特許第6239222号(P6239222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6239222-非水電解液二次電池 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239222
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01M10/0566
   H01M10/0587
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-237320(P2011-237320)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-97903(P2013-97903A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月20日
【審判番号】不服-19304(P-19304/J1)
【審判請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】森田 匡史
【合議体】
【審判長】 板谷 一弘
【審判官】 千葉 輝久
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−345630(JP,A)
【文献】 特開2001−202946(JP,A)
【文献】 特開2004−119383(JP,A)
【文献】 特開2009−224070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/26
H01M2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板がセパレータによって電気的に絶縁された状態で巻回された巻回電極体と、非水電解液とが、円筒形の電池外装缶内に収納され、前記正極板に接続された正極集電タブが、S字状に折り曲げられて、前記円筒形の電池外装缶の開口部に前記電池外装缶とは絶縁された状態で固定された正極端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記正極集電タブは、
アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、
前記S字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に切り欠き部が形成され、
前記切り欠き部の体積の割合は、長さ1.00mm当たり25.0〜37.5%であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記正極集電タブは、幅が3.00mm以上、厚さが0.15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記正極集電タブは前記正極板の巻きめ側及び巻き終わり側の中間に形成されており、負極集電タブは前記負極板の巻きめ側及び巻き終わり側の両方に形成されており、前記巻き始め側の負極集電タブは、前記巻回電極体の巻回中心の空隙部に対応する位置で前記電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、前記巻き終わり側の負極集電タブは前記電池外装缶の内側に沿って折り曲げられて前記巻きめ側の負極集電タブと共に前記電池外装缶の内側底部に接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部短絡に対して安全性に優れ、しかも耐振動性も良好な非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯電話機、携帯型パーソナルコンピューター、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、さらには、ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)や電気自動車(EV)用の電源として、高エネルギー密度を有し、高容量であるリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池が広く利用されている。
【0003】
非水電解液二次電池は、例えば円筒形のものであれば、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した円筒状の巻回電極体を作製し、この円筒状の巻回電極体を円筒状の電池外装体内に挿入すると共に非水電解液を注入し、正極端子ないし負極端子を、絶縁体によって絶縁された状態となるように、円筒状の電池外装体の開口部に密閉状態に取り付けることによって作製されている。
【0004】
また、角形のものであれば、正極板と負極板とをセパレータを介して積層ないし偏平状に巻回した偏平状の電極体を作製し、この偏平状の電極体を角形の電池外装体内に挿入し、正極端子及び負極端子の少なくとも一方が設けられた封口体を角形の電池外装体の開口部に嵌合させた後、嵌合部をレーザ溶接し、その後電解液注入孔から各種電解液を注入してこの電解液注入孔を封止することにより作製されている。
【0005】
これらの円筒形非水電解液二次電池や角形非水電解液二次電池は、例えば内部短絡や外部短絡等に際する熱暴走を抑制するため、正極集電タブないし負極集電タブとして幅が他の部分よりも狭い部分が形成されたものを用いた例が知られている(下記特許文献1〜3参照)。このような正極集電タブないし負極集電タブに幅が狭い部分が形成された非水電解液二次電池の一例を、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4Aは下記特許文献1に開示されている円筒形非水電解液二次電池の部分縦断面図であり、図4Bは正極板ないし負極板の展開図であり、図4Cは巻回電極体の斜視図であり、図4Dは正極集電タブの斜視図である。また、図5図4AのV部分の拡大図である。
【0006】
この円筒形の非水電解液二次電池50は、正極板51と負極板52とをセパレータ(図示省略)を介して重ね合わせて巻回させた巻回電極体53を非水電解液(図示省略)と共に円筒状の電池外装缶54内に収容した構成を備えている。正極板51及び負極板52には各々正極集電タブ55ないし負極集電タブ56が接続されている。円筒状の電池外装缶54の開口部は、絶縁部材57によって絶縁された状態で、正極端子58によって密閉されている。正極集電タブ55は、通常はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、S字状に折り曲げられ、正極端子58に接続されている。また、負極集電タブ56は、通常は銅又は銅合金製であり、円筒状の電池外装缶54の底部に接続されている。
【0007】
この正極集電タブ55には、巻回電極体53の外方、即ち巻回電極体53の正極端子58に接続されている部位よりも巻回電極体53側に、切り欠き部55a(図4D参照)が形成されている。この切り欠き部55aは、切り欠き部55aにおける電流密度が切り欠き部55a以外の正極集電タブ55の電流密度より高くなるように設けられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−121064号公報
【特許文献2】特開2001−202946号公報
【特許文献3】特表2004−119383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1に開示されている非水電解液二次電池50によれば、外部短絡や釘刺し等による内部短絡が生じた場合には、正極集電タブ55の切り欠き部55aの電流密度が増大し、切り欠き部55aが発熱して溶断するので、大電流が集中することで生じる熱暴走を防止することができるという効果を奏する。
【0010】
一方、非水電解液二次電池の正極集電タブとして、S字状に折り曲げられているが、切り欠き部を有さず、一定の幅及び厚みを有するものが使用されることがある。このような場合でも、例えば外部短絡や釘刺し等による内部短絡が生じた場合には正極集電タブに大電流が流れて一部が溶断することがあるが、この溶断が生じる位置は、S字状折り曲げられた正極集電タブの屈曲部のうち、巻回電極体側、すなわち、図5に示すX部分で多く観察されている。
【0011】
この理由は、必ずしも明確ではないが、X部分が、正極板51と正極集電タブ55との超音波溶接部と、円筒状の電池外装缶54の開口部に設けられた正極端子58と正極集電タブ55との超音波溶接部の中点であることが考えられる。このような溶断部が巻回電極体53に近ければ近い程、溶断に伴って巻回電極体53内での内部短絡を引き起こす可能性が大きくなる。そのために、正極集電タブ55に溶断が生じる場合には、この溶断部が必ず巻回電極体53から離間した位置で生じるようにする必要がある。
【0012】
また、振動試験等のように、非水電解液二次電池50が激しく揺さぶられる外力が何度も加えられると、S字状折り曲げられた正極集電タブの屈曲部のうち、X部分だけでなく、正極端子58に近い屈曲点Y部分においても正極集電タブ55が破断することが多く観察されている。そのため、正極集電タブ55がS字状に折り曲げられて正極端子58に接続されている場合、大電流が流れることによる正極集電タブ55の溶断部が巻回電極体53から離れた位置となるだけでなく、上述したX点及びY点が振動による破断に耐えることができる強度を備えている必要がある。なお、負極集電タブについては、銅又は銅合金製のものが主であり、これらの銅又は銅合金はアルミニウム又はアルミニウム合金製の正極集電タブに比すると、機械的強度が強いので振動によって破断し難い。
【0013】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、S字状に折り曲げられた正極集電タブの溶断点が巻回電極体から離間した位置に形成され、かつ、正極集電タブのS字状の屈曲点部分が振動による破断に耐える強度を備えた非水電解液二次電池を提供することを目的をする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解液二次電池は、正極板及び負極板がセパレータによって電気的に絶縁された状態で巻回された巻回電極体と、非水電解液とが、円筒形の電池外装缶内に収納され、前記正極板に接続された正極集電タブが、S字状に折り曲げられて、前記円筒の電池外装缶の開口部に前記電池外装缶とは絶縁された状態で固定された正極端子に電気的に接続されている非水電解液二次電池において、
前記正極集電タブは、アルミニウム又はアルミニウム合金製であり、前記S字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に切り欠き部が形成され、前記切り欠き部の体積の割合は、長さ1.00mm当たり25.0〜37.5%であることを特徴とする。
【0015】
非水電解液二次電池は、通常は正極板としてアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の両面に正極活物質を含有する正極合剤層が形成されたものが使用されているので、それに合わせて正極集電タブとしてはアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが使用される。本発明の非水電解液二次電池における正極集電タブは、S字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に切り欠き部が形成され、切り欠き部の体積の割合は、長さ1.00mm当たり25.0〜37.5%とされているので、正極集電タブの幅が広くてもそれに応じた切り欠き部が形成されていることになり、外部短絡ないし内部短絡時に大電流が流れても、切り欠き部以外では溶断せず、切り欠き部が正確に溶断するようにできる。また、この溶断部となる切り欠き部が巻回電極体から離間したS字状に折り曲げられた2つの屈曲点の間に形成されているので、正極集電タブの切り欠き部が溶断しても、更なる内部短絡に繋がる虞が抑制される。
【0016】
しかも、本発明の非水電解液二次電池では、正極集電タブの幅を十分に広くすることができるので、正極集電タブの破断強度を高くできるため、電池が激しく振動されても正極集電タブが破断する虞が抑制される。
【0017】
なお、本発明の非水電解液二次電池の正極板としては、公知のアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の両面に正極活物質を含有する正極合剤層が形成されたものをそのまま使用できる。この正極活物質としては、たとえばリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−y(y=0.01〜0.99)、LiMnO、LiMn、LiCoMnNi(x+y+z=1)、又はLiFePOなどを、一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。
【0018】
また、本発明の非水電解液二次電池の負極板としては、公知の銅箔又は銅合金箔の両面に負極活物質を含有する負極合剤層が形成されたものをそのまま使用できる。この負極活物質としては、たとえばリチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO及びTiOなどのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、又はSn−Co合金等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の非水電解液二次電池において使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、γ−バレロラクトン(γ−VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N、N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。これらの中では、特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きい環状状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルを含むものが好ましい。さらに、本発明の非水電解液二次電池においては、非水電解液は液状のものだけでなく、ゲル化されているものであってもよい。
【0020】
なお、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水電解液中には、電極の安定化用化合物として、さらに、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)、アジポニトリル、ピメロニトリル等のニトリル化合物などを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることもできる。
【0021】
また、本発明の非水電解液二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解液二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0022】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、正極集電タブは、幅が3.00mm以上、厚さが0.15mm以上であることが好ましい。
【0023】
正極集電タブが破断強度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金製のものであっても、幅が3.00mm以上、厚さが0.15mm以上であれば、電池が激しく振動されても正極集電タブが破断する虞が実質的になくなる。
【0024】
また、本発明の非水電解液二次電池においては、正極集電タブは正極板の巻きめ側と巻き終わり側との中間に形成されており、負極集電タブは負極板の巻きめ側及び巻き終
わり側の両方に形成されており、巻き始め側の負極集電タブは、巻回電極体の巻回中心の空隙部に対応する位置で電池外装缶の内側底部に当接するように折り曲げられ、巻き終わり側の負極集電タブは電池外装缶の内側に沿って折り曲げられて巻きめ側の負極集電タブと共に電池外装缶の内側底部に接合されているものとすることが好ましい。
【0025】
円筒状の巻回電極体には巻回中心に空隙部が形成されるが、電池の容量を大きくするにはこの空隙部の容積を小さくすることが必要である。また、負極集電タブとして銅又は銅合金のような硬質な金属からなるものを使用して負極板の巻きめ側に設ける場合、負極板と負極集電タブとの間の接触面積を大きくして内部抵抗を小さくするために、負極集電タブを弧状に成形して巻回電極体の巻回中心に配置する必要が生じる。しかしながら、本発明の非水電解液二次電池では、負極集電タブとして負極板の巻きめ側及び巻き終わり側の両方に形成されているものを使用しているので、巻きめ側の負極集電体の幅を狭くしても、巻き終わり側の負極集電体の幅を広くすることによって等価的に負極側の内部抵抗を小さくすることができるため、特に巻きめ側の負極集電タブを成形する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aは各実験に使用した正極板の展開図であり、図1Bは同じく負極板の展開図であり、図1Cは同じく円筒形非水電解液二次電池の縦断面図である。
図2】各実験に使用する正極集電タブの各部の寸法を示す平面図である。
図3図3A図3Eはそれぞれ各実験に使用した正極集電タブの寸法を示す図である。
図4図4Aは従来の円筒形非水電解液二次電池の部分縦断面図であり、図4Bは正極板ないし負極板の展開図であり、図4Cは巻回電極体の斜視図であり、図4Dは正極集電タブの斜視図である。
図5図4AのV部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水電解液二次電池を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0028】
最初に、各実施例及び比較例に共通する非水電解液二次電池の具体的製造方法について説明する。
[正極板の作製]
正極板11は次のようにして作製した。まず。正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)94質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック3質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)粉末3質量部とを、N−メチル−2ピロリドン(NMP)中で混合して正極合剤スラリーを調製した。次に、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極芯体11aの両面に、正極芯体11aの中央部に中央芯体露出部11b及び巻き終わり側に巻き終わり側芯体露出部11cが形成されるようにして、正極合剤スラリーを塗工し、乾燥機内に通して有機溶剤を除去した後、ロールプレス機を用いて正極合剤層11dが形成された部分の厚さが100μmとなるように圧延した。
【0029】
次いで、正極芯体11aの中央芯体露出部11bに、アルミニウム製の幅4mm、厚さ0.15mmの正極集電タブ22を超音波溶接により取り付け、正極板11を得た(図1A参照)。なお、各実験における正極集電タブ22部分の具体的構成及び切り欠きの具体的構成については後述する。
【0030】
[負極板の作製]
負極板12は次のようにして作製した。まず、負極活物質としての人造黒鉛粉末98質量%と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ1質量%ずつ混合し、水を加えて混練して負極合剤スラリーを調製した。次に、厚さが12μmの銅箔からなる負極芯体12aの両面に、負極芯体12aの巻き始め側の両面に巻き始め側芯体露出部12b及び巻き終わり側の両面に巻き終わり側芯体露出部12cが形成されるように、負極合剤スラリーを塗工し、次いで乾燥機内に通して乾燥した後、ロールプレス機を用いて負極合剤層12dの厚さが100μmとなるように圧延した。
【0031】
次いで、負極芯体12aの巻き始め側芯体露出部12b及び巻き終わり側芯体露出部12cに銅−ニッケルクラッド材(厚さ0.15mm)からなる負極集電タブ23a及び23bを、銅同士が対向するようにして、超音波溶接することにより、負極板12を得た(図1B参照)。この際、巻きめ部の負極集電タブ23aの溶接位置は、巻きめ端から約5mmの内側に溶接した。なお、負極合剤の塗布量は、設計基準となる充電電圧(4.2V)において、正極板11と負極板12の対向する部分での充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)が1.1となるように調整した。
【0032】
[巻回電極体の作製]
上記のようにして作製された正極板11と負極板12とがポリエチレン樹脂からなる厚さ22μmの微多孔性セパレータ13によって互いに絶縁された状態よになるようにして、直径2mmの巻芯を用いて巻き取り機により巻回し、巻き終わり部に絶縁性の巻き止めテープを取り付け、実施例1、2及び比較例1〜3の非水電解液二次電池10で使用する円筒状巻回電極体14を完成させた。なお、最内周側の負極芯体の巻きめ側芯体露出部12bの長さは、空隙部18の外周の2周となるようにした。
【0033】
[非水電解液の調製]
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを体積比で30:70(25℃、1気圧)となるように混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを1mol/Lとなるように溶解させて共通の非水電解液とした。
【0034】
[電池の組み立て]
上記のようにして作製された巻回電極体14の上下に中央に穴が開けられた絶縁板15及び16を配置し、負極板12の巻き始め側の負極集電タブ23aを先端部が電池外装缶17の底部に平行になるように適切な位置でL字状に折り曲げた。また、負極板12の巻き終わり側の負極集電タブ23bは、L字形に折り曲げて、先端部が電池外装缶17の底部に平行になるようにかつ巻き始め側の集電タブ23aの先端部に重畳するように折り曲げた。このように折り曲げられた負極集電タブ23a及び23bを備えた巻回電極体14を、図1Cに示したように、円筒状の電池外装缶17内に挿入した。次いで、電池外装缶17の底部の内側に負極集電タブ23a及び23bを抵抗溶接することによって固定した。
【0035】
更に、正極集電タブ22をS字状に折り曲げ、その先端部を絶縁性の封口板19に取り付けられた正極端子20に超音波抗溶接し、電池外装缶14内に上述した非水電解液を注入、真空含浸した後、封口板19の周囲をガスケット21で挟んで、電池外装缶17の開口端部をカシメて固定することにより各実験に使用する非水電解液二次電池10を作製した。この非水電解液二次電池10は、直径が18mm、長さが65mmであり、設計容量はMin1500mAhであった。
【0036】
次に、各実験例で使用した正極板11の正極集電タブ22の構成を図2及び図3を用いて説明する。正極集電タブ22は、正極芯体の中央部11bに超音波溶接した後、絶縁用に超音波溶接した位置から更に巻回電極体14から突出する部分までを覆うように、両面に保護テープ24が載置されている。ここでは、正極集電タブ22の巻回電極体14からの出代を13.5mmとなるようにしている。そして、正極集電タブ22の先端部と正極端子20との間の溶接部の長さを2.00mmとし、それに引き続く屈曲部(Y部分)の長さを2.50mmとした。また、正極集電タブ22の巻回電極体14側の屈曲部(X部分)の長さを1.00mmとした。そうすると、正極集電タブ22の両側の屈曲部X部分及びY部分を除いた切り欠き形成可能領域(Z部分)の長さは8.00mmとなる。
【0037】
[実施例1、2及び比較例1〜3の正極集電タブ]
さらに、実施例1、2及び比較例1〜3の正極集電タブのZ部分の具体的構成を図3を用いて説明する。比較例1では、図3Aに示すように、幅4.00mmで厚さ0.15mmのアルミニウム製の部材を、切り欠きを形成することなく、そのまま正極集電タブとして使用した。なお、この幅4mmで厚さ0.15mmという正極集電タブは、振動試験によって破断することがないことが実験的に確認されているサイズのものである。
【0038】
そして、比較例2では、図3Bに示すように、比較例1で使用した部材の両側面に対し、Z部分に長さ1.00mmにわたって幅0.25mmの切り欠きを形成したものを正極集電タブとして使用した。この比較例2の正極集電タブの長切り欠き面積は0.50mmであり、長さ1.00mm当たりの切り欠き体積の割合は12.5%となる。また、実施例1では、図3Cに示すように、比較例1で使用した部材の両側面に対し、Z部分に長さ1.00mmにわたって幅0.50mmの切り欠きを形成したものを正極集電タブとして使用した。この実施例1の正極集電タブの長切り欠き面積は1.00mmであり、長さ1.00mm当たりの切り欠き体積の割合は25.0%となる。
【0039】
また、実施例2では、図3Dに示すように、比較例1で使用した部材の両側面に対し、Z部分に長さ1.00mmにわたって幅0.75mmの切り欠きを形成したものを正極集電タブとして使用した。この実施例2の正極集電タブの長切り欠き面積は1.50mmであり、長さ1.00mm当たりの切り欠き体積の割合は37.5%となる。さらに、比較例3では、図3Eに示すように、比較例1で使用した部材の両側面に対し、Z部分に長さ1.00mmにわたって幅1.00mmの切り欠きを形成したものを正極集電タブとして使用した。この比較例3の正極集電タブの長切り欠き面積は2.00mmであり、長さ1.00mm当たりの切り欠き体積の割合は50%となる。
【0040】
上述のようにして作製された正極集電タブを用いて実施例1、2及び比較例1〜3非水電解液二次電池をそれぞれ10個ずつ作製し、それぞれ1It=1500mAの定電流で電池電圧が4.20Vとなるまで充電し、電池電圧が4.20Vに達した後は4.20Vの低電圧で充電電流が1/50It=30mAになるまで充電し、満充電状態とした。この満充電状態の実施例1、2及び比較例1〜3の全ての非水電解液二次電池に対して1Itの定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電させ、それぞれの電池の1It放電容量を求めた。
【0041】
ついで、1It放電容量を求めた全ての電池に対して、上述の充電条件で再度充電することにより満充電状態とし、次いで40Aの定電流で電池電圧が2.75Vとなるまで放電させ、その際の電池容量、平均電圧を測定し、電池容量についてはさらに1It放電容量との比(%)を求めた。測定結果は平均値として表1に纏めて示した。
【0042】
ついで、満充電状態とした実施例1、2及び比較例1〜3非水電解液二次電池をそれぞれ2個ずつ、外部短絡を想定して5mΩの抵抗で短絡させた。その後、それぞれの電池を分解し、正極集電タブの溶断の有無及び溶断位置を確認した。結果を纏めて表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、40A定電流放電時の放電容量、平均電圧及び放電容量比は、実施例1及び2共に比較例1及び比較例2とほぼ同等の結果が得られているが、比較例3では劣る結果となっている。このことは、比較例1、実施例1及び2の電池では、切り欠き部を形成しても、その長さ1.00mm当たりの切り欠き体積が小さいため、切り欠き部形成による内部抵抗の増加は実質的に無視できる程度のものであることを示している。これに対し、比較例3の電池では、切り欠き部の長さ1.00mm当たりの切り欠き体積が大きいため、この切り欠き部形成による内部抵抗の増大が無視できない大きさとなり、電池容量、平均電圧及び放電容量比の低下に繋がったものと考えられる。
【0045】
また、5mΩ外部短絡試験結果では、実施例1、2及び比較例1〜3の全ての電池において、正極集電タブの溶断が発生していた。しかしながら、比較例1及び2共に溶断箇所はX部分であり、特に比較例2においては、切り欠き部を設けたZ部分ではなく、X部分において溶断が生じている。それに対し、実施例1、2及び比較例3では、全て切り欠き部を設けたZ部分において溶断が生じている。
【0046】
このことは、比較例2の電池では、切り欠き部の長さ1.00mm当たりの切り欠き体積が小さすぎるために、切り欠き部が形成されているZ部分が溶断せず、Z部分以外のX部分出溶断したものと考えられるから、正極集電タブの切り欠き部の長さ1.00mm当たりの切り欠き体積は、実施例1の測定データに照らせば、25.0%以上が好ましいことが分かる。また、比較例3の電池では、切り欠き部の長さ1.00mm当たりの切り欠き体積が大きすぎるために、切り欠き部が形成されているZ部分で溶断するが、電池容量、平均電圧及び放電容量比の低下に繋がったものと考えられるから、正極集電タブの切り欠き部の長さ1.00mm当たりの切り欠き体積は、実施例2の測定データに照らせば、37.5%以下が好ましいことが分かる。
【0047】
以上述べたように、本発明に従う非水電解液二次電池によれば、電池容量、平均電圧及び放電容量が実質的に低下せず、また、外部短絡時の正極集電タブの溶断箇所が全て切り欠き部形成位置となるので電池の放電性能に悪影響を与えず、外部短絡に際してもより安全であり、しかも、振動試験時にも安全性を確保できる非水電解液二次電池が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0048】
10…非水電解液二次電池 11…正極板 11a…正極芯体 11b…(正極芯体の)中央芯体露出部 11c…(正極芯体の)巻き終わり側芯体露出部 11d…正極合剤層 12…負極板 12a…負極芯体 12b…(負極芯体の)巻き始め側芯体露出部 12c…(負極芯体の)巻き終わり側芯体露出部 12d…負極合剤層 13…セパレータ 14…巻回電極体 15、16…絶縁板 17…電池外装缶 18…空隙部 19…封口板 20…正極端子 21…ガスケット 22…正極集電タブ 22a…(正極集電タブの)切り欠き、23a、23b…負極集電タブ 24…保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5