(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239163
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】前縁インピンジメント冷却システム及び隣接壁インピンジメントシステムを備えたタービン翼冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20171120BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20171120BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D9/02 102
F02C7/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-573741(P2016-573741)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2017-527727(P2017-527727A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2014042604
(87)【国際公開番号】WO2015195086
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジャン エイチ. マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ダブリュー. マシューズ
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第7520725(US,B1)
【文献】
特表2001−521599(JP,A)
【文献】
特開2005−299638(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0222494(US,A1)
【文献】
米国特許第7857589(US,B1)
【文献】
米国特許第8382431(US,B1)
【文献】
特開昭53−90509(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0047136(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0240919(US,A1)
【文献】
ソ連国特許発明第1524591(SU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンで使用するためのタービン翼(10)であって、
全体的に細長い中空翼(28)を備え、該翼(28)は、前縁(18)と、後縁(36)と、正圧側(48)と、負圧側(50)と、第1の端部(40)と、該第1の端部(40)のほぼ反対側に位置し前記翼(28)を支持するための第2の端部(44)と、前記細長い中空翼(28)内にある少なくとも1つのキャビティ(46)により形成される内部冷却システム(14)と、を有しており、
前記内部冷却システム(14)は、前縁冷却供給通路(20)と、前記全体的に細長い中空翼(28)の前記前縁(18)に沿って該全体的に細長い中空翼(28)内に位置する前縁インピンジメント通路(16)と、を有し、
前記前縁冷却供給通路(20)は、前縁先端(24)を有する前縁壁(22)から形成され、該前縁先端(24)は、前記前縁冷却供給通路(20)の他の側面よりも、前記全体的に細長い中空翼(28)の前記前縁(18)の内面(26)のより近くに進行しており、
前記前縁インピンジメント通路(16)内で前記全体的に細長い中空翼(28)の前記前縁(18)の前記内面(26)に衝突するように冷却流体を排出するために、前記前縁冷却供給通路(20)の前記前縁先端(24)に少なくとも1つの前縁インピンジメントオリフィス(30)が設けられており、
前記前縁冷却供給通路(20)における隣接壁リブ(92)内に位置する少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィス(90)が設けられており、
前記少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィス(90)の後方及び下流に位置する少なくとも1つの隣接壁半径方向流通路(94)が設けられており、
翼弦方向に延在する第1のインピンジメントリブ(96)が、翼弦方向に延在する第2のインピンジメントリブ(98)からスパン方向で分離されており、前記翼弦方向に延在する第1のインピンジメントリブ(96)と前記翼弦方向に延在する第2のインピンジメントリブ(98)とは、前記少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィス(90)を含む隣接壁リブ(92)と、前記翼(28)の前縁(18)との間に延在している
ことを特徴とするタービン翼(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの隣接壁リブ(92)は、前記前縁冷却供給通路(20)内においてスパン方向で、該前縁冷却供給通路(20)のID端部(100)から前縁冷却供給通路(20)のOD端部(102)まで延在している、請求項1記載のタービン翼(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの隣接壁リブ(92)は、前記正圧側(48)と、前記前縁冷却供給通路(20)を形成する前記前縁壁(22)の第1の前縁区分(52)との間で延在していて、正圧側隣接壁リブ(60)を形成する、請求項1記載のタービン翼(10)。
【請求項4】
前記前縁冷却供給通路(20)における前記隣接壁リブ(92)内に位置する前記少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィス(90)は、前記正圧側隣接壁リブ(60)内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィス(90)を有している、請求項3記載のタービン翼(10)。
【請求項5】
前記翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ(96,98)は、前記翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブ(98)を有しており、該インピンジメントリブ(98)は前記正圧側隣接壁リブ(104)から翼弦方向に延在しており、前記翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ(96,98)は、前記複数の隣接壁インピンジメントオリフィス(90)の入口(106)からスパン方向でずらされている、請求項4記載のタービン翼(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの隣接壁リブ(92)は、前記負圧側(50)と、前記前縁冷却供給通路(20)を形成する前記前縁壁(22)の第2の前縁区分(54)との間で延在していて、負圧側隣接壁リブ(62)を形成する、請求項1記載のタービン翼(10)。
【請求項7】
前記前縁冷却供給通路(20)における前記隣接壁リブ(92)内に位置する前記少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィス(90)は、前記負圧側隣接壁リブ(62)内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィス(90)を有している、請求項6記載のタービン翼(10)。
【請求項8】
前記翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ(96,98)は、前記負圧側隣接壁リブ(62)から翼弦方向に延在する、翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブ(98)を含み、該翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ(96,98)は、前記複数の隣接壁インピンジメントオリフィス(90)の入口(106)からスパン方向でずらされている、請求項7記載のタービン翼(10)。
【請求項9】
前記前縁冷却供給通路(20)は、スパン方向で延在する第1の前縁壁(52)と、スパン方向で延在して、前記前縁先端(24)を形成するように前記第1の前縁壁(52)に連結される第2の前縁壁(54)と、から形成され、前記第1の前縁壁(52)は、前記第2の前縁壁(54)に対して直交しない、請求項1記載のタービン翼(10)。
【請求項10】
前記前縁冷却供給通路(20)の前記第1及び第2の前縁壁(52,54)は、正圧側区分(72)と、該正圧側区分(72)に対して直交しない負圧側区分(74)とから形成される前縁インピンジメント通路(16)の部分を画定する、請求項9記載のタービン翼(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明の開発は、米国エネルギー省、高度タービン開発プログラム、契約番号DE−FC26−05NT42644により部分的に支援されたものである。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有することがある。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般にタービン翼に関し、より詳細にはガスタービンエンジンの中空タービン翼の前縁冷却システムに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、ガスタービンエンジンは、空気を圧縮するための圧縮機と、圧縮空気を燃料と混合し混合物に点火するための燃焼器と、出力を発生するためのタービンブレードアセンブリとを有する。燃焼器はしばしば、華氏2500度を超過し得る高温で作動する。典型的なタービン燃焼器構成は、タービンブレードアセンブリをこのような高温に曝す。従って、タービンブレードは、このような高温に耐え得る材料から製造されなければならない。付加的に、タービンブレードはしばしば、ブレードの耐用寿命を拡大し、過度に高い温度の結果として生じる故障の可能性を減じるために冷却システムを含んでいる。
【0004】
典型的にはタービンブレードは、一方の端部におけるプラットフォームを有する根元部分と、根元部分に連結されたプラットフォームから外側に向かって延在するブレードを形成する延在部分とから形成される。ブレードは通常、根元部分と反対側の先端と、前縁と、後縁とから成っている。殆どのタービンブレードの内面は通常、冷却システムを形成する冷却通路の入り組んだラビリンスを有している。ブレード内の冷却通路は、タービンエンジンの圧縮機からの空気を受容し、その空気をブレードに通過させる。冷却通路はしばしば、タービンブレードの全ての側面を比較的一様な温度に維持するように設計された多重流路を有している。しかしながら、遠心力と境界層の空気流はしばしば、タービンブレードのいくつかの領域が十分に冷却されるのを妨げ、その結果、局所的な高温スポットが形成される。局所的な高温スポットは、その位置に依存して、タービンブレードの使用可能な耐用期間を減じる恐れがあり、タービンブレードがその交換が必要になるほど損傷される恐れがある。ベーンにも同様に、タービンベーンの使用可能な耐用期間を短縮させる恐れのある局所的な高温スポットが形成される。通常、タービン翼の前縁は、シャワーヘッドを形成する複数のフィルム冷却孔を含む。フィルム冷却孔のシャワーヘッドは前縁を冷却するが、従来のシャワーヘッド構造はしばしば効果的ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
タービンエンジンで使用可能なタービン翼が開示されており、このタービン翼は内部冷却システムを有していて、内部冷却システムは、前縁フィルム冷却シャワーヘッドなしに、タービン翼の前縁の冷却を向上するための前縁インピンジメント通路を備えている。内部冷却システムは、前縁壁から形成される前縁冷却供給通路を備えていてよく、前縁壁は前縁先端を有していて、この前縁先端は、前縁冷却供給通路の他の側面よりも、全体的に細長い中空翼の前縁の内面のより近くに進行している。前縁冷却供給通路は、前縁インピンジメント通路内で翼の前縁の内面に衝突するように冷却流体を方向付ける1つ以上の前縁インピンジメントオリフィスを備えていてよい。内部冷却システムは、外壁の付加的な冷却を提供するために、前縁冷却供給通路内に、インピンジメントオリフィスを有する1つ以上の隣接壁リブをさらに備えていてよい。
【0006】
少なくとも1つの実施形態では、タービン翼は、タービンブレード又はベーンであってよい。タービン翼は全体的に細長い中空翼から形成されていてよく、この翼は、前縁と、後縁と、正圧側と、負圧側と、第1の端部における先端と、第1の端部のほぼ反対側に位置する第2の端部で翼に連結されている、翼を支持し翼をディスクに連結するための根元部と、細長い中空翼内にある少なくとも1つのキャビティにより形成される内部冷却システムと、を有している。内部冷却システムは、前縁冷却供給通路と、全体的に細長い中空翼の前縁に沿って全体的に細長い中空翼内に位置する前縁インピンジメント通路とを備えていてよい。前縁冷却供給通路は、前縁壁から形成されていてよく、この前縁壁は前縁先端を有していて、この前縁先端は、前縁冷却供給通路の他の側面よりも、全体的に細長い中空翼の前縁の内面のより近くに進行している。このような位置で、前縁冷却供給通路は、前縁を冷却するために前縁の内面に対してインピンジメント流体を送ることができる。内部冷却システムは、前縁インピンジメント通路内で全体的に細長い中空翼の前縁の内面に衝突するように冷却流体を排出するために、前縁冷却供給通路の前縁先端に1つ以上の前縁インピンジメントオリフィスをさらに備えていてよい。前縁冷却供給通路の前縁先端における前縁インピンジメントオリフィスは、前縁インピンジメントオリフィスのスパン方向に延在する1つ以上の列内に整列する複数の前縁インピンジメントオリフィスから形成されてよい。
【0007】
内部冷却システムは、前縁冷却供給通路内の隣接壁リブ内に位置する1つ以上の隣接壁インピンジメントオリフィスと、該少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィスの後方かつ下流に位置する1つ以上の隣接壁半径方向流通路とをさらに備えていてよい。内部冷却システムは、翼弦方向に延在する第1のインピンジメントリブをさらに備えていてよく、この第1のインピンジメントリブは、翼弦方向に延在する第2のインピンジメントリブからスパン方向で分離されており、翼弦方向に延在する第1のインピンジメントリブと翼弦方向に延在する第2のインピンジメントリブとは、少なくとも1つの隣接壁インピンジメントオリフィスを含む隣接壁リブと、翼の前縁との間に延在していてよい。
【0008】
隣接壁リブは、前縁冷却供給通路内においてスパン方向で、前縁冷却供給通路のID端部から前縁冷却供給通路のOD端部まで延在していてよい。少なくとも1つの実施形態では、隣接壁リブは、正圧側と、前縁冷却供給通路を形成する前縁壁の第1の前縁区分との間で延在していてよく、正圧側隣接壁リブを形成してよい。前縁冷却供給通路における隣接壁リブ内に位置する隣接壁インピンジメントオリフィスは、正圧側隣接壁リブ内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィスにより形成されてよい。同様に、翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブは、翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブから形成されていてよく、これらのリブは正圧側隣接壁リブから翼弦方向に延在している。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブは、複数の隣接壁インピンジメントオリフィスの入口からスパン方向でずらされていてよい。隣接壁リブは、負圧側と、前縁冷却供給通路を形成する前縁壁の第2の前縁区分との間で延在していてよく、負圧側隣接壁リブを形成してよい。前縁冷却供給通路における隣接壁リブ内に位置する隣接壁インピンジメントオリフィスは、負圧側隣接壁リブ内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィスを備えていてよい。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブは、翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブを備えていてよく、これらのリブは負圧側隣接壁リブから翼弦方向に延在している。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブは、複数の隣接壁インピンジメントオリフィスの入口からスパン方向でずらされていてよい。
【0009】
前縁冷却供給通路は、スパン方向で延在する第1の前縁壁と、スパン方向で延在して、前縁先端を形成するように第1の前縁壁に連結される第2の前縁壁とから形成されてよく、第1の前縁壁は、第2の前縁壁に対して直交しない。前縁冷却供給通路の第1及び第2の前縁壁は、正圧側区分と、正圧側区分に対して直交しない負圧側区分とから形成される前縁インピンジメント通路の部分を画定してよい。少なくとも1つの実施形態では、前縁インピンジメント通路の正圧側区分と負圧側区分とは、横断面C字形の前縁インピンジメント通路を形成してよい。さらに、第1の前縁壁は、全体的に細長い中空翼の正圧側を形成する外壁に整列していてよく、第2の前縁壁は、全体的に細長い中空翼の負圧側を形成する外壁に整列していてよい。前縁冷却供給通路は、スパン方向で延在する第1の後縁壁と、スパン方向で延在して、後縁先端を形成するように第1の後縁壁に連結される第2の後縁壁とから形成されてよく、第1の後縁壁は、第2の後縁壁に対して直交しない。
【0010】
前縁冷却供給通路は、全体的に細長い中空翼の正圧側を形成する外壁と、負圧側を形成する外壁とからずらされていてよい。特に前縁冷却供給通路は、全体的に細長い中空翼の正圧側を形成する外壁と、前縁冷却供給通路の第1の前縁壁との間に延在する正圧側リブによって支持されていてよく、かつ、全体的に細長い中空翼の負圧側を形成する外壁と、前縁冷却供給通路の第2の前縁壁と、の間に延在する負圧側リブによって支持されていてよい。
【0011】
前縁インピンジメントオリフィスを有する前縁冷却供給通路の利点により、多くの従来のシステムのような翼の前縁におけるフィルム冷却なしに、より高い熱伝達増加率をもった向上された隣接壁インピンジメントが提供される。
【0012】
前縁冷却供給通路の別の利点は、前縁冷却供給通路により、前縁における隣接壁インピンジメントに供給するための中間通路が提供されることにある。
【0013】
前縁冷却供給通路のさらに別の利点は、前縁冷却供給通路と前縁との間の距離を減じることができることにより、翼の内部側面の設計における柔軟性が向上することであり、従って、追加したい内部通路のために翼内でリブを幅広にすることができる。
【0014】
内部冷却システムのさらに別の利点は、インピンジメント列と、隣接壁インピンジメントオリフィスと、外壁に沿ったインピンジメント通路の縁部に向かう流れを引き出す隣接壁半径方向流通路とを組み合わせることにより、良好な冷却分布が達成されることにある。
【0015】
内部冷却システムの別の利点は、内部冷却システムにより、より高度の背面側対流冷却が行われることである。
【0016】
内部冷却システムのさらに別の利点は、フィルム冷却の必要がなく、従ってシャワーヘッド穴は全て取り除かれていることにある。
【0017】
内部冷却システムの別の利点は、前縁シャワーヘッドが設けられていないので、タービン翼が、熱バリヤコーティング破砕に対してより高い抵抗を有していることにある。
【0018】
内部冷却システムのさらに別の利点は、内部冷却システムが、向上した構成部品冷却効率を有していることである。
【0019】
内部冷却システムの別の利点は、良好な分布及び低温側熱伝達係数のより高い値により、フィルム冷却の必要性が減じられ、背面冷却が改善されたことにより、内部冷却システムの冷却流体流が減じられることにある。
【0020】
内部冷却システムのさらに別の利点は、隣接壁インピンジメントオリフィスが、正圧側又は負圧側又はその両方を形成する外壁の内面に衝突させるように流体を方向付けるべく角度付けられていてよく、これにより、内部冷却システムの冷却能力が向上することである。
【0021】
本発明のさらなる利点は、内部冷却システムが、インピンジメントの2つのサブシステム、即ち、前縁インピンジメントオリフィスと隣接壁インピンジメントオリフィスとを有していてよいことにある。
【0022】
これらの実施の形態及びその他の実施の形態を以下により詳細に説明する。
【0023】
本明細書に組み込まれ明細書の一部を成す添付の図面は、本発明の実施形態を示しており、詳細な説明と共に本発明の原理を開示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による特徴を備えたタービン翼を示す斜視図である。
【
図2】
図1の2−2線に沿って切断した
図1のタービン翼の断面図である。
【
図3】
図2のタービン翼内の内部冷却システムを示す概略図である。
【
図4】
図2の4−4線で示した前縁インピンジメント通路と前縁冷却供給通路の詳細を示す図である。
【
図5】
図4の5−5線に沿って切断した
図1の前縁インピンジメント通路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜
図5に示すように、タービンエンジンで使用可能なタービン翼10が開示されており、このタービン翼10は内部冷却システム14を有していて、内部冷却システム14は、前縁フィルム冷却シャワーヘッドなしに、タービン翼10の前縁18の冷却を向上するための前縁インピンジメント通路16を備えている。内部冷却システム14は、前縁壁22から形成される前縁冷却供給通路20を備えていてよい。この前縁壁22は前縁先端24を有していて、この前縁先端24は、前縁冷却供給通路20の他の側面よりも、全体的に細長い中空翼28の前縁18の内面26のより近くに進行している。前縁冷却供給通路20は、前縁冷却供給通路20内で翼28の前縁18の内面26に衝突するように冷却流体を方向付ける1つ以上の前縁インピンジメントオリフィス30を備えていてよい。内部冷却システム14は、外壁56,58の付加的な冷却を提供するために、前縁冷却供給通路20内に、インピンジメントオリフィス90を有する1つ以上の隣接壁リブ92をさらに備えていてよい。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、
図1に示すように、タービン翼10は、タービンブレード又はベーンであってよい。タービン翼10は全体的に細長い中空翼28から形成されていてよく、この翼36は、前縁18と、後縁36と、正圧側(pressure side)48と、負圧側(suction side)50と、第1の端部40における先端38と、第1の端部40のほぼ反対側に位置する第2の端部44で翼10に連結されている、翼10を支持し翼10をディスクに連結するための根元部42と、細長い中空翼28内にある少なくとも1つのキャビティ46により形成される冷却システム14と、を有している。内部冷却システム14は、
図2〜
図4に示すように、前縁冷却供給通路20と、全体的に細長い中空翼28の前縁18に沿って全体的に細長い中空翼28内に位置する前縁インピンジメント通路16と、を備えていてよい。前縁冷却供給通路20は、前縁先端24を有する前縁壁22から形成されてよく、前縁先端24は、前縁冷却供給通路20の他の側面よりも、全体的に細長い中空翼28の前縁18の内面26のより近くに進行している。
【0027】
前縁冷却供給通路20は、スパン方向に延在する第1の前縁壁52と、スパン方向に延在して、前縁先端24を形成するように第1の前縁壁52に連結される第2の前縁壁54と、から形成されてよい。第1の前縁壁52は第2の前縁壁54に対して直交しなくてよい。少なくとも1つの実施形態では、
図2及び
図4に示すように、第1の前縁壁52は、全体的に細長い中空翼28の正圧側48を形成する外壁56に整列していてよい。第2の前縁壁54は、全体的に細長い中空翼28の負圧側50を形成する外壁58に整列していてよい。前縁冷却供給通路20は、全体的に細長い中空翼28の正圧側48を形成する外壁56と、負圧側50を形成する外壁58とからずらされていてよい。前縁冷却供給通路20は、全体的に細長い中空翼28の正圧側48を形成する外壁56と、前縁冷却供給通路20の第1の前縁壁52と、の間に延在する正圧側リブ60によって支持されていてよい。前縁冷却供給通路20はさらに、全体的に細長い中空翼28の負圧側50を形成する外壁58と、前縁冷却供給通路20の第2の前縁壁54と、の間に延在する負圧側リブ62によって支持されていてよい。前縁冷却供給通路20はさらに、スパン方向に延在する第1の後縁壁80と、スパン方向に延在し後縁先端84を形成するように第1の後縁壁に連結される第2の後縁壁82と、から形成されてよい。第1の後縁壁80は第2の後縁壁82に対して直交しなくてよい。
【0028】
内部冷却システム14は、前縁インピンジメント通路16内で全体的に細長い中空翼28の前縁18の内面26に衝突するように冷却流体を排出するために、前縁冷却供給通路20の前縁先端24に1つ以上の前縁インピンジメントオリフィス30を備えていてよい。少なくとも1つの実施形態では、内部冷却システム14は、前縁インピンジメントオリフィス30のスパン方向に延在する列内に整列する複数の前縁インピンジメントオリフィス30を備えていてよい。少なくとも1つの実施形態では、スパン方向に延在する複数の前縁インピンジメントオリフィス30の列があってもよく、即ち、淀み線66においてスパン方向に延在する第1の列64と、淀み線66の正圧側48におけるスパン方向に延在する第2の列68と、淀み線66の負圧側50におけるスパン方向に延在する第3の列70とがあるが、これに限定されるものではない。前縁インピンジメントオリフィス30は、任意の適切なサイズの開口、横断面積及び形状を有していてよい。
【0029】
前縁冷却供給通路20の第1及び第2の前縁壁52,54は、正圧側区分72と、正圧側区分72に対して直交しない負圧側区分74とから形成される前縁インピンジメント通路16の部分を画定してよい。前縁インピンジメント通路16の正圧側区分72と負圧側区分74とは、横断面C字形の前縁インピンジメント通路16を形成してよい。
【0030】
内部冷却システム14は、前縁インピンジメントオリフィス30を備えていてよいが、翼10の前縁18から冷却流体を排出しなくてよい。むしろ、冷却流体は、前縁インピンジメント通路16の半径方向内側又は外側の端部40,44から排出されてよい。この構造は、先端38又はその他の場所の近傍における顕著な直交流を発生させ、前縁インピンジメントオリフィス30の効果を減じる場合がある。しかしながら、前縁インピンジメントオリフィス30を収容する前縁先端24と、翼10の前縁18の内面26との間の距離を減じることにより、従来の構成に対する不都合な影響が低減される。
【0031】
図4及び
図5に示すように、内部冷却システム14は、前縁冷却供給通路20における隣接壁リブ92内に位置する1つ以上の隣接壁インピンジメントオリフィス90を備えていてよい。内部冷却システム14は、隣接壁リブ92の後方に1つ以上の隣接壁半径方向流通路94をさらに有していてよい。この隣接壁半径方向流通路94は、インピンジメント冷却流体が隣接壁インピンジメントオリフィス90を流過した後、この流体を受け取る。隣接壁半径方向流通路94は、正圧側隣接壁半径方向流通路114と、負圧側隣接壁半径方向流通路116とを備えていてよい。正圧側隣接壁半径方向流通路114及び負圧側隣接壁半径方向流通路116は、翼10からの冷却流体を方向付けて、この冷却流体を内部冷却システム14から排出する。
【0032】
隣接壁リブ92は、前縁冷却供給通路20内においてスパン方向で、前縁冷却供給通路20のID端部100から前縁冷却供給通路20のOD端部102まで延在していてよい。隣接壁リブ92は、正圧側48と、前縁冷却供給通路20を形成する前縁壁の第1の前縁区分52との間で延在していてよく、正圧側隣接壁リブ104を形成する。少なくとも1つの実施形態では、内部冷却システム14は、正圧側隣接壁リブ104内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィス90を備えていてよい。
【0033】
内部冷却システム14は、翼弦方向に延在する第1のインピンジメントリブ96をさらに備えていてよく、このインピンジメントリブ96は、翼弦方向に延在する第2のインピンジメントリブ98とはスパン方向で分離されている。少なくとも1つの実施形態では、内部冷却システム14は、翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブ96,98を備えていてよく、これらのリブ96,98は正圧側隣接壁リブ104から翼弦方向に延在している。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98は、隣接壁インピンジメントオリフィス90の入口106からスパン方向でずらされていてよい。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98は、隣接壁リブ92から前縁18に向かって延在していてよい。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98は直交流を減じ、翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98の間に形成される通路118内へと冷却流体を方向付け、隣接壁インピンジメントオリフィス90へと向ける。
【0034】
隣接壁インピンジメントオリフィス90は、隣接壁インピンジメントオリフィス90から出たインピンジメント流体が、正圧側48を形成する外壁56の内面26に、又は負圧側50を形成する外壁58の内面26に、又はこれら両方に接触するように方向付けられて位置していてよい。隣接壁インピンジメントオリフィス90は、隣接壁インピンジメントオリフィス90の長手方向軸線が、正圧側48を形成する外壁56の内面26に、又は負圧側50を形成する外壁58の内面26に交差するように角度付けられていてよい。
【0035】
1つ以上の隣接壁リブ92は、負圧側50と、前縁冷却供給通路20を形成する前縁壁の第2の前縁区分54との間で延在していてよく、負圧側隣接壁リブ108を形成してよい。少なくとも1つの実施形態では、内部冷却システム14は、負圧側隣接壁リブ108内に位置する複数の隣接壁インピンジメントオリフィス90を備えていてよい。内部冷却システム14は、翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のインピンジメントリブ96,98をさらに備えていてよく、これらのリブ96,98は負圧側隣接壁リブ108から翼弦方向に延在している。翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98は、複数の隣接壁インピンジメントオリフィス90の入口106からスパン方向でずらされていてよい。
【0036】
使用中、冷却流体、即ち、これに限定するものではないが例えば空気が、内部冷却システム14に供給されてよい。この冷却流体は、前縁冷却供給通路20に入り、スパン方向で、前縁冷却供給通路20を貫流してよい。冷却流体は、前縁インピンジメントオリフィス30を貫流することができ、前縁18の内面26に衝突してよい。冷却流体は、対流によって温度を上昇させてよく、正圧側48及び負圧側50を形成する内面に沿って流れてよい。翼弦方向に延在する複数の第1及び第2のリブ96,98は、直交流を減じることができ、インピンジメント流体を隣接壁リブ92の隣接壁インピンジメントオリフィス90に向けて方向付けることができる。冷却流体は、前縁インピンジメント通路16と翼弦方向に延在する第1及び第2のインピンジメントリブ96,98によって形成される通路118とから、隣接壁リブ92における隣接壁インピンジメントオリフィス90を通って排出されてよい。冷却流体は、正圧側48の外壁56の内面26、及び負圧側50の外壁58の内面26に衝突する。冷却流体は、隣接壁リブ92の後方で、前縁インピンジメント通路16の半径方向流通路94内でスパン方向に流れる。
【0037】
上記説明は、本発明の実施形態を例示、説明及び記述する目的で提供されている。これらの実施の形態に対する変更及び適応は、当業者に明らかになるであろうし、本発明の範囲又は思想から逸脱することなく成し得るものである。