特許第6239315号(P6239315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239315
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/14 20060101AFI20171120BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20171120BHJP
   F16D 1/09 20060101ALI20171120BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60B35/14 U
   F16D1/06 210
   F16D1/06 242
   F16D1/09 500
   F16C19/18
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-173246(P2013-173246)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40000(P2015-40000A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】永田 勉
(72)【発明者】
【氏名】乗松 孝幸
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−068261(JP,A)
【文献】 特開2002−070880(JP,A)
【文献】 米国特許第05536098(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/14
F16C 19/18
F16D 1/06
F16D 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に前記外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有し、ハブ輪および内輪からなる内方部材と、前記外方部材の外側軌道面と内方部材の内側軌道面との間に介装された複列の転動体とからなる車輪用軸受を備え、前記ハブ輪の軸孔に等速自在継手の外側継手部材のステム部を嵌合することにより前記車輪用軸受に等速自在継手をトルク伝達可能に結合させた車輪用軸受装置において、
前記ハブ輪の軸孔と前記外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、他方に前記凸部に対して締め代を有する複数の凹部を形成し、前記ハブ輪およびステム部に設けられたねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより前記凸部を凹部に圧入し、その凹部に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成し、前記ハブ輪に対するステム部の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段を具備し
前記引き込み確認手段は、ハブ輪の軸孔端部にプレートを嵌合させると共に、ハブ輪の軸孔に軸方向移動可能に挿入されたスペーサを前記プレートと前記ステム部の端部との間に介在させ、前記スペーサのプレート側端面から突出するピンをプレートに形成された小孔に挿入し、ねじ締め付けによりプレートの小孔から露呈するピンの先端部を目視可能としたことを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に前記外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有し、ハブ輪および内輪からなる内方部材と、前記外方部材の外側軌道面と内方部材の内側軌道面との間に介装された複列の転動体とからなる車輪用軸受を備え、前記ハブ輪の軸孔に等速自在継手の外側継手部材のステム部を嵌合することにより前記車輪用軸受に等速自在継手をトルク伝達可能に結合させた車輪用軸受装置において、
前記ハブ輪の軸孔と前記外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、他方に前記凸部に対して締め代を有する複数の凹部を形成し、前記ハブ輪およびステム部に設けられたねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより前記凸部を凹部に圧入し、その凹部に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成し、前記ハブ輪に対するステム部の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段を具備し、
前記引き込み確認手段は、ハブ輪の軸孔端部に径方向内側へ向けて突出する内壁部を一体的に形成し、ハブ輪の軸孔に軸方向移動可能に挿入されたスペーサを前記内壁部と前記ステム部の端部との間に介在させ、前記スペーサの内壁部側端面から突出するピンを内壁部に形成された小孔に挿入し、ねじ締め付けにより内壁部の小孔から露呈するピンの先端部を目視可能としたことを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記ピンが塑性変形可能な材質からなり、前記プレートあるいは前記内壁部の小孔から突出するピンの先端部を加締めてねじに係止させた請求項又はに記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の懸架装置に対して駆動車輪(FF車の前輪、FR車の後輪、4WD車の全輪)を回転自在に支持する車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪用軸受装置は、図17および図18に示すように、ハブ輪101、内輪102、複列の転動体103,104および外輪105からなる車輪用軸受106と固定式等速自在継手107とで主要部が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ハブ輪101は、その外周面にアウトボード側の内側軌道面108が形成されると共に、車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ109を備えている。この車輪取付フランジ109の円周方向等間隔に、ホイールディスクを固定するためのハブボルト110が植設されている。このハブ輪101のインボード側外周面に形成された小径段部111に内輪102を嵌合させ、この内輪102の外周面にインボード側の内側軌道面112が形成されている。
【0004】
内輪102は、クリープを防ぐために適当な締め代をもって圧入されている。ハブ輪101の外周面に形成されたアウトボード側の内側軌道面108と、内輪102の外周面に形成されたインボード側の内側軌道面112とで複列の軌道面を構成する。この内輪102をハブ輪101の小径段部111に圧入し、その小径段部111の端部を外側に加締め、その加締め部113でもって内輪102を抜け止めしてハブ輪101と一体化し、車輪用軸受106に予圧を付与している。
【0005】
外輪105は、内周面にハブ輪101および内輪102の内側軌道面108,112と対向する複列の外側軌道面114,115が形成され、車体の懸架装置から延びるナックル(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ116を備えている。この車体取付フランジ116は、前述のナックルに嵌合されてボルトにより固定される。
【0006】
車輪用軸受106は、複列のアンギュラ玉軸受構造で、ハブ輪101および内輪102の外周面に形成された内側軌道面108,112と外輪105の内周面に形成された外側軌道面114,115との間に転動体103,104を介在させ、各列の転動体103,104を保持器117,118により円周方向等間隔に支持した構造を有する。
【0007】
車輪用軸受106の両端開口部には、外輪105とハブ輪101および内輪102との環状空間を密封する一対のシール119,120が外輪105の両端部内径に嵌合され、内部に充填されたグリースの漏洩ならびに外部からの水や異物の侵入を防止するようになっている。
【0008】
等速自在継手107は、ドライブシャフトを構成する中間シャフト121の一端に設けられ、内周面にトラック溝122が形成された外側継手部材123と、その外側継手部材123のトラック溝122と対向するトラック溝124が外周面に形成された内側継手部材125と、外側継手部材123のトラック溝122と内側継手部材125のトラック溝124との間に組み込まれたボール126と、外側継手部材123の内周面と内側継手部材125の外周面との間に介在してボール126を保持するケージ127とで構成されている。
【0009】
外側継手部材123は、内側継手部材125、ボール126およびケージ127からなる内部部品を収容したマウス部128と、マウス部128から軸方向に一体的に延びるステム部129とで構成されている。内側継手部材125は、中間シャフト121の軸端が圧入されてスプライン嵌合によりトルク伝達可能に結合されている。
【0010】
等速自在継手107の外側継手部材123と中間シャフト121との間に、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するための樹脂製またはゴム製の蛇腹状ブーツ130を装着して、外側継手部材123の開口部をブーツ130で閉塞した構造としている。
【0011】
外側継手部材123のステム部129には、軸方向に延びる複数の凸部132(スプライン)が形成されている。一方、ハブ輪101の軸孔133には、ステム部129の凸部132に対して締め代を有する複数の凹部135が形成されている。この車輪用軸受装置では、外側継手部材123のステム部129をハブ輪101の軸孔133に圧入し、その軸孔133の凹部135にステム部129の凸部132の形状を転写することにより、接触部位全域で密着する凹凸嵌合部Nを形成し、外側継手部材123とハブ輪101とをトルク伝達可能に結合させている。また、外側継手部材123のステム部129に形成された雌ねじ部137にボルト138を螺合させ、ボルト138をハブ輪101に係止させた状態で締め付けることで外側継手部材123をハブ輪101に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−79063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来の車輪用軸受装置では、ステム部129の凸部132に対してハブ輪101の軸孔133に凹部135を予め形成していることから、ステム部129の凸部132を単純な円筒状の軸孔に圧入する場合よりも、ステム部129の凸部132をハブ輪101の軸孔133の凹部135に圧入するに際して、凹凸嵌合部Nの接触部位全域で密着させるための圧入荷重を下げることができる。そのため、ボルト138の締め付けでもってハブ輪101に対してステム部129を引き込むことにより、ステム部129の凸部132をハブ輪101の軸孔133の凹部135に圧入することができる。
【0014】
このように、ハブ輪101の軸孔133に外側継手部材123のステム部129を圧入するに際して、専用の治具を別に用意する必要がなく、車輪用軸受装置を構成する部品であるボルト138でもって等速自在継手107を簡易に車輪用軸受106に結合させることができる。その結果、自動車メーカでの車両組み立て時には、車輪用軸受106を車体のナックルに取り付けた後、その車輪用軸受106に等速自在継手107を組み付けることが容易となり、車体への組み付けにおける作業性を向上させている。
【0015】
しかしながら、ボルト138の締め付けにより車輪用軸受106のハブ輪101に外側継手部材123のステム部129を圧入する構造では、その車輪用軸受106を車体のナックルに取り付けた後、車輪用軸受106のハブ輪101に外側継手部材123のステム部129が正規の位置まで引き込まれた状態にあるか否かを車輪用軸受106の外部から目視で確認したいという要望があった。
【0016】
そこで、本発明は前述の要望に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、簡単な構造により、車輪用軸受に対して等速自在継手が正規の位置まで引き込まれたか否かを容易に確認し得る車輪用軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有し、ハブ輪および内輪からなる内方部材と、外方部材の外側軌道面と内方部材の内側軌道面との間に介装された複列の転動体とからなる車輪用軸受を備え、ハブ輪の軸孔に等速自在継手の外側継手部材のステム部を嵌合することにより車輪用軸受に等速自在継手をトルク伝達可能に結合させた車輪用軸受装置において、ハブ輪の軸孔と外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、他方に凸部に対して締め代を有する複数の凹部を形成し、ハブ輪およびステム部に設けられたねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより凸部を凹部に圧入し、その凹部に凸部の形状を転写して接触部位全域で密着する凹凸嵌合部を形成し、ハブ輪に対するステム部の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段を具備する。
【0018】
本発明では、ハブ輪の軸孔と外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、他方に凸部に対して締め代を有する複数の凹部を形成することにより、ハブ輪およびステム部に設けられたねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより凸部を凹部に圧入することができる。このように、ねじ締め付け構造による引き込み力でもって、ハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部を圧入することができることから、自動車メーカでの車両組み立て時には、車輪用軸受を車体のナックルに取り付けた後、その車輪用軸受に等速自在継手を組み付けることが容易となる。この時、車輪用軸受のハブ輪に対する等速自在継手の外側継手部材のステム部の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段を具備していることから、車輪用軸受のハブ輪に外側継手部材のステム部が正規の位置まで引き込まれた状態にあるか否かを車輪用軸受の外部から確認することができる。
【0019】
本発明における引き込み確認手段は、ハブ輪の軸孔端部にプレートを嵌合させると共に、ハブ輪の軸孔に軸方向移動可能に挿入されたスペーサをプレートとステム部の端部との間に介在させ、スペーサのプレート側端面から突出するピンをプレートに形成された小孔に挿入し、ねじ締め付けによりプレートの小孔から露呈するピンの先端部を目視可能としたことを特徴とする
【0020】
また、本発明における引き込み確認手段は、ハブ輪の軸孔端部に径方向内側へ向けて突出する内壁部を一体的に形成し、ハブ輪の軸孔に軸方向移動可能に挿入されたスペーサを内壁部とステム部の端部との間に介在させ、スペーサの内壁部側端面から突出するピンを内壁部に形成された小孔に挿入し、ねじ締め付けにより内壁部の小孔から露呈するピンの先端部を目視可能としたことを特徴とする
【0021】
このような構造を具備した引き込み確認手段では、ハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部を圧入するに際して、ねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより、ハブ輪のプレートあるいは内壁部とステム部との間に配されたスペーサがステム部に押圧されてプレートあるいは内壁部に近接する。このスペーサがプレートあるいは内壁部に近接することにより、スペーサのピンがプレートあるいは内壁部の小孔を移動し、ハブ輪に対してステム部が正規の位置に達すると、プレートあるいは内壁部の小孔からスペーサのピンが露呈する。これにより、車輪用軸受を車体のナックルに取り付けた後でも、車輪用軸受のハブ輪に対して等速自在継手の外側継手部材のステム部が正規の位置に達したことを車輪用軸受の外部から目視可能となる。
【0022】
本発明におけるスペーサは、ピンが塑性変形可能な材質からなり、プレートあるいは内壁部の小孔から突出するピンの先端部を加締めてねじに係止させた構造が望ましい。このようにすれば、ピンでねじを押さえ込むことにより、ねじ締め付け後の回転緩みを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハブ輪の軸孔と外側継手部材のステム部のうちのいずれか一方に軸方向に延びる複数の凸部を形成すると共に、他方に凸部に対して締め代を有する複数の凹部を形成し、ハブ輪およびステム部に設けられたねじ締め付け構造でもってハブ輪に対してステム部を引き込むことにより凸部を凹部に圧入する構造により、自動車メーカでの車両組み立て時には、車輪用軸受を車体のナックルに取り付けた後、その車輪用軸受に等速自在継手を組み付けることが容易となる。この構造において、ハブ輪に対するステム部の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段を具備したことにより、車輪用軸受のナックルへの取り付け後にその車輪用軸受に等速自在継手を組み付けるに際して、車輪用軸受のハブ輪に外側継手部材のステム部が正規の位置まで引き込まれた状態にあるか否かを車輪用軸受の外部から目視で確認することができる。その結果、目視確認の要望に対しても対応できる車輪用軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る車輪用軸受装置の実施形態で、車輪用軸受に等速自在継手を組み付けた後の状態を示す縦断面図である。
図2図1の車輪用軸受に等速自在継手を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
図3図2のI−I線に沿う拡大断面図である。
図4図2のII−II線に沿う拡大断面図である。
図5】(A)はハブ輪の軸孔のガイド部に外側継手部材のステム部の凸部を挿入した状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のIII−III線に沿う断面図である。
図6】(A)はハブ輪の軸孔に外側継手部材のステム部の凸部を圧入している状態を示す要部拡大断面図、(B)は(A)のIV−IV線に沿う断面図である。
図7図1のV−V線に沿う拡大断面図である。
図8図2のA部拡大断面図である。
図9図1のB矢視図である。
図10図1のC部拡大断面図である。
図11】本発明の他の実施形態で、車輪用軸受に等速自在継手を組み付けた後の状態を示す縦断面図である。
図12図11の車輪用軸受に等速自在継手を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
図13図12のD部拡大断面図である。
図14図11のE矢視図である。
図15図11のF部拡大断面図である。
図16図11のG部拡大断面図である。
図17】従来の車輪用軸受装置の全体構成で、車輪用軸受に等速自在継手を組み付けた後の状態を示す縦断面図である。
図18図17の車輪用軸受に等速自在継手を組み付ける前の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る車輪用軸受装置の実施形態を以下に詳述する。図1および図2に示す車輪用軸受装置は、内方部材であるハブ輪1および内輪2、複列の転動体3,4、外輪5からなる車輪用軸受6と等速自在継手7とで主要部が構成されている。図1は車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付けた後の状態を示し、図2は車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付ける前の状態を示す。なお、以下の説明では、車体に組み付けた状態で、車体の外側寄りとなる側をアウトボード側(図面左側)と呼び、中央寄りとなる側をインボード側(図面右側)と呼ぶ。
【0026】
ハブ輪1は、その外周面にアウトボード側の内側軌道面8が形成されると共に、車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ9を備えている。この車輪取付フランジ9の円周方向等間隔に、ホイールディスクを固定するためのハブボルト10が植設されている。このハブ輪1のインボード側外周面に形成された小径段部11に内輪2を嵌合させ、この内輪2の外周面にインボード側の内側軌道面12が形成されている。
【0027】
内輪2は、クリープを防ぐために適当な締め代をもって圧入されている。ハブ輪1の外周面に形成されたアウトボード側の内側軌道面8と、内輪2の外周面に形成されたインボード側の内側軌道面12とで複列の軌道面を構成する。この内輪2をハブ輪1の小径段部11に圧入し、その小径段部11の端部を揺動加締めにより外側に加締め、その加締め部13でもって内輪2を抜け止めしてハブ輪1と一体化し、車輪用軸受6に予圧を付与している。
【0028】
外輪5は、内周面にハブ輪1および内輪2の内側軌道面8,12と対向する複列の外側軌道面14,15が形成され、車体の懸架装置から延びるナックル(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ16を備えている。この車体取付フランジ16は、前述のナックルに嵌合されてボルトにより固定される。
【0029】
車輪用軸受6は、複列のアンギュラ玉軸受構造で、ハブ輪1および内輪2の外周面に形成された内側軌道面8,12と外輪5の内周面に形成された外側軌道面14,15との間に転動体3,4を介在させ、各列の転動体3,4を保持器17,18により円周方向等間隔に支持した構造を有する。
【0030】
車輪用軸受6の両端開口部には、外輪5とハブ輪1および内輪2との環状空間を密封する一対のシール19,20が外輪5の両端部内径に嵌合され、内部に充填されたグリースの漏洩ならびに外部からの水や異物の侵入を防止するようになっている。
【0031】
等速自在継手7は、ドライブシャフトを構成する中間シャフト21の一端に設けられ、内周面にトラック溝22が形成された外側継手部材23と、その外側継手部材23のトラック溝22と対向するトラック溝24が外周面に形成された内側継手部材25と、外側継手部材23のトラック溝22と内側継手部材25のトラック溝24との間に組み込まれたボール26と、外側継手部材23の内周面と内側継手部材25の外周面との間に介在してボール26を保持するケージ27とで構成されている。
【0032】
外側継手部材23は、内側継手部材25、ボール26およびケージ27からなる内部部品を収容したマウス部28と、マウス部28から軸方向に一体的に延びるステム部29とで構成されている。内側継手部材25は、中間シャフト21の軸端が圧入されてスプライン嵌合によりトルク伝達可能に結合されている。
【0033】
等速自在継手7の外側継手部材23と中間シャフト21との間に、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するための樹脂製またはゴム製の蛇腹状ブーツ30を装着して、外側継手部材23の開口部をブーツ30で閉塞した構造としている。
【0034】
この車輪用軸受装置において、図2および図3に示すように、外側継手部材23のステム部29の外周面に、軸方向に延びる複数の凸部32(スプライン)を形成する。なお、ステム部29の凸部32は、断面台形の歯形状あるいはインボリュート歯形状などの歯形状を有する。一方、図2および図4に示すように、ハブ輪1の軸孔33の内周面にステム部29の凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有する複数の凹部35を形成する〔図6(B)参照〕。
【0035】
この車輪用軸受装置のハブ輪1は、軸孔33の内周面が軸方向に亘って同一内径となっている円筒状をなす。このように、軸孔33をその内周面が軸方向に亘って同一内径となるように円筒状に貫通させた構造としたことにより、軸方向に延びる凹部35をブローチ加工により形成することができる。
【0036】
前述の構造を具備した車輪用軸受装置では、外側継手部材23のステム部29をハブ輪1の軸孔33に圧入し、ハブ輪1の軸孔33の凹部35にステム部29の凸部32の周方向側壁部40のみの形状を転写することにより、接触部位全域で密着する凹凸嵌合部Mが形成される(図1参照)。ここで、図5(A)(B)に示すように、ハブ輪1の軸孔33の凹部35のインボード側に、圧入の開始を誘導するガイド部を設けている。
【0037】
このガイド部は、凹部35と同位相で軸方向に延びる複数の凹部34が形成され、ステム部29の凸部32よりも大きめの凹部34となっている。つまり、凸部32と凹部34との間に隙間mが形成されている。このガイド部により、外側継手部材23のステム部29をハブ輪1の軸孔33に圧入するに先立って、ステム部29の凸部32がハブ輪1の凹部35に確実に圧入するように誘導することができるので、安定した圧入が可能となって圧入時の芯ずれや芯傾きなどを防止することができる。
【0038】
このガイド部の凹部34への挿入後、外側継手部材23のステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入するに際して、図6(A)(B)に示すように、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有することから、凸部32の周方向側壁部40により凹部35を極僅かに切削加工し、凸部32の周方向側壁部40による凹部35の極僅かな塑性変形や弾性変形を付随的に伴いながら、凸部32の周方向側壁部40のみが凹部35に食い込んでその凸部32の周方向側壁部40のみの形状が転写される(図7参照)。
【0039】
なお、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有するように、凹部35の周方向寸法(幅寸法)を凸部32の周方向寸法(幅寸法)よりも小さく設定している。また、凸部32の周方向側壁部40を除く部位、つまり、凸部32の径方向先端部は、凹部35と締め代を有さず、凹部35が凸部32の径方向先端部に対して隙間pを有することから、その径方向先端部の形状が凹部35に転写されることはない。
【0040】
この圧入時、凸部32の周方向側壁部40が凹部35に食い込んでいくことによってハブ輪1の内径が僅かに拡径した状態となって、凸部32の軸方向の相対的移動が許容される。この凸部32の軸方向相対移動が停止すれば、ハブ輪1の内径が元の径に戻ろうとして縮径することになる。これによって、凹凸嵌合部Mの接触部位全域で密着し、外側継手部材23とハブ輪1を強固に結合一体化することができる(図1参照)。
【0041】
このような低コストで信頼性の高い結合により、ステム部29とハブ輪1の嵌合部分の径方向および周方向においてガタが生じる隙間が形成されないので、凹凸嵌合部Mの接触部位全域が駆動トルク伝達に寄与して安定したトルク伝達が可能であり、耳障りな歯打ち音を長期に亘り防止できる。このように凹凸嵌合部Mの接触部位全域で密着していることから、トルク伝達部位の強度が向上するため、車輪用軸受装置の軽量コンパクト化が図れる。
【0042】
以上のように、凹部35が凸部32の周方向側壁部40のみに対して締め代nを有する構造では、凸部32の周方向側壁部40および径方向先端部に対して締め代を有する場合よりも、圧入荷重を下げることができる。その結果、図1および図2に示すように、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入するに際して、専用の治具を別に用意する必要がなく、車輪用軸受装置を構成する部品であるボルト38でもって等速自在継手7を簡易に車輪用軸受6に結合させることができる。また、大きな圧入荷重を付与しないので、凹凸嵌合部Mでの凹凸が損傷する(むしれる)ことを防止でき、高品質で長寿命の凹凸嵌合部Mを実現できる。
【0043】
以上で説明した凹凸嵌合部Mでは、モジュールを0.3〜0.75の範囲で規定している。ここで、モジュールとは、図7に示すように、外側継手部材23のステム部29の凸部32とハブ輪1の軸孔33の凹部35との嵌合構造におけるピッチ円径(PCD)を凸部32の数Z(歯数)で除した値(PCD/Z)を意味する。
【0044】
このように凹凸嵌合部Mのモジュールを0.3〜0.75の範囲で規定することにより、外側継手部材23のステム部29の凸部32とハブ輪1の軸孔33の凹部35とが確実に噛み合うことから、車輪用軸受6と等速自在継手7との間でのトルク伝達容量を十分に確保することができる。また、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入する際の圧入荷重を確実に下げることができ、ボルト38による引き込み力でもってハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を容易に圧入することができる。
【0045】
このように、ボルト38の締め付けによる引き込み力でもって、ハブ輪1の軸孔33に外側継手部材23のステム部29を圧入することができることから、自動車メーカでの車両組み立て時には、車輪用軸受6を車体のナックルに取り付けた後、その車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付けることが容易となる。この時、車輪用軸受6のハブ輪1に対する等速自在継手7の外側継手部材23のステム部29の引き込み量が目視可能な引き込み確認手段41を具備している。
【0046】
この引き込み確認手段41は、以下の構造を備えている。図1および図2に示すように、この車輪用軸受装置の場合、ハブ輪1は、軸孔33の内周面が軸方向に亘って同一内径となっている円筒状をなすことから、ハブ輪1の軸孔33の開口端にその軸孔33よりも大径の凹陥部42を形成し、その凹陥部42に金属製のプレート43を嵌合させている。このプレート43は、その中央部位にボルト38の首部とほぼ同一の内径を有する孔44が貫通形成されている。なお、孔44の軸方向開口端は、ボルト38の首部が挿入容易なようにテーパ状に面取り加工されている。
【0047】
また、ハブ輪1の軸孔33に軸方向移動可能に挿入された樹脂製のスペーサ45をプレート43とステム部29の端部との間に介在させている。このスペーサ45は、その中央部位にボルト38のねじ部よりも大径の孔46が貫通形成され、そのプレート側端面の周縁部位から軸方向に沿って突出するピン47を有する。これに対して、前述のプレート43は、スペーサ45のピン47と対応させて孔44の周縁に小孔48が形成されている。なお、スペーサ45のピン47およびプレート43の小孔48の数は4つを例示したが(図9参照)、その数は任意である。
【0048】
以上の構造を具備した引き込み確認手段41では、車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付ける前、つまり、ハブ輪1の軸孔33のガイド部に外側継手部材23のステム部29の凸部32を挿入するに先立って、図2および図8に示すように、スペーサ45をハブ輪1の軸孔33に配置してそのスペーサ45のピン47をプレート43の小孔48に挿入する。この状態では、プレート43の小孔48に挿入されたピン47の先端部を車輪用軸受6の外部であるハブ輪1のアウトボード側から目視することができない。
【0049】
なお、スペーサ45のピン47をプレート43の小孔48に挿入することを容易にするため、ピン47の先端をテーパ状に縮径する形状としている。また、スペーサ45をハブ輪1の軸孔33に配置した時にピン47がプレート43の小孔48から抜脱しないようにピン47に対して小孔48に締め代を設けておく。この締め代は、ボルト38の締め付けによりハブ輪1の軸孔33にステム部29を引き込む際に、ボルト38の締め付けによる軸力に影響を与えない程度に設定する。
【0050】
この状態から、ステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入するに際して、ステム部29の雌ねじ部37にボルト38を螺合させ、そのボルト38の締め付けによりハブ輪1に対してステム部29を引き込むことにより、ステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入する。この時、ステム部29の雌ねじ部37に螺合するボルト38の頭部がプレート43の端面に係止されることになる。ハブ輪1の軸孔33に対してステム部29が軸方向で正規の位置まで引き込まれると、ステム部29によりアウトボード側に押圧されて軸方向に移動するスペーサ45は、ステム部29の先端面とプレート43の端面との間に挟み込まれた状態となる(図1参照)。
【0051】
この状態では、図10に示すように、スペーサ45のピン47の先端部がプレート43の端面と面一になり、プレート43の小孔48から露呈するピン47の先端部を目視することができる。これにより、自動車メーカでの車両組み立て時、車輪用軸受6を車体のナックルに取り付けた後であっても、車輪用軸受6のハブ輪1に外側継手部材23のステム部29が正規の位置まで引き込まれていることを車輪用軸受6の外部から目視により確認することができる。なお、前述では、スペーサ45のピン47の先端部がプレート43の端面と面一になることで目視可能としたが、ピン47の先端部が所定の長さだけプレート43の端面から突出することで目視可能とすることも可能である。
【0052】
以上で説明した車輪用軸受装置では、ハブ輪1の軸孔33の内周面が軸方向に亘って同一内径となっている円筒状をなすことから、ハブ輪1の軸孔33の開口端にプレート43を嵌合させた引き込み確認手段41を例示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、図11および図12に示す構造を具備した車輪用軸受装置にも適用可能である。なお、図1および図2に示す車輪用軸受装置と同一または相当部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。
【0053】
図11および図12に示す車輪用軸受装置における引き込み確認手段51は、以下の構造を備えている。この車輪用軸受装置では、ハブ輪1の軸孔33の端部に径方向内側へ向けて突出する内壁部36を一体的に形成している。この内壁部36の中央部位には、ボルト38の首部とほぼ同一の内径を有する孔39が貫通形成されている。
【0054】
また、ハブ輪1の軸孔33に軸方向移動可能に挿入されたスペーサ52を内壁部36とステム部29の端部との間に介在させている。このスペーサ52は、その中央部位にボルト38のねじ部よりも大径の孔53が貫通形成され、その内壁部側端面の周縁部位から軸方向に沿って突出するピン54,55を有する。これに対して、スペーサ52のピン54,55と対応させて孔39の周縁に小孔56が形成されている。なお、スペーサ52のピン54,55および内壁部39の小孔56の数は6つを例示するが(図14参照)、その数は任意である。
【0055】
以上の構造を具備した引き込み確認手段51では、車輪用軸受6に等速自在継手7を組み付ける前、つまり、ハブ輪1の軸孔33のガイド部に外側継手部材23のステム部29の凸部32を挿入するに先立って、図12および図13に示すように、スペーサ52をハブ輪1の軸孔33に配置してそのスペーサ52のピン54,55を内壁部36の小孔56に挿入する。この状態では、内壁部36の小孔56に挿入されたピン54の先端部を車輪用軸受6の外部であるハブ輪1のアウトボード側から目視することができない。
【0056】
なお、スペーサ52のピン54,55を内壁部36の小孔56に挿入することを容易にするため、ピン54,55の先端をテーパ状に縮径する形状としている。また、スペーサ52をハブ輪1の軸孔33に配置した時にピン54,55が内壁部36の小孔56から抜脱しないようにピン54,55に対して小孔56に締め代を設けておく。この締め代は、ボルト38の締め付けによりハブ輪1の軸孔33にステム部29を引き込む際に、ボルト38の締め付けによる軸力に影響を与えない程度に設定する。
【0057】
この状態から、ステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入するに際して、ステム部29の雌ねじ部37にボルト38を螺合させ、そのボルト38の締め付けによりハブ輪1に対してステム部29を引き込むことにより、ステム部29の凸部32をハブ輪1の軸孔33の凹部35に圧入する。この時、ステム部29の雌ねじ部37に螺合するボルト38の頭部が内壁部36の端面に係止されることになる。ハブ輪1の軸孔33に対してステム部29が軸方向で正規の位置まで引き込まれると、ステム部29によりアウトボード側に押圧されて軸方向に移動するスペーサ52は、ステム部29の先端面と内壁部36の端面との間に挟み込まれた状態となる(図11参照)。なお、スペーサ52の端面と内壁部36の端面とはテーパ状に形成されて当接した状態にある。
【0058】
この状態では、図15に示すように、スペーサ52のピン54の先端部が内壁部36の端面と面一になり、内壁部36の小孔56から露呈するピン54の先端部を目視することができる。これにより、自動車メーカでの車両組み立て時、車輪用軸受6を車体のナックルに取り付けた後であっても、車輪用軸受6のハブ輪1に外側継手部材23のステム部29が正規の位置まで引き込まれていることを車輪用軸受6の外部から確認することができる。なお、前述では、スペーサ52のピン54の先端部が内壁部36の端面と面一になることで目視可能としたが、ピン54の先端部が所定の長さだけ内壁部36の端面から突出することで目視可能とすることも可能である。
【0059】
また、車輪用軸受6のハブ輪1に外側継手部材23のステム部29が正規の位置まで引き込まれた状態で、スペーサ52における3本のピン54の長さは、その先端部が内壁部36の端面と面一になるように設定されているが、図16に示すように、残り3本のピン55を前述のピン54よりも長くして、内壁部36の端面から突出させる(図中破線部分参照)。このように、ピン55を内壁部36の端面から突出させることにより、その内壁部36の小孔56から突出するピン55の先端部を加締めてボルト38の頭部に係止させる。
【0060】
このように、ピン55でボルト38の頭部を押さえ込むことにより、ボルト38の締め付け後の回転緩みを未然に防止することができる。このように、ピン55の先端部の加締め等の塑性変形が可能なように、スペーサ52の材質としては軟鋼を選定すればよい。なお、短いピン54と長いピン55の数および配列は任意である。また、この長いピン55によるボルト38の回転緩み止めは、図1および図2の車輪用軸受装置で使用したスペーサ45にも適用可能である。
【0061】
以上の実施形態では、ステム部29の雌ねじ部37にボルト38を螺合させることによりそのボルト38をハブ輪1のプレート43あるいは内壁部36に係止させた状態で締め付ける構造を例示したが、他の構造として、外側継手部材23のステム部29に形成された雄ねじ部とナットとで構成することも可能である。この構造では、ステム部29の雄ねじ部にナットを螺合させることによりそのナットをハブ輪1のプレート43あるいは内壁部36に係止させた状態で締め付けることで、等速自在継手7をハブ輪1に固定することになる。
【0062】
また、以上の実施形態では、ハブ輪1および内輪2からなる内方部材に形成された複列の内側軌道面8,12の一方、つまり、アウトボード側の内側軌道面8をハブ輪1の外周に形成した(第三世代と称される)タイプの駆動車輪用軸受装置に適用した場合を例示したが、本発明はこれに限定されることなく、ハブ輪の外周に一対の内輪を圧入し、アウトボード側の軌道面8を一方の内輪の外周に形成すると共にインボード側の軌道面12を他方の内輪の外周に形成した(第一、第二世代と称される)タイプの駆動車輪用軸受装置にも適用可能である。
【0063】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0064】
1 内方部材(ハブ輪)
2 内方部材(内輪)
3,4 転動体
5 外方部材(外輪)
6 車輪用軸受
7 等速自在継手
8,12 内側軌道面
14,15 外側軌道面
23 外側継手部材
29 ステム部
32 凸部(スプライン)
33 軸孔
35 凹部
36 内壁部
41,51 引き込み確認手段
43 プレート
45,52 スペーサ
47,54,55 ピン
48,56 小孔
n 締め代
M 凹凸嵌合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18