【実施例】
【0039】
実施例に係る車体構造について図面に基づき説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側を示す。
【0040】
図1に示されるように、乗用車等の車両10の車体11はモノコックボディから成り、車両10の車幅方向の中心を通って車両前後方向へ延びる車幅中心線CLに対し、実質的に左右対称形に形成されている。該車体11は、後半部分の下部に、左右のサイドシル21,21と、左右のリヤサイドフレーム22,22と、前のクロスメンバ23と、後のクロスメンバ24とを含む。
【0041】
左右のサイドシル21,21は、車体11の前後方向中央部に且つ車幅方向両側に位置して、車体前後方向へ延びている。
【0042】
左右のリヤサイドフレーム22,22は、該左右のサイドシル21,21の後端から後上方へ延びた後に、更に後方へ略水平に延びている。つまり、左右のリヤサイドフレーム22,22は、車体11の後部の車幅方向両側に位置して、車体前後方向へ延びている。
【0043】
該左右のリヤサイドフレーム22,22は、それぞれ、車両外方から作用する車体前後方向の衝突荷重を受ける外力作用側の端部22a,22aと、該外力作用側の端部22a,22aとは反対側の端部22b,22bとを有する。該左右の反対側の端部22b,22bは、左右のサイドシル21,21に一体に接合されるので、以下、適宜「左右の基端部22b,22b」と言い換える。該左右の外力作用側の端部22a,22aは、左右の基端部22b,22bに対して反対側に位置するので、以下、適宜「左右の先端部22a,22a」と言い換える。
【0044】
前のクロスメンバ23は、左右のリヤサイドフレーム22,22の基端部22b,22b間(前端部22b,22b間)に掛け渡され且つ接合されている。後のクロスメンバ24は、前のクロスメンバ23の後方に位置して、左右のリヤサイドフレーム22,22の間に掛け渡され且つ接合されている。左右のリヤサイドフレーム22,22と、前及び後のクロスメンバ23,24とによって囲まれた空間25には、例えば図示せぬ燃料タンク及びキャニスタ、又はバッテリー(例えばハイブリッド用バッテリー)が配置される。
【0045】
左右のリヤサイドフレーム22,22の先端部22a,22aの端面22c,22cには、バンパビーム26が取り外し可能に取り付けられている。該バンパビーム26は、車幅方向に細長いビーム本体27と、該ビーム本体27を該端面22c,22cに取り付けるための左右の脚部28,28とから成る。
【0046】
以下、左のリヤサイドフレーム22を詳細に説明する。右のリヤサイドフレーム22は、左のリヤサイドフレーム22に対して、左右対象形である他には実質的に同じ構成なので、説明を省略する。
図3乃至
図5は、
図2に示される各部位毎の断面構成を表している。なお、
図3乃至
図5では、断面を示すためのハッチングを省略してある。
【0047】
図2及び
図3に示されるように、該左のリヤサイドフレーム22は、フレーム長手方向から見て、平坦な底面22dを有する多角形の閉断面に形成された、閉断面体である。
図2に示されるように、該左の底面22dは、先端部22aから基端部22bへ向かうにつれて、上方へ傾斜した傾斜面32を有する。詳しく述べると、該左のリヤサイドフレーム22の底面22dは、左の先端部22aの端面22cから基端部22bへ向かって、先端側底面31(先端側の底面31)と傾斜面32と中央側底面33(中央側の底面33)と垂下面34と基端側底面35(基端側の底面35)とに、この順に形成されている。
【0048】
該先端側底面31は、左の先端部22aの部分の略水平な面である。該傾斜面32は、該先端側底面31のなかの、端面22cとは反対側の端31aから基端部22bへ向かうにつれて上方へ傾斜した、上り斜面である。該中央側底面33は、該傾斜面32の端32a(上り斜面の上端32a)から基端部22bへ向かって延びた略水平な面であり、該先端側底面31よりも上位に位置している。該垂下面34は、該中央側底面33の端33a(傾斜面32の端32aとは反対側の端33a)から下方へ延びた面である。該基端側底面35は、該垂下面34の下端34aから基端部22bへ向かって延びた略水平な面であり、該先端側底面31よりも下位に位置している。該中央側底面33と該基端側底面35とには、サブフレーム(図示せず)がマウントされている。
【0049】
図2及び
図3に示されるように、該先端側底面31の部位での、多角形の閉断面形状は、該先端側底面31と、該先端側底面31の車幅方向両端から互いに離反しつつ上方へ延びる一対の斜面41,41と、該一対の斜面41,41の上端から上方へ略垂直に延びる一対の垂直面42,42と、該一対の垂直面42,42の上端間を渡る上面43とによって形成された、六角形である。
【0050】
図2及び
図5に示されるように、該中央側底面33の部位での、多角形の閉断面形状は、該中央側底面33と、該中央側底面33の車幅方向両端から上方へ略垂直に延びる一対の垂直面42,42と、該一対の垂直面42,42上端間を渡る上面43とによって形成された、四角形である。
【0051】
図2及び
図4に示されるように、該傾斜面32の部位での、多角形の閉断面形状は、該先端側底面31の部位での六角形から該中央側底面33の部位での四角形まで、漸次変化している。該上面43は、先端部22aの端面22cから該中央側底面33の部位まで、略水平な平面である。
【0052】
図2、
図3、
図6及び
図7に示されるように、該左のリヤサイドフレーム22は、少なくとも上下に二分割された分割体50,60、つまり、下の分割体50と上の分割体60とから成る。該分割体50,60の車幅方向の両縁51,51,62,62にそれぞれ有しているフランジ52,52,63,63同士が、上下に重なり合うとともに車体前後方向に間隔を有して複数の溶接点70を溶接される。この結果、左のリヤサイドフレーム22は閉断面に構成されている。
【0053】
より詳しく述べると、該下の分割体50は、鋼板のプレス成形品であり、該左のリヤサイドフレーム22をフレーム長手方向から見て、略U字状断面に形成されている。さらに、該下の分割体50は、開放された上端の一対の縁51,51から車幅方向の両側へ延びた、一対のフランジ52,52を有する。つまり、該下の分割体50の全体断面形状は、上を開放した、いわゆるハット状断面である。
【0054】
図2及び
図3に示されるように、該先端側底面31の部位での、該先端側底面31からフランジ52,52の上面までの高さはH1である。
図2及び
図4に示されるように、該傾斜面32の部位での、該傾斜面32からフランジ52,52の上面までの高さはH2である。
図2及び
図5に示されるように、該中央側底面33の部位での、該中央側底面33からフランジ52,52の上面までの高さはH3である。各高さ同士の関係は、H1>H2>H3である。高さH2は、該傾斜面32の傾斜に従って、高さH1からH3まで漸減する。
【0055】
図2、
図3、
図6及び
図7に示されるように、該上の分割体60は、鋼板のプレス成形品であり、該下の分割体50の上端開口のなかの、少なくとも、先端部22aから該中央側底面33の上にわたって塞ぐための、概ね平坦な閉鎖部材である。該上の分割体60は、該下の分割体50の上端開口を塞ぐ閉鎖部61と、該閉鎖部61の車幅方向の両縁62,62から車幅方向への両側へ延びた一対のフランジ63,63とから成る。該閉鎖部61には、2つのビード64,64が形成されている。該ビード64,64は、閉鎖部61の長手方向に延びることによって、該閉鎖部61の剛性を高めている。。
【0056】
図3及び
図8に示されるように、一対のフランジ52,52と一対のフランジ63,63とは、上下重ね合わされるとともに、車体前後方向に間隔を有して複数の溶接点70を溶接されている。この結果、該下の分割体50と該上の分割体60とが一体化されることによって、閉断面状の左のリヤサイドフレーム22が構成される。該各溶接点70は、例えばスポット溶接による溶接部分である。
【0057】
図1、
図2、
図6乃至
図8に示されるように、該左右のリヤサイドフレーム22,22には、それぞれ複数の脆弱部81,82,83が設けられている(右の脆弱部は図示せず)。左のリヤサイドフレーム22を上から見て、該左の複数の脆弱部81,82,83は、車体前後方向に千鳥状に配列されている。該左のリヤサイドフレーム22に設けられている複数の脆弱部81,82,83は、少なくとも、左の1つの第1脆弱部81と、左の2つの第2脆弱部82,83とからなる。該第1脆弱部81は、左のリヤサイドフレーム22の先端部22aに位置している。該2つの第2脆弱部82,83は、該左の第1脆弱部81から基端部22b側へ離れて位置している。
【0058】
詳しく述べると、該2つの第2脆弱部82,83は、リヤサイドフレーム22の前後方向(長手方向)のなかの、傾斜面32を有した範囲Asに位置している。該2つの第2脆弱部82,83の、1つを「先端寄り第2脆弱部82」といい、他の1つを「基端寄り第2脆弱部83」という。該先端寄り第2脆弱部82は、傾斜面32の前後方向のなかの、第1脆弱部81寄りの部位に位置している。該基端寄り第2脆弱部83は、該先端寄り第2脆弱部82よりも基端部22b側(より好ましくは、該傾斜面32の端32aの真上)は位置している。さらに、該基端寄り第2脆弱部83は、リヤサイドフレーム22の「上側のみ」(上部のみ)に位置している。
【0059】
該リヤサイドフレーム22は、加熱された鋼板をプレス成形することによって得られた部材である。詳しく述べると、加熱された鋼板を成形用型によってプレス成形すると同時に、冷却することによって焼き入れされた成形品、つまりリヤサイドフレーム22を得ることができる。該複数の脆弱部81,82,83は、加熱された鋼板をプレス成形をするときに、部分的に他の部分よりも冷却速度を遅くすることによって、焼き入れ硬度を小さく設定された部分である。このような成形方法の一例を、
図9を参照しつつ説明する。
【0060】
図9に示されるように、リヤサイドフレーム22(
図6参照)を成形するためのプレス成形用型90は、それぞれ金属製の、ダイ91とポンチ92とブランクホルダ93とを含む。ダイ91とポンチ92は、複数の脆弱部81,82,83(
図6参照)を設ける部位に、凹部91a,92aを有する。ダイ91の底面に形成された該凹部91aは、ポンチ92の先端面に形成された該凹部92aに向かい合っている。
【0061】
リヤサイドフレーム22(
図6参照)を成形する手順は次の通りである。先ず、鋼板Wkを所定の温度(例えば約1000℃)まで加熱して、プレス成形用型90にセットする。つまり、鋼板Wkをダイ91の保持部91bとブランクホルダ93とによって挟み込む。次に、ポンチ92によって鋼板Wkをプレス成形する。加熱された鋼板Wkは、ダイ91とポンチ92とブランクホルダ93とに接触することによって、急速に冷却される。冷却速度が速いので、焼き入れ硬度は大きい。
【0062】
しかし、加熱された鋼板Wkは、凹部91a,92aに面する部位(
図6に示される脆弱部81,82,83の位置に相当)では、ダイ91やポンチ92に接触しないので、比較的緩やかに冷却される。冷却速度が遅いので、他の部位に比べて焼き入れ硬度は小さい。つまり、該加熱された鋼板Wkのなかの、凹部91a,92aに面する部位の強度や硬度は、他の部位に比べて小さく脆弱である。これによって、脆弱部81,82,83を得ることができる。
【0063】
このように、加熱された鋼板Wkの冷却速度は、該鋼板Wkがプレス成形用型90に接触する部位と、プレス成形用型90に接触しない部位とで、相違する。該鋼板Wkのなかの、プレス成形用型90に接触しない部位の冷却速度が遅くなることにより、該冷却速度が遅い部位を、該複数の脆弱部81,82,83とすることができる。なお、本発明においては、鋼板Wkに複数の脆弱部81,82,83を設けるのに、部分的に他の部分よりも冷却速度を遅くする方法であればよく、上記以外の方法を適宜用いることができる。
【0064】
該凹部91a,92aの幅Waは、複数の脆弱部81,82,83の幅に相当する範囲Ar1(脆弱領域Ar1)の幅Wbよりも、距離Xbの2倍だけ大きく設定される(Wa=Wb+2・Xb)。該脆弱領域Ar1の熱は、該距離Xbの領域Ar2(境界領域Ar2)を通ってダイ91やポンチ92に伝わる。このため、鋼板Wkのなかの、該境界領域Ar2における冷却速度は、脆弱領域Ar1よりも速く、且つダイ91とポンチ92とに接する領域よりも遅い。従って、境界領域Ar2の焼き入れ硬度は、脆弱領域Ar1よりも大きく且つ他の部位よりも小さい、いわゆる中間硬度である。脆弱領域Ar1の周囲は、境界領域Ar2によって囲まれている。
【0065】
次に、複数の脆弱部81,82,83について、詳しく説明する。
図2、
図3、
図6及び
図7に示されるように、該左の第1脆弱部81は、該左のリヤサイドフレーム22のなかの、車幅方向外寄りに偏って位置している。該左の第1脆弱部81は、下の分割体50に設けられた下の脆弱部81aと、上の分割体60に設けられた上の脆弱部81bとから成る。
【0066】
該下の脆弱部81aは、下の分割体50のなかの、車幅方向外側のフランジ52の先端から、先端側底面31のなかの、幅方向中心線Lsよりも車幅方向内側の位置までにわたって設けられている。ここで、該幅方向中心線Lsとは、車体前後方向に細長いリヤサイドフレーム22の、幅方向の中心を通って車体上下方向へ延びる直線のことである。該下の脆弱部81aの周囲は、境界領域84aによって囲まれている。
【0067】
該上の脆弱部81bは、上の分割体60のなかの、車幅方向外側のフランジ63の先端から、リヤサイドフレーム22の幅方向中心線Lsよりも車幅方向内側の位置までにわたって設けられている。該上の脆弱部81bの周囲は、境界領域84bによって囲まれている。
【0068】
左のリヤサイドフレーム22は、左の第1脆弱部81に少なくとも1つ(例えば3つ)の左の孔101,102,103を有する。該各孔101,102,103は、丸い貫通孔であって、第1脆弱部81のなかの、車体前後方向の略中央に、全て位置している。以下、該3つの孔101,102,103のことを、適宜「第1孔101、第2孔102、第3孔103」と言い換えて、互いを区別する。
【0069】
該第1孔101と該第2孔102は、下の脆弱部81aに位置し、且つ多角形(六角形)の閉断面に形成された左のリヤサイドフレーム22のなかの多角形の角104,105に、それぞれ位置している。より詳しく述べると、該第1孔101は、下の分割体50の車幅方向外側における、斜面41と垂直面42との角104に位置している。該第2孔102は、下の分割体50の車幅方向外側における、垂直面42とフランジ52との角105(縁51)に位置している。該第3孔103は、上の脆弱部81bのなかの、左のリヤサイドフレーム22の幅方向中心線Lsの近傍に位置している。
【0070】
図2、
図4、
図6及び
図7に示されるように、該先端寄り第2脆弱部82は、該左のリヤサイドフレーム22のなかの、車幅方向内寄りに偏って位置している。該先端寄り第2脆弱部82は、下の分割体50に設けられた下の脆弱部82aと、上の分割体60に設けられた上の脆弱部82bとから成る。
【0071】
該下の脆弱部82aは、車幅方向内側のフランジ52の先端から、傾斜面32(底面22d)のなかの、幅方向中心線Lsよりも車幅方向外側の位置までにわたって設けられている。該下の脆弱部82aの周囲は、境界領域85aによって囲まれている。
【0072】
該上の脆弱部82bは、上の分割体60のなかの、車幅方向内側のフランジ63の先端から、リヤサイドフレーム22の幅方向中心線Lsよりも車幅方向外側までにわたって設けられている。該上の脆弱部82bの周囲は、境界領域85bによって囲まれている。
【0073】
図2、
図5乃至
図7に示されるように、該基端寄り第2脆弱部83は、該左のリヤサイドフレーム22のなかの、車幅方向外寄りに偏って位置している。該基端寄り第2脆弱部83は、下の分割体50に設けられた下の脆弱部83aと、上の分割体60に設けられた上の脆弱部83bとから成る。
【0074】
該下の脆弱部83aは、下の分割体50のなかの、車幅方向外側のフランジ52の先端から、垂直面42の高さ途中、例えば高さH3の1/10から1/2までの範囲までにわたって、設けられている。該下の脆弱部83aの周囲は、境界領域86aによって囲まれている。
【0075】
該上の脆弱部83bは、上の分割体60のなかの、車幅方向外側のフランジ63の先端から該フランジ63の基端までにわたって設けられている。該上の脆弱部83bの周囲は、境界領域86bによって囲まれている。
【0076】
該境界領域84a,84b,85a,85b,86a,86bは、
図9に示される境界領域Ar2に相当する。
【0077】
図8に示されるように、第1脆弱部81の幅はW1である。先端寄り第2脆弱部82の幅はW2であり、第1脆弱部81の幅W1よりも小さい。基端寄り第2脆弱部83の幅はW3であり、先端寄り第2脆弱部82の幅W2よりも小さい。該幅W1,W2,W3は、リヤサイドフレーム22の長手方向の大きさである。
【0078】
第1脆弱部81の面積A1は、各々の第2脆弱部82,83の面積A2,A3よりも大きく設定されている。詳しく述べると、第1脆弱部81の面積A1が最も大きい。先端寄り第2脆弱部82の面積A2は、第1脆弱部81の面積A1よりも小さい。基端寄り第2脆弱部83の面積A3は、先端寄り第2脆弱部82の面積A2よりも小さい。
【0079】
ここで、
図6及び
図8に示されるように、第1脆弱部81の面積A1は、下の脆弱部81aの外表面の表面積と、上の脆弱部81bの外表面の表面積との和である。同様に、先端寄り第2脆弱部82の面積A2は、下の脆弱部82aの外表面の表面積と、上の脆弱部82bの外表面の表面積との和である。基端寄り第2脆弱部83の面積A3は、下の脆弱部83aの外表面の表面積と、上の脆弱部83bの外表面の表面積との和である。
【0080】
図6及び
図8に示されるように、複数の溶接点70は、中央溶接点71と前の溶接点72と後の溶接点73とを含む。該中央溶接点71と該前後の溶接点72,73は、車幅方向外側の各フランジ52,63同士を接合している。該中央溶接点71(
図3も参照)は、複数の脆弱部81乃至83のなかの、いずれか1つの左の脆弱部81、好ましくは第1脆弱部81の、車体前後方向の中央位置又はその近傍に位置している。該前の溶接点72は、第1脆弱部81の直ぐ前に位置している。該後の溶接点73は、第1脆弱部81の直ぐ後ろに位置している。このように、該前後の溶接点72,73は、該いずれか1つの脆弱部81(第1脆弱部81)に対し、車体前後方向の両側に隣接して位置している。
【0081】
さらに、複数の溶接点70は、反対側溶接点74と反先端側溶接点75とを含む。該反対側溶接点74(
図3も参照)は、リヤサイドフレーム22を車体前後方向から見て、該中央溶接点71に対し反対側に位置しており、車幅方向の内側の各フランジ52,63同士を接合している。該反先端側溶接点75(
図5も参照)は、基端寄り第2脆弱部83の、車体前後方向の中央位置又はその近傍に位置しており、車幅方向の外側の各フランジ52,63同士を接合している。
【0082】
上記説明をまとめると、次の通りである。
図10(a)は、左のリヤサイドフレーム22の先端部22aに、車体前後方向の衝突荷重fsを受けた状態を示している。
図10(b)は、左のリヤサイドフレーム22が変形した状態を示している。
【0083】
図1及び
図10(a)に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22は、左右の第1脆弱部81と左右の第2脆弱部82,83とを有する。該左右の第1脆弱部81は、左右のリヤサイドフレーム22の外力作用側の端部22a(先端部22a)に位置している。該左右の第2脆弱部82,83は、左右の第1脆弱部81から反対側の端部22b(基端部22b)側へ離れて位置している。
【0084】
左右のリヤサイドフレーム22の基端部22bは、左右のサイドシル21に固定されている。このように、一般に、左右のリヤサイドフレーム22は、基端部22bを固定された、いわゆる片持ち梁の構成である。このため、左右のリヤサイドフレーム22の先端部22aに、車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、基端部22bの曲げモーメントは、先端部22aの曲げモーメントよりも大きい。この結果、基端部22bは、先端部22aよりも小さい荷重によって変形し得る。
【0085】
これに対し、本実施例では、
図8に示されるように、左右の第1脆弱部81の面積A1が、左右の第2脆弱部82,83の面積A2,A3よりも大きい。このため、先端部22a側の左右の第1脆弱部81は、該左右の第1脆弱部81から基端部22b側へ寄って位置している左右の第2脆弱部82,83よりも脆弱である。このように、左右のリヤサイドフレーム22は、基端部22bから先端部22aまでの長さを考慮して、基端部22bから先端部22aへ離れるにつれて脆弱に構成、いわゆる平等強さの梁となるように、構成されている。このため、
図10(a)に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22の先端部22aに、車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、
図10(b)に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22が全体にわたって、ほぼ同時に(実質的に同時に)変形することができる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0086】
しかも、左右の第1脆弱部81と左右の第2脆弱部82,83とは、加熱された鋼板をプレス成形をするときに、部分的に他の部分よりも冷却速度を遅くすることによって、硬度を小さく設定された部分である。このため、左右のリヤサイドフレーム22の材料(例えば材質や板厚)を部位によって替える必要はなく、また、該左右のリヤサイドフレーム22を部分的に補強部材によって補強する必要はない。従って、該左右のリヤサイドフレーム22を構成する部材の数量を抑制することができ、該左右のリヤサイドフレーム22のコストダウンを図ることができるとともに、車体重量を抑制することができる。
【0087】
さらには、
図10(a)に示されるように左右のリヤサイドフレーム22を上から見て、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83は、車体前後方向に千鳥状に配列されている。このように、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83は、異なる面積に設定(予め調整)されているだけではなく、さらに千鳥状に配列されている。つまり、左右のリヤサイドフレーム22に折れ曲がり変形のパターンが施されている。このため、左右のリヤサイドフレーム22の先端部22aに、車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、左右のリヤサイドフレーム22は、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83に沿って、複数箇所で車幅方向へ互い違いに、ほぼ同時に折れ曲がり可能である。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、より一層効果的に衝突エネルギーを吸収して、車室の空間を確保することができる。
【0088】
さらには、
図2に示されるように、閉断面に形成されている左右のリヤサイドフレーム22の底面22dは、外力作用側の端部22aから反対側の端部22b(基端部22b)へ向かうにつれて、上方へ傾斜している。つまり、該底面22dは傾斜面32を有する。このため、左右のリヤサイドフレーム22において、基端部22bの上下方向の曲げ剛性は、先端部22aの上下方向の曲げ剛性よりも小さい。しかも、左右のリヤサイドフレーム22の先端部22aに、車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、基端部22bの曲げモーメントは、先端部22aの曲げモーメントよりも大きい。この結果、基端部22bは、先端部よりも小さい荷重によって変形し得る。
【0089】
これに対し、左右の基端寄り第2脆弱部83は、左右のリヤサイドフレーム22のなかの傾斜面32(傾斜した底面32)の上に、且つ、左右のリヤサイドフレーム22の、「上側のみ」に位置している。
【0090】
例えば、基端部22bの上下方向の曲げ強さと、先端部22aの上下方向の曲げ強さとが極力均等になるように、左右の基端寄り第2脆弱部83の面積A3を、左右の第1脆弱部81の面積A1に対し、大幅に小さくすることができる。
【0091】
このため、該左右のリヤサイドフレーム22は、該傾斜した底面32を有した構成にもかかわらず、先端部22aに車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときには、該左右のリヤサイドフレーム22の全体にわたって、ほぼ同時に変形することができる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0092】
さらには、
図2及び
図3に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22は、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83のなかの、いずれか左右1つずつの脆弱部81に、それぞれ左右の第1孔101と左右の第2孔102とを有する。該左右の孔101,102は、該孔101,102をそれぞれ有している脆弱部81の、車体前後方向の略中央に位置している。このため、該孔101,102を有している脆弱部81は、車体前後方向の中央位置が最も脆弱であり、衝突荷重fsに対して変形する起点(トリガ起点)と、なり得る。左右のリヤサイドフレーム22の先端部22aに車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、該中央位置を起点として所望の折れ曲がり変形のパターンで変形させることが可能となる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを一層効果的に吸収することができる。
【0093】
さらには、
図2及び
図3に示されるように、該孔101,102は、左右の第1脆弱部81に、それぞれ設けられていることに特徴を有する。上述のように、左右の第1脆弱部81は、左右の第2脆弱部82,83よりも大面積である。このため、衝突荷重fsによって変形する起点(トリガ起点)の位置が、左右の第1脆弱部81のなかのどこになるか、明確でない。
【0094】
これに対し、本実施例では、該孔101,102は、左右の第1脆弱部81の、車体前後方向の略中央に位置している。左右の第1脆弱部81のなかの、車体前後方向の中央位置が最も脆弱となり、衝突荷重fsに対して変形する起点、つまりトリガ起点となり得る。このため、先端部22aに対する衝突荷重fsの作用方向いかんにかかわらず、該中央位置を起点として所望の折れ曲がり変形のパターンで変形させることが可能となる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを一層効果的に吸収することができる。
【0095】
さらには、
図2及び
図3に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22は、多角形の閉断面に形成されている。多角形のなかの、角の部分104,105(稜線の部分104,105)は、斜面41や垂直面42(面の部分41,42)よりも高剛性であり、衝突荷重fsを受けたときに応力が集中しやすい。
【0096】
これに対し、該多角形の角104,105に孔101,102が設けられている。このため、多角形の閉断面状の左右のリヤサイドフレーム22であっても、左右の脆弱部81のなかの、該角104,105の部分を脆弱にすることができる。該左右の孔101,102の位置を該中央位置を起点として、所望の折れ曲がり変形のパターンで変形させることが可能となる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを一層効果的に吸収することができる。
【0097】
さらには、
図8に示されるように、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83のなかの、いずれかの左右の脆弱部81と、左右のリヤサイドフレーム22を構成するために必要な複数の溶接点70との、位置関係に特徴を有する。
【0098】
一般に、
図6に示されるように、左右のリヤサイドフレーム22は、それぞれ少なくとも上下に二分割された分割体50,60から成る。該分割体50,60は、車幅方向の縁51,62に、それぞれフランジ52,63を有している。該各フランジ52,63同士は、上下に重なり合うとともに、車体前後方向に間隔を有して複数の溶接点70(
図8参照)を溶接されている。従って、該左右のリヤサイドフレーム22,22は、閉断面に構成されている(
図3参照)。
【0099】
これに対し、本実施例では、
図10(a)に示されるように、該複数の溶接点70は、左右それぞれ複数の脆弱部81,82,83のなかの、いずれかの左右の脆弱部81(特定の脆弱部81)の、車体前後方向の中央位置又はその近傍に位置する中央溶接点71と、該特定の脆弱部81に対し、車体前後方向の両側に隣接して位置する前後の溶接点72,73とを含む。
【0100】
左右のリヤサイドフレーム22は、先端部22aに車体前後方向の衝突荷重fsを受けたときに、該特定の脆弱部81の中央位置を起点として折れ曲がり変形し得る。上述のように、該各フランジ52,63(
図3参照)同士は、該特定の脆弱部81の部位における中央溶接点71を溶接されている。このため、該特定の脆弱部81の部位において、該各フランジ52,63同士は該衝突荷重によって分離しにくい。左右のリヤサイドフレーム22は、該特定の脆弱部81の部位における閉断面状態を、維持しやすい。従って、該特定の脆弱部81の中央位置を、折れ曲がりのトリガ起点とすることができる。
【0101】
しかも、上述のように、該各フランジ52,63同士は、該特定の脆弱部81の部位に対し、車体前後方向の両側に隣接して位置する前後の溶接点72,73も溶接されている。該各フランジ52,63のなかの、該前後の溶接点72,73の部位は、該特定の脆弱部81の部位よりも硬度が大きい(強度が大きい)。つまり、該各フランジ52,63同士は、該特定の脆弱部81の部位を挟んで、車体前後方向の両側の大きい強度の部位を溶接されている。このため、該特定の脆弱部81の部位に対し、車体前後方向の両側においても、該各フランジ52,63同士は該衝突荷重fsによって分離しにくい。左右のリヤサイドフレーム22は、該特定の脆弱部81の部位に対し、車体前後方向の両側に隣接した部位(一般部位)においても、閉断面状態を維持しやすい。
【0102】
このように、該各フランジ52,63同士は、該特定の脆弱部81の部位と、その車体前後方向の両側の部位とを、中央溶接点71及び前後の溶接点72,73によって、十分に一体化されている。このため、該特定の脆弱部81の中央位置から折れ曲がりを開始させて、最適な折れ曲がり変形のパターンで変形させることが可能となる。従って、左右のリヤサイドフレーム22によって、衝突エネルギーを一層効果的に吸収することができる。
【0103】
なお、本発明では、車体11に設けられている左右のサイドフレームは、車体後部に位置する左右のリヤサイドフレーム22,22に限定されるものではなく、車体前部に位置する左右のフロントサイドフレームを含む。