(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さないことがある。また、便宜上、絶縁膜は上面図には表さないことがある。
【0027】
なお、本明細書等において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0028】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0029】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0030】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0031】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線などが含まれる。
【0032】
なお、以下の説明において、第1、第2などの序数詞は、説明の便宜上付したものであり、その数を限定するものではない。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0034】
図1に、トランジスタ150の平面図および断面図を示す。
図1(A)は平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)におけるA−B断面に係る断面図である。なお、
図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ150の構成要素の一部(例えば、絶縁膜110など)を省略している。
【0035】
<本実施の形態における半導体装置の構成>
図1は、本実施の形態の方法にて作製された半導体装置の構成例である。
図1に示すトランジスタ150は、絶縁表面を有する基板100上に設けられたゲート電極102と、ゲート電極102を少なくとも覆っているゲート絶縁膜104と、ゲート絶縁膜104を介してゲート電極102を挟み、ゲート電極102の上面と重畳しないソース電極108aおよびドレイン電極108bと、ゲート絶縁膜104を介してゲート電極102と重畳し、かつ、ゲート絶縁膜104、ソース電極108aおよびドレイン電極108b上に設けられた酸化物半導体膜106と、酸化物半導体膜106、ソース電極108aおよびドレイン電極108b上に設けられた絶縁膜110と、を有する。
【0036】
また、酸化物半導体膜106において、ゲート電極102とソース電極108a(またはドレイン電極108b)が重畳しない領域(Loff領域)は、ゲート絶縁膜104の膜厚によって決定される。また、酸化物半導体膜106のLoff領域がチャネル領域との電界緩和領域として機能する。このため、ホットキャリアの発生を抑制することができ、ホットキャリアのゲート絶縁膜への侵入によるしきい値電圧のばらつきを低減することが可能である。また、トランジスタ150のオフ電流を低減することができる。
【0037】
また、Loff領域が長すぎると抵抗成分となり、オン電流が低下するため、Loff領域の長さを制御することが重要となる。本実施の形態では、ゲート絶縁膜104の膜厚を調整することにより、ソース電極(またはドレイン電極)より高抵抗なLoff領域の長さを最適化することができるので酸化物半導体膜のチャネル領域とソース電極(またはドレイン電極)との間に生じる抵抗の増大を抑制することができる。よって、トランジスタ150のオン電流を高くすることができる。
【0038】
また、ゲート電極102とソース電極108a(またはドレイン電極108b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ150を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0039】
<本実施の形態における半導体装置の作製方法>
トランジスタ150の作製方法について
図2および
図3を用いて説明する。
【0040】
まず、基板100上にゲート電極102を形成する(
図2(A)参照)。
【0041】
基板100としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料を用いる。量産する上では、基板100は、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のマザーガラスを用いることが好ましい。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して量産を行う場合、作製工程の加熱処理は、700℃以下、好ましくは450℃以下、さらに好ましくは350℃以下とすることが望ましい。
【0042】
次に、基板100上に、導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程によりゲート電極102を形成する。ゲート電極102は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびWを一種以上含む、単体、窒化物、酸化物または合金を、単層または積層して用いればよい。または、少なくともInおよびZnを含む酸化物または酸窒化物を用いても構わない。例えば、In−Ga−Zn−O−N系材料などを用いればよい。
【0043】
また、基板100上に下地絶縁膜を形成し、下地絶縁膜上にゲート電極102を形成してもよい。
【0044】
下地絶縁膜は、PE−CVD法またはスパッタリング法を用いて50nm以上600nm以下の膜厚で、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜から選ばれた一層またはこれらの積層膜を用いる。下地絶縁膜により、基板100側からの不純物の侵入を抑制することができる。
【0045】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンなどの「酸化窒化物」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものをいう。
【0046】
なお、本明細書中において、窒化酸化シリコンなどの「窒化酸化物」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものをいう。
【0047】
次に、基板100およびゲート電極102上にゲート絶縁膜104を形成する(
図2(B)参照)。なお、ゲート絶縁膜104は、少なくともゲート電極102を覆っていればよい。
【0048】
ゲート絶縁膜104の材料としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタル、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、または窒化酸化シリコン等を用いて形成することができる。
【0049】
ゲート絶縁膜104は、250℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下の温度における加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。
【0050】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体膜中の酸素欠損はドナーとなるため、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向へシフトさせる要因となる。また、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜との界面における酸素欠損は、トランジスタの動作などに起因して電荷を捕獲するため、トランジスタの電気特性を変動させる要因となる。従って、酸化物半導体膜中、および酸化物半導体膜とゲート絶縁膜との界面における酸素欠損を低減することは、酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電気特性を安定させ、かつ信頼性を向上させることに繋がる。そのため、ゲート絶縁膜から酸素が放出されると、酸化物半導体膜中、および酸化物半導体膜とゲート絶縁膜との界面における酸素欠損を低減することができて好ましい。
【0051】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×10
19atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
19atoms/cm
3以上、さらに好ましくは1.0×10
20atoms/cm
3以上、さらに好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上であることをいう。
【0052】
ここで、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0053】
TDS分析による気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、測定したスペクトルの積分値と標準試料の基準値との比により、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値は、所定の原子密度を有する試料において、スペクトルの積分値に対する原子密度の割合である。
【0054】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(N
O2)は、式(1)で求めることができる。ここで、TDSで得られる質量電荷比(M/z)が32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。M/zが32のものとしてほかにCH
3OHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体であるM/zが17の酸素原子およびM/zが18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0056】
N
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S
H2は、標準試料をTDS分析によるスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N
H2/S
H2とする。S
O2は、絶縁膜をTDS分析によるスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。式(1)の詳細に関しては、特開平6−275697号公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×10
16atoms/cm
2の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
【0057】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0058】
なお、N
O2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0059】
次に、ゲート絶縁膜104が形成された基板100に対して、水分や水素などを除去するための加熱処理を行ってもよい。
【0060】
なお、加熱処理としては、電気炉、もしくは抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いることができる。例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0061】
例えば、加熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において加熱処理を行うことで、膜中の欠陥密度を低減することができる。
【0062】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水分、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0063】
加熱処理温度は、基板100として、マザーガラスを用いた場合、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、200℃以上450℃以下、好ましくは、250℃以上350℃以下である。
【0064】
なお、加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜104中の水分や水素等の不純物を除去することができる。また、当該加熱処理により、膜中の欠陥密度を低減することができる。ゲート絶縁膜104膜中の不純物、または欠陥密度が低減することにより、トランジスタの電気特性が向上し、また、トランジスタの動作に伴う電気特性の変動を抑制することができる。
【0065】
ところで、上述の加熱処理には水分や水素などを除去する効果があるため、当該加熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0066】
次に、ゲート絶縁膜104上に、ソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜107を成膜する(
図2(C)参照)。導電膜107は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。本実施の形態では、
図2(C)に示すように領域115aと、領域115bとの間に段差が生じている。
【0067】
導電膜107は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。また、導電膜107の材料として、後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。導電膜107として、例えば、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびWを一種以上含む、単体、窒化物、酸化物または合金を、単層または積層して用いればよい。または、少なくともInおよびZnを含む酸化物または酸窒化物を用いても構わない。例えば、In−Ga−Zn−O−N系材料などを用いればよい。
【0068】
次に、導電膜107に除去(研磨)処理を行うことにより、ゲート絶縁膜104が露出するように導電膜107の一部を除去し、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成する(
図3(A)参照)。
【0069】
除去処理によって、ゲート電極102と重畳する領域の導電膜107が除去され、自己整合的にソース電極108aおよびドレイン電極108bが形成される。除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を用いることが好適である。
【0070】
本実施の形態では、
図2(C)に示すように領域115aと、領域115bとの間に生じた段差を利用して、ゲート絶縁膜104上に設けられた導電膜を除去処理(具体的には、CMP処理)することにより、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの上面とゲート絶縁膜104の上面の高さは揃っているが、これに限られず、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの上面とゲート絶縁膜104の上面の高さが多少ずれていても構わない。
【0072】
なお、本実施の形態では、ゲート電極102と重畳する領域の導電膜107の除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜107の材料、膜厚、および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。また、CMP処理で領域115bにおける導電膜107の大部分を除去し、残りの導電膜107をドライエッチング処理で除去してもよい。このようにすることにより、導電膜107とゲート絶縁膜104とのエッチング選択比がとりやすくなるものもある。そのため、ゲート絶縁膜104が薄くなることを抑制することができる。
【0073】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、導電膜107の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0074】
また、CMP処理のかわりに、導電膜107上に該導電膜107とエッチング選択比が同程度であるレジストマスクを用いてエッチングをしてゲート絶縁膜104が露出するように導電膜107の一部を除去し、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成してもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、導電膜107の一部を除去し、該導電膜107を加工してソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成したが、これに限られず、先に導電膜107を加工し、加工後に該導電膜107の一部を除去してソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成してもよい。
【0076】
このように、ゲート絶縁膜104が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成することができる。そのため、チャネル長を微細化した場合においても、ソース電極108aおよびドレイン電極108bをアライメントのずれなく形成することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0077】
また、酸化物半導体膜106において、ゲート電極102とソース電極108a(またはドレイン電極108b)が重畳しない領域(Loff領域)は、ゲート絶縁膜104の膜厚によって決定される。また、酸化物半導体膜106のLoff領域がチャネル領域との電界緩和領域として機能する。このため、ホットキャリアの発生を抑制することができ、ホットキャリアのゲート絶縁膜への侵入によるしきい値電圧のばらつきを低減することが可能である。また、トランジスタ150のオフ電流を低減することができる。
【0078】
また、ゲート絶縁膜104の膜厚を調整することにより、ソース電極(またはドレイン電極)より高抵抗なLoff領域の長さを最適化することができるので酸化物半導体膜のチャネル領域とソース電極(またはドレイン電極)との間に生じる抵抗の増大を抑制することができる。よって、トランジスタ150のオン電流を高くすることができる。
【0079】
また、ゲート電極102とソース電極108a(またはドレイン電極108b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ150を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0080】
次に、ゲート絶縁膜104、ソース電極108aおよびドレイン電極108b上に酸化物半導体膜106を形成する(
図3(B)参照)。
【0081】
酸化物半導体膜106は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を用いて成膜される。また、酸化物半導体膜106は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタリング装置を用いて成膜されてもよい。
【0082】
酸化物半導体膜106を成膜する際、酸化物半導体膜106に含まれる水素濃度をできる限り低減させることが好ましい。酸化物半導体膜106に含まれる水素濃度を低減させるためには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜する場合、スパッタリング装置の処理室内に供給するガスとして、水素、水、水酸基、または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的には、アルゴン)、酸素、または希ガスと酸素との混合ガスを用いることが好ましい。
【0083】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ、水素および水などが除去されたガスを導入して成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体膜106に含まれる水素濃度を低減させることができる。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水(H
2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等の排気能力が高いため、当該成膜室で成膜された酸化物半導体膜106に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0084】
また、酸化物半導体膜106を、スパッタリング法を用いて成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ターゲットの相対密度は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とすることが好ましい。相対密度が高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜された酸化物半導体膜106を緻密な膜とすることができる。
【0085】
酸化物半導体膜106の材料として、例えば、In−M−Zn−O系材料を用いればよい。ここで、金属元素Mは酸素との結合エネルギーがInおよびZnよりも高い元素である。または、In−M−Zn−O系材料から酸素が脱離することを抑制する機能を有する元素である。金属元素Mの作用によって、酸化物半導体膜の酸素欠損の生成が抑制される。そのため、酸素欠損に起因するトランジスタの電気特性の変動を低減することができ、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0086】
金属元素Mは、具体的にはAl、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、TaまたはWとすればよく、好ましくはAl、Ti、Ga、Y、Zr、CeまたはHfとする。金属元素Mは、前述の元素から一種または二種以上選択すればよい。また、金属元素Mに変えてSiやGeを用いることもできる。
【0087】
ここで、In−M−Zn−O系材料で表される酸化物半導体は、Inの濃度が高いほどキャリア移動度およびキャリア密度が高まる。結果、Inの濃度が高いほど導電率の高い酸化物半導体となる。
【0088】
酸化物半導体膜は、例えば非単結晶を有してもよい。非単結晶は、例えば、CAAC(C Axis Aligned Crystal)、多結晶、微結晶、非晶質を有する。非単結晶において、非晶質は最も欠陥準位密度が高く、CAACは最も欠陥準位密度が低い。なお、CAACを有する酸化物半導体を、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)と呼ぶ。
【0089】
酸化物半導体膜は、例えばCAAC−OSを有してもよい。CAAC−OSは、例えば、c軸配向し、a軸または/およびb軸はマクロに揃っていない酸化物半導体を有している。
【0090】
酸化物半導体膜は、例えば微結晶を有してもよい。微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶を膜中に含む酸化物半導体を有している。または、微結晶酸化物半導体膜は、例えば、非晶質相に1nm以上10nm未満の結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体を有している。
【0091】
酸化物半導体膜は、例えば非晶質を有してもよい。非晶質酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分のない酸化物半導体を有している。または、非晶質酸化物半導体膜は、例えば、完全な非晶質であり、結晶部を有さない酸化物半導体を有している。
【0092】
なお、酸化物半導体膜が、CAAC−OS、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体の混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、を有する。また、混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、の積層構造を有してもよい。
【0093】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、単結晶を有してもよい。
【0094】
酸化物半導体膜は、複数の結晶部を有し、当該結晶部のc軸が被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っていることが好ましい。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。そのような酸化物半導体膜の一例としては、CAAC−OS膜がある。
【0095】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく(非単結晶の一種)、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、例えば非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体を有している。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には明確な粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0096】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、例えば、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、80°以上90°以下、好ましくは85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−10°以上10°以下、好ましくは−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0097】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0098】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃っている。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0099】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0100】
また、酸化物半導体膜において、銅、アルミニウム、塩素などの不純物がほとんど含まれない高純度化されたものであることが望ましい。トランジスタの製造工程において、これらの不純物が混入または酸化物半導体膜表面に付着する恐れのない工程を適宜選択することが好ましく、酸化物半導体膜表面に付着した場合には、シュウ酸や希フッ酸などに曝す、またはプラズマ処理(N
2Oプラズマ処理など)を行うことにより、酸化物半導体膜表面の不純物を除去することが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜の銅濃度は1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
17atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体膜のアルミニウム濃度は1×10
18atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体膜の塩素濃度は2×10
18atoms/cm
3以下とする。
【0101】
また、酸化物半導体膜は成膜直後において、化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることが好ましい。例えば、スパッタリング法を用いて酸化物半導体膜を成膜する場合、成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件で成膜することが好ましく、特に酸素雰囲気(酸素ガス100%)で成膜を行うことが好ましい。成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件、特に酸素ガス100%の雰囲気で成膜すると、例えば、成膜温度を300℃以上としても、膜中からのZnの放出が抑えられる。
【0102】
酸化物半導体膜は水素などの不純物が十分に除去されることにより、または、十分な酸素が供給されて酸素が過飽和の状態とされることにより、高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、酸化物半導体膜の水素濃度は5×10
19atoms/cm
3以下、望ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より望ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。なお、上述の酸化物半導体膜中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。また、十分な酸素が供給されて酸素が過飽和の状態とするため、酸化物半導体膜を包みこむように過剰酸素を含む絶縁膜(SiO
xなど)を接して設ける。
【0103】
また、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度もトランジスタの特性に影響を与えるため重要である。
【0104】
以下に、トランジスタの特性に与える、過剰酸素を含む絶縁膜中の水素濃度の影響について説明する。
【0105】
まずは、過剰酸素を含む絶縁膜中に意図的に水素を添加し、その水素濃度をSIMSにより評価した。
【0107】
まず、ガラス基板を準備し、当該ガラス基板上に酸化シリコン膜をスパッタリング法にて厚さ300nm成膜した。
【0108】
酸化シリコン膜は、石英ターゲットを用い、圧力を0.4Pa、電力を1.5kW(13.56MHz)、成膜時の基板温度を100℃として成膜した。
【0109】
試料は4種類用意した。なお、各試料は、酸化シリコン膜の成膜に用いる成膜ガスである酸素ガス(O
2)、重水素ガス(D
2)およびアルゴンガス(Ar)の流量が異なる以外は同様とした。
【0110】
表1に、試料名と、酸化シリコン膜の成膜に用いた各成膜ガスの流量と、酸化シリコン膜中の30nmの深さにおけるD(重水素原子)濃度およびH(水素原子)濃度を示す。なお、各試料の成膜ガス中のD
2割合(D
2/(O
2+Ar+D
2))は、試料1が0体積%、試料2が0.005体積%、試料3が0.50体積%、試料4が2.50体積%とした。
【0112】
表1より、成膜ガス中のD
2割合が高いほど酸化シリコン膜中に含まれるD濃度が高いことがわかった。
【0113】
次に、表1で示した試料1乃至試料4を用いて、トランジスタを作製した。
【0114】
図22(A)は評価に用いたトランジスタの上面図である。
図22(A)に示す一点鎖線A−Bに対応する断面図を
図22(B)に示す。なお、理解を容易にするため、
図22(A)においては、保護絶縁膜2118、ゲート絶縁膜2112、絶縁膜2102などを省略して示す。
【0115】
図22(B)に示すトランジスタは、基板2100と、基板2100上に設けられた過剰酸素を含む絶縁膜2102と、絶縁膜2102上に設けられた酸化物半導体膜2106と、酸化物半導体膜2106上に設けられた一対の電極2116と、酸化物半導体膜2106および一対の電極2116を覆って設けられたゲート絶縁膜2112と、ゲート絶縁膜2112を介して酸化物半導体膜2106と重畳して設けられたゲート電極2104と、ゲート電極2104およびゲート絶縁膜2112上に設けられた保護絶縁膜2118と、を有する。
【0116】
ここで、絶縁膜2102は、表1で示した試料1乃至試料4のいずれかを用いた。なお、絶縁膜2102の厚さは300nmとした。
【0117】
そのほか、基板2100はガラス、酸化物半導体膜2106はIGZO(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]ターゲットを用いて成膜したもの)を厚さ20nm、一対の電極2116はタングステンを厚さ100nm、ゲート絶縁膜2112は酸化窒化シリコン膜を厚さ30nm、ゲート電極2104は、ゲート絶縁膜2112側から窒化タンタルを厚さ15nmおよびタングステンを厚さ135nm、保護絶縁膜2118は酸化窒化シリコンを厚さ300nmとした。
【0118】
以上のような構造を有するトランジスタに対し、BTストレス試験を行った。なお、測定には、チャネル長(L)が10μm、チャネル幅(W)が10μm、ゲート電極2104と一対の電極2116の重なり(Lov)がそれぞれ1μm(合計2μm)であるトランジスタを用いた。実施したBTストレス試験の方法を以下に示す。
【0119】
まず、基板温度25℃において、トランジスタのドレイン電圧(V
d)を3Vとし、ゲート電圧(V
g)を−6Vから6Vに掃引したときのドレイン電流(I
d)を評価した。このときのトランジスタの特性を、BT試験前のトランジスタの特性と呼ぶ。
【0120】
次に、V
dを0.1Vとし、V
gを−6Vとし、基板温度150℃にて1時間保持した。
【0121】
次に、V
d、V
g、温度を加えることを止め、基板温度25℃において、V
dを3Vとし、V
gを−6Vから6Vに掃引したときのI
dを評価した。このときのトランジスタの特性を、BTストレス試験後のトランジスタの特性と呼ぶ。
【0122】
BTストレス試験前およびBTストレス試験後における、しきい値電圧(V
th)および電界効果移動度(μ
FE)を表2に示す。ただし、表2に示す試料名は、表1に示す試料名と対応しており、絶縁膜2102の条件を示している。
【0124】
表2より、試料4は、BTストレス試験後にμ
FEが大幅に低下していることがわかった。
【0125】
また、さらにLが小さいトランジスタについて、トランジスタの特性を評価したところ、試料4は他の試料と比べ、V
thのマイナス方向のばらつきが大きくなった。
【0126】
以上に示すように、酸化シリコン膜が酸化物半導体膜と接する構造のトランジスタにおいて、酸化シリコン膜中のD濃度が7.2×10
20atoms/cm
3であるとき、トランジスタに特性異常が生じることがわかった。
【0127】
このように、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度が、7.2×10
20atoms/cm
3以上である場合には、トランジスタの初期特性のバラツキの増大、L長依存性の増大、さらにBTストレス試験において大きく劣化するため、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度は、7.2×10
20atoms/cm
3未満とする。即ち、酸化物半導体膜の水素濃度は5×10
19atoms/cm
3以下、かつ、過剰酸素を含む絶縁膜の水素濃度は、7.2×10
20atoms/cm
3未満とすることが好ましい。
【0128】
さらに酸化物半導体膜を包み、かつ、過剰酸素を含む絶縁膜の外側に配置されるように、酸化物半導体膜の酸素の放出を抑えるブロッキング膜(AlO
xなど)を設けると好ましい。
【0129】
過剰酸素を含む絶縁膜またはブロッキング膜で酸化物半導体膜を包み込むことで、酸化物半導体膜において化学量論比組成とほぼ一致するような状態、または化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることができる。例えば、酸化物半導体膜の化学量論的組成がIn:Ga:Zn:O=1:1:1:4[原子数比]である場合、IGZOに含まれる酸素の原子数比は4より多い状態となる。
【0130】
次に、ソース電極108a、ドレイン電極108bおよび酸化物半導体膜106上に絶縁膜110を形成する(
図3(C)参照)。
【0131】
絶縁膜110の材料としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタル、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、または窒化酸化シリコン等を用いて形成することができる。
【0132】
絶縁膜110は、250℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下の温度における加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。
【0133】
また、絶縁膜110上にさらに酸化アルミニウム膜を設けると好ましい。特に膜密度が3.2g/cm
3以上、さらに好ましくは3.6g/cm
3以上の酸化アルミニウム膜を用いるとよい。酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上150nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下であるとよい。当該酸化アルミニウム膜の密度を上記数値とすることで、水分や水素が酸化物半導体膜に侵入し、拡散することを抑制することができる。また、酸化物半導体膜106または/および絶縁膜110から酸素が抜けてしまうことを抑制することができる。
【0134】
また、
図4に示すようにトランジスタ160のゲート絶縁膜105をゲート絶縁膜105aと側壁絶縁膜105bの積層構造にしてもよい。
【0135】
ゲート絶縁膜105aと側壁絶縁膜105bの形成方法、材料などは、ゲート絶縁膜104を参酌することができる。また、側壁絶縁膜105bは除去処理で除去しすぎないようにストッパーとして機能させるためゲート絶縁膜105aとエッチング選択比がとれるものを用いる。
【0136】
このような構成にすることにより、微細化によりゲート絶縁膜の薄膜化による酸化物半導体膜からゲート電極へ流れるリーク電流を抑えることができる。また、Loff領域を長くすることができ、より寄生容量を低減することができる。
【0137】
以上のように、本実施の形態に示す酸化物半導体を用いた半導体装置において、導電膜に対し、ゲート絶縁膜が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極およびドレイン電極を形成することができる。酸化物半導体膜のLoff領域がチャネル領域との電界緩和領域として機能するため、ホットキャリアの発生を抑制することができ、ホットキャリアのゲート絶縁膜への侵入によるしきい値電圧のばらつきを低減することが可能である。よって、トランジスタのオフ電流を低減でき、かつ、ホットキャリア劣化を低減できる。
【0138】
また、ゲート絶縁膜104の膜厚を調整することにより、ソース電極(またはドレイン電極)より高抵抗なLoff領域の長さを最適化することができるので酸化物半導体膜のチャネル領域とソース電極(またはドレイン電極)との間に生じる抵抗の増大を抑制することができる。よって、トランジスタ150のオン電流を高くすることができる。
【0139】
また、ゲート電極とソース電極(またはドレイン電極)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタを高速駆動させることを可能とすることができる。さらにソース電極およびドレイン電極を形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0140】
したがって、酸化物半導体を用いた半導体装置のオフ電流を低減でき、かつ、オン電流の低下を抑制することができ、また、寄生容量を低減させることができるなどの安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、当該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0141】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0142】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の他の一態様である半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を
図5乃至
図7を用いて説明する。
【0143】
図5に、トランジスタ250の平面図および断面図を示す。
図5(A)は平面図であり、
図5(B)は、
図5(A)におけるC−D断面に係る断面図である。なお、
図5(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ250の構成要素の一部(例えば、絶縁膜210など)を省略している。
【0144】
<本実施の形態における半導体装置の構成>
図5は、本実施の形態の方法にて作製された半導体装置の構成例である。
図5に示すトランジスタ250は、絶縁表面を有する基板200上に設けられたゲート電極202と、ゲート電極202を少なくとも覆っているゲート絶縁膜204と、ゲート絶縁膜204上に設けられた酸化物半導体膜206と、ゲート絶縁膜204および酸化物半導体膜206を介してゲート電極202を挟み、ゲート電極202の上面と重畳しないソース電極208aおよびドレイン電極208bと、酸化物半導体膜206、ソース電極208aおよびドレイン電極208b上に設けられた絶縁膜210と、を有する。
【0145】
また、先の実施の形態のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ250のオン電流を高めることができる。
【0146】
また、ゲート電極202とソース電極208a(またはドレイン電極208b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ250を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0147】
<本実施の形態における半導体装置の作製方法>
トランジスタ250の作製方法について
図6および
図7を用いて説明する。
【0148】
まず、基板200上にゲート電極202を形成する(
図6(A)参照)。
【0149】
基板200、ゲート電極202の形成方法、材料などは、先の実施の形態の基板100、ゲート電極102を参酌することができる。
【0150】
また、基板200上に下地絶縁膜を形成し、下地絶縁膜上にゲート電極202を形成してもよい。下地絶縁膜の形成方法、材料などは、先の実施の形態の下地絶縁膜を参酌することができる。
【0151】
次に、基板200およびゲート電極202上にゲート絶縁膜204を形成する(
図6(B)参照)。なお、ゲート絶縁膜204は、少なくともゲート電極202を覆っていればよい。
【0152】
ゲート絶縁膜204の形成方法、材料などは、先の実施の形態のゲート絶縁膜104を参酌することができる。
【0153】
次に、ゲート絶縁膜204上に酸化物半導体膜206を形成する(
図6(C)参照)。
【0154】
酸化物半導体膜206の形成方法、材料などは、先の実施の形態の酸化物半導体膜106を参酌することができる。
【0155】
次に、ゲート絶縁膜204および酸化物半導体膜206上に、ソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜207を成膜する(
図7(A)参照)。導電膜207は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。本実施の形態では、
図7(A)に示すように領域215aと、領域215bとの間に段差が生じている。
【0156】
導電膜207の形成方法、材料などは、先の実施の形態の導電膜107を参酌することができる。
【0157】
次に、導電膜207に除去(研磨)処理を行うことにより、酸化物半導体膜206が露出するように導電膜207の一部を除去し、ソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成する(
図7(B)参照)。
【0158】
除去処理によって、ゲート電極202と重畳する領域の導電膜207が除去され、自己整合的にソース電極208aおよびドレイン電極208bが形成される。除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を用いることが好適である。
【0159】
本実施の形態では、
図7(A)に示すように領域215aと、領域215bとの間に生じた段差を利用して、酸化物半導体膜206上に設けられた導電膜を除去処理(具体的には、CMP処理)することにより、ソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成することができる。
【0160】
なお、本実施の形態では、ソース電極208aおよびドレイン電極208bの上面と酸化物半導体膜206の上面の高さは揃っているが、これに限られず、ソース電極208aおよびドレイン電極208bの上面と酸化物半導体膜206の上面の高さが多少ずれていても構わない。
【0161】
なお、本実施の形態では、ゲート電極202と重畳する領域の導電膜207の除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜207の材料、膜厚、および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。また、CMP処理で領域215bにおける導電膜207の大部分を除去し、残りの導電膜207をドライエッチング処理で除去してもよい。このようにすることにより、導電膜207と酸化物半導体膜206とのエッチング選択比がとりやすくなるものもある。そのため、酸化物半導体膜206が薄くなることを抑制することができる。
【0162】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、導電膜207の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0163】
また、CMP処理のかわりに、導電膜207上に該導電膜207とエッチング選択比が同じであるレジストマスクを用いてエッチングをして酸化物半導体膜206が露出するように導電膜207の一部を除去し、ソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成してもよい。
【0164】
また、本実施の形態では、導電膜207の一部を除去し、該導電膜207を加工してソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成したが、これに限られず、先に導電膜207を加工し、加工後に該導電膜207の一部を除去してソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成してもよい。
【0165】
このように、酸化物半導体膜206が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極208aおよびドレイン電極208bを形成することができる。そのため、ソース電極およびドレイン電極を形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0166】
また、先の実施の形態のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜306に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ250のオン電流を高めることができる。
【0167】
また、ゲート電極202とソース電極208a(またはドレイン電極208b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ250を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0168】
次に、ソース電極208a、ドレイン電極208bおよび酸化物半導体膜206上に絶縁膜210を形成する(
図7(C)参照)。
【0169】
絶縁膜210の形成方法、材料などは、先の実施の形態の絶縁膜110を参酌することができる。
【0170】
また、絶縁膜210上に酸化アルミニウム膜を設けると好ましい。特に膜密度が3.2g/cm
3以上、さらに好ましくは3.6g/cm
3以上の酸化アルミニウム膜を用いるとよい。酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上150nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下であるとよい。当該酸化アルミニウム膜の密度を上記数値とすることで、水分や水素が酸化物半導体膜に侵入し、拡散することを抑制することができる。また、酸化物半導体膜206または/および絶縁膜210から酸素が抜けてしまうことを抑制することができる。
【0171】
以上のように、本実施の形態に示す酸化物半導体を用いた半導体装置において、導電膜に対し、酸化物半導体膜が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極およびドレイン電極を形成することができる。また、Loff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0172】
また、ゲート電極とソース電極(またはドレイン電極)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタを高速駆動させることを可能とすることができる。さらにソース電極およびドレイン電極を形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0173】
したがって、酸化物半導体を用いた半導体装置のオン電流の低下を抑制することができ、また、寄生容量を低減させることができるなどの安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、当該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0174】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0175】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の他の一態様である半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を
図8乃至
図10を用いて説明する。
【0176】
図8に、トランジスタ350の平面図および断面図を示す。
図8(A)は平面図であり、
図8(B)は、
図8(A)におけるE−F断面に係る断面図である。なお、
図8(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ350の構成要素の一部(例えば、絶縁膜310など)を省略している。
【0177】
<本実施の形態における半導体装置の構成>
図8は、本実施の形態の方法にて作製された半導体装置の構成例である。
図8に示すトランジスタ350は、絶縁表面を有する基板上に設けられた下地絶縁膜301と、下地絶縁膜301中に埋め込まれ、かつ、上面の少なくとも一部が下地絶縁膜301から露出したゲート電極303と、ゲート電極303を少なくとも覆っているゲート絶縁膜304と、ゲート電極303と重畳せず、ゲート絶縁膜304上に設けられたソース電極308aおよびドレイン電極308bと、少なくともゲート電極303と重畳し、少なくとも一部がソース電極308aおよびドレイン電極308bと接し、ゲート絶縁膜304上に設けられた酸化物半導体膜306と、酸化物半導体膜306、ソース電極308aおよびドレイン電極308b上に設けられた絶縁膜310と、を有する。
【0178】
また、酸化物半導体膜306の一側面がソース電極308aと接し、酸化物半導体膜306の一側面に対向する側面がドレイン電極308bと接しているため、実施の形態1のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ350のオン電流を高めることができる。また、Loff領域を設ける構成としてもよい。
【0179】
また、ゲート電極303とソース電極308a(またはドレイン電極308b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ350を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0180】
<本実施の形態における半導体装置の作製方法>
トランジスタ350の作製方法について
図9および
図10を用いて説明する。
【0181】
まず、絶縁表面を有する基板上に下地絶縁膜300を形成し、下地絶縁膜300上にレジストマスク320を選択的に形成する(
図9(A)参照)。
【0182】
基板、下地絶縁膜300の材料としては、光が透過する材料を用いる。ここで、本明細書では、「光」とは、露光機で用いる光を指す。基板、下地絶縁膜300の形成方法、材料などは、先の実施の形態の基板100、下地絶縁膜を参酌することができる。レジストマスク320は、フォトリソグラフィ法により形成すればよい。
【0183】
次に、下地絶縁膜300をエッチングし、凹部を有する下地絶縁膜301を形成する。下地絶縁膜301形成後、レジストマスク320を除去する(
図9(B)参照)。
【0184】
次に、下地絶縁膜301上に導電膜302を形成する(
図9(C)参照)。
【0185】
導電膜302の材料としては、光が透過しない材料を用いる。導電膜302の形成方法、材料などは、先の実施の形態のゲート電極102を参酌することができる。
【0186】
次に、導電膜302に除去(研磨)処理を行うことにより、下地絶縁膜301が露出するように導電膜302の一部を除去し、ゲート電極303を形成する(
図9(D)参照)。
【0187】
除去処理によって、レジストマスク320が重畳していた下地絶縁膜301上の導電膜302が除去され、下地絶縁膜301に設けられた凹部を埋めるようにゲート電極303が形成される。除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を用いることが好適である。本実施の形態では、CMP処理によって、レジストマスク320が重畳していた下地絶縁膜301上の導電膜302を除去し、ゲート電極303を形成する。
【0188】
なお、本実施の形態では、レジストマスク320が重畳していた下地絶縁膜301上の導電膜302の除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜302の材料、膜厚、および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0189】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、導電膜302の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0190】
また、CMP処理のかわりに、導電膜302上に該導電膜302とエッチング選択比が同じであるレジストマスクを用いてエッチングをして下地絶縁膜301が露出するように導電膜302の一部を除去し、ゲート電極303を形成してもよい。
【0191】
次に、下地絶縁膜301およびゲート電極303上にゲート絶縁膜304を形成し、ゲート絶縁膜304上にソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜307を形成する(
図10(A)参照)。なお、ゲート絶縁膜304は、少なくともゲート電極303を覆っていればよい。
【0192】
ゲート絶縁膜304の材料としては、光が透過する材料を用いる。例えば、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタル、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、または窒化酸化シリコン等を用いて形成することができる。
【0193】
ゲート絶縁膜304は、250℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下の温度における加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。
【0194】
導電膜307は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。また、導電膜307の材料として、後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。導電膜307として、光が透過する材料を用いる。例えば、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3−SnO
2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3−ZnO)、またはこれらの金属酸化物膜に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。また、上記金属膜と、上記金属酸化物膜の積層構造とすることもできる。
【0195】
次に、導電膜307上に感光性樹脂を形成する。基板側から裏面露光を行い、ゲート電極303と重畳しない感光性樹脂が露光され、固定化し、ゲート電極303と重畳しない導電膜307上にレジストマスク330を形成する(
図10(B)参照)。
【0196】
なお、裏面露光するため、基板、下地絶縁膜、導電膜は光を透過する材料、ゲート電極は光を透過させない材料でなければならない。導電膜に金属膜などの光を透過させない膜を用いると遮光されてしまうため、感光性樹脂を露光することができなくなってしまう。
【0197】
次に、レジストマスク330に対し、酸素プラズマ処理(アッシング)などを行い、レジストマスク330の形成されない領域を広げてもよい。このようにすることで、後に形成される導電膜307を加工して、ゲート電極303とソース電極308a(またはドレイン電極308b)とが重畳しない領域(Loff領域)を広げることができる。
【0198】
次に、レジストマスク330を用いて導電膜307をエッチングし、ソース電極308aおよびドレイン電極308bを形成する(
図10(C)参照)。
【0199】
このように、裏面露光によりゲート電極303と重畳しないソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜上にレジストマスクを形成し、エッチング工程によりソース電極308aおよびドレイン電極308bを形成することができる。これにより、ゲート電極303と重畳しないソース電極308aおよびドレイン電極308bを自己整合的に形成することができる。そのため、ソース電極308aおよびドレイン電極308bを形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0200】
次に、ソース電極308aおよびドレイン電極308b上に酸化物半導体膜306を形成し、酸化物半導体膜306、ソース電極308aおよびドレイン電極308b上に絶縁膜310を形成する(
図10(D)参照)。
【0201】
酸化物半導体膜306および絶縁膜310の形成方法、材料などは、先の実施の形態の酸化物半導体膜106および絶縁膜110を参酌することができる。
【0202】
また、酸化物半導体膜306において、実施の形態1のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜306に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ350のオン電流を高めることができる。また、Loff領域を設ける場合、Loff領域がチャネル領域との電界緩和領域として機能する。このため、ホットキャリアの発生を抑制することができ、ホットキャリアのゲート絶縁膜への侵入によるしきい値電圧のばらつきを低減することが可能である。また、トランジスタ350のオフ電流を低減することができる。
【0203】
また、ゲート電極303とソース電極308a(またはドレイン電極308b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ350を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0204】
また、絶縁膜310上にさらに酸化アルミニウム膜を設けると好ましい。特に膜密度が3.2g/cm
3以上、さらに好ましくは3.6g/cm
3以上の酸化アルミニウム膜を用いるとよい。酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上150nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下であるとよい。当該酸化アルミニウム膜の密度を上記数値とすることで、水分や水素が酸化物半導体膜に侵入し、拡散することを抑制することができる。また、酸化物半導体膜306または/および絶縁膜310から酸素が抜けてしまうことを抑制することができる。
【0205】
以上のように、本実施の形態に示す酸化物半導体を用いた半導体装置において、裏面露光によりゲート電極と重畳しないソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜上にレジストマスクを形成し、エッチング工程によりゲート電極と重畳しないソース電極およびドレイン電極を自己整合的に形成することができる。また、Loff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0206】
さらにソース電極およびドレイン電極を形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0207】
また、Loff領域を設けると、Loff領域がチャネル領域との電界緩和領域として機能する。このため、ホットキャリアの発生を抑制することができ、ホットキャリアのゲート絶縁膜への侵入によるしきい値電圧のばらつきを低減することが可能である。よって、トランジスタのオフ電流を低減でき、かつ、ホットキャリア劣化を低減できる。
【0208】
したがって、酸化物半導体を用いた半導体装置のオフ電流を低減でき、かつ、オン電流の低下を抑制することができ、また、寄生容量を低減させることができるなどの安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、当該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0209】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0210】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の他の一態様である半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を
図11乃至
図14を用いて説明する。
【0211】
図11に、トランジスタ450の平面図および断面図を示す。
図11(A)は平面図であり、
図11(B)は、
図11(A)におけるG−H断面に係る断面図である。なお、
図11(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ450の構成要素の一部(例えば、絶縁膜410など)を省略している。
【0212】
<本実施の形態における半導体装置の構成>
図11は、本実施の形態の方法にて作製された半導体装置の構成例である。
図11に示すトランジスタ450は、絶縁表面を有する基板上に設けられた下地絶縁膜401と、下地絶縁膜401中に埋め込まれ、かつ、上面の少なくとも一部が下地絶縁膜401から露出したゲート電極403と、ゲート電極403を少なくとも覆っているゲート絶縁膜404と、ゲート電極403と重畳せず、ゲート絶縁膜404上に設けられたソース電極408aおよびドレイン電極408bと、少なくともゲート電極403と重畳し、少なくとも一部がソース電極408aおよびドレイン電極408bと接し、ゲート絶縁膜404上に設けられた島状の酸化物半導体膜406と、島状の酸化物半導体膜406、ソース電極408aおよびドレイン電極408b上に設けられた絶縁膜410と、を有する。また、島状の酸化物半導体膜406の上面とソース電極408aおよびドレイン電極408bの上面の高さは揃っている。
【0213】
また、島状の酸化物半導体膜406の一側面がソース電極408aと接し、島状の酸化物半導体膜406の一側面に対向する側面がドレイン電極408bと接しているため、先の実施の形態のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ450のオン電流を高めることができる。
【0214】
また、ゲート電極403とソース電極408a(またはドレイン電極408b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ450を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0215】
<本実施の形態における半導体装置の作製方法>
トランジスタ450の作製方法について
図12乃至
図14を用いて説明する。
【0216】
まず、絶縁表面を有する基板上に下地絶縁膜401aを形成し、下地絶縁膜401上にゲート電極403を形成する(
図12(A)参照)。
【0217】
基板、下地絶縁膜401aの材料としては、光が透過する材料を用いる。基板、下地絶縁膜401a、ゲート電極403の形成方法、材料などは、先の実施の形態の基板100、下地絶縁膜、ゲート電極102を参酌することができる。また、ゲート電極403は、下地絶縁膜401a上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により形成する。
【0218】
次に、下地絶縁膜401aおよびゲート電極403上に下地絶縁膜401bを形成する(
図12(B)参照)。
【0219】
下地絶縁膜401bの形成方法、材料などは、下地絶縁膜401aを参酌することができる。
【0220】
次に、下地絶縁膜401bに除去(研磨)処理を行うことによりゲート電極403が露出するように下地絶縁膜401bの一部を除去し、下地絶縁膜401を形成する(
図12(C)参照)。
【0221】
除去処理によって、ゲート電極403上の下地絶縁膜401bが除去され、下地絶縁膜401が形成される。除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を用いることが好適である。本実施の形態では、CMP処理によって、ゲート電極403上の下地絶縁膜401bを除去し、下地絶縁膜401を形成する。
【0222】
なお、本実施の形態では、ゲート電極403上の下地絶縁膜401bの除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、下地絶縁膜401bの材料、膜厚、および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0223】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、下地絶縁膜401bの表面の平坦性をより向上させることができる。
【0224】
また、CMP処理のかわりに、下地絶縁膜401b上に該下地絶縁膜401bとエッチング選択比が同じであるレジストマスクを用いてエッチングをしてゲート電極403が露出するように下地絶縁膜401bの一部を除去し、下地絶縁膜401を形成してもよい。
【0225】
次に、下地絶縁膜401およびゲート電極403上にゲート絶縁膜404を形成し、ゲート絶縁膜404上に酸化物半導体膜405を形成する(
図13(A)参照)。なお、ゲート絶縁膜404は、少なくともゲート電極403を覆っていればよい。
【0226】
ゲート絶縁膜404の材料としては、光が透過する材料を用いる。ゲート絶縁膜404および酸化物半導体膜405の形成方法、材料などは、先の実施の形態のゲート絶縁膜304および酸化物半導体膜106を参酌することができる。
【0227】
次に、酸化物半導体膜405上に感光性樹脂を形成する。基板側から裏面露光を行い、ゲート電極403と重畳する感光性樹脂が露光されず、固定化し、ゲート電極403と重畳する酸化物半導体膜405上にレジストマスク430を形成する(
図13(B)参照)。
【0228】
なお、裏面露光するため、基板、下地絶縁膜、酸化物半導体膜は光を透過する材料、ゲート電極は光を透過させない材料でなければならない。酸化物半導体膜に光を透過させない膜を用いると遮光されてしまうため、感光性樹脂を露光することができなくなってしまう。
【0229】
次に、レジストマスク430を用いて酸化物半導体膜405をエッチングし、ゲート電極403と重畳する島状の酸化物半導体膜406を形成する(
図13(C)参照)。
【0230】
次に、ゲート絶縁膜404および島状の酸化物半導体膜406上にソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜407を成膜する(
図14(A)参照)。導電膜407は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。本実施の形態では、
図14(A)に示すように領域415aと、領域415bとの間に段差が生じている。
【0231】
導電膜407の形成方法、材料などは、先の実施の形態の導電膜107を参酌することができる。
【0232】
次に、導電膜407に除去(研磨)処理を行うことにより、島状の酸化物半導体膜406が露出するように導電膜407の一部を除去し、ソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成する(
図14(B)参照)。
【0233】
除去処理によって、ゲート電極403と重畳する領域の導電膜407が除去され、自己整合的にソース電極408aおよびドレイン電極408bが形成される。除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を用いることが好適である。
【0234】
本実施の形態では、
図14(A)に示すように領域415aと、領域415bとの間に生じた段差を利用して、島状の酸化物半導体膜406上に設けられた導電膜を除去処理(具体的には、CMP処理)することにより、ソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成することができる。
【0235】
なお、本実施の形態では、ソース電極408aおよびドレイン電極408bの上面と島状の酸化物半導体膜406の上面の高さは揃っているが、これに限られず、ソース電極408aおよびドレイン電極408bの上面と島状の酸化物半導体膜406の上面の高さが多少ずれていても構わない。
【0236】
なお、本実施の形態では、ゲート電極403と重畳する領域の導電膜407の除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜207の材料、膜厚、および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。また、CMP処理で領域415bにおける導電膜407の大部分を除去し、残りの導電膜407をドライエッチング処理で除去してもよい。このようにすることにより、導電膜407と島状の酸化物半導体膜406とのエッチング選択比がとりやすくなるものもある。そのため、島状の酸化物半導体膜406が薄くなることを抑制することができる。
【0237】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、導電膜407の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0238】
また、CMP処理のかわりに、導電膜407上に該導電膜407とエッチング選択比が同じであるレジストマスクを用いてエッチングをして島状の酸化物半導体膜406が露出するように導電膜407の一部を除去し、ソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成してもよい。
【0239】
また、本実施の形態では、導電膜407の一部を除去し、該導電膜407を加工してソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成したが、これに限られず、先に導電膜407を加工し、加工後に該導電膜407の一部を除去してソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成してもよい。
【0240】
このように、裏面露光によりゲート電極403と重畳する酸化物半導体膜上にレジストマスクを形成し、エッチング工程により島状の酸化物半導体膜を形成し、導電膜407に対して島状の酸化物半導体膜が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成することができる。これにより、ゲート電極403と重畳しないソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成することができる。そのため、ソース電極408aおよびドレイン電極408bを形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0241】
次に、島状の酸化物半導体膜406、ソース電極408aおよびドレイン電極408b上に絶縁膜410を形成する(
図14(C)参照)。
【0242】
絶縁膜410の形成方法、材料などは、先の実施の形態の絶縁膜110を参酌することができる。
【0243】
また、島状の酸化物半導体膜406において、先の実施の形態のようなLoff領域(高抵抗領域)がなく、島状の酸化物半導体膜406に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタ450のオン電流を高めることができる。
【0244】
また、ゲート電極403とソース電極408a(またはドレイン電極408b)とが重畳しないため、寄生容量を低減させることができ、トランジスタ450を高速駆動させることを可能とすることができる。
【0245】
また、絶縁膜410上にさらに酸化アルミニウム膜を設けると好ましい。特に膜密度が3.2g/cm
3以上、さらに好ましくは3.6g/cm
3以上の酸化アルミニウム膜を用いるとよい。酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以上150nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下であるとよい。当該酸化アルミニウム膜の密度を上記数値とすることで、水分や水素が酸化物半導体膜に侵入し、拡散することを抑制することができる。また、島状の酸化物半導体膜406または/および絶縁膜410から酸素が抜けてしまうことを抑制することができる。
【0246】
以上のように、本実施の形態に示す酸化物半導体を用いた半導体装置において、裏面露光によりゲート電極と重畳する酸化物半導体膜上にレジストマスクを形成し、導電膜に対して島状の酸化物半導体膜が露出するように除去処理を行うことで、自己整合的にソース電極およびドレイン電極を形成することができる。また、Loff領域(高抵抗領域)がなく、島状の酸化物半導体膜に寄与する抵抗を低減することができる。よって、トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0247】
さらにソース電極およびドレイン電極を形成する際にアライメントのずれがなく、チャネル長を微細化することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0248】
したがって、酸化物半導体を用いた半導体装置のオン電流の低下を抑制することができ、寄生容量を低減させることができるなどの安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、当該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0249】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0250】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0251】
図15は、半導体装置の構成の一例である。
図15(A)に、半導体装置の断面図を、
図15(B)に半導体装置の平面図を、
図15(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、
図15(A)は、
図15(B)のI−J、およびK−Lにおける断面に相当する。
【0252】
図15(A)および
図15(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ760を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ762を有するものである。トランジスタ762としては、上述の実施の形態で示すトランジスタの構造を適用することができる。ここでは、実施の形態1のトランジスタ150を用いた場合の例を記載する。
【0253】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0254】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、情報を保持するために酸化物半導体を用いた実施の形態1に示すようなトランジスタ150に用いる他、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0255】
図15(A)におけるトランジスタ760は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板700に設けられたチャネル形成領域716と、チャネル形成領域716を挟むように設けられた不純物領域720と、不純物領域720に接する金属間化合物領域724と、チャネル形成領域716上に設けられたゲート絶縁膜708と、ゲート絶縁膜708上に設けられたゲート電極710と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0256】
基板700上にはトランジスタ760を囲むように素子分離絶縁膜706が設けられており、トランジスタ760を覆うように絶縁膜728、および絶縁膜730が設けられている。なお、トランジスタ760において、ゲート電極710の側面に側壁絶縁膜(サイドウォール絶縁膜)を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域720としてもよい。
【0257】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ760は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ760を覆うように絶縁膜を2層形成する。トランジスタ762および容量素子764の形成前の処理として、2層の該絶縁膜にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜728、絶縁膜730を形成し、同時にゲート電極710の上面を露出させる。
【0258】
絶縁膜728、絶縁膜730は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜728、絶縁膜730は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0259】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜728、絶縁膜730を形成してもよい。
【0260】
なお、本実施の形態において、絶縁膜728として窒化シリコン膜、絶縁膜730として酸化シリコン膜を用いる。
【0261】
トランジスタ762は作製工程において、絶縁膜730表面にゲート電極748およびゲート絶縁膜737を形成し、ゲート電極710上のゲート絶縁膜737に開口を設け、ゲート電極710およびゲート絶縁膜737上に設けられた導電膜を化学機械研磨処理により除去する工程を用いて、ソース電極742aおよびドレイン電極742bを形成する。
【0262】
よって、トランジスタ762は、Loff幅を小さくすることができるため、トランジスタ762のオン特性を向上させることが可能となる。
【0263】
ソース電極742aおよびドレイン電極742bの形成工程におけるゲート電極748と重畳する導電膜を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきを少ない微細な構造を有するトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
【0264】
除去処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化したゲート絶縁膜737、ソース電極742aおよびドレイン電極742b上に酸化物半導体膜744を形成する。
【0265】
図15(A)に示すトランジスタ762は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタである。ここで、トランジスタ762に含まれる酸化物半導体膜744は、上述の実施の形態にて記載したように、水分や水素などの不純物が極力除去されて高純度化されたものであることが望ましい。また、酸素欠損が十分に補填されたものであることが好ましい。このような酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ762を得ることができる。
【0266】
トランジスタ762は、オフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0267】
トランジスタ762上には、層間絶縁膜750が単層または積層で設けられている。本実施の形態では、層間絶縁膜750として、酸化アルミニウム膜を用いる。酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm
3以上、好ましくは3.6g/cm
3以上)とすることによって、トランジスタ762に安定な電気特性を付与することができる。
【0268】
また、層間絶縁膜750を介して、トランジスタ762のソース電極742aと重畳する領域には、導電膜753が設けられており、ソース電極742aと、層間絶縁膜750と、導電膜753とによって、容量素子764が構成される。すなわち、トランジスタ762のソース電極742aは、容量素子764の一方の電極として機能し、導電膜753は、容量素子764の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子764を設けない構成とすることもできる。また、容量素子764は、別途、トランジスタ762の上方に設けてもよい。
【0269】
トランジスタ762および容量素子764の上には絶縁膜752が設けられている。そして、絶縁膜752上にはトランジスタ762と、他のトランジスタを接続するための配線756が設けられている。
図15(A)には図示しないが、配線756は、層間絶縁膜750および絶縁膜752などに形成された開口に形成された電極を通してドレイン電極742bと電気的に接続される。
【0270】
図15(A)および
図15(B)において、トランジスタ760と、トランジスタ762とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ760のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体膜744の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ762および容量素子764が、トランジスタ760の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子764の導電膜753は、トランジスタ760のゲート電極710と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0271】
なお、ドレイン電極742bおよび配線756の電気的接続は、ドレイン電極742bおよび配線756を直接接触させて行ってもよいし、ドレイン電極742bおよび配線756の間の絶縁膜に電極を設けて、該電極を介して行ってもよい。また、間に介する電極は、複数でもよい。
【0272】
次に、
図15(A)および
図15(B)に対応する回路構成の一例を
図15(C)に示す。
【0273】
図15(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ760のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ760のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ762のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ762のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ760のゲート電極と、トランジスタ762のソース電極またはドレイン電極の一方は、容量素子764の電極の他方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子764の電極の一方は電気的に接続されている。
【0274】
図15(C)に示す半導体装置では、トランジスタ760のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0275】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ762がオン状態となる電位にして、トランジスタ762をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ760のゲート電極、および容量素子764に与えられる。すなわち、トランジスタ760のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ762がオフ状態となる電位にして、トランジスタ762をオフ状態とすることにより、トランジスタ760のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0276】
トランジスタ762のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ760のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0277】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ760のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ760をnチャネル型とすると、トランジスタ760のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Hは、トランジスタ760のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ760を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をV
th_HとV
th_Lの中間の電位V
0とすることにより、トランジスタ760のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ760は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ760は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0278】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ760が「オフ状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ760が「オン状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0279】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0280】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0281】
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、および該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0282】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0283】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、実施の形態1乃至実施の形態4に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態5に示した構成と異なる構成について、
図16および
図17を用いて説明を行う。
【0284】
図16(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、
図16(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、
図16(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて
図16(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0285】
図16(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ762のソース電極またはドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ762のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ762のソース電極またはドレイン電極と容量素子764の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0286】
次に、
図16(A)に示す半導体装置(メモリセル850)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0287】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ762がオン状態となる電位として、トランジスタ762をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子764の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ762がオフ状態となる電位として、トランジスタ762をオフ状態とすることにより、容量素子764の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0288】
酸化物半導体を用いたトランジスタ762は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ762をオフ状態とすることで、容量素子764の第1の端子の電位(あるいは、容量素子764に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0289】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ762がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子764とが導通し、ビット線BLと容量素子764の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子764の第1の端子の電位(あるいは容量素子764に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0290】
例えば、容量素子764の第1の端子の電位をV、容量素子764の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル850の状態として、容量素子764の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2つの状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0291】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0292】
このように、
図16(A)に示す半導体装置は、トランジスタ762のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子764に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0293】
次に、
図16(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0294】
図16(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として
図16(A)に示したメモリセル850を複数有するメモリセルアレイ851aおよびメモリセルアレイ851bを有し、下部に、メモリセルアレイ851(メモリセルアレイ851aおよびメモリセルアレイ851b)を動作させるために必要な周辺回路853を有する。なお、周辺回路853は、メモリセルアレイ851と電気的に接続されている。
【0295】
図16(B)に示した構成とすることにより、周辺回路853をメモリセルアレイ851(メモリセルアレイ851aおよびメモリセルアレイ851b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0296】
周辺回路853に設けられるトランジスタは、実施の形態5のトランジスタ762とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0297】
なお、
図16(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ851(メモリセルアレイ851aと、メモリセルアレイ851b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層する構成としても良い。
【0298】
次に、
図16(A)に示したメモリセル850の具体的な構成について
図17を用いて説明を行う。
【0299】
図17は、メモリセル850の構成の一例である。
図17(A)に、メモリセル850の断面図を、
図17(B)にメモリセル850の平面図をそれぞれ示す。ここで、
図17(A)は、
図17(B)のM−N、およびO−Pにおける断面に相当する。
【0300】
図17(A)および
図17(B)に示すトランジスタ762は、実施の形態1乃至実施の形態4で示した構成と同一の構成とすることができる。
【0301】
トランジスタ762上には、層間絶縁膜750が単層または積層で設けられている。また、層間絶縁膜750を介して、トランジスタ762のソース電極742aと重畳する領域には、導電膜753が設けられており、ソース電極742aと、層間絶縁膜750と、導電膜753とによって、容量素子764が構成される。すなわち、トランジスタ762のソース電極742aは、容量素子764の一方の電極として機能し、導電膜753は、容量素子764の他方の電極として機能する。
【0302】
トランジスタ762および容量素子764の上には絶縁膜752が設けられている。そして、絶縁膜752上にはメモリセル850と、隣接するメモリセル850を接続するための配線756が設けられている。図示しないが、配線756は、層間絶縁膜750および絶縁膜752などに形成された開口を介してトランジスタ762のドレイン電極742bと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電膜を設け、該他の導電膜を介して、配線756とドレイン電極742bとを電気的に接続してもよい。なお、配線756は、
図16(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0303】
図17(A)および
図17(B)において、トランジスタ762のドレイン電極742bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することができる。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0304】
図17(A)に示す平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0305】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体を用いたトランジスタにより形成されている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0306】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0307】
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、および該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0308】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0309】
(実施の形態7)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を
図18乃至
図21を用いて説明する。
【0310】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴がある。
【0311】
通常のSRAMは、
図18(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150F
2である。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0312】
それに対して、DRAMはメモリセルが
図18(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F
2以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
【0313】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F
2前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
【0314】
図19に携帯機器のブロック図を示す。
図19に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(IF)909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0315】
図20に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。
図20に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路は、画像データ(入力画像データ)からの信号線、メモリ952、およびメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、および制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0316】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、およびディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0317】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から読み出される。
【0318】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、およびディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0319】
このようにメモリ952およびメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示を行う。なお、メモリ952およびメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952およびメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0320】
図21に電子書籍のブロック図を示す。
図21はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0321】
ここでは、
図21のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。例えば、ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、特定の箇所を周囲と区別するハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが指定した箇所の情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0322】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0323】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。