(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239327
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】有機性廃水処理方法及び装置並びに化成肥料の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/58 20060101AFI20171120BHJP
C02F 3/02 20060101ALI20171120BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20171120BHJP
C02F 11/12 20060101ALI20171120BHJP
C02F 11/14 20060101ALI20171120BHJP
C05B 7/00 20060101ALI20171120BHJP
C05B 9/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
C02F1/58 SZAB
C02F3/02
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
C02F11/12 C
C02F11/12 D
C02F11/14 E
C02F11/14 D
C05B7/00
C05B9/00
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-195514(P2013-195514)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-58413(P2015-58413A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
(72)【発明者】
【氏名】八代 隆
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−013851(JP,A)
【文献】
特開2004−141747(JP,A)
【文献】
特開昭62−061700(JP,A)
【文献】
特開2002−273453(JP,A)
【文献】
特開2012−000556(JP,A)
【文献】
特開2006−055766(JP,A)
【文献】
実開昭54−139046(JP,U)
【文献】
特開平11−300389(JP,A)
【文献】
特開昭52−031564(JP,A)
【文献】
特開平10−192900(JP,A)
【文献】
特開2007−229545(JP,A)
【文献】
特開2009−006319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52−64、3/00−34、11/00−20
B01D 21/00−34
C05B 7/00、9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屎尿及び/又は有機性汚泥を含む有機性廃水を生物処理する有機性廃水処理方法であって、
当該生物処理において発生する余剰汚泥を返送して、屎尿及び/又は有機性汚泥との混合汚泥を形成し、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理して第1分離液を得て、当該第1分離液を、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する工程を経ずに直接、生物処理における水素供与体として利用するために分離液貯留槽に送る工程と、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加してから脱水処理して第2分離液を得て、当該第2分離液を、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する工程に送る工程と、
を交互に行ない、
当該混合汚泥を脱水処理した後の第1分離液と、当該第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収した後の脱離液と、を生物処理することを特徴とする有機性廃水処理方法。
【請求項2】
前記混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理する工程は、高分子凝集剤を添加する工程と添加しない工程との合計時間の60%以下とする、請求項1に記載の有機性廃水処理方法。
【請求項3】
前記脱水処理は、高分子凝集剤を添加した混合汚泥を濃縮する濃縮工程と、濃縮した混合汚泥を脱水する脱水工程と、を含み、
前記第2分離液は、当該濃縮工程で得られる、請求項1又は2に記載の有機性廃水処理方法。
【請求項4】
前記濃縮工程で得られる濃縮物に無機凝集剤をさらに添加して、脱水する請求項3に記載の有機性排水処理方法。
【請求項5】
前記脱水処理は、高分子凝集剤を添加しなかった混合汚泥を濃縮する濃縮工程と、濃縮した混合汚泥を脱水する脱水工程と、を含み、
前記第1分離液は、当該濃縮工程及び当該脱水工程で得られる、請求項1又は2に記載の有機性廃水処理方法。
【請求項6】
混合槽と、凝集反応槽と、脱水装置と、分離液貯留槽と、生物処理槽と、MAP回収装置と、を具備する屎尿及び/又は有機性汚泥を含む有機性廃水を生物処理する有機性廃水処理装置であって、
当該混合槽には、当該生物処理槽からの余剰汚泥を返送する余剰汚泥配管と、余剰汚泥と屎尿及び/又は有機性汚泥との混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路と、が接続されており、
当該凝集反応槽には、当該凝集反応槽に送られて高分子凝集剤が添加された当該混合汚泥を当該脱水装置に送る経路が接続されており、
当該凝集反応槽を経由せずに、当該混合槽と当該脱水装置との間を直接連通させるバイパス経路が設けられており、
当該脱水装置には、当該バイパス経路からの混合汚泥を当該脱水装置で脱水して得られる第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路、又は当該凝集反応槽からの高分子凝集剤を添加した混合汚泥を当該脱水装置で脱水して得られる第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路のいずれかに送る切替弁を有する経路が接続されており、
当該分離液貯留槽には、第1分離液を当該生物処理槽に送る経路が接続されており、
当該混合槽からの混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路と、当該バイパス経路と、の切り替えを行う第1切替弁と、
当該脱水装置からの第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路と、当該脱水装置からの第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路と、の切り替えを行う第2切替弁と、
を具備し、
当該第1切替弁と第2切替弁とは連動し、当該第1切替弁により混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路に切り換える際には、当該第2切替弁により第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路に切り換え、当該第1切替弁により混合汚泥を当該バイパス経路に送る際には、当該第2切替弁により第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路に切り換えることを特徴とする、有機性廃水処理装置。
【請求項7】
前記分離液貯留槽には、前記MAP回収装置からの脱離液を送る経路が接続されている、請求項6に記載の有機性排水処理装置。
【請求項8】
前記脱水装置は、
高分子凝集剤を添加した混合汚泥に対しては濃縮機として作用し、高分子凝集剤を添加していない混合汚泥に対してはしさ分離機として作用するスクリーンと、
当該スクリーンの下流に位置づけられている脱水機と、
を含み、当該スクリーンからの分離水及び当該脱水機からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路とに切り替える切替弁をさらに具備する、請求項6又は7に記載の有機性廃水処理装置。
【請求項9】
前記脱水装置は、スクリーンとして機能する濃縮部と、当該濃縮部の後段に圧搾部と、を具備し、当該濃縮部からの分離水及び当該圧搾部からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路とに切り替える切替弁をさらに具備する、請求項6又は7に記載の有機性廃水処理装置。
【請求項10】
さらに前記混合槽と前記凝集反応槽との間にラインミキサを設け、当該ラインミキサに高分子凝集剤を添加する凝集剤添加配管が接続されている、請求項6〜9のいずれか1項に記載の有機性廃水処理装置。
【請求項11】
屎尿及び/又は有機性汚泥を含む有機性廃水を生物処理する有機性廃水処理において、
当該生物処理において発生する余剰汚泥を返送して、屎尿及び/又は有機性汚泥との混合汚泥を形成し、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理して第1分離液を得て、当該第1分離液を、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する工程を経ずに直接、生物処理における水素供与体として利用するために分離液貯留槽に送る工程と、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加してから脱水処理して第2分離液を得て、当該第2分離液を、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収して化成肥料を製造する工程に送る工程と、
を交互に行ない、
当該混合汚泥を脱水処理した後の第1分離液と、当該第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収した後の脱離液と、を生物処理することを特徴とする、化成肥料の製造方法。
【請求項12】
屎尿及び/又は有機性汚泥を含む有機性廃水を生物処理する有機性廃水処理において化成肥料を製造する装置であって、
混合槽と、凝集反応槽と、脱水装置と、分離液貯留槽と、生物処理槽と、MAP回収装置と、を具備し、
当該混合槽には、当該生物処理槽からの余剰汚泥を返送する余剰汚泥配管と、余剰汚泥と屎尿及び/又は有機性汚泥との混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路と、が接続されており、
当該凝集反応槽には、当該凝集反応槽に送られて高分子凝集剤が添加された当該混合汚泥を当該脱水装置に送る経路が接続されており、
当該凝集反応槽を経由せずに、当該混合槽と当該脱水装置との間を直接連通させるバイパス経路が設けられており、
当該脱水装置には、当該バイパス経路からの混合汚泥を当該脱水装置で脱水して得られる第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路、又は当該凝集反応槽からの高分子凝集剤を添加した混合汚泥を当該脱水装置で脱水して得られる第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路のいずれかに送る切替弁を有する経路が接続されており、
当該分離液貯留槽には、第1分離液を当該生物処理槽に送る経路が接続されており、
さらに、当該混合槽からの混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路と、当該バイパス経路と、の切り替えを行う第1切替弁と、
当該脱水装置からの第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路と、当該脱水装置からの第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路と、の切り替えを行う第2切替弁と、
を具備し、
当該第1切替弁と第2切替弁とは連動し、当該第1切替弁により混合汚泥を当該凝集反応槽に送る経路に切り換える際には、当該第2切替弁により第2分離液を当該MAP回収装置に送る経路に切り換え、当該第1切替弁により混合汚泥を当該バイパス経路に送る際には、当該第2切替弁により第1分離液を当該分離液貯留槽に送る経路に切り換えることを特徴とする、化成肥料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水処理方法及び装置に関する。特に、屎尿と浄化槽汚泥などの有機性汚泥を含有する有機性廃水の処理方法及び装置並びに当該有機性廃水処理から化成肥料を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屎尿及び家庭用浄化槽で発生する有機性汚泥を含む有機性廃水の生物処理が行われている。屎尿及び家庭用浄化槽由来の有機性廃水には、夾雑物が多量に含まれるため、夾雑物を除去して脱水処理を行い、分離液を生物処理に供する。脱水処理により多量の有機性汚泥の脱水ケーキが発生するため、脱水ケーキの減容化が種々検討されている。また、脱水ケーキを助燃剤や堆肥として再利用するために、含水率の低減化が必要とされている。このため、有機性廃水に凝集剤を添加して、凝集フロックとして凝集させた後に脱水処理が行われている。
【0003】
また、生物処理に先立つ脱水処理において、屎尿及び有機性汚泥を含む有機性廃水は全量が凝集剤添加後に脱水されるため、有機性排水中に含まれている有機物も除去されてしまう。有機性排水中に含まれている有機物は、後続の生物処理において微生物の栄養素となる水素供与体である。有機性廃水の全量脱水処理により、有機物が不足すると、生物処理が不十分となるため、通常はメタノールなどの水素供与体を多量に添加することが必要となる。
【0004】
したがって、現状の屎尿及び有機性汚泥を含む有機性廃水の処理では、脱水処理に必要な凝集剤及び生物処理に必要な栄養源を多量に添加しなければならず、維持管理費が高額になっている。
【0005】
また、有機性汚泥に含まれているリン及びアンモニウムは化成肥料として再利用できることが周知であり、屎尿及び浄化槽汚泥からのリンを回収する方法及び装置が種々提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-7900号公報
【特許文献2】特開平6-226290号公報
【特許文献3】特開平11-33591号公報
【特許文献4】特開2013-13851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、脱水処理と生物処理とを組み合わせた有機性廃水の処理において、発生する脱水ケーキの低含水率化及び減容化を達成しながら、維持管理費を低額に抑えることができ、化成肥料として有用なリン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」という。)を効率的に回収する処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、脱水処理と生物処理とを組み合わせた有機性廃水の処理において、MAPを回収して化成肥料を製造する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理からの余剰汚泥との混合汚泥を脱水処理した後に生物処理する有機性廃水処理方法において、脱水処理に供する混合汚泥の一部に高分子凝集剤を添加しないことにより、脱水ケーキの低含水率化及び減容化を達成しながら、高分子凝集剤の添加量を削減すると同時に、後続の生物処理に必要な水素供与体の添加量を削減することができ、MAPを効率的に回収できる処理方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、高分子凝集剤の添加とMAP回収とを連動させた有機性排水処理方法及び装置並びに化成肥料の製造方法及び装置が提供される。
[1]屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理する有機性廃水処理方法であって、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理して第1分離液を得る工程と、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加してから脱水処理して第2分離液を得る工程と、
を交互に行い、
前記高分子凝集剤を添加する場合には、脱水処理の際に発生する第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することを特徴とする有機性廃水処理方法。
[2]前記混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理する工程は、高分子凝集剤を添加する工程と添加しない工程との合計時間の60%以下とする、[1]に記載の有機性廃水処理方法。
[3]前記混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理することによって得られる第1分離液を生物処理における水素供与体として利用する、[1]又は[2]に記載の有機性廃水処理方法。
[4]前記脱水処理は、高分子凝集剤を添加した混合汚泥を濃縮する濃縮工程と、濃縮した混合汚泥を脱水する脱水工程と、を含み、
前記第2分離液は、当該濃縮工程で得られる、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機性廃水処理方法。
[5]前記濃縮工程で得られる濃縮物に無機凝集剤をさらに添加した後、脱水処理を行う[4]に記載の有機性排水処理方法。
[6]前記脱水処理後の分離液を生物処理における水素供与体として利用する、[5]に記載の有機性廃水処理方法。
[7]屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理するための有機性廃水処理装置であって、
屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理からの余剰汚泥とを混合する混合槽と、
当該混合槽の下流に位置づけられ、混合汚泥を脱水する脱水装置と、
当該混合槽と当該脱水装置の間に位置づけられ、当該混合槽からの当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集させる凝集反応槽と、
当該混合槽から、当該凝集反応槽を経由せずに、当該脱水装置に当該混合汚泥を直接送るバイパス経路と、
高分子凝集剤を添加した混合汚泥を脱水して得られる第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
当該脱水装置からの分離液及び当該MAP回収装置からの脱離液を貯留する分離液貯留槽と、
当該分離液貯留槽からの分離液を処理する生物処理槽と、
当該生物処理槽の下流に位置づけられている固液分離槽と、
を具備する、有機性廃水処理装置。
[8]前記混合槽からの混合汚泥を前記凝集反応槽に送る経路と、前記凝集反応槽を経由せずに前記混合槽からの混合汚泥を前記脱水装置に直接送るバイパス経路と、の切り替えを行う第1切替弁と、
前記脱水装置からの第1分離液を前記分離液貯留槽に送る経路と、前記脱水装置からの第2分離液を前記MAP回収装置に送る経路と、の切り替えを行う第2切替弁と、
をさらに具備し、当該第1切替弁と第2切替弁とは連動する、[7]に記載の有機性廃水処理装置。
[9]前記脱水装置は、
高分子凝集剤を添加した混合汚泥に対しては濃縮機として作用し、高分子凝集剤を添加していない混合汚泥に対してはしさ分離機として作用するスクリーンと、
当該スクリーンの下流に位置づけられている脱水機と、
を含み、当該スクリーンからの分離水及び当該脱水機からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路に切り替える切替弁をさらに具備する、[7]又は[8]に記載の有機性廃水処理装置。
[10]前記脱水装置は、スクリーンとして機能する濃縮部と、当該濃縮部の後段に圧搾部と、を具備し、当該濃縮部からの分離水及び当該圧搾部からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路に切り替える切替弁をさらに具備する、[7]又は[8]に記載の有機性廃水処理装置。
[11]前記凝集反応槽には、
凝集反応槽への高分子凝集剤の添加を制御する凝集剤添加制御機構と、
高分子凝集剤を添加しない工程の後に開放する自動弁が設けられているドレン配管と、
が接続されている、[7]〜[10]のいずれか1項に記載の有機性排水処理装置。
[12]さらに前記混合槽と前記凝集反応槽との間にラインミキサを設け、当該ラインミキサに高分子凝集剤を添加する凝集剤添加配管が接続されている、[7]〜[11]のいずれか1項に記載の有機性廃水処理装置。
[13]屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理する有機性廃水処理において、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理して第1分離液を得る工程と、
当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加してから脱水処理して第2分離液を得る工程と、
を交互に行い、
前記高分子凝集剤を添加する場合には、脱水処理の際に発生する第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収工程を含むことを特徴とする、化成肥料の製造方法。
[14]前記混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理する工程は、高分子凝集剤を添加する工程と添加しない工程との合計時間の60%以下とする、[13]に記載の化成肥料の製造方法。
[15]前記混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに脱水処理することによって得られる第1分離液を生物処理における水素供与体として利用する、[13]又は[14]に記載の化成肥料の製造方法。
[16]前記脱水処理は、高分子凝集剤を添加した混合汚泥を濃縮する濃縮工程と、濃縮した混合汚泥を脱水する脱水工程と、を含み、
前記第2分離液は、当該濃縮工程で得られる、[13]〜[15]のいずれか1項に記載の化成肥料の製造方法。
[17]前記濃縮工程で得られる濃縮物に無機凝集剤をさらに添加した後、脱水処理を行う、[16]に記載の化成肥料の製造方法。
[18]前記脱水処理後の分離液を生物処理における水素供与体として利用する、[17]に記載の化成肥料の製造方法。
[19]屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理するための有機性廃水処理において、
屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理からの余剰汚泥とを混合する混合槽と、
当該混合槽の下流に位置づけられ、混合汚泥を脱水する脱水装置と、
当該混合槽と当該脱水装置の間に位置づけられ、当該混合槽からの当該混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集させる凝集反応槽と、
当該混合槽から、当該凝集反応槽を経由せずに、当該脱水装置に当該混合汚泥を直接送るバイパス経路と、
高分子凝集剤を添加した混合汚泥を脱水して得られる第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
を具備する、化成肥料の製造装置。
当該脱水装置からの分離液及び当該MAP回収装置からの脱離液を貯留する分離液貯留槽と、
当該分離液貯留槽からの分離液を処理する生物処理槽と、
当該生物処理槽の下流に位置づけられている固液分離槽と、
[20]前記混合槽からの混合汚泥を前記凝集反応槽に送る経路と、前記混合槽からの混合汚泥を前記凝集反応槽を経由せずに前記脱水装置に直接送るバイパス経路と、の切り替えを行う第1切替弁と、
前記脱水装置からの第1分離液を前記分離液貯留槽に送る経路と、前記脱水装置からの第2分離液を前記MAP回収装置に送る経路と、の切り替えを行う第2切替弁と、
をさらに具備し、当該第1切替弁と第2切替弁とは連動する、[19]に記載の化成肥料の製造装置。
[21]前記脱水装置は、
高分子凝集剤を添加した混合汚泥に対しては濃縮機として作用し、高分子凝集剤を添加していない混合汚泥に対してはしさ分離機として作用するスクリーンと、
当該スクリーンの下流に位置づけられている脱水機と、
を含み、当該スクリーンからの分離水及び当該脱水機からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路に切り替える切替弁をさらに具備する、[19]又は[20]に記載の化成肥料の製造装置。
[22]前記脱水装置は、スクリーンとして機能する濃縮部と、当該濃縮部の後段に圧搾部と、を具備し、当該濃縮部からの分離水及び当該圧搾部からの分離水をそれぞれ別個にMAP回収装置に送る経路と分離液貯留槽に送る経路に切り替える切替弁をさらに具備する、[19]又は[20]に記載の化成肥料の製造装置。
[23]前記凝集反応槽には、
凝集反応槽への高分子凝集剤の添加を制御する凝集剤添加制御機構と、
高分子凝集剤を添加しない工程の後に開放する自動弁が設けられているドレン配管と、
が接続されている、[19]〜[22]のいずれか1項に記載の化成肥料の製造装置。
[24]さらに前記混合槽と前記凝集反応槽との間にラインミキサを設け、当該ラインミキサに高分子凝集剤を添加する凝集剤添加配管が接続されている、[19]〜[23]のいずれか1項に記載の化成肥料の製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機性廃水処理方法によれば、発生する脱水ケーキの低含水率化及び減容化を達成しながら、脱水処理に必要な凝集剤添加量及び生物処理に必要な水素供与体としての薬品添加量を削減することができるので、維持管理費を削減できると共に、化成肥料として有用なMAPを効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の有機性廃水の処理装置及び当該処理装置を用いた有機性廃水処理方法のフローの説明図である。
【
図2】本発明の別の実施態様を示す処理装置及び処理方法のフローの説明図である。
【
図3】凝集剤添加と無添加との切り替え及び連動するMAP回収への切り替えのタイムチャートの例を示す説明図である。
【0013】
図1に、本発明の有機性廃水の処理装置の概略と当該処理装置を用いた処理フローの概略を示す。
屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理するための有機性廃水処理装置は、屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理からの余剰汚泥とを混合する混合槽10と、混合槽10の下流に位置づけられている混合汚泥を脱水する脱水装置40と、混合槽10と脱水装置40の間に位置づけられている混合槽10からの混合汚泥に凝集剤を添加して凝集させる凝集反応槽20と、混合槽10から凝集反応槽20へ混合汚泥を送る経路30と、混合槽10から凝集反応槽20を経由せずに脱水装置40に混合汚泥を直接送るバイパス経路30Aと、脱水装置40からの分離液を貯留する分離液貯留槽50と、分離液貯留槽50からの分離液を処理する生物処理槽60と、生物処理槽60の下流に位置づけられている固液分離槽61と、脱水装置40からの凝集剤を添加した混合汚泥を脱水して得られる第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置80と、を具備する。
【0014】
混合槽10は、屎尿及び浄化槽汚泥(有機性汚泥)を受け入れて貯留する中継槽であってもよいし、中継槽とは別に設けてもよい。
図1に示す装置では、バイパス経路30Aに混合汚泥を送るため、混合槽10からの混合汚泥を凝集反応槽20に送る経路30との切り替えを行う第1切替弁V1、V2が経路30及びバイパス経路30Aに設けられている。また、脱水装置40からの第1分離液を分離液貯留槽50に送る経路40aと、脱水装置40からの第2分離液をMAP回収装置80に送る経路40bと、の切り替えを行う第2切替弁Vpが脱水装置40と分離貯留槽50との間の経路43に設けられている。なお、
図1において第2切替弁Vpは経路40aと40bの両者に設けられているが、これらをまとめてVpとして説明する。
【0015】
図1の部分拡大図に示すように、脱水装置40が濃縮用スクリーン41と脱水機42とを含む場合には、スクリーン41からの分離液用配管41aに、MAP回収装置80に送る経路40bと分離液貯留槽50に送る経路40aとに切り替える切替弁Vp1及びVp2が設けられている。
【0016】
切替弁V1、V2、Vp、Vp1、Vp2としては、公知の自動切替弁を用いることができ、例えば、空気作動弁、電磁弁、電動弁などを用いることができる。切替弁V1、V2、Vp、Vp1、Vp2は連動しており、V1が「開」、V2が「閉」の場合にVp又はVp1及びVp2は経路40bに切り替え、V1が「閉」、V2が「開」の場合にVp又はVp1及びVp2は経路40aに切り替える。
【0017】
脱水装置40としては、通常の脱水機、たとえば遠心脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、ロータリープレス型脱水機、電気浸透式脱水機などを用いることができる。特に、スクリュープレス脱水機は、低動力で低含水率を達成することができるので好ましい。スクリュープレス脱水機は、円筒形外筒の内部に、円筒形外筒と同心のスクリュー軸及びスクリュー羽根を備え、混合汚泥供給側の濃縮部と、円筒形外筒とスクリュー軸との間の空間が混合汚泥の進行方向に向かって次第に狭くなる脱水ケーキ排出側の圧搾部と、が形成されており、円筒形外筒に分離液排出用の複数の開孔を備える。軸摺動型スクリュープレス脱水機は、脱水汚泥出口方向と並行にスクリュー軸が移動し、脱水汚泥を強制排出する機構を有する。これらのスクリュープレス脱水機を用いることで、脱水ケーキの含水率を大幅に低下させることができる。また、スクリーン機能を奏する濃縮部を前段に含みスクリーンと脱水機とが一体化されている脱水装置ばかりでなく、独立したスクリーンと脱水機とを組み合わせてなる脱水装置を用いることもできる。
【0018】
図1に示す装置では、脱水装置40は、凝集剤添加混合汚泥Aに対しては濃縮機として作用し、凝集剤無添加混合汚泥Bに対してはしさ分離機として作用するスクリーン41と、スクリーン41の下流に位置づけられている脱水機42と、を含む。スクリーン41からの分離液を送る経路41aには、MAP回収装置80に送る経路40b又は脱水機42からの分離液を分離液貯留槽50に送る経路43のいずれかに切り替える切替弁Vp1及びVp2が設けられている。
【0019】
スクリーン41は、目幅0.7〜6mmを有することが好ましい。目幅が広すぎると、小さな夾雑物を除去できないため、しさ分離機として機能しない。目幅が狭すぎると、目詰まりにより流量負荷が過剰になる。スクリーンとしては、回転式、重力式、加圧式などの通常のスクリーンを用いることができる。
【0020】
凝集反応槽20は、混合汚泥及び添加した高分子凝集剤を撹拌混合して、凝集フロックを形成できればよく、公知の撹拌装置を具備する槽を用いることもできる。混合汚泥と高分子凝集剤との混合は、混合汚泥の細部にまで高分子凝集剤を均一に分散させるために、撹拌することが好ましい。これにより、高分子凝集剤の添加量を削減でき、凝集汚泥が緻密になるため脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる。撹拌する手段としては、撹拌翼、シャフト、モーターから構成される通常の撹拌機を好適に挙げることができる。また、凝集反応槽20の直前の配管にラインミキサ11を組み込むこともできる。外部のモーターで回転させる撹拌翼を配管内に設けたラインミキサが好ましい。
【0021】
凝集反応槽20には、凝集反応槽20へ高分子凝集剤を添加する凝集剤添加装置が設けられている。凝集剤添加装置は、通常用いられる薬注装置でよいが、凝集剤添加及び無添加の切り替えを行う制御機構を具備することが好ましい。
【0022】
脱水装置40にて分離された第1分離液を貯留する分離液貯留槽50、生物処理槽60及び固液分離槽61は、通常の有機性廃水処理で用いられる装置でよい。分離液貯留槽50には、MAP回収装置80からの脱離液及びプラント内の雑排水も送液され、後段の生物処理に送られるまで一定時間貯留される。分離液貯留槽50は、分離液の組成変動を緩和するために、分離液を少なくとも0.5日間貯留できる容量を有することが好ましい。生物処理槽60は、脱窒素処理、嫌気性処理又は好気性処理を行う装置であることが好ましい。生物処理槽60及び後続の固液分離槽61から生じる余剰汚泥を混合槽10に戻す余剰汚泥送配管62を具備する。また、固液分離槽61からの汚泥を生物処理槽60に戻す汚泥戻し配管62Aを設けてもよい。
【0023】
脱水装置40にて得られる含水率70%以下の脱水ケーキは、堆肥及び助燃剤として再利用できるため、用途に応じて適宜振り分ける脱水汚泥振分コンベア70を設けてもよい。
【0024】
MAP回収装置80は、リン酸イオン、アンモニウムイオン及びマグネシウムイオンの反応によって生成するMAPの晶析現象を利用して、リンとアンモニウムイオンを含む汚泥にマグネシウム源(塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム等)を添加して、過飽和状態で種晶と接触させ、種晶表面にMAP回収を晶析させて回収する装置であり、マグネシウム源添加手段、pH調整剤添加手段を具備する従来公知の晶析反応槽を用いることができるが、高速処理を可能とする流動式が好ましい。pH調整剤添加手段は、MAP回収装置80に送られる第2分離液のpHをMAP晶析反応に適するpH範囲7.5〜10.0に調節するためにpH調整剤を添加する手段であり、従来公知のものでよい。
【0025】
MAP回収装置80には、MAP又は化成肥料を取り出す製品取出用配管82、及びMAP又は化成肥料を取り出した後の脱離液を分離液貯留槽50に送る脱離液用配管81が設けられている。
【0026】
図2は、本発明の有機性廃水装置の別の実施形態を示す。
図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、説明を省略する。
屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理において発生する余剰汚泥と、の混合汚泥を脱水処理した後に、生物処理するための有機性廃水処理装置は、屎尿及び/又は有機性汚泥と、生物処理からの余剰汚泥とを混合する混合槽10と、当該混合槽10の下流に位置づけられ、混合汚泥を脱水する脱水装置40と、当該混合槽10と当該脱水装置40の間に位置づけられ、当該混合槽10からの当該混合汚泥に凝集剤を添加して凝集させる凝集反応槽20Aと、当該凝集反応槽20Aへの凝集剤の添加を制御する凝集剤添加制御機構と、当該脱水装置40からの分離液を貯留する分離液貯留槽50と、当該分離液貯留槽50からの分離液を処理する生物処理槽60と、生物処理槽60の下流に位置づけられている固液分離槽61と、脱水装置40からの凝集剤を添加した混合汚泥を脱水して得られる第2分離液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置80と、を具備する。
図2に示す有機性廃水処理装置は、
図1に示すバイパス経路30Aを含まず、凝集剤添加制御機構によって凝集剤の添加の有無が制御される。
【0027】
凝集反応槽20Aには、凝集剤を添加しない工程の後に開放する自動弁V3が設けられているドレン配管21が接続されている。ドレン配管21は、混合槽10に接続されている。なお、ドレン配管21を設けなくてもよい。
【0028】
次に、
図1に示すフローを用いて、本発明の有機性廃水処理方法を説明する。
処理対象となる有機性廃水は、屎尿及び/又は浄化槽汚泥(有機性汚泥)を含む。通常、屎尿及び浄化槽汚泥は、トイレットペーパーなどの夾雑物を含有しており、まず破砕処理が行われる。従来は、破砕後の夾雑物を除去する前処理が行われていたが、最近では前処理を行わず夾雑物を含有したままの屎尿及び浄化槽汚泥を処理することも行われている。本発明では、夾雑物の含有の有無、屎尿と浄化槽汚泥との混合比率、及び破砕の程度及び有無にかかわらず、屎尿及び/又は浄化槽汚泥を含む有機性廃水を処理対象とすることができる。
【0029】
有機性廃水は、混合槽10において、生物処理により発生する余剰汚泥と混合されて、混合汚泥となる。次いで、混合汚泥は、経路30を経由して凝集反応槽20に送られ、高分子凝集剤と撹拌混合され、凝集フロックが形成されて凝集剤添加汚泥Aとなる。凝集剤添加汚泥Aは、脱水装置40に送られ、スクリーン41で濃縮され、さらに脱水機42で脱水されて、第2分離液と脱水ケーキとに分けられる。第2分離液は、MAP回収装置80に送られる。MAP回収装置80では、通常のMAP回収と同様に、マグネシウム源が添加された後、晶析法によりMAPを析出させて沈殿物を回収する。回収されたMAPは化成肥料として再利用することができる。
【0030】
凝集剤としてさらに無機凝集剤を混合汚泥に添加してもよい。この場合には、スクリーン41の下流側末端で無機凝集剤を添加する。無機凝集剤を添加した場合は、スクリーン41からの分離液だけを第2分離液としてMAP回収装置80に送り、脱水機42からの分離液は第1分離液として分離液貯留槽50に送る。
【0031】
一方、バイパス経路30Aを経由して、高分子凝集剤の添加なしに脱水装置40に送られる混合汚泥は、スクリーン41でしさ分離され、脱水機42で脱水されて、第1分離液と脱水ケーキとに分けられる。第1分離液は、分離液貯留槽50に所定時間貯留された後、生物処理槽60に送られ、生物処理された後、固液分離槽61で固液分離される。固液分離された水は浄化水として放流されるか又はさらに高度処理に供された後に放流される。固液分離された汚泥は、返送汚泥として生物処理槽60に戻され、余剰汚泥は有機性廃水との混合に使用するため混合槽10に送られる。
【0032】
図2に示すフローでは、屎尿及び/又は有機性汚泥は、生物処理槽60及び固液分離槽61から余剰汚泥送配管62を経由して供給される余剰汚泥と、混合槽10にて混合される。混合汚泥は、経路30を介して凝集反応槽20Aに送られる。
【0033】
凝集反応槽20Aにて高分子凝集剤が添加されなかった混合汚泥は、脱水装置40に送られる。混合汚泥は、スクリーン41でしさ分が除去され、脱水機42で脱水されて、第1分離液と脱水ケーキとに分けられる。第1分離液は、分離液貯留槽50に所定時間貯留された後、生物処理槽60に送られ、生物処理された後、固液分離槽61で固液分離される。固液分離された水は浄化水として放流されるか又はさらに高度処理に供された後に放流される。固液分離された汚泥は、返送汚泥として生物処理槽60に戻され、余剰汚泥は有機性廃水との混合に使用するため混合槽10に送られる。
【0034】
次いで、凝集反応槽20Aで高分子凝集剤が添加されなかった混合汚泥の残りは、ドレン弁V3を開放してドレン21から抜き出され、混合槽10に戻され、新たに供給される屎尿及び/又は有機性汚泥と新たな余剰汚泥がさらに添加されて、再び凝集反応槽20Aに送られる。凝集反応槽20Aにて凝集剤が添加され、凝集剤添加汚泥Aが形成される。このとき、ドレン弁V3は閉じられており、凝集剤添加汚泥Aは脱水装置40に送られる。凝集剤添加汚泥Aは、スクリーン41で濃縮され、脱水機42で脱水されて、第2分離液と脱水ケーキとに分けられる。第2分離液は、MAP回収装置80に送られる。MAP回収装置80では、通常のMAP回収と同様に、マグネシウム源が添加された後、晶析法によりMAPを析出させて沈殿物を回収する。回収されたMAPは化成肥料として再利用することができる。なお、凝集剤として無機凝集剤を添加する場合は、
図1に示す装置における場合と同様に、スクリーン41の下流側末端で無機凝集剤を添加し、無機凝集剤が添加されていないスクリーン41からの分離液だけをMAP回収装置80に送る。
【0035】
図1及び
図2に示す装置においては、脱水装置40として、スクリーン41と脱水機42との組み合わせを用いているが、前段の濃縮部と後段の圧搾部とを一体化してなるスクリュープレス型脱水機を用いることもできる。この場合は、濃縮部がスクリーン41に相当し、圧搾部が脱水機42に相当する。高分子凝集剤が添加された場合には、濃縮部及び圧搾部からの分離液を第2分離液としてMAP回収装置80に送る。高分子凝集剤に加えて無機凝集剤が添加される場合には、無機凝集剤は濃縮部の後、圧搾部の前で添加される。濃縮部からの分離液が第2分離液としてMAP回収装置80に送られる。高分子凝集剤が添加されなかった場合には、濃縮部からの分離液及び圧搾部からの分離液を第1分離液として分離液貯留槽50及び後段の生物処理槽60に送る。
【0036】
図1及び
図2に示す装置において、混合槽10にて形成される混合汚泥を凝集反応槽20又は20Aに送る経路30に、ラインミキサ11を設けてもよい。混合汚泥には、ラインミキサ11にて高分子凝集剤が添加され、さらに凝集反応槽20又は20Aにて高分子凝集剤が添加される。ラインミキサにおける高分子凝集剤の添加量は、処理すべき有機性廃水の性状によっても異なるが、ラインミキサ11にて添加される高分子凝集剤は、凝集反応槽にて添加される高分子凝集剤と同等量以上であることが好ましい。ラインミキサにおける高分子凝集剤の添加がない場合(すなわち、凝集反応槽20又は20Aでの高分子凝集剤の添加のみ)と、ラインミキサにおける高分子凝集剤の添加がある場合(すなわち、ラインミキサ11と凝集反応槽20又は20Aでの高分子凝集剤の添加)との高分子凝集剤の総添加量は、ほぼ同等量とすることができる。ラインミキサ11と凝集反応槽20又は20Aで高分子凝集剤を添加する場合には、無機凝集剤を使用せずに、高分子凝集剤と無機凝集剤との併用の場合と同等の脱水効果を得ることができる。ラインミキサ11での高分子凝集剤の添加及び混合によって、混合汚泥と高分子凝集剤とは、より一層均一に混合される。
【0037】
上述のように、本発明においては、有機性廃水と余剰汚泥との混合汚泥に高分子凝集剤を添加せずに直接脱水処理する工程を含む。高分子凝集剤の添加と無添加とは任意の長さの時間で交互に行われる。高分子凝集剤無添加の総時間は、高分子凝集剤添加時間との合計の60%以下、好ましくは40%以下、特に好ましくは20%以下とする。60%を越えると、余剰汚泥発生量が多くなり、混合汚泥中の余剰汚泥の比率が多くなるため、脱水ケーキの低含水率化及び脱水ケーキの減容化が達成されない。高分子凝集剤使用量の削減効果を得るためには、高分子凝集剤無添加の総時間は1%以上とすることが好ましく、5%以上がより好ましい。
【0038】
また、本発明においては、高分子凝集剤を添加した場合には、凝集剤添加汚泥Aを脱水して得られる第2分離液をMAP回収に送液し、MAPを回収して化成肥料を製造する。高分子凝集剤を添加しない場合には、混合汚泥中のSS分が多すぎて、MAP回収装置が閉塞してしまうため、凝集剤無添加汚泥Bを脱水して得られる第1分離液はMAP回収に送ることを回避する。また、凝集剤無添加汚泥Bは、有機物を豊富に含むため、後続の生物処理に送り、微生物の栄養素となる水素供与体として利用する。
【0039】
高分子凝集剤の添加及び無添加の時間の長さ及び切り替えのタイミングは、生物処理の状態や混合汚泥の性状によって設定することができる。たとえば、屎尿及び/又は有機性汚泥中の水素供与体が多い場合は、凝集剤無添加汚泥Bが少量であっても生物処理に必要な栄養素を提供することができるため、高分子凝集剤の添加時間を長くしてもよい。この場合、MAP回収処理に送る第2分離液の量が増えるため、MAP回収すなわち化成肥料の製造量を増やすことができる。
【0040】
高分子凝集剤の添加及びMAP回収経路への切り替えの例を
図3に示す。なお、
図3に示す凝集剤は高分子凝集剤である。無機凝集剤を添加する場合は、高分子凝集剤の添加のタイミングに合わせて、脱水装置40にて行う。
【0041】
図3は凝集剤添加時間と無添加時間を任意の異なる長さに設定して交互に行う場合のタイムチャートである。
図3(1)〜(3)は、凝集剤添加の切り替えは、
図1に示す切替弁V1、V2の開閉をタイマー設定により自動的に切り替え、バイパス経路30Aを利用して行われる。MAP回収経路への切り替えは、切替弁Vp又はVp1及びVp2を切替弁V1に連動させ、凝集剤添加汚泥Aが脱水処理されるタイミングに合わせて切替弁Vp又はVp1及びVp2を作動させて行う。
【0042】
図3(4)〜(6)は、切替弁V1、V2及びバイパス経路30Aを使用せずに、凝集剤添加制御機構を有する凝集反応槽20Aへの高分子凝集剤の添加及び無添加を交互に行う場合のタイムチャートである。高分子凝集剤の添加は、凝集剤添加装置のON/OFFをタイマー設定により自動的に切り替えることで行うことができる。MAP回収経路への切り替えは、凝集剤添加装置のON/OFFタイマーに連動させ、凝集剤添加汚泥Aが脱水処理されるタイミングに合わせて切替弁Vp又はVp1及びVp2を作動させて行う。
【0043】
図3(7)〜(9)は、
図2に示す処理装置において、切替弁V1、V2及びバイパス経路30Aを使用せずに、ドレン弁V3の開閉調節及び凝集剤添加制御機構を有する凝集反応槽20Aへの高分子凝集剤の添加の有無を切り替える場合のタイムチャートである。ドレン弁V3の開放は、凝集反応槽20Aへの高分子凝集剤無添加の後に行うことが好ましい。
【0044】
図3(1)〜(9)のいずれにおいても、切替弁Vp又はVp1及びVp2のMAP回収装置80への切り替えは、凝集剤添加汚泥Aを脱水処理するタイミングに合わせて行う。
【0045】
なお、ラインミキサ11を具備する装置の場合、高分子凝集剤添加のタイミングは、凝集反応槽20Aへの添加のタイミングと同時である。
後続の脱水処理により含水率70%以下の脱水ケーキを得るためには、高分子凝集剤を添加しない時間は、高分子凝集剤を添加する時間と無添加の時間との合計の60%以下とする。高分子凝集剤を添加しないことにより、有機性廃水中に含まれる有機成分(水素供与体)が脱水処理後の分離液に含まれるため、生物処理に必要な水素供与体(微生物の栄養源)の追加供給を削減することができる。凝集剤の添加と無添加とを交互に行うことにより生じる分離液中有機成分量の変動は、分離液貯留槽50での貯留時間を例えば0.5日以上と長期化することで、相殺することができる。
【0046】
凝集反応槽に添加される凝集剤は、高分子凝集剤である。特にラインミキサを具備する装置を用いる場合には、ラインミキサ及び凝集反応槽に高分子凝集剤のみを添加することができる。脱水効率を向上させるために、高分子凝集剤と無機凝集剤とを併用する場合は、凝集反応槽20又は20Aにて高分子凝集剤を添加した後に、脱水装置40にて脱水される直前、好ましくは濃縮機スクリーン41の下流側末端にて、汚泥に無機凝集剤を添加することが好ましい。高分子凝集剤を先に添加して無機凝集剤を後で添加することにより、脱水性能が向上し、高分子凝集剤の添加量を削減することができる。
【0047】
高分子凝集剤としては、カチオン系高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられる。カチオン性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などのアクリレート系高分子凝集剤;ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などのメタクリレート系高分子凝集剤;アミド基、ニトリル基、アミン塩酸塩、ホルムアミド基等を含むポリビニルアミジン;ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物などが挙げられ、例えば市販のエバグロース(水ing株式会社 登録商標)シリーズを用いることができる。両性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノメチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物、ジメチルアミノメチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物などをあげることができる。高分子凝集剤の添加量は、混合汚泥の性状などによっても異なるが、汚泥中の固形物乾燥重量(DS)に対して0.5〜3.0wt%であることが好ましく、1.0〜2.5wt%であることがより好ましい。
【0048】
また、高分子凝集剤の凝集力を低下させることなく、混合汚泥に均一に分散させ、混合汚泥の細部にまで浸透させ、混合汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせるため、混合汚泥と凝集剤とを1000回転/分以上の撹拌翼の回転数で撹拌することが好ましい。
【0049】
無機凝集剤としては、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムを好ましく用いることができる。中でもポリ硫酸第二鉄が特に好ましい。無機凝集剤の添加量は、混合汚泥の性状などによっても異なり、用いる無機凝集剤の種類によっても異なるが、汚泥中の固形物乾燥重量(DS)に対して0.5〜7.0wt%であることが好ましく、特に1.5〜5wt%程度であることがより好ましい。
【0050】
なお、本発明の処理装置の構成は上述の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限りにおいて種々変更してもよい。たとえば、
図1及び
図2において余剰汚泥送配管62に余剰汚泥貯留槽を設けてもよい。
図2において、混合槽10と凝集反応槽20との間にラインミキサを複数台設けてもよい。
図2において、凝集反応槽20からのドレン21の接続先は、混合槽10として示しているが、混合槽10の前段にある屎尿及び浄化槽汚泥の受入槽(図示せず)でも、余剰汚泥送配管62に設けられた余剰汚泥貯留槽(図示せず)でもよい。また、
図1において、バイパス経路30Aと切替弁V1及びV2を設けているが、バイパス経路30Aを混合槽10に接続させて、切替弁の代わりに専用のポンプ及び破砕装置を設けてもよい。さらに、
図1及び
図2において、第2切替弁Vpを経路40aと40bの両者にそれぞれ設けているが、経路40aと40bとの切り替え点に3方弁を1個設けてもよい。同様に、スクリーン41からの分離液用配管41aからの経路にも2個の切替弁Vp1及びVp2を設けているが、切り替え点に3方弁を1個設けてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
破砕したままで夾雑物を除去していない屎尿及び浄化槽汚泥を含む有機性廃水に、生物処理において生じた余剰汚泥を混合して得た混合汚泥50kL/日を本発明の処理方法で処理する場合と、従来方法で処理する場合を比較した。
【0052】
図1に示す装置を用い、凝集剤の添加及び無添加の切り替え及びMAP回収への切り替えは、
図3(1)に示すタイムチャートに従って行い、T1=48分、T2=12分と設定し、混合汚泥の約20%に対して凝集剤を添加しなかった。
【0053】
無機凝集剤としてポリ硫酸第二鉄、高分子凝集剤としてエバグロースCS−320(水ing株式会社製カチオン系高分子凝集剤)を用いた。無機凝集剤は、濃縮スクリーン41で高分子凝集剤添加混合汚泥を濃縮した後の濃縮物に添加した。濃縮スクリーン41で分離された分離水は第2分離液としてMAP回収装置80に送った。
【0054】
本実施例では、後続の生物処理を脱窒素処理としたため、窒素(N)の分解を促進させるために、水素供与体としてメタノールを生物処理槽に添加した。
各薬剤の添加量と、脱水ケーキの含水率、処理水の水質を表1及び表2に示す。
【0055】
回収したMAPの成分を化成肥料の基準値と比較した試験結果を表3に示す。
[実施例2]
図1に示す装置を用い、高分子凝集剤の添加と無添加との切り替え及びMAP回収への切り替えは
図3(1)に示すタイムチャートに従って、T1=39分、T2=21分と設定し、混合汚泥の約35%に対して高分子凝集剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に行い、各薬剤の添加量と、脱水ケーキの含水率及び処理水の水質を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0056】
回収したMAPの成分を化成肥料の基準値と比較した試験結果を表3に示す。
[実施例3]
バイパス経路を含まない
図2に示す装置を用いて、高分子凝集剤の添加及び無添加の切り替え及びMAP回収への切り替えを
図3(4)に示すタイムチャートに従って、T1=39分、T2=21分と設定し、混合汚泥の約35%に対して高分子凝集剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に行い、各薬剤の添加量と、脱水ケーキの含水率及び処理水の水質を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
[実施例4]
図2に示す装置を用いて、高分子凝集剤の添加及び無添加の切り替え及びMAP回収への切り替えを
図3(7)に示すタイムチャートに従って、T1=39分、T2=21分、T3=3分と設定し、混合汚泥の約35%に対して高分子凝集剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に行い、各薬剤の添加量と、脱水ケーキの含水率及び処理水の水質を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0058】
[比較例]
図1に示す装置を用いて、高分子凝集剤の添加の切り替えを行わず、全量を脱水した。
【0059】
【表1】
【0060】
処理水の水質を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
各検査項目の検査方法は以下の通りである。
水素イオン濃度:JIS K 0102-12.1
生物化学的酸素要求量(BOD):JIS K-0102-21及び-32.1
化学的酸素要求量(COD
Mn):JIS K-0102-17
浮遊物質量(SS):昭和46年環境庁告示第59号付表8
全窒素:JIS K-0102-45.1
全リン:JIS K-0102-46.3.3
色度:平成4年厚生省令第69号 45
大腸菌群数:昭和37年厚生省・建設省令第1号
【0063】
【表3】
【0064】
混合汚泥の20%に対して凝集剤を添加しなかった場合(実施例1)の薬剤の添加量は、混合汚泥の全量に凝集剤を添加した場合に比較して、無機凝集剤を約55%、高分子凝集剤を約20%、メタノールを約50%削減できた。混合汚泥の35%に対して凝集剤を添加しなかった場合(実施例2)の薬剤の添加量の削減率は、無機凝集剤が約61%、高分子凝集剤が約35%、メタノールが約86%、同じく実施例3では、無機凝集剤が約66%、高分子凝集剤が約36%、メタノールが約86%、ラインミキサを用いて高分子凝集剤のみを添加した場合(実施例4)の薬剤の添加量の削減率は、無機凝集剤が100%、高分子凝集剤が約30%、メタノールが約86%であった。各実施例とも脱水ケーキの含水率は70%以下を達成し、処理水は放流水質基準を達成した。
【0065】
本発明の処理方法によれば、凝集剤無添加処理の総時間が凝集剤添加時と無添加時との合計時間の60%以下となるように凝集剤の添加と無添加とを切り替えることにより、脱水ケーキの含水率70%及び処理水の水質基準を達成しながら、メタノール、無機凝集剤、高分子凝集剤のいずれも添加量を削減できた。
【0066】
本方法により回収したMAPは、化成肥料としての基準値を満たすことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
脱水処理と生物処理とを併用する屎尿及び浄化槽汚泥を含む有機性廃水の処理における凝集剤及び生物処理における栄養源となる薬剤の使用量を削減できると共に、回収したMAPを化成肥料として再利用できる。