(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒートポンプの吐出冷媒ガスまたはその冷媒ガスと熱交換されて閉サイクル内を循環する熱媒体により水を加熱し、温水を製造する水熱交換器を備え、その出湯温度が目標温度となるように、水ポンプの回転数により水量を制御するタイプのヒートポンプ給湯システムにおいて、
前記水熱交換器を高温側水熱交換器と低温側水熱交換器とに分割し、前記高温側水熱交換器の温水出口側に出湯温度センサを設けるとともに、前記低温側水熱交換器の出口側に温水温度センサを設け、
前記高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、前記低温側水熱交換器の出口温水温度センサの検出値が前記低温側水熱交換器のスケールの析出の可能性が生じる温度として設定された設定値を超えたとき、その温水出口温度を前記設定値以下に抑制制御するとともに、出湯温度の低下情報および前記高温側水熱交換器のメンテナンス情報を出力する制御部を備えているヒートポンプ給湯システム。
前記制御部は、前記高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、出湯温度の低下情報および前記高温側水熱交換器のメンテナンス情報を表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯システム。
前記制御部は、前記水熱交換器に供給される水の水質に応じて、前記低温側水熱交換器の出口温水温度の設定値を可変する温度設定スイッチを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ給湯システム。
前記高温側水熱交換器は、スケール除去用の洗浄手段および/または熱交換器交換用の着脱手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
前記高温側水熱交換器の前記水熱交換器に対する容積割合は、0.3〜0.4とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプにより水熱交換器で水を加熱し、温水を出湯するヒートポンプ給湯システムでは、水の水質により水熱交換器の水流路側にスケールが付着し、熱交換性能が低下することがあり、これによって、システムの能力不足や消費電力の増加、あるいは保護制御による運転停止等の問題が生ずるケースがある。特に、出湯温度がリモコン等により設定された目標温度となるように、水ポンプの回転数により水量を制御するタイプのシステムにおいては、熱交換性能が低下しても、出湯温度が確保されることから、スケールの付着による性能低下が見分け難いという問題があった。
【0003】
かかる問題に対処するため、スケールの付着を検出し、水熱交換器を洗浄あるいは取り換えるようにしたものが、特許文献1,2に開示されている。特許文献1には、水回路側に流量センサを設け、スケール付着による流量の低下からスケールの付着を検出し、それを報知手段により報知するとともに、スケール除去手段によりスケールを除去できるようにしたものおよび水熱交換器を低温側水熱交換器と高温側水熱交換器とに分割し、スケールが付着し易い高温側水熱交換器にスケール除去手段や熱交換器を交換可能とするためのジョイント部を設けたもの等が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、水熱交換器の出口側および中間位置もしくは低温側水熱交換器と高温側水熱交換器とに分割した高温側水熱交換器の出口側と入口側に各々温度センサを設け、その検出値の差からスケールの付着を判定し、その差が設定値以下の場合、出湯温度を低下させながら運転を継続し、その出湯温度が設定温度以下に低下したとき、出湯温度の低下およびメンテナンスコールを表示するようにしたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示のものでは、スケールの付着により熱交換性能が低下した場合、出湯温度を下げることなく、如何にして目標温度を維持したまま運転を継続するか、あるいは低温側水熱交換器へのスケール付着を如何にして防ぐか等の構成を開示するものではない。従って、これらは、限界まで出湯温度を目標温度に維持しながら運転を継続できるものではなく、またスケールの付着を検知し、それを警報できたとしても、実際にメンテナンスを実施するまでの間、そのまま運転を続けた場合、低温側水熱交換器にスケールの付着が拡大してしまう虞がある等の課題を有するものであった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、スケール付着時も限界まで出湯温度を目標温度に維持しながら運転を継続できるとともに、スケールの付着を高温側水熱交換器に止め、低温側水熱交換器への波及を防止できるヒートポンプ給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明のヒートポンプ給湯システムは、以下の手段を採用している。
すなわち、本発明にかかるヒートポンプ給湯システムは、ヒートポンプの吐出冷媒ガスまたはその冷媒ガスと熱交換されて閉サイクル内を循環する熱媒体により水を加熱し、温水を製造する水熱交換器を備え、その出湯温度が目標温度となるように、水ポンプの回転数により水量を制御するタイプのヒートポンプ給湯システムにおいて、前記水熱交換器を高温側水熱交換器と低温側水熱交換器とに分割し、前記高温側水熱交換器の温水出口側に出湯温度センサを設けるとともに、前記低温側水熱交換器の出口側に温水温度センサを設け、前記高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、前記低温側水熱交換器の出口温水温度センサの検出値が
前記低温側水熱交換器のスケールの析出の可能性が生じる温度として設定された設定値を超えたとき、その温水出口温度を
前記設定値以下に抑制制御するとともに、出湯温度の低下情報および前記高温側水熱交換器のメンテナンス情報を出力する制御部を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、水熱交換器を高温側水熱交換器と低温側水熱交換器とに分割し、高温側水熱交換器の温水出口側に出湯温度センサを設けるとともに、低温側水熱交換器の出口側に温水温度センサを設け、高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、低温側水熱交換器の出口温水温度センサの検出値が設定値を超えたとき、その温水出口温度を設定値以下に抑制制御するとともに、出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器のメンテナンス情報を出力する制御部を備えているため、高温側水熱交換器にスケールが付着することにより熱交換性能が低下したとしても、水ポンプによる水量制御によって出湯温度を目標温度に維持しつつ運転を継続することができる一方、この間、低温側水熱交換器の出口温水温度が徐々に上昇し、その温度が設定値を超えた場合、低温側水熱交換器でもスケールの析出が懸念されることから、ヒートポンプ側の能力制御により低温側水熱交換器の出口温水温度を設定値以下に抑え、スケールの析出を抑制しながら運転を継続し、出湯温度の低下および高温側水熱交換器のメンテナンスの必要性等を情報として出力することができる。従って、スケールが析出しても直ちに出湯温度を下げることなく、可能な限り目標温度に維持しつつ、かつ低温側水熱交換器でのスケールの析出を防止しながら運転を継続することができるとともに、ユーザーに対して、スケール付着による出湯温度の低下や高温側水熱交換器のメンテナンス等の情報を的確に出力することができる。
【0010】
さらに、本発明のヒートポンプ給湯システムは、上記のヒートポンプ給湯システムにおいて、前記制御部は、前記高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、出湯温度の低下情報および前記高温側水熱交換器のメンテナンス情報を表示する表示部を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、制御部が、高温側水熱交換器のスケール付着による性能低下時、出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器のメンテナンス情報を表示する表示部を備えているため、スケール付着による出湯温度の低下や高温側水熱交換器のメンテナンスの必要性等の情報を表示部に出力して表示することにより、ユーザーに対して必要な情報を適時提供することができる。従って、その情報に基づき、ユーザーは必要な処置を講ずることができる。
【0012】
さらに、本発明のヒートポンプ給湯システムは、上述のいずれかのヒートポンプ給湯システムにおいて、前記制御部は、前記水熱交換器に供給される水の水質に応じて、前記低温側水熱交換器の出口温水温度の設定値を可変する温度設定スイッチを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、制御部が、水熱交換器に供給される水の水質に応じて、低温側水熱交換器の出口温水温度の設定値を可変する温度設定スイッチを備えているため、水熱交換器に供給される水の水質を、例えば水道水の硬度を調べることにより判定し、その結果に基づいてスケールが析出し易い硬水の場合、温度設定スイッチにより低温側水熱交換器の出口温水温度の設定値を低めに設定し、軟水の場合、設定値を高めに設定する等、水質に合った設定値を設定することができる。従って、地域により水質が異なっていても、それに対応して給湯システムを適切に運転することができる。
【0014】
さらに、本発明のヒートポンプ給湯システムは、上述のいずれかのヒートポンプ給湯システムにおいて、前記高温側水熱交換器は、スケール除去用の洗浄手段および/または熱交換器交換用の着脱手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、高温側水熱交換器が、スケール除去用の洗浄手段および/または熱交換器交換用の着脱手段を備えているため、スケール付着により高温側水熱交換器に対するメンテナンス情報が出力された場合、洗浄手段を介して高温側水熱交換器に高圧洗浄水や超音波洗浄水等を供給してスケールを洗浄除去し、あるいは必要に応じて着脱手段を介して冷媒回路および水回路から高温側水熱交換器を取り外し、新しい熱交換器に取り換えることができる。従って、スケールが付着した高温側水熱交換器を容易にかつ短時間でメンテナンスし、熱交換性能を回復することができる。
【0016】
さらに、本発明のヒートポンプ給湯システムは、上述のいずれかのヒートポンプ給湯システムにおいて、前記高温側水熱交換器の前記水熱交換器に対する容積割合は、0.3〜0.4とされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、高温側水熱交換器の水熱交換器に対する容積割合が、0.3〜0.4とされているため、水熱交換器に対する入口水温の高・低にかかわらず、水温が略60℃以上に到達する水熱交換器の容積割合(容量割合)が概ね60〜70%の位置で高温側水熱交換器を分割することにより、スケール析出領域が拡大しやすい高硬度、高温条件下においても、スケールの析出を高温側水熱交換器側に止めることができる。従って、メンテナンスを容易化することができるとともに、取り換えが必要となる高温側水熱交換器の小型化、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高温側水熱交換器にスケールが付着し、熱交換性能が低下したとしても、水ポンプによる水量制御によって出湯温度を目標温度に維持しつつ運転を継続することができる一方、この間、低温側水熱交換器の出口温水温度が徐々に上昇し、その温度が設定値を超えた場合、低温側水熱交換器でもスケールの析出が懸念されることから、ヒートポンプ側の能力制御により低温側水熱交換器の出口温水温度を設定値以下に抑え、スケールの析出を抑制しながら運転を継続し、出湯温度の低下および高温側水熱交換器のメンテナンスの必要性等を情報として出力することができるため、スケールが析出しても直ちに出湯温度を下げることなく、可能な限り目標温度に維持しつつ、かつ低温側水熱交換器でのスケールの析出を防止しながら運転を継続することができるとともに、ユーザーに対して、スケール付着による出湯温度の低下や高温側水熱交換器のメンテナンス等の情報を的確に出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1ないし
図3を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係るヒートポンプ給湯システムの構成図が示され、
図2には、その制御部によるスケール析出時の制御フロー図が示されている。
本実施形態のヒートポンプ給湯システム1は、CO2冷媒を用いている超臨界サイクルのヒートポンプ2と、そのヒートポンプ2で製造された温水を貯える貯湯タンク10が設けられた貯湯タンクユニット3とを備えている。
【0021】
ヒートポンプ2は、冷媒を圧縮する圧縮機4と、ガスクーラとして機能し、冷媒と水とを熱交換させて温水を製造する水熱交換器(ガスクーラ)5と、冷媒を減圧する電子膨張弁等からなる減圧手段6と、ファン8を介して通風される外気との熱交換により冷媒を蒸発させる蒸発器7とが、順次冷媒配管9により接続されて構成された閉サイクルの冷媒回路10を備えている。このヒートポンプ2は、作動媒体としてCO2冷媒が充填された超臨界サイクルのヒートポンプとされており、それ自体、公知のものであってよい。
【0022】
貯湯タンクユニット3は、ヒートポンプ2側で製造された温水を貯湯する所要容量の貯湯タンク11と、貯湯タンク11を介してヒートポンプ2の水熱交換器5に対して水が循環可能とされている水回路12と、水回路12中に設けられている水ポンプ13と、水回路12内に空気が混入された場合、その空気を水ポンプ13の運転により外部に排出する機能を担うエアベント14と、水回路12の給水配管12Aと出湯配管12Bとの間に設けられたバ
イパス回路15と、バイパス回路15からの水と貯湯タンク11からの給湯水とを混合して所定温度の温水となし、負荷側に供給する感温式のミキシング弁16等とを備えている。
【0023】
ヒートポンプ2の水熱交換器(ガスクーラ)5は、冷媒回路10が接続される冷媒流路17側を流れる冷媒と、水回路12が接続される水流路18側を流れる水とを熱交換させる熱交換器であり、高温高圧の冷媒ガスからの放熱で水を加熱し、温水を製造する機能を担うものである。水熱交換器5は、冷媒流路17を流れる冷媒の流れ方向と、水流路18を流れる水の流れ方向とが対向流となる構成とされている。この水熱交換器5は、水の入口側となる低温側水熱交換器5Aと、温水の出口側となる高温側水熱交換器5Bとに分割された構成とされている。
【0024】
分割された高温側水熱交換器5Bは、冷媒回路10および水回路12に対して冷媒側着脱手段(ジョイント、ファスナ)19A,19Bおよび水側着脱手段(ジョイント、ファスナ)20A,20Bを介して着脱自在とされ、スケール付着時に簡易に取り換えできる構成とされている。また、水側着脱手段20A,20Bに対しては、高圧洗浄水や超音波洗浄水等を循環してスケールを洗浄により除去するためのバルブを設け、洗浄手段を接続可能な構成としてもよい。
【0025】
また、2分割された低温側水熱交換器5Aと高温側水熱交換器5Bとの容積割合(容量割合)は、概ね「低温側水熱交換器5A:高温側水熱交換器5B=6:4〜7:3」とされている。これは、例えば90℃の温水を取り出そうとしたとき、水熱交換器5に対する入口水温が高い、低いにかかわらず、水温が略60°以上に到達するのは、水熱交換器5の容積割合(容量割合)が概ね60〜70%の位置になるとの知見によるものである。
【0026】
上記のヒートポンプ給湯システム1では、水熱交換器5から出湯される温水の温度(以下「出湯温度」という。)が、ユーザーがリモコン等で設定した温度(目標温度)となるように、ヒートポンプ2の能力を一定とし、水ポンプ1
3の回転数制御により水量を制御する方式が採られている。一方、水熱交換器(ガスクーラ)5の水流路18側には、通常市水(水道水)が流通されるが、長期に亘る運転により、水質によっては水流路18側にスケールが付着し、熱交換性能が低下して初期の能力が得られなくなる場合がある。
【0027】
スケールの析出には、pHおよびMアルカリ度(as CaCO
3)に加え、水の硬度および温度等が影響を及ぼす。
図3(A)、(B)、(C)には、出湯温度を低温、中温、高温とした場合のスケール発生マップが示されている。この図から明らかな通り、pHが同じ水の場合、Mアルカリ度が低くても、水温が高くなる程、また硬度が高くなる程、スケールが析出し易くなることが解る。つまり、高硬度、高温度条件下では、スケールの析出領域がより拡大するということが解る。
【0028】
そこで、本実施形態においては、2分割した水熱交換器5の高温側水熱交換器5Bの温水出口側に出湯温度を検出する出湯温度センサ21を設けるとともに、低温側水熱交換器5Aの温水出口側にその出口温水温度を検出する温水温度センサ22を設け、高温側水熱交換器5Bにスケールが付着して熱交換性能が低下した場合、各温度センサ21,22の検出値に基づいて、ヒートポンプ給湯システム1を以下により運転するための制御部23を設けている。
【0029】
制御部23は、水熱交換器5で製造され、出湯温度センサ21により検出された温水の温度が、リモコン24等の設定手段を介してユーザーが設定した目標温度(例えば、90℃)となるように、水ポンプ13の回転数により水量を制御する機能に加え、温水温度センサ22の検出値を監視し、高温側水熱交換器5Bのスケール付着による熱交換性能の低下時、水ポンプ13による水量の制御により低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が徐々に上昇することから、その温度が設定値を超えたとき、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度を設定値以下に抑制制御し、それによる出湯温度の低下情報や高温側水熱交換器5Bのメンテナンス情報を出力する機能を備えた構成とされている。
【0030】
また、制御部23は、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の検出値に基づいて、その温水温度の抑制制御や出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器5Bのメンテナンス情報を出力するための設定値を、水質に合わせて可変設定するための温度設定スイッチ26を備えている。これにより、水熱交換器5に通水する水道水等の硬度を調べ、スケールが析出し易い硬度の高い硬水の場合、設定値を低めに設定し、硬度が低い軟水の場合、設定値を高めに設定する等、水質に合った設定値を設定できるようにしている。例えば、硬度の高い硬水の場合、設定値を60℃とし、硬度が低くなるに連れ、設定値を高くするように設定すればよい。
【0031】
上記制御部23によるスケール析出時の制御フローを、
図2に示す制御フロー図に基づいて、以下に詳しく説明する。
ヒートポンプ給湯システム1の運転時、ユーザーは、リモコン24等の設定手段を介して任意の出湯温度(例えば、90℃)を設定する(ステップS1)。これにより、給湯システム1は、リモコン24で設定された出湯温度を目標温度とし、ヒートポンプ2を一定の能力として水ポンプ13の回転数制御により、出湯温度センサ21で検出される水熱交換器5(高温側水熱交換器5B)からの出湯温度が目標温度となるように水量を制御して運転される。
【0032】
ステップS1で出湯温度が設定されると、ステップS2に移行し、ここで低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の設定値が設定される。この設定値は、ヒートポンプ給湯システム1の据え付け時等に、水熱交換器5に供給される水道水等の水質(硬度)を調べることにより、その硬度に対応した適切な温度として、予め温度設定スイッチ26により設定された値が取り込まれることになる。ステップS2で低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の設定値が設定されると、ステップS3に移行される。ステップS3では、運転データとして出湯温度および低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が温度センサ
21,22の検出値として読み込まれる。
【0033】
そして、ステップS4において、温度センサ
21で検出された出湯温度がステップS1で設定された目標温度か否かが判定され、YESの場合、ステップS1に戻り、同様の動作が繰り返される。また、NOの場合、ステップS5に移行し、ヒートポンプの能力を一定に保ったまま、水ポンプ13の回転数を制御して出湯温度が目標温度となるように制御した後、ステップS6に移行する。ステップS6では、温度センサ
22により検出された低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が設定値以下か否かが判定される。
【0034】
給湯運転時に、高温側水熱交換器5Bでスケールが析出し、それが水流路18の内周面に付着すると、圧損が増加するとともに、冷媒との熱交換が阻害されることから、熱交換性能が低下し、出湯温度が低下する。ここで、水ポンプ13の回転数制御によって水量が制御され、出湯温度が目標温度に維持されるが、この状態で運転を継続していると、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が徐々に上昇してくる。この温水温度を温度センサ
22により検出し、監視することによってスケールの付着を検知することができる。ステップS6において、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が設定値以下の場合、YESと判定され、ステップS1に戻り、同様の動作が繰り返される。
【0035】
しかし、スケール付着により低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が上昇し、それが設定値を超えると、NOと判定され、ステップS7に進む。ここでは、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度を設定値以下に抑えるべく、ヒートポンプ2の能力を制御(例えば、圧縮機4の回転数制御)した後、ステップS8に移行する。ステップS8では、スケールの付着、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の抑制制御により、出湯温度を目標温度に保つことが困難になることから、出湯温度が低下する旨の情報および高温側水熱交換器5Bのスケールを除去すべくメンテナンスアラーム(洗浄・交換)等の情報を表示部25に出力し、ステップS1に戻る。以下、同様の動作が繰り返されるようになっている。
【0036】
つまり、上記制御部23は、出湯温度がリモコン24等で設定された目標温度となるように水ポンプ13の回転数を制御する他、高温側水熱交換器5Bのスケール付着による性能低下時、目標温度を維持しながら運転を継続し、その運転で低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が上昇することにより、低温側水熱交換器5A側でスケール析出の可能性が生じたとき、すなわち温水温度センサ22の検出値が設定値を超えた場合、ヒートポンプ2の能力を制御(例えば、圧縮機4の回転数制御)し、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度を設定値以下に抑制して運転を継続するとともに、表示部25に対して出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器5Bのメンテナンス情報を出力し、表示する機能を備えたものとされている。
【0037】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記ヒートポンプシステム1において、CO2冷媒を用いた超臨界サイクルのヒートポンプ2が運転されると、圧縮機4で圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、冷媒回路10を介して水熱交換器5に導入される。ここで、高温側水熱交換器5B、低温側水熱交換器5Aの冷媒流路17を流れる冷媒と、水回路12を経て水流路18に循環される水とが熱交換されることにより、水は高温高圧の冷媒ガス側からの放熱によって加熱、昇温され、リモコン24等の設定手段で設定された温度の温水とされて出湯される。
【0038】
この温水は、水回路12を経て貯湯タンク11に出湯され、貯湯タンク11内に貯えられる。一方、水熱交換器5で水側に放熱して冷却された冷媒は、減圧手段6により減圧された後、気液二相の低圧低温冷媒となって蒸発器7に導入され、ここでファン8により送風される外気との熱交換により蒸発されて圧縮機4に吸い込まれることにより、再圧縮される。以下、同様の動作を繰り返すことによって、温水の製造に供される。
【0039】
貯湯タンク11に貯湯されたお湯は、必要時に貯湯タンク11から出湯側配管12Bを介して負荷側に出湯されることより消費される。この際、給水側配管12Aからバスパス回路15を介してミキシング弁16に供給される20℃前後の水と、貯湯タンク11内に貯湯されていた90℃程度の高温のお湯とがミキシング弁16で混合され、例えば60℃程度の温水に調整されて負荷側に供給されることになる。
【0040】
上記の温水製造過程において、水熱交換器5の水流路18に対して水道水等の水が循環されるが、水質によっては水流路18側でスケールが析出し、そのスケールが堆積することによって熱交換が阻害され、熱交換性能(能力)の低下を来し、その結果、システム1の能力不足や消費電力のアップ、あるいは保護制御による運転停止等を招くことがある。
【0041】
しかるに、本実施形態においては、水熱交換器5を高温側水熱交換器5Bと低温側水熱交換器5Aとに分割し、高温側水熱交換器5Bの温水出口側に出湯温度センサ21を設けるとともに、低温側水熱交換器5Aの出口側に温水温度センサ22を設け、高温側水熱交換器5Bのスケール付着による性能低下時、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度センサ22の検出値が設定値を超えたとき、その温水出口温度を設定値以下の温度に抑制制御するとともに、出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器5Bのメンテナンス情報を出力する制御部23を備えた構成としている。
【0042】
このため、高温側水熱交換器5Bにスケールが付着することにより熱交換性能が低下したとしても、水ポンプ13の水量制御によって出湯温度を目標温度に維持しつつ運転を継続することができる。一方、この間、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度が徐々に上昇し、その温度が設定値を超えると、低温側水熱交換器5A側でもスケールの析出が懸念されることから、ヒートポンプ2側の能力制御により低温側水熱交換器5Aの出口温水温度を設定値以下に抑え、スケールの析出を抑制しながら運転を継続し、出湯温度の低下および高温側水熱交換器5Bのメンテナンスの必要性を情報として出力することができる。
【0043】
これによって、スケールが析出しても直ちに出湯温度を下げることなく、可能な限り目標温度に維持しつつ、かつ低温側水熱交換器5Aでのスケールの析出を防止しながら運転を継続することができるとともに、ユーザーに対して、スケール付着による出湯温度の低下や高温側水熱交換器5Bのメンテナンス等の情報を的確に出力することができる。
【0044】
また、上記制御部23は、高温側水熱交換器5Bのスケール付着による性能低下時、出湯温度の低下情報および高温側水熱交換器5Bのメンテナンス情報を表示する表示部25を備えているため、スケール付着による出湯温度の低下や高温側水熱交換器5Bのメンテナンスの必要性等の情報を表示部25に出力して表示することにより、ユーザーに対して必要な情報を適時提供することができる。従って、その情報に基づき、ユーザーは必要な処置を講ずることができる。
【0045】
さらに、制御部23は、水熱交換器5に供給される水の水質に応じて、低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の設定値を可変する温度設定スイッチ26を備えているため、水熱交換器5に供給される水の水質を、例えば水道水の硬度を調べることにより判定し、その結果に基づいてスケールが析出し易い硬水の場合、温度設定スイッチ26により低温側水熱交換器5Aの出口温水温度の設定値を低めに設定し、軟水の場合、設定値を高めに設定する等、水質に合った設定値を設定することができる。従って、地域により水質が異なっていても、それに対応して給湯システム1を適切に運転することができる。
【0046】
また、本実施形態では、高温側水熱交換器5Bがスケール除去用の洗浄手段および/または熱交換器交換用の着脱手段19A,19Bおよび20A,20Bを備えている。このため、スケール付着により高温側水熱交換器5Bに対するメンテナンス情報が出力された場合、洗浄手段を介して高温側水熱交換器5Bに高圧洗浄水や超音波洗浄水等を供給してスケールを洗浄除去し、あるいは必要に応じて着脱手段19A,19Bおよび20A,20Bを介して冷媒回路10および水回路12から高温側水熱交換器5Bを取り外し、新しい熱交換器に取り換えることができる。これにより、スケールが付着した高温側水熱交換器5Bを容易にかつ短時間でメンテナンスし、熱交換性能を回復することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、高温側水熱交換器5Bの水熱交換器5に対する容積割合が、0.3〜0.4とされている。このため、水熱交換器5に対する入口水温の高い、低いにかかわらず、水温が略60℃以上に到達する水熱交換器5の容積割合(容量割合)が概ね60〜70%の位置で高温側水熱交換器5Bを分割することにより、スケール析出領域が拡大しやすい高硬度、高温条件下においても、スケールの析出を高温側水熱交換器5B側に止めることができ、従って、メンテナンスを容易化することができるとともに、取り換えが必要となる高温側水熱交換器5Bの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、ヒートポンプ2の冷媒回路10と水回路12との間に、閉サイクルの熱媒体回路30を設けた構成としている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態は、冷媒回路10と水回路12との間に、水、クーラント等の熱媒体を、熱媒体ポンプ31を介して循環する閉サイクルの熱媒体回路30を設け、この熱媒体回路30側の熱媒体と、ヒートポンプ2側の冷媒とを冷媒/熱媒体熱交換器32で熱交換させて熱媒体を加熱し、その熱媒体と水回路12を循環する水とを高温側水熱交換器5Bおよび低温側水熱交換器5Aで熱交換させて温水を製造するようにしたものである。
【0049】
このように、ヒートポンプ2の冷媒回路10と水回路12との間に、閉サイクルの熱媒体回路30を設け、ヒートポンプ2側の冷媒により、冷媒/熱媒体熱交換器32で閉サイクルの熱媒体回路30内の熱媒体を加熱し、その熱媒体で水回路12側の水を加熱して温水を製造する構成とすることにより、高圧冷媒仕様のため高価となる冷媒/熱媒体熱交換器32でのスケールの付着を解消することができる。つまり、水回路12側に供給される水は、水質が地域によって様々変化し、スケールが析出し易い硬水の場合、冷媒/水熱交換器5の交換の頻度が高くなると、メンテナンス費用が嵩むことになるが、本実施形態によれば、かかる問題をも解消することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、CO2冷媒を用いた超臨界サイクルのヒートポンプ2を用いているが、これに限らず、HFC冷媒を用いたヒートポンプ2を適用してもよいことはもちろんである。また、CO2冷媒を用いた場合、上記圧縮機4を2段圧縮機とすることが望ましく、これにより更なる高能力化を期待することができる。