特許第6239290号(P6239290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239290放射性物質収納容器及び放射性物質収納容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239290
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】放射性物質収納容器及び放射性物質収納容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20171120BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20171120BHJP
   G21F 5/002 20060101ALI20171120BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20171120BHJP
   G21F 5/00 20060101ALI20171120BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G21C19/32 Z
   G21F5/00 D
   G21F5/00 W
   G21F5/00 K
   G21F9/36 501C
   G21F9/36 501G
   G21F9/36 501F
   G21F9/36 501J
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-145777(P2013-145777)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17909(P2015-17909A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴良
(72)【発明者】
【氏名】小谷 健一郎
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−083255(JP,A)
【文献】 特開平11−256372(JP,A)
【文献】 特開平08−177832(JP,A)
【文献】 実開平03−059366(JP,U)
【文献】 特開2005−201909(JP,A)
【文献】 特開2003−315494(JP,A)
【文献】 特開平03−283607(JP,A)
【文献】 特開平11−061424(JP,A)
【文献】 特開平09−013174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21F 5/00
G21F 5/002
G21F 5/005
G21F 5/12
G21F 9/36
C23C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質が収納される胴部と、
前記胴部の開口部を塞ぐ蓋部と、を備え、
前記蓋部は、単一の部材であり、孔が形成された炭素鋼製の蓋本体と、前記孔の内面及び前記孔の開口の周囲に配置された前記蓋本体の外面の少なくとも一部を覆うように配置され、前記蓋本体の腐食を抑制する無電解めっき処理で形成される金属膜である保護膜と、ガスケットと、前記蓋本体と前記ガスケットとの間において前記蓋本体に固定され、前記ガスケットが接触する接触面を有し、前記蓋本体とは異なる材料であるステンレス鋼製の支持部材と、を備える放射性物質収納容器。
【請求項2】
前記保護膜の厚みは、50μm以下である請求項1に記載の放射性物質収納容器。
【請求項3】
放射性物質が収納される胴部と前記胴部の開口部を塞ぐ蓋部とを備える放射性物質収納容器の製造方法であって、
単一の部材である炭素鋼製の蓋本体に孔を形成する手順と、
前記蓋本体の外面の少なくとも一部に、前記蓋本体とは異なる材料であるステンレス鋼で形成された支持部材を固定する手順と、
前記孔が形成され前記支持部材が接続された状態で前記蓋本体を無電解めっき処理して、前記孔の内面及び前記孔の開口の周囲に配置された前記蓋本体の外面の少なくとも一部を覆うように前記蓋本体の腐食を抑制可能な保護膜を形成して、前記蓋部を製造する手順と、
前記支持部材の接触面に接触するようにガスケットを配置する手順と、
を含む放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項4】
前記無電解めっき処理において、前記支持部材をマスク部材で覆う手順を含む請求項3に記載の放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項5】
前記無電解めっき処理は、前記蓋本体に第1の保護膜を形成する第1の無電解めっき処理と、前記第1の保護膜の上に第2の保護膜を形成する第2の無電解めっき処理と、を含む請求項3又は請求項4に記載の放射性物質収納容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質収納容器及び放射性物質収納容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの原子炉などで発生した放射性廃棄物は、放射性物質収納容器に収納され、貯蔵施設や再処理施設などに搬送され、貯蔵または再処理される。このような放射性物質収納容器は、特許文献1に開示されているように、上部が開口した底付きの円筒形状をなす胴部と、複数の放射性物質を個々に収納可能な複数のセルを有するバスケットと、胴部の上部に固定される蓋部とから構成されている。非特許文献1には、蓋部において、ステンレス鋼製のボスやアルミ溶射によって腐食を抑制する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−104793号公報
【非特許文献1】核燃料サイクル安全小委員会中間貯蔵ワーキンググループ使用済燃料貯蔵施設の溶接に関する検討会(第2回)配布資料 資料2−2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば水との接触により蓋部の少なくとも一部が腐食する(錆びる)と、放射性物質収納容器の性能が低下する可能性がある。腐食の発生を抑制するための従来技術の一つとして、腐食する可能性が高い蓋部の一部をステンレス鋼製の部材で形成し、他の一部を炭素鋼製の部材で形成する技術がある。蓋部の一部をステンレス鋼製にすることによってコストの抑制が図られる。しかし、従来技術では、蓋部の製造において、ステンレス鋼製の部材と炭素鋼製の部材とを接合(溶接)する作業が必要となり、接合時のひずみ修正等を含む工数の増大及び作業コストの増大をもたらす可能性がある。例えば、孔を有する蓋部を製造する場合、炭素鋼製の部材とステンレス鋼製の部材とを溶接した後、そのステンレス鋼製の部材に孔を形成し、その後、炭素鋼製の部材にアルミ溶射や塗装などの手法により防錆処理を行う手順では、工数が増大する。また、2つの部材の熱膨張係数の違いなどにより2つの部材の接合部(溶接部)が劣化して、蓋部の強度が低下する可能性がある。その結果、放射性物質収納容器の性能が低下する可能性がある。また、アルミ溶射などの防錆処理では防錆のため保護膜の膜厚が厚くなることから、強度を維持する蓋部の構造厚が相対的に薄くなることから強度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、性能の低下が抑制される放射性物質収納容器を提供することを目的とする。また、本発明は、作業コストの増大が抑制され、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される放射性物質収納容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明に係る放射性物質収納容器は、放射性物質が収納される胴部と、前記胴部の開口部を塞ぐ蓋部と、を備え、前記蓋部は、単一の部材であり、孔が形成された蓋本体と、前記孔の内面及び前記孔の開口の周囲に配置された前記蓋本体の外面の少なくとも一部を覆うように配置され、前記蓋本体の腐食を抑制する保護膜と、を備える。
【0007】
この放射性物質収納容器によれば、蓋本体が単一の部材であるため、蓋本体の強度の低下が抑制される。また、腐食する可能性が高い孔の内面及び孔の開口の周囲に配置された蓋本体の外面の少なくとも一部に保護膜が設けられるので、蓋本体において腐食(錆)の発生が抑制される。したがって、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0008】
本発明に係る放射性物質収納容器において、前記保護膜は、無電解めっき処理で形成される金属膜を含んでもよい。これにより、腐食する可能性が高い孔の内面にも保護膜が円滑に形成される。
【0009】
本発明に係る放射性物質収納容器において、前記蓋部は、ガスケットと、前記蓋本体と前記ガスケットとの間に配置され、前記ガスケットが接触する接触面を有し、前記蓋本体とは異なる材料で形成された支持部材と、を備えてもよい。支持部材が、蓋本体よりもガスケットとの間で高いシール機能を発揮できるように形成されていることにより、蓋部は高いシール機能を得ることができる。これにより、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0010】
本発明に係る放射性物質収納容器において、前記蓋部は、ガスケットと、前記ガスケットが接触する前記蓋本体の前記外面の少なくとも一部に設けられた溝部と、を備えてもよい。ガスケットと接触する蓋本体の一部に溝部が設けられることによって、蓋部は高いシール機能を得ることができる。これにより、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0011】
本発明に係る放射性物質収納容器において、前記保護膜の厚みは、50μm以下でもよい。50μm以下の厚みを有する保護膜により、十分な腐食抑制機能が得られ、保護膜の厚みを50μm以下とすることで蓋本体の寸法拡大を抑制することになり、放射性物質収納容器の胴部との係合を特別な調整を行うことなく行うことができる。また、保護膜の厚みを50μm以下とすることで蓋本体の強度低下を抑制することができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法は、放射性物質が収納される胴部と前記胴部の開口部を塞ぐ蓋部とを備える放射性物質収納容器の製造方法であって、単一の部材である蓋本体に孔を形成する手順と、前記孔の内面及び前記孔の開口の周囲に配置された前記蓋本体の外面の少なくとも一部を覆うように前記蓋本体の腐食を抑制可能な保護膜を形成して、前記蓋部を製造する手順と、を含む。
【0013】
この放射性物質収納容器の製造方法によれば、蓋本体が単一の部材であり、2つの部材を接合する作業が省かれるため、作業コストの増大が抑制され、蓋本体の強度の低下が抑制される。また、腐食する可能性が高い孔の内面及び孔の開口の周囲に配置された蓋本体の外面の少なくとも一部に保護膜が設けられるので、蓋本体において腐食(錆)の発生が抑制される。したがって、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0014】
本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法において、前記孔が形成された前記蓋本体を無電解めっき処理して、前記保護膜を形成する手順を含んでもよい。これにより、蓋本体を溶液(めっき液)に浸漬するだけで、腐食する可能性が高い孔の内面及び蓋本体の外面のそれぞれに保護膜が円滑に形成される。
【0015】
本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法において、前記蓋本体の前記外面の少なくとも一部に、前記蓋本体とは異なる材料で形成された支持部材を接続する手順と、前記支持部材が接続された状態で、前記蓋本体を前記無電解めっき処理する手順と、前記支持部材の接触面に接触するようにガスケットを配置する手順と、を含んでもよい。支持部材が、蓋本体よりもガスケットとの間で高いシール機能を発揮できるように形成されていることにより、蓋部は高いシール機能を得ることができる。また、支持部材が、蓋本体よりも保護膜が形成され難い材料で形成されていることにより、支持部材に保護膜が形成されることが抑制されるため、支持部材とガスケットとの間において高いシール機能が得られる。これにより、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0016】
本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法において、前記無電解めっき処理において、前記支持部材をマスク部材で覆う手順を含んでもよい。これにより、支持部材に保護膜が形成されることが抑制されるため、支持部材とガスケットとの間において高いシール機能が得られる。
【0017】
本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法において、前記蓋本体の前記外面の少なくとも一部をセレーション加工する手順と、前記セレーション加工により前記蓋本体に形成された溝部に接触するようにガスケットを配置する手順と、を含んでもよい。ガスケットと接触する蓋本体の一部に溝部が設けられることによって、蓋部は高いシール機能を得ることができる。これにより、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【0018】
本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法において、前記無電解めっき処理は、前記蓋本体に第1の保護膜を形成する第1の無電解めっき処理と、前記第1の保護膜の上に第2の保護膜を形成する第2の無電解めっき処理と、を含んでもよい。すなわち、所謂、二重めっき処理が行われてもよい。これにより、保護膜が十分に形成されるため、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る放射性物質収納容器によれば、性能の低下が抑制される。また、本発明に係る放射性物質収納容器の製造方法によれば、作業コストの増大が抑制され、放射性物質収納容器の性能の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の一例を示す縦断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の一例を示す平断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る蓋部の一例を示す側断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る蓋部の一例を示す平面図である。
図5図5は、図3の一部を拡大した図である。
図6図6は、図4のC−C断面図である。
図7図7は、図4のD−D断面図である。
図8図8は、図5のE−E断面図である。
図9図9は、図5のF−F断面図である。
図10図10は、図5の一部を拡大した図である。
図11図11は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図12図12は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図13図13は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図14図14は、第1実施形態に係る放射性物質収納容器の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図15図15は、第2実施形態に係る放射性物質収納容器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る放射性物質収納容器としてのキャスクの縦断面図であり、図2は、本実施形態に係る放射性物質収納容器としてのキャスクの平断面図である。
【0023】
放射性物質収納容器としてのキャスク11は、胴部12と蓋部13とバスケット14とから構成されている。胴部12は、胴本体21の一方、つまり、上部に開口部22が形成され、他方、つまり、下部に底部(閉塞部)23が形成された円筒形状をなしており、内部に放射性物質(例えば、使用済燃料集合体)を収納可能となっている。すなわち、胴本体21は、内部にキャビティ24が設けられ、このキャビティ24は、その内面がバスケット14の外周形状に合わせた形状となっている。バスケット14は、複数の放射性物質(図示略)を個々に収納するセルを複数有している。バスケット14は、図1に示すようにバスケット本体14Aを有する。バスケット本体14Aは、互いに平行かつ所定間隔で配置されるセルとしての放射性物質収納部14Bが上下方向で連続して形成されている。上下方向とは、キャスク11において胴部12の円筒形状の中心軸に沿う方向であり、胴本体21の上下方向に相当する。そして、胴本体21は、下部に底部23が溶接または一体成形により結合されており、この胴本体21および底部23は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品となっている。胴本体21および底部23は、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。また、胴本体21および底部23は、球状黒鉛鋳鉄や炭素鋼鋳鋼などの鋳造品を用いることもできる。
【0024】
胴部12は、胴本体21の外周側に所定の隙間を空けて外筒25が配設されており、胴本体21の外周面と外筒25の内周面との間に、熱伝達を行う銅製の伝熱フィン25aが周方向に等間隔で複数溶接されている。そして、胴部12は、胴本体21と外筒25との空間部に、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽材)26が流動状態で図示しないパイプ等を介して注入され、固化されている。
【0025】
また、胴部12は、底部23の下側に複数の連結板27により所定の隙間を空けて底板28が連結されていてもよく、この連結板27と底板28との空間部にレジン(中性子遮蔽材)29が設けられている。なお、連結板27を設けないこともある。更に、胴部12は、外周部における所定の位置にトラニオン41が固定されている。
【0026】
胴部12における胴本体21の開口部22を塞ぐ蓋部13は、一次蓋部31と二次蓋部32によって構成されている。一次蓋部31は、円盤形状であり、二次蓋部32も、円盤形状である。図1に示すように、二次蓋部32にレジン(中性子遮蔽材)33が封入されている。なお、二次蓋部32にレジン33が封入されてなくてもよい。一次蓋部31は、ボルト35により胴本体21の上端部に着脱自在に取り付けられる。二次蓋部32も、ボルト(図示略)により胴本体21の上端部に着脱自在に取付けられる。また、蓋部13の周囲には、レジンを封入した補助遮蔽体34が設けられる場合もある。
【0027】
次に、一次蓋部31について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る一次蓋部31の側断面図である。図4は、一次蓋部31の平面図である。図3は、図4のA−A断面図である。図5は、図3の一部を拡大した図である。図6は、図4のC−C断面図である。図7は、図4のD−D断面図である。図8は、図5のE−E断面図であり、図9は、図5のF−F断面図である。図10は、図5の一部を拡大した図である。
【0028】
一次蓋部31は、単一の部材である蓋本体50を備えている。蓋本体50は、γ線を遮蔽する炭素鋼製の部材である。蓋本体50には、孔51が形成される。孔51にボルト35の少なくとも一部が配置される。孔51は、蓋本体50のフランジ部50Fに形成される。ボルト35により、一次蓋部31が胴本体21の上端部に固定される。孔51は、蓋本体50の上面61と下面62とを結ぶように形成される貫通孔である。下面62は、フランジ部50Fの下面である。孔51の上端の開口51Aの周囲に上面61が配置され、孔51の下端の開口51Bの周囲に下面62が配置される。
【0029】
本実施形態において、一次蓋部31は、孔51の内面51H、上面61、及び下面62のそれぞれを覆うように配置される保護膜60を有する。保護膜60は、蓋本体50の腐食(錆)を抑制する。保護膜60は、金属膜であり、無電解めっき処理により形成される。本実施形態において、保護膜60は、無電解ニッケルめっき処理で形成される。
【0030】
図3及び図5などに示すように、一次蓋部31は、ベントバルブ42を備えている。蓋本体50は、ベントバルブ42が配置される孔52を有する。ベントバルブ42が配置される孔52の一部分が、他の部分のよりも拡がっていてもよい。孔52は、蓋本体50の上面61と下面63とを結ぶように形成される。孔52の上端の開口の周囲に上面61が配置され、孔52の下端の開口の周囲に下面63が配置される。孔52の内面52H、上面61、及び下面63のそれぞれを覆うように、保護膜60が形成される。
【0031】
蓋本体50は、下面62の内縁と下面63の外縁とを結ぶ接続面64と、フランジ部50Fの側面65とを有する。接続面64及び側面65のそれぞれを覆うように、保護膜60が形成される。
【0032】
図6などに示すように、一次蓋部31は、ドレンバルブ43を備えている。蓋本体50は、ドレンバルブ43が配置される孔53を有する。ドレンバルブ43が配置される孔53の一部分が、他の部分のよりも拡がっていてもよい。孔53は、蓋本体50の上面61と下面63とを結ぶように形成される。孔53の上端の開口の周囲に上面61が配置され、孔53の下端の開口の周囲に下面63が配置される。孔53の内面53H、上面61、及び下面63のそれぞれを覆うように、保護膜60が形成される。
【0033】
図5及び図9に示すように、孔52の内面52Hに、溝96及び溝97が形成される。溝96及び溝97のそれぞれは、孔52の軸に対する放射方向に関して外側に向かって拡がるように形成される。溝部96の内面及び溝部97の内面のそれぞれは、ベントバルブ42の外面から離れている。溝97は、孔52の上端の開口を含む内面52Hの一部に形成される。溝96は、溝97よりも孔52の上端の開口から離れて内面52Hの一部に形成される。溝96にキーが配置されてもよい。
【0034】
孔52の内面52Hは、溝97と溝96とを結ぶ凹部98を有する。凹部98の内面は、ベントバルブ42の外面から離れている。溝96の内面とベントバルブ42の外面との距離、及び溝97の内面とベントバルブ42の外面との距離は、凹部98の内面とベントバルブ42の外面との距離よりも長い。
【0035】
ベントバルブ42が配置される孔52の内面52Hと同様、ドレンバルブ43が配置される孔53の内面53Hにも、孔53の上端の開口を含む内面53Hの一部に設けられた溝97と、溝97よりも孔53の上端の開口から離れて内面53Hの一部に形成された溝96と、溝97と溝96とを結ぶ凹部98とが形成される。
【0036】
図7などに示すように、蓋本体50には、キャスク11の内部の気密性の試験をするための孔54が形成される。孔54には、プラグ44が配置される。プラグ44が配置される孔54の一部分が、他の部分のよりも拡がっていてもよい。プラグ44には、キャスク11の内部のガスが漏洩しているか否かを検出するための気密漏洩検査装置が接続される。プラグ44と蓋本体50(孔54の内面54H)との間にガスケットが配置されてもよい。孔54は、蓋本体50の上面61と下面(外面)62とを結ぶように形成される。孔54の上端の開口の周囲に上面61が配置され、孔54の下端の開口の周囲に下面62が配置される。孔54の内面54H、上面61、及び下面62のそれぞれを覆うように、保護膜60が形成される。
【0037】
すなわち、本実施形態において、孔の内面(内面51H、内面52H、内面53H、及び内面54Hを含む)と、孔の外側の蓋本体50の外面(上面61、下面62、下面63、接続面64、及び側面65を含む)とが覆われるように、無電解ニッケルめっき処理で形成された保護膜(ニッケル膜)60が形成される。
【0038】
図5などに示すように、一次蓋部31は、ベントバルブ42を覆うバルブカバープレート45を有する。バルブカバープレート45は、ボルト91により、蓋本体50の上面61に固定される。図6などに示すように、一次蓋部31は、ドレンバルブ43を覆うバルブカバープレート46を有する。バルブカバープレート46は、ボルト92により、蓋本体50の上面61に固定される。
【0039】
図10は、ベントバルブ42及びバルブカバープレート45の一部を拡大した図である。バルブカバープレート45には、キャスク11の内部の気密性の試験をするための孔55が形成されている。孔55には、キャスク11の内部のガスが漏洩しているか否かを検出するための圧力センサが接続されるプラグ47が配置されている。プラグ47が配置される孔55の一部分が、他の部分のよりも拡がっていてもよい。プラグ47と蓋本体50(孔55の内面55H)との間にガスケットが配置されてもよい。孔55は、バルブカバープレート45の上面と下面とを結ぶように形成される。孔55の上端の開口の周囲にバルブカバープレート45の上面が配置され、孔55の下端の開口の周囲にバルブカバープレート45の下面が配置される。
【0040】
バルブカバープレート45が炭素鋼製でもよい。孔55の内面55H、及びバルブカバープレート45の外面(上面、下面、及び側面を含む)のそれぞれに保護膜60が形成されてもよい。
【0041】
バルブカバープレート45と同様、バルブカバープレート46にも、キャスク11の内部の気密性の試験をするための孔56が形成される。孔56には、キャスク11の内部のガスが漏洩しているか否かを検出するための圧力センサが接続されるプラグ48が配置される。プラグ48が配置される孔56の一部分が、他の部分のよりも拡がっていてもよい。プラグ48と蓋本体50(孔56の内面56H)との間にガスケットが配置されてもよい。孔56は、バルブカバープレート46の上面と下面とを結ぶように形成される。孔56の上端の開口の周囲にバルブカバープレート46の上面が配置され、孔56の下端の開口の周囲にバルブカバープレート46の下面が配置される。
【0042】
バルブカバープレート46が炭素鋼製でもよい。孔56の内面56H、及びバルブカバープレート46の外面(上面、下面、及び側面を含む)のそれぞれに保護膜60が形成されてもよい。
【0043】
本実施形態において、一次蓋部31は、複数のガスケット70を有する。ガスケット70は、金属ガスケットである。ガスケット70により、キャスク11の内部の気密性(密封性)が確保される。
【0044】
例えば、図3図5図6、及び図7などに示すように、蓋本体50(フランジ部50F)と胴本体21との間にガスケット70Aが配置される。ガスケット70Aの少なくとも一部は、下面62に設けられた凹部71に配置される。図5に示すように、ベントバルブ42と孔52(内面52H)との間にガスケット70Bが配置される。ガスケット70Bの少なくとも一部は、ベントバルブ42の下面に設けられた凹部に配置される。バルブカバープレート45と上面61との間にガスケット70Cが配置される。ガスケット70Cは、バルブカバープレート45の下面に設けられた凹部72に配置される。図6などに示すように、ドレンバルブ43と孔53(内面53H)との間にガスケット70Dが配置される。ガスケット70Dの少なくとも一部は、ドレンバルブ43の下面に設けられた凹部に配置される。バルブカバープレート46と上面61との間にガスケット70Eが配置される。ガスケット70Eは、バルブカバープレート46の下面に設けられた凹部73に配置される。
【0045】
本実施形態において、一次蓋部31は、蓋本体50とガスケット70との間に配置され、蓋本体50とは異なる材料で形成された支持部材80を有する。支持部材80は、蓋本体50に固定される。支持部材80は、例えば溶接により蓋本体50に接合される。支持部材80は、ガスケット70が接触可能な接触面を有する。支持部材80は、ガスケット70の少なくとも一部と接触するように配置される。ガスケット70と接触する支持部材80の接触面を、シール面と称してもよいし、シート面と称してもよい。上述のように、本実施形態において、蓋本体50は、炭素鋼製である。本実施形態において、支持部材80は、ステンレス鋼製である。
【0046】
例えば、図3図5図6、及び図7などに示すように、蓋本体50(フランジ部50F)とガスケット70Aとの間に支持部材80Aが配置される。凹部71の内面は、支持部材80Aの下面(接触面)を含む。支持部材80Aは、ガスケット70Aと接触するように配置される。図5などに示すように、蓋本体50とガスケット70Cとの間に支持部材80Cが配置される。支持部材80Cは、ガスケット70Cと接触するように配置される。なお、蓋本体50とガスケット70Bとの間に支持部材80がガスケット70Bと接触するように配置されてもよい。図6などに示すように、蓋本体50とガスケット70Eとの間に支持部材80Eが配置される。支持部材80Eは、ガスケット70Eと接触するように配置される。なお、蓋本体50とガスケット70Dとの間に支持部材80がガスケット70Dと接触するように配置されてもよい。
【0047】
本実施形態において、一次蓋部31は、蓋本体50とカバー部材81との間に配置されたレジン(中性子遮蔽材)82と、バルブカバープレート45とカバー部材83との間に配置されたレジン(中性子遮蔽材)84と、バルブカバープレート46とカバー部材85との間に配置されたレジン(中性子遮蔽材)86と、を有する。レジン82は、蓋本体50の上面61側に配置される。図3などに示すように、カバー部材81は、蓋本体50に固定される。図5などに示すように、レジン84は、バルブカバープレート45の上面側に配置される。カバー部材83は、ボルト93によりバルブカバープレート45に固定される。図6などに示すように、レジン86は、バルブカバープレート46の上面側に配置される。カバー部材85は、ボルト94によりバルブカバープレート46に固定される。
【0048】
カバー部材81が、炭素鋼製でもよい。カバー部材81の表面に保護膜60が形成されてもよい。同様に、カバー部材83及びカバー部材85がそれぞれ炭素鋼でもよい。カバー部材83の表面及びカバー部材85の表面のそれぞれに保護膜60が形成されてもよい。
【0049】
本実施形態において、保護膜60の厚みは、50μm以下である。保護膜60の厚みは、例えば1μm以上50μm以下でもよい。保護膜60の厚みは、例えば25μm程度でもよいし、1μm程度でもよいし、1μmよりも薄くてもよい。50μm以下の厚みを有する保護膜60により、十分な腐食抑制機能が得られる。
【0050】
なお、ガスケット70Aが円環状である場合において、そのガスケット70Aの直径が1.4m以上2.4m以下に定められてもよい。また、ガスケット70Aの径方向に関して、支持部材80Aの寸法が、15mm以上40mm以下に定められてもよい。なお、ガスケット70C(70E)が円環状である場合において、そのガスケット70C(70E)の直径が0.1m以上0.2m以下に定められてもよい。また、ガスケット70C(70E)の径方向に関して、支持部材80C(80E)の寸法が、15mm以上40mm以下に定められてもよい。
【0051】
なお、図5などに示すように、ガスケット70Aは雄ねじ部材300によって支持部材80Aに固定される。支持部材80Aには、その雄ねじ部材300と結合(螺合)される雌ねじ孔が形成される。雌ねじ孔は、支持部材80Aに形成され、蓋本体50には形成されない。換言すれば、雄ねじ部材300の軸と平行な方向に関して、支持部材80Aの寸法は、その支持部材80Aの内部(雌ねじ孔)に配置された雄ねじ部材300の寸法よりも大きい。
【0052】
次に、一次蓋部31の製造方法の一例について、図11から図14を参照して説明する。なお、図11から図13は、一次蓋部31を模式的にしめす。
【0053】
図11に示すように、炭素鋼製の単一の部材である蓋本体50が成型される。蓋本体50には、孔51、孔52、孔53、孔54、孔55、及び孔56が形成される。以下の説明においては、これらの孔を合わせて適宜、孔500と総称する。また、これらの孔の内面を適宜、孔500Hと称する。また、孔500の外側の蓋本体50の表面を適宜、蓋本体50の外面600と称する。蓋本体50の外面600は、上面61、下面62、下面63、接続面64、及び側面65を含む。
【0054】
図12に示すように、蓋本体50の外面の少なくとも一部に、蓋本体50とは異なる材料で形成された支持部材80が接続される。蓋本体50と支持部材80とは、溶接によって接続される。支持部材80は、ステンレス鋼製である。
【0055】
上述のように、蓋本体50の外面600には、複数の支持部材80(支持部材80A、支持部材80C、及び支持部材80Eなど)が接続される。
【0056】
単一の部材である蓋本体50に孔500が形成され、蓋本体50に支持部材80が接続された後、孔500の内面500Hと、孔500の開口の周囲に配置された蓋本体50の外面600とのそれぞれを覆うように保護膜60が形成される。保護膜60は、蓋本体50の腐食(錆)を抑制する機能(腐食抑制機能、防錆機能)を有する。
【0057】
本実施形態においては、孔500が形成された蓋本体50を無電解ニッケルめっき処理することにより、孔500の内面500H及び蓋本体50の外面600の少なくとも一部に保護膜60が形成される。
【0058】
図13に示すように、溶液(めっき液)に蓋本体50が浸漬される。めっき液に蓋本体50が浸漬されることによって、そのめっき液と孔500の内面500Hとが接触し、めっき液と蓋本体50の外面600とが接触する。これにより、孔500の内面500H及び蓋本体50の外面600に保護膜60が形成される。
【0059】
図5及び図9を参照して説明したように、孔52に溝96がある場合、蓋本体50をめっき液に浸漬したときに、溝96の内側から気体(空気)が排出されず、めっき液が溝96に十分に入り込むことができず、溝96の内面に保護膜60が形成されない可能性がある。本実施形態においては、溝97及び凹部98が設けられているため、めっき液は、上面61側の溝97から凹部98に流入し、その凹部98を通って溝96に入り込むことができる。すなわち、溝97及び凹部98は、めっき液を溝96に流入させることができる通路として機能する。これにより、溝96の内面にも保護膜60が円滑に形成される。
【0060】
本実施形態においては、蓋本体50に支持部材80が接続された状態で、蓋本体50が無電解ニッケルめっき処理される。すなわち、蓋本体50と支持部材80とが接続された状態で、蓋本体50及び支持部材80がめっき液に浸漬される。蓋本体50は炭素鋼製であり、支持部材80はステンレス鋼製である。無電解ニッケルめっき処理において、めっき膜(金属膜)は、炭素鋼の表面には形成されるものの、ステンレス鋼の表面には形成され難い。すなわち、ステンレス鋼は、炭素鋼よりもめっき膜が形成され難い材料である。したがって、蓋本体50と支持部材80とが接続された状態で蓋本体50及び支持部材80がめっき液に浸漬されることにより、孔500の内面500H及び蓋本体50の外面600に保護膜60が形成され、支持部材80の表面(接触面、シール面)に保護膜60が形成されることが抑制される。
【0061】
図14に示すように、無電解ニッケルめっき処理において、支持部材80がマスク部材100で覆われてもよい。すなわち、支持部材80の表面がマスク部材100で覆われた状態で、蓋本体50及び支持部材80がめっき液に浸漬されてもよい。支持部材80の表面がマスク部材100で覆われた状態で無電解ニッケルめっき処理が行われることにより、支持部材80の表面(接触面、シール面)に保護膜60が形成されることが抑制される。
【0062】
無電解ニッケルめっき処理は、少なくとも2回行われてもよい。すなわち、蓋本体50に保護膜60を形成するための無電解ニッケルめっき処理が行われた後、その保護膜60の上にさらに保護膜60を形成するための無電解ニッケルめっき処理が行われてもよい。つまり、所謂、二重めっき処理が行われてもよい。これにより、孔500の内面500H及び蓋本体50の外面の全部を覆うように保護膜60が形成される。例えば、1回の無電解ニッケルめっき処理では保護膜60にピンホールなどの欠陥が生じる可能性が高い場合、無電解ニッケルめっき処理が複数回行われることによって、保護膜60に欠陥が発生することが抑制される。
【0063】
無電解ニッケルめっき処理によって蓋本体50に保護膜60が形成された後、支持部材80の表面(接触面)に接触するようにガスケット70が配置される。また、蓋本体80に、ベントバルブ42及びドレンバルブ43が配置される手順、バルブカバープレート45及びバルブカバープレート46が蓋本体50に接続される手順、レジン82及びカバー部材81が蓋本体50に接続される手順、レジン84及びカバー部材83がバルブカバープレート45に接続される手順、レジン86及びカバー部材85がバルブカバープレート46に接続される手順などが適宜行われる。以上により、一次蓋部31が製造される。
【0064】
なお、バルブカバープレート45及びバルブカバープレート46のそれぞれが無電解ニッケルめっき処理され、バルブカバープレート45及びバルブカバープレート46のそれぞれに保護膜60が形成された後、それらバルブカバープレート45及びバルブカバープレート46が蓋本体50に接続されてもよい。カバー部材81が無電解ニッケルめっき処理され、そのカバー部材81に保護膜60が形成された後、そのカバー部材81が蓋本体50に接続されてもよい。カバー部材83が無電解ニッケルめっき処理され、そのカバー部材83に保護膜60が形成された後、そのカバー部材83がバルブカバープレート45に接続されてもよい。カバー部材85が無電解ニッケルめっき処理され、そのカバー部材85に保護膜60が形成された後、そのカバー部材85がバルブカバープレート46に接続されてもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、蓋本体50が単一の部材であるため、蓋本体50の強度の低下が抑制される。すなわち、複数の部材を溶接などにより接合することによって蓋本体を製造する場合、その接合部(溶接部)の劣化により、蓋本体の強度が低下する可能性がある。本実施形態によれば、蓋本体50が単一の部材なので、強度の低下が抑制される。
【0066】
また、本実施形態によれば、蓋本体50が単一の部材であり、複数の部材を接合する作業が省かれるため、作業コストの増大が抑制される。すなわち、複数の部材を溶接などにより接合することによって蓋本体を製造する場合、溶接する作業、溶接により蓋本体に生じたひずみを修正する作業、及び蓋本体(溶接部)を平坦化する作業などが必要となり、工数の増大、作業時間の増大がもたらされ、作業コストが増大する可能性がある。本実施形態によれば、蓋本体50が単一の部材なので、作業コストの増大が抑制される。
【0067】
また、本実施形態によれば、孔500の内面500H及び孔500の開口の周囲に配置された蓋本体50の外面600の少なくとも一部に保護膜60が設けられるので、蓋本体50の腐食(錆)の発生が抑制される。例えば、一次蓋部31が水中で処理される場合、狭隘部である孔500に水が残留する可能性が高い。その結果、孔500の内面500Hなどが腐食する(錆びる)可能性が高い。すなわち、一次蓋部31に孔500などの狭隘部が存在する場合、その狭隘部に残留した水によって、一次蓋部31が腐食する(錆びる)可能性が高くなる。また、水の残留のみならず、外気に晒されることによっても、蓋部13の少なくとも一部が腐食する(錆びる)可能性がある。本実施形態においては、腐食する可能性が高い孔500の内面500H及び孔50の開口の周囲に配置された蓋本体50の外面600の少なくとも一部に保護膜60が設けられるので、蓋本体51の腐食(錆)が抑制される。したがって、蓋部13を含むキャスク11の性能の低下が抑制される。
【0068】
本実施形態においては、蓋本体50を無電解ニッケルめっき処理することによって、保護膜60が形成される。蓋本体50を溶液(めっき液)に浸漬するだけで、狭隘部である孔500にめっき液が流入し、腐食する可能性が高い孔500の内面500H及び蓋本体50の外面600のそれぞれに保護膜60が均一に形成される。
【0069】
また、本実施形態においては、蓋本体50は炭素鋼製であり、炭素鋼はステンレス鋼に比べて安価である。その炭素鋼製の蓋本体50に、防錆機能を有する保護膜60が設けられるので、製品コストの増大も抑制される。
【0070】
本実施形態においては、ガスケット70が接触するように、ステンレス鋼製の支持部材80が配置される。支持部材80は、蓋本体50よりもガスケット70との間で高いシール機能を発揮できる。また、支持部材80は、蓋本体50よりも保護膜60が形成され難い材料で形成されている。支持部材80は、保護膜60よりもガスケット70との間で高いシール機能を発揮できる。本実施形態において、支持部材80に保護膜60が形成されることが抑制される。したがって、支持部材80とガスケット70との間において高いシール機能が得られ、キャスク11の性能の低下が抑制される。また、支持部材80には保護膜60が形成され難いため、蓋本体50と支持部材80とが接続(溶接)された後、無電解ニッケルめっき処理することにより、支持部材80に保護膜60が形成されることが抑制されつつ、蓋本体50に保護膜60が形成される。
【0071】
本実施形態においては、保護膜60の形成のために、無電解ニッケルめっき処理が行われる。めっき処理により形成された保護膜(めっき膜)60は、例えば塗装処理により形成された保護膜に比べて、硬度が高く、摩耗に強く、熱にも強い。したがって、保護膜60の劣化が抑制される。例えば、ボルト35と保護膜60とが接触しても、保護膜60の劣化(損傷)が抑制される。また、めっき処理により形成された保護膜60は、例えば塗装処理により形成された保護膜に比べて、蓋本体50から剥がれ難い。そのため、プール(水中)にキャスク11が置かれた状態において、そのプールが汚染されることが抑制される。
【0072】
なお、本実施形態においては、蓋部13の一次蓋部31の蓋本体50に保護膜60を形成する場合を例にして説明した。蓋部13の二次蓋部32の蓋本体に保護膜60が形成されてもよい。二次蓋部32の蓋本体が孔を有する場合、その蓋本体の孔の内面にも保護膜60が円滑に形成される。以下の実施形態においても同様である。
【0073】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0074】
図15は、本実施形態に係る一次蓋部31の一部を示す図である。本実施形態において、蓋本体50は、外面600の少なくとも一部に設けられた溝部(凹凸部)200を有する。溝部200が設けられた外面600にガスケット70が接触するように配置される。溝部200は、外面600の少なくとも一部をセレーション加工することにより形成される。
【0075】
本実施形態においては、外面600がセレーション加工されて溝部200が形成された後、無電解ニッケルめっき処理が行われる。無電解ニッケルめっき処理により、溝部200において保護膜60が均一に形成される。溝部200の形状が維持された状態で、その溝部200の表面に保護膜60が形成される。その後、溝部200に接触するようにガスケット70が配置される。
【0076】
以上説明したように、ガスケット70が接触する外面600の少なくとも一部に溝部200が設けられることにより、ガスケット70と外面600(溝部200)との間において高いシール機能を得ることができる。本実施形態においては、支持部材80を蓋本体50に接続する代わりに、蓋本体50に溝部200を形成することによって、高いシール機能を得ることができる。めっき処理により形成された保護膜60は蓋本体50から剥がれ難く、ガスケット70と溝部200との間において高い気密性を得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
11 キャスク(放射性物質収納容器)
12 胴部
13 蓋部
22 開口部
50 蓋本体
51、52、53、54、55、56 孔
60 保護膜
61 上面
62 下面
63 下面
64 接続面
65 側面
70 ガスケット
80 支持部材
200 溝部
500 孔
500H 内面
600 外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15