(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明でいう即席飲料とは、喫食する際に水、湯、牛乳、豆乳などの水性媒体に溶解や分散することで液状にして食するものであり、液状にする前は乾燥状態の飲料である。即席飲料の形態としては、水性媒体に溶解や分散が可能な粉末状、顆粒状、固形状などが挙げられる。即席飲料の種類としては、例えば、各種乾燥スープ(ポタージュスープ、コンソメスープなどの洋風スープ、味噌汁、お吸い物などの和風スープ、中華スープ、エスニックスープ、キャラメルスープなど)、インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタント緑茶、抹茶、インスタントココア・チョコレート飲料、インスタント果実飲料などが挙げられる。また、上記即席飲料には、麺類、例えば、ラーメン、パスタ、春雨などの入ったスープや、その他各種具材の入ったスープなども含まれる。
【0009】
本発明で用いられる即席飲料の原材料としては特に制限はなく、一般に即席飲料の原材料として用いられるものを採用することができる。例えば、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなど)、糖類(砂糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖、果糖、トレハロース、水あめ、デキストリンなど)、各種調味料類(アミノ酸類、核酸類、酸味料、たん白加水分解物、発酵調味料など)、各種エキス、畜肉・魚介類、野菜類、きのこ類、果物類、豆類、大豆加工品(大豆たん白、豆乳、おからなど)、ごま、ナッツ類、穀類、香辛料、澱粉類、増粘安定剤(キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、ゼラチン類、乳製品、油脂類(食用油脂、香味油、加工油脂、粉末油脂など)、香料、着色料、ビタミン類、ミネラル類、乳化剤、粉質改良剤(酸化ケイ素など)、茶類、コーヒー類、ココアパウダーなどが挙げられる。これら原材料は、即席飲料に含まれる最終状態としては、乾燥状態となっているものが好ましい。
【0010】
本発明で用いられる(A)酸剤としては、ミョウバン(硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム)、;有機酸、具体的にはアジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸など、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩など;リン酸塩、具体的にはリン酸3カルシウム、リン酸1水素カルシウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カルシウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、ピロリン酸4カリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの酸剤は1種または2種以上を併用しても良い。上記の酸剤の中でも、味の面を考慮した場合、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの塩である。
【0011】
本発明で用いられる(B)アルカリ剤としては、炭酸水素塩または炭酸塩、具体的には炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど;アンモニウム塩、具体的には塩化アンモニウムなどが挙げられる。これらのアルカリ剤は、1種または2種以上を併用しても良い。上記アルカリ剤の中でも、味の面を考慮した場合、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0012】
本発明では、上記の(A)酸剤と(B)アルカリ剤を併用してガスを発生させるものである。酸剤およびアルカリ剤の形態としては、即席飲料に配合して均一にすることができれば特にその形状に制限はないが、粉末状、顆粒状、固形状などの形状が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる(C)起泡性粉末油脂は、起泡性を有する粉末油脂であればよく、例えば乳化剤および粉末化基材を含む粉末油脂、または食用油脂、乳化剤および粉末化基材を含む粉末油脂などが挙げられる。起泡性粉末油脂中における乳化剤および粉末化基材、および/または食用油脂の含有量は特に限定されないが、起泡性粉末油脂全体に対して、乳化剤の含有量は約10〜40質量%が好ましく、約25〜40質量%がより好ましい。粉末化基材の含有量は約50〜80質量%が好ましく、約50〜70質量%がより好ましい。食用油脂の含有量は約0〜10質量%が好ましく、約1〜5質量%がより好ましい。
【0014】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルまたはレシチンなどが挙げられる。これらの乳化剤は、1種または2種以上を併用してもよい。乳化剤を2種以上併用する場合は、例えば、グリセリン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルを約1:2〜3(W/W)の割合で混合、グリセリン脂肪酸エステルとグリセリン酢酸脂肪酸エステルを約1:4〜6(W/W)の割合で混合、グリセリン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルを約1:1.5〜2.5(W/W)の割合で混合、またはグリセリン乳酸脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルとレシチンを約8〜10:8〜10:1(W/W)などの割合で混合して用いることができる。
【0015】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばグリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテートまたはグリセリンモノステアレートなどが好ましく例示される。上記プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えばプロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテートまたはプロピレングリコールモノベヘネートなどが好ましく例示される。上記レシチンとしては、例えば大豆レシチン、卵黄レシチンまたはホスファチジルコリンなどが好ましく例示される。
【0016】
上記粉末化基材としては、特に限定されないが、例えば乳蛋白、大豆蛋白、小麦蛋白、全脂粉乳、脱脂粉乳、小麦粉、デンプン、糖類、ゼラチン、ホエー、ガム質またはデキストリンなどが挙げられる。乳蛋白としては、例えば酸カゼイン、カゼインナトリウムまたはレンネットカゼインなどが挙げられる。デンプンとしては、例えば馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、タピオカ澱粉、またはそれらの加工澱粉などが挙げられる。糖類としては、例えばショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、果糖、水あめ、デキストリン、マルトオリゴ糖類(例えばマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオースなど)またはトレハロースなどが挙げられる。ホエーには、酸性ホエーが含まれる。ガム質としては、例えばキサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、トランガントガムまたはカラギーナンなどが挙げられる。また大豆蛋白は加水分解(完全分解または部分分解)されたものも用いることができる。上記粉末化基材としては、特に大豆蛋白、小麦蛋白、カゼインナトリウム、糖類、ホエー、全脂粉乳または脱脂粉乳が好ましい。
【0017】
食用油脂としては、食用に供される油脂をいい、特に限定されないが、例えば牛脂若しくは豚脂などの動物性油脂;ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、ナタネ油、綿実油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油若しくは米糠油などの植物性油脂;上記動物性油脂若しくは植物性油脂の硬化油;魚油;魚油硬化油;上記した中で固体の動植物油脂および上記の硬化油を分別して得られる分別固体状油脂、若しくは分別液体状油脂;または動植物油脂若しくは硬化油の1種または2種以上の混合油をエステル交換したエステル交換油などが挙げられる。これらの食用油脂は1種または2種以上を併用することができる。
【0018】
本発明で使用される起泡性粉末油脂は、乳化剤および粉末化基材、および/または食用油脂を含有する乳化液を調製し、ついでこの乳化液を公知の方法で乾燥することにより製造できる。前記乳化液は、例えば食用油脂を使用する場合、粉末化基材を水(例えば水道水、精製水等)に添加し、溶解などした溶液に食用油脂を徐々に添加しながら、例えばTKホモミクサー(プライミクス社)、クレアミックス(エムテクニック社)などの高速回転式ホモジナイザーなどによって撹拌することによって得ることができる。乳化剤は、前記溶液または食用油脂のいずれか一方または両方に添加し得る。撹拌は、前記溶液を約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱または加温しながら行なってよく、ホモジナイザーの回転数は約8000〜20000rpm、攪拌時間は約10〜60分間程度が好ましい。得られた乳化液は、所望により更に例えばAPVゴーリンホモジナイザー(APV社)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社)、アルティマイザー(スギノマシン社)、またはナノマイザー(大和製罐社)などの高圧式均質化処理機で吐出圧力、例えば約8〜50MPaで約1〜3回処理してもよい。前記均質化処理機以外にも、超音波乳化機などの均質化処理機を用いてもよい。
【0019】
得られた乳化液を乾燥する方法は、特に限定はされないが、噴霧乾燥が好ましく、例えば噴射式噴霧乾燥装置または回転円盤式噴霧乾燥装置など、公知の装置を使用することができる。また、噴霧乾燥の操作条件に特に制限はなく、例えば、乳化液を加圧ノズル式噴霧乾燥装置に供給し、熱風入口温度約150〜270℃、排気温度約70〜130℃の条件下で噴霧乾燥し、乾燥物をサイクロンなどで捕集することにより、流動性の良い起泡性粉末油脂を得ることができる。また、乾燥は、例えばドラム乾燥、ベルト乾燥、真空乾燥あるいは真空凍結乾燥などにより行なうこともできる。この場合は、乳化液を乾燥後、乾燥したものを粉砕するなどにより粉末化することが好ましい。
【0020】
また起泡性粉末油脂としては、一般に販売されている市販品、例えば、エマアップKM‐100、エマルジーKM‐500(理研ビタミン社製)などを使用してもよい。
【0021】
本発明で用いられる起泡性粉末油脂は、下記の方法によって測定する気泡量が約20mL以上となる起泡性粉末油脂であることが好ましく、約30mL以上となる起泡性粉末油脂であることがより好ましい。
(測定方法)
起泡性粉末油脂1.0gを40℃の温水199gに加えスパチュラを用いて泡立てないように撹拌して溶解、分散し、次いで内径40mmのメスシリンダー(300mlメスシリンダー)に泡立てないように注ぐ。その後に、撹拌機(ミルク泡立て器 製品名:PRODUKT;IKEA社製)を撹拌部先端が50mLの部分となるように設置し、20秒間撹拌して起泡させ、撹拌機を取り出してから5分間静置した際の気泡量(mL)を測定する。
【0022】
本発明の発泡性即席飲料中の(A)酸剤、(B)アルカリ剤および(C)起泡性粉末油脂の配合量は、喫食する際の容量、即席飲料の種類によって異なるが、発泡性即席飲料を水性媒体100質量部に溶解・分散した場合、発泡飲料中に(A)酸剤の配合量が好ましくは約0.1〜1.0質量部、より好ましくは約0.15〜0.6質量部、(B)アルカリ剤の配合量が約好ましくは約0.1〜2.0質量部、より好ましくは約0.3〜1.2質量部、(C)起泡性粉末油脂の配合量が好ましくは約0.5〜10.0質量部、より好ましくは約1.0〜7.0質量部となるように配合すればよい。
【0023】
本発明の発泡性即席飲料は、即席飲料、(A)酸剤、(B)アルカリ剤および(C)起泡性粉末油脂を均一にすることが好ましく、均一にする場合は公知の混合機を用いて均一に混合する方法が挙げられる。
【0024】
かくして得られた発泡性即席飲料は、水性媒体に溶解あるいは分散することで発泡し、飲料の液中および液表面に口当たりの良い泡が発生し、発生した泡の減少が抑制された発泡飲料が得られる。
【0025】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0026】
≪即席飲料の作製≫
[即席コーンスープの作製]
(1)即席コーンスープの作製
下記表1の原材料の2倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い、即席コーンスープを得た。
【0027】
【表1】
【0028】
(2)即席チョコレートスープの作製
下記表2の原材料の2倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い、即席チョコレートスープを得た。
【0029】
【表2】
【0030】
≪発泡性即席飲料の作製≫
(1)原材料
即席コーンスープ(上記試作品)
即席チョコレートスープ(上記試作品)
酸剤1(商品名:クエン酸フソウ(無水);扶桑化学工業社製 但し、乳鉢で粉砕処理した後、60メッシュ篩通過したものを使用)
酸剤2(商品名:DL−リンゴ酸 60メッシュ;磐田化学工業社製)
アルカリ剤1(商品名:重炭酸ナトリウム 食品添加物;旭硝子社製 但し、60メッシュ篩を通過したものを使用)
起泡性粉末油脂1(商品名:エマルジーKM‐500;理研ビタミン社製)
起泡性粉末油脂2(商品名:エマアップKM‐100;理研ビタミン社製)
乳化剤1(商品名:エマルジーMS粉末;理研ビタミン社製 グリセリン脂肪酸エステル)
乳化剤2(商品名:リケマールPS−100;理研ビタミン社製 プロピレングリコール脂肪酸エステル)
インスタントクリーミングパウダー1(ICP1)(商品名:クリープ;森永乳業社製)
インスタントクリーミングパウダー2(ICP2)(下記方法で作製したもの。)
【0031】
[インスタントクリーミングパウダー2の作製]
カゼインナトリウム(商品名:Sodium Caseinate 180;Fonterra社製)100g、乳糖(商品名:乳糖;HILMAR INGREDIENTS社製)200gを水1000gに加え、70℃まで昇温しながらTKホモミクサー(型式:MARK II−2.5型、プライミクス社製)を用いて10000回転の条件で撹拌した後、油脂(商品名:硬化ヤシ油;不二製油社製)700gを加え、20分間撹拌を続けて乳化液を得た。得られた乳化液を噴霧乾燥機(型式:L−8i型;大川原化工機社製)を用いて乾燥してインスタントクリーミングパウダー2を800g得た。
【0032】
ここで、上記起泡性粉末油脂、乳化剤、インスタントクリーミングパウダーの気泡量を下記表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
(2)配合
[発泡性即席コーンスープ]
下記表4、5の原材料の10倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い、発泡性即席コーンスープ(実施例品1〜11、比較例品1〜7)を得た。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
[発泡性即席チョコレートスープ]
下記表6の原材料の10倍量をビニール袋に入れ、1分間撹拌混合した後、20メッシュで篩い、発泡性即席チョコレートスープ(実施例品12〜14、比較例品8〜10)を得た。
【0038】
【表6】
【0039】
≪発泡性即席飲料の評価≫
(1)発泡コーンスープの作製(試験区1〜19)
得られた発泡性即席コーンスープ(実施例品1〜11、比較例品1〜7)を表4、5に記載の量(即席コーンスープが9g相当)を300mLビーカーに加え、90℃の湯を100mL加えてスパチュラを用いて、180回/分の速さで30秒間撹拌して発泡コーンスープ(試験区1〜18)を得た。
また、試験区1において、90℃の湯を用いるのに替えて、25℃の水を用いた以外は同様の操作を行い発泡コーンスープ(試験区19)を得た。
【0040】
(2)発泡チョコレートスープの作製(試験区20〜25)
得られた発泡性即席チョコレートスープ(実施例品12〜14、比較例品8〜10)を表6に記載の量(即席チョコレートスープが27g相当)を300mLビーカーに加え、90℃の湯を100mL加えてスパチュラを用いて、180回/分の速さで30秒間撹拌して発泡チョコレートスープ(試験区20〜25)を得た。
【0041】
(3)評価方法
得られた発泡コーンスープ(試験区1〜19)および発泡チョコレートスープ(試験区20〜25)の作製直後および作製してから5分経過後の液表面の泡の状態を目視にて評価し、さらに液表面にある泡の食感およびスープの食感を官能にて評価した。各評価は、下記表7に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行った。結果はそれぞれ10名の評価点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表8、9に示す。
[記号化]
◎ : 平均値3.5以上
○ : 平均値2.5以上3.5未満
△ : 平均値1.5以上2.5未満
× : 平均値1.5未満
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
結果より、実施例品を使用して作製した発泡コーンスープ(試験区1〜11、19)は、作製直後および作製してから5分後の液表面の泡の状態、液表面の泡の食感およびスープの食感の評価がいずれも良好であった。
一方、比較例品を用いて作製した発泡性コーンスープ(試験区12〜18)は、作製直後および作製してから5分後の液表面の泡の状態、液表面の泡の食感およびスープの食感のすべての評価、またはいずれかの評価が悪かった。
【0044】
【表9】
結果より、実施例品を使用して作製した発泡チョコレートスープ(試験区20〜22)は、作製直後および作製してから5分後の液表面の泡の状態、液表面の泡の食感およびスープの食感の評価がいずれも良好であった。
一方、比較例品を用いて作製した発泡性チョコレートスープ(試験区23〜25)は、作製直後および作製してから5分後の液表面の泡の状態、液表面の泡の食感およびスープの食感のいずれかの評価が悪かった。