(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に前記外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有し、ハブ輪および内輪からなる内方部材と、前記外方部材の外側軌道面と内方部材の内側軌道面との間に介装された複列の転動体とからなる車輪用軸受を備え、前記ハブ輪の軸孔に等速自在継手の外側継手部材のステム部を嵌合することにより前記車輪用軸受に等速自在継手をトルク伝達可能に結合させた車輪用軸受装置において、
前記外側継手部材のステム部に形成されて軸方向に延びる複数の凸部を、前記凸部に対して締め代を有する複数の凹部が形成された前記ハブ輪の軸孔に圧入し、そのハブ輪の軸孔に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成し、圧入の開始を誘導するガイド部を前記ステム部の先端部位に設け、前記ガイド部は、ハブ輪の軸孔の凹部との間に隙間を有する凸部としたことを特徴とする車輪用軸受装置。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪用軸受装置は、
図9および
図10に示すように、ハブ輪101、内輪102、複列の転動体103,104および外輪105からなる車輪用軸受106と固定式等速自在継手107とで主要部が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ハブ輪101は、その外周面にアウトボード側の内側軌道面108が形成されると共に、車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ109を備えている。この車輪取付フランジ109の円周方向等間隔に、ホイールディスクを固定するためのハブボルト110が植設されている。このハブ輪101のインボード側外周面に形成された小径段部111に内輪102を嵌合させ、この内輪102の外周面にインボード側の内側軌道面112が形成されている。
【0004】
内輪102は、クリープを防ぐために適当な締め代をもって圧入されている。ハブ輪101の外周面に形成されたアウトボード側の内側軌道面108と、内輪102の外周面に形成されたインボード側の内側軌道面112とで複列の軌道面を構成する。この内輪102をハブ輪101の小径段部111に圧入し、その小径段部111の端部を外側に加締め、その加締め部113でもって内輪102を抜け止めしてハブ輪101と一体化し、車輪用軸受106に予圧を付与している。
【0005】
外輪105は、内周面にハブ輪101および内輪102の内側軌道面108,112と対向する複列の外側軌道面114,115が形成され、車体の懸架装置から延びるナックル(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ116を備えている。この車体取付フランジ116は、前述のナックルに嵌合されてボルトにより固定される。
【0006】
車輪用軸受106は、複列のアンギュラ玉軸受構造で、ハブ輪101および内輪102の外周面に形成された内側軌道面108,112と外輪105の内周面に形成された外側軌道面114,115との間に転動体103,104を介在させ、各列の転動体103,104を保持器117,118により円周方向等間隔に支持した構造を有する。
【0007】
車輪用軸受106の両端開口部には、外輪105とハブ輪101および内輪102との環状空間を密封する一対のシール119,120が外輪105の両端部内径に嵌合され、内部に充填されたグリースの漏洩ならびに外部からの水や異物の侵入を防止するようになっている。
【0008】
等速自在継手107は、ドライブシャフトを構成する中間シャフト121の一端に設けられ、内周面にトラック溝122が形成された外側継手部材123と、その外側継手部材123のトラック溝122と対向するトラック溝124が外周面に形成された内側継手部材125と、外側継手部材123のトラック溝122と内側継手部材125のトラック溝124との間に組み込まれたボール126と、外側継手部材123の内周面と内側継手部材125の外周面との間に介在してボール126を保持するケージ127とで構成されている。
【0009】
外側継手部材123は、内側継手部材125、ボール126およびケージ127からなる内部部品を収容したマウス部128と、マウス部128から軸方向に一体的に延びるステム部129とで構成されている。内側継手部材125は、中間シャフト121の軸端が圧入されてスプライン嵌合によりトルク伝達可能に結合されている。
【0010】
等速自在継手107の外側継手部材123と中間シャフト121との間に、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するための樹脂製またはゴム製の蛇腹状ブーツ130を装着して、外側継手部材123の開口部をブーツ130で閉塞した構造としている。
【0011】
外側継手部材123のステム部129には、軸方向に延びる複数の凸部132(スプライン)が形成されている。一方、ハブ輪101の軸孔133には、ステム部129の凸部132に対して締め代を有する複数の凹部135が形成されている。この車輪用軸受装置では、外側継手部材123のステム部129をハブ輪101の軸孔133に圧入し、その軸孔133の凹部135にステム部129の凸部132の形状を転写することにより、接触部位全域で密着する凹凸嵌合部Nを形成し、外側継手部材123とハブ輪101とをトルク伝達可能に結合させている。また、外側継手部材123のステム部129に形成された雌ねじ部137にボルト138を螺合させ、ボルト138をハブ輪101に係止させた状態で締め付けることで外側継手部材123をハブ輪101に固定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来の車輪用軸受装置では、外側継手部材123のステム部129をハブ輪101の軸孔133に圧入するに際して、ハブ輪101の軸孔133の圧入開始側に、その圧入の開始を誘導するガイド部を設けている。このガイド部は、
図10および
図11(A)(B)に示すように、凹部135と同位相で軸方向に延びる複数の凹部134が形成され、ステム部129の凸部132よりも大きめの凹部134となっている。つまり、凸部132と凹部134との間に隙間が形成されている。
【0014】
外側継手部材123のステム部129をハブ輪101の軸孔133に圧入するに際して、
図11(A)(B)に示すように、前述のガイド部の凹部134により、ステム部129の凸部132がハブ輪101の凹部135に確実に圧入されるように誘導することができるので、安定した圧入が可能となって圧入時の芯ずれや芯傾きなどを防止することができる。
【0015】
ここで、
図12(A)(B)に示すように、ステム部129の凸部132が圧入される凹部135は、ステム部129の凸部132に対して締め代を有することから、その凸部132よりも小さめの凹部135となっている。これに対して、ステム部129の凸部132の圧入開始を誘導するガイド部の凹部134は、ステム部129の凸部132よりも大きめの凹部134となっている。
【0016】
このことから、ステム部129の凸部132が圧入される凹部135と、そのステム部129の凸部132の圧入開始を誘導する凹部134とを、ハブ輪101の軸孔133の内周面に形成するためには、二回のパンチ加工を行わなければならない。このように、二回のパンチ加工を実施しなければならないことから、ハブ輪101の加工コストが上昇するという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ハブ輪の加工コストの低減を容易に図り得る車輪用軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有し、ハブ輪および内輪からなる内方部材と、外方部材の外側軌道面と内方部材の内側軌道面との間に介装された複列の転動体とからなる車輪用軸受を備え、ハブ輪の軸孔に等速自在継手の外側継手部材のステム部を嵌合することにより車輪用軸受に等速自在継手をトルク伝達可能に結合させた車輪用軸受装置において、
外側継手部材のステム部に形成されて軸方向に延びる複数の凸部を、その凸部に対して締め代を有する複数の凹部が形成された
ハブ輪の軸孔に圧入し、その
ハブ輪の軸孔に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成し、圧入の開始を誘導するガイド部をステム部の先端部位に設け
、ガイド部は、ハブ輪の軸孔の凹部との間に隙間を有する凸部としたことを特徴とする。
【0019】
本発明では、
外側継手部材のステム部に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、その凸部に対して締め代を有する凹部を
ハブ輪の軸孔に予め形成しておく。
外側継手部材のステム部を
ハブ輪の軸孔に圧入することにより、接触部位全域で密着する凹凸嵌合部が形成される。この圧入に先立って、ステム部の先端部位にガイド部を設けていることから、圧入の開始をスムーズに誘導することができ、安定した圧入が可能となって圧入時の芯ずれや芯傾きなどを防止することができる。また、ガイド部をステム部に設けたことにより、ハブ輪の軸孔にガイド部を設ける必要がないので、ハブ輪の軸孔の加工が簡易となる。
また、外側継手部材のステム部に凸部が設けられると共にハブ輪の軸孔に凹部が設けられた構造を採用したことにより、ガイド部は、ハブ輪の軸孔の凹部との間に隙間を有する凸部とする。このように、外側継手部材のステム部に凸部が設けられると共にハブ輪の軸孔に凹部が設けられた構造とした場合、ハブ輪の軸孔の凹部との間に隙間を有する凸部をステム部の先端部位に形成することになる。これにより、ハブ輪の軸孔にガイド部の凹部を設ける必要がなくなる。その結果、ガイド部の凸部を除くステム部の凸部に対して締め代を有する凹部のみをハブ輪の軸孔に形成すればよく、その軸孔の加工の簡易化が図れる。
【0020】
本発明における凹部は、凸部の周方向側壁部のみに対して締め代を有することが望ましい。ここで、「凸部の周方向側壁部のみ」とは、凸部の径方向先端部を除いた部位を意味する。このように、凸部の周方向側壁部のみに対して締め代を有する凹部とすれば、圧入時、凸部の周方向側壁部のみが凹部に食い込んでその凸部の周方向側壁部のみの形状が転写される。つまり、凸部の周方向側壁部を除く他の部位である径方向先端部の形状が凹部に転写されることはない。その結果、凸部の周方向側壁部および径方向先端部に対して締め代を有する場合よりも、圧入荷重を下げることができるので、ハブ輪と外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方を他方に圧入することが容易となって、車輪用軸受と等速自在継手の組み付け性が向上する。
【0022】
本発明において、ステム部のガイド部の後端部位に、圧入による凸部形状の転写によって生じる食み出し部を収容する収容部を設けることが望ましい。このようにすれば、圧入による凸部形状の転写によって生じる食み出し部を収容部に保持することができ、その食み出し部が装置外の車両内などへ入り込んだりすることを阻止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハブ輪と外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に形成されて軸方向に延びる複数の凸部を、その凸部に対して締め代を有する複数の凹部が形成された他方に圧入し、その他方に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成したことにより、外側継手部材とハブ輪を強固に結合一体化することができる。また、圧入の開始を誘導するガイド部をステム部の先端部位に設けたことにより、安定した圧入が可能となって圧入時の芯ずれや芯傾きなどを防止することができると共に、ハブ輪の軸孔にガイド部を設ける必要がないので、ハブ輪の軸孔の加工が簡易となる。その結果、ハブ輪の加工コストを低減することができ、車輪用軸受装置全体のコスト低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る車輪用軸受装置の実施形態で、車輪用軸受に等速自在継手を組み付けた後の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の車輪用軸受に等速自在継手を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図2のII−II線に沿う拡大断面図である。
【
図5】
図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【
図6】(A)はハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部のガイド部を挿入した状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のIV−IV線に沿う断面図である。
【
図7】(A)はハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部の凸部を圧入している状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のV−V線に沿う断面図である。
【
図8】
図1のVI−VI線に沿う拡大断面図である。
【
図9】従来の車輪用軸受装置の全体構成で、車輪用軸受に等速自在継手を組み付けた後の状態を示す縦断面図である。
【
図10】
図9の車輪用軸受に等速自在継手を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
【
図11】(A)はハブ輪の軸孔のガイド部に外側継手部材のステム部を挿入した状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のVII−VII線に沿う断面図である。
【
図12】(A)はハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部を圧入している状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る車輪用軸受装置の実施形態を以下に詳述する。
図1および
図2に示す車輪用軸受装置は、内方部材であるハブ輪1および内輪2、複列の転動体3,4、外輪5からなる車輪用軸受6と等速自在継手7とで主要部が構成されている。
図1は車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付けた後の状態を示し、
図2は車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付ける前の状態を示す。なお、以下の説明では、車体に組み付けた状態で、車体の外側寄りとなる側をアウトボード側(図面左側)と呼び、中央寄りとなる側をインボード側(図面右側)と呼ぶ。
【0026】
ハブ輪1は、その外周面にアウトボード側の内側軌道面8が形成されると共に、車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ9を備えている。この車輪取付フランジ9の円周方向等間隔に、ホイールディスクを固定するためのハブボルト10が植設されている。このハブ輪1のインボード側外周面に形成された小径段部11に内輪2を嵌合させ、この内輪2の外周面にインボード側の内側軌道面12が形成されている。
【0027】
内輪2は、クリープを防ぐために適当な締め代をもって圧入されている。ハブ輪1の外周面に形成されたアウトボード側の内側軌道面8と、内輪2の外周面に形成されたインボード側の内側軌道面12とで複列の軌道面を構成する。この内輪2をハブ輪1の小径段部11に圧入し、その小径段部11の端部を揺動加締めにより外側に加締め、その加締め部13でもって内輪2を抜け止めしてハブ輪1と一体化し、車輪用軸受6に予圧を付与している。
【0028】
外輪5は、内周面にハブ輪1および内輪2の内側軌道面8,12と対向する複列の外側軌道面14,15が形成され、車体の懸架装置から延びるナックル(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ16を備えている。この車体取付フランジ16は、前述のナックルに嵌合されてボルトにより固定される。
【0029】
車輪用軸受6は、複列のアンギュラ玉軸受構造で、ハブ輪1および内輪2の外周面に形成された内側軌道面8,12と外輪5の内周面に形成された外側軌道面14,15との間に転動体3,4を介在させ、各列の転動体3,4を保持器17,18により円周方向等間隔に支持した構造を有する。
【0030】
車輪用軸受6の両端開口部には、外輪5とハブ輪1および内輪2との環状空間を密封する一対のシール19,20が外輪5の両端部内径に嵌合され、内部に充填されたグリースの漏洩ならびに外部からの水や異物の侵入を防止するようになっている。
【0031】
等速自在継手7は、ドライブシャフトを構成する中間シャフト21の一端に設けられ、内周面にトラック溝22が形成された外側継手部材23と、その外側継手部材23のトラック溝22と対向するトラック溝24が外周面に形成された内側継手部材25と、外側継手部材23のトラック溝22と内側継手部材25のトラック溝24との間に組み込まれたボール26と、外側継手部材23の内周面と内側継手部材25の外周面との間に介在してボール26を保持するケージ27とで構成されている。
【0032】
外側継手部材23は、内側継手部材25、ボール26およびケージ27からなる内部部品を収容したマウス部28と、マウス部28から軸方向に一体的に延びるステム部29とで構成されている。内側継手部材25は、中間シャフト21の軸端が圧入されてスプライン嵌合によりトルク伝達可能に結合されている。
【0033】
等速自在継手7の外側継手部材23と中間シャフト21との間に、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するための樹脂製またはゴム製の蛇腹状ブーツ30を装着して、外側継手部材23の開口部をブーツ30で閉塞した構造としている。
【0034】
この車輪用軸受装置において、
図2および
図3に示すように、外側継手部材23のステム部29の外周面に、軸方向に延びる複数の凸部32(スプライン)を形成する。これに対して、
図2および
図4に示すように、ハブ輪1の軸孔33のインボード側内周面にステム部29の凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有する複数の凹部35を形成する〔
図7(B)参照〕。なお、ステム部29の凸部32は、断面台形の歯形状あるいはインボリュート歯形状などの歯形状を有する。
【0035】
前述の構造を具備した車輪用軸受装置では、外側継手部材23のステム部29をハブ輪1の軸孔33に圧入し、ハブ輪1の軸孔33の凹部35にステム部29の凸部32の周方向側壁部40のみの形状を転写することにより、接触部位全域で密着する凹凸嵌合部Mが形成される(
図1参照)。そして、
図1および
図2に示すように、ステム部29に形成された雌ねじ部37にボルト38を螺合させることにより、ボルト38をハブ輪1に係止させた状態で締め付けることで、外側継手部材23の肩部31をハブ輪1の加締め部13に突き合わせて外側継手部材23をハブ輪1に固定する。
【0036】
一方、この車輪用軸受装置では、
図1および
図2に示すように、外側継手部材23のステム部29の先端部位に、圧入の開始を誘導するガイド部を設けている。このガイド部は、
図5に示すように、凸部32と同位相で軸方向に延びる複数の凸部34(ガイドスプライン)が形成され、ハブ輪1の凹部35よりも小さめの凸部34となっている。つまり、凸部34と凹部35との間に隙間mが形成されている〔
図6(B)参照〕。なお、ハブ輪1の凹部35よりも小さめの凸部34と、その凹部35よりも周方向側壁部40が大きめの凸部32とからなるステム部29のスプライン加工は二段となるが、同時転造が可能であるためコストアップを招くことはない。
【0037】
外側継手部材23のステム部29をハブ輪1の軸孔33に圧入するに先立って、
図6(A)(B)に示すように、ガイド部の凸部34がハブ輪1の凹部35に挿入される。ガイド部は、その凸部34の後方に配された凸部32がハブ輪1の凹部35に確実に圧入されるように誘導する。このガイド部により、安定した圧入が可能となって圧入時の芯ずれや芯傾きなどを防止することができる。
【0038】
このように、ガイド部の凸部34をステム部29の先端部位に設けたことにより、ハブ輪1の軸孔33にガイド部を設ける必要がなくなる。その結果、ガイド部の凸部34を除くステム部29の凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有する凹部35のみをハブ輪1の軸孔33に形成すればよく、ハブ輪1の軸孔33に凹部35を形成する一回のパンチ加工だけで済むことから、軸孔33の加工の簡易化が図れる。
【0039】
このガイド部の凸部34の挿入後、外側継手部材23のステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入するに際して、
図7(A)(B)に示すように、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有することから、凸部32の周方向側壁部40により凹部35を極僅かに切削加工し、凸部32の周方向側壁部40による凹部35の極僅かな塑性変形や弾性変形を付随的に伴いながら、凸部32の周方向側壁部40のみが凹部35に食い込んでその凸部32の周方向側壁部40のみの形状が転写される。
【0040】
なお、
図7(B)に示すように、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有するように、凹部35の周方向寸法(幅寸法)を凸部32の周方向寸法(幅寸法)よりも小さく設定している。また、凸部32の周方向側壁部40を除く部位、つまり、凸部32の径方向先端部は、凹部35と締め代を有さず、凹部35が凸部32の径方向先端部に対して隙間pを有することから、その径方向先端部の形状が凹部35に転写されることはない。
【0041】
以上のように、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有する構造では、凸部32の周方向側壁部40および径方向先端部に対して締め代を有する場合よりも、圧入荷重を下げることができる。その結果、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入するに際して、専用の治具を別に用意する必要がなく、車輪用軸受装置を構成する部品であるボルト38でもって等速自在継手7を簡易に車輪用軸受6に結合させることができる。
【0042】
また、ボルト38の締め付けにより発生する軸力以下という比較的小さな引き込み力の付与で圧入することができるので、ボルト38による引き込み作業性の向上が図れる。さらに、大きな圧入荷重を付与しないので、凹凸嵌合部Mでの凹凸が損傷する(むしれる)ことを防止でき、高品質で長寿命の凹凸嵌合部Mを実現できる。
【0043】
この圧入時、凸部32の周方向側壁部40が凹部35に食い込んでいくことによってハブ輪1の内径が僅かに拡径した状態となって、凸部32の軸方向の相対的移動が許容される。この凸部32の軸方向相対移動が停止すれば、ハブ輪1の内径が元の径に戻ろうとして縮径することになる。これによって、凹凸嵌合部Mの接触部位全域で密着し、外側継手部材23とハブ輪1を強固に結合一体化することができる。
【0044】
このような低コストで信頼性の高い結合により、ステム部29とハブ輪1の嵌合部分の径方向および周方向においてガタが生じる隙間が形成されないので、凹凸嵌合部Mの接触部位全域が駆動トルク伝達に寄与して安定したトルク伝達が可能であり、耳障りな歯打ち音を長期に亘り防止できる。このように凹凸嵌合部Mの接触部位全域で密着していることから、トルク伝達部位の強度が向上するため、車輪用軸受装置の軽量コンパクト化が図れる。
【0045】
なお、この車輪用軸受装置では、ステム部29のガイド部の凸部34の後端部位、つまり、ステム部29のガイド部の凸部34と、そのガイド部の凸部34の後方に配された凸部32との間に、圧入による凸部形状の転写によって生じる食み出し部36を収容する収容部39を設けている〔
図6(A)および
図7(A)参照〕。
【0046】
これにより、圧入時の切削加工や塑性変形、弾性変形による凸部形状の転写によって生じる食み出し部36を収容部39に保持することができ、その食み出し部36が装置外の車両内などへ入り込んだりすることを阻止できる。その食み出し部36を収容部39に保持することで、食み出し部36の除去処理が不要となり、作業工数の削減を図ることができ、作業性の向上およびコスト低減を図ることができる。
【0047】
以上で説明した凹凸嵌合部Mでは、モジュールを0.3〜0.75の範囲で規定している。ここで、モジュールとは、
図8に示すように、外側継手部材23のステム部29の凸部32とハブ輪1の軸孔33の凹部35との嵌合構造におけるピッチ円径(PCD)を凸部32の数Z(歯数)で除した値(PCD/Z)を意味する。
【0048】
このように凹凸嵌合部Mのモジュールを0.3〜0.75の範囲で規定することにより、外側継手部材23のステム部29の凸部32とハブ輪1の軸孔33の凹部35とが確実に噛み合うことから、車輪用軸受6と等速自在継手7との間でのトルク伝達容量を十分に確保することができる。また、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入する際の圧入荷重を確実に下げることができ、ボルト38による引き込み力でもってハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を容易に圧入することができる。
【0049】
なお、凹凸嵌合部Mのモジュールが0.3よりも小さいと、凸部32に対する凹部35の嵌合代が小さくなり過ぎることから、車輪用軸受6と等速自在継手7との間で十分なトルク伝達容量を確保することが困難となる。逆に、凹凸嵌合部Mのモジュールが0.75よりも大きいと、凸部32に対する凹部35の嵌合代が大きくなり過ぎることから、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入する際の圧入荷重を下げることが難しくなり、ボルト38による引き込み力でもってハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入することが困難となる。
【0050】
以上の実施形態では、ステム部29の雌ねじ部37にボルト38を螺合させることによりそのボルト38をハブ輪1の端面に係止させた状態で締め付ける構造を例示したが、他の構造として、外側継手部材23のステム部29に形成された雄ねじ部とナットとで構成することも可能である。この構造では、ステム部29の雄ねじ部にナットを螺合させることによりそのナットをハブ輪1に係止させた状態で締め付けることで、等速自在継手7をハブ輪1に固定することになる。
【0051】
また、以上の実施形態では、ハブ輪1および内輪2からなる内方部材に形成された複列の内側軌道面8,12の一方、つまり、アウトボード側の内側軌道面8をハブ輪1の外周に形成した(第三世代と称される)タイプの駆動車輪用軸受装置に適用した場合を例示したが、本発明はこれに限定されることなく、ハブ輪の外周に一対の内輪を圧入し、アウトボード側の軌道面7を一方の内輪の外周に形成すると共にインボード側の軌道面8を他方の内輪の外周に形成した(第一、第二世代と称される)タイプの駆動車輪用軸受装置にも適用可能である。
【0052】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。