(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239253
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】フォークト型散乱関数を使用した電子近接効果の校正方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20171120BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20171120BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H01L21/30 541M
G03F7/20 504
H01J37/305 B
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-82602(P2013-82602)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-222968(P2013-222968A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】1253389
(32)【優先日】2012年4月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512211361
【氏名又は名称】アセルタ ナノグラフィクス
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】トルタ、ジャン−エルベ
(72)【発明者】
【氏名】スキアボーネ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フィゲロ、チアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ジェディディ、ネーダー
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−222230(JP,A)
【文献】
特開2001−083109(JP,A)
【文献】
特開2002−075818(JP,A)
【文献】
特開2011−240704(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0067446(US,A1)
【文献】
特開2007−027613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するための方法であって、前記ビームにおける散乱効果を校正するステップを含み、前記ステップは、点拡散関数を計算するサブステップを含み、前記点拡散関数は、少なくとも1つのフォークト関数と、フォークト関数を近似化した関数とを含む群から選択される関数の線形的な組み合わせである、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフォークト関数を近似化した前記関数は、第7種ピアソン関数である、請求項1に記載の投影方法。
【請求項3】
前記関数の線形的な組み合わせは、少なくとも1つのガウス関数も有する、請求項1に記載の投影方法。
【請求項4】
前記点拡散関数を計算するサブステップは、前記線形的な組み合わせに含まれる前記関数のパラメータおよび前記線形的な組み合わせの係数を選択するサブステップを含み、前記選択するサブステップは、一連の実験結果、又は対象に対する放射線の散乱についてのモンテカルロシミュレーションの表示と、前記点拡散関数との間の適合度についての最適化関数の実行を含む、請求項1に記載の投影方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの関数は、前記ビームの中心には配置されない極値を有する、請求項1に記載の投影方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの関数は、前記電子ビームの後方散乱ピークに配置される極値を有する、請求項1に記載の投影方法。
【請求項7】
前記点拡散関数は、前記放射線が後方散乱ピークを有する場合の該ピークの数と少なくとも同数の関数の線形的な組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載のウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するための方法を実行するために構成される、プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、前記プログラムは、前記ビームにおいて散乱効果を模擬化及び/又は校正するためのモジュールを含み、前記モジュールは、点拡散関数を計算するためのサブモジュールを含み、前記点拡散関数は、少なくとも1つのフォークト関数と、フォークト関数を近似化した関数とを含む群から選択される関数の線形的な組み合わせである、コンピュータプログラム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのフォークト関数を近似化した関数は、第7種ピアソン関数である、請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記関数の線形的な組み合わせは、少なくとも1つのガウス関数も有する、請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
一連の実験結果、又は対象に対する放射線の散乱についてのモンテカルロシミュレーションの表示と前記点拡散関数との適合度を最適化することにより、前記関数のパラメータおよび前記線形的な組み合わせの係数を計算するためのモジュールをさらに含む、請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するためのモジュールと、請求項8に記載のコンピュータプログラムとを含む、電子リソグラフィシステム。
【請求項13】
ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するステップを模擬化するためのモジュールと、請求項8に記載のコンピュータプログラムとを含む、少なくとも1つの電子リソグラフィステップを模擬化するためのシステム。
【請求項14】
対象に電子ビームを投影するためのモジュールと、請求項8に記載のコンピュータプログラムとを含む、電子顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ウェハ上での直接エッチング又はマスク製作のための電場リソグラフィに関する。より一般的には、本発明は、対象を有する電子ビームの相互作用をモデル化するのに必要な如何なる電場に適用し、特にウェハ及びマスクの検査のための電子顕微鏡に適用する。この相互作用は、特に、後方散乱(後方の散乱効果)だけでなく初期の位相周辺の電子の散乱により影響される。近接効果とも呼ばれる、これらの効果は、対象の材質および寸法に依存する。従って、この電子衝撃(エッチング、画像化又は分析)を行うことが望ましい理由が如何なるものであっても、求められる目的に忠実な結果を得るためには近接効果について説明する必要がある。従って、近接効果の校正が行われる。従って、対象に衝撃を加えるのに使用される電子放射線量の計算において前記近接効果を説明するようにモデルを通じて、これらの効果を予測することが知られている。従って、いわゆる点拡散又は散乱関数(又はPSF)を使用することが知られ、このPSFは、対象の寸法に関連する。汎用されるPSFは、ガウス関数の組み合わせであり、前方散乱(前方散乱のPSF)をモデル化する第1のガウス関数と、後方散乱(後方散乱のPSF)をモデル化する1つ以上の追加的なガウス関数との組み合わせである。
【背景技術】
【0002】
このため、PSFの式は、従来、以下の形式の関数f(x、y)によって表される。
【数1】
式中の表記について、
αは、直接放射線の幅であり、
βは、後方散乱幅であり、
ηは、直接放射線および後方散乱された放射線の強度の比であり、
ζは、一点の放射の位置である。
【0003】
パラメータα、β,およびηは、所与の方法に関して実験的に決定することができる。これらのパラメータは、機械および対象の加速用電圧に依って異なる。通常、50キロボルト程度の加速電圧及び対象がケイ素又はガラス(二酸化ケイ素)の場合、αは、30nm程度であり、βは、10μm程度であり、ηは、0.5程度である。
【0004】
しかし、この2つのガウス関数種別のPSFによって付与される衝撃点の周辺でのエネルギー散乱を、モンテカルロモデルを使用したシミュレーションによって生成されたものと比較した場合、有意な散乱が注目される。以降の説明では参照モデルと呼ばれる、このモンテカルロタイプのシミュレーションは、実験結果により近いものであるが、このシミュレーションに必要な計算時間は長くなるため、生成に使用するのは困難である。従って、モデルの質を示す指標は、使用されるPSFと、参照モデルとの間での「適合度」であって、この適合度は、複数の点の正規化された標本寸法に関して2つのモデルを表す2つの曲線との間の二次散乱の合計によって測定される。
【0005】
特に、シミュレーション結果および実験結果により近いが、モンテカルロシミュレーションよりも遥かに短い時間でパラメータ化して計算することができるPSFの形態を見つけるのに有用と思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ローレンツ関数と、ガウス関数、例えば、フォークト関数とを組み合わせたPSFの等級、或いはこれらの関数を近似化したものを使用して近接効果のモデル化の散乱によって生ずる問題を解決する。
【0007】
このため、本発明は、前記ビームの散乱効果を校正するステップを有する、ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するための方法であって、前記ステップは、点拡散関数を計算するサブステップを有し、前記点拡散関数は、少なくとも1つのフォークト関数(230)と、フォークト関数を近似化した関数とを含む群から選択される関数の線形的な組み合わせである方法に関する。
【0008】
有利には、フォークト関数を近似化した前記少なくとも1つの関数は、第7種ピアソン関数である。
【0009】
有利には、前記関数の線形的な組み合わせも、少なくとも1つのガウス関数を有する。
【0010】
有利には、点拡散関数を計算するサブステップは、線形的な組み合わせに含まれる前記関数のパラメータおよび前記線形的な組み合わせの係数を選択するサブステップを含み、前記選択するサブステップは、一連の実験結果、又は対象に対する放射線の散乱のモンテカルロシミュレーションの表示と、点拡散関数との間の適合度についての最適化関数の実行を含む。
【0011】
有利には、前記少なくとも1つの関数は、ビームの中心に配置されない極値を有する。
【0012】
有利には、前記少なくとも1つの関数は、電子ビームの後方散乱ピークに配置される極値を有する。
【0013】
有利には、前記点拡散関数は、放射線が後方散乱ピークを有するのと、少なくとも同数の関数の線形的な組み合わせである。
【0014】
この方法を実施するため、本発明は、請求項1のウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するための方法の実行のために構成されたプログラムコード命令を有するコンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、前記プログラムは、前記ビーム内の散乱効果を模擬化及び/又は校正するためのモジュールを有し、前記モジュールは、点拡散関数を計算するためのサブモジュールを有し、前記点拡散関数は、少なくとも1つのフォークト関数と、フォークト関数を近似化した関数とを含む群から選択される関数の線形的な組み合わせである、コンピュータプログラムに関する。
【0015】
本発明は、ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するためのモジュールと、上述の特性を有するコンピュータプログラムとを含む電子リソグラフィシステムも包含する。
【0016】
本発明は、ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するステップを模擬化するモジュールと、上述の特性を有するコンピュータプログラムとを含む少なくとも1つの電子リソグラフィステップを模擬化するためのシステムも包含する。
【0017】
本発明は、ウェハ又はマスク上に電子ビームを投影するステップを模擬化するモジュールと、上述の特性を有するコンピュータプログラムとを含む電子顕微鏡システムも包含する。
【0018】
使用するものが、4つのフォークト関数を有する関数を含むPSFからなる、本発明の一実施態様において、4つのガウス関数に関して記載されるものよりも88%低い残存平均二乗誤差における非常に有意な改善を実証することが可能となっている。
【0019】
さらにまた、本実施態様で使用される関数の等級は、分析的な表記を有し、これら等級は、大掛かりな改変なしに「民生」ツールと容易に統合することができる。関数自体が分析的である累積散乱関数、即ち近接効果の校正に必要な畳み込み計算では、先行技術の解決策と同じ程度の計算上の複雑性が課題となっている。
【0020】
本発明は、本発明の様々な特性および利点が、以下の、幾つかの例示的な実施態様および添付の図面の詳細から明白になることにより、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】参照モデルによる樹脂によって吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図2】ガウス関数、ローレンツ関数、およびフォークト関数を表す。
【
図3a】本発明の一実施態様による極度の紫外線下で絶縁された樹脂又はマスクによって吸収されたエネルギーの散乱を表す。
【
図3b】本発明の一実施態様による極度の紫外線下で絶縁された樹脂又はマスクによって吸収されたエネルギーの散乱を表す。
【
図4a】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図4b】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図4c】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図4d】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図4e】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【
図4f】本発明の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、参照モデルによる樹脂によって吸収されるエネルギーの散乱を表す。
出版物、CASINO V2.42("A Fast and Easy−to−use Modeling Tool for Scanning Electron Microscopy and Microanalysis Users", Scanning, vol. 29, 92−101(2007),D.Drouin et al)は、モンテカルロ手順による電子ビームのエネルギー散乱を模擬化するためのソフトウェアの操作を記載している。このソフトウェアにより、電子と、ビームの対象との間の相互作用について起こりうる様々な物理モデルのパラメータ、主に物質の性質や層の厚さを選択することにより電子ビームの中心周辺でエネルギーが如何に散乱されるかを最も良く説明することが可能である。
【0023】
図示例において、50KeV(10
6電子)ビームの放射距離の関数として、石英基板上に溶着された100nmのPMMA(ポリメチルメタクリレート)に吸収されたエネルギーの散乱であって、この表示は二重のロガリズムスケール上(log(keV/nm
2)および横座標としてlog(nm))に現れる。この散乱は、如何なる水平平坦域を表すものではなく、この平坦域は、この散乱を説明するガウス関数の使用時に必ず存在することが確認されている。このため、PSFにおけるガウス関数の使用は、この種の吸収されたエネルギー散乱を最も良く説明する上で十分な適合度を有するとは言えない。既に示した通り、本発明の目的は、PSFのガウス関数のうちの少なくとも1つを別の関数に置き換えて、参照モデルに対応する
図1に表す関数の種類の散乱曲線との、より良い適合度を得るようにすることである。
【0024】
図2は、ガウス関数、ローレンツ関数、およびフォークト関数を表す。
本発明者は、ガウス関数と、ローレンツ関数との畳み込みの積である、フォークト関数、又はこれら関数を正確に近似化したものにより、参照モデルとの適合度が改善されることを示した。ビームζ
cの中心に対する距離ζのフォークト関数は、以下の式によって計算される。
【数2】
式中、aは、ガウス関数の標準偏差であり、bは、ローレンツ関数の中間高さでの半値幅であり、高さは、前記関数の値、x
c即ち、
【数3】
である。
【0025】
同図において、この3つの関数は、ガウス関数については曲線210、ローレンツ関数については曲線220、フォークト関数については曲線230で表わされる。
【0026】
分析的に計算するのが容易ではないフォークト関数については、使用するものは、以下の式によって表される第7種ピアソン関数によって近似化されたものからなることが多い。
【数4】
式中、Mは、形状寸法パラメータ又はピアソン幅であり、wは、ピアソンピークの中間高さFWHM(半値最大値での全値幅)での幅を付与した距離である。M<<1のとき、曲線の形状は、ローレンツ曲線を呈する。M>>10のとき、曲線の形状は、ガウス曲線を呈する。
【0027】
本発明によれば、所与の厚さを有する特定の材料の層に対応する放射線厚さについて可能な限り最良の近似化を実現するため、ガウス関数と、フォークト関数又は第7種ピアソン関数との組み合わせに加え、フォークト関数、第7種ピアソン関数を線形的に組み合わせることが可能であって、線形的な組み合わせの係数、および前記関数のパラメータは、参照モデルとの適合度を最適化するために賢明に選択される。この適合度は、残りの平均二乗誤差によって測定される。参照モデルとの適合度を最適化するパラメータの値を計算するには、局所的な最適化のための手順、例えばレーヴェンマルカルドアルゴリズムに基づくものや、より広域な最適化のための簡易アルゴリズム又は手順、例えばクリギング又は汎用のアルゴリズムに基づく手順を使用することが可能である。
【0028】
後方散乱の共用が有意な場合、特に、極端な紫外線の下でのマスクのエッチングや、(組成の違いを有し、例えば、半導体の領域に近接する酸化物の領域を局所的に有する)構造化された基板のエッチングの場合、本発明の方法と、特に本出願の出願人のうちの一人によって出願された仏国特許出願第11/57338号明細書に記載の方法とを組み合わせることが考えられる。本発明によれば、使用するものは、ビームの中心に中心化されていないPSFからなる。
【0029】
図3aおよび
図3bは、本発明の一実施態様による極端な紫外線の下で絶縁された樹脂又はマスクによって吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【0030】
図3aにおいて、純粋に本発明の普遍性についての非限定的な図示によって、この使用のために適合されるマスク(即ち、例えばクロム又はタンタル吸収体で覆われたガラス支持具からなるマスク)が放射線に曝される本発明の一実施態様を表す。曲線310aによって付与される参照モデルは、広域のエネルギー範囲の物質と衝突する電子のための衝突断面を正確に付与するESELPAデータベースを使用したCASINOシミュレーションソフトウェアによって決定される。PSF360aを生成するために4つの第7種ピアソン関数が組み合わされる。
− 曲線320aによって表される第1の関数、ピアソン1は、パラメータMおよびwがそれぞれ3および2.2nmに固定される第7種ピアソン関数である。
− 曲線330aによって表される第2の関数、ピアソン2は、パラメータMおよびwがそれぞれ1.7および8nmに固定される第7種ピアソン関数である。
− 曲線340aによって表される第3の関数、ピアソン3は、パラメータMおよびwがそれぞれ1.5および1,200nmに固定される第7種ピアソン関数である。
− 曲線350aによって表される第4の関数、ピアソン4は、パラメータMおよびwがそれぞれ50および300nmに固定される第7種ピアソン関数である。
【0031】
PSFは、以下の式の4つの第7種ピアソン関数の線形的な組み合わせである。
PSF=Pearson1xAi + Pearson2xA2 + Pearson3xA3 + Pearson4xA4
式中、上記組み合わせの係数は、以下の値を有する。
− log(A1)=−1.25となるようなA1
− log(A2)=−3.7となるようなA2
− log(A3)=−8.5となるようなA3
− log(A4)=−10となるようなA4
【0032】
図3bにおいて、純粋に、本発明の普遍性についての非限定的な図示によって、樹脂例えばPMMAで覆われた基板が放射線を受け入れる本発明の一実施態様を示す。この表示および表記は、
図3aのものと同一である。使用される第7種ピアソン関数も、
図3aのものと同様である。唯一の変更点は、線形的な組み合わせの係数Aiである。この場合、これら係数は、以下の値を有する。
− log(A1)=−1.25となるようなA1
− log(A2)=−5.4となるようなA2
− log(A3)=−10となるようなA3
− log(A4)=−11.2となるようなA4
これらの値により、参照モデルとの、より良い適合度を得ることが可能である。
【0033】
図4a〜
図4fは、本発明の使用の様々な状況において吸収されるエネルギーの散乱を表す。
【0034】
図4a〜
図4fの全てにおいて、参照モデル410aの放射線曲線は、4つのフォークト関数の合計のため本発明の方法420aによって計算されたPSF、および4つのガウス関数の合計を使用することからなる従来の方法430aによって計算されたものと比較される。
【0035】
図4a〜
図4eにおいて、放射線は、(これらの図示における2nm程度の)小さいビームによって出射される。
【0036】
図4aにおいて、対象が、ケイ素基板上の100nmのPMMA積層であって、放射線が、100KeVのエネルギーを有する場合を図示する。
【0037】
図4bにおいて、対象が、EUV(極端な紫外線の)積層であって、放射線が、100KeVのエネルギーを有する場合を図示する。
【0038】
図4cにおいて、対象が、ケイ素基板上の100nmのPMMA積層であって、放射線が、50KeVのエネルギーを有する場合を図示する。
【0039】
図4dにおいて、対象が、EUV(極端な紫外線の)積層であって、放射線が、50KeVのエネルギーを有する場合を図示する。
【0040】
図4eにおいて、対象が、ケイ素基板上の100nmのPMMA積層であって、放射線が、10KeVのエネルギーを有する場合を図示する。
【0041】
図4fにおいて、対象が、ケイ素基板上の100nmのPMMA積層であって、放射線が、100KeVのエネルギーを有する広域ビーム(30nm)からなる場合を図示する。
【0042】
各種曲線から、本発明のPSFと、参照モデルとの間の適合度は、表示された全構成において特に良好である点は注目される。本発明の方法の適合度の質は、参照曲線410xと、本発明を代表する曲線420xとを差別化することを許容するものではないが、先行技術を代表する曲線430xに関し、ガウス関数を使用することで、明確な偏差が確認されている。しかし、本発明の方法は、他の使用条件においても実施することができる。
【0043】
本発明によれば、フォークト関数又は第7種ピアソン関数は、結果として生じた散乱が電子ビームの中心に関して中心化されるか、非中心化されるかの方式において選択される。後方散乱が支配的になる条件の場合、一定のピークの中心ズレが考えられる。好ましい態様において、この散乱の中心は、後方散乱ピーク(後方散乱)に調整される。この選択は、後方散乱効果が特に有意なときに特に有利であり、特に、極端な紫外線マスクの製作への適用の場合同様、基板上でタンタル層又は窒素ドープされたタンタル層が埋め込まれるときに有利である。実際、これら重金属の層は、非常に好ましい後方散乱を引き起こす。よって、前記ピークは、電子ビームに関して中心からずれていることは、実験的にもモンテカルロシミュレーションによっても確かに注目される。散乱ピークは幾つかあってもよい。この場合、有利には、散乱ピークと同数のフォークト又は第7種ピアソン関数とを組み合わせることが選択される。吸収されたエネルギーの散乱を表す曲線上では、散乱ピークは、この曲線の高さでの勾配の変化によって立証することができる。このため、有利には、確認可能な勾配の変化と同数のフォークト又は第7種ピアソン関数とを組み合わせることが可能である。また、必ずしも適合度を改善する必要がない場合でも、適宜、少なくとも1つの関数、或いは各ピークに各関数を中心化するために選択することが可能である。
【0044】
本発明の方法を、ウェハ上での直接投影又はマスクエッチングによる電子リソグラフィへの適用において実施するため、例えばVISTEC(商標)社のSB3054というタイプのマシンを使用することが可能である。本発明によれば、例えばSynopsis(商標)社のPROXECCO(商標)ソフトウェアや、Aselta Nanographics(商標)社のInscal(商標)ソフトウェアなどの線量変調ソフトウェアを改変して先行技術の後方散乱のPSFを上述の後方散乱のPSFに置き換えることにより、線量変調を行ってもよい。前方散乱のPSFの場合、先行技術同様、中心化されたガウス関数でも、ビームの中心上に中心化される他のいずれかの種類の鐘曲線でも使用することが可能である。
【0045】
線量変調は、PSF(前方散乱のPSF及び後方散乱のPSF)をエッチング対象のパターンの形状寸法で畳み込んで行われる。本発明の特許出願の出願人のうちの一人に許可された国際出願PCT/EP2011/05583号明細書において記載されたものなどの方法によれば、このソフトウェアは、有利には、線量変調の最適化と、エッチング対象のパターンの形状寸法の最適化とを組み合わせて行うように改変することもできる。
【0046】
本発明の方法、および本方法を実施するためのコンピュータプログラムは、画像化において、又はウェハ又はマスクの検査を行うために使用することができる走査式電場効果又はトンネル効果による電子顕微鏡システムのPSFを最適化するように使用することもできる。本方法及びプログラムは、電子リソグラフィ方法の1つ以上のステップのシミュレーションを実行するために適合させることもできる。
【0047】
従って、上述の例は、本発明の各実施態様の例示によって付与される。但し、これらの例は、以下の請求項によって定義される本発明の分野を如何なる手法においても限定するものではない。