特許第6239146号(P6239146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239146ラテックス塗料用のオープンタイム延長剤としてのオキサゾリン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239146
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ラテックス塗料用のオープンタイム延長剤としてのオキサゾリン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20171120BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20171120BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D5/02
   C09D7/12
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-559527(P2016-559527)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公表番号】特表2017-512868(P2017-512868A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015023062
(87)【国際公開番号】WO2015153354
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】951/DEL/2014
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252611
【氏名又は名称】アンガス ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ピーラ アスガル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビデ シュレヤス
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−111931(JP,A)
【文献】 特開昭51−151683(JP,A)
【文献】 特開昭52−078785(JP,A)
【文献】 米国特許第04391932(US,A)
【文献】 米国特許第03025252(US,A)
【文献】 米国特許第06391380(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含み、ラテックス塗料である、水性塗装組成物:
前記水性塗装組成物全体の重量に基づいて、0.1〜10wt%の式(I)の化合物であって、
式中、Rが、C〜C20ヒドロカルビル基であり、R及びRが独立して、C〜C10アルキルまたはHO(CHCHO)CHであり、式中、xが、0〜5の整数を表す、化合物;
30〜60wt%の水;
固形分換算で15〜40wt%のアクリル結合剤;及び
15〜35wt%の不透明無機顔料。
【請求項2】
式(I)の前記化合物が、前記水性塗装組成物全体の重量に基づいて、0.1〜5wt%の量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項3】
が、C〜C20脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項1または2に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項4】
が、アルキル基またはアルケニル基であり、任意で、該アルキル基またはアルケニル基が、C15〜C17アルキル基またはアルケニル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項5】
前記アルケニル基が、1〜3つの炭素−炭素二重結合を含み、任意で、該アルケニル基が、シス炭素−炭素二重結合を含む、請求項4に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項6】
及びRが独立して、C〜CアルキルまたはHO(CHCHO)CHであり、式中、xが、0〜5の整数を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項7】
及びRが独立して、C〜CアルキルまたはHO(CHCHO)CHであり、式中、xが、0〜5の整数を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項8】
xが、0〜3である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項9】
xが、0または1である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項10】
xが、0である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項11】
式(I)の前記化合物が、
から成る群から選択される、請求項1または2に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項12】
前記組成物が、式(I)の化合物を2つ以上含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項13】
前記組成物が、7〜10のpHを有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項14】
18〜32wt%の不透明無機顔料を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【請求項15】
前記不透明無機顔料が二酸化チタンを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の前記水性塗装組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2014年4月1日に出願された、インド出願951/DEL/2014号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、オキサゾリン化合物を含む水性塗装組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
米国公開第2012/0165428号(特許文献1)は、ラテックス塗料用のオープンタイム延長剤として重合親水性モノマー単位を含むアクリルポリマーの使用を開示する。しかしながら、この参考文献は、本出願に記載される化合物またはオープンタイム延長剤としてのラテックス塗料におけるそれらの使用を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開第2012/0165428号
【発明の概要】
【0005】
式(I)の化合物を含む水性塗装組成物であって、
式中、Rが、C〜C20脂肪族ヒドロカルビル基であり、R及びRが独立して、C〜C10アルキルまたはHO(CHCHO)CH−であり、式中、xが、0〜5の整数を表す、水性塗装組成物。
[本発明1001]
式(I)の化合物を含む水性塗装組成物であって、
式中、R1が、C2〜C20ヒドロカルビル基であり、R2及びR3が独立して、C1〜C10アルキルまたはHO(CH2CH2O)CH2であり、式中、xが、0〜5の整数を表す、前記水性塗装組成物。
[本発明1002]
式(I)の前記化合物が、前記水性塗装組成物全体の重量に基づいて、0.1〜10wt%の量で前記組成物中に存在する、本発明1001の前記水性塗装組成物。
[本発明1003]
式(I)の前記化合物が、前記水性塗装組成物全体の重量に基づいて、0.1〜5wt%の量で前記組成物中に存在する、本発明1001または本発明1002の前記水性塗装組成物。
[本発明1004]
1が、C7〜C20脂肪族ヒドロカルビル基である、本発明1001〜1003のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1005]
1が、C11〜C19脂肪族ヒドロカルビル基である、本発明1001〜1004のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1006]
1が、アルキル基またはアルケニル基である、本発明1001〜1005のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1007]
1が、C11〜C17アルキル基またはアルケニル基である、本発明1001〜1006のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1008]
1が、C15〜C17アルキル基またはアルケニル基である、本発明1001〜1007のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1009]
前記アルケニル基が、1〜3つの炭素−炭素二重結合を含む、本発明1006〜1008のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1010]
前記アルケニル基が、シス炭素−炭素二重結合を含む、本発明1006〜1009のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1011]
2及びR3が独立して、C1〜C6アルキルまたはHO(CH2CH2O)CH2であり、式中、xが、0〜5の整数を表す、本発明1001〜1010のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1012]
2及びR3が独立して、C1〜C2アルキルまたはHO(CH2CH2O)CH2であり、式中、xが、0〜5の整数を表す、本発明1001〜1011のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1013]
xが、0〜3である、本発明1001〜1012のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1014]
xが、0または1である、本発明1001〜1013のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1015]
xが、0である、本発明1001〜1014のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1016]
式(I)の前記化合物が、
から成る群から選択される、本発明1001〜1003のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1017]
前記組成物が、式(I)の化合物を2つ以上含む、本発明1001〜1016のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1018]
ラテックス塗料である、本発明1001〜1017のいずれかの前記水性塗装組成物。
[本発明1019]
前記組成物が、30〜60wt%の水、固形分換算で15〜40wt%のアクリル結合剤、及び15〜35wt%の不透明ミネラルを更に含む、本発明1018の前記水性塗装組成物。
[本発明1020]
前記組成物が、7〜10のpHを有する、本発明1001〜1019のいずれかの前記水性塗装組成物。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
別段の規定がない限り、全ての温度は、摂氏温度(℃)であり、全ての百分率は、重量百分率(wt%)である。全ての動作は、別段の規定がない限り、室温(20〜25℃)及び標準大気圧(約101kPa)で実行される。
【0007】
ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を取り除くことによって得られる置換基である。好ましくは、ヒドロカルビル基は、非環式である。脂肪族ヒドロカルビル基の例には、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられ、アルケニル基及びアルキニル基は、1つ以上の炭素−炭素多重結合を有し得る。非環式脂肪族ヒドロカルビル基は、直鎖状または分岐状であり得る。
【0008】
好ましくは、Rは、C〜C20脂肪族ヒドロカルビル基、好ましくはC〜C20、好ましくはC〜C19、好ましくはC11〜C19、好ましくはC11〜C17、好ましくはC13〜C17、好ましくはC15〜C17である。好ましくは、Rは、アルキルまたはアルケニル、好ましくはアルケニルである。好ましくは、Rは、C〜C20アルケニル基、好ましくはC〜C19、好ましくはC11〜C17、好ましくはC13〜C17、好ましくはC15〜C17である。
【0009】
好ましくは、Rがアルケニルであるとき、それは、1〜3つ、好ましくは1つまたは2つ、好ましくは1つの炭素−炭素二重結合を有し、好ましくはその二重結合が、シス構成にある。好ましくは、R及びRは独立して、C〜CアルキルまたはHO(CHCHO)CH−、好ましくはC〜CアルキルまたはHO(CHCHO)CH−、好ましくはC〜Cアルキル、またはHO(CHCHO)CH−である。好ましくは、xが、0〜4、好ましくは0〜3、好ましくは0〜2、好ましくは0または1の整数である。好ましくは、R及びRの両方がヒドロキシメチル(HO(CHCHO)CH−であり、x=0である)である。好ましくは、R及びRの両方がメチルまたはエチルであり、好ましくはメチルである。好ましくは、Rがヒドロキシメチルであり、Rがメチルまたはエチルである。好ましくは、R及びRの両方がHO(CHCHO)CH−であり、好ましくは、xが、0〜4、好ましくは0〜3、好ましくは0〜2、好ましくは0または1である。
【0010】
式(I)の特に好ましい化合物は、例えば、以下を含む。
【0011】
上記した式において、示された炭素−炭素二重結合は、シス(Z)構成を有する。
【0012】
好ましくは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数、log Poct/wat(Moriguchiモデル)は、1〜5、好ましくは少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、好ましくは4.5以下、好ましくは4.3以下である。式(II)の化合物は、4.15のlog(Poct/wat)を有し、式(III)の化合物は、2.4のlog(Poct/wat)を有し、式(IV)の化合物は、3.13のlog(Poct/wat)を有し、式(V)の化合物は、3.93のlog(Poct/wat)を有し、式(VI)の化合物は、4.77のlog(Poct/wat)を有する。
【0013】
好ましくは、水性塗装組成物は、ラテックス塗料である。好ましくは、ラテックス塗料は、アクリル結合剤(アクリルエマルジョンポリマー)、二酸化チタン、及び/または他の顔料/不透明剤、ならびにラテックス塗料の他の典型的な成分、例えば、殺生物剤、低VOC溶剤、消泡剤、湿潤剤、及び増粘剤を含む。好ましくは、水性塗装組成物は、30〜60wt%の水(好ましくは36〜52wt%)、固形分換算で15〜40wt%のアクリル結合剤(好ましくは18〜32wt%)、及び15〜35wt%の不透明ミネラル(例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム)(好ましくは18〜32wt%)を含む。好ましくは、水性塗装組成物のpHは、7〜10、好ましくは8〜9.5である。
【0014】
好ましくは、式(I)の化合物は、水性塗装組成物全体の重量に基づいて、0.1〜10wt%、好ましくは少なくとも0.3wt%、好ましくは少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも0.7wt%、好ましくは7wt%以下、好ましくは5wt%以下、好ましくは4wt%以下、好ましくは3wt%以下、好ましくは2.5wt%以下、好ましくは2wt%以下、好ましくは1.5wt%以下の量で組成物中に存在する。式(I)の化合物2つ以上が水性塗装組成物中に存在し得る。式(I)の化合物の量は、式(I)の全化合物の合計に該当する。
【0015】
本発明は、水性塗装組成物に本明細書に記載される量で式(I)の化合物を少なくとも1つ添加することによって水性塗装組成物(好ましくは、ラテックス塗料)のオープンタイムを増大させるための方法も対象とする。これらの化合物は、開始アクリルポリマー分散物に、または顔料及び他の成分を含む最終調合塗装組成物に添加され得る。これらの化合物は、他の有機または無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、アミン等と組み合わせて添加されてもよい。これらの化合物は、例えば、油、水、グリコール、界面活性剤を含む、溶剤または担体中に分散され得る。本明細書に記載される化合物のうちの多く、特にヒドロキシ置換され、かつ/またはより長い炭化水素置換基を有する化合物が、低VOC添加剤であるという追加の利点を有すると考えられている。これらの化合物のうちの多くは、塗料に他の特性、例えば、凍結融解、中和、及び殺生物効力などを更に与え得る。
【実施例】
【0016】
実施例1
塗料の調合:以下の塗料の調合に基づく塗料サンプルを使用する。
【0017】
ALKATERGE(商標)Eの構造の概略図は、以下の通りである。
【0018】
ALKATERGE(商標)T−IVの構造の概略図は、以下の通りである。
【0019】
1.75μmの厚さの塗料ドローダウンをガラスシート上で5回行う。
【0020】
2.等置された「X」マークをドローダウン上に描く。
【0021】
3.塗料をドローダウンに対して垂直に塗布し、「X」マークを初期ドローダウンにわたってブラッシングする。
【0022】
4.垂直部分を「X」マークを作成した5、6、7、8、9、10、11、及び12分後に繰り返す。
【0023】
5.塗料のオープンタイムを「X」マークが可視になったときの経過時間と見なす。
【0024】
塗料特性:
【0025】
塗料サンプルを不透明度及び色差などの塗料特性について測定する。塗料サンプルのドローダウンを75マイクロメートルの厚さのBYK Gardener塗布器を使用して実行する。不透明度及び色差を製造元Gregtag MacbethのColor−Eye2180の分光光度計を使用して測定する。色差は、
【数1】
として計算する。
【0026】
式中、ΔL、Δa、及びΔbは、塗料サンプルと基準との間のCIE色空間L、a、b値の差である。塗料サンプルAを基準として扱う。100マイクロメートルの厚さのドローダウンを実行し、耐スクラブ性を800回のスクラブサイクル後の損失率に関して測定した。
【0027】
結果:以下の表は、異なる塗料サンプルについてXマークが可視になったときの経過時間を列記する。
【0028】
不透明度及び色差:
【0029】
耐スクラブ性:
【0030】
結論:それぞれ、ALKATERGE(商標)E及びALKATERGE(商標)T−IVを1.0wt%で含有する、塗料サンプルB及び塗料サンプルCのオープンタイムは、基準塗料(サンプルA)のオープンタイムよりも最大45%(3分)長い。この作業で測定された他の塗料特性は、同等の性能を示した。