(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239176
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
H01Q7/06
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-84534(P2017-84534)
(22)【出願日】2017年4月21日
【審査請求日】2017年4月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591149089
【氏名又は名称】株式会社MARUWA
(72)【発明者】
【氏名】天野 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久倫
【審査官】
橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−059035(JP,A)
【文献】
特開2013−098927(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/020728(WO,A1)
【文献】
特開2000−049526(JP,A)
【文献】
特開2005−130211(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/036139(WO,A1)
【文献】
特開2014−120996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を上面に実装する基板に底面を介して載置される、柱状の磁性体製のコアと、前記コアの表面に直接設けられたアンテナパターンとを備え、
前記コアには、電子部品を収納すべく、前記底面側のみに開放された凹部が設けられ、前記アンテナパターンは、その始端と終端とをともに前記コアの底面に有し、前記アンテナパターンが1周以上巻かれており、前記アンテナパターンの途中に、前記コアの底面において前記始端より内側方向に迂回する迂回路を有していることを特徴とするチップアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナパターンが、前記コアの上面から側面を通り底面に渡って設けられている請求項1に記載のチップアンテナ。
【請求項3】
前記迂回路が、前記コアの底面に直接設けられ、前記底面において前記始端を前記コアの内側方向に平面的に迂回している請求項1に記載のチップアンテナ
【請求項4】
前記アンテナパターンのうち、前記コアの上面に設けられる部分は、前記上面を縦横それぞれで3等分した9等分のうち、中心部を除いた部分にのみ設けられている請求項1に記載のチップアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナパターンが、0.3〜0.7mmの幅を有する請求項1に記載のチップアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナパターンは、前記コアの上面において隣接するパターン同士で0.1〜0.4mmの間隔にて設けられている請求項1に記載のチップアンテナ。
【請求項7】
基板と、前記基板の上面に載置された電子部品と、前記基板の上面に底面を介して載置された磁性体製のコアと、前記コアの表面に直接設けられたアンテナパターンとを備え、
前記コアには、前記底面側のみに開放された凹部が設けられ、前記凹部に前記電子部品を収納しており、前記アンテナパターンは、その始端と終端とをともに前記コアの底面に有し、前記アンテナパターンが1周以上巻かれており、前記アンテナパターンの途中に、前記コアの底面において前記始端より内側方向に迂回する迂回路を有していることを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項8】
前記アンテナパターンが、前記コアの上面から側面を通り底面に渡って設けられている請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記迂回路が、前記コアの底面に直接設けられ、前記底面において前記始端を前記コアの内側方向に平面的に迂回している請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記迂回路が、前記基板に設けられている請求項7の記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記アンテナパターンのうち、前記コアの上面に設けられる部分は、前記上面を縦横それぞれで3等分した9等分のうち、中心部を除いた部分にのみ設けられている請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記アンテナパターンの太さが0.3〜0.7mmである請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
前記アンテナパターンの、隣接するパターン同士の間隔が、0.1〜0.4mmである請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
前記基板が、その側端面から所定長さのスリットを有する請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
前記基板と前記コアとの間に隙間を有する請求項7に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波を送受信するアンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
IC付タグ等のIC機能付き製品の普及にともない、NFCのチップアンテナ、アンテナモジュールが多々開発されている。
【0003】
特に、携帯電話、パソコン等の分野においては、製品の小型化・薄型化にともない、NFC用アンテナ・アンテナモジュールの小型化・薄型化が望まれている。
【0004】
このような要望に対し、本発明者らは特許文献1に示す、電子部品を内包できる
図10に示すような開口41を有するコア42を用意し、それに
図11に示すように導線43を巻きつけてなるチップアンテナ44及びそれを基板45に載置して電子部品46を内包したアンテナモジュール47を発明・出願した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−59035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、導線をコアに巻きつけるため、アンテナを設置できる設置面積に対して、その導線の太さの分だけコアの水平断面での面積(以下、「水平断面積」という。)の占有率が減ってしまい、高特性のアンテナを得ることができないという問題があった。また、導線が側面方向にむき出しになっていると、実装する際、特に実装用の機械を使用する際、摘む部分がないので、非磁性体・非導体等の電波に干渉しない材質のケース(図示なし)で導線を保護し、摘む部分を確保する必要があった。そのため、ケースの分、コアの水平断面積が更に減少する。また、アンテナを受信側として用いる場合、外部電源なしで用いることも多いため、少しでも無駄なく電波を拾って電気信号に変換する必要があり、導線表面の厚さ数μmの絶縁コーティングや角付近の浮き、水平方向に二重・三重に巻いた場合の外側の導線とコアとのわずかな隙間、水平方向の二重・三重に加えて縦方向に二段・三段に積み重ねて巻いた場合の上段外側の導線とコアとの隙間、導線(ワイヤ導線)の巻乱れ等によって生じるロスさえもなくしたいという要望があった。特に、ワイヤ導線の巻乱れは、ワイヤ導線の位置が固定されずに性能のバラつきを発生させる原因にもなる。
【0007】
したがって、本発明は、設置面積に対する磁性体の水平断面積を増やし、磁性体の体積を増やすことによりアンテナ性能を向上させ(第一の目的)、導線と磁性体とを可能な限り密着させることにより、導線によるロスをなくしてさらにアンテナ性能を向上させること(第二の目的)を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記二つの目的を達成すべく、本発明者らが鋭意開発を行った結果、以下のような構造とすることによって達成できることが分かった。
【0009】
すなわち、電子部品を上面に実装する基板に底面を介して載置される、柱状の磁性体製のコアと、前記コアの表面に直接設けられたアンテナパターンとを備え、前記コアには、電子部品を収納すべく、前記底面側のみに開放された凹部が設けられていることを特徴とするチップアンテナとすることにより、設置面積に対する磁性体の水平断面積を増やし、磁性体の体積を増やすことができ、アンテナ性能を高めることができる。
【0010】
さらに、前記アンテナパターンが、前記コアの上面から側面を通り底面に渡って設けられているチップアンテナとすることにより、アンテナの設置面積を最大限有効に使用できる。
【0011】
さらに、前記アンテナパターンは、その始端と終端とをともに前記コアの底面に有するチップアンテナとすることにより、アンテナパターンを基板に直接固定できる。なお、本発明において、「始端」は、アンテナパターンのうち内周側の端部を意味し、「終端」は、アンテナパターンのうち外周側の端部を意味する。
【0012】
さらに、前記アンテナパターンが1周以上巻かれており、前記コアの底面において前記始端より内側方向に迂回する迂回路を有することにより、始端を引き出すためにアンテナパターン同士を立体的に交差させるための絶縁体が不要になる。
【0013】
前記迂回路が、前記コアの底面に直接設けられ、前記底面において前記始端を前記コアの内側方向に平面的に迂回しているチップアンテナとすることにより、チップアンテナの製造上の煩雑さがなくなる。
【0014】
さらに、前記アンテナパターンのうち、前記コアの上面に設けられる部分は、前記上面を縦横それぞれで3等分した9等分のうち、中心部を除いた部分にのみ設けられているチップアンテナとすることにより、アンテナの性能を効率的に高めることができる。
【0015】
さらに、前記アンテナパターンの太さが0.3〜0.7mmとすることにより、巻き数とL値を調整しやすくなる。
【0016】
さらに、前記アンテナパターンの、隣接するパターン同士の間隔が、0.1〜0.4mmとすることにより、アンテナパターンを中心付近に近づけないようにすることができる。
【0017】
また、本発明者らは、基板と、前記基板の上面に載置された電子部品と、前記基板の上面に底面を介して載置された磁性体製のコアと、前記コアの表面に直接設けられたアンテナパターンとを備え、前記コアには、前記底面側のみに開放された凹部が設けられ、前記凹部に前記電子部品を収納していることを特徴とするアンテナモジュールとすることにより、ノイズに強いアンテナモジュールが得られることを見出した。
【0018】
前記アンテナパターンが、前記コアの上面から側面を通り底面に渡って設けられているアンテナモジュールとすることよりアンテナの設置面積を最大限有効に使用できる。
【0019】
さらに、前記アンテナパターンの始端と終端とが、前記コアの底面に設けられているアンテナモジュールとすることにより、アンテナパターンを基板に直接固定できる。
【0020】
さらに、前記アンテナパターンが1周以上巻かれており、前記コアの底面において前記始端より内側方向に迂回する迂回路を有するアンテナモジュールとすることにより、アンテナパターン同士がショートしない。
【0021】
さらに、前記迂回路が、前記コアの底面に直接設けられ、前記底面において前記始端を前記コアの内側方向に平面的に迂回しているアンテナモジュールとすることにより、アンテナパターン同士を始端及び終端を引き出すためにアンテナパターンに絶縁処理を施して立体的に交差させる必要がなくなる。
【0022】
さらに、前記迂回路が、前記基板に設けられているアンテナモジュールとすることにより、コアの上面のアンテナパターンの周回数を増やしても、迂回路を作成することができる。
【0023】
さらに、前記アンテナパターンのうち、前記コアの上面に設けられる部分は、前記上面を縦横それぞれで3等分した9等分のうち、中心部を除いた部分にのみ設けられているアンテナモジュールとすることにより、アンテナの性能を効率的に高めることができる。
【0024】
さらに、前記アンテナパターンの太さが0.3〜0.7mmとすることにより、巻き数とL値を調整しやすくなる。
【0025】
さらに、前記アンテナパターンの、隣接するパターン同士の間隔が、0.1〜0.4mmとすることにより、アンテナパターンを中心付近に近づけないようにすることができる。
【0026】
さらに、前記基板が、その側端面から所定長さのスリットを有するアンテナモジュールとすることにより、取り付ける製品が熱や外力等で変形しても、アンテナモジュールが壊れにくくなる。
【0027】
さらに、前記基板と前記コアとの間に隙間を有するアンテナモジュールとすることにより、基板とコアとをはんだ付けしたとき及びアンテナモジュールを製品にはんだ付けしたとき、コア内部の空気の熱膨張による変形や破損を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、設置面積を変えることなく、磁性体の体積を増やし、さらに導線と磁性体とを可能な限り密着させたことにより、アンテナ及びそれを用いたアンテナモジュールの性能を向上させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に用いる磁性体製コアを示す底面側からの斜視図。
【
図2】本発明に係るチップアンテナを示す上面側からの斜視図。
【
図3】本発明に係るチップアンテナを示す底面側からの斜視図。
【
図5】本発明に用いる基板の別の実施形態を示す斜視図。
【
図6】本発明に係るアンテナモジュールの組立斜視図。
【
図7】本発明に係るアンテナモジュールを示す斜視図。
【
図8】本発明に用いるチップアンテナの別の実施形態を示す底面側からの斜視図。
【
図9】本発明に用いる基板の別の実施形態を示す斜視図。
【
図10】従来のアンテナモジュール用コアを示す底面側斜視図。
【
図11】従来のアンテナモジュールを示す組立斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、公的な形状寸法を説明するうえでの概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0031】
本発明に係るチップアンテナ・アンテナモジュールの製造工程は、コアを製造する「コア製造工程」、コアにアンテナパターンを設けチップアンテナを得る「パターン製造工程」、チップアンテナを載せる基板を準備する「基板準備工程」、チップアンテナと基板とを合体させてアンテナモジュールにする「モジュール組立工程」に分かれる。
【0032】
「コア製造工程」
まず、フェライト(Ni−Zn、Mn−Zn)、鉄粉、圧粉、Ni−Zn系、Mn−Zn系等の磁性体粉をプレス成型して焼成し、
図1に示すコア1を得る。コア1は、底面2に凹部3を有する。凹部3は、一体成型して焼成すると手間が省けるので好ましいが、磁性体を略直方体に焼成した後に凹部3をくり抜いたり、複数のパーツを製造して一体化させたりしてもよい。凹部3が底面にのみ解放されていることによって、コアの上面及び側面の磁界が均等になり、全ての方向に対して均等に信号の送受信を行うことが可能になる。凹部3は、後述する電子部品を収納するための必要十分な大きさであることが好ましい。凹部3を平面方向に広くしすぎると、底面のアンテナパターンが形成できなくなり、また、後述の基板接続部の面積が小さくなって基板への接着強度が低下する。凹部3を深くしすぎると、磁性体の量が少なくなり、アンテナの性能が低下する。なお、「略直方体」は、直方体から、角や辺にC面をつけて面取りをする、Rをつけて丸める等の軽微な形状変更を含むものとする。
【0033】
「パターン製造工程」
次に、
図2、
図3に示すように、得られたコア1の表面に直接、アンテナパターン4と基板接続部5とを設ける。コア1の上面6に導体金属、特に好ましくは、Ag、Ag+Pd、Ag+Pt、Au、Cu等の金属ペーストを、アンテナパターン4aの形状に印刷し、乾燥させる。アンテナパターン4aは、その端部7a、7b、7c、7dが、側面8との境界となる辺9上にまで設けられる。上面6に印刷するアンテナパターン4aは、ループアンテナの一部であり、必要となるアンテナの性能に応じて、周回数を決定するが、1周以上とするのが好ましく、特に後述する迂回路をコア1の底面2に設けることを考慮すると、2〜5周とするのが好ましい。
【0034】
このアンテナパターン4aは、上面を縦横それぞれ3等分で9分割したとき、中央部分に入らないようにするのが好ましい。アンテナパターン4aが中央部分に入ると、本発明のチップアンテナ又はアンテナモジュールを搭載する基板や製品(最終製品)を製造する際、吸着式の組立機械(マウンター)で部品を吸着したとき、アンテナパターン4aを傷つけて特性が変化したり断線して使用できなくなってしまうおそれがある。また、アンテナパターン4aを中央部分にまで印刷しても、中心軸に近すぎるため、ほとんどL値の向上に関与しない。そのため、中央部分を避けるのが好ましい。また、アンテナパターン4aの太さを0.3〜0.7mm、パターン同士の間隔を0.1〜0.4mmにすると、上記中央部分に印刷しなくてもL値を向上できるため好ましい。
【0035】
その後、側面のアンテナパターン4bを、前記端部7a、7b、7c、7dから、底面2との境界となる辺10上の端部7e、7f、7g、7hまで印刷し、乾燥させる。更にその後、底面2に、基板接続部5と底面のアンテナパターン4cとを印刷し、乾燥させる。基板接続部は、底面2の四隅それぞれに設ける。アンテナパターン4cは、前記端部7e、7f、7g、7hから延びており、端部7eはアンテナパターン4の終端11に、端部7gは始端12のパターンとつながっており、端部fと端部hとは、始端12を底面2において平面的に迂回して接続され、迂回路13を形成する。平面的な迂回路13とすることによって、アンテナパターンの始端12、迂回路13を含むループ、終端11の全部が、直接磁性体の表面に設けられることとなる。3面とも印刷と乾燥を行った後、焼成してコア1の表面に定着させると、チップアンテナ14が得られる。なお、本発明中、アンテナパターンは外周側の端部を終端、内周側の端部を始端として解釈する。
【0036】
「基板準備工程」
次に、チップアンテナ14を搭載するための、
図4に示す基板21を用意する。基板21(21a)は、平面視でコアよりも大きい。基板21は、その上面に、電子部品22を搭載するための部品用電極(図示なし)と、チップアンテナ固定用のコア接続部と、アンテナパターンの始端12と終端11とにそれぞれ接続するための始端接続部23、終端接続部24を有している。また、裏面及び側面には、(図示しないが)製品に搭載する際に使用する、信号用電極、電源用電極、グランド用電極、固定用のダミー電極等が、用途に応じて適宜設けられる。電子部品22を搭載する場所は、基板21の中央付近の、コア1の凹部3に対応している。また、始端接続部23と終端接続部24は、チップアンテナ14の底面に設けられた始端12と終端11に対応した位置にそれぞれ設けられている。コア接続部25は、チップアンテナ14の底面に設けられた基板接続部に対応した位置に設けられる。また、基板21は、
図5に示すように、その側端面26から所定長さのスリット27を有している基板21bを用いると、後述のモジュール組立工程や、基板21bを製品にはんだ付けする際、はんだ付けの熱による基板の変形によって基板21bが破損しなくなるため好ましい。
【0037】
「モジュール組立工程」
基板21の始端接続部23、終端接続部24、コア接続部25にクリームはんだ(図示しない)を載せ、それらにチップアンテナ14の始端12、終端11、基板接続部5をそれぞれ対応させて、
図6に示すように、電子部品22に蓋を被せるようにして載置し、加熱してクリームはんだを融かしてはんだ付けを行う。このとき、コア接続部25と基板接続部5とが融けたはんだの表面張力によって自動的に位置調整されるため、大きなズレは生じない。以上により、
図7に示すアンテナモジュール28が得られる。
【0038】
得られたアンテナモジュール28は、設置面積に対して最大限、磁性体製のコアを大きくしたこと及び磁性体製のコア1の表面に直接アンテナパターン4が設けられていることにより、受信した電波を効率よく信号に変換及び/又は送信すべくアンテナモジュール28に送られた信号を効率よく電波に変換することができるという、優れた効果を発揮する。また、磁性体製のコア1の内部に電子部品22を有するため、電子部品22が発するノイズをコア1が吸収し、特にアンテナモジュール28を発信側に用いた場合、電子部品22が発するノイズが、アンテナモジュール28の外部に漏れ出さなくなるという、優れた効果を発揮する。
【0039】
さらに、本発明のチップアンテナ又はアンテナモジュールを、アンテナ機能を必要とする製品(最終製品)に使用する際の特徴について説明する。本発明に係るチップアンテナは、その凹部に電子部品を収納できるため、本発明のアンテナモジュールに用いる基板を介さずに、最終製品の基板上に搭載された電子部品を覆うようにして搭載することができる。また、アンテナモジュールは、その内部に電子部品を収納している。そのため、通常は信号処理用の電子部品とアンテナとを別々に搭載し、その分スペースが必要となっていたが、本発明では部品を一体化したことにより、最終製品におけるアンテナの特性を落とすことなく、省スペース化することが可能になる。
【0040】
また、本チップアンテナ及びアンテナモジュールは、磁性体製のコアが単体で所定の剛性を有するため、フェライトシートのように小さな力では壊れない。そのため、チップアンテナ又はアンテナモジュールを最終製品に設置する際、ケースや筐体側にアンテナの設置面を確保したり、所定の強度を持たせたりする等の特別な設計を施す必要がなくなり、最終製品及びその外形の設計を自由に行うことができるため、アンテナの性能を維持しつつ、チップアンテナ・アンテナモジュールだけでなく最終製品をも小型化・薄型化することができる。
【0041】
本発明のチップアンテナ及びアンテナモジュールの特徴について、さらに説明する。アンテナに生じる誘導起電力Vすなわち、受信した電波によって発生する電圧は、磁性体の水平断面積Sと磁束Φとの積、V=S×Φによって定められ、また、VとL値とは比例関係にある。従来のように導線をコアに巻きつけてアンテナを形成すると、その導線の分、コアの水平断面積を減らして巻きつけるスペースを確保する必要があったため、誘導起電力が低くなる。すなわち、電波から効率よく電気信号に変換できていないことになる。しかし、本発明では、コアの上面にアンテナパターンを直接印刷して設けるため、上述のスペースが不要になり、設置面積に対する磁性体の水平断面積を増やすことができる。これにより、磁性体の体積・設置面積に対する水平断面積が大きくなるため、L値を向上させることができる。
【0042】
また、ビオ・サバールの法則によると、磁束密度Bは距離に反比例し、遠くなるほど小さくなる。そして、上述の磁束Φは、磁束密度Bと磁性体の水平断面積Sとの積、Φ=B×Sによって定められる。従来の導線とコアでは、導線の導体とコアとの間に厚さ数μmの絶縁コーティングが存在したり、角付近で浮いたりして導体部分と磁性体との間に距離ができてしまうため、磁束密度は小さくなっていた。しかし、本発明ではコアに直接印刷を行うため、導体部分と磁性体との距離は0となり全く生じない。磁束密度が最大になる部分で磁性体と接するため、チップアンテナ・アンテナモジュールを送信側として用いた場合、信号を効率よく磁束・電波へと変換することができる。
【0043】
以上、本発明の詳細について、実施例を示しながら説明してきたが、ここで示したのは本発明の具体的な実施形態であり、その技術思想を踏まえた上で、発明の効果を著しく損なわない程度において、前記実施形態の一部を変更して実施することが可能であることが理解されるべきである。例えば、(1)アンテナパターンをペーストの印刷ではなく、蒸着やスパッタリングの後にエッチングして目的のパターンを作製することができる。(2)アンテナパターンのループ周回数を整数でなく、2.5周、3.25周等のように小数に調整し、始端とは別の辺から底面側に延ばして基板と接続する。(3)コアと基板の形状を、平面視で円形とすることができる。(4)コアに設けるアンテナの周回数を多くし、
図8に示すように、コア1の底面2に迂回路用端部30だけを設けておき、
図9に示すように、対応する基板21dに基板側迂回路31と基板側迂回路端部32とを作成する。迂回路端部30と基板側迂回路端部32とをはんだ付けして、アンテナパターンを完成させる。このとき、基板側迂回路31は、基板21dの表面に露出させずに、基板内部に設けておいてもよい。また、迂回路と基板側迂回路とを、両方とも設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によると、NFCアンテナ、フェリカアンテナなどの近距離無線通信の分野に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:コア
2:底面
3:凹部
4、4a、4b、4c:アンテナパターン
5:基板接続部
6:上面
7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h:端部
8:側面
9:辺
10:辺
11:終端
12:始端
13:迂回路
14:チップアンテナ
21、21a、21b、21d:基板
22:電子部品
23:始端接続部
24:終端接続部
25:コア接続部
26:側端面
27:スリット
28:アンテナモジュール
30:迂回路用端部
31:基板側迂回路
32:基板側迂回路端部
41:開口
42:コア
43:導線
44:チップアンテナ
45:基板
46:電子部品
47:アンテナモジュール
【要約】
【課題】省スペースでありながら、設置面積に対して磁性体の体積を最大限増やしたチップアンテナ及びアンテナモジュールを得る。
【解決手段】底面にのみ凹部を有する磁性体製のコアを用意し、その表面に直接アンテナパターンを設け、チップアンテナを得る。アンテナパターンの始端と終端はともに底面に設けられ、アンテナパターンの途中は、始端を平面的に迂回する。このチップアンテナを、上面に電子部品が載置されている基板の上に、該電子部品に蓋をするように被せ、チップアンテナの底面を介して基板の上面に載置することにより、アンテナモジュールを得る。
【選択図】
図6