(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239123
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】超臨界流体冷却ガスタービン装置
(51)【国際特許分類】
F01K 7/32 20060101AFI20171120BHJP
F02C 7/16 20060101ALI20171120BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20171120BHJP
F02C 7/141 20060101ALI20171120BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20171120BHJP
F02C 3/34 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F01K7/32
F02C7/16 Z
F02C7/18 E
F02C7/18 C
F02C7/141
F02C3/30 D
F02C3/34
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-539128(P2016-539128)
(86)(22)【出願日】2014年4月29日
(65)【公表番号】特表2017-508908(P2017-508908A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2014003547
(87)【国際公開番号】WO2015088109
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0154771
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506263491
【氏名又は名称】インダストリー−アカデミック コーペレイション ファウンデイション, ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ホ ギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン スゥ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ホ
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−501750(JP,A)
【文献】
特開2010−090816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/32
F02C 3/30
F02C 3/34
F02C 7/141
F02C 7/16
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機(100)と、圧縮機(100)から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器(200)と、燃焼器(200)から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービン(300)と、を備えたガスタービン装置において、燃焼器(200)及びタービン(300)には冷却流路(400)が設けられ、冷却流路(400)に超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器(200)及びタービン(300)を冷却する主発電ガスタービン(10)と、超臨界流体圧縮機(500)と超臨界流体タービン(600)を有し、超臨界流体圧縮機(500)の出口は、冷却流路(400)の入口に連結され、超臨
界流体タービン(600)の入口は、冷却流路(400)の出口に連結され、前記超臨界流体は、超臨界流体圧縮機(500)により圧縮され、冷却流路(400)を経て加熱され、超臨界流体タービン(600)に供給される副発電ガスタービン(20)と、を有し、
前記超臨界流体タービン(600)により前記超臨界流体圧縮機(500)を駆動して、
前記超臨界流体タービン(600)の出口に排出される前記超臨界流体は冷却され、前記超臨界流体圧縮機(500)に供給され、
前記超臨界流体は二酸化炭素であって、
前記主発電ガスタービン(10)において、燃焼ガスにより駆動されるタービン(300)から排出される排気ガスから二酸化炭素を捕集する二酸化炭素捕集部をさらに含み、前記二酸化炭素捕集部により捕集された二酸化炭素を冷却して前記副発電ガスタービン(20)の超臨界流体圧縮機(500)に供給することを特徴とする超臨界流体冷却ガスタービン装置。
【請求項2】
副発電ガスタービン(20)が、燃焼器(200)及びタービン(300)に設けられたそれぞれの冷却流路(400)毎に連結されて設けられることを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体冷却ガスタービン装置。
【請求項3】
燃焼器(200)及びタービン(300)に設けられた冷却流路(400)の入口が全て連結された結合入口部と、出口が全て連結された結合出口部に、一つの副発電ガスタービン(20)が結合されることを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体冷却ガスタービン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン装置に係り、より詳しくは、超臨界流体を冷却流体として用いるガスタービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、基本的に、圧縮機、燃焼器、タービンから構成される。ガスタービンは、圧縮機により空気を圧縮し、圧縮された空気を燃焼器に導き、燃料を噴射して燃焼させる。このとき、発生した高温・高圧のガスをタービンに吹き付け、膨張させてタービンを回転させる。通常、圧縮機とタービンは、直接または間接的に一つの軸により連結されており、圧縮機を稼働させる動力は、タービンから発生する出力の25乃至30%を用いる。したがって、ガスタービンにより発電機、プロペラ等を回転させる出力は、タービンにおいて発生する出力から、圧縮機を稼働させるのに必要な出力を差し引いたものとなる。
図1を参照すると、従来のガスタービンにおいては、高温部品(燃焼器、ベーン、ブレード、ケーシング等)の冷却のために圧縮空気が用いられるが、このとき、圧縮機100により圧縮された圧縮空気を用いている。しかしながら、圧縮された冷却流体の一部を燃焼器200及びタービン300に送り、冷却に用いることになるので、圧縮空気の全体をタービンの回転に用いるよりも、全体のガスタービンの効率を低下させるという問題が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気を圧縮する圧縮機、前記圧縮機から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器、及び前記燃焼器から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービンを備えるガスタービン装置において、前記燃焼器及びタービンには冷却流路が設けられ、前記冷却流路に、圧縮機により圧縮された圧縮空気ではなく、超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器及びタービンを冷却し、ガスタービンの効率を向上させることにある。
【0004】
本発明の他の目的は、超臨界流体圧縮機と超臨界流体タービンを有し、超臨界流体圧縮機の出口は、ガスタービン装置の冷却流路の入口に連結され、超臨界流体タービンの入口は、ガスタービン装置の冷却流路の出口に連結され、超臨界流体は、超臨界流体圧縮機により圧縮され、冷却流路を経て加熱され、超臨界流体タービンに供給され、さらに発電させることにある。
【0005】
本発明のまた他の目的は、ガスタービンにおいて、燃焼ガスとして排出される排気ガスから二酸化炭素を捕集し、超臨界流体として用いて環境問題を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気を圧縮する圧縮機(100)と、圧縮機(100)から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器(200)と、燃焼器(200)から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービン(300)と、を備えたガスタービン装置において、燃焼器(200)及びタービン(300)には冷却流路(400)が設けられ、冷却流路(400)に超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器(200)及びタービン(300)を冷却する主発電ガスタービン(10)と、超臨界流体圧縮機(500)と超臨界流体タービン(600)を有し、超臨界流体圧縮機(500)の出口は、冷却流路(400)の入口に連結され、超臨界流体タービン(600)の入口は、冷却流路(400)の出口に連結され、
冷却流路400から超臨界流体タービン600、超臨界流体圧縮機500を循環する前記超臨界流体は、超臨界流体圧縮機(500)により圧縮され、冷却流路(400)を経て加熱され、超臨界流体タービン(600)に供給される副発電ガスタービン(20)と、を有し、
前記超臨界流体タービン(600)により前記超臨界流体圧縮機(500)を駆動して、
前記超臨界流体タービン(600)の出口に排出される前記超臨界流体は冷却され、前記超臨界流体圧縮機(500)に供給され、
前記超臨界流体は二酸化炭素であって、
前記主発電ガスタービン(10)において、燃焼ガスにより駆動されるタービン(300)から排出される排気ガスから二酸化炭素を捕集する二酸化炭素捕集部をさらに含み、前記二酸化炭素捕集部により捕集された二酸化炭素を冷却して前記副発電ガスタービン(20)の超臨界流体圧縮機(500)に供給することを特徴とする
【0013】
また、副発電ガスタービン20が、燃焼器200及びタービン300に設けられたそれぞれの冷却流路400毎に連結されて設けられてもよい。
【0014】
また、燃焼器200及びタービン300に設けられた冷却流路400の入口が全て連結された結合入口部と、出口が全て連結された結合出口部に、一つの副発電ガスタービン20が結合されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、 空気を圧縮する圧縮機、前記圧縮機から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器、及び前記燃焼器から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービンを備えるガスタービン装置において、前記燃焼器及びタービンには冷却流路が設けられ、前記冷却流路に、圧縮機により圧縮された圧縮空気ではなく、超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器及びタービンを冷却し、ガスタービンの効率を向上させる。
【0016】
また、超臨界流体圧縮機と超臨界流体タービンを有し、超臨界流体圧縮機の出口は、冷却流路の入口に連結され、超臨界流体タービンの入口は、冷却流路の出口に連結され、超臨界流体は、超臨界流体圧縮機により圧縮され、冷却流路を経て加熱され、超臨界流体タービンに供給され、さらに発電できる。
【0017】
また、ガスタービンにおいて、燃焼ガスとして放出される二酸化炭素を捕集し、超臨界流体として用いて環境問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来のガスタービンにおいて、燃焼器及びタービンを冷却する方式を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例により、超臨界流体を用いて燃焼器及びタービンを冷却する方式を示す図である。
【
図3A】本発明の一実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図3B】本発明の一実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図3C】本発明の一実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図3D】本発明の一実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図3E】本発明の一実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施例により、主発電ガスタービンと副発電ガスタービンを用いた発電方式を示す図である。
【
図5】従来の方式をGE社のGatecycleプログラムを用いて得られたシミュレーション結果を示す表示画面である。
【
図6】本発明の一実施例による方式をGE社のGatecycleプログラムを用いて得られたシミュレーション結果を示す表示画面である。
【
図7】従来の方式と本発明の実施例による方式の電力及び効率を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例による構成及び作用について詳述する。
【0020】
図2は、本発明の一実施例により、超臨界流体を用いて燃焼器200及びタービン300を冷却する方式を示す図である。
図2を参照すると、本発明の一側面による超臨界流体冷却ガスタービン装置は、空気を圧縮する圧縮機100と、圧縮機100から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器200と、燃焼器200から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービン300と、を備え、燃焼器200及びタービン300には冷却流路400が設けられ、冷却流路400に超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器200及びタービン300を冷却することにより構成される。
【0021】
超臨界流体は、一定の高温と高圧の限界を超えた状態に到達し、液体か気体かを区分できない時点の流体を指すものであり、分子の密度は、液体に近いものの、粘度は低く、気体に近い性質を有する。
【0022】
通常の温度及び圧力においては気体あるいは液体となる物質も、臨界点(critical point)と呼ばれる一定の高温及び高圧の限界を超えると、蒸発過程が起こらず、気体か液体かを区別できない状態、すなわち、超臨界状態となるが、この状態の物質を超臨界流体という。このような性質を有する超臨界流体のうち、臨界温度が常温に比較的近いものが二酸化炭素であるので、本発明においては、超臨界流体の一実施形態として二酸化炭素を用いる。
【0023】
これにより、
図1に示した従来のガスタービンとは異なり、本発明の実施例においては、冷却の必要な燃焼器200及びタービン300等に冷却流路400を設置し、圧縮機100により圧縮された空気ではなく、別途の超臨界流体を用いて冷却するので、発電効率を増大できる。
【0024】
図3A乃至
図3Eは、本発明の一実施例により、主発電ガスタービン10と副発電ガスタービン20を用いた発電方式を示す図であり、
図4は、本発明の他の実施例により、主発電ガスタービン10と副発電ガスタービン20を用いた発電方式を示す図である。
図3A乃至
図3E及び
図4を参照すると、本発明の実施例においては、超臨界流体を別途の駆動流体とみなし、副発電ガスタービン20を駆動し、発電を増加させる。
【0025】
具体的な構成をみると、主発電ガスタービン10として、空気を圧縮する圧縮機100と、圧縮機100から排出された空気と燃料が燃焼される燃焼器200と、燃焼器200から排出される燃焼ガスにより駆動されるタービン300と、を有するガスタービン装置を備え、燃焼器200及びタービン300には冷却流路400が設けられ、冷却流路400に超臨界流体を冷却流体として流し、燃焼器200及びタービン300を冷却するが、主発電ガスタービン10の冷却流路は開ループ(open loop)により構成され、主発電ガスタービン10と結合する副発電ガスタービン20は、超臨界流体圧縮機500と超臨界流体タービン600を有し、超臨界流体圧縮機500の出口は、冷却流路400の入口に連結され、超臨界流体タービン600の入口は、冷却流路400の出口に連結され、前記超臨界流体は、超臨界流体圧縮機500により圧縮され、冷却流路400を経て加熱され、超臨界流体タービン600に供給され、副発電ガスタービン20を発電させる、閉ループ(closed loop)の冷却流路により構成される。
【0026】
また、超臨界流体としては二酸化炭素が用いられるが、このとき、主発電ガスタービン10において、燃焼ガスにより駆動されるタービン300から排出される二酸化炭素が超臨界流体として用いられ、これを二酸化炭素捕集部により捕集し、捕集された二酸化炭素を冷却し、副発電ガスタービン20の超臨界流体圧縮機500に供給して循環させる構成を有する。
【0027】
副発電ガスタービン20は、
図3A乃至
図3Eに示すように、燃焼器200、タービン300に個別的にB、C部分を互いに連結する方式により結合して用いられてもよく、主発電ガスタービン10において発生した排気ガスから二酸化炭素を捕集し、副発電ガスタービン20に供給する方式(Aを連結)として用いられてもよい。
【0028】
また、
図4に示すように、燃焼器200及びタービン300に設けられた冷却流路400の入口が全て連結された結合入口部と、出口が全て連結された結合出口部に、一つの副発電ガスタービン20が結合されて用いられる方式により具現することも可能である。
【0029】
また、さらに必要な熱は、ガスタービンの排ガス(flue gas)廃熱熱交換を通じて用いることができる。
【0030】
図5は、従来の方式をGE社のGatecycleプログラムを用いて得られたシミュレーション結果を示す表示画面であり、
図6は、本発明の一実施例による方式をGE社のGatecycleプログラムを用いて得られたシミュレーション結果を示す表示画面であり、
図7は、従来の方式と本発明の実施例による方式の電力及び効率を比較した図である。
【0031】
図5乃至
図7を参照して、従来のガスタービン(single gas turbine)と、本発明の実施例による主発電ガスタービン10と副発電ガスタービン20の結合ガスタービン装置の動力と効率を、GE社のGatecycleプログラムを用いて得られたシミュレーション結果により比較してみると、同一の燃料量を基準とするとき、従来のガスタービンに比べて、本発明の実施例によるガスタービン装置の出力と効率が向上したことが確認できる。
【符号の説明】
【0032】
10 主発電ガスタービン
20 副発電ガスタービン
100 圧縮機
200 燃焼器
300 タービン
400 冷却流路
500 超臨界流体圧縮機
600 超臨界流体タービン