(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239105
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】航空機乗務員の保護呼吸装置
(51)【国際特許分類】
A62B 7/14 20060101AFI20171120BHJP
A62B 9/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A62B7/14
A62B9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-525457(P2016-525457)
(86)(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公表番号】特表2016-526987(P2016-526987A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】US2014045986
(87)【国際公開番号】WO2015006468
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】13/938,707
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500413696
【氏名又は名称】ビーイー・エアロスペース・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】B/E Aerospace, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】クシャーサガー、ギリシュ
(72)【発明者】
【氏名】ノーレン、ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー、チップ
【審査官】
菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−025094(JP,A)
【文献】
特表2013−521933(JP,A)
【文献】
特開2003−062096(JP,A)
【文献】
米国特許第03773044(US,A)
【文献】
米国特許第05857460(US,A)
【文献】
実開昭52−040596(JP,U)
【文献】
特表2005−538920(JP,A)
【文献】
特開平08−333101(JP,A)
【文献】
特開昭60−063463(JP,A)
【文献】
米国特許第5297544(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00 − 7/14
A62B 9/00
B64D 13/06
B63C 11/02 − 11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸装置であって、
バイザー、呼吸回路、及び、化学物質及び/または圧縮ガスによる酸素生成システムを含む自給式酸素源を有するフードと、
前記呼吸装置が予定通り機能していることと、酸素及び/または二酸化炭素の個別の残量割合及びそのレベル変化を感ガスインクを用いてユーザに視覚的に示す、前記フードの内部表面において前記バイザーと少なくとも一部が重なる領域に貼られた薄膜である内部指標と、を備え、
前記内部指標は、前記ユーザに前記呼吸装置の有効稼働寿命の終わりが近づいていることも視覚的に示す、
呼吸装置。
【請求項2】
化学物質及び/または圧縮ガスによる酸素生成システムを含む自給式呼吸装置であって、
着用者の頭部を覆うフードであって、バイザーを含むフードと、
前記フードの内部の視覚的指標であって、前記フード内の酸素及び/または二酸化炭素に反応し、前記フードに存在する酸素及び/または二酸化炭素の量に基づいて、前記自給式呼吸装置が予定通り機能していることと、酸素及び/または二酸化炭素の個別の残量割合及びそのレベル変化を、感ガスインクを用いて視覚的フィードバックとしてユーザに提供する、前記フードの内部表面において前記バイザーと少なくとも一部が重なる領域に貼られた薄膜である視覚的指標と、を備える、
自給式呼吸装置。
【請求項3】
前記視覚的指標は、前記フード内の酸素及び二酸化炭素の双方に反応し、前記フードに存在する酸素及び二酸化炭素の双方の量に基づいて、酸素及び二酸化炭素の個別の残量割合及びそのレベル変化をユーザに提供する、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項4】
前記薄膜は、金属酸化物の触媒による薄膜を含む、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項5】
前記薄膜は、半導体の水分散液、犠牲電子供与体、レドックス指示染料の水溶液及びカプセル化ポリマ及び/または透過性膜を含む、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項6】
前記視覚的指標は、前記フードに存在する酸素レベルに反応して単語を表示する、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項7】
前記視覚的指標は、前記フード内部の酸素及び/または二酸化炭素の濃度に対応するスケール上に値を示す、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項8】
前記視覚的指標は、不可逆的な指示が望まれる場合、紫外線に反応する、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【請求項9】
前記指標は、前記フード内の酸素及び/または二酸化炭素の濃度が変化した結果、色及び/または色濃度を変更する、
請求項2に記載の自給式呼吸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月10日に出願された米国特許出願第13/938,707号の優先権を主張し、その内容を参照により組み込む。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、密閉構造での消火のための器具として、自給式呼吸器または酸素マスクがよく知られている。移動の自由を考慮した重量を維持しながら、安定し、制御された酸素の流れを提供可能な携帯可能な酸素マスクが、消火の際には必要である。このような酸素マスクは、航空機の密閉及び加圧された環境においても同様に必要である。航空機の火事は、加圧されたコンパートメント及び大量の酸素の存在により、多くの付加的な危険を引き起こす。そのため、従来技術において、軽量で、あらゆる閉環境、特に、航空機の閉環境によく適した、信頼性のある、コンパクトな酸素マスクが求められている。
【0003】
既知の現在のマスクまたは保護呼吸器(「PBE」)の難点の1つは、酸素または二酸化炭素レベルが危険レベルに近づいている時を判断することが難しい、あるいは、できないことがあるということである。消火の興奮状態において、アドレナリンによって、ユーザは、眩暈を引き起こすまで、または、意識を失うまで消火活動を延長してしまい、ユーザに重大な危険をもたらすことがある。装置がまだ正しく動作しているか簡単に判断できないため、ユーザは、多くの場合、時期尚早にマスクを取り外し、再び消火に使えることができるにも関わらず交換してしまうことがある。ユーザが酸素及び二酸化炭素を監視することができる信頼性のある方法があれば、PBEを安全に機能的に使用することができ、ユーザは最長持続時間、装置を装着することができるだろう。
【0004】
この難点を考慮して、FCC乗務員PBE規則(TSO−C116a)の新しいバージョンでは、「装置を動作させる、または、動作を停止することができないという不具合は、ユーザがすぐにわかるようにしなければならない。これは、聴覚的及び/または視覚的警告によって成されなければならず、この警告は、ガス供給が使い果たされてしまった際も起動されなければならない」と義務付けている。本発明は、適切な動作をより明白に、認識可能にすることにより、TSO−C116aのこの箇所に対応することで、この問題に対処する。
【0005】
シュヴィヒテンバーグ等による米国特許第5,613,488号は、酸素の利用可能水準を達成することを追求し、酸素の消費を最適化することを目指す化学的酸素生成呼吸装置を開示している。しかし、シュヴィヒテンバーグの装置は、複雑で、高価であり、酸素だけを扱うものであり、他の気体は扱うものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、航空機での使用に特に適した安全な呼吸装置に適用可能であり、ユーザに最低限の15分間、酸素源を供給し、装置の操作性を示す簡単な指標を提供する。本発明は、客室火災の消火の緊急事態の際に航空機乗務員によって使用可能であり、ユーザに約15分間、酸素を供給する。本発明は、さらに、ユーザにPBEの動作状態を保証する指標を提供する。本発明は、酸素及び/または二酸化炭素レベルの指標を備える薄膜を採用する。この指標薄膜は、乗務員のPBEの内部に搭載または取り付けられる。指標により、ユーザは、酸素及び/または二酸化炭素レベルを即時に視覚的に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の好適な実施形態の後部立面斜視図ある。
【
図2】通常動作における、
図1の実施形態の空気の流れを示すために切り取られた側面図である。
【
図3】反応状態(左)における酸素レベルを示す視覚的指標、及び、その後、紫外線にさらされた後の、非反応(リセット)状態(右)における酸素レベルを示す視覚的指標の例である。
【
図4a】マスク内部の酸素レベルの変動するレベルを示す視覚的指標の例である。
【
図4b】マスク内部の二酸化炭素レベルの変動するレベルを示す視覚的指標の例である。
【
図6】バイザーに配置された、本発明の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の保護呼吸器またはPBEを
図1及び
図2に一般的に示す。フード20は、人間の頭部15に合うような大きさを有し、頭部15が中に滑り込み、呼吸室30にガスまたは煙が入ることを防ぐために密閉状態を作る膜25を備える。ユーザの頭部15の後ろには、以下に詳細に記載する酸素生成システム40がある。口鼻マウスピース45は、酸素が、一方向吸気弁55に入ることを可能にするとともに、ユーザから吐き出された二酸化炭素が呼気ダクト50を介して酸素生成システム40に戻ることを可能にする。酸素は、化学反応により生成され、一般的に、吸気ダクト60を介して、酸素生成システム40からマウスピース45または呼吸室30に運ばれる。
【0009】
動作中、ユーザは、口鼻マウスピース45に息を吐き出す。呼気は、呼気ダクト50を通って超酸化カリウム(KO
2)を含むキャニスタ62に入る。吐き出された二酸化炭素及び水蒸気は、吸収され、代替の酸素が、以下の反応によって放出される。
【0010】
酸素生成:2KO
2+H
2O → 2KOH+1.5O
2
2KO
2+CO
2 → K
2CO
3+1.5O
2
二酸化炭素除去:2KOH+CO
2 → K
2CO
3+H
2O
KOH+CO
2 → KHCO
3
再生された酸素ガスは、吸気ダクト60を通り、フード20のメインコンパートメントまたは呼吸室30に入る。首の密閉膜25よりも上方のフード内部容積は、呼吸室30としての機能を果たす。ユーザが吸い込むと、一方向吸気弁55によって、再生されたガスが口鼻マウスピース45に入り、これにより、ユーザの気道まで行きつく。呼吸周期は、KO
2キャニスタ62が一杯になるまで続く。
【0011】
本発明によれば、装置が動作している間、PBE内の酸素及び/または二酸化炭素レベルの状態を示す指標を、マスク20内部から見ることができる。酸素レベル及び二酸化炭素レベルを評価する技術は、従来技術において既知である。例えば、酸素指標は、米国特許出願公開第2005/037512号だけでなく、米国特許第6,325,974号及び第4,504,522号に見ることができる。二酸化炭素指標に関しては、米国特許第6,338,822号及び第5,326,531号、及び、米国特許出願公開第2003/045608A号を参照。
【0012】
感ガスインクまたは薄膜を、乗務員のPBEの内部の、ユーザに可視の周辺部内に取り付けてもよい。好適な実施形態において、PBE内部には2つの指標がある。1つ目の指標は、酸素の存在(+30%)を検出し、閾値に到達したか、または、閾値を上回った際に、色を迅速に変える。2つ目の指標は、二酸化炭素の存在(>4%)を検出し、色を別の色に素早く変える。あるいは、指標は、細片上の単語(すなわち、「酸素」や「フードを外せ」)の色を変えてもよい。指標は、このように、装置を取り外すことなく、ユーザに酸素及び/または二酸化炭素レベルを即時に判定する方法を提供する。
図3及び
図4は、本発明で用いられる視覚的指標の例を示す。
【0013】
航空機上で使用するため、本発明のPBEは、好ましくは、航空機内の指定された場所に真空密閉され、収納される。PBEは、客室火事の際に、火事と闘うために航空機乗務員によってすぐに着用可能である。本発明は、特に、毒ガス、火事及び低酸素症に関わる危険からユーザを保護するのによく適している。フード20は、ユーザの目を保護するためのバイザ180を有し、自給式酸素生成システム40により呼吸を継続するための手段を提供する。好適な実施形態において、システムは、最低限の15分間の稼働寿命を有し、使用後、廃棄される。
【0014】
PBEフード動作を以下により詳細に記載する。着用シーケンスの間、ユーザは、矢印95に示す方向に調整ストラップ90を引くことにより、塩素酸塩スタータキャンドル70を起動し、それにより、ユーザの顔に口鼻マウスピース45を固定する。スタータキャンドル70の化学反応を以下に示す。
【0015】
発熱
2NaClO
3+熱 → 2NaCl+3O
2
小さな塩素酸塩キャンドル70(スタータキャンドル)は、塩素酸ナトリウムの化学分解によって20秒内に約8リットルの酸素を生成する。このキャンドル70は、KO
2キャニスタ62の底部に取り付けられる。スタータキャンドル65は、好ましくは、口鼻マウスピースをユーザの顔に対して引き寄せるストラップ90をユーザが調整する際、締め綱80によって自動的に配備される解放ピン75を引くことによって、起動される。スタータキャンドル70のガスは、KO
2キャニスタ62の呼気が呼気ダクト50からキャニスタに入る側に排出される。スタータキャンドル70からの酸素の一部は、吸気ダクトを最初に満たすとともに、この酸素の大部分は、KO
2キャニスタ62まで行き、フード20のメインコンパートメント30を満たす。
【0016】
現在の技術の課題の1つに、PBEが起動された後に、PBEの残りの有効期間に関する指標が何もないことがある。さらに、稼働期間は、ユーザによって行われる作業負荷に依存し、呼吸数に依存する。PBEが限界点まで使用されると、CO
2レベルが上がるため、ユーザの呼吸は、より苦しくなり、さらに、続いて起こるフード20の崩壊により、少なくとも不快になり、パニック状態の恐怖を引き起こし得る。本明細書に記載する発明は、まず、ユーザに装置が期待通り動作していることを知らせ、次に、ガスレベルが問題のある状態になると、ユーザに安全な場所に退いて装置を取り外すように警告することができる。動作の不具合の指標は、新たな要件ではないが、本発明は、より正確な手段であり、ユーザに動作の現在の状態を提供し、装置が有効動作の終わりに近づいていることを前もって警告することができる。
【0017】
インテリジェントインク、スマートインクまたは診断インクは、例えば、色や発光強度の変化を示すことで、環境に反応する。温度、湿度、酸素濃度や二酸化炭素濃度などの特定の環境パラメータが監視される。基本動作原理は、使用される化合物が、一般的に、酸化還元(レドックス)メカニズムによって酸素の存在及び割合で色を変更する。これを行うのに使用される原料の範囲は、非常に広範囲であるが、簡潔に示すため、1つの特定の種類のみ以下に記載する。
【0018】
指標は、遷移金属酸化物の触媒薄膜(ナノ粒子)を有するインクを含むが、代わりに、半導体の水分散液(TiO
2)、犠牲電子供与体(トリエタノールアミン)、レドックス指示染料の水溶液(メチレンブルー)、及び、カプセル化ポリマ(ヒドロキシエチルセルロース)の4つ以上の共通成分によって形成されてもよい。TiO
2粒子は、紫外線にさらされると、電子正孔対を作る。電子は、染料を還元することで、染料が色あせ、孔がトリエタノールアミンを酸化する。ポリマーカプセル化によって、染料がプラスチック、金属、紙または他の表面にスピンコーティングされる。1つの好適な実施形態において、半導体光触媒ナノ粒子、溶剤可溶レドックス染料、温和な還元剤及びポリマを含む、溶剤型、不可逆的酸素指示インクが用いられる。
【0019】
インクは、紫外線A波にさらされると、急速に(<30秒)その色を失い、低酸素濃度大気においては無色のままであり、適切な濃度の酸素にさらされると、元の色(青)に戻る。元の色に戻るステップにおいて、色の回復速度は、酸素濃度のレベルに比例する。薄膜は、可逆的であり、紫外線活性化によって白/透明に戻ることができる。
【0020】
本発明の一部として、インクまたは薄膜は、乗務員のPBEの内部に接着された指標となるように設計される。好適な実施形態において、PBEの内部には、酸素用105に1つ、二酸化炭素用110に1つの、単一または複数の指標がある。着色された細片であるだけの指標の代わりに、細片上でテキストまたはスケール/スペクトルの色を変えてもよい。例えば、「テキスト」は、動作モードを示し、CO
2用のスケール及びO
2用のスケールを示してもよい(
図4a、
図4b参照)。スケールは、レベルが変わるにつれて生成される(すなわち、スケールの着色部分が増える、または、減る)。このように、着用者には、酸素の消費または装置の残りの容量についての情報が提供される。本発明のメリットは、ユーザに酸素供給の状態を判定するための即時の、継続的な方法を提供することである。これにより、アセンブリの酸素生成が継続的に監視されるので、PBEユーザは、装置を必要に応じてより長く着用することもできる。さらに、フードがぴったり合っていないこと、または、損傷している(漏れている)ことを即時に示すこともできる。
【0021】
KO
2キャニスタ62が使い果たされてしまうことで、活性酸素生成能力を失うとともに、内部温度が急激に上昇し、フード内に水蒸気が放出される。以前は、酸素生成能力を失うと、フード20の内部容積が徐々に減少した。フード20は、着用者の頭部15の周囲で崩壊してしまい、その結果、吸気が次第に困難になり、フード20を取り外さなければならないことを示していた。このことは、フード内部の温度の急激な上昇により、さらに示された。本発明では、フード20内のO
2及びCO
2の量が、ユーザに視覚的に示されるため、酸素生成化学物質の減少が主観的に判定されなくなる。これにより、ユーザは、フードを最大時間、安全に使用して、その後、安全な場所に退いてフードを取り外すことができる。
【0022】
本発明を、一般的な方法で説明したが、前述の記載及び含まれる図面は、限定を意図していない。当業者は、本明細書に記載された実施形態に多くの改良及び代替を想定するだろう。本発明は、このような改良及び代替を全て含むことを意図している。従って、本発明の範囲は、本明細書に添付された請求の範囲の文言によって適切に評価され、いかなる記載された実施形態または図面に示された実施形態に厳密に限定されるものではない。