【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1に開示されている非水電解液二次電池50によれば、外部短絡や釘刺し等による内部短絡が生じた場合には、正極集電タブ55の切り欠き部55aの電流密度が増大し、切り欠き部55aが発熱して溶断するので、大電流が集中することで生じる熱暴走を防止することができるという効果を奏する。
【0010】
一方、非水電解液二次電池の正極集電タブとして、S字状に折り曲げられているが、切り欠き部を有さず、一定の幅及び厚みを有するものが使用されることがある。このような場合でも、例えば外部短絡や釘刺し等による内部短絡が生じた場合には正極集電タブに大電流が流れて一部が溶断することがあるが、この溶断が生じる位置は、S字状折り曲げられた正極集電タブの屈曲部のうち、巻回電極体側、すなわち、
図5に示すX部分で多く観察されている。
【0011】
この理由は、必ずしも明確ではないが、X部分が、正極板51と正極集電タブ55との超音波溶接部と、円筒状の電池外装缶54の開口部に設けられた正極端子58と正極集電タブ55との超音波溶接部の中点であることが考えられる。このような溶断部が巻回電極体53に近ければ近い程、溶断に伴って巻回電極体53内での内部短絡を引き起こす可能性が大きくなる。そのために、正極集電タブ55に溶断が生じる場合には、この溶断部が必ず巻回電極体53から離間した位置で生じるようにする必要がある。
【0012】
また、振動試験等のように、非水電解液二次電池50が激しく揺さぶられる外力が何度も加えられると、S字状折り曲げられた正極集電タブの屈曲部のうち、X部分だけでなく、正極端子58に近い屈曲点Y部分においても正極集電タブ55が破断することが多く観察されている。そのため、正極集電タブ55がS字状に折り曲げられて正極端子58に接続されている場合、大電流が流れることによる正極集電タブ55の溶断部が巻回電極体53から離れた位置となるだけでなく、上述したX点及びY点が振動による破断に耐えることができる強度を備えている必要がある。なお、負極集電タブについては、銅又は銅合金製のものが主であり、これらの銅又は銅合金はアルミニウム又はアルミニウム合金製の正極集電タブに比すると、機械的強度が強いので振動によって破断し難い。
【0013】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、S字状に折り曲げられた正極集電タブの溶断点が巻回電極体から離間した位置に形成され、かつ、正極集電タブのS字状の屈曲点部分が振動による破断に耐える強度を備えた非水電解液二次電池を提供することを目的をする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解液二次電池は、正極板及び負極板がセパレータによって電気的に絶縁された状態で巻回された巻回電極体と、非水電解液とが、円筒形の電池外装缶内に収納され、前記正極板に接続された正極集電タブが、S字状に折り曲げられて、前記円筒
形の電池外装缶の開口部に前記電池外装缶とは絶縁された状態で固定された正極端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記正極集電タブは、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、前記S字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に切り欠き部が形成され、前記切り欠き部の体積の割合は、長さ1.00mm当たり25.0〜37.5%であることを特徴とする。
【0015】
非水電解液二次電池は、通常は正極板としてアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の両面に正極活物質を含有する正極合剤層が形成されたものが使用されているので、それに合わせて正極集電タブとしてはアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが使用される。本発明の非水電解液二次電池における正極集電タブは、S字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に切り欠き部が形成され、切り欠き部の体積の割合は、長さ1.00mm当たり25.0〜37.5%とされているので、正極集電タブの幅が広くてもそれに応じた切り欠き部が形成されていることになり、外部短絡ないし内部短絡時に大電流が流れても、切り欠き部以外では溶断せず、切り欠き部が正確に溶断するようにできる。また、この溶断部となる切り欠き部が巻回電極体から離間したS字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に形成されているので、正極集電タブの切り欠き部が溶断しても、更なる内部短絡に繋がる虞が抑制される。
【0016】
しかも、本発明の非水電解液二次電池では、正極集電タブの幅を十分に広くすることができるので、正極集電タブの破断強度を高くできるため、電池が激しく振動されても正極集電タブが破断する虞が抑制される。
【0017】
なお、本発明の非水電解液二次電池の正極板としては、公知のアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の両面に正極活物質を含有する正極合剤層が形成されたものをそのまま使用できる。この正極活物質としては、たとえばリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLi
xMO
2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
yCo
1−yO
2(y=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)、又はLiFePO
4などを、一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。
【0018】
また、本発明の非水電解液二次電池の負極板としては、公知の銅箔又は銅合金箔の両面に負極活物質を含有する負極合剤層が形成されたものをそのまま使用できる。この負極活物質としては、たとえばリチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO
2及びTiO
2などのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、又はSn−Co合金等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の非水電解液二次電池において使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、γ−バレロラクトン(γ−VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。これらの中では、特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きい環状状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルを含むものが好ましい。さらに、本発明の非水電解液二次電池においては、非水電解液は液状のものだけでなく、ゲル化されているものであってもよい。
【0020】
なお、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水電解液中には、電極の安定化用化合物として、さらに、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)、アジポニトリル、ピメロニトリル等のニトリル化合物などを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることもできる。
【0021】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解液二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF
6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0022】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、正極集電タブは、幅が3.00mm以上、厚さが0.15mm以上であることが好ましい。
【0023】
正極集電タブが破断強度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金製のものであっても、幅が3.00mm以上、厚さが0.15mm以上であれば、電池が激しく振動されても正極集電タブが破断する虞が実質的になくなる。
【0024】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、正極集電タブは正極板の巻き
始め側と巻き終わり側との中間に形成されており、負極集電タブは負極板の巻き
始め側及び巻き終
わり側の両方に形成されており、巻き始め側の負極集電タブは、巻回電極体の巻回中心の空隙部に対応する位置で電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、巻き終わり側の負極集電タブは電池外装缶の内側に沿って折り曲げられて巻き
始め側の負極集電タブと共に電池外装缶の内側底部に接合されているものとすることが好ましい。
【0025】
円筒状の巻回電極体には巻回中心に空隙部が形成されるが、電池の容量を大きくするにはこの空隙部の容積を小さくすることが必要である。また、負極集電タブとして銅又は銅合金のような硬質な金属からなるものを使用して負極板の巻き
始め側に設ける場合、負極板と負極集電タブとの間の接触面積を大きくして内部抵抗を小さくするために、負極集電タブを弧状に成形して巻回電極体の巻回中心に配置する必要が生じる。しかしながら、本発明の非水電解液二次電池では、負極集電タブとして負極板の巻き
始め側及び巻き終わり側の両方に形成されているものを使用しているので、巻き
始め側の負極集電体の幅を狭くしても、巻き終わり側の負極集電体の幅を広くすることによって等価的に負極側の内部抵抗を小さくすることができるため、特に巻き
始め側の負極集電タブを成形する必要がなくなる。