【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、さらに、前記所定の流量比は、前記混合ガスが含有する水蒸気量を前記混合ガスが含有する炭素量で除算したS/C比が5以上になるように、前記燃料供給装置と前記水蒸気供給装置とを制御する請求項1〜請求項2に記載される燃料電池システム。
前記制御装置は、さらに、前記燃料電池が発電しているときに、前記所定の流量比は、前記混合ガスが含有する水蒸気量を前記混合ガスが含有する炭素量で除算したS/C比が5以下になるように、前記燃料供給装置と前記水蒸気供給装置とを制御する請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載される燃料電池システム。
前記制御装置は、前記燃料電池が発電しており、かつ、前記電力負荷に流れる電流が所定電流に達した場合に、前記還元性ガスが前記燃料極に供給されないように、前記還元性ガス供給装置を制御し、前記不活性ガスが前記燃料極に供給されないように、前記不活性ガス供給装置を制御する請求項8に記載される燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような燃料電池システムは、所定の電力を発電する定格運転に移行される前に、燃料電池を発電可能な温度まで昇温した後に、定格運転時の所定温度まで発電に伴う反応熱を利用しながら昇温を行うにあたり、燃料電池から電力負荷に流れる電流を徐々に増加させる期間を設ける必要がある。このような燃料電池システムは、燃料電池が発電を開始してから定格運転に移行するまでの時間を短縮することが望まれている。
【0007】
本発明の課題は、燃料電池が発電を開始してから所定の電力を発電する定格運転に移行するまでの時間を短縮する燃料電池システムおよび燃料電池運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による燃料電池システムは、空気極と燃料極とを有する燃料電池と、燃料ガスをその燃料極に供給する燃料供給装置と、水蒸気をその燃料極に供給する水蒸気供給装置と、制御装置とを備えている。その制御装置は、その燃料電池が発電する前に、その燃料極が配置される発電室の温度が所定温度以上であるときに、その水蒸気とその燃料ガスとが混合された混合ガスがその燃料極に供給されるように、その燃料供給装置とその水蒸気供給装置とを制御する。その所定温度は、400度以上とする。
【0009】
このような燃料電池システムは、発電室の温度が概ね400℃以上であるときにその混合ガスを燃料極に供給することにより、その水蒸気と燃料ガスとから本格的に水素が生成される改質反応が燃料極で起こりはじめ、燃料電池が発電する前に、その水素によりその燃料極を還元雰囲気に配置することができる。なお、改質反応を利用できる温度は、必要な水素量と燃料極の改質触媒としての活性能力次第であるが、発電室の温度が概ね350℃よりも高いときに改質反応が起こり始めるので、発電室の温度は350℃以上が好ましく、確実な改質反応を得るには、400℃以上がさらに好ましい。このような燃料電池システムは、燃料電池が発電を開始する前からその燃料極が還元雰囲気で配置されることにより、燃料電池が発電を開始する以前の昇温段階から燃料電池の燃料極の雰囲気を還元雰囲気に維持しながら、発電に使用する燃料ガスを用いて昇温することができ、所定温度に昇温後は速やかに燃料電池が発電を開始し、定格運転に移行するまでの時間を短縮することができる。
【0010】
その制御装置は、さらに、その混合ガスがその水蒸気を含有する水蒸気量をその混合ガスが炭素を含有する炭素量で除算したS/C比が5以上になるように、その燃料供給装置とその水蒸気供給装置とを制御する。
【0011】
このような燃料電池システムは、その燃料極に炭素が析出することを防止することができ、燃料電池が発電するときに燃料極または絶縁部で電流がリークすることを防止することができる。
【0012】
本発明による燃料電池システムは、その燃料極が配置される発電室の温度を計測する温度計をさらに備えている。このとき、その制御装置は、その温度に基づいて決定されたタイミングでその混合ガスがその燃料極に供給されるように、その燃料供給装置とその水蒸気供給装置とを制御する。
【0013】
その改質反応は、その燃料極の温度が高いほど促進される。このため、このような燃料電池システムは、その発電室の温度がその所定の温度以上になった後にその混合ガスをその燃料極に供給することにより、その改質反応をより適切に進行させることができ、その燃料極をより高効率に還元雰囲気に配置することができる。
【0014】
その制御装置は、さらに、その燃料電池が発電しているときに、その混合ガスがその水蒸気を含有する水蒸気量をその混合ガスが炭素を含有する炭素量で除算したS/C比が5以下になるように、その燃料供給装置とその水蒸気供給装置とを制御する。
【0015】
このような燃料電池システムは、セルスタックの内側で炭素が析出することを防止することができ、燃料電池が発電するときに燃料極で電流がリークすることを防止することができる。
【0016】
本発明による燃料電池システムは、その燃料電池により発電された電力を消費する電力負荷にその燃料電池から流れる電流を測定する電力負荷測定装置をさらに備えている。このとき、その制御装置は、その燃料電池が発電しているときに、その水蒸気がその燃料極に単位時間当たりに供給される供給量が、その電流に基づいて算出される供給量に等しくなるように、その水蒸気供給装置をさらに制御する。
【0017】
このような燃料電池システムは、燃料電池が発電しているときに燃料極における燃料ガスと水による改質反応で水素が生成され、燃料極が還元雰囲気に配置される。このような燃料電池システムは、燃料電池が発電しているときに、燃料極に供給される水蒸気の供給量を低減することにより、燃料極が配置される雰囲気の水素量を適切に制御することができる。
【0018】
本発明による燃料電池システムは、還元性ガスをその燃料極に供給する還元性ガス供給装置をさらに備えている。このとき、その制御装置は、さらに、その混合ガスがその燃料極に供給される前に、その還元性ガスがその燃料極に供給されるように、その還元性ガス供給装置を制御し、その混合ガスが供給されているときに、その還元性ガスがその燃料極に供給されないように、その還元性ガス供給装置を制御する。
【0019】
このような燃料電池システムは、その混合ガスが燃料極に供給される前に、その燃料極を還元雰囲気に配置することができる。
【0020】
本発明による燃料電池システムは、不活性ガスをその燃料極に供給する不活性ガス供給装置をさらに備えている。このとき、その制御装置は、その混合ガスがその燃料極に供給されているときにその不活性ガスがその燃料極に供給されるように、かつ、その混合ガスがその燃料極に供給されているときにその不活性ガスがその燃料極に供給される供給量が、その混合ガスがその燃料極に供給される前にその不活性ガスがその燃料極に供給される供給量より小さくなるように、その不活性ガス供給装置を制御する。
【0021】
このような燃料電池システムは、燃料電池が発電するときに、その不活性ガスにより燃料ガスの濃度が低下することを防止し、より適切に発電することができる。
【0022】
その制御装置は、その燃料電池が発電しており、かつ、その電力負荷に流れる電流が所定電流に達した場合に、その還元性ガスがその燃料極に供給されないように、その還元性ガス供給装置を制御し、その不活性ガスがその燃料極に供給されないように、その不活性ガス供給装置を制御する。
【0023】
本発明による燃料電池運転方法は、燃料電池システムを用いて実行される。その燃料電池システムは、酸素が供給される空気極と燃料極とを有する燃料電池と、燃料ガスをその燃料極に供給する燃料供給装置と、水蒸気をその燃料極に供給する水蒸気供給装置とを備えている。本発明による燃料電池運転方法は、その燃料電池が発電する前に、その燃料極が400℃以上であるときに、その水蒸気とその燃料ガスとが混合された混合ガスがその燃料極に供給されるように、その燃料供給装置とその水蒸気供給装置とを制御すること、その混合ガスがその燃料極に供給された後に、その燃料電池が発電することとを備えている。
【0024】
このような燃料電池運転方法によれば、燃料電池システムは、燃料極が400℃以上であるときにその混合ガスを燃料極に供給することにより、その水蒸気と燃料ガスとから水素が生成される改質反応が燃料極で起こり、燃料電池が発電する前に、その水素によりその燃料極を還元雰囲気に配置することができる。このような燃料電池運転方法によれば、燃料電池システムは、燃料電池が発電を開始する前からその燃料極が還元雰囲気で配置されることにより、燃料電池が発電を開始する以前の昇温段階から燃料電池の燃料極の雰囲気を還元雰囲気に維持しながら、発電に使用する燃料ガスを用いて昇温することができ、所定温度に昇温後は速やかに燃料電池が発電を開始し、定格運転に移行するまでの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による燃料電池システムおよび燃料電池運転方法は、燃料電池が発電を開始する前からその燃料極を還元雰囲気に配置することにより、燃料電池が発電を開始してから定格運転に移行するまでの時間を短縮し、発電を開始する前から燃料極が酸化することによるセルの劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して、燃料電池システムの実施の形態が以下に記載される。その燃料電池システム1は、
図1に示されるように、複合発電システム2に適用されている。複合発電システム2は、燃料電池システム1とマイクロガスタービン3とを備えている。燃料電池システム1は、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6と還元性ガス供給装置7と不活性ガス供給装置8と制御装置10とを備え、さらに、燃料供給系11と酸化性ガス供給系12と燃料ガス排出系14と酸化性ガス排出系15と再循環ライン16とSOFC(固体酸化物形燃料電池、Solid Oxcide Fuel Cell)モジュール201とを備えている。
【0028】
燃料供給装置5は、制御装置10に制御されることにより、都市ガスを燃料供給系11に供給する。すなわち、燃料供給装置5は、流量調整弁21を備えている。流量調整弁21は、都市ガス供給源と燃料供給系11とを接続する流路の途中に設置され、制御装置10に制御されることにより、その都市ガス供給源から燃料供給系11に都市ガスが単位時間当たりに供給される流量を変動させる。なお、燃料としては、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)などの炭化水素系ガス、石炭など炭素質原料のガス化設備により製造したガスを用いても良い。
【0029】
水蒸気供給装置6は、制御装置10に制御されることにより、燃料供給系11に水蒸気を供給する。すなわち、水蒸気供給装置6は、ボイラー22と流量調整弁23と開閉弁24とを備えている。ボイラー22は、市水供給源から供給される水を加熱することにより水蒸気を生成する。流量調整弁23は、制御装置10に制御されることにより、ボイラー22により生成された水蒸気が燃料供給系11に単位時間当たりに供給される流量を変動させる。開閉弁24は、制御装置10に制御されることにより、流量調整弁23と燃料供給系11とを接続する流路を開閉する。
【0030】
還元性ガス供給装置7は、制御装置10に制御されることにより、還元性ガス供給装置7から燃料供給系11に水素が単位時間当たりに供給される供給量が所定の供給量に等しくなるように、燃料供給系11に水素を供給する。
【0031】
不活性ガス供給装置8は、制御装置10に制御されることにより、不活性ガス供給装置8から燃料供給系11に窒素が単位時間当たりに供給される供給量が所定の供給量に等しくなるように、燃料供給系11に窒素を供給する。なお、その窒素は、他の不活性ガスに置換されることができる。その不活性ガスとしては、アルゴンが例示される。
【0032】
燃料供給系11は、SOFCモジュール201に接続される流路を形成している。燃料供給系11は、燃料供給装置5から供給される都市ガスと水蒸気供給装置6から供給される水蒸気と還元性ガス供給装置7から供給される水素と不活性ガス供給装置8から供給される窒素と再循環ラインから供給される排燃料ガスとを混合し、その混合された混合ガスをSOFCモジュール201に供給する。
【0033】
酸化性ガス供給系12は、SOFCモジュール201に接続される流路を形成している。酸化性ガス供給系12は、マイクロガスタービン3により圧縮される酸化性ガスをSOFCモジュール201に供給する。
【0034】
SOFCモジュール201は、燃料供給系11から供給される混合ガスと酸化性ガス供給系12から供給される酸化性ガスとを化学反応させることにより発電し、排酸化性ガスと排燃料ガスとを排気する。
【0035】
燃料ガス排出系14は、SOFCモジュール201に接続される流路を形成している。燃料ガス排出系14は、SOFCモジュール201から排気される排燃料ガスの一部を再循環ライン16に供給し、その排燃料ガスの残りをマイクロガスタービン3に供給する。
【0036】
酸化性ガス排出系15は、SOFCモジュール201に接続される流路を形成している。酸化性ガス排出系15は、SOFCモジュール201から排気される酸化性ガスをマイクロガスタービン3に供給する。
【0037】
再循環ライン16は、燃料ガス排出系14と燃料供給系11とを接続する流路を形成している。再循環ライン16は、燃料ガス排出系14に供給される排燃料ガスの一部を燃料供給系11に供給する。
【0038】
マイクロガスタービン3は、都市ガス供給源から供給される都市ガスと燃料ガス排出系14から供給される排燃料ガスと酸化性ガス排出系15から供給される排酸化性ガスとを用いて、発電し、酸化性ガスを供給する。すなわち、マイクロガスタービン3は、燃焼器41とガスタービン42と圧縮機43と発電機44と熱交換器45とを備えている。燃焼器41は、酸化性ガス排出系15から供給される排酸化性ガスを用いて、または、圧縮機43により供給される圧縮空気を用いて、燃料ガス排出系14から供給される排燃料ガスを燃焼することにより、または、都市ガス供給源から供給される都市ガスを燃焼することにより、高温高圧の燃焼排ガスを生成する。ガスタービン42は、燃焼器41により生成された燃焼排ガスを用いて回転動力を生成し、排ガスを排気する。圧縮機43は、ガスタービン42により生成された回転動力を用いて空気を圧縮することにより、圧縮空気を供給する。発電機44は、ガスタービン42により生成された回転動力に余剰がある場合は発電を行っても良い。熱交換器45は、ガスタービン42により排気された排ガスの熱を用いて、圧縮機43により供給された圧縮空気を加熱することにより、酸化性ガスを供給する。その酸化性ガスの流量は、マイクロガスタービン3により供給される圧縮空気の流量に一致する。
【0039】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直行する水平方向に対応してもよい。また、以下においては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルスタックとして円筒形を例として説明するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。
【0040】
SOFCモジュール201は、
図2に示すように、例えば、複数のSOFCカートリッジ203と、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納する圧力容器205とを有する。また、SOFCモジュール201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207aとを有する。またSOFCモジュール201は、燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを有する。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス供給管(不図示)と酸化性ガス供給枝管(不図示)とを有する。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス排出管(不図示)と複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)とを有する。
【0041】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の外部に設けられ、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する燃料供給系11に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、燃料供給系11から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。また、燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数のSOFCカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0042】
燃料ガス排出枝管209aは、複数のSOFCカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部が圧力容器205の外部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部(燃料ガス排出系14)に導くものである。
【0043】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa〜約1MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用されるので、耐力性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0044】
ここで、本実施例においては、複数のSOFCカートリッジ203が集合化されて圧力容器205に収納される態様について説明しているが、これに限られず例えば、SOFCカートリッジ203が集合化されずに圧力容器205内に収納される態様とすることもできる。
【0045】
SOFCカートリッジ203は、
図3に示す通り、複数のセルスタック101と、発電室215と、燃料ガス供給室217と、燃料ガス排出室219と、酸化性ガス供給室221と、酸化性ガス排出室223とを有する。また、SOFCカートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを有する。なお、本実施例においては、SOFCカートリッジ203は、燃料ガス供給室217と燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221と酸化性ガス排出室223とが
図3のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、必ずしもこの必要はなく、例えば、セルスタックの内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタックの長手方向と直交する方向へ流れるようにしても良い。
【0046】
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、SOFCモジュール201の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気となる。
【0047】
燃料ガス供給室217は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域である。また、燃料ガス供給室217は、上部ケーシング229aに備えられた燃料ガス供給孔231aによって、燃料ガス供給枝管207aと連通されている。また、燃料ガス供給室217には、セルスタック101の一方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給枝管207aから燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
【0048】
燃料ガス排出室219は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域である。また、燃料ガス排出室219は、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、燃料ガス排出枝管209aと連通されている。また、燃料ガス排出室219には、セルスタック101の他方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放して配置されている。この燃料ガス排出室219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出室219に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
【0049】
その酸化性ガス供給管は、酸化性ガス供給系12から酸化性ガスが供給され、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOFCカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給室221は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス供給室221は、下部ケーシング229bに備えられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給室221は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導くものである。
【0050】
酸化性ガス排出室223は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス排出室223は、上部ケーシング229aに備えられた酸化性ガス排出孔233bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出室223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出室223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。その酸化性ガス排出枝管は、図示されていない酸化性ガス排出管に連通している。その酸化性ガス排出管は、その酸化性ガス排出枝管から供給される排酸化性ガスを酸化性ガス排出系15に供給する。
【0051】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給室217と酸化性ガス排出室223とを隔離するものである。
【0052】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221とを隔離するものである。
【0053】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを有する。
【0054】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出室223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板225a等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて上部管板225a等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出室223に導くものである。
【0055】
本実施例によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0056】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング229bの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを有する。
【0057】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給室221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給室233に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0058】
本実施例によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室219に供給される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0059】
発電室215で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ203の集電棒(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各SOFCカートリッジ203の外部へと取り出される。前記集電棒によってSOFCカートリッジ203の外部に導出された電力は、各SOFCカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール201の外部へと導出されて、図示しないインバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。そのインバータと電力負荷とは、制御装置10に制御されることにより、SOFCモジュール201から外部に流れる電流が所定の電流に等しくなるように、抵抗が変動する。
【0060】
セルスタック101は、
図4に示されるように、円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105の内、基体管103の軸方向において最も端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を有する。
【0061】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、又はY
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、又はMgAl
2O
4とされる。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0062】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。なお、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0063】
固体電解質111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。この固体電解質111は、空気極で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極に移動させるものである。
【0064】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。
【0065】
インターコネクタ107は、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の固体電解質111とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタにより直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0066】
燃料電池システム1は、さらに、温度計と電流計とを備えている。その温度計は、制御装置10に制御されることにより、燃料極109が配置される発電室215の温度を測定する。その電流計は、制御装置10に制御されることにより、SOFCモジュール201により発電された電力を消費する電力負荷にSOFCモジュール201から流れる電流を測定する。その電力負荷は、制御装置10に制御されることにより、電気抵抗が変動する。
【0067】
図5は、制御装置10を示している。制御装置10は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置とメモリドライブと通信装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、制御装置10にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置とリムーバルメモリドライブと通信装置とインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録する。その記憶装置は、さらに、そのCPUにより利用される情報を記録する。そのリムーバルメモリドライブは、コンピュータプログラムが記録されている記録媒体が挿入されたときに、そのコンピュータプログラムを制御装置10にインストールするときに利用される。その通信装置は、通信回線網を介して制御装置10に接続される他のコンピュータからコンピュータプログラムを制御装置10にダウンロードし、そのコンピュータプログラムを制御装置10にインストールするときに利用される。
【0068】
そのインターフェースは、制御装置10に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6と還元性ガス供給装置7と不活性ガス供給装置8とを含み、図示されていない温度計と電流計と電力負荷とを含んでいる。
【0069】
制御装置10にインストールされるコンピュータプログラムは、制御装置10に複数の機能をそれぞれ実現させるための複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、温度測定部31と電流測定部32と供給準備部33と供給開始部34と発電開始部35と定格運転部36とを含んでいる。
【0070】
温度測定部31は、燃料極109の温度が間欠的に測定されるように、その燃料極109の配置がある発電室215に設置した温度計により計測するように制御する。また、発電室215の温度分布を考慮して、温度計が複数設置される場合には、必要に応じて平均値を算出しても良い。電流測定部32は、SOFCモジュール201からその電力負荷に流れる電流が間欠的に測定されるように、図示しないインバータ内に設けた電流計によりSOFCモジュール201から流れる電流を計測するように制御する。
【0071】
供給準備部33は、温度測定部31により測定された温度が400℃以下であるときに、動作する。供給準備部33は、SOFCモジュール201からその電力負荷に電流が流れないように、その電力負荷を制御する。供給準備部33は、さらに、都市ガスが燃料供給系11に供給されないように、燃料供給装置5を制御する。供給準備部33は、さらに、水蒸気が燃料供給系11に供給されないように、水蒸気供給装置6を制御する。供給準備部33は、さらに、水素が燃料供給系11に供給されるように、還元性ガス供給装置7を制御する。供給準備部33は、さらに、窒素が燃料供給系11に供給されるように、不活性ガス供給装置8を制御する。供給準備部33は、さらに、燃料供給系11に水素が供給される供給量と燃料供給系11に窒素が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるように、還元性ガス供給装置7と不活性ガス供給装置8とを制御する。
【0072】
供給開始部34は、温度測定部31により測定された温度が400℃以上であるときに、かつ、その温度が800℃以下であるときに、動作する。供給開始部34は、SOFCモジュール201からその電力負荷に電流が流れないように、その電力負荷を制御する。供給開始部34は、さらに、水素が燃料供給系11に供給されないように、還元性ガス供給装置7を制御する。供給開始部34は、さらに、都市ガスが燃料供給系11に供給されるように、燃料供給装置5を制御する。供給開始部34は、さらに、水蒸気が燃料供給系11に供給されるように、水蒸気供給装置6を制御する。供給開始部34は、さらに、燃料供給系11に都市ガスが供給される供給量と燃料供給系11に水蒸気が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるようにする。すなわち、燃料供給系11により供給される水蒸気と都市ガスとが混合された混合ガスが含有する水蒸気量(水蒸気分子のモル量)をその混合ガスが含有する炭素量(炭素原子のモル量)で除算したS/C比(Steam/Carbon比)が5以上になるように、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6とを制御する。
【0073】
発電開始部35は、温度測定部31により測定された温度が800℃以上であるときに、かつ、その温度が1000℃以下であるときに、動作する。発電開始部35は、SOFCモジュール201からその電力負荷に流れる電流が徐々に増加するように、その電力負荷を制御する。すなわち、定格運転時の所定温度である約1000℃まで昇温を行うにあたり、燃料電池から電力負荷に流れる電流を徐々に増加させることで、内部発熱反応を利用して燃料電池の温度を昇温させることができる。発電開始部35は、さらに、電流測定部32により測定された電流に基づいて水蒸気供給量を算出する。その水蒸気供給量は、その電流が大きいほど大きい。発電開始部35は、さらに、水蒸気がSOFCモジュール201に単位時間当たりに供給される供給量が電流に基づいて算出された水蒸気供給量に等しくなるように、水蒸気供給装置6を制御する。発電開始部35は、さらに、燃料供給系11に都市ガスが供給される供給量と燃料供給系11に水蒸気が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるように、すなわち、燃料供給系11により供給される混合ガスが含有する水蒸気量(水蒸気分子のモル量)をその混合ガスが含有する炭素量(炭素原子のモル量)で除算したS/C比(Steam/Carbon比)が5以下になるように、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6とを制御する。
【0074】
定格運転部36は、温度測定部31により測定された温度が700℃以上であり、かつ、その温度が1000℃以下であるときに、動作する。定格運転部36は、水蒸気が水蒸気供給装置6から燃料供給系11に供給されないように、水蒸気供給装置6を制御する。定格運転部36は、さらに、水素が還元性ガス供給装置7から燃料供給系11に供給されないように、還元性ガス供給装置7を制御する。定格運転部36は、さらに、窒素が不活性ガス供給装置8から燃料供給系11に供給されないように、不活性ガス供給装置8を制御する。定格運転部36は、さらに、所定量の都市ガスが燃料供給系11に単位時間当たりに供給されるように、燃料供給装置5を制御する。
【0075】
燃料電池運転方法の実施の形態は、燃料電池システム1により実行され、供給準備運転と供給開始運転と発電開始運転と定格運転とを備えている。
【0076】
その供給準備運転は、燃料電池システム1が停止しているときに、開始される。まず、マイクロガスタービン3が動作することにより、酸化性ガス供給系12を介して、マイクロガスタービン3により生成される酸化性ガスがSOFCモジュール201に供給される。このとき、SOFCモジュール201は、その酸化性ガスが発電室215に供給されることにより、発電室215が加熱される。
【0077】
制御装置10は、その温度計を制御することにより、燃料極109が配置される発電室215の温度を間欠的に測定する。制御装置10は、その温度計により測定された温度が400℃以下であるときに、その電力負荷を制御することにより、SOFCモジュール201が発電することを停止させる。制御装置10は、さらに、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6とを制御することにより、都市ガスと水蒸気とが燃料供給系11に供給されることを停止させる。制御装置10は、さらに、還元性ガス供給装置7と不活性ガス供給装置8とを制御することにより、燃料供給系11に水素が供給される供給量と燃料供給系11に窒素が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるように、水素と窒素とを燃料供給系11に供給する。所定の比(水素供給量と窒素供給量との比)を例示すると、水素:窒素は5:95以下の割合で水素を供給することが望ましい。またはSOFCからの排燃料中の水素濃度が0.01%以上(排燃料系統に水素が少しでもあればよい)であることが望ましい。理由として、昇温に伴いセルでは還元性ガスの酸化反応が起こるためである。なお、セル温度によって消費される還元性ガス量は異なる。
【0078】
このとき、燃料供給系11は、水素と窒素とが供給されることにより、水素と窒素とが混合された混合ガスをSOFCモジュール201の燃料極109に供給する。SOFCモジュール201は、その混合ガスが供給されることにより、その混合ガスから形成される還元雰囲気に燃料極109が配置され、燃料極109が還元状態に保持される。さらに、SOFCモジュール201は、発電室215の温度が400℃以下であるときに、燃料極109に水蒸気が供給されないことにより、燃料極109が結露することが防止される。なお、発電室215の温度が概ね100℃以下では、還元状態を保持する必要性がなく、水素の供給を停止してもよい。
【0079】
その供給開始運転は、その供給準備運転が開始された後で、その温度計により測定された温度が400℃以上になったときに、開始される。マイクロガスタービン3は、引き続き、酸化性ガス供給系12を介して酸化性ガスをSOFCモジュール201に供給することにより、SOFCモジュール201の発電室215を加熱する。制御装置10は、その電力負荷を制御することにより、SOFCモジュール201が発電することを停止させる。制御装置10は、さらに、還元性ガス供給装置7を制御することにより、燃料供給系11に水素を供給することを停止する。制御装置10は、さらに、燃料供給装置5と水蒸気供給装置6とを制御することにより、燃料供給系11に都市ガスが供給される供給量と燃料供給系11に水蒸気が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるように、すなわち、燃料供給系11により生成される混合ガスが水蒸気を含有する水蒸気量をその混合ガスが炭素を含有する炭素量で除算したS/C比が5以上になるように、都市ガスと水蒸気とを燃料供給系11に供給する。
【0080】
このとき、燃料供給系11は、都市ガスと水蒸気とが供給されることにより、都市ガスと水蒸気とが混合された混合ガスをSOFCモジュール201の燃料極109に供給する。SOFCモジュール201は、発電室215の温度が400℃以上であるときに、燃料極109にその混合ガスが供給されることにより、燃料極109を触媒にする改質反応が進み、燃料極109でその水蒸気と燃料ガスとから水素が生成される。このとき、燃料極109は、その生成された水素により還元雰囲気に配置され、還元状態に保持される。このため、燃料極109には燃料の供給により水素が供給可能になり、水素の供給が不要になるために、水素ボンベの水素使用量を大幅に削減することができるので、本発電システムの運用性が向上するとともに、ランニングコストを低減できる。
【0081】
その発電開始運転は、その供給開始運転が開始された後で、その温度計により測定された温度が800℃以上であるときに、開始される。マイクロガスタービン3は、引き続き動作することにより、酸化性ガス供給系12を介して酸化性ガスをSOFCモジュール201に供給することにより、SOFCモジュール201の発電室215を加熱する。制御装置10は、まず、その電力負荷を制御することにより、SOFCモジュール201からその電力負荷に流れる電流を徐々に(たとえば、10mA/cm
2・minで)増加させる。
【0082】
制御装置10は、さらに、その電流計を制御することにより、SOFCモジュール201からその電力負荷に流れる電流を間欠的に測定する。制御装置10は、さらに、その電流に基づいて水蒸気供給量を算出する。その水蒸気供給量は、その電流が大きいほど大きい。制御装置10は、さらに、水蒸気供給装置6を制御することにより、水蒸気が燃料供給系11に単位時間当たりに供給される供給量がその水蒸気供給量に等しくなるように、水蒸気を燃料供給系11に供給する。制御装置10は、さらに、燃料供給装置5を制御することにより、燃料供給系11に都市ガスが供給される供給量と燃料供給系11に水蒸気が供給される供給量との比が所定の比に等しくなるように、すなわち、燃料供給系11により生成される混合ガスが水蒸気を含有する水蒸気量をその混合ガスが炭素を含有する炭素量で除算したS/C比が5以下になるように、都市ガスを燃料供給系11に供給する。
【0083】
その発電開始運転は、水素と窒素との混合ガスが燃料極109に供給される他の発電開始運転に比較して、SOFCモジュール201から排気される排燃料ガスに含有される水蒸気量が多いために、その電力負荷に流れる電流をより速く(3倍程度)上昇させた場合でも、燃料極109を還元状態に維持させることができる。このような発電開始運転によれば、SOFCモジュール201は、さらに、その発電開始運転でそのS/C比が5以下であることにより、より高効率に発電することができる。
【0084】
その定格運転は、その発電開始運転が実行された後で、SOFCモジュール201からその電力負荷に流れる電流が所定電流(たとえば、100mA/cm
2)に達したときに、開始される。制御装置10は、水蒸気供給装置6を制御することにより、水蒸気が燃料供給系11に供給されることを停止させる。制御装置10は、さらに、還元性ガス供給装置7を制御することにより、水素が還元性ガス供給装置7から燃料供給系11に供給されることを停止させる。制御装置10は、さらに、不活性ガス供給装置8を制御することにより、窒素が不活性ガス供給装置8から燃料供給系11に供給されることを停止させる。制御装置10は、さらに、燃料供給装置5を制御することにより、単位時間当たりに所定量の都市ガスを燃料供給系11に供給する。
【0085】
SOFCモジュール201は、その定格運転が開始されるときに、その発電開始運転により燃料極109が還元状態に保持されていることにより、その定格運転で適切に発電することができる。
【0086】
このような燃料電池運転方法によれば、燃料電池システム1は、水素と窒素との混合ガスが燃料極109に供給される他の発電開始運転に比較して、SOFCモジュール201から排気される排燃料ガスに含有される水蒸気量が多いために、その電力負荷に流れる電流をより速く(3倍程度)上昇させた場合でも、燃料極109が還元状態に維持されることができる。このため、このような燃料電池運転方法によれば、燃料電池システム1は、その電力負荷に流す電流をより高速に上昇させることができ、その電流を上昇させる期間をより短縮することができ、より早く定格運転を開始することができる。
【0087】
このような燃料電池運転方法によれば、さらに、その供給開始運転で水素がSOFCモジュール201に供給されていないことにより、水素がSOFCモジュール201に供給される他の供給開始運転に比較して、ランニングコストを低減することができる。このような燃料電池運転方法によれば、SOFCモジュール201は、その供給開始運転で窒素がSOFCモジュール201に供給されていないことにより、その発電開始運転と定格運転とが実施されるときに、燃料極109の周りの雰囲気の窒素濃度を小さくすることができ、燃料の濃度を大きくすることができ、より高効率に発電することができる。
【0088】
このような燃料電池運転方法によれば、SOFCモジュール201は、さらに、その供給開始運転でそのS/C比が5以上であることにより、燃料極109に炭素が析出することが防止され、後でSOFCモジュール201が発電するときに、その析出した炭素により電流がリークすることが防止される。
【0089】
本発明による燃料電池運転方法は、制御装置10により実行される動作が人により実行された場合にも、同様にして、より早く定格運転を開始することができる。
【0090】
なお、その供給開始運転は、燃料極109に炭素の析出の対策が十分に施されているときに、そのS/C比が5より小さくなるように都市ガスと水蒸気とを供給する他の供給開始運転に置換されるともできる。このような供給開始運転が適用された燃料電池運転方法も、既述の実施の形態における燃料電池運転方法と同様にして、より早く定格運転を開始することができる。
【0091】
なお、還元性ガス供給装置7は、省略することができる。還元性ガス供給装置7が省略された燃料電池システムは、SOFCモジュール201への水素の供給が省略される。このような燃料電池システムは、既述の実施の形態における燃料電池システム1と同様にして、より早く定格運転を開始することができる。このような燃料電池システムは、還元性ガス供給装置7が省略されたことにより、既述の実施の形態における燃料電池システム1に比較して、より容易に取り扱うことができる。
【0092】
なお、都市ガスは、他の燃料に置換されることができる。その燃料としては、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)などの炭化水素系ガス、石炭など炭素質原料のガス化設備により製造したガスが例示される。このような燃料が適用された燃料電池システムも、既述の実施の形態における燃料電池システム1と同様にして、より早く定格運転を開始することができる。
【0093】
なお、燃料電池システム1は、複合発電システム2に適用されないで、単独で使用されることもできる。燃料電池システム1は、単独で使用される場合も、より早く定格運転を開始することができる。
【0094】
なお、燃料電池システム1に供給される酸化性ガスは、圧縮空気と異なる他の酸化性ガスに置換されることができる。その酸化性ガスとしては、燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが例示される。このような酸化性ガスが適用された燃料電池システムも、既述の実施の形態における燃料電池システム1と同様にして、より早く定格運転を開始することができる。