(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、
図1を用いて、本発明の実施の一形態に係る照明制御システム4の構成について説明する。
【0028】
照明制御システム4は、部屋1の内部(室内)に在室している人(対象者2)の快適度が改善するように、室内の照明環境を自動的に調節するものである。照明制御システム4は、主としてアンビエント照明装置10、タスク照明装置20、快適度申告ダイヤル30及びパソコン40を具備する。
【0029】
アンビエント照明装置10は、本発明に係る照明手段及びアンビエント照明手段の実施の一形態である。アンビエント照明装置10は、室内全体の照明(アンビエント照明)を調節するものである。アンビエント照明装置10は、部屋1の天井に互いに間隔をおいて複数設けられる。アンビエント照明装置10は、対象者2に対する相対的な位置関係に応じて前方照明装置11、上方照明装置13及び後方照明装置15に分類される。
【0030】
前方照明装置11は、対象者2の前方に配置されたアンビエント照明装置10である。前方照明装置11は、光の色(色温度)が異なる白色灯11a及び橙色灯11bを具備する。白色灯11aは白色(昼白色)の光を発することが可能な電灯である。橙色灯11bは橙色(電球色)の光を発することが可能な電灯である。
【0031】
前方照明装置11は、白色灯11a及び橙色灯11bの照明状態を、明るさが弱い「弱」、明るさがやや強い「中」、明るさが強い「強」又は消灯している「切」のいずれかに切り替えることができる。以下では、このような照明状態(「弱」、「中」、「強」又は「切」)を「点灯度」と称する。前方照明装置11は、白色灯11a及び橙色灯11bの点灯度を適宜調節することで、室内全体の照明を調節することができる。
【0032】
上方照明装置13は、対象者2の上方(略真上)に配置されたアンビエント照明装置10である。上方照明装置13は、前方照明装置11と同様に白色灯13a及び橙色灯13bを具備する。上方照明装置13は、白色灯13a及び橙色灯13bの点灯度を適宜調節することで、室内全体の照明を調節することができる。
【0033】
後方照明装置15は、対象者2の後方に配置されたアンビエント照明装置10である。後方照明装置15は、前方照明装置11及び上方照明装置13と同様に白色灯15a及び橙色灯15bを具備する。後方照明装置15は、白色灯15a及び橙色灯15bの点灯度を適宜調節することで、室内全体の照明を調節することができる。
【0034】
タスク照明装置20は、本発明に係る照明手段及びタスク照明手段の実施の一形態である。タスク照明装置20は、対象者2の周囲の局所的な照明(タスク照明)を調節するものである。タスク照明装置20は、対象者2が着座する机3にそれぞれ対応して設けられる。タスク照明装置20は、その点灯度(「弱」、「中」、「強」又は「切」)を適宜調節することで、対象者2の作業スペースである机3の上の局所的な照明を調節することができる。
【0035】
快適度申告ダイヤル30は、本発明に係る快適度検出手段の実施の一形態である。快適度申告ダイヤル30は、照明状態に対する対象者2の快適度を検出するものである。
【0036】
ここで「快適度」とは、対象者2が周囲の照明状態(本実施形態においては、アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の点灯度)から感じる快適さ(快感/不快感)の度合いを示すものである。対象者2が快適と感じるほど快適度は高く、対象者2が不快と感じるほど快適度は低いものとする。
【0037】
快適度申告ダイヤル30は、対象者2が着座する机3の上に配置される。対象者2が、自らが周囲の照明状態に対して感じている快適度を快適度申告ダイヤル30で指し示すことによって、当該対象者2の現在の照明状態に対する快適度を検出することができる。
【0038】
パソコン40は、本発明に係る制御手段の実施の一形態である。パソコン40は、対象者2の快適度が改善(向上)するように、アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の点灯度(照明状態)を調節するものである。パソコン40は、RAMやROM等の記憶部、CPU等の演算処理部等により構成され、種々の情報に基づいて所定の演算処理や記憶等を行うことができる。
【0039】
パソコン40はアンビエント照明装置10に接続され、当該アンビエント照明装置10の運転(点灯度)を制御することができる。
パソコン40はタスク照明装置20に接続され、当該タスク照明装置20の運転(点灯度)を制御することができる。
なお、パソコン40は、アンビエント照明装置10に複数設けられる白色灯及び橙色灯の点灯度、並びにタスク照明装置20の点灯度を個別に制御することができる。
【0040】
パソコン40は快適度申告ダイヤル30に接続され、当該快適度申告ダイヤル30による検出結果(検出された対象者2の快適度)を受信することができる。
【0041】
なお、
図1においては、説明の便宜上、室内に対象者2が1名だけ在室している様子を図示しているが、本発明はこれに限るものではなく、2名以上の対象者2が在室していても良い。照明制御システム4は、部屋1に在室している全ての対象者2の快適度がそれぞれ改善するように、アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の照明状態を制御することが可能である。
この場合、複数のアンビエント照明装置10の中から、各対象者2に対する相対的な位置関係に応じて、それぞれの対象者2についての前方照明装置11、上方照明装置13及び後方照明装置15が選定される。また、各対象者2に対応して快適度申告ダイヤル30が設けられる。
【0042】
次に、
図2を用いて、上述の如く構成された照明制御システム4による、部屋1内の照明の制御の様子(照明制御方法)について説明する。
【0043】
照明制御システム4は、室内に在室している全ての対象者2の快適度がそれぞれ改善するように、各対象者2の快適度を常時検出し、当該快適度に基づいて照明(アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の点灯度)を自動的に制御する。この際、各対象者2の快適度がそれぞれ改善するような照明パターン(各照明の点灯度の組み合わせ)を効率的かつ柔軟に探索するために、「学習」及び「生体ゆらぎ理論」が用いられる。以下、このような照明制御システム4による制御について順に説明する。
【0044】
パソコン40による制御の前提として、初期状態においては、パソコン40はアンビエント照明装置10及びタスク照明装置20を所定の点灯度(初期値)に設定する。
【0045】
図2に示すステップS110において、パソコン40は、快適度申告ダイヤル30を用いて検出された室内に在室している各対象者2の快適度をそれぞれ取得する。
パソコン40は、当該ステップS110の処理を行った後、ステップS120に移行する。
【0046】
ステップS120において、パソコン40は、照明パターンとステップS110で得られた各対象者2の快適度との組み合わせの履歴から、対象者2ごとの照明状態(点灯度)に対する快適度の判断基準を学習する。すなわち、快適に感じる点灯度は対象者2ごとに異なる(個人差がある)ため、当該対象者2ごとの快適度の判断基準(好みの点灯度)を学習する。
具体的には、対象者2の快適度に影響を与える各要因の「影響の大きさ(影響度)」、及び当該各要因の点灯度の「希望値」を、線形重回帰分析を用いて学習する。
【0047】
ここで、本実施形態における、対象者2の快適度に影響を与える「要因」とは、(1)前方照明装置11の白色灯11a、(2)前方照明装置11の橙色灯11b、(3)上方照明装置13の白色灯13a、(4)上方照明装置13の橙色灯13b、(5)後方照明装置15の白色灯15a、(6)後方照明装置15の橙色灯15b及び(7)タスク照明装置20の7つの照明である。
また、「影響の大きさ(影響度)」とは、各要因が対象者2の快適度に与える影響の大きさの度合いである。7つの要因が対象者2の快適度に与える影響の大きさは、当該対象者2との相対的な位置関係や要因自体の照明としての機能及び性能等によってそれぞれ異なると考えられる。
また、「希望値」とは、対象者2の快適度が改善する各要因の点灯度の値(「弱」、「中」、「強」又は「切」)である。すなわち、「希望値」は、各対象者2が快適に感じる(好みの)各要因の点灯度である。
【0048】
なお、ステップS120の処理内容の詳細については後述する。
パソコン40は、ステップS120の処理を行った後、ステップS130に移行する。
【0049】
ステップS130において、パソコン40は、ステップS120における学習結果に基づいて、各要因の点灯度の実際の制御値(目標値)を決定する。
具体的には、ステップS120における学習結果に基づいて算出される各要因の点灯度の制御値に、生体ゆらぎ理論によるノイズを加算したものを、実際の制御値として決定する。
なお、ステップS130の処理内容の詳細については後述する。
パソコン40は、ステップS130の処理を行った後、ステップS140に移行する。
【0050】
ステップS140において、パソコン40は、各要因の点灯度がステップS130において決定された制御値(目標値)になるように、各要因の点灯度を制御する。
【0051】
照明制御システム4においては、上記ステップS110からステップS140までの一連の処理(当該一連の処理を単に「照明制御」と記す)を繰り返すことで、室内に在室している複数の対象者2の快適度がそれぞれ改善するように、照明を自動的に制御することができる。
この照明制御のステップS120において、対象者2の快適度に影響を与える各要因の「影響度」、及び当該各要因の点灯度の「希望値」を学習することで、対象者2の快適度を改善することが可能な各要因の点灯度を効率的に探索することが可能となる。また、照明制御の繰り返しに伴って学習を繰り返すことで、当該学習の精度(確かさ)の向上が期待される。
また、照明制御のステップS130において、生体ゆらぎ理論を用いることで、ステップS120の学習の不確かさ等を考慮した柔軟な点灯度の探索が可能となる。
【0052】
次に、
図3(a)を用いて、ステップS120(学習)の処理内容について詳細に説明する。
【0053】
ステップS121において、パソコン40は、重回帰分析の前処理を行う。
具体的には、パソコン40は、各要因(各照明)の点灯度の制御値(「弱」、「中」、「強」又は「切」)を質的データとして捉えて、数量化1類のカテゴリーデータとして入力する。
パソコン40は、ステップS121の処理を行った後、ステップS122に移行する。
【0054】
ステップS122において、パソコン40は、各要因の点灯度の制御値及び当該各要因を当該制御値に制御した際に取得した対象者2の快適度の履歴から、数量化1類を利用した重回帰分析によって、下記の数1に示すような快適度と各要因の点灯度(照明状態)との関係を学習(算出)する。
【0056】
なお、本実施形態の例で言えば、快適度に影響する要因(照明)の個数は上述の如く7つ(k=0,1,2,・・・6)である。
【0057】
パソコン40は、各対象者2について、上記数1のような快適度と各要因の点灯度との関係を学習する。
パソコン40は、ステップS122の処理を行った後、ステップS123に移行する。
【0058】
ステップS123において、パソコン40は、重回帰分析の後処理を行う。
具体的には、パソコン40は、ステップS122において学習した快適度と各要因(各照明)の点灯度(照明状態)との関係(数1)を用いて、各要因の点灯度の「希望値」(下記数2参照)及び対象者2の快適度に影響を与える各要因の「影響度」(下記数3参照)を算出する。
【0061】
上記数2に示すように、ある要因の希望値を求める場合、他の要因の点灯度を固定した状態で、希望値を求める要因の点灯度を「弱」、「中」、「強」又は「切」に変化させ、それぞれの場合の快適度を算出する。そして、算出された快適度が最大になる点灯度を、当該要因の希望値とする。
【0062】
また、上記数3に示すように、ある要因の影響度を求める場合、他の要因の点灯度を固定した状態で、影響度を求める要因の点灯度を「弱」、「中」、「強」又は「切」に変化させ、それぞれの場合の快適度を算出する。そして、算出された快適度の最大値と最小値との差(快適度の変化の幅)を影響度とする。
【0063】
パソコン40は、ステップS123の処理を行った後、ステップS120の処理を終了し、ステップS130(
図2参照)に移行する。
【0064】
上述の如く、ステップS120(学習)の処理においては、各要因(各照明)の点灯度の制御値及び取得した対象者2の快適度から、快適度と各要因の点灯度(照明状態)との関係を学習する。このように、限られたデータから快適度と各要因の点灯度(照明状態)との関係(数1参照)を学習して利用することで、効率的な快適度の改善を図ることができる。
【0065】
次に、
図3(b)を用いて、ステップS130(制御値の決定)の処理内容について詳細に説明する。
【0066】
ステップS131において、パソコン40は、ステップS120における学習結果に基づいて各要因(各照明)の点灯度の制御値を算出する。
具体的には、パソコン40は、ある要因の点灯度の制御値を求める場合、当該要因の各対象者2に対する影響度の合計が1になるように正規化し、当該影響度により重み付けされた当該要因の希望値の平均値を制御値とする(下記数4参照)。
【0068】
パソコン40は、ステップS131の処理を行った後、ステップS132に移行する。
【0069】
ステップS132において、パソコン40は、生体ゆらぎ理論(ゆらぎ)によるノイズを算出する。
【0070】
ここで、「生体ゆらぎ理論(ゆらぎ)」とは、状況の良さに応じてノイズの大きさを変更し、当該ノイズの範囲内から制御値を探索する手法である。
すなわち、状況が良い場合には小さなノイズを用いて、近傍(狭い範囲)から制御値を丁寧に探索する。一方、状況が悪い場合には大きなノイズを用いて、広範囲から制御値を探索する。
【0071】
本実施形態においては、状況の良さとは「学習(ステップS120参照)の確かさ」を意味する。すなわち、学習が不確かな場合に大きなノイズ、学習が確かな場合に小さなノイズを与えることで、学習の不確かさによる制御効率の悪化を抑制することができる。
【0072】
上記「学習の確かさ」の指標としては、各対象者2の希望値の時間軸における分散を用いる。分散が大きい場合には、希望値の学習が大きく変動していることを表しているため、学習が不確かであると判断し、ノイズを大きくする。このゆらぎによるノイズの算出方法を数式で表すと、下記の数5のようになる。
【0074】
パソコン40は、ステップS132の処理を行った後、ステップS133に移行する。
【0075】
ステップS133において、パソコン40は、上記ステップS131において算出された学習結果に基づく制御値に、上記ステップS132において算出されたノイズを加えて、各要因の点灯度の実際の制御値(目標値)を算出(決定)する。すなわち、パソコン40は、ステップS131において算出された学習結果に基づく制御値を中心とするノイズの範囲内から、次の制御値を探索することになる。
【0076】
上述の如く、ステップS130(制御値の決定)の処理においては、ステップS120における「学習の確かさ」に基づくノイズを設定し、当該ノイズの範囲内から次の制御値を探索する。このように、学習に加えて生体ゆらぎ理論を用いることで、当該学習の不確かさを考慮し、当該学習の結果だけに縛られることなく柔軟な制御値の探索が可能となる。
【0077】
また、上述の照明制御を繰り返し行うことによって、対象者2の快適度への影響(影響度)が小さい照明(例えば、対象者2から遠く離れた位置にある照明)の点灯度は低くなることが期待されるため、省エネ効果も期待することができる。
また、上述の照明制御を繰り返し行うことによって、状況の変化(例えば、対象者2の好みの変化、部屋1の外部からの光の変化、対象者2の移動等)にも追従することができる。
【0078】
また、上述の照明制御では、各要因(照明)の照明状態として、明るさだけでなく、色(色温度)や前後に配置された照明のバランス等も考慮した制御を効率的に行うことができる。
【0079】
以上の如く、本実施形態に係る照明制御システム4は、
照明状態の調節が可能な照明手段(アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20)と、
前記照明手段による照明状態に対する対象者2の快適さの度合いである快適度を検出する快適度申告ダイヤル30(快適度検出手段)と、
対象者2の快適度が改善するように、前記照明手段の照明状態を調節するパソコン40(制御手段)と、
を具備する照明制御システム4であって、
パソコン40は、
前記照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を学習し(上記数1)、
学習した前記照明手段の照明状態(点灯度)と対象者2の快適度との関係から対象者2の快適度を改善することが可能な前記照明手段の照明状態の希望値を算出し(上記数2)、
前記希望値に、生体ゆらぎ理論に基づいて算出されたノイズを加算して前記照明手段の照明状態の目標値を算出し(上記数4及び数5)、
前記照明手段の照明状態が前記目標値となるように調節する一連の照明制御を繰り返すものである。
このように構成することにより、前記照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を学習することで、対象者2の快適度を改善することができる照明状態を効率良く探索すると同時に、生体ゆらぎ理論を用いることで、対象者2の快適度を改善することができる照明状態をノイズの範囲から柔軟に探索することができる。すなわち、快適度を改善するための制御の効率化と高精度化の両立を図ることが可能となる。
【0080】
また、パソコン40は、
対象者2が複数いる場合には、
前記照明手段による照明状態が各対象者2の快適度に与える影響の大きさの度合いである影響度を算出し(上記数3)、
各照明手段についての影響度によって重み付けされた前記希望値の平均値を算出し(上記数4)、
当該希望値の平均値に、生体ゆらぎ理論に基づいて算出されたノイズを加算して前記照明手段の照明状態の目標値を算出する(上記数4及び数5)ものである。
このように構成することにより、複数の対象者2の快適度を同時に改善することができる。
【0081】
また、前記照明手段は、
室内全体を照明するアンビエント照明装置10(アンビエント照明手段)と、
対象者2に対応して設けられ、当該対象者2の周囲を局所的に照明するタスク照明装置20(タスク照明手段)と、
を含み、
パソコン40は、
アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の照明状態をそれぞれ個別に調節するものである。
このように構成することにより、アンビエント照明装置10とタスク照明装置20を組み合わせて用いている場合にも、対象者2の快適度が改善するような照明状態の制御を行うことができる。
【0082】
また、アンビエント照明装置10は、
対象者2に対して相対的に異なる位置に複数設けられ、
パソコン40は、
前記複数のアンビエント照明装置10の照明状態をそれぞれ個別に調節するものである。
このように構成することにより、異なる位置に設けられた複数のアンビエント照明装置10を用いている場合にも、対象者2の快適度が改善するような照明状態の制御を行うことができる。
【0083】
また、前記照明手段の照明状態は、
当該照明手段による照明の明るさ(「弱」、「中」、「強」又は「切」)及び/又は当該照明手段による照明の光の色(白色又は橙色)を含むものである。
このように構成することにより、照明の明るさ及び/又は照明の色を制御することで、対象者の快適度の改善を図ることができる。
【0084】
また、パソコン40は、
前記照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を学習する際に、線形重回帰分析を用いるものである。
このように構成することにより、照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を適切に学習することができる。
【0085】
また、パソコン40は、
前記希望値の分散が大きいほど前記ノイズの分散が大きくなるように設定するものである。
このように構成することにより、より効率的かつ柔軟に対象者2の快適度の改善を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る照明制御方法は、
照明手段(アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20)による照明状態に対する対象者2の快適さの度合いである快適度が改善するように、前記照明手段の照明状態を調節する照明制御方法であって、
前記照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を学習し、
学習した前記照明手段の照明状態(点灯度)と対象者2の快適度との関係から対象者2の快適度を改善することが可能な前記照明手段の照明状態の希望値を算出し、
前記希望値に、生体ゆらぎ理論に基づいて算出されたノイズを加算して前記照明手段の照明状態の目標値を算出し、
前記照明手段の照明状態が前記目標値となるように調節する一連の照明制御を繰り返すものである。
このように構成することにより、前記照明手段の照明状態と対象者2の快適度との関係を学習することで、対象者2の快適度を改善することができる照明状態を効率良く探索すると同時に、生体ゆらぎ理論を用いることで、対象者2の快適度を改善することができる照明状態をノイズの範囲から柔軟に探索することができる。すなわち、快適度を改善するための制御の効率化と高精度化の両立を図ることが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態においては、
図1を用いて照明制御システム4の構成を説明したが、本発明の構成は当該照明制御システム4の構成に限るものではない。すなわち、本発明は、アンビエント照明装置10及びタスク照明装置20の個数や設置場所等を限定するものではない。例えば、本実施形態においては、アンビエント照明装置10は対象者2に対して前方、上方又は後方に配置されるものとしたが、対象者2の左右側方に配置されたアンビエント照明装置10を考慮した制御を行うことも可能である。
【0088】
また、本実施形態においては、白色灯と橙色灯を別個に設け、それぞれの点灯度を調節する構成としたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、明るさと色をそれぞれ調節可能な電灯を使用しても良い。
【0089】
また、本実施形態においては、各要因(照明)の点灯度は「弱」、「中」、「強」又は「切」のいずれか(4段階)に調節する構成としたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち照明の調節可能な段階は任意に設定することが可能である。
【0090】
また、本実施形態においては、快適度申告ダイヤル30を用いて対象者2の快適度を検出する構成としたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、対象者2の表情や行動を検出して、当該表情や行動に基づいて快適度を検出する構成であっても良い。
【0091】
また、本実施形態においては、パソコン40によって照明制御が行われる構成としたが、本発明はこれに限るものではなく、照明制御を行う制御手段は任意に構成することが可能である。また、当該制御手段に種々の情報を表示させることが可能な表示装置を接続し、照明制御に関する情報を表示させる構成とすることも可能である。
【0092】
また、本実施形態においては、ステップS120において線形重回帰分析を用いて学習を行うものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、非線形重回帰分析やニューラルネットワーク等の他の手法を用いて学習を行うことも可能である。
【0093】
また、本実施形態においては、照明制御内(ステップS110からステップS140まで)で得られたデータに基づいて学習(ステップS120)を行う構成としたが、事前に実験等によって得られたデータを用いることも可能である。
【0094】
また、本実施形態においては、ステップS130においてノイズを算出する際に、状況の良さ(学習の確かさ)を示す指標として、各対象者2の希望値の時間軸における分散を用いたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、各対象者2の快適度の時間軸における分散を用いる構成や、希望値及び快適度の両方を組み合わせて用いる構成とすることも可能である。