(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形時に加熱工程を経るため、マンドレルの材料には、成形品と同材であるFRPや、FRPと同様に熱膨張率が低いインバーを用いることが好ましいが、マンドレルが高価となる。
そのため、FRPに比べて熱膨張率が高くても、アルミニウム等の安価な材料を使用したい。しかし、伸びたときに成形品の寸法に一致するようにマンドレルの寸法を設定するとしても、常温においてFRPとマンドレルとの寸法差が大きいと、マンドレル内に繊維基材を収容することができないため、良好な寸法精度および内部品質を得ることができない。
そこで、マンドレルをストリンガの縦方向において複数のピースに分割し、それらのピースを互いの間に隙間をあけて並べれば、寸法差を隙間で吸収できる。
しかしながら、マンドレルが分割されていると、ピースの位置がずれることで成形品の形状精度が低下する。
特許文献1には、分割されたマンドレルを用いる場合に、ストリンガの形状精度を担保することについては記載されていない。
上記の課題に基づいて、本発明は、成形治具に安価に製作可能でありながら、成形品に求められる形状精度を確保できる繊維強化プラスチック部材の成形方法、および繊維強化プラスチックの成形に用いる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の繊維強化プラスチック部材の成形方法は、縦方向の寸法が縦方向に直交する方向の寸法よりも長い繊維強化プラスチック部材を成形する方法であって、繊維強化プラスチックの材料を成形する型であり、縦方向において隣り合う複数のピースを有する第1成形治具と、繊維強化プラスチックの線膨張係数と近似する線膨張係数の材料から形成されるとともに、第1成形治具の各ピースを縦方向に沿って整列させる第2成形治具と、を構成し、第1成形治具の各ピースを互いの間に隙間があいた状態に配置する第1成形治具配置ステップと、第1成形治具に第2成形治具を配置する第2治具配置ステップと、第2成形治具によって各ピースを整列させながら繊維強化プラスチックの材料を加熱することを経て、繊維強化プラスチックを成形する成形ステップと、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明では、繊維強化プラスチック部材の型である第1成形治具と、繊維強化プラスチックを形成するFRPの線膨張係数に近似する線膨張係数の材料から形成される第2成形治具とを併用する。
そして、第1成形治具を縦方向において複数のピースに分割し、隙間をあけて配置するとともに、第2成形治具によって各ピースを縦方向に沿って整列させる。
このような本発明によれば、線膨張係数の差に起因するFRPと第1成形治具との寸法差がピース間の隙間で吸収されるために、線膨張係数がFRPやインバーとは異なる安価な材料、例えばアルミニウムを第1成形治具に用いながら、第1成形治具の各ピースが整列されるために、成形された繊維強化プラスチック部材の形状精度を確保できる。
【0007】
ここで、第1成形治具が繊維強化プラスチック部材の材料を包囲する必要があるのに対して、第2成形治具は、第1成形治具の各ピースを整列させるためにピースの一部に接触すれば足りる。したがって、第2成形治具は、第1成形治具に比べて少ない体積で構成可能であり、同じ材料を用いたときの重量が第1成形治具よりも小さい。そのため、第2成形治具をインバーから形成するとしても、第1成形治具を安価な材料から形成することにより、第1成形治具および第2成形治具を合わせた成形治具全体として、安価に製作できる。
また、第2成形治具は、型である第1成形治具に比べて簡素な形状で構成可能であるため、FRPから形成するときの製作コストが第1成形治具よりも安価である。そのため、第2成形治具をFRPから形成するとしても、第1成形治具を加工費が安価な金属材料から形成することにより、成形治具全体として、安価に製作できる。
以上に加え、第1成形治具の材質として、熱容量の大きいインバーではなく、低熱容量、高熱伝導率のアルミニウムなどを用いることができることにより、部材の硬化・固化に要する成形サイクルタイム削減、省エネルギー化が図られる。
【0008】
本発明の繊維強化プラスチック部材の成形方法において、第2成形治具により、縦方向の両端に配置されるピースを縦方向において拘束することが好ましい。
こうすると、各ピースの縦方向の伸びを、第1成形治具の縦方向の中心に向けて生じさせることができるので、ピース同士を近づけることができる。その結果、ピース間の隙間が詰まり、第1成形治具内部の成形空間の全長が繊維強化プラスチック部材に規定の寸法となるので、繊維強化プラスチック部材の長さの精度を確保できる。
【0009】
ここで、縦方向に直交する方向において、第2成形治具に対する両端のピースの相対変位が許容されることが好ましい。そうすると、両端のピースが熱膨張しても第2成形治具が両端のピースに乗り上げることを回避できる。このため、第2成形治具によって各ピースが整列されるとともに両端のピースが拘束された状態を保ち、形状精度および長さの精度を確保することができる。
【0010】
本発明の繊維強化プラスチック部材の成形方法では、ピースを、繊維強化プラスチックの材料を間に挟み込む第1ブロックおよび第2ブロックにより構成し、第1ブロックおよび第2ブロックの各々には、第1ブロックと第2ブロックとを合わせると略L字形状をなし、縦方向に連続する第1斜面を形成し、第2成形治具には、第1ブロックの第1斜面に倣い、縦方向に連続する第2斜面と、第2ブロックの第1斜面に倣い、縦方向に連続する第2斜面とを形成することが好ましい。
【0011】
第1成形治具に第2成形治具を配置し、第1成形治具の各ブロックの第1斜面と第2成形治具の第2斜面とを接触させると、第2成形治具の自重によって第1ブロックおよび第2ブロックが金型等に向けて押し付けられるだけでなく、第1斜面および第2斜面を介して、第1ブロックおよび第2ブロックを両側から中央に寄せる向きの分力が生じる。この分力により、第1ブロックおよび第2ブロックを閉じる向きに加圧しながら、各ピースを両側から押さえて整列させることができる。
【0012】
本発明の繊維強化プラスチック部材の成形方法では、ピース間の隙間の寸法は、当該隙間を形成するピースの縦方向における寸法に応じた比率で定めることが好ましい。
こうすると、各ピースの長さの違いに起因する伸び量の違いに対応できるので、隙間を効率よく、確実に詰めることができる。
【0013】
本発明の繊維強化プラスチック部材の成形方法では、縦方向において、繊維強化プラスチック部材の形状が変化する箇所に対応するピースの寸法を、他の箇所に対応するピースよりも短く設定することが好ましい。
例えば、繊維強化プラスチック部材の厚みが縦方向において変化し、段差が形成される場合、第1成形治具のピースにも段差が形成される。この場合、ピースに形成される段差が繊維強化プラスチック部材の賦形された材料の段差や、金型の段差に係合されるので、そのピースは、縦方向における位置が拘束されることとなる。
そのため、当該ピースの長さを短く抑えることで、第1成形治具の全長において他のピースが受け持つ長さの比率を大きくしている。そうすれば、他のピースの縦方向への伸びにより、隙間を十分に詰めて第1成形治具の全長を規定の寸法とすることができる。
【0014】
本発明の繊維強化プラスチックの成形に用いる成形装置は、縦方向の寸法が縦方向に直交する方向の寸法よりも長い繊維強化プラスチック部材を成形する成形装置であって、繊維強化プラスチックの材料を成形する型であり、縦方向において隣り合う複数のピースを有する第1成形治具と、繊維強化プラスチックの線膨張係数と近似する線膨張係数の材料から形成されるとともに、第1成形治具の各ピースを
、縦方向と直交する幅方向の両側から押さえることで縦方向に沿って整列させる第2成形治具と、を備える。
そして、本発明は、繊維強化プラスチックの材料を加熱する前、第1成形治具の各ピースは、互いの間に隙間があいた状態に配置され、繊維強化プラスチックの材料を加熱する間、各ピースを整列した状態に保つことを特徴とする。
本発明によれば、成形方法について上述したのと同様に、線膨張係数がFRPやインバーとは異なる安価な材料、例えばアルミニウムを第1成形治具に用いながら、第1成形治具の各ピースが整列されるために、成形された繊維強化プラスチック部材の形状精度を確保できる。
【0015】
本発明
は、縦方向の寸法が縦方向に直交する方向の寸法よりも長い繊維強化プラスチック部材を成形する成形装置であって、繊維強化プラスチックの材料を成形する型であり、縦方向において隣り合う複数のピースを有する第1成形治具と、繊維強化プラスチックの線膨張係数と近似する線膨張係数の材料から形成されるとともに、第1成形治具の各ピースを縦方向に沿って整列させる第2成形治具と、を備え、繊維強化プラスチックの材料を加熱する前、第1成形治具の各ピースは、互いの間に隙間があいた状態に配置され、繊維強化プラスチックの材料を加熱する間、第2成形治具は、各ピースを整列した状態に保ち、縦方向の両端に配置されるピースは、第2成形治具に対して、縦方向において拘束されること
を特徴とする。
そうすると、成形方法について上述したのと同様にピース間の隙間が詰まり、第1成形治具内部の成形空間の全長が繊維強化プラスチック部材に規定の寸法となるので、繊維強化プラスチック部材の長さの精度を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形治具を安価に製作可能でありながら、成形品に求められる形状精度を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。
本実施形態では、第1成形治具であるマンドレル、および第2成形治具であるアングル材を備える修理装置を用いて、繊維強化プラスチック部材であるストリンガを成形する。
図1に示すように、本実施形態のストリンガ1は断面T字状の部材であり、ストリンガ1が延出する縦方向Dの寸法は、縦方向Dに直交する断面方向の寸法よりも長い。
ストリンガ1は、スキン4(
図2)に接着されるフランジ11と、フランジ11の幅方向中央から立ち上がるウェブ12とを備えている。
ストリンガ1は、スキン4の裏面に複数本が互いに平行に設けられることで、スキン4を補強する。ストリンガ1には、高い真直度が要求される。
【0019】
ストリンガ1を形成する繊維強化プラスチック(FRP)は、
図2に模式的に示すように、繊維基材F、および樹脂Rによって構成される。
繊維基材Fは、シート状に形成され、ストリンガ1の板厚に応じて必要な枚数だけ積層される。繊維基材Fには、炭素繊維、ガラス繊維等の任意の繊維を用いることができる。
繊維基材Fに含浸される樹脂Rは、加熱されることで硬化される熱硬化性樹脂とされている。例えば、エポキシ、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、フェノール、ビスマレイミド等の熱硬化性樹脂を樹脂Rに用いることができる。その他、加熱を経て固化する、ナイロン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリカボネート等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
本実施形態では、繊維強化プラスチックを成形するために、真空補助樹脂注入成形法(VaRTM;Vacuum assisted Resin Transfer Molding)を実施する。すなわち、真空引きによって所定の真空度にまで減圧することで、樹脂の注入を補助するとともに、減圧空間の圧力と大気圧との差圧によって繊維基材Fおよび樹脂Rを圧縮する。
【0020】
次に、ストリンガ1の成形に用いる成形装置10を構成するマンドレル2およびアングル材3について説明する。
ストリンガ1を成形する型であるマンドレル2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されるとともに、ストリンガ1が延出する縦方向Dにおいて隣り合う複数のピース21〜24を有している。ピースの個数は任意である。
まず、マンドレル2の基本構成について説明する。
マンドレル2は、ストリンガ1を成形するための繊維強化プラスチックの材料(素材)をスキン4に押さえる。
マンドレル2は、
図2に示すように、ストリンガ1のフランジ11の幅方向両端と、ウェブ12の先端とを頂点とする三角形に対応した断面略三角形状に形成されており、底面201と、2つの斜面202,203(第1斜面)とを有している。底面201および斜面202,203は、縦方向Dに連続している。底面201は、スキン4の裏面に配置される。
【0021】
また、マンドレル2は、ウェブ12の両側で、ブロック2A(第1ブロック)とブロック2B(第2ブロック)の二体に分かれている、斜面202,203は、ブロック2A,2Bを合わせると略L字形状をなす。
ブロック2Aおよびブロック2Bの間に挟まれる成形空間Sに、繊維強化プラスチックの材料が配置される。本実施形態では、ブロック2Aおよびブロック2Bの間に配置された繊維基材Fに対して、外部から液状の樹脂Rを注入する。このため、ブロック2Aおよびブロック2Bの合わせ面には、成形空間Sに通じる樹脂の注入路20が形成されている。
【0022】
成形時、ピース21〜24は、
図1に示すように互いの間に隙間G1〜G3をあけて配置される。成形時の加熱によってピース21〜24が縦方向Dに伸びることで生じるマンドレル2と繊維基材Fおよびアングル材3との寸法差は、これらの隙間G1〜G3によって吸収される。その寸法差の分、ピース21〜24の各々の長さを合計した寸法は、繊維基材Fの長さよりも小さく設定されている。
【0023】
ピース21〜24のうち、両端に配置されるピース21,24の各々には、成形空間Sを塞ぐピースエンド204が設けられている。上述の注入路20は、縦方向Dに沿って各ピースエンド204を貫通し、樹脂の供給源に接続されている。
また、ピース21,24の各々には、両ピース21,24を縦方向Dにおいて拘束するための長穴205が形成されている。
長穴205は、ピース21の斜面202,203の各々と、ピース24の斜面202,203の各々に形成されている。長穴205は、斜面202,203の各々において、ウェブ12の先端に対応する頂点近傍から、縦方向Dに直交する方向に沿って延びている。
長穴205は、縦方向Dに直交する横断面が半円状に形成されている。また、長穴205の両端は、曲面状に面取りされた形状とされている。
【0024】
アングル材3は、ストリンガ1の縦方向Dに沿って延びる断面L字状の部材であり、マンドレル2に配置される。
アングル材3は、鉄およびニッケルの合金であるインバー、あるいはFRPにより、一端から他端まで一体に形成されている。インバーは、ストリンガ1の材料であるFRPの線膨張係数と常温付近を含む広い温度域で線膨張係数が近似しており、樹脂Rを加熱するときの加熱温度は、インバーの線膨張係数が低い温度域にある。その他、FRPと線膨張係数が近似する材料からアングル材3を形成することができる。
ここで、ストリンガ1の材料であるFRPの線膨張係数に対して、約±3×10
−6の範囲までが近似するといえる。FRPの線膨張係数は、繊維の種類や積層構成に応じて、およそ−1×10
−6から4.4×10
−6程度までの範囲に亘り分布している。本実施形態のFRPの線膨張係数は、例えば、1.6×10
−6である。
アングル材3は、マンドレル2および繊維基材Fを押さえる観点からは、比重が大きい金属により形成することが好ましい。
【0025】
アングル材3は、その材料の線膨張係数に基づいてFRPと同様に熱膨張し難い。アングル材3は、マンドレル2の寸法および形状の基準として用いるので、削り出しなどによって高精度に形成されることが好ましい。アングル材3は、ストリンガ1の縦方向Dに沿って、ストリンガ1に要求されるのと同等の高い真直度を有している。
アングル材3の内角は、マンドレル2の頂点の角度と同等であり、アングル材3の角部3Cは、マンドレル2の頂点の角部2Cにぴったりと係合する。このとき、アングル材3の内側の斜面302,303(第2斜面)は、各々、マンドレル2の各ピース21〜24の斜面202,203に全体的に接触する。アングル材3は、各ピース21〜24を幅方向両側から押さえることで、各ピース21〜24のブロック2A,2Bを閉じるとともに、各ピース21〜24を縦方向Dに沿って整列させる役割を担う。
【0026】
アングル材3の縦方向Dの両端には、長穴205に挿入される突起305が形成されている。突起305が長穴205に挿入されることで、アングル材3は、ピース21,24を縦方向Dにおいて拘束し、マンドレル2の全長を決める役割をも担う。
なお、本実施形態とは逆に、ピース21,24に突起が形成され、アングル材3に長穴が形成されていてもよい。
突起305は、アングル材3の一端部と他端部において、斜面302,303の各々に形成されている。
突起305は、斜面302,303から半球状に突出している。
ピース21,24が熱膨張するとき、突起305および長穴205は、長穴205に沿って相対変位が許容される。
突起305および長穴205のいずれも、その外周が全方位的にラウンドした形状とされている。そのため、マンドレル2にアングル材3を配置するときに、アングル材3の突起305がピース21,24にこじることなく長穴205にスムーズに挿入される。
【0027】
次に、
図3も参照し、ストリンガ1を成形する方法について説明する。
以下では、複数のストリンガ1をスキン4に一度に成形する。
先ず、金型40(
図2)に配置されたスキン4の裏面の決められた位置に、各ストリンガ1の材料である繊維基材Fを配置する(繊維基材配置ステップS1)。このとき、断面T字状に予め成形した所謂プリフォームの繊維基材Fを配置することができる。また、繊維基材Fとスキン4との間には、フィルム状に形成した熱硬化性接着剤を介在させる。
次に、繊維基材Fをマンドレル2のブロック2A,2Bで挟み込み、かつスキン4に押さえる。
このとき、マンドレル2の各ピース21〜24を、
図4(a)に示すように、互いの間に隙間G1〜G3をあけて配置する(マンドレル配置ステップS2)。ここで、隙間G1〜G3の各々の寸法に対応する厚みに製作されたシムをピース21〜24間に挟むことにより、隙間G1〜G3を正確に設定することができる。
【0028】
続いて、マンドレル2に、アングル材3を配置する(アングル材配置ステップS3)。このとき、マンドレル2のピース21の長穴205にアングル材3の一端部の突起305を挿入するとともに、ピース24の長穴205にアングル材3の他端部の突起305を挿入する。そうすると、アングル材3の斜面302,303がマンドレル2の斜面202,203に接触する。
突起305が長穴205に挿入されると、ピース21,24のいずれもアングル材3により、縦方向Dにおいて拘束される。
それに加えて、各ピース21〜24の斜面202,203がアングル材3の斜面302,303によって幅方向両側から押さえられる。このため、マンドレル配置ステップS2の段階で、各ピース21〜24の向きが縦方向Dに対してずれていたとしても、各ピース21〜24がストリンガ1の縦方向Dに沿って整列される。
【0029】
さらに、マンドレル2およびアングル材3に図示しないバッグフィルムを被せて、スキン4,繊維基材F、マンドレル2,およびアングル材3をバッグフィルムと金型40(
図3)との間に封入する。これにより、バッグフィルムと金型40との間に密閉空間が形成される。この密閉空間を真空引きすることによって減圧させる(真空引き・樹脂注入ステップS4)。
密閉空間内が減圧されると、マンドレル2のブロック2A,2B間の成形空間Sも減圧される。それに伴って、図示しない樹脂の供給源から、液状の樹脂がマンドレル2の注入路20を通じて成形空間Sに注入される。注入された樹脂Rは繊維基材Fに含浸される。
繊維基材Fおよび樹脂Rは、マンドレル2およびアングル材3の自重と、バッグフィルムで隔てられた密閉空間と大気との差圧とにより、スキン4に向けて押し付けられる。
【0030】
真空引きと並行して、任意の熱源により樹脂Rを加熱して硬化させることで、繊維強化プラスチックを成形してストリンガ1を得る(加熱硬化・成形ステップS5)熱源としては、オーブン、ヒーターマット、内蔵された熱線ヒーター、遠赤外線ヒーターや液体熱媒配管などを用いることができる。
熱源から発せられる熱によってマンドレル2およびアングル材3も加熱される。加熱温度は、例えば130℃である。
その熱によりマンドレル2が熱膨張するが、ストリンガ1は、規定の長さで、かつ高い真直度で形成する必要がある。そのため、マンドレル2の寸法および形状の基準としてアングル材3を用いる。
【0031】
真直度を得る観点では、アングル材3の斜面302,303でピース21〜24の斜面202,203を押さえることによってピース21〜24を整列させる。
ストリンガ1の長さを決める観点では、両端のピース21,24の長穴205にアングル材3の突起305を挿入することにより、両端のピース21,24を縦方向Dにおいて拘束する。
ここで、両端に配置されるピース21,24は、縦方向Dにおいて拘束される一方で、長穴205が延出する方向、すなわち縦方向Dに直交する方向において、アングル材3に対する相対変位が許容される。
このため、マンドレル2が熱膨張しても、アングル材3の突起305がピース21,24の長穴205の外側に乗り上げることなく、ピース21〜24の斜面202,203をアングル材3の斜面302,303が押さえ続ける。したがって、ピース21〜24は、アングル材3により幅方向両側から挟まれて整列されるとともに、ブロック2A,2Bが閉じた状態に保たれる。
【0032】
以下、ストリンガ1の長さを決めることについて説明する。
ストリンガ1の長さは、隙間G1〜G3を含むマンドレル2の全長で決まるので、隙間G1〜G3の寸法が重要である。また、成形されたストリンガ1に隙間G1〜G3が転写されるのを避けるために、隙間G1〜G3を狭めたい。隙間G1〜G3は、各ピース21〜24の伸長時には完全に詰めて無くしたい。
ここで、例えばマンドレル2の一端側のピース21のみをアングル材3によって拘束するとする。この場合、密閉空間と大気との差圧が隙間G1〜G3を狭めるのに寄与するものの、ピース21〜24とスキン4との摩擦が大であると、各ピース21〜24が縦方向Dへ伸びたときに、ピースが隣のピースによって他端側に向けて押し出されてしまい、ピースが縮んだときの隙間が加熱前よりも拡大する。押し出しに起因する変位量が累積するために、隙間の拡大は、一端側のピース21からの距離が大きいほど顕著となる。
【0033】
そこで、本実施形態では、隙間G1〜G3を確実に狭めるために、両端のピース21,24をアングル材3によって拘束する。上述のようにピース21,24の長穴205とアングル材3の突起305との相対変位が許容されるので、ピース21,24が熱膨張しても、突起305および長穴205によりピース21,24が縦方向Dにおいて拘束された状態に保たれる。
このように両端のピース21,24が拘束されていると、ピース21,24の間に配置されたピース22,23の縦方向Dへの伸びが、ピース21,24の間の領域に限定される。そうすると、各ピース21〜24の縦方向Dへの伸びを、縦方向Dの中心に向けて生じさせることができるので、ピース21〜24同士を近づけることができる。
その結果、
図4(a)に示すように、隙間G1〜G3が詰まり、マンドレル2内部の成形空間Sの一端から他端までの長さがストリンガ1に規定の寸法となる。
【0034】
隙間G1〜G3の寸法は、当該隙間を形成するピースの縦方向Dにおける寸法に応じた比率に基づいて定めることが好ましい。
例えば、
図4(a)に示すように、一端に配置されたピース21が他のピースと比べて相対的に長い場合には、そのピース21がピース22との間に形成する隙間G1を他の隙間G2,G3よりも大きく設定する。
図4(a)の例では、ピース21〜24の各々の長さに基づいて、隙間G1〜G3の寸法がこの順序で小さくなっている。ここで、隙間G1〜G3は、隣り合うピースの間に形成されるものであるから、それら双方のピースの各々の長さに基づいて、各隙間の寸法を設定する。
上記のように、ピース21〜24の各々の長さに基づいて隙間G1〜G3の寸法を設定することにより、各ピース21〜24の長さの違いに起因する伸び量の違いに対応できるので、隙間G1〜G3を効率よく、確実に詰めることができる。
隙間G1〜G3の各々の寸法は、マンドレル2とアングル材3との線膨張係数の差および加熱温度に応じて、計算や試験に基づいて設定することができる。
【0035】
樹脂Rが所定の硬さまで硬化すると、ストリンガ1は、規定の寸法で真直に成形されるとともに、スキン4に一体に接着される。
以上により、ストリンガ1の成形を完了する。
その後、必要に応じて二次的な硬化処理、仕上げ処理を行う。
【0036】
以上で説明した本実施形態によれば、ストリンガ1を形成するFRPの線膨張係数に近似する線膨張係数の材料から形成されるアングル材3と、それよりも高い線膨張係数のアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されるマンドレル2を成形治具として併用する。
そして、マンドレル2を複数のピース21〜24に分割し、隙間G1〜G3をあけて配置するとともに、アングル材3によってピース21〜24を整列させる。
こうすると、ピース21〜24に分割されていても真直度を確保しつつ、線膨張係数がFRPやインバーとは異なる安価な材料、例えばアルミニウムをマンドレル2に用いることができる。
ここで、マンドレル2はアングル材3よりも体積が大きく、同じ材料を用いたときの重量がアングル材3よりも大である。そのため、アングル材3にインバーを用いるとしても、マンドレル2に安価な材料を用いることにより、マンドレル2およびアングル材3を合わせた成形治具全体としてのコストダウンが可能である。
また、マンドレル2は型であるために、アングル材3よりも複雑な形状となるので、FRPから形成するときの製作コストがアングル材3よりも高い。そのため、アングル材3をFRPから製作するとしても、マンドレル2を加工費が安価な金属から製作することにより、成形治具全体としてのコストダウンが可能である。
マンドレル2は、スキン4に多数設けられるストリンガ1の各々に対応するものが用意されるので、マンドレル2の製作コストの低減によるコストダウンの効果は大きい。
【0037】
以上に加えて、本実施形態によれば、マンドレル2が縦方向Dにおいて複数のピース21〜24に分割されることにより、可搬性が高まるので、成形作業、脱型作業の際のハンドリングが容易となる。
マンドレル2は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の他、例えば、チタン、ニッケル、黄銅、ステンレス鋼などから形成することもできるが、アルミニウムおよびアルミニウム合金には、その軽量性によるハンドリング性や、加工費が低廉であることなど、多くの利点がある。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、両端のピース21,24の長穴205およびアングル材3の突起305により、両端のピース21,24を縦方向Dにおいて拘束するので、隙間G1〜G3が過大となってマンドレル2の全長が大きくなることがなく、ストリンガ1の長さの精度を確保できる。
ここで、ピース21〜24が熱膨張したときの長穴205および突起305の相対変位が許容されるので、例えば、円形の開口を有する穴と、その穴に挿入される横断面が円形の突起とを形成する場合にマンドレル2にアングル材3が乗り上げてしまうのとは違って、各ピース21〜24の斜面202,203にアングル材3の斜面302,303が接触した状態を維持できる。このため、アングル材3によってピース21〜24が整列されるとともに両端のピース21,24が拘束された状態を保ち、ストリンガ1に求められる真直度および寸法精度を満足できる。
【0039】
また、マンドレル2に斜面202,203を形成し、アングル材3に斜面302,303を形成することにより、マンドレル2をスキン4に向けて押し付けるとともに、マンドレル2のブロック2A,2Bを閉じる向きに加圧しながら、ピース21〜24を整列された状態に保つことができる。
つまり、マンドレル2にアングル材3を配置すると、アングル材3の自重によってブロック2A,2Bがスキン4に向けて押し付けられるだけでなく、アングル材3の自重および真空引き時の差圧により、斜面302,303および斜面202,203を介して、ブロック2A,2Bを両側から中央に寄せる向きの分力が生じる。この分力によって、ブロック2A,2Bを確実に閉じることができるとともに、ピース21〜24を両側から押さえて縦方向Dに整列された状態に保つことができる。
ここで、マンドレル2の自重により生じる下向きの力と、それに直交する分力との合力が、ストリンガ1のフランジ11とウェブ12とがなす角隅部L(
図2)に向けて作用する。これによって角隅部Lを十分に圧縮することができるので、ストリンガ1を規定のT字形状に成形することができる。
【0040】
ところで、スキン4の板厚が変化するために、段差が形成される箇所では、ストリンガ1にも段差が形成される。そうすると、スキン4およびストリンガ1の段差に対応するマンドレル2も、
図4(b)に示すように、段差に倣った形状に形成される。ストリンガ1の材料である繊維基材Fも、段差に倣った形状に予め成形されることが好ましい。
スキン4に形成された段差27,28に配置されるピース22,24は、他の箇所に配置されるピース21,23,25よりも、縦方向Dにおける寸法を短く設定する。
ピース22に形成される段差は、スキン4の段差27に係合される。ピース24は、スキン4の段差28に係合される。つまり、ピース22,24は縦方向Dにおける位置が拘束される。
【0041】
そのため、ピース22,24の長さを短く抑えることで、マンドレル2の全長において他のピース21,23,25が受け持つ長さの比率を大きくしている。そうすれば、他のピース21,23,25の縦方向Dへの伸びにより、隙間G1〜G4を十分に詰めてマンドレル2の全長をストリンガ1の長さに対応させることができる。
さらに、ピース22,24に関しては、それらが関係する隙間の寸法を小さく設定することが好ましい。例えば、ピース21とピース22の間の隙間G1は、拘束されたピース22の伸びが小さいために、ピース21の長さに応じた寸法に設定することができる。
なお、アンテナなどを組み付けるための孔がスキン4に形成される場合、その孔を避ける切欠がストリンガ1に形成され、ストリンガ1の切欠にマンドレル2が係合されることとなる。そのような場合も、上記と同様に、ストリンガ1の穴に対応するピースを短く設定することが有効となる。
【0042】
上記実施形態では、ストリンガ1をスキン4に一体に成形するが、スキン4とは別に、ストリンガ1を成形することもできる。そのときは、金型に、繊維基材Fおよびマンドレル2を配置すればよい。
上記実施形態では、横断面がT字状のストリンガ1を成形するが、横断面がI字状、C字状、L字状、Z字状、J字状などの任意の形状のストリンガを成形するために本発明を適用することができる。ストリンガの形状に応じて本発明の第1成形治具および第2成形治具の構成を定めることができる。第2成形治具は、例えば、ばね性を持ち、第1成形治具を両側から押さえるC字状の部材とすることができる。
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明は、真空引きを行うことなく、例えば、マンドレル2およびアングル材3の上に重しを載せてストリンガを成形することも許容する。
また、本発明は、液状の樹脂Rおよび繊維基材Fの代わりに、プリプレグを用いることも許容する。