【文献】
吉川弘道、中公雄介,リスクマネージメントにおける地震リスクの考え方と解析方法,土木学会第58回年次学術講演会,日本,土木学会,2003年 9月,pp.721-722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地盤補強や液状化対策工法毎に過去の液状化時の敷地の最大傾斜角の平均と標準偏差とを算出し、液状化による最大傾斜角の発生確率が1となるように、対数正規分布などの確率密度関数で、前記各地盤補強や液状化対策工法毎の、液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する過程と、
過去の液状化時の復旧費用データを用い、建築面積当たりの、建物の損傷程度に応じた建物補修費用をモデル化する過程と、
地盤補強や液状化対策工法毎に、前記各モデル化により得られた前記「液状化した場合の建物損傷確率」と前記「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」との積を積分し、その算出した積分値を前記地盤補強や液状化対策工法における液状化発生時の期待損失額とする過程、
とを含み、
前記建物損傷確率をモデル化する過程において、地盤補強または液状化対策についての異なる工法である複数種の工法と、補強無しの場合とのそれぞれについて、共通の方法でモデル化し、前記工法毎と補強無しの場合とのモデル化された、最大傾斜角度と建物損傷確率の関係を示す曲線を同じグラフ上に併記し、
前記期待損失額を求める過程において、前記複数の工法のそれぞれと補強無しの場合とについて前記期待損失額を算出し、工法毎と補強無しの場合との前記期待損失額の算出結果を同じグラフに併記する、
液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、液状化危険度の評価方法および地震の発生確率の評価方法が個々には提案されているが、液状化した場合の期待損失額を導出する方法、特に地盤補強や液状化対策工法毎の液状化期待損失額を導出する方法については提案されるに至っていない。液状化対策工法の費用対効果を適切に検討するためには、地盤補強や液状化対策工法毎の液状化期待損失額を精度良く求めることが必要である。
【0006】
また、上記のように液状化危険度の評価方法は複数存在するが、地震の発生確率を考慮した対象地盤での液状化発生確率を評価するものは存在せず、ある供用期間中の液状化による期待被害額を求める方法は知られていない。
【0007】
この発明の目的は、地盤補強や液状化対策工法毎の液状化発生時の期待損失額を精度良く求めることができる液状化対策工法の液状化期待損失額の評価方法を提案することである。
この発明の他の目的は、さらに、地盤補強や液状化対策工法毎のt年間の液状化による期待被害額を精度良く求めることができる液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法は、
地盤補強や液状化対策工法毎に過去の液状化時の敷地の最大傾斜角の平均と標準偏差とを算出し、液状化による最大傾斜角の発生確率が1となるように、対数正規分布などの確率密度関数で、前記各地盤補強や液状化対策工法毎の、液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する過程(S1)と、
過去の液状化時の復旧費用データなどを用い、建築面積当たりの、建物の損傷程度に応じた建物補修費用をモデル化する過程(S2)と、
地盤補強や液状化対策工法毎に、前記各モデル化により得られた前記「液状化した場合の建物損傷確率」と前記「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」との積を積分し、その算出した積分値を前記地盤補強や液状化対策工法における液状化発生時の期待損失額とする過程(S3)とを含む方法である。
前記建物損傷確率をモデル化する過程(S1)においては、地盤補強または液状化対策についての異なる工法である複数種の工法と、補強無しの場合とのそれぞれについて、共通の方法でモデル化し、前記工法毎と補強無しの場合とのモデル化された、最大傾斜角度と建物損傷確率の関係を示す曲線を同じグラフ上に併記し、
前記期待損失額を求める過程においては、前記複数の工法のそれぞれと補強無しの場合とについて前記期待損失額を算出し、工法毎と補強無しの場合との前記期待損失額の算出結果を同じグラフに併記する。
【0009】
この方法によると、地盤補強や液状化対策工法毎に「液状化した場合の建物損傷確率」を求め、この「液状化した場合の建物損傷確率」と「損傷程度に応じた建物補修費用」との積を積分して液状化発生時の期待損失額とするため、地盤補強や液状化対策工法毎の液状化発生時の期待損失額を求めることができる。また、前記建物損傷確率や建物補修費用は、いずれも、過去に実際に発生した地震による液状化被害データなどから求めるので、信頼性の高い値となる。このいずれも信頼性の高い値を用いて液状化発生時の期待損失額を求めるため、その求めた液状化期待損失額は信頼性の高いものとなり、液状化対策工法の液状化が発生した場合の期待損失額の評価を精度良く行うことができる。
【0010】
この発明の評価方法において、「t年間(t:任意に設定した対象期間)で対象地盤が液状化する確率」と、前記「液状化発生時の期待損失額」との積により、前記地盤補強や液状化対策工法におけるt年間の液状化による期待被害額とする過程(S4)を含めても良い。
前記「対象地盤が液状化する確率」は、例えば、J−SHISが公開しているハザード地図等から地震ハザード曲線を得て求める。
このように、対象地盤が液状化する確率と液状化発生時の期待損失額とを用いてt年間の液状化による期待被害額を求めるため、地域の地震危険度と地盤の液状化危険度を踏まえた液状化対策工法の選定が行える。
このため、より一層的確に、液状化対策工法の選定が行える。
【発明の効果】
【0011】
この発明の液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法によると、地盤補強や液状化対策工法毎に、液状化した場合の建物損傷確率と建物の損傷程度に応じた建物補修費用とを求めてその積を積分し、地盤補強や液状化対策工法における液状化発生時の期待損失額とするため、地盤補強や液状化対策工法毎の液状化発生時の期待損失額を求めることができる。また、前記建物損傷確率および建物補修費用は、いずれも過去に実際に発生した地震による液状化被害データなどから求めるので、信頼性の高い値となり、そのためこれらの値を用いて得られる期待損失額は信頼性および精度の高いものとなる。したがって、液状化対策工法の費用対効果を適切に求めることができる。
また、t年間で対象地盤が液状化する確率と、前記液状化発生時の期待損失額とからt年間の液状化による期待被害額を求める場合は、地域の地震危険度と地盤の液状化危険度を踏まえた液状化対策工法の選定が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態に係る液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法を示す流れ図である。
【
図2】同評価方法の過程で求める地盤補強や液状化対策工法毎の液状化発生時の最大傾斜角の分布を示すグラフである。
【
図3】同評価方法の過程で求める液状化発生時の最大傾斜角の確率分布を示すグラフである。
【
図4】同評価方法の過程で求める損傷程度に応じた建物補修費用を示すグラフである。
【
図5】同評価方法の過程で求める液状化した場合の地盤補強や液状化対策工法毎の期待損失額を示すグラフである。
【
図6】同評価方法の過程で求めるt年間の液状化による期待被害額を示すグラフである。
【
図7】同評価方法の過程で用いるt年間で対象地盤が液状化する確率を求める方法の例を示す流れ図である。
【
図8】同液状化確率を求める方法に用いる液状化判定指標であるPL値情報となる曲線の例を示すグラフである。
【
図9】同液状化確率を求める方法における途中の過程で求める液状化危険度曲線の例を示すグラフである。
【
図10】同液状化確率を求める方法に用いる地震ハザード曲線の例を示すグラフである。
【
図11】同液状化確率を求める方法における途中の過程で求める対象期間の地震動の発生確率の例を示すグラフである。
【
図12】同液状化確率を求める方法で求める対象期間の液状化発生確率の例を示すグラフである。
【
図13】液状化した場合の損傷確率曲線と建物補修費用の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。この液状化対策工法の液状化による期待被害額の評価方法は、概要を説明すると、地盤補強の種類毎に、液状化発生時の期待損失額を、「液状化した場合の建物損傷確率」と「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」との積の積分値(
図5の面積)として求め、さらにこの求めた期待損失額と、地震発生確率(t年間で対象地盤が液状化する確率)を考慮してt年間の液状化による期待被害額を求める方法である。
【0014】
この方法は、次の各過程(S1)〜(S4)を含む。
・液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する過程(S1)。
・建物の損傷程度に応じた建物補修費用をモデル化する過程(S2)。
・各モデル化により得られた、「液状化した場合の建物損傷確率」と「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」とから「液状化発生時の期待損失額」を求める過程(S3)。
・t年間の液状化による期待被害額を求める過程(S4)。
上記各過程(S1)〜(S4)の処理は、コンピュータを用いて行う。
【0015】
液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する過程(S1)では、地盤補強や液状化対策工法毎に過去の液状化時の敷地の最大傾斜角の平均と標準偏差とを算出し、液状化による最大傾斜角の発生確率が1となるように、対数正規分布などの確率密度関数で、前記各地盤補強や液状化対策工法毎の、液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する。
【0016】
すなわち、この液状化した場合の建物損傷確率をモデル化する過程(S1)では、液状化による建物の損傷程度を地盤の最大傾斜角(=建物の最大傾斜角)と考え、実際の液状化被害データなどを用いてモデル化を行う。
具体的には、まず
図2に示すように、過去の大地震時の地盤補強や液状化対策工法による最大傾斜角度の分布を調べる。地盤補強や液状化対策工法は、例えば、地盤補強無しの場合と、地盤補強有りの場合の各種類(A工法、B工法)とする。
【0017】
この地盤補強や液状化対策工法毎に、過去の液状化時の敷地の最大傾斜角の平均μと、標準偏差σを算出する。
例えば,対数正規分布の確率密度関数でモデル化するために、次の式により、対数平均λ、対数標準偏差ζに変換する。
λ=ln(μ)−0.5×ζ
2
ζ=√(ln(1+(σ
2/μ
2))
【0018】
この後、地盤補強や液状化対策工法毎に、液状化による最大傾斜角xの発生確率を面積が1となるように、次式(1)で示される対数正規分布などの確率密度関数でモデル化する。
P
f (x) = Φ[ { ln(x) − ln(λ) } / ζ ] …式(1)
【0019】
損傷程度に応じた建物補修費用をモデル化する過程(S2)では、過去の液状化時の復旧費用データなどを用い、建築面積当たりの、建物の損傷程度に応じた建物補修費用をモデル化する。
具体的には、
図4に示すように、実際に液状化被害からの復旧必要データを用い、最大傾斜角に対する補修費用のモデル化を行う。
復旧費用は、建築面積によると考えられるため、単位となる、例えば建築面積1m
2あたりの費用とする。
この最大傾斜角と建築面積に対する復旧費用との関係の分布図(
図4)より、近似式を作成し、この近似式を、損傷程度に応じた建物補修費用のモデルとする。
【0020】
「液状化発生時の期待被害額」を求める過程(S3)では、地盤補強や液状化対策工法毎に、前記各モデル化により得られた、前記「液状化した場合の建物損傷確率」と前記「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」との積を積分し、その算出した積分値(
図5の各曲線と横軸とで囲まれる面積)を前記地盤補強や液状化対策工法における液状化発生時の期待被害額とする。
【0021】
すなわち、「液状化した場合の建物損傷確率」×「建物の損傷程度に応じた建物補修費用」により、地盤補強の種類に応じた期待損失額が求まる。
例えば、「液状化した場合の建物損傷確率」をPf(x)、「損傷程度に応じた建物補修費用」をCl(x)とすると、液状化した場合の期待損失額Cliqを次の式(2)より求める。
Cliq =∫(Pf(x)×Cl (x))dx …式(2)
上記の式(2)の積分値Cliqは、
図5の各曲線と横軸とで囲まれる面積を示す。
【0022】
t年間の液状化発生時の期待被害額を求める過程(S4)では、「t年間(t:任意に設定した対象期間(例えば、供用期間))で対象地盤が液状化する確率」と、前記「液状化発生時の期待損失額」との積により、前記地盤補強や液状化対策工法におけるt年間の液状化による期待被害額とする。
【0023】
地盤補強や液状化対策工法に応じたt年間の液状化による期待被害額は、「t年間で液状化する確率」×「液状化発生時の期待損失額」により求まる。
例えば、「t年間で液状化する確率」をPliq (t)、「液状化した場合の期待損失額」をCliq とすると、液状化による期待被害額Eliq (t)は、次式(3)により求められる。
Eliq (t)=Pliq (t)×Cliq …式(3)
【0024】
図6は、このように求めた、ある地盤補強の種類Aと対策無しの場合についての、t年間の液状化による期待被害額の例を示すグラフである。
なお、対象地盤が液状化する確率は、例えば、J−SHISが公開しているハザード地図等から地震ハザード曲線を得て求める。
【0025】
この方法によると、地盤補強や液状化対策工法毎に「液状化した場合の建物損傷確率」を求め、この「液状化した場合の建物損傷確率」と「損傷程度に応じた建物補修費用」との積を積分して液状化発生時の期待損失額とするため、地盤補強や液状化対策工法毎の液状化発生時の期待損失額を求めることができる。
前記建物損傷確率および建物補修費用は、いずれも過去に実際に発生した地震による液状化被害データなどから求めるので、信頼性の高い値となる。このいずれも信頼性の高い値を用いて液状化発生時の期待損失額を求めるため、その求めた液状化期待損失額は信頼性の高いものとなり、液状化対策工法の液状化期待損失額の評価を精度良く行うことができる。
また、対象地盤が液状化する確率と液状化発生時の期待損失額とを用いてt年間の液状化による期待被害額を求めるため、地域の地震危険度と地盤の液状化危険度を踏まえた液状化対策工法の選定が行える。
【0026】
このように、地域の地震危険度と、地盤の液状化可能性を踏まえた液状化対策工法の選定が行え、また、実際に発生した地震による液状化被害データなどを踏まえて建物の損傷確率や補修費用を求めるので、信頼性のある評価手法となる。
従来、地震の発生確率を考慮した対象地盤での液状化発生確率を評価する方法、およびその被害額を算出する方法は知られておらず、この発明により、地震の発生確率を考慮した液状化対策工法の選定が可能となる。
【0027】
次に、対象期間(t年間)に対象地盤が液状化する確率を求める方法の例を、
図7と共に説明する。この方法は、先の出願(特願2013−029739号)で提案した方法であり、例えばJ−SHISが公開しているハザード地図等から地震ハザード曲線を得て、次のように求める。
【0028】
対象期間(t年間)に対象地盤が液状化する確率を求める方法の概要を示すと、次の通りである。
地震動強さ指標Sに対しての対象地盤の液状化の危険性を示す液状化判定指標を示した液状化判定値情報を取得する液状化判定値情報取得過程(R1)と、
前記液状化判定値情報を、液状化危険度の発生確率に変換する液状化危険度曲線変換過程(R2)と、
対象地盤の地震動強さ指標Sに対する超過確率の関係を示す地震ハザード曲線を取得する地震ハザード曲線取得過程(R3)と、
この取得した地震ハザード曲線より対象期間t中における地震動発生確率を求める地震動発生確率変換過程(R4)と、
これらの求められた液状化危険度と地震動発生確率とを掛け合わせ地震動強さ指標Sで積分することで対象期間tの間の液状化発生確率を求める対象期間中液状化発生確率演算過程(R5)、とを含む。
なお、
図1において、上記の過程(R1)および過程(R2)からなる過程と、過程(R3)および過程(R4)からなる過程とは、互いに後先を逆にしても、また並行して行っても良い。
【0029】
図7において、液状化判定値情報取得過程(R1)は、地震動強さ指標Sに対しての対象地盤の液状化の危険性を示す液状化判定指標を地震動強さ指標Sの程度に応じて示した液状化判定値情報を得る過程である。この液状化判定値情報は、例えば
図8に示すように、横軸の地震動強さ指標Sを最大地動加速度PGA、縦軸を液状化判定指標であるPL値として示されるグラフからなる情報である。
【0030】
液状化判定指標は、既往の液状化判定方法であるPL法に基づく評価方法で用いられる指数であってもよい。PL法は、想定する地震動強さに対して、対象地盤の液状化危険性を判定する指標である。地震動強さは、最大地動加速度PGAである。液状化判定指標PLは、例えば、次式(1)で定まる値とされる。
【0032】
PL法によると、地盤の地下水位の深さ、地表面深度に応じたN値(地盤の強度を示す指標であり、標準貫入試験によって得られる)と土質が分かれば評価可能である。PL法による演算で必要となるその他のパラメータ(細粒分含有率や密度など)は、適宜のデータベースから抽出することにしてもよい。
上記の理由から、SWS(スウェーデン式サウンディング試験)の結果を用いることも可能である。換算N値を用いることができるためである。
PL法で必要となる地震タイプ(内陸型または海溝型)は、地震ハザード曲線の地震カテゴリーの影響度から決める。
【0033】
なお、PL法で用いる液状化判定基準を利用して、液状化発生確率を評価する評価例としては、次の表1,表2に示す例がある。表1は対象地盤での地下水位、N値、土質を示す。表2は、埼玉県の液状化判定基準を示す。
【0036】
なお、液状化判定指標は、既往の液状化判定方法であるFL法,地形分類による方法などであってもよい。
【0037】
図7において、液状化危険度曲線変換過程(R2)は、前記液状化判定値情報を、発生確率で示した液状化危険度に変換する過程である。例えば、
図9に示す液状化危険度曲線に変換する。この液状化危険度曲線は、最大地動加速度(PGA)に対する液状化する確率を表した曲線である。
【0038】
最大地動加速度(PGA)に対するPL値による液状化判定曲線(前記PL値情報)は
図8と共に前述したようになるが、液状化危険度曲線変換過程(R2)では、これを液状化判定基準に基づき、縦軸を発生確率に変換する。例えば、PL=5を50%、PL=15を100%とするなどして変換処理を行う。変換結果は、対数正規分布に置き換えても良いし、また
図8の形状のままで縦軸を発生確率に変換しても良い。
【0039】
例えば、次式によって変換する。
Plr= PL ×0.1 (PL≦5 )
Plr= 0.5×(PL −5)×0.1 +0.5 (5 <PL≦15)
Plr= 1(15<PL)
【0040】
図7において、地震ハザード曲線取得過程(R3)は、対象地盤の最大地動速度PGVに対する超過確率の関係を示す地震ハザード曲線を取得し最大地動速度PGVを液状化発生確率と対応する地震動強さ指標Sに変換する過程である。
図10に地震ハザード曲線の例を示す。前記「超過確率」は、その地震の起こり易さであり、例えば年超過確率である。地震ハザード曲線を取得する方法は、既に作成された地震ハザード曲線を、通信ネットワーク等を経て、この評価方法の処理に用いるコンピュータ(図示せず)に入力することで得る方法であっても良く、またコンピュータにより適宜の入力情報から演算することで作成する方法としても良い。
【0041】
地震ハザード曲線は、例えば、J−SHISが公開しているハザード地図等から得るようにしても良い。
地震ハザード曲線を作成する場合、例えばコンピュータに入力された対象地点の住所等の情報(都道府県、市町村、町丁目のデータ)から、緯度、経度、地盤増幅率をデータベースより取得し、また付近の活断層情報(予測震度、目安距離・深さ・マグニチュード・発生確率)をデータベースより求め、解析を行って作成する。データベースおよび解析には、例えば文科省の地震調査研究推進本部より公開されている断層データ、計算方法を用いる。
【0042】
図7において、地震動発生確率変換過程(R4)は、液状化発生確率と対応する地震動強さ指標Sに対する地震ハザード曲線を示す式において、超過確率を地震動強さ指標Sで微分することによって、
図11にグラフで示すような例えば最大地動加速度PGAに対する対象期間t中における地震動発生確率を求める過程である。
【0043】
図7において、対象期間中液状化発生確率演算過程(R5)は、上記の各変換過程(R2)、(R4)で求められた液状化危険度と地震動発生確率とを掛け合わせて地震動強さ指標Sで積分することで対象期間tの間の液状化発生確率を求める過程である。
対象期間tの間の液状化発生確率は、例えば、
図12に示すように横軸に最大地動加速度PGA、縦軸に確率密度を採ったグラフとして示され、確率密度の曲線内の面積が対象期間tの間の液状化発生確率となる。
【0044】
前記液状化危険度Plr と地震動発生確率Per とを掛け合わせて地震動強さ指標Sで積分する処理は、例えば次式によって行われる。
Pliq = ∫(Per×Plr) ds
【0045】
この液状化発生確率の評価方法によると、このようにして、地震動発生確率を踏まえた対象期間t中の対象地点での液状化発生確率を評価することができる。そのため、各種の建築,土木事業に貢献できる。