、8〜36個の炭素原子を有する脂肪酸、8〜36個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、又はこれらの混合物である。
【0084】
当業者は、コンタクトレンズをいかにして製造するかをよく承知している。例えば、従来の「スピンキャスティング成形」で、又は静的な形態のフルキャスト成形法によって、又は特注のコンタクトレンズを製造するのに用いられるような、シリコーンヒドロゲルボタンの旋盤切削により、コンタクトレンズを製造することができる。キャスト成形では、典型的には、レンズ配合物を型に分注し、コンタクトレンズを製造するための型の中で硬化させる(即ち、重合及び/又は架橋させる)。
【0085】
本発明によれば、レンズ配合物(又はレンズ形成材料)は流動性の組成物であり、約20℃〜約85℃の温度において、溶液であるか、又は溶融するかでありうる。レンズ配合物は、当業者にとって公知の任意の適切な溶媒に、全ての望ましい成分を溶解することにより調製することができる。適切な溶媒の例には、水、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i−プロピル、塩化メチレン、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエキソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、並びにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、レンズ配合物は、水、1,2−プロピレングリコール、分子量約400ダルトン以下のポリエチレングリコール、またはそれらの混合物中の、全ての望ましい成分の溶液である。
【0086】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ型は、当業者には周知であり、例えば、キャスト成形又はスピンキャスティングにおいて用いられる。例えば、型(キャスト成形用)は一般に、少なくとも2個の成形用型片(又は部分)又は半型、即ち第1の及び第2の半型を含む。第1の半型は、第1の成形(又は光学)面を規定し、第2の半型は、第2の成形(又は光学)面を規定する。第1及び第2の半型は、第1の成形面と第2の成形面の間にレンズ形成空隙を形成するように互いに受容し合うように構成される。半型の成形面は、型の空隙形成面であり、レンズ形成材料と直接に接触する。
【0087】
コンタクトレンズをキャスト成形するための成形用型片を製造する方法は一般に、当業者には周知である。本発明の方法は、成形用型を形成するための何らかの特定の方法に限定されない。実際、本発明においては、型を形成するための任意の方法を用いることができる。第1及び第2の半型は、射出成形又は旋盤加工のような、種々の手法を介して形成することができる。半型を形成するのに適切なプロセスの例は、米国特許第4,444,711号(Schad);4,460,534号(Boehm et al.);5,843,346号(Morrill);及び5,894,002号(Boneberger et al.)に開示されており、これらも参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
当分野において知られている事実上全ての型製造用材料は、コンタクトレンズ製造用の型を製造するために使用することができる。例えば、ポリマー材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COC grade 8007-S10(エチレン及びノルボルネンの透明な無定形コポリマー、Ticona GmbH of Frankfurt, Germany及びSummit, New Jersey製)などを使用することができる。石英ガラス及びサファイアのような、UV光透過可能な他の材料を使用してもよい。
【0089】
本発明によれば、レンズ配合物(又は組成物)は、任意の既知の方法により、型によって形成される空隙に導入(分注)することができる。
【0090】
レンズ配合物を型に分注した後、これを重合させてコンタクトレンズを製造する。架橋は熱的又は化学線により開始してもよく、好ましくは、型の中のレンズ配合物を化学線の空間的に制限されたものに曝露して、レンズ配合物中の重合性成分を重合させる。
【0091】
成形体を型から除去できるようにする型の開放は、それ自体が周知である様式で行い得る。
【0092】
成形されたコンタクトレンズは、重合していない重合性成分を除去するためのレンズ抽出に付すことができる。抽出溶媒は、当業者に知られている任意の溶媒でありうる。適切な抽出溶媒の例は上記されているものである。好ましくは、水又は水溶液を抽出溶媒として用いる。抽出後、水、又は湿潤剤(例えば、親水性ポリマー)の水溶液中でレンズを水和することができる。
【0093】
成形されたコンタクトレンズはさらに、例えば、表面処理、約0.005%〜約5重量%の湿潤剤(例えば、上記のもの等当業者にとって公知の親水性ポリマー)及び/又は増粘剤(例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はそれらの混合物)を含有し得るパッケージング溶液を含むレンズパッケージ内へのパッケージング;118〜124℃で少なくとも約30分間のオートクレーブといった滅菌;等といった、さらなる工程に付すことができる。
【0094】
本発明のこの態様における、本発明の好ましい、より好ましい、さらに好ましい、そして最も好ましい実施態様を含む種々の実施態様は、先に別個に記載されている可能性があるが、本発明のソフトコンタクトレンズの種々の実施態様に到達するために、それらを任意の所望の様式で組み合わせ、及び/又は併用することができると理解すべきである。
【0095】
他の態様において、本発明は、比較的長期の熱安定性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。方法は、下記:ソフトコンタクトレンズを製造するための型を提供する工程であって、型は、コンタクトレンズの前面を規定する第1の成形面を有する第1の半型及びコンタクトレンズの後面を規定する第2の成形面を有する第2の半型を有し、前記第1及び第2の半型は、前記第1及び第2の成形面の間に空隙を形成するように、互いに受容し合うように構成される工程;空隙にレンズ配合物を導入する工程であって、レンズ配合物は、(1)親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー、(2)下記式(I)又は(II)(好ましくは式(I)):
【化22】

(式中、R’は、水素又はメチルであり、R”、R11及びR12は、各々互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)であり、r1及びr2は、互いに独立して、0又は1の整数であり、m1は、3〜10(好ましくは3〜8、より好ましくは3〜5)の整数であり、R及びR10は、互いに独立して、置換又は非置換C−C10アルキレン二価基であり、Xは、下記式:
【化23】

(式中、R”は、先に定義した通りであり、R12”及びR12’は、互いに独立して、C−Cアルキル(好ましくはメチル)である)の結合である)
で示されるシロキサンビニルモノマー;
(3)直鎖状ポリシロキサンクロスリンカーであって、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基を有し、かつ、2個の末端(メタ)アクリルアミド又はメタクリルオキシ基の間の、ポリシロキサンクロスリンカーの主鎖に、エステル結合であって、エステル結合のカルボニル基に隣接する四級炭素原子を有していないエステル結合、ウレタン結合、又はウレア結合が全く存在しない、直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー;及び(4)約0.05重量%〜約1.5重量%の光開始剤を含む工程、及びレンズ配合物を架橋させてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成するように、型中のレンズ配合物を、約100秒以下(好ましくは約75秒以下、より好ましくは約50秒以下、さらにより好ましくは約30秒以下)の時間(好ましくは、化学線の空間的制限下で)照射する工程を含み、ここで、製造されたソフトコンタクトレンズの比較的長期の熱安定性は、下記式:
【数14】

(式中、下記式:
【数15】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ1回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、121℃、30分間で、1回だけオートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られ;下記式:
【数16】

で示される項は、ソフトコンタクトレンズの平均オートクレーブ19回後弾性率であって、ソフトコンタクトレンズ15個の、pH7.20±0.05のリン酸緩衝食塩水中において、保管及び各々121℃、30分間で、19回オートクレーブした後に測定された弾性率を平均することにより得られる)
で示される、弾性率におけるオートクレーブ誘発変化が約10%以下(好ましくは約7.5%以下、より好ましくは約5%以下)であると特徴付けられる。製造されたソフトコンタクトレンズは、少なくとも約40barrers(好ましくは少なくとも約50barrers、より好ましくは少なくとも約60barrers、さらにより好ましくは少なくとも約70barrers)の酸素透過度(Dk);約20重量%〜約75重量%(好ましくは約25重量%〜約70重量%、より好ましくは約30重量%〜約65重量%)の、完全に水和した時の水分含量;及び約0.2MPa〜約1.8MPa(好ましくは約0.3MPa〜約1.4MPa、より好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPa)の弾性率を有する。
【0096】
種々の実施態様の親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー、式(I)又は(II)のシロキサンビニルモノマー、直鎖状ポリシロキサンクロスリンカー、架橋剤、重合性UV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマー、光開始剤、溶媒、レンズ配合物、親水性ビニルモノマー、熱開始剤、可視性着色剤、抗菌剤、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙液安定化剤、型、重合技術及び成形後加工が先に記載されており、それらを本発明のこの態様において用いることができる。
【0097】
好ましい実施態様においては、得られたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを水又は水溶液で抽出する。
【0098】
他の好ましい実施態様においては、型は再利用可能な型であり、レンズ形成組成物を、化学線照射の空間的制限下で化学線により硬化させて(即ち、重合させて)、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する。好ましい再利用可能な型の例は、米国特許第6,627,124号、6,800,225号、7,384,590号及び7,387,759号(これらは全体が参照により組み込まれる)に開示されているものである。再利用可能な型は、水晶、ガラス、サファイア、CaF、環状オレフィン共重合体 (例えば、Topas(登録商標)COC grade 8007-S10(エチレン及びノルボルネンの透明な無定形コポリマー、Ticona GmbH of Frankfurt、Germany及びSummit、New Jersey製)Zeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標)(Zeon Chemicals LP、Louisville、KY製)といったもの)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、DuPont製ポリオキシメチレン(Delrin)、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、G.E. Plastics製)、PrimoSpire(登録商標)及びそれらの組み合わせにより製造されたものでありうる。
【0099】
他の好ましい実施態様においては、レンズ配合物は:(1)約5%〜約60重量%、好ましくは約10%〜約50重量%、さらにより好ましくは約15%〜約45重量%、さらにより好ましくは約20%〜約40重量%の親水性(メタ)アクリルアミド型モノマー;(2)約5%〜約50重量%、好ましくは約10%〜約40重量%、より好ましくは約15%〜約30重量%の、式(I)及び/又は(II)のシロキサンビニルモノマー;(3)約5%〜約50%(好ましくは約10%〜約40重量%、より好ましくは約15%〜約35重量%)の、式(III)(上記と同義)で示されるポリシロキサンクロスリンカー;(4)約0.05%〜約1.5重量%、好ましくは約0.1%〜1.3重量%、より好ましくは約0.5%〜約1.1重量%の光開始剤;(5)0〜4重量%、好ましくは約0〜約3重量%、より好ましくは約0.05%〜約2.5重量%、さらにより好ましくは約0.1%〜約2重量%の、N,N’−メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(アクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤;及び(6)0〜5重量%、好ましくは約0.2%〜5重量%、より好ましくは約0.5%〜約2.5重量%の、重合性UV吸収性又はUV/HEVL吸収性ビニルモノマーを含む。前記の範囲の組み合わせは、一覧の成分と、任意の付加的な成分が、合計で100重量%になることを条件として提示されている。
【0100】
本発明のこの態様における、本発明の好ましい、より好ましい、さらに好ましい、そして最も好ましい実施態様を含む種々の実施態様は、先に別個に記載されている可能性があるが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する本発明の方法の種々の実施態様に到達するために、それらを任意の所望の様式で組み合わせ、及び/又は併用することができると理解すべきである。
【0101】
本発明の種々の実施態様を、特定の用語、装置及び方法を用いて記載してきたが、そのような記載は例示のみを目的とするものである。使用した単語は、限定よりもむしろ記載の単語である。以降の請求項に述べられた本発明の本質および範囲を逸することなく、当業者による改変及び変形がなされてよいと理解される。加えて、種々の実施態様の態様を、全体又は部分的に交換してもよく、又は任意の様式で組み合わせ、及び/又は併用することができると理解すべきである。従って、添付の請求項の本質および範囲は、本明細書に含まれる好ましい形式の記載に限定されるべきではない。
【0102】
先の開示は、当業者が本発明を実施することを可能にするであろう。読者が特定の実施態様及びその利点を理解することがよりよく行えるようにするため、次の限定的でない実施例を参照することを提案する。ただし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものと読まれるべきではない。
【0103】
[実施例]

レンズの見かけの酸素透過度及びレンズ材料の酸素伝達率は、米国特許第5760100号及びWintertonらによる論文(The Cornea: Transactions of the World Congress on the Cornea 111, H.D. Cavanagh Ed., Raven Press: New York 1988, pp273-280)(これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものと類似の手法により測定する。酸素フラックス(J)は、Dk1000装置(Applied Design and Development Co., Norcross, GAから入手できる)、又は同様の分析装置を用いて、ウェットセル(即ち、ガス流が約100%相対湿度に維持される)中で34℃で測定する。既知の割合の酸素(例えば、21%)を有する空気流を、約10〜20cm/分の速度でレンズの片面を通過させ、一方、窒素流を、約10〜20cm/分の速度でレンズの反対面に通す。試料は、試験媒体(即ち、生理食塩水又は蒸留水)中、所定の試験温度で測定前に少なくとも30分間(しかし45分間を超えない)平衡化させる。被覆層として使用される任意の試験媒体は、所定の試験温度で測定前に少なくとも30分間(しかし45分間を超えない)平衡化させる。撹拌モーターの速度は、ステッピングモーター制御器での400±15の表示設定に対応する、1200±50rpmにセットする。系を囲む気圧、P測定値を測定する。試験用に曝露される領域におけるレンズの厚さ(t)は、MitotoyaマイクロメーターVL-50、又は同様の装置で約10箇所を測定し、そして測定値を平均することにより決定する。窒素流中の酸素濃度(即ち、レンズを通過して拡散する酸素)は、DK1000装置を用いて測定する。レンズ材料の見かけの酸素透過度Dkappは、下記式:
Dkapp=Jt/(P酸素
(式中、
J=酸素フラックス[マイクロリットルO/cm−分]
酸素=(P測定値−P蒸気)=(空気流中O%)[mmHg]=空気流中の酸素の分圧
測定値=気圧(mmHg)
蒸気=35℃で0mmHg(ドライセル中)(mmHg)
蒸気=35℃で40mmHg(ウェットセル中)(mmHg)
t=曝露される試験領域におけるレンズの平均厚さ(mm)
Dkappは、barrerの単位で表される)
から求める。
【0104】
材料の見かけの酸素伝達率(Dk/t)は、見かけの酸素透過度(Dkapp)をレンズの平均厚さ(t)で割ることにより算出できる。
【0105】
上記の測定値は、酸素フラックス測定中のコンタクトレンズの頂点での水又は生理食塩水浴の使用に起因する、いわゆる境界層効果について補正していない。境界層効果によって、シリコーンヒドロゲル材料の見かけのDkの報告値は、実際の固有Dk値よりも低くなる。更に、境界層効果の相対的インパクトは、厚いレンズよりも薄いレンズでより大きい。正味の効果は、報告Dk値が、一定のままであるべき時にレンズ厚さの関数として変化するように見えることである。
【0106】
レンズの固有Dk値は、以下のとおり、境界層効果に起因する酸素フラックスに対する表面抵抗について補正したDk値に基づいて推定することができる。
【0107】
参照のロトラフィルコンA(Focus(登録商標)N&D(登録商標)、CIBA VISION CORPORATION製)又はロトラフィルコンB(AirOptix(商標)、CIBA VISION CORPORATION製)のレンズの見かけの酸素透過度値(一点)を、同じ装置を用いて測定する。参照レンズは、試験レンズと同様の屈折力のものであり、試験レンズと同時に測定する。
【0108】
上記の見かけのDk測定のための手順により、同じ装置を用いて、一連の厚さのロトラフィルコンA又はロトラフィルコンB(参照)レンズを通した酸素フラックスを測定し、参照レンズの固有Dk値(Dki)を得る。一連の厚さは、大体100μm又はそれ以上の厚さ範囲をカバーすべきである。好ましくは、参照レンズの厚さの範囲は、試験レンズの厚さを囲むだろう。これらの参照レンズのDkappは、試験レンズと同じ装置で測定しなければならず、理想的には試験レンズと同時に測定すべきである。装置の設定及び測定パラメーターは、実験の間中ずっと一定を保持すべきである。個々の試料は、必要に応じて複数回測定してもよい。
【0109】
対照レンズの結果から、下記方程式(1):
【数17】

(式中、
tは試験レンズの厚さ(即ち、対照レンズも同じ)であり、
nは測定した対照レンズの数である)
を計算に用いて、残存酸素抵抗値Rを求める。残存酸素抵抗値Rをtデータに対してプロットして、式:Y=a+bX(式中、j番目のレンズに関し、Y=(ΔP/J)であり、X=tである)の曲線に当てはめる。残存酸素抵抗Rrは、aに等しい。
【0110】
上で求めた残存酸素抵抗値を使用することにより、下記方程式(2):
Dk = t/[(t/Dk)−R] (2)
に基づいて、試験レンズの正しい酸素透過度Dk(推定固有Dk)を算出する。
【0111】
試験レンズの推定固有Dkは、同じ試験環境において、標準的な厚さのレンズでは、見かけのDk(Dka_std)がどうであるかを、下記方程式(3)に基づいて算出するために使用することができる。ロトラフィルコンAの標準的厚さ(tstd)=85μm。ロトラフィルコンBの標準的厚さ=60μm。
Dka_std = tstd/[(tstd/Dk)+Rr_std] (3)
【0112】
イオン透過性測定
レンズのイオン透過性は、米国特許第5760100号(全体が引用例として本明細書に組み込まれる)に記載される手順により測定する。下記の例で報告されるイオン透過性の値は、参照材料としてのレンズ材料、Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。Alsaconは、0.314×10−3mm/分のイオノフラックス拡散係数を有する。
【0113】

α,ω−アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサンの合成
溶液A.
ShinEstuからのジアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(KF8012) 700グラム及びヘキサン 1500mLをビーカーに添加し、次いで、混合物が均一化するまで短時間撹拌する。
溶液B.
NaCO55.20グラムを、5%のNaCl水溶液 1600mLに溶解する。
溶液C.
アクリロイルクロリド 38.30グラムを、ヘキサン 100mLに溶解する。
【0114】
機械的撹拌が取り付けられた反応フラスコ内で、溶液AとBを合わせる。次いで、フラスコ内の溶液をよく撹拌しながら、添加用漏斗(addition funnel)を通じ、反応フラスコに溶液Cを1時間かけてゆっくり添加する。撹拌をさらに1時間続ける。反応溶液に飽和NaCl溶液 200mLを添加し、次いで15分間高速で撹拌する。次いで撹拌を停止すると、相分離が起こる。30分後、水相を除去する。次いで、溶液を150−200rpmで30分間撹拌しつつ、有機相をDI水 1600mLで洗浄する。次いで撹拌を停止し、次いで水相を除去する。さらなる水を添加し、抽出プロセスをさらに2回繰り返す。最後の洗浄の後、溶液を反応器内に一晩おく。翌朝、水相を除去する。有機相を回収し、MgSO100グラムを用いて、穏やかに撹拌(約250rpm)しつつ、室温(R.T.)で1時間乾燥させる。溶液を濾過し、ヘキサンの残りが100グラム未満となるまで、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥させる。真空ポンプを用い、重量が一定となるまで、最後の分のヘキサンを除去する。
【0115】

CE−PDMSマクロマーの調製
第1の工程において、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=2000、Shin-Etsu、KF−6001a)を、無水メチルエチルケトン(MEK)150g中、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)0.063gの存在下で、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン 49.85gをIPDI 11.1gと反応させることにより、ジイソシアン酸イソホロン(IPDI)によりキャッピングする。反応物を40℃で4.5時間保持することにより、IPDI−PDMS−IPDIを形成させる。第2の工程において、DBTDL 0.063gを更に加えたIPDI−PDMS−IPDI溶液に、α,ω−ビス(2−ヒドロキシエトキシプロピル)−ポリジメチルシロキサン(Mn=3000、Shin-Etsu、KF−6002) 164.8gと無水MEK 50gの混合物を滴下する。反応器を約40℃で4.5時間維持することにより、HO−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−OHを形成させる。次いで、MEKを減圧下で除去する。第3の工程では、末端ヒドロキシル基を、メタクリル酸イソシアナトエチル(IEM)7.77g及び更なるDBTDL 0.063gの添加による、第3の工程で行うことにより、メタクリロイルオキシエチル基によりキャッピングし、IEM−PDMS−IPDI−PDMS−IPDI−PDMS−IEM(即ち、メタクリラート基で封止されたCE−PDMS)を形成させる。
【0116】
末端メタクリラート基を有するCE−PDMSマクロマーの代替調製法
KF−6001 240.43gを、撹拌器、温度計、クライオスタット、滴下漏斗、及び窒素/真空注入口アダプターを取り付けた1L反応器に加え、次に高真空(2×10−2mBar)の適用により乾燥させる。次に、乾燥窒素雰囲気下で、蒸留MEK 320gを反応器に加え、混合物を充分に撹拌する。DBTDL 0.235gを反応器に加える。反応器を45℃まで温めた後、穏やかな撹拌下でIPDI 45.86gを添加用漏斗を通じて10分間かけて反応器に加える。反応物を60℃で2時間保持する。次に、蒸留MEK 452gに溶解したKF−6002 630gを加え、均質な溶液が形成されるまで撹拌する。DBTDL 約0.235gを加え、乾燥窒素のブランケット下で反応器を約55℃で一晩維持する。翌日、MEKをフラッシュ蒸留により除去する。反応器を冷却し、次にIEM 22.7gを反応器に仕込み、続いてDBTDL 約0.235gを入れる。約3時間後、更にIEM 3.3gを加え、反応を一晩進行させる。その次の日、反応混合物を約18℃に冷却して、末端メタクリレート基を有するCE−PDMSマクロマーを得る。
【0117】
4〜14
レンズ配合物の調製
表1に列挙したレンズ配合物を、以下のようにして調製する。スターラーバー(stirring bar)を入れた20mLのガラスバイアルに、目標とする量の成分を添加する。次いで、室温で約1時間、撹拌盤(stirring plate)上で溶液を混合する。
【表1】
【0118】
化学物質類:
T−AA:tert−アミルアルコール;
PDMS−Dam:例2で調製したα,ω−アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサンクロスリンカー;
CE−PDMS:例3で調製した鎖延長ポリジメチルシロキサンクロスリンカー;
PDMS−DMa:α,ω−ビス(メタクリルオキシエトキシプロピル)末端ポリジメチルシロキサン(DMS-R18、Gelest)
SIGMA:(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(Gelest)
【化24】

DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DC1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
トリス−Am:3−アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(又はN−[トリス(トリメチルシロキシ)−シリルプロピル]アクリルアミド)
ビス−Am:3−アクリルアミドプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
【化25】

N−メチルビス−Am:3−N−メチルアクリルアミドプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
【化26】
【0119】
配合物の硬化
4のレンズ配合物をポリプロピレン(PP)の型に入れ(dosed)、紫外線ボックス中、光量4〜6mW/cm2で20分間硬化させる。
【0120】
5〜13のレンズ配合物のうち1つをPPの型に入れ、330nmのカットオフフィルターを用い、光量16mW/cm2で20〜30秒硬化させる。
【0121】
離型
レンズ型を開ける前に、レンズの入った型を脱イオン(DI)水に約2時間浸漬する。次いで、これらの型を開け、DI水に一晩浸漬したままにする。レンズを型から抜くために、ピンセットで除去する前に、レンズの入った型をイソプロパノール/水(50/50、V/V)混合物に浸漬する。
【0122】
4〜7についてのレンズ抽出は、以下の9工程で行う:メチルエチルケトン(MEK)中22秒(工程1)、MEK中78秒(工程2)、MEK中224秒(工程3)、次いでDI水中56秒(工程4〜9)。
【0123】
8〜14についてのレンズ抽出は、以下の5工程で行う:イソプロパノール(IPA)中3時間(工程1)、IPA中10分間(工程2)、DI水中30分間(工程3)、DI水中10分間(工程4)及びDI水中2分間(工程5)。
【0124】
4〜8及び11〜13については、抽出したレンズを、ポリプロピレンシェル中、pH7.2でリン酸緩衝食塩水(PBS)中に保管する。参考例9及び14については、抽出したレンズを、ポリプロピレンシェル中、pH6.8でリン酸緩衝食塩水(PBS)中に保管する。参考例10については、抽出したレンズを、ポリプロピレンシェル中、pH6.2でリン酸緩衝食塩水(PBS)中に保管する。参考例9、10及び14については、pH7.2のPBS食塩水に0.1N HCl水溶液を添加することにより、食塩水のpHを調整する。
【0125】
オートクレーブ
オートクレーブは、121℃で行う。オートクレーブの各サイクルには、30分間かかる。15個のレンズを、1サイクルのオートクレーブに付す。15個のレンズを、7サイクルのオートクレーブに付す。15個のレンズを、13サイクルのオートクレーブに付す。15個のレンズを、19サイクルのオートクレーブに付す。それらのレンズを、レンズ特性の特徴付けに用いる。結果を表2に報告する。
【表2】
【0126】
95℃での安定性
13及び14で調製したレンズを、ガラスバイアル内のPBS食塩水中に、各々pH7.2(例13)及びpH6.8(参考例14)で詰める。設定温度95℃のオーブンにレンズを格納する。指定した時間間隔で、レンズをオーブンから取り出し、機械的測定及び直径の測定に付す。結果を表3に報告する。
【表3】
【0127】
注:下記の式を用いて、室温での保存可能期間の等価物を推定しており、現実の室温での保存可能期間から逸脱している可能性がある。
【数18】