特許第6239286号(P6239286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239286蒸着装置およびこれを用いた有機発光表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239286
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】蒸着装置およびこれを用いた有機発光表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20171120BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C23C14/24 A
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-143344(P2013-143344)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-77193(P2014-77193A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0112027
(32)【優先日】2012年10月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】李 相信
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0101987(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0081552(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着物質を収容する蒸着源と、
前記蒸着源の一側に第1方向に配列され、対向する基板に前記蒸着物質を噴射する複数の噴射ノズルとを含み、
前記蒸着源は、前記第1方向を基準として中心領域および前記中心領域の両端の外郭領域に区分され、
前記各外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、
その終端をなす面が前記基板の表面と前記第1方向に第1傾斜角をなしつつ、前記蒸着源の外側方向に向かうように形成され
前記基板における前記第1方向への中心と、前記蒸着源における第1方向への中心とが一致するように、前記基板と前記蒸着源が整列され、
前記蒸着源の前記中心領域は、前記第1方向に下記の条件、
【数1】
(L:前記第1方向への前記中心領域の長さ、L:前記第1方向への前記基板での蒸着領域の長さ、T:前記基板と前記噴射ノズルの終端との間の距離、θ:前記第1傾斜角)
を満足する長さを有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項2】
前記第1傾斜角は、43〜53度の範囲に属するように形成されることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記第1傾斜角は、25〜35度の範囲に属するように形成されることを特徴とする請求項記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記中心領域に配列される第2噴射ノズルは、
その終端をなす面が前記基板の表面に対して前記第1方向に第2傾斜角を有し、前記蒸着源の外側方向に向かうものの、前記第2傾斜角は前記第1傾斜角より小さいことを特徴とする請求項記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記各外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、前記蒸着源の中心を基準として前記第1方向に対称をなして配列されることを特徴とする請求項1記載の蒸着装置。
【請求項6】
蒸着物質を収容する蒸着源と、前記蒸着源の一側に第1方向に配列され、前記蒸着物質を基板に噴射する複数の噴射ノズルとを含む蒸着装置を用意するステップと、
前記噴射ノズルに対向するように基板を配置するステップと、
前記第1方向と直交する第2方向に前記蒸着源を移動させながら、前記噴射ノズルを介して前記蒸着物質を噴射するステップとを含み、
前記蒸着源は、前記第1方向を基準として中心領域および前記中心領域の両端の外郭領域に区分され、前記各外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、前記基板の表面に対して前記第1方向に第1傾斜角を有し、前記蒸着源の外側方向に前記蒸着物質を噴射し、
前記基板における前記第1方向への中心と、前記中心領域における前記第1方向への中心とが一致するように、前記基板と前記蒸着源が整列され、
前記中心領域は、前記第1方向に下記の条件、
【数2】
(L:前記第1方向への前記中心領域の長さ、L:前記第1方向への前記基板での蒸着領域の長さ、T:前記基板と前記ノズルの終端との間の距離、θ:前記第1傾斜角)
を満足する長さを有することを特徴とする有機発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1噴射ノズルは、
その終端をなす面が前記基板の表面に対して前記第1方向に前記第1傾斜角を有し、外側に傾斜するように形成されることを特徴とする請求項記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1噴射ノズルの終端面の傾斜角は、43〜53度の範囲に属するように形成されることを特徴とする請求項記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1噴射ノズルの終端面の傾斜角は、25〜35度の範囲に属するように形成されることを特徴とする請求項記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、前記蒸着源の中心を基準として前記第1方向に対称をなして配列されることを特徴とする請求項記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記中心領域に配列される第2噴射ノズルは、
その終端をなす面が前記基板の表面に対して前記第1方向に第2傾斜角を有し、前記蒸着源の外側方向に傾斜するものの、前記第2傾斜角は前記第1傾斜角より小さいことを特徴とする請求項記載の有機発光表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置およびこれを用いた有機発光表示装置の製造方法に関するものであって、より具体的には、蒸着物質が噴射される角度を制御してシャドウ現象が防止できる蒸着装置および有機発光表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置のうち、有機発光ディスプレイ装置は、視野角が広く、コントラストに優れるだけでなく、応答速度が速いという利点があり、次世代ディスプレイ装置として注目を集めている。
【0003】
一般的に、有機発光ディスプレイ装置は、アノードとカソードから注入される正孔と電子とが発光層で再結合して発光する原理で色を実現できるように、アノードとカソードとの間に発光層を挿入した積層型構造を有している。しかし、このような構造では高効率の発光が得難いため、それぞれの電極と発光層との間に、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層および正孔注入層のような中間層を選択的に追加挿入して使用している。
【0004】
有機発光表示装置のような平板表示装置において、有機物や電極として使用される金属などは、真空雰囲気で当該物質を蒸着し、平板上に薄膜を形成する真空蒸着法を用いる。真空蒸着法は、真空チャンバの内部に有機薄膜を成膜させる基板を位置させ、形成される薄膜などのパターンと同一のパターンを有する蒸着用マスクを密着させた後、蒸着ソースユニットを用いて有機物のような蒸着物質を蒸発または昇華させて基板に蒸着させる方法で行われる。
【0005】
しかし、蒸着物質が噴射されて基板に到達する角度によっては、蒸着用マスクと基板との間に有機物質が浸透するシャドウ現象が発生する問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、基板に入射する蒸着物質の入射角度を増加させることができる蒸着装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の態様は、蒸着均一度および蒸着効率を向上させることができる有機発光表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる蒸着装置は、蒸着物質を収容する蒸着源と、蒸着源の一側に第1方向に配列され、対向する基板に蒸着物質を噴射する複数の噴射ノズルとを含み、蒸着源は、第1方向を基準として中心領域および中心領域の両端の外郭領域に区分され、各外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、その終端をなす面が基板の表面と第1方向に第1傾斜角をなしつつ、蒸着源の外側方向に向かうものである。
【0009】
本発明にかかる蒸着装置において、基板における第1方向への中心と、蒸着源における第1方向への中心とが一致するように、前記基板と前記蒸着源が整列され、蒸着源の中心領域は、第1方向に下記の条件、
【数1】
を満足することが好ましい。(L:第1方向への中心領域の長さ、L:第1方向への基板での蒸着領域の長さ、T:基板と噴射ノズルの終端との間の距離、θ:第1傾斜角)
【0010】
本発明にかかる蒸着装置において、第1傾斜角は、43〜53度の範囲に属するように形成されることが好ましい。
【0011】
本発明にかかる蒸着装置において、第1傾斜角は、25〜35度の範囲に属するように形成されることがより好ましい。
【0012】
本発明にかかる蒸着装置において、中心領域に配列される第2噴射ノズルは、その終端をなす面が基板の表面に対して第1方向に第2傾斜角を有し、蒸着源の外側方向に向かうものの、第2傾斜角は第1傾斜角より小さいことが好ましい。
【0013】
本発明にかかる蒸着装置において、第1噴射ノズルは、蒸着源の中心を基準として第1方向に対称をなすことが好ましい。
【0014】
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法は、蒸着物質を収容する蒸着源と、蒸着源の一側に第1方向に配列され、蒸着物質を基板に噴射する複数の噴射ノズルとを含む蒸着装置を用意するステップと、噴射ノズルに対向するように基板を配置するステップと、第1方向と直交する第2方向に蒸着源を移動させながら、噴射ノズルを介して蒸着物質を噴射するステップとを含み、蒸着源は、第1方向を基準として中心領域および中心領域の両端の外郭領域に区分され、各外郭領域に配列される第1噴射ノズルは、基板の表面に対して第1方向に第1傾斜角を有し、蒸着源の外側方向に蒸着物質を噴射する。
【0015】
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、第1噴射ノズルは、その終端をなす面が基板の表面に対して第1方向に第1傾斜角を有し、外側に傾斜することが好ましい。
【0016】
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、基板における第1方向への中心と、中心領域における第1方向への中心とが一致するように、前記基板と前記蒸着源が整列され、中心領域は、第1方向に下記の条件、
【数2】
を満足する長さを有することが好ましい。(L:第1方向への中心領域の長さ、L:第1方向への基板での蒸着領域の長さ、T:基板とノズルの終端との間の距離、θ:第1傾斜角)
【0017】
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、第1噴射ノズルの終端面の傾斜角は、43〜53度の範囲に属するように形成されることが好ましい。
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、第1噴射ノズルの終端面の傾斜角は、25〜35度の範囲に属するように形成されることが好ましい。
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、第1噴射ノズルは、蒸着源の中心を基準として第1方向に対称をなすことが好ましい。
【0018】
本発明にかかる有機発光表示装置の製造方法において、中心領域に配列される第2噴射ノズルは、その終端をなす面が基板の表面に対して第1方向に第2傾斜角を有し、蒸着源の外側方向に傾斜するものの、第2傾斜角は第1傾斜角より小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、基板に入射する蒸着物質の入射角度を増加させ、蒸着用マスクと基板との間に蒸着物質が浸透するシャドウ現象を抑制し、蒸着マージンを低減し、蒸着均一度および蒸着効率を向上させることができる。これにより、有機発光表示装置の高解像度の実現を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、噴射ノズルから噴射される蒸着物質の分布を示す概念図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、噴射ノズルから噴射される蒸着物質の分布を示す概念図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、基板に入射する蒸着物質の入射角度と噴射ノズルの位置との相関関係を示す概念図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、中心領域と外郭領域を決定する方法を示す概念図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる蒸着装置の噴射ノズルの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる蒸着装置およびこれを用いた有機発光表示装置の製造方法に関して具体的に説明する。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施形態は本発明の開示が完全になるようにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図面において、同一の符号は同一の要素を指し示す。
【0022】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。さらに、明細書全体において、「〜上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置の斜視図である。
【0024】
各図面には、説明の便宜のためにチャンバを示していないが、図1のすべての構成は、適切な真空度が維持される真空チャンバ内に配置される。真空チャンバは、処理される基板の形状に応じて多様な形状を取ることができる。例えば、処理される基板が円形の場合には、真空チャンバが全体的に円柱形状を取り、処理される基板が長方形の場合には、真空チャンバが全体的に直方体形状を取る。そして、この真空チャンバには、真空チャンバ内部の気体を排出させて真空チャンバ内部の圧力を低下させる真空ポンプ(図示せず)と、真空チャンバの内部に一定の気体を注入して真空チャンバ内部の圧力を上昇させるベンティング手段(図示せず)などの構成がさらに具備され得る。
【0025】
蒸着源100は、蒸着物質を放出して基板210に蒸着させる手段であって、内部に有機物のような蒸着物質を収納可能な空間(図示せず)が備えられている。蒸着物質収納空間は、熱放射性に優れたアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)のようなセラミック材質で形成できるが、これに限定されるものではなく、熱放射性および耐熱性に優れた多様な材質からなり得る。蒸着物質収納空間の外面には、外面を密着して囲むように構成されたヒータ(図示せず)が具備できるが、収納された蒸着物質を加熱して気化させる機能を果たす。蒸着源100は、対向する基板210の第1方向(y軸方向)への長さに対応して、第1方向に延長形成される。蒸着源100は、第1方向を基準として中心領域102および中心領域102の両端の外郭領域104に区分可能である。中心領域102に配置される噴射ノズルと、外郭領域104に配置される噴射ノズルとの噴射角度を異なって設定できるが、これについて後述する。
【0026】
基板210に対向する蒸着源100の一側には、蒸着物質を噴射する噴射ノズル110が形成され、噴射ノズル110は円形の管状に形成され得、蒸着源100の内部空間に連結され、内部空間で気化または昇華した蒸着物質を基板210に噴射する。
【0027】
噴射ノズル110は、複数個備えられ、第1方向に延長形成された蒸着源100に沿って一列に配列される。蒸着物質を形成するために、基板210は長方形の板状となり得るが、複数の噴射ノズル110が基板210の一辺に平行となるように第1方向に線形配列される。図1に示されるように、噴射ノズル110が1列に並んで配置できるが、必ずしも1列に限定されるものではなく、噴射ノズル110が2列以上に配置されていてもよい。蒸着源100の各外郭領域104a、104bに配列される第1噴射ノズル114a、114bは、その終端をなす面が基板210の表面と第1方向に第1傾斜角をなしつつ、蒸着源100の外側方向に向かうように形成され、蒸着源100の中心領域102に配列される第2噴射ノズル112は、その終端面が基板210の表面と平行に形成される。
【0028】
基板210は、基板固定部200によって蒸着源100の噴射ノズル110に対向するように固定されるが、基板固定部200は、基板210に薄膜を形成する間に基板210を安定的に固定させ、処理完了後は基板210を外部に排出しなければならないため、基板210を容易に着脱可能な構造を有する。基板210は、蒸着用マスク220と共に基板固定部200に固定されるが、蒸着用マスク220は、基板210上に有機膜のパターンを形成するためのものであって、有機物の蒸着を遮断する遮蔽部の間に開口部が形成され、開口部を介して基板210上に有機物が蒸着可能である。基板固定部200の構成は、通常の蒸着装置で用いられる構成と同一であるので、これに関する詳細な説明は省略する。基板210の第1方向への中心は、蒸着源100の第1方向への中心と一致するように整列されて配置される。
【0029】
蒸着源100と基板210は、互いに相対的に移動しながら蒸着が実施できるが、基板210が固定された場合には、蒸着源100が基板210と所定間隔をおいて第1方向と交差する第2方向(x軸方向)に移動できる。蒸着源100が垂直方向に蒸着物質を放出するように配置される場合には、基板210は蒸着源100の上部に水平に配置され得、蒸着源100が水平方向に蒸着物質を放出するように配置される場合には、基板210は垂直に配置され得る。本発明の実施形態では、蒸着源100が真空チャンバの底面に配置され、その上側に基板210が水平に配置される場合として示したが、これに限定するものではない。
【0030】
噴射ノズル110の噴射方向に関して説明する前に、まず、噴射ノズルから噴射される蒸着物質の分布を説明する。
【0031】
図2および図3は、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、噴射ノズルから噴射される蒸着物質の分布を示す概念図である。便宜上、基板210に密着した蒸着用マスク220の図示は省略する。
【0032】
噴射ノズル110から噴射された蒸着物質DMは、真空中に噴射されるものであるため、図2に示されるように、方向性を失い、噴射ノズル110の終端面を基準として0〜90°の角度、つまり、前方のあらゆる方向に拡散する。したがって、噴射ノズル110の形成角度より噴射ノズル110の終端面が向かう角度を考慮することが好ましい。蒸着物質DMが噴射される噴射領域を、蒸着物質DMの拡散する角度および分布率に応じてA領域およびB領域に分類すると、下記の表1のとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】
蒸着物質は、噴射角度が0°から増加するほど蒸着量が増加し、噴射角度が90°の時、蒸着量が最も多い。蒸着物質は、噴射角度が略18°から急激に増加する。A領域は、噴射ノズル110の終端面を基準として0°以上から18°未満に相当する噴射角度を有する領域であり、B領域は、18°以上から90°以下に相当する噴射角度を有する領域である。噴射ノズル110から噴射される蒸着物質DMのうち、A領域に分布する蒸着物質DMは0.054%に相当するが、A領域に相当する噴射角度を有する蒸着物質DMが基板210に与える影響は相対的に小さい。反面、B領域に相当する噴射角度を有する蒸着物質DMは大部分基板210に蒸着されるため、18〜90°に相当する噴射角度を有するB領域を有効噴射領域と定める。このような有効噴射領域は、これに限定されるものではなく、蒸着物質の種類に応じて異なり得る。A領域に相当する角度λを考慮して、噴射ノズル110の終端面が基板210となす角度を設定するが、これについて後述する。
図4は、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、基板に入射する蒸着物質の入射角度と噴射ノズルの位置との相関関係を示す概念図である。
【0035】
蒸着物質が基板210に蒸着される時、第1方向を基準として基板210と所定角度θをなして入射するが、蒸着物質の最小入射角度は、基板210と蒸着源100との距離、基板210の大きさ、蒸着量などを考慮して設定される。設定される入射角の最小入射角度は、43〜53°の範囲に属するように形成されることが好ましい。蒸着物質が入射する最小角度が43°より小さい場合には、蒸着用マスク220と基板210との間に蒸着物質が浸透するシャドウ現象が発生することがあり、最小角度が53°より大きい場合には、入射する蒸着物質の量が少なく、蒸着効率が低下することがある。以下、特に言及がなければ、入射角度およびこれに関連する角度は、第1方向を基準とする。
【0036】
基板210において、蒸着物質が設定された厚さに蒸着される領域を蒸着領域とすれば、蒸着領域は、図4に示されるように、第1方向(y軸方向)への最外郭地点にそれぞれN1、N2を有する。蒸着物質が入射する最小入射角度をθとすれば、N1から最小入射角度に相当するθの傾斜角を有する任意の線を引いた時、任意の線は蒸着源100の一地点のP2で出会う。また、N2からも同様に角度θを有する任意の線を引いた時、任意の線は蒸着源100の一地点のP1で出会う。P1とP2との間の領域を中心領域102とし、P1の外側に設定される領域およびP2の外側に設定される領域を外郭領域104(104a、104b)とする。
【0037】
中心領域に形成される噴射ノズル112は、N1とN2との間の蒸着領域のいかなる地点に対しても、蒸着物質の入射角度が最小入射角度θより大きいか等しくなるように蒸着物質を噴射することができる。反面、P1およびP2の外側に設定される外郭領域に形成される噴射ノズル114(114a、114b)は、図4に示されるように、予め設定された最小入射角度θより小さいθ’、θ’’の入射角度を有するようになる。
【0038】
そのため、外郭領域104a、104bに配置された噴射ノズル114a、114bから噴射される蒸着物質に対する入射角度を調整する必要がある。先に説明したように、噴射ノズルはその終端面の前方のあらゆる方向に噴射されるため、図3に示されるように、噴射ノズルの終端面が基板210となす傾斜角φは、蒸着物質が基板210に入射する入射角度θとなる。したがって、外郭領域104a、104bに配置される噴射ノズル114a、114bは、その終端面が蒸着源100の外側方向に向かうように配置する。つまり、設定される入射角θが43〜53°の範囲に属する場合には、噴射ノズルの終端面が基板210の表面となす傾斜角φは、43〜53°の範囲に属するように形成できる。そして、先に説明したA領域に相当する角度(λ)18°を考慮すると、より好ましくは、噴射ノズルの終端面が基板210の表面となす傾斜角は、25〜35°の範囲に属するように形成できる。中心領域102に配置される噴射ノズル112も、その終端面が蒸着源100の外側方向に向かうように傾斜させて配置することができるが、この場合、中心領域102に配置される噴射ノズル112の傾斜角は、外郭領域104a、104bに配置される噴射ノズル114a、114bの傾斜角より小さくなるように配置する。
【0039】
蒸着源100の中心領域102と外郭領域104a、104bの大きさを決定する方法を説明する。図5は、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置において、中心領域と外郭領域を決定する方法を示す概念図である。
【0040】
基板210における第1方向への中心と、蒸着源100における第1方向への中心とが整列されるように、基板210と蒸着源100とを位置させる。そして、中心領域102の第1方向への長さをL、基板210に設定された蒸着領域の第1方向への長さをL、基板210と噴射ノズルの終端との間の距離をT、予め設定された入射角をθとし、さらに、図5に示されるように、線分N1P2と線分N2P1との交差点がMの時、交差点Mと噴射ノズルの終端との間の距離をt、交差点Mと基板210との距離をtとすれば、これらの間に下記のような関係で表すことができる。
数式1
【数3】
+t=Tであるので、t=T−tを数式1に代入すると、下記の数式2のように表すことができる。
数式2
【数4】
は、図3を参考にすれば、下記の数式3のように表すことができる。
数式3
【数5】
数式3を数式2に代入すると、下記の数式4のように表すことができる。
数式4
【数6】
つまり、中心領域102の第1方向への長さLは、予め設定された傾斜角度θ、基板210と噴射ノズル112、114との距離T、および基板210における蒸着領域の長さLに関する関係式で表すことができる。
【0041】
蒸着源100において、中心領域102の第1方向への長さLに相当する部分の残りの部分が外郭領域104a、104bとなる。
【0042】
図6は、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置の噴射ノズルの変形例を示す側面図である。
【0043】
外郭領域104a、104bに配置される噴射ノズル114は、図6の(a)に示されるように、噴射ノズル114の方向自体が傾斜して配置され、その終端面が基板210の表面と傾斜した傾斜角θを有することができる。また、噴射ノズル114は、図6の(b)に示されるように、基板210に垂直に配置されるが、その終端の形状が非対称的に形成され、第1方向に対する噴射量を異にすることができる。第1方向に終端と接する仮想の線を引いた時、その線の角度が基板210の表面と傾斜した傾斜角θを有することができる。さらに、図6の(c)に示されるように、噴射ノズル114は、基板210に垂直に配置されるが、その終端面が基板210の表面と傾斜した傾斜角θを有することができる。噴射ノズル114は、これらの例示に限定されるものではなく、噴射ノズル114の形状が異なっていても、噴射ノズル114の終端面が、角度が第1方向に傾斜した形状であれば、多様に変更されて実現できるはずである。
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態にかかる蒸着装置の作動および有機発光表示装置の製造方法を説明する。
【0045】
まず、真空チャンバ(図示せず)内に基板210を引き込ませ、蒸着物質を放出する蒸着源100に対向するように基板210を配置させる。この時、予め設定された入射角度θで蒸着物質が入射するように蒸着源100と基板210との距離を調整する。また、前記数式4を満足するように基板210を配置することができる。
【0046】
第1方向と直交する第2方向(x軸方向)に蒸着源100を移動させながら、噴射ノズル110を介して蒸着物質を噴射する。外郭領域に配列される第1噴射ノズル114は、第1方向に傾斜角θを有して蒸着物質を噴射するため、図5に示されるように、蒸着物質は、基板210に傾斜角より大きいか等しい大きさの入射角θで基板210に付着する。
【0047】
しこのような蒸着物質は、有機発光表示装置において、有機発光層、つまり、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を示す副画素を形成する有機物質であることが好ましい。
【0048】
本実施形態および本明細書に添付された図面は本発明に含まれる技術的思想の一部を明確に示しているに過ぎず、本発明の明細書および図面に含まれている技術的思想の範囲内で当業者が容易に類推できる多様な変形例と具体的な実施形態は、すべて本発明の権利範囲に含まれることが自明であるというべきである。
【符号の説明】
【0049】
100:蒸着源
110:噴射ノズル
200:基板固定部
210:基板
220:マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6