特許第6239291号(P6239291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239291
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】紙葉類取引装置及び紙葉類取引処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 13/00 20060101AFI20171120BHJP
   G07F 19/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G07D9/00 321A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-145976(P2013-145976)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18463(P2015-18463A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】藤村 宣昭
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−148918(JP,A)
【文献】 特開2012−104019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00,13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の入出金を行う入出金口部と、
入金された紙葉類の金種、真偽及び記番号に関する情報を識別する識別部と、
前記識別部により識別された記番号に関する情報に基いて、前記入金された紙葉類の交換金額を算出する交換金額算出部と、
前記交換金額算出部により算出した金額を表示し、利用者に入金取引又は交換取引の可否を選択させる表示部と、
前記選択結果に応じて、入金取引又は交換取引を実行する上位制御部と、を有する紙葉類取引装置であって、
前記記番号に関する情報は、前記識別部による記番号の可読文字数であることを特徴とする紙葉類取引装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記交換金額算出部により算出された、入金された紙葉類の算出金額が額面金額未満である場合、
前記算出金額に関する情報と、前記識別部による記番号の文字認識の結果である認識結果に関する情報、前記識別部により取得される記番号の画像である記番号画像に関する情報、前記可読文字数に関する情報の少なくとも一つを併せて表示することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取引装置。
【請求項3】
前記上位制御部は、
前記交換金額算出部により算出された、入金された紙葉類の算出金額が0より大きい場合、相当金額に応じた入金取引処理を実行させることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取引装置。
【請求項4】
前記紙葉類取引装置は、
入金された紙葉類のうち流通に適した紙葉類を収納する収納庫と、
入金された紙葉類のうち流通に適さない紙葉類を収納するリジェクト庫と、を有し、
前記上位制御部は、
前記算出金額が額面金額である場合、前記紙葉類を前記収納庫に収納させ、
前記算出金額が0より大きく額面金額未満である場合、前記紙葉類を前記リジェクト庫に収納させ、
前記算出金額が0である場合、前記紙葉類を前記入出金口部に返却させることを特徴とする請求項3に記載の紙葉類取引装置。
【請求項5】
前記紙葉類取引装置は、
可読文字数に応じた交換金額を算出するための交換基準値を記憶する記憶部と、
前記交換基準値を設定又は変更する交換基準設定部と、を有し、
前記交換基準設定部は、前記表示部に表示された、金種を選択する金種選択画面、前記選択された金種の記番号について桁数条件を入力する条件入力画面及び前記桁数条件に対応する相当金額を入力する交換金額入力画面により、交換基準値を設定することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取引装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等に設置される紙葉類取引装置及び紙葉類取引処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類が破れたり損傷したりして一部しか残っていない場合などでも、一定の条件を満たせば日本銀行や一般の金融機関等の窓口で正券に引き換えることができる。日本銀行における損傷紙葉類の引き換えの基準としては、表と裏の両面があることを条件としており、残存する紙葉類の面積に応じて適応される金額相当の正券と交換してもらうことが可能である。たとえば、破損した紙葉類の面積が3分の2以上残っている場合、全額を引き換えすることができ、5分の2以上かつ3分の2未満の場合、半額を引き換えすることができる。5分の2未満の場合、紙葉類としての価値は無いと判断され交換不可能となる。これに対して、特許文献1では、一部が消失した紙葉類の交換のためにわざわざ金融機関の窓口まで出向くことなく、一部が消失した紙葉類の残存率に応じた正券への交換を可能にした現金自動取引装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−104019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、利用者は一般の金融機関の窓口で該紙葉類を相当金額の正券に引き換えなければならず利便性が低下する。そこで、本願発明では、額面価値に満たない紙葉類の入金取引処理や交換取引処理が可能な紙葉類取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る紙葉類取引装置は、紙葉類の入出金を行う入出金口部と、入金された紙葉類の金種、真偽及び記番号に関する情報を識別する識別部と、識別部により識別された記番号に関する情報に基いて、入金された紙葉類の交換金額を算出する交換金額算出部と、交換金額算出部により算出した金額を表示し、利用者に入金取引又は交換取引の可否を選択させる表示部と、選択結果に応じて、入金取引又は交換取引を実行する制御部と、を有することを特徴とする。また、本発明に係る損傷紙葉類交換方法は、入金された紙葉類の金種、真偽及び記番号に関する情報を識別するステップと、識別された記番号に関する情報に基いて、入金された紙葉類の交換金額を算出するステップと、算出した金額を表示し、利用者に入金取引又は交換取引の可否を選択させるステップと、選択結果に応じて、入金取引又は交換取引を実行させるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、額面価値に満たない紙葉類の入金取引処理や交換取引処理が可能な紙葉類取引装置及び紙葉類取引処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本願の実施例に係る、紙葉類取引装置の構成図
図2】本願の実施例に係る、取引内容に関する選択画面例
図3】本願の実施例に係る、入金額が入金紙葉類の額面通りである場合の表示画面例
図4】本願の実施例に係る、入金額が入金紙葉類の額面通りでない場合の表示画面例
図5】本願の実施例に係る、記番号の識別結果を示す表示画面例
図6】本願の実施例に係る、入金処理のフロー図
図7】本願の実施例に係る、識別処理フロー図
図8】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の保守内容選択画面例
図9】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の金種選択画面例
図10】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の金種決定画面例
図11】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の設定画面例
図12】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の入力画面例
図13】本願の実施例に係る、交換基準設定する場合の別の入力画面例
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、紙葉類の一例として紙幣を用いて説明する。まず、図1を用いて本願の実施例に係る紙葉類取引装置の構成について説明する。紙葉類取引装置100は、取引の種類、取引内容、取引結果などを表示する表示部101、利用者からの入力を受け付ける操作部102、利用者からの紙葉類の受け入れ、利用者への紙葉類の放出を行う入出金口部103を有し、さらに紙葉類の画像情報や磁気データ、記番号の画像情報を取得する識別センサ106、記番号の文字認識を実行する記番号認識部107、記番号画像情報と文字認識結果等を記憶する識別記憶部108、紙葉類の金種と真偽を判定する紙葉類判定部109、これら106〜109を制御する識別制御部105を具備する識別部104を有する。
【0009】
また、紙葉類の搬送を行う搬送路110(110a、110b、110c)、紙葉類を一時的に収納する一時保管庫112、入金された紙葉類および出金する紙葉類を収納、保管する収納庫113〜116、リジェクト紙葉類を収納するリジェクト庫117を有し、可読文字数に応じた相当金額を算出する交換金額算出部119、相当金額を算出するために使用される交換基準値を記憶する上位記憶部120、交換基準値を設定又は変更するための交換基準設定部121、端末装置124と通信回線123を介して通信を行う通信部122、これら119〜122を制御する上位制御部118を有する。さらに、通常運用モードと保守用モードの切り替え用のスイッチとなる切り替えキー125を備える。なお、本実施例では、搬送路110aと110bは入出金口部103で区分する。
【0010】
操作部102は、例えば、液晶(LCD)やCRTなどの表示部101と一体となったタッチパネルで構成しても良い。また、切り替えキー125が保守モードに切り替えられることにより、操作部102は、保守員、係員あるいは銀行員への保守用のメッセージ、操作ガイダンスなどの情報を表示することも可能である。後述するが、交換基準の設定又は変更も操作部102によって操作される。なお、この操作部102を複数のユニットで構成し、エンドユーザ用と、保守員などとに分けて使用するにようにしても良い。この場合、切り替えキー125を装置に実装する必要がなくなる。また、切り替えキー125は、遠隔操作できるものとしても良い。
【0011】
識別制御部105は、入金又は出金、交換取引処理において、搬送路110にて搬送される紙葉類に対して、識別部104で図示しない光源から光を照射し、単一または複数の識別センサ106により、紙葉類の印刷パターンの画像情報や紙葉類に印刷された記番号の画像情報等を読み取るように制御する。そして、識別制御部105は、紙葉類のある領域内の画像情報に基づき、紙葉類判定部109に記憶される所定の演算により複数の算出値(例えば、平均濃度値、積分濃度値、平均透磁率、積分透磁率)を算出し、金種判定や真偽判定する。また、記番号の画像情報に基づき、記番号認識部107に記憶される所定の演算に基き記番号を認識し、各桁の可読可否を判定する。各桁の可読可否を含めた文字認識結果と記番号の画像情報は識別記憶部108に記憶される。識別部104の識別センサ106としては、例えば、光(可視光、紫外線など)の反射光又は/及び透過光を検出する光センサや、紙葉類の磁気情報を取得する磁気センサ等を用いることが好ましい。
【0012】
次に、上位制御部118はコンピュータを用いて、即ち、図示しないCPUやプログラム等と共同して、交換金額算出部119、上位記憶部120、交換基準設定部121、通信部122を制御する。また、紙葉類の入出金なども含めた紙葉類取引装置全体の制御を行い、記番号認識部107により認識された記番号の各桁の可読可否情報と記番号の画像情報を取得する手段を備えている。交換金額算出部119は可読文字数に応じて適用される相当金額を、可読可否情報に基づき、上位記憶部120に記憶する交換基準値を使用して算出する。また、上位制御部118は交換基準設定部121を制御して、交換基準値の設定又は変更を行う。
【0013】
上位記憶部120は、紙葉類取引装置100で取引処理される紙葉類の画像情報や、該紙葉類の記番号の画像情報および紙葉類の記番号認識結果等の紙葉類情報を記憶する。識別制御部105は、紙葉類情報を読み取る紙葉類情報読取部(図示省略)を制御し、識別時の識別状況に基づいて上位記憶部120へ紙葉類情報を送信する。上位制御部118は送信された紙葉類情報を管理する紙葉類情報管理プログラムを備えている。ここで、記番号に異常が発生し記番号読取不可となり、可読文字数に応じた相当金額が額面金額よりも少ない紙葉類を取引処理する場合、明確に異常を捉える必要がある。そのため、上位制御部118は、記番号の画像情報と、記番号認識結果等を上位記憶部120に記憶して紙葉類情報管理する。たとえば、記番号部分が欠損である場合や、耳折れにより記番号部分が隠れている場合、上位制御部118は顧客クレーム対応のために記番号の画像情報と、記番号認識結果等を上位記憶部120に記憶しておくことが有効である。
【0014】
搬送路110(110a、110b、110c)は、搬送ローラ111(111a、111b、111c)と、図示しない搬送ベルトからなる。また、搬送路110へ搬送される紙葉類は、図示しないセンサにより、その搬送状態が検知可能となっている。収納庫113〜116、一時保管庫112は、搬送路から紙葉類を受け入れ、搬送路に紙葉類を放出する。すなわち、一時保管庫112、収納庫113〜116は流通に適した紙葉類を収納するリサイクル庫となっている。一方、リジェクト庫117は、流通に適さない紙葉類を収納する、一旦収納した紙葉類を搬出することはできない非リサイクル庫である。
【0015】
次に、本願の実施例に係る紙葉類取引装置の操作部102に表示される画面の例について、図2〜5を用いて説明する。操作部102は、例えばタッチパネル式LCDであり、利用者に対して取引内容を表示すると共に、利用者の入力を受け付けるボタンを表示し、該ボタンが押下されたか否かの情報を取得する。図2は利用者が紙葉類取引装置100の前に立つなどして取引が開始する際、取引内容の選択を受け付ける画面の例である。上位制御部118は、操作部102に取引内容画面を表示し、取引内容の選択を受け付ける。なお、取引内容画面には、たとえば「出金」ボタン、入金取引のための「入金」ボタン、振込取引のための「振込」ボタン、「通帳記帳」ボタン、記番号損傷紙葉類等の額面価値に満たない紙葉類と正券(硬貨を含んでも良い)の交換のための「交換」ボタン、口座の残高照会のための「残高照会」ボタン等の取引を選択する取引ボタンが配列した状態で表示される。
【0016】
図3は、利用者が入金を希望する紙葉類を入出金口部103に投入し、紙葉類取引装置100が投入された紙葉類の金額を確認した際に表示される画面の例であり、利用者が投入した紙葉類の金額が表示された金額と相違ないかを確認するように促す表示例である。一方で、図4は、紙葉類取引装置100が投入された紙葉類の金額を確認した際に表示される画面の例である点は図3と同じだが、利用者が投入した紙葉類の中に、額面金額よりも少ない価値(金額)の紙葉類がある場合に表示される画面例である。即ち、記番号損傷等により記番号の一部又は全部を読み取ることができず、可読文字数に応じて適用される相当金額が額面金額よりも少なくなる紙葉類が投入紙葉類の中に1枚でも存在する場合、図4に示すように、操作部102は「お客様の投入額は***円ですが、記番号を読み取ることができないために、額面価値よりも少なくなる紙葉類がございます。そのため、入金額は***円となります。宜しければ「入金」ボタンを、そうでなければ「取消」ボタンを押して下さい。また、記番号の読み取り結果をご確認したい場合は「結果」ボタンを押して下さい。」と表示する。利用者は、表示された入金額に納得し入金する場合は「入金」ボタンを、入金を拒否し投入紙葉類を返却させる場合は「取消」ボタンを、記番号の読み取り結果を表示させ、紙葉類価値が額面金額よりも少なくなる理由説明を受ける場合は「結果」ボタンを押下するように促される。なお、「交換」ボタンを別途設けることも可能であり、「交換」ボタンが押下された場合は額面価値よりも少なくなる紙葉類の相当金額を算出して、入出金口部103へ放出する構成としても構わない。
【0017】
図5は、図4の「結果」ボタンが押下された際に表示される画面の例である。上位制御部118は、「結果」ボタンが押下された場合、図5に示すような読取結果を操作部102に表示する。例えば、読取結果画面に、投入順番、紙葉類全体の紙葉類画像情報、記番号画像情報、文字認識結果、額面(金種)、価値(可読文字数に応じて適用される相当金額)、可読文字数等の情報が表示される。この際に、画面上側から投入順に表示しても良いし、額面金額の大きい順に表示しても良く、順番は適宜変更可能である。ここで、紙葉類画像情報を表示する場合、この大きなデータサイズの画像を記憶、通信する必要があるため、メモリや通信に対して運用上大きな負担になる。そのため、紙葉類画像情報は低解像度の画像情報やサムネイルとしてもよい。また、紙葉類取引装置100が額面金額と同額と認識した紙葉類は、メモリや通信に対して運用上の負担を避けるため、読取結果画面に表示しない。これにより、取引時の顧客クレーム対応のために、必要最小限の小さなデータ量で対処することが可能である。また、文字認識結果の列には、記番号認識部107が認識した文字をテキスト表示するが、不可読文字は「*」で埋められ表示される。可読文字数の列には、記番号の全桁数を分母、可読文字数を分子として表示してもよい。なお、ここでいう記番号画像情報とは記番号を含む周辺の一部領域の画像情報をいう。
【0018】
このように、紙葉類の入出金を行う入出金口部と、入金された紙葉類の金種、真偽及び記番号に関する情報を識別する識別部と、識別部により識別された記番号に関する情報に基いて、入金された紙葉類の交換金額を算出する交換金額算出部と、交換金額算出部により算出した金額を表示し、利用者に入金取引又は交換取引の可否を選択させる表示部と、選択結果に応じて、入金取引又は交換取引を実行する上位制御部と、を有する紙葉類取引装置、あるいは、紙葉類の価値を算出して交換金額を入金された紙葉類の金種、真偽及び記番号に関する情報を識別するステップと、識別された記番号に関する情報に基いて、入金された紙葉類の交換金額を算出するステップと、算出した交換金額を表示し、利用者に入金取引又は交換取引の可否を選択させるステップと、選択結果に応じて、入金取引又は交換取引を実行するステップと、を有する紙葉類取引処理方法、を採用することにより、記番号に関する情報に応じて入金紙葉類の交換金額が算出され、それに相当する金額の入金取引又は交換取引が可能となり、利用者の利便性が向上する。また、表示部が、交換金額算出部により算出された、入金された紙葉類の算出金額が額面金額未満である場合、算出金額に関する情報と、認識結果に関する情報、記番号画像に関する情報、可読文字数に関する情報の少なくとも一つを併せて表示することにより、これらの情報が利用者が入金または交換の可否を判断するための材料となり、利便性がさらに向上する。
【0019】
次に、紙葉類取引装置100で行われる入金時の動作を図6、7を用いて説明する。図6、7は紙葉類取引装置100の入金取引処理、識別処理のフロー図である。まず、利用者に入金か交換か出金かなどを選択するよう促す取引内容選択画面200(図2参照)を表示する(S601)。利用者はこの画面によって、紙葉類を入金するか、交換するか、出金するかなどを画面上のボタンによって選択する。ここでは「入金」ボタンが選択された場合(S602)の例を示す。入出金口部103は、利用者に紙葉類を投入させて、投入された紙葉類を受け取る(S603)。上位制御部118と搬送路110は入出金口103に投入されている紙葉類を一枚ずつ繰り出して識別部104に搬送する(S604)。ここで、S605の識別処理が行われるが詳細は図7を用いて後述する。
【0020】
識別処理終了後、入出金口部103にある全ての紙葉類について識別処理が終了した否かを判定する(S606)。終了していなければ入出金口103にある紙葉類を再び繰り出して(S604)、識別処理を繰り返す(S605)。そして、全ての紙葉類について識別処理が終了したと判定した場合、操作部102に、入出金口103に投入された金額を表示する(S608)(S609)。ここで、操作部102に表示する表示画面は識別処理の結果に応じて異なる。具体的には、利用者が投入した紙葉類の中に、額面金額よりも少ない金額の紙葉類があるか否かに応じて異なる。記番号損傷等により記番号文字の一部又は全部を読み取ることができず、可読文字数に応じて適用される相当金額が額面金額よりも少なくなる紙葉類が投入された紙葉類の中に1枚でも存在すると判定した場合(S607)、図4で示した選択画面を操作部102に表示する(S608)。一方、1枚も存在しないと判定した場合、図3で示した選択画面を操作部102に表示する(S609)。
【0021】
次に、操作部102に前述の表示画面(図3、4)を示した後、利用者に確認を促す。利用者は返却された紙葉類と入金金額とを確認し、入金金額が正しくないと判断すれば取消ボタンを押下し(S611)、正しいと判断すれば入金ボタンを押下する(S610)。また、紙葉類価値が額面金額よりも少なくなる理由を確認する場合は「結果」ボタンを押下し(S612)、記番号の認識結果500を表示する(S613)。
具体的には、選択画面の表示後、上位制御部118は、入金ボタンが押下されたか否かを判定する(S610)。入金ボタンが押下されたと判定した場合、入金処理を実行し、一時保管庫112に保管した紙葉類を収納庫113〜116またはリジェクト庫117へ搬送し収納する。即ち、利用者が投入した紙葉類の紙葉類価値が額面金額よりも少ないと判定された場合(S615)、その紙葉類は流通に適さない紙葉類と判断されリジェクト庫117へ搬送し収納する。一方、額面金額と同額と判定された場合、その紙葉類は流通に適する紙葉類と判断され、還流庫として運用する収納庫113〜116へ搬送し収納する。
【0022】
また、S610で入金ボタンが押下されなかった場合は、上位制御部118は、取消ボタンが押下されたか否かを判定する(S611)。取消ボタンが押下されたと判定した場合、利用者が入金取引処理を取り消した場合であり、一時保管庫112に保管した紙葉類を入出金口部103に送り、利用者に返却する(S619)。また、S610、S611で入金ボタン、取消ボタンが押下されなかった場合は、上位制御部118は、結果ボタンが押下されたか否かを判定する(S612)。結果ボタンが押下されたと判定した場合、まず上位制御部118は識別記憶部108に記憶された投入順番501と、紙葉類の画像情報502と、記番号の画像情報503と、記番号認識部によって認識された文字情報504と、額面(金種判定処理によって確定された金種情報)505と、記番号の可読文字数507とを、図示しない内部通信回線を介して取得し、上位記憶部120に記憶する。次に、上位記憶部120に記憶した文字情報504と、予め上位記憶部に記憶された交換基準値とに基づいて、交換金額算出部119を制御し、紙葉類価値506(可読文字数に応じて適用される相当金額)を算出し上位記憶部120に記憶する。そして、501〜507の各情報を操作部102に表示する。このように、取引時の顧客クレーム対応のために記番号の認識結果500を上位記憶部120に記憶しておくことが好ましい。また、記番号の認識結果500は、紙葉類価値が額面金額に満たないときに記憶するように設定することにより、必要最小限のデータ量で対処可能となる。このため、データ管理の運用上において負担が減り、高速化および低コスト化が実現可能となる。
【0023】
次に、S605の識別処理について図7を用いて詳細に説明する。まず、識別部104の中の紙葉類判定部109により、入金された紙葉類の各々について金種を判定する(S701)。その後、金種が確定したか否かを判定する(S702)。金種が確定しなかった、即ち、金種が不明であった場合は、その紙葉類は受取拒否とし、入出金口部103に送り(S710)、利用者に返却する。金種が確定した場合は、判定後の金種に基いて、真偽判定処理を実行する(S703)。真偽判定処理の結果、偽券であると判断された場合は、入出金口部へ返却される(S710)。一方で、真券であると判断された場合は、記番号認識部107によって、記番号認識処理を行う(S705)。続いて、認識された記番号の画像情報と各桁の認識文字や可読可否等の文字認識結果を識別記憶部108に記憶する(S706)。そして、交換金額算出部119により、識別記憶部108に記憶された認識結果と、予め上位記憶部120に記憶された交換基準値に基づいて、可読文字数に応じて適用される相当金額を算出する(S707)。相当金額が0(ゼロ)、すなわち紙葉類としての価値がないと判定した場合(S708)、その紙葉類は受取拒否とし、入出金口部103に送り、利用者に返却する。相当金額が額面金額と同額又は額面金額に満たないが0(ゼロ)ではないと判定した場合には(S708)、紙葉類を一時保管庫112に搬送して保管し(S709)、S606の処理へ戻る(S711)。
【0024】
このように、上位制御部が、交換金額算出部により算出された、入金された紙葉類の算出金額が0より大きい場合(紙葉類として価値がある場合)、相当金額に応じた入金取引処理を実行させる構成を採用することにより、可読文字数に応じて適用される相当金額が額面金額に満たない紙葉類でも入金取引処理が可能となり、利用者の利便性が向上する。また、入金された紙葉類のうち流通に適した紙葉類を収納する収納庫と、入金された紙葉類のうち流通に適さない紙葉類を収納するリジェクト庫と、を有し、上位制御部が、算出金額が額面金額である場合、紙葉類を前記収納庫に収納させ、算出金額が0より大きく額面金額未満である場合、紙葉類を前記リジェクト庫に収納させ、算出金額が0である場合、紙葉類を前記入出金口部に返却させる構成を採用することにより、可読文字数に応じて適用される相当金額が額面金額に満たない紙葉類でも入金取引処理が可能となるだけでなく、額面金額未満である損傷紙葉類については流通に適さない紙葉類として、非リサイクル庫に収納して、流通する損傷紙葉類を確実に回収することが可能となる。
【0025】
次に、紙葉類取引装置の操作部102に表示される画面例である図8〜11を用いて、交換基準の設定、変更にかかる操作、処理、動作手順について説明する。紙葉類取引装置をメンテナンスする保守員又は銀行の責任者等が交換金額算出部119で使用する交換基準値の設定又は変更を行う場合、紙葉類取引装置100の裏側下の切替キー125を「通常取引モード」から「保守モード」に切り替えて行う。紙葉類取引装置100は通信部122を具備しているため、外部の端末装置124やLAN等に接続されるサーバ構成では、これら外部からの遠隔操作により保守モードに切り替える、或いは、後述の交換基準値の設定、変更を行うことも可能である。ここでは、一例として、操作部102より交換基準値の設定、変更を行う場合の例を示す。「通常取引モード」は、利用者が紙葉類の入出金可能な状態であり、「保守モード」は、交換基準値の設定及び変更やセンサ検査を行う状態である。保守員が切替キー125にて「通常取引モード」から「保守モード」に切り替えることで、上位制御部118がそれを検知し、操作部102に保守用の画面を表示する。なお、図8で示す画面は保守内容選択画面ともいう。また、紙葉類取引装置100の保守は一般の利用者に操作できないように、画面を表示する前に暗証番号の入力ガイダンスを表示させる構成が良い。さらに、保守には交換基準値設定以外の収納庫、搬送路、カード機構など種々の保守も含むことから、画面を表示する前に保守として対象のユニットを選択させるガイダンスを表示する構成が良い。
【0026】
ここで、図8は保守内容を選択する画面例であり、保守員が表示画面にて「交換基準値設定(変更も含む)」キーを押下する。上位制御部118はそのキー押下を操作部102より検知し、どの金種に対して交換基準値の設定を行うかを選択させる金種選択画面(図9)を操作部102に表示させる。これは、前述の通り、紙葉類の金種に応じて交換基準値が異なるためである。次に、例えば「50ドル」キーを押下すると、50ドル紙葉類の全体画像に、紙葉類2箇所に印刷された記番号を区別するID(記番号1、記番号2)1001を付加した、図10のような画像が操作部102に表示される。なお、図10で示す画面は記番号ID表示画面という。図10のID1001は、図11で示す交換基準設定画面にて、何れの記番号に対して条件設定するかを明確に区別するために割り当てられるIDである。図10において、「OK」キーを押下すると、上位制御部118は交換基準設定部121を制御し、交換基準設定部は50ドル紙葉類に適用される交換基準値(交換条件とも言う)を上位記憶部から読み出して、交換基準設定画面を表示する。新規に交換基準を設定する場合には、交換基準設定画面の各入力部を空白状態にして表示する。この交換基準設定画面で、保守員または銀行員は紙葉類価値とその価値を決定するための可読条件を設定する。
【0027】
図11を用いて具体的に説明すると、紙葉類の2箇所に印刷された記番号それぞれ別々に条件設定できるように、記番号1の条件入力部1101と、記番号2の条件入力部1102とを設ける。また、記番号文字列を構成するアルファベット部と数字部それぞれ別々に条件設定できるように、記番号1の1つ目の条件入力部1103と、2つ目の条件入力部1104と、どの桁に対して条件設定するかの対象桁入力部1105(対象桁チェックボックスともいう)と、桁に対して最低限読み取ることが必要な桁数条件入力部1106とを設ける。さらに、複数の条件に対する組み合わせ条件入力部1107と、その条件下での紙葉類価値入力部1108とを設ける。条件を追加または削除できるように、追加ボタン1109、削除ボタン1110、設定ボタン1111を設ける。
【0028】
次に、実際に交換基準を設定する場合を想定して図12に基き具体的に説明する。50ドル紙葉類には、全9桁の記番号が紙葉類の表面左下と表面右上の2箇所に印刷されており、2つとも9文字中5文字以上9桁未満を認識することができた場合には半額25ドルの価値を持ち、どちらか一方でも可読文字数が5文字未満の場合には価値無しとするような運用基準が適用された場合に、操作部102を用いて、可読条件と紙葉類価値を設定する。この例によると、記番号1の条件入力部1201の対象桁入力部1203において、1桁目から9桁目までのチェックボックスにチェックを入れ、桁数条件入力部1204に「5」を入力する。記番号2の条件入力部1202でも同様に全桁のチェックボックスにチェックを入れ、桁数条件入力部に「5」を入力する。次に、組み合わせ条件入力部1205に論理式「1(1)*2(1)」を入力する。ここでの「*」は論理積、「+」は論理和を意味する。そして、紙葉類価値入力部1206に半額の「25」を入力して、設定ボタン1207を押下する。これにより、50ドル紙葉類の半額条件の設定が終了する。
【0029】
次に、紙葉類価値が0(ゼロ)、即ち、紙葉類としての価値がない場合の条件設定に移る。まず、図12の追加ボタン1208を押下すると、図13に示すように、条件入力部1300が表示される。図13に示すように、記番号1の条件入力部1301の対象桁入力部1303において、1桁目から9桁目までのチェックボックスにチェックを入れ、桁数条件入力部1304に「4」を入力する。記番号2の条件入力部1305でも同様に全桁のチェックボックスにチェックを入れ、桁数条件入力部に「4」を入力する。次に、組み合わせ条件入力部1306に論理式「1(1)+2(1)」を入力する。そして、紙葉類価値入力部1307に「0」を入力して、設定ボタン1308を押下する。これにより、50ドル紙葉類の紙葉類価値がない条件の設定が終了する。
【0030】
このように、可読文字数に応じた交換金額を算出するための交換基準値を記憶する記憶部と、交換基準値を設定又は変更する交換基準設定部と、を有し、交換基準設定部は、表示部に表示された、金種を選択する金種選択画面、選択された金種の記番号について桁数条件を入力する条件入力画面及び桁数条件に対応する相当金額を入力する交換金額入力画面により、交換基準値を設定する構成を採用することにより、紙葉類取引装置の操作部からまたは外部の端末装置から交換基準設定部を制御して、可読文字数に応じた相当金額を算出する際に使用される交換基準値を設定、変更することが可能となり、銀行等の運用に柔軟に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
100…紙葉類取引装置、101…表示部、102…操作部、103…入出金口、104…識別部、105…識別制御部、106…識別センサ、107…記番号識別部、108…識別記憶部、109…紙葉類判定部、110…搬送路、111…搬送ローラー、112…一時保管庫、113〜116…収納庫、117…リジェクト庫、118…上位制御部、119…交換金額算出部、120…上位記憶部、121…交換基準設定部、122…通信部、123…通信回路、124…端末装置、125…切替キー
図1
図2
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図10
図11
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図13