特許第6239201号(P6239201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239201
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】内視鏡及び洗浄消毒装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20171120BHJP
   A61B 1/12 20060101ALI20171120BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61B1/00 631
   A61B1/12 510
   G02B23/24 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-530780(P2017-530780)
(86)(22)【出願日】2017年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2017011951
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-172970(P2016-172970)
(32)【優先日】2016年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】津丸 雅代
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−210836(JP,A)
【文献】 特開2006−042996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
A61B 13/00−18/18
A61N 4/00−7/02
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材の表面に対して少なくとも一部が外部に露呈するように配置された、第1の接着剤にて形成された接着剤層と、
上記外装部材における上記接着剤層に覆われる部分に配置されており、上記接着剤層の劣化に伴って少なくとも一部が外部に露呈される、上記第1の接着剤とは色彩が異なる第2の接着剤によって形成された他の接着剤層からなる表示部と、
を具備することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
上記表示部の色彩は、上記外装部材の色彩とは異なることを特徴とする、請求項1に記載された内視鏡。
【請求項3】
上記表示部は、文字もしくは記号が上記第2の接着剤によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載された内視鏡。
【請求項4】
請求項1に記載の内視鏡を洗浄する洗浄消毒装置であって、
上記内視鏡に設けられた上記表示部を読み取る読取部が設けられたことを特徴とする洗浄消毒装置。
【請求項5】
上記読取部は、上記表示部の文字、あるいは、記号を光学的に読み取ってその状態を検出することを特徴とする、請求項4に記載された洗浄消毒装置。
【請求項6】
上記読取部は、上記表示部の色彩を読み取ってその状態を検出することを特徴とする、請求項4に記載された洗浄消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装側に接着固定部を有する内視鏡、及びこの内視鏡の洗浄消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療分野及び工業用分野等において利用されている。内視鏡の挿入部の先端部には観察窓、照明窓が設けられている。観察窓、照明窓は、先端部を構成する先端カバーの予め定めた部位に接着剤を塗布した接着固定部を設けて固設されている。
【0003】
また、内視鏡においては、挿入部に湾曲部を設けたものがある。湾曲部の最外層を構成する湾曲ゴムは、先端部を構成する先端硬質部材の予め定めた部位、および、可撓管部の先端側に設けられた連結管の予め定めた部位に例えば糸巻接着部を設けて固定されている。
【0004】
医療分野に用いられる内視鏡は、観察、診断、治療等に使用された後、洗浄消毒される。洗浄消毒としては、オートクレーブ滅菌、消毒液による滅菌等がある。上述した接着部は、オートクレーブ滅菌の高圧高温水蒸気に晒される、あるいは、消毒液に浸漬される、ことによって劣化していく。
【0005】
日本国特開平11−056746号公報には、内視鏡が致命的な劣化状況に陥る前にユーザへ告知することによって、内視鏡が破壊されてしまうのを防止できる内視鏡装置が示されている。この内視鏡装置においては、洗浄、消毒、あるいは滅菌手段に内視鏡がかけられた例数をチェックすることで、水漏れ等の致命的な故障が生じる前に修理を行なうことが可能となり内視鏡の寿命を延ばせる。
しかしながら、日本国特開平11−056746号公報の内視鏡装置のように内視鏡を洗浄、消毒、あるいは滅菌装置にかけた例数を基準にした場合、薬剤の種類など滅菌条件が異なることによって劣化するまでの例数が変化する。このため、ユーザからは、接着部が劣化して修理する状態が近づいていることを判定可能な内視鏡が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、接着剤層の劣化状況の判断が容易で修理に出すか否かの判定を的確に行える内視鏡及び洗浄消毒装置を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の内視鏡は、外装部材の表面に対して少なくとも一部が外部に露呈するように配置された、第1の接着剤にて形成された接着剤層と、上記外装部材における上記接着剤層に覆われる部分に配置されており、上記接着剤層の劣化に伴って少なくとも一部が外部に露呈される、上記第1の接着剤とは色彩が異なる第2の接着剤によって形成された他の接着剤層からなる表示部と、を具備している。
また、本発明の一態様の洗浄消毒装置は、上記内視鏡を洗浄する洗浄消毒装置であって、上記内視鏡に設けられた上記表示部を読み取る読取部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】内視鏡を説明する図
図2A】挿入部の先端部の先端面を主に説明する図
図2B図2Aの矢印Y2B−Y2B線断面図であって、観察窓を先端カバーに固設する接着固定部を説明する図
図3A】湾曲ゴムを備える挿入部を説明する図
図3B図3Aの矢印Y3Bに示す部分の拡大図であって、糸巻接着固定部を説明する図
図4A】ユニバーサルコードの端部に有する内視鏡コネクタに設けられた接着剤層を説明する図
図4B】接着剤層によって覆い隠される表示部である文字部を説明する図
図5A】内視鏡コネクタに設けられたインジケータとしての判定用着色部を説明する図
図5B】湾曲ゴムの糸巻接着固定部に隣設された判定用着色部を説明する図
図6】内視鏡を洗浄する洗浄消毒装置を説明する図
図7】内視鏡が設置された内視鏡保持網を洗浄槽内に配置した状態を説明する図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の説明に用いる各図において、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものもある。また、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
図1に示すように内視鏡1は、挿入部2と、操作部3と、ユニバーサルコード4と、を備えて主に構成されている。挿入部2は、細長で可撓性を有する。操作部3は、挿入部2の基端側に連設されており、把持部を兼用する。ユニバーサルコード4は、操作部3の側部から延出されている。ユニバーサルコード4は、その端部に光源装置(不図示)に着脱自在に接続される内視鏡コネクタ5を備えている。
【0011】
挿入部2は、先端側から順に先端部6と、湾曲自在な湾曲部7と、可撓性を有する柔軟な可撓管部8と、を連接している。操作部3には湾曲操作レバー9、10、リモートスイッチ11等が設けられている。リモートスイッチ11は、例えばフリーズ、レリーズなどの画像制御指示を行うためのスイッチ等である。湾曲部7は、湾曲操作レバー9、10の回動操作に伴って湾曲する。
【0012】
操作部3には、送気送水ボタン12、吸引ボタン13、処置具挿入口金14が設けられている。処置具挿入口金14には鉗子栓(不図示)が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0013】
図2Aに示すように先端部6には先端カバー部材20が設けられている。先端カバー部材20は、絶縁性を有する樹脂製であって外装を構成する外装部材である。先端カバー部材20には観察窓21、例えば3つの照明窓22、処置具導出具を兼ねる吸引開口23、ノズル24、前方送水口25等が設けられている。
【0014】
本実施形態において、観察窓21は、接着固定部30によって先端カバー部材20に固定されている。本実施形態において、接着固定部30は、接着剤の劣化を判定する判定機能を有し、固定部と判定部とを兼用している。
【0015】
図2Bに示すように先端カバー部材20には観察窓設置穴26が形成されている。観察窓設置穴26は、窓配置穴26aと、接着剤塗布空間26bと、を有している。窓配置穴26aは、観察窓21の外径より僅かに大きく、予め定めた深さ寸法に設定されている。
【0016】
接着剤塗布空間26bは、テーパ穴であって、接着剤塗布空間26bの中心は、窓配置穴26aの中心軸に一致している。接着剤塗布空間26bの外径は、窓配置穴26aの内径より予め定めた寸法大径である。
【0017】
観察窓21は、窓配置穴26a内に配置される。この配置状態において、窓配置穴26aの底面には観察窓21の一面が当接して配置され、観察窓21の一面の反対面である他面は、先端カバー部材20の先端面より予め定めた量突出する。
【0018】
ここで、観察窓21の観察窓設置穴26への固定を説明する。
作業者は、観察窓21を観察窓設置穴26の窓配置穴26a内に予め定めた状態に配置する。次に、作業者は、第2の接着剤を接着剤塗布空間26bに塗布する。そして、作業者は、外部に露呈するカバー先端面側の第2の接着剤層32の表面を平面にならし、この表面と先端カバー部材20の先端面とを略同一平面にする。この後、第2の接着剤が硬化することによって、観察窓21が観察窓設置穴26内に固定される。
【0019】
第2の接着剤の硬化後、作業者は、第2の接着剤層32の表面を覆い隠すように第1の接着剤を塗布する。そして、作業者は、第2の接着剤層32の表面を隠した状態を維持しつつ第1の接着剤層31の観察窓21の他面側の表面を平面にならし、予め定めた厚みにする。本実施形態においては、第1の接着剤層31のならされた平面と観察窓21の他面である窓先端面とが略同一平面にしてある。
【0020】
この後、第1の接着剤が硬化することによって観察窓21が先端カバー部材20に固設される。つまり、接着固定部30は、上層を構成する厚みが略均一で外部に一面が露呈される第1の接着剤層31と、この第1の接着剤層31よって隠された第2の接着剤層32と、を設けて得られる。
【0021】
上述した第1の接着剤と第2の接着剤とは異なる接着剤であって、本実施形態において第1の接着剤および第2の接着剤は色彩が異なっている。第1の接着剤が黒色であるのに対して、第2の接着剤が鮮やかなオレンジ色である。なお、第1の接着剤と第2の接着剤とは、接着剤としての機能は同様である。
【0022】
このように、内視鏡1の先端部6を構成する先端カバー部材20に設けられた接着固定部30は、黒色の第1の接着剤層31とオレンジ色の第2の接着剤層32とを有している。
【0023】
内視鏡1を繰り返し洗浄消毒した際、接着固定部30の外部に露呈して設けられている第1の接着剤層31が劣化していく。すると、第1の接着剤層31は、劣化に伴って徐々に消失され、消失が進むにしたがってその消失部分からオレンジ色の第2の接着剤層32の少なくとも一部が露出する。
【0024】
ここで、ユーザは、鮮やかなオレンジ色を視認することによって第1の接着剤層31が劣化した状態であると判断して内視鏡の修理のタイミングが近いことを迷うこと無く速やかに認識できる。この結果、ユーザは、内視鏡1に設けられた接着剤の劣化による内視鏡1の故障を未然に防止しつつ、修理のタイミングを誤ることなく確実に修理に出すことが可能になる。
【0025】
なお、上述した実施形態において、第2の接着剤層32は、接着剤層として予め定めた機能を有している。このため、第2の接着剤層32が露出された状態において、直ちに内視鏡1が故障する要因になるおそれは無い。つまり、第2の接着剤層32は、露出されてから予め定めた期間、十分接着剤としての機能を果たす。
【0026】
また、上述した実施形態において、第1の接着剤および第2の接着剤は、接着剤としての機能は同じで色彩が異なるとしている。しかし、第1の接着剤および第2の接着剤の機能が異なっていてもよい。この場合、第1の接着剤は、内視鏡1の他の部位に用いられる接着剤が有する消毒液に対する耐性、あるいは、高圧高温水蒸気に対する耐性に比べて最も弱い接着剤とする。
【0027】
このことによって、内視鏡1が繰り返し洗浄、消毒されたとき、内視鏡1が備える複数の接着部の中で第1の接着剤層31が最も早く劣化するので他の接着部が劣化して発生する内視鏡1の故障を未然に防止しつつ、修理のタイミングを誤ることなく確実に内視鏡1を修理に出すことができる。
【0028】
また、第1の接着剤の色彩は、内視鏡の先端部に対応する色が好適である。これに対して、第2の接着剤の色彩は、外装部材の色彩とは異なり、かつ、周囲に対して目立つ鮮やかな色が好適である。第2の接着剤の色彩は、鮮やかなオレンジ色に限定されるものでは無い。
【0029】
また、上述した実施形態においては、観察窓21を固定する接着固定部30に接着剤の劣化を判定する機能を持たせるために接着剤を二層構造にしている。しかし、照明窓22を先端カバー部材20に固定する接着部(不図示)を、固定部と判定部とを兼用する接着固定部としてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態において、観察窓21を固定する接着固定部30を二層構造にして接着剤層の劣化を判定する機能を持たせている。しかし、図3A図3Bに示すように糸巻接着固定部40を二層構造にして接着剤層の劣化を判定する機能を持たせようにしてもよい。
【0031】
図3A図3Bに示すように湾曲部7の外装を構成する湾曲ゴム7gは、先端部6を構成する硬質部材である先端硬質部材6aの予め定めた部位、あるいは、可撓管部8の先端側に設けられた硬質部材である連結管8pの予め定めた部位に配置され、糸巻接着固定部40によって一体的に固定されている。
【0032】
図3Bに示すように糸巻接着固定部40は、外方側から順に外部に露呈する一面を有する第1の接着剤層41と、第2の接着剤層42と、糸巻部43と、を設けて得られる。糸巻部43は、湾曲ゴム7gの端部外周面に設けられる。糸巻部43は緊縛する糸で湾曲ゴム7gの端部を押し潰してゴム内周面を先端硬質部材6a等の外周面に押圧固定させる。第2の接着剤層42は、糸巻部43及びその周囲に塗布される。第2の接着剤層42は、硬質部材と湾曲ゴム7gとの間の水密を図る。第1の接着剤層41は、表示部である第2の接着剤層42の表面およびその周囲に塗布されて該第2の接着剤層42を覆い隠す。
【0033】
このように、内視鏡1の湾曲部7に接着の劣化を判定する機能部となる糸巻接着固定部40を設けている。この内視鏡1においては、繰り返し洗浄消毒されることによって糸巻接着固定部40の外部に露呈して設けられている第1の接着剤層41が劣化する。そして、第1の接着剤層41は、上述したように劣化に伴って徐々に消失され、消失進むにしたがってその消失部分から第2の接着剤層42の一部が露出する。この結果、上述した実施形態と同様にユーザは第2の接着剤層42を視認することによって第1の接着剤層41が劣化した状態であると判断して内視鏡の修理のタイミングが近いことを認識できる。この結果、上述した実施形態と同様に修理のタイミングを誤ることなく、確実に内視鏡1を修理に出すことが可能になる。
【0034】
上述した実施形態においては、観察窓21を先端カバー部材20に固定するための接着固定部30、湾曲ゴム7gを硬質部材に固定するための糸巻接着固定部40に接着剤の劣化を判定する機能を持たしている。しかし、内視鏡1を洗浄、消毒する際、上述した挿入部2のみならず内視鏡1の操作部3および内視鏡コネクタ5を含むユニバーサルコード4が消毒液に浸漬、あるいは、高圧高温水蒸気に晒される。このため、図4Aに示すように内視鏡コネクタ5に内視鏡1に用いられた接着剤の劣化を判定するための機能部を設けるようにしてもよい。
【0035】
図4Aに示すように内視鏡コネクタ5の外装部材の予め定めた一表面51上には一面が外部に露呈する接着剤層52が設けられている。接着剤層52は、表示部を覆って該表示部が外部から見えることが無いように設けられる。
【0036】
図4Bに示すように表示部は、文字部53である。文字部53は、一表面51に設けられ、接着剤層52によって文字全体が覆い隠される。接着剤層52は、非透明な接着剤を塗布して形成される。接着剤層52の色彩は、内視鏡コネクタ5の外装部材と同様またはそれに近似した色彩である。
【0037】
これに対して文字部53の色彩は、外装部材の色彩とは異なり、かつ、周囲に対して目立つ鮮やかな色が好適であり、例えば鮮やかなオレンジ色である。そして、文字部53は、「REPAIR」等の文字であり、容易に判別することが可能なようにできるだけ大きく設けられる。
【0038】
本実施形態において、接着剤層52は、内視鏡1に設けられる接着剤の中で消毒液に対する耐性、あるいは、高圧高温水蒸気に対する耐性が最も弱い接着剤で形成される。したがって、接着剤層52は、内視鏡1を繰り返し洗浄消毒したとき、内視鏡1が備える複数の接着部の中で最も早く劣化する接着部になっている。
【0039】
この構成によれば、内視鏡1を繰り返し洗浄消毒した際、内視鏡コネクタ5の一表面51に設けられた接着剤層52が劣化して消失されていくことによって文字部53である「REPAIR」の文字の一部、または、全部が出現する。
【0040】
ユーザは、文字部53の一部または全部を確認することによって内視鏡1に設けられた接着部が劣化し始めた状態である等を判断して内視鏡1の修理のタイミングが近いことを認識できる。この結果、上述した実施形態と同様に修理のタイミングを誤ることなく、確実に内視鏡1を修理に出すことが可能になる。
【0041】
また、内視鏡コネクタ5の一表面51に文字部53等の表示部を設けると共に、該表示部を覆い隠す接着剤層52を設けることによって、内視鏡1に低コストで接着剤の劣化を判定する機能を持たせることができる。
【0042】
なお、接着剤層52を形成する接着剤を内視鏡1に設けられる接着剤の中で消毒液に対する耐性、あるいは、高圧高温水蒸気に対する耐性が最も弱い接着剤としている。しかし、接着剤層52を内視鏡1に設けられた接着部の中で最も薄く形成するようにしてもよい。この構成によれば、内視鏡1を繰り返し洗浄消毒した際、最も薄く形成された接着剤層52が最初に劣化して消失して文字部53である「REPAIR」の文字の一部、または、全部が出現する。
【0043】
このことによって、ユーザは、文字部53を確認することによって内視鏡1に設けられた接着部が劣化し始めた状態である判断して内視鏡1の修理のタイミングが近いことを認識して修理のタイミングを誤ることなく、確実に内視鏡1を修理に出すことが可能になる。
【0044】
また、上述した実施形態において、表示部を文字部53とし、その文字部53の文字を「REPAIR」としている。しかし、文字部53は、「REPAIR」の文字に限定されるものでは無く、修理のタイミングを告知する他の文字、あるいは、記号等であってもよい。そして、文字部53の文字、あるいは、記号等は、一表面51上に直接的に設ける、あるいは、文字あるいは記号が描かれたシート状部材を貼り付けて設けられる。
【0045】
また、上述した実施形態においては、文字部53および接着剤層52を内視鏡コネクタ5の一表面51上に設けるとしている。しかし、文字部53および接着剤層52を操作部3の一表面(不図示)上に設けるようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形においては、接着固定部30を構成する第1の接着剤層31、あるいは、糸巻接着固定部40を構成する第1の接着剤層41が劣化に伴って消失することによって、表示部としての第2の接着剤層32、42が出現してユーザに内視鏡1の修理のタイミングを告知するとしている。しかし、接着剤は、種類によって接着剤層が劣化に伴って消失されるのではなく、劣化に伴って変色する場合がある。この接着剤を用いる場合、接着剤層の劣化が進行しても変色するだけで接着剤層が消失されることは無い。
【0047】
変色する接着剤を使用して、接着固定部あるいは糸巻接着固定部を得る場合、接着部は、一層の接着層によって形成される。この場合、例えば図5Aに示すように内視鏡コネクタ5の一表面51上にインジケータとして変色した色彩の判定用着色部55を設ける。
【0048】
この構成によれば、ユーザが内視鏡1を洗浄する際、例えば接着固定部、あるいは、糸巻接着固定部を判定用着色部55に隣り合わせに並べ、該固定部の表面の色彩と判定用着色部55の色彩とが同じであるか否かを比較する。
【0049】
ここで、ユーザが固定部の色彩が判定用着色部55の色彩と同じになっていると判定した場合、接着剤が劣化した状態であると判断して内視鏡1の修理のタイミングが近いことを認識できる。この結果、上述した実施形態と同様に修理のタイミングを誤ることなく、確実に内視鏡1を修理に出すことが可能になる。
【0050】
なお、判定用着色部55は、外装部材である一表面51にインク、塗料等で設けて構成される、あるいは、一表面51の地肌によって構成される。また、判定用着色部55を内視鏡コネクタ5の一表面51では無く、図5Bに示すように糸巻接着固定部45を構成する接着剤層46に隣接させて設けるようにしてもよい。
【0051】
このことによって、糸巻接着固定部45を構成する接着剤層46が劣化しているか否かを瞬時に見比べて判定できる。そして、この構成においては、ユーザが糸巻接着固定部45を内視鏡コネクタ5に設けられた判定用着色部55に並べて見比べる作業を不要にして作業性の向上をも図れる。
【0052】
なお、上述した実施形態においては、ユーザが、鮮やかなオレンジ色を視認して、あるいは、判定用着色部55の色彩と同じになっていると判定して接着剤が劣化した状態であると判断して内視鏡1の修理のタイミングが近いことを速やかに認識して、ユーザが修理のタイミングを誤ることなく確実に内視鏡1を修理に出すことを可能にしている。
【0053】
しかし、上述した内視鏡1は、図6に示すように洗浄消毒装置60の装置本体61に設けられた洗浄槽62内に配置されて洗浄される。このとき、内視鏡1は、内視鏡保持網(図7の符号70参照)内に予め定めた状態に設置され、その後、内視鏡保持網70と共に洗浄槽62内に予め定めた状態に設置されて洗浄消毒される。このため、本実施形態においては、ユーザが接着部の劣化を判定するのでは無く、洗浄消毒装置60で接着部の劣化を判定するようにしている。
【0054】
図6中の符号63はトップカバー、符号64は水位センサ、符号65は判定用センサである。水位センサ64は、洗浄槽62に供給される液体の水位を検出する。判定用センサ65は、読取部であって、例えば内視鏡コネクタ5に設けられた文字部53を光学的に読み取るカメラである。
【0055】
図7に示すように内視鏡保持網70内に設置された内視鏡1は、洗浄槽62内において、内視鏡1の挿入部2の先端部6を含む湾曲部7の位置、あるいは、操作部3の位置、あるいは、内視鏡コネクタ5の位置が、洗浄消毒装置60の洗浄槽62内の予め定めた位置に配置される。そして、本実施形態において判定用センサ65は、内視鏡コネクタ5の一表面51に設けられた接着剤層52に対向するように洗浄槽62の底面に配置されている。
【0056】
この構成によれば、内視鏡1の洗浄消毒中、あるいは、終了後に内視鏡コネクタ5の一表面51に設けられた接着剤層52が劣化して消失されて文字部53であるオレンジ色の「REPAIR」の一部、または、全部が出現した場合、判定用センサ65によって「REPAIR」の一部、または、全部が撮影される。
【0057】
洗浄消毒装置60は、判定用センサ65に接続された制御部(不図示)を有している。制御部は、判定用センサ65がとらえた映像から撮像領域内におけるオレンジ色の有無を判定し、オレンジ色を認識した際にはそのオレンジ色の領域が規定値を超えているか否かを判定する。
【0058】
ここで、制御部は、オレンジ色領域が規定値を超えていたときには接着剤層52が劣化した状態であると判断して洗浄消毒装置60に備えられた画面上に内視鏡1を修理するタイミングが近いことを告知する例えば「REPAIR」を表示する。一方、オレンジ色領域が規定値以下である場合には、接着剤層52が劣化し始めた状態であると判断して洗浄消毒装置60の画面上に例えば「care!」を表示する。この結果、ユーザは、接着剤層52が劣化した状態であるか否か等を判定すること無く、内視鏡1の修理のタイミングを的確に把握して、接着剤層52の劣化による内視鏡1の故障を未然に防止しつつ確実に内視鏡1を修理に出すことが可能になる。
【0059】
なお、判定用センサ65が挿入部2の糸巻接着固定部45を構成する接着剤層46及び判定用着色部55をとらえるように配置するようにしてもよい。この場合、制御部は、判定用センサ65がとらえた映像から撮像領域内における判定用着色部55の領域が元の面積から増大したか否かを判定する。
【0060】
すなわち、制御部は、接着剤層46が劣化して判定用着色部55の色彩と劣化して変色した色彩とを合わせた面積が規定値を越えたとき劣化状態と判断し、洗浄消毒装置60の画面上に内視鏡1の修理のタイミングが近いことを告知する例えば「REPAIR」を表示する。このことによって、上述と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0061】
本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0062】
本出願は、2016年9月5日に日本国に出願された特願2016−172970号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
【要約】
内視鏡1は、先端カバー部材20の表面に対して少なくとも一部が外部に露呈するように配置された第1の接着剤層31と、先端カバー部材20における第1の接着剤層31に覆われる部分に配置されており、第1の接着剤層31の劣化に伴って少なくとも一部が外部に露呈される表示部としての第2の接着剤層32と、を具備している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7