特許第6239355号(P6239355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239355
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/22 20060101AFI20171120BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20171120BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 220/14 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 61/18 20060101ALI20171120BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   C04B24/22 C
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B28/02
   C08L33/08
   C08F220/14
   C08F220/06
   C08F220/28
   C08L61/34
   C08L61/18
   C04B103:30
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-244616(P2013-244616)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101520(P2015-101520A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】秋野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】岡内 伸曉
(72)【発明者】
【氏名】小柳 幸司
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−308854(JP,A)
【文献】 特開平11−012010(JP,A)
【文献】 特開昭60−161365(JP,A)
【文献】 特開昭61−031333(JP,A)
【文献】 特開2010−030795(JP,A)
【文献】 特開昭63−039906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重合体(A)と下記重合体(B)とを含有する水硬性組成物用添加剤。
重合体(A):
構成単量体として、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルを含み、
全構成単量体中、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計の割合が95モル%以上であり、
アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下である、
重量平均分子量が17000以上、30000以下の共重合体
重合体(B):
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物
【請求項2】
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、25モル%以下、
アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が27モル%以上、55モル%以下の共重合体である、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、35モル%以下の共重合体である、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が20モル%以上、35モル%以下、アクリル酸メチルの割合が50モル%以上、60モル%以下の共重合体である、請求項1又は3に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が12モル%以上、17モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が27モル%以上、32モル%以下、アクリル酸メチルの割合が52モル%以上、57モル%以下の共重合体である、請求項1〜の何れか1項記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
重合体(A)において、アクリル酸メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルのモル比が、0.6以上、3.0以下である、請求項1〜の何れか1項記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項7】
請求項1〜の何れか1項記載の水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と、水と、骨材とを含有する水硬性組成物。
【請求項8】
下記重合体(A)、下記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製し、該水硬性組成物を、該水硬性組成物の調製場所とは異なる場所に運搬する、水硬性組成物の運搬方法。
重合体(A):
構成単量体として、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルを含み、
全構成単量体中、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計の割合が95モル%以上であり、
アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下である、
重量平均分子量が17000以上、30000以下の共重合体
重合体(B):
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物
【請求項9】
水硬性組成物を、混練後、90分以上300分以下かけて前記異なる場所に運搬する、請求項記載の水硬性組成物の運搬方法。
【請求項10】
下記重合体(A)、下記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製する、水硬性組成物の製造方法。
重合体(A):
構成単量体として、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルを含み、
全構成単量体中、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計の割合が95モル%以上であり、
アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下である、
重量平均分子量が17000以上、30000以下の共重合体
重合体(B):
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水硬性組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートなどの水硬性組成物の分散剤として、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、NSFともいう)とポリカルボン酸系分散剤が良く用いられている。NSFは温度やコンクリートの種類に対しても性能の振れが少ないという特徴があり、更に価格が安いという特徴がある。一方、流動保持性が低いという問題がある。
コンクリート製品には、型枠中で硬化させた硬化物として販売される二次製品と呼ばれるものと、混練後、未硬化の状態で販売される生コンクリート(フレッシュ・コンクリート、生コンなどと称されることもある)と呼ばれるものがある。生コンクリートでは混練してから工事現場で打設するまでに運搬という工程が入ることで、混練後に長時間の流動保持性が求められる。このため、JIS A5308では混練から90分以内に荷下ろしし、荷下ろしした時の流動性が定められた範囲内であることが規定されている。
【0003】
特許文献1には、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAともいう)由来の構成単位を70重量%以上含む構成単位からなる重合体とNSFとを含有するコンクリート製品の製造方法が記載されている。実施例ではアクリル酸(以下、AAともいう)とHEAの共重合体及びHEAの重合体を用いることで、混練から30分後の流動性が良くなることが記載されている。特許文献2には、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合物とセメント分散剤を必須成分とするスランプロス防止型セメント分散剤が記載されている。実施例では、ポリアクリル酸メチルとNSFを併用することで、混練から120分後でもスランプ残存率が高いコンクリートを記載している。特許文献3には、セメントと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのポリマーとを用いたセメント組成物が開示されており、その実施例では、HEAのポリマーをスチレンスルホン酸系コポリマーからなる減水剤と共に用いて、最大100分までの貫入試験を実施している。特許文献4には、NSFと、α,β−不飽和カルボン酸、炭素数1〜4のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル及び共重合可能な単量体を所定比率で重合してなる共重合体とを含有するセメント分散剤が開示されている。特許文献5には、アクリル酸等の特定のエチレン系不飽和酸と、アクリル酸等の特定のエチレン系不飽和酸のヒドロキシ(C2〜C3)アルキルエステルとを所定のモル%で共重合したコポリマーを、セメント添加剤として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−30795号公報
【特許文献2】特開昭60−161365号公報
【特許文献3】米国特許登録4792360号明細書
【特許文献4】特開平1−308854公報
【特許文献5】特開昭63−39906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NSFは価格が安いことから海外、特に東南アジアでよく用いられている。東南アジアでは日本と異なり、インフラが未整備のためコンクリートを混練してから、運搬し、現場に到着するまでに長時間、例えば180分近くかかることが多くある。
【0006】
このような状況下でコンクリート施行を行う場合、コンクリート配合基地で混練した後、長時間運搬し、施行するため、長時間運搬後の流動性が基地での混練時の流動性と変化が少なく保持していること、運搬にかかる時間も道路混雑状況などによってまちまちになってしまうため、運搬時間のどの時点でも流動性の変化が少ないほぼ同様の流動性が得られることと、さらに煩雑な出荷作業の効率化のために混練直後の流動性変化が少なく、出荷検査での振れが少ないことが要求される。
【0007】
本発明の課題は、混練から長時間経過後も(例えば、混練から180分後でも)、水硬性組成物の流動性を保つことができ、混練初期(例えば、混練直後から15分間)の流動性変化が少なく、運搬を想定した長時間(例えば、混練直後15分から180分の間)においても流動性の変化が少ない水硬性組成物用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記重合体(A)と下記重合体(B)とを含有する水硬性組成物用添加剤に関する。
重合体(A):
構成単量体として、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルを含み、
全構成単量体中、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計の割合が95モル%以上であり、
アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下である、
重量平均分子量が17000以上30000以下の共重合体
重合体(B):
芳香環を含む構成単位を有する共重合体
【0009】
また、本発明は、前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製し、該水硬性組成物を、該水硬性組成物の調製場所とは異なる場所に運搬する、水硬性組成物の運搬方法に関する。
【0010】
また、本発明は、前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製する、水硬性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、混練初期(例えば混練直後から15分間)の流動性変化が少なく、運搬を想定した時間(例えば混練直後15分から180分の間)においても流動性の変化が少なく、混練から長時間経過後も(例えば、混練から180分後でも)水硬性組成物の流動性を保つことができる水硬性組成物用添加剤が提供される。本発明の水硬性組成物用添加剤を用いることで、インフラが未整備の東南アジア等でも利用できる水硬性組成物を提供できる。
【0012】
なお、本発明において、混練からの経過時間は、水硬性粉体と、水硬性組成物を調製するための水とが最初に接した時点から起算するものとすることができる。例えば、混練から180分後とは、水硬性粉体と水硬性組成物を調製するための水とが最初に接した時点を始点とし、そこから180分後の時点をいうものとすることができる。
【0013】
以下、アクリル酸又はその塩をAA、アクリル酸2−ヒドロキシエチルをHEA、アクリル酸メチルをAMとして説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明により、混練から長時間経過後も(例えば、混練から180分後でも)、水硬性組成物の流動性を保つことができる水硬性組成物用添加剤が提供される理由は明らかではないが、次のように推察される。
構成単量体がAAだけである場合、重合体はセメントに速やかに吸着するため、初期の流動性は発現するが、流動保持性はほとんど発現しない。本発明の重合体(A)は、AAと共にHEAとAMとを構成単量体として含んでいる。このような重合体(A)を重合体(B)と共に用いて水硬性組成物を調製すると、水硬性粉体と水とを混練した後に、HEAとAMがAAを徐放する成分とし機能する。また、HEAの加水分解速度は比較的速いので、混練終了から1時間程度の保持性に寄与する。一方、AMは加水分解速度が比較的遅いので、混練後2時間程度からそれ以降の保持性に寄与する。HEAとAMとAAの特定の組成比の時に、混練初期(例えば混練直後から15分間)の流動性変化が少なく、運搬を想定した時間(例えば混練直後15分から180分の間)においても流動性の変化が少なく、混練から長時間経過後も(例えば、混練から180分後でも)水硬性組成物の流動性を保つことができることを見出した。
また、重合体(A)は重量平均分子量が所定範囲にある。これにより、重合体(A)の吸着基であるカルボキシル基又はその塩とセメントとの距離が適度に離れた状態となるため、吸着速度が遅くなり流動保持性が向上する。
重合体(B)は、初期の流動性には優れているが、流動保持性に乏しい。しかし、本発明では、上記の機構により流動保持性の向上に寄与すると考えられる重合体(A)を重合体(B)と併用することにより、混練から長時間経過後も(例えば、混練から180分後でも)、水硬性組成物の流動性を保つことができる。
【0015】
<重合体(A)>
重合体(A)は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩(AA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、及びアクリル酸メチル(AM)の3つの単量体を、所定条件で含む重合体である。
【0016】
AAのうち、アクリル酸の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩が挙げられ、アルカリ金属塩、更にナトリウム塩が好ましい。アクリル酸の塩は、重合体の共重合後に中和して形成されたものであってもよい。
【0017】
重合体(A)は、水硬性組成物の流動性を落とさない観点から、AA、HEA及びAMを、全構成単量体中、95モル%以上含む共重合体である。全構成単量体中、AA、HEA及びAMの合計の割合は99モル%以上が好ましく、そして、100モル%以下が好ましく、100モル%がより好ましい。
【0018】
重合体(A)の重量平均分子量は、重合体を安定に合成する観点から、17000以上であり、20000以上が好ましい。また、混練から180分後の流動保持率を高くする観点から、30000以下であり、25000以下が好ましく、23000以下がより好ましい。重合体(A)重量平均分子量は、下記条件のサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
[GPC条件]
標準物質:ポリエチレングリコール換算(重量平均分子量 258,000 185,000 101,000 21,000 12,600 6,450 1,420)
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0019】
重合体(A)は、混練から180分後の流動保持率を高める観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が5モル%以上、35モル%以下、HEAの割合が15モル%以上、55モル%以下、AMの割合が25モル%以上、60モル%以下である。ここで、各モル%は、合計が100モル%となるように選定される(以下同様。)
【0020】
重合体(A)は、混練直後と混練から15分後の流動性の変化率を抑える観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が5モル%以上、25モル%以下、HEAの割合が15モル%以上、55モル%以下、AMの割合が25モル%以上、60モル%以下の共重合体であることが好ましい。
【0021】
重合体(A)は、混練直後と混練から15分後の流動性の変化率を抑える観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が5モル%以上、25モル%以下、HEAの割合が27モル%以上、55モル%以下、AMの割合が25モル%以上、60モル%以下の共重合体であることが好ましい。
【0022】
重合体(A)は、混練から15分後と混練から180分後の流動性の変化率を抑える観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が5モル%以上、35モル%以下、HEAの割合が15モル%以上、35モル%以下、AMの割合が25モル%以上、60モル%以下の共重合体であることが好ましい。
【0023】
重合体(A)は、混練から180分後の流動保持率を高める観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が5モル%以上、35モル%以下、HEAの割合が20モル%以上、35モル%以下、AMの割合が52モル%以上、60モル%以下の共重合体であることが好ましい。
【0024】
重合体(A)は、混練から180分後の流動保持率を高める観点から、AA、HEA、及びAMの合計中、AAの割合が12モル%以上、17モル%以下、HEAの割合が27モル%以上、32モル%以下、AMの割合が52モル%以上、55モル%以下の共重合体であることが好ましい。
【0025】
重合体(A)は、混練から180分後の流動保持率を高める観点から、AM/HEAのモル比が、0.6以上3.0以下であることが好ましく、1.8以上2.25以下であることがより好ましく、1.8以上2以下であることが更に好ましい。
【0026】
重合体(A)は、混練直後と混練から15分後の流動性の変化率を抑える観点から、AM/HEAのモル比が、0.6以上3.0以下であることが好ましく、1.8以上2.0以下であることがより好ましい。
【0027】
重合体(A)は、混練から15分後の流動性と混練から180分後の流動性の変化率を抑える観点から、AM/HEAのモル比が、0.6以上3.0以下であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.8以上2.3以下であることが更に好ましく、1.8以上2以下であることがより更に好ましい。
【0028】
重合体(A)は、AA、HEA、AM以外の単量体を含むことができる。ただし、全構成単量体中、AA、HEA、AM以外の単量体の割合は5モル%未満である。具体的には、(i)メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸又はそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはそれらのエステル(例えばHEA、AM以外のアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステル)が挙げられる。また、例えば、(ii)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸又はそれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられる。これらの中でも、好ましくはメタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、及び無水マレイン酸から選ばれる単量体であり、更に好ましくはメタクリル酸又はそのアルカリ金属塩である。
【0029】
<重合体(B)>
重合体(B)は、芳香環を含む構成単位を有する共重合体である。重合体(B)としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸系重合体、ポリスチレンスルホン酸系重合体、フェノールの構造を持つ重合体、クレゾールの構造を持つ重合体、ビスフェノールAの構造を持つ重合体が挙げられる。なかでも、流動性の温度や水硬性粉体の種類に対する依存性が小さいことから、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0030】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、水硬性組成物の流動性の観点から、重量平均分子量は200000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、80000以下が更に好ましく、50000以下がより更に好ましい。また、同様の観点から、重量平均分子量は1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000以上がより更に好ましい。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の重量平均分子量は、下記条件のサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により測定されうる。
[GPC条件]
標準物質:ポリスチレンスルホン酸Na換算
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー(株)製)
溶離液:30mM酢酸/アセトニトリル=6/4
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI、UV
【0031】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行っても良い。また、中和で副生する水不溶解物を除去しても良い。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2モル以上、1.4モル以下を用い、150℃以上、165℃以下で2時間以上、5時間以下反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95モル以上、0.99モル以下となるようにホルマリンを85℃以上、95℃以下で、3時間以上、6時間以下かけて滴下し、滴下後95℃以上、105℃以下で縮合反応を行う。要すれば縮合物に、水と中和剤を加え、80℃以上、95℃以下で中和工程を行う。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0モル倍以上、1.1モル倍以下添加することが好ましい。また中和により生じる水不溶解物を除去、好ましくは濾過により分離しても良い。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液はそのまま或いは他の成分を適宜添加して、重合体(B)として使用することができる。該水溶液の固形分濃度は用途にもよるが、重合体(B)としては、30質量%以上、45質量%以下が好ましい。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩を得ることができ、これを粉末状の重合体(B)として用いてもよい。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0032】
<水硬性粉体>
水硬性粉体とは、水と反応して硬化する性質をもつ粉体、及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する粉体のことである。水硬性粉体として、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)のセメントが挙げられる。また、本発明に用いられる水硬性粉体には、セメント以外の水硬性粉体として、石膏、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよい。
【0033】
<骨材>
また、本発明の水硬性組成物は、骨材を含有する。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。本発明の水硬性組成物は、骨材として細骨材と粗骨材とを含有することが好ましい。
【0034】
更に、細骨材として特定の粒度分布を有するものを使用すると、低W/Pの水硬性組成物の粘性が更に低減できる。即ち、水硬性組成物の細骨材として、粒度分布が、JIS A 1102で用いられる呼び寸法0.3mmのふるいの通過率(以下、0.3mm通過率という)が1質量%以上、10質量%未満で、かつ、粗粒率が2.5以上、3.5以下である細骨材(以下、細骨材Aという)を用いることが好ましい。
【0035】
細骨材Aは、より好ましくは、0.3mmを超えるふるい呼び寸法における通過率が標準粒度分布の範囲内にあることである。
【0036】
本発明において、細骨材Aの0.3mm通過率は、水硬性組成物の流動性の観点から、10%未満が好ましく、より好ましくは9%以下、更に好ましくは7%以下である。水硬性組成物の材料分離抵抗性の点から、0.3mm通過率は1%以上が好ましく、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。
【0037】
以上の要件に加え、細骨材Aは、粗粒率(JIS A0203-3019)が2.5以上であることが好ましく、2.6以上であることがより好ましく、2.7以上であることが更に好ましく、そして、3.5以下であることが好ましく、3.3以下であることがより好ましく、3.1以下であることが更に好ましい。粗粒率が2.5以上では、水硬性組成物の粘性が低減され、粗粒率が3.5以下では、材料分離抵抗性も良好となる。
【0038】
更に、細骨材AのJIS A 1102で用いられる呼び寸法0.3mmを超えるふるいの通過率が、JIS A 5308付属書1表1の砂の標準粒度の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、呼び寸法0.15mmのふるいの通過率が2質量%未満であり、更に好ましくは1.5質量%未満である。ただし、材料分離抵抗性の観点から、0.5質量%以上であることが好ましい。呼び寸法0.3mmを超えるふるいについては、1つ以上の呼び寸法で、通過率が標準粒度の範囲内にあればよいが、好ましくは全部について標準粒度の範囲内にあることである。
【0039】
細骨材Aとしては、上記の粒度分布と粗粒率を満たす限り、砂、砕砂等、公知のものを適宜組み合わせて使用できる。細孔が少なく、吸水性が低く、同じ流動性を付与するのに少量の水でよい点から、海砂よりも川砂、山砂、砕砂が好ましい。また、細骨材Aは、絶乾比重(JIS A 0203:番号3015)が2.56以上であることが好ましい。
【0040】
<その他の成分>
本発明の水硬性組成物は、材料分離の防止、又は環境面からリサイクルの目的で、水硬性粉体以外の粉体を含有することができる。水硬性粉体以外の粉体としては、水硬性組成物に配合することが適切な粉体で、前記の目的に合うものが使用され、具体的には、炭酸カルシウム、石粉及びゴミ焼却灰から選ばれる1種以上の粉体が好ましい。水硬性粉体以外の粉体は、平均粒径が0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、そして、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0041】
また、その他に、本発明の水硬性組成物は、AE剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、増粘剤、防水剤、消泡剤、収縮低減剤、膨張剤、水溶性高分子、界面活性剤等を含有することができる。
【0042】
<水硬性組成物の組成>
本発明の水硬性組成物は、混練から180分後の流動性の保持率を高める観点から、水硬性粉体100質量部に対して、重合体(A)を好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは0.28質量部以下、より好ましくは0.26質量部以下、更に好ましくは0.20質量部以下含有する。
【0043】
また、本発明の水硬性組成物が水硬性粉体以外の粉体を含有する場合、水硬性粉体と水硬性粉体以外の粉体の合計100質量部に対して、重合体(A)を好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは0.28質量部以下、より好ましくは0.26質量部以下、更に好ましくは0.20質量部以下含有する。
【0044】
また、本発明の水硬性組成物は、混練から180分後の流動性の保持率を高める観点から、水硬性粉体100質量部に対して、重合体(B)を好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、そして、好ましくは1.6質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下含有する。
【0045】
また、本発明の水硬性組成物が水硬性粉体以外の粉体を含有する場合、水硬性粉体と水硬性粉体以外の粉体の合計100質量部に対して、重合体(B)を好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、そして、好ましくは1.6質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下含有する。
【0046】
また、本発明の水硬性組成物においては、水硬性組成物の初期流動性(混練直後の流動性)と流動保持性(例えば混練から180分後の流動性)の観点から、重合体(A)と重合体(B)の質量比は、重合体(A)/重合体(B)で、5/95以上であることが好ましく、10/90以上であることがより好ましく、10/90以上であることが更に好ましく、そして、45/55以下であることが好ましく、40/60以下であることがより好ましく、30/70以下であることが更に好ましい。
【0047】
本発明の水硬性組成物の水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕は、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、60質量%以下、更に50質量%以下であってもよい。
【0048】
本発明の水硬性組成物は、細骨材及び粗骨材を含有することができる。その場合、細骨材率(s/a)が35体積%以上、更に40体積%以上であることが好ましく、そして、55体積%以下、更に50体積%以下であることが好ましい。s/aは、細骨材(S)と粗骨材(G)の体積に基づき、s/a=〔S/(S+G)〕×100(体積%)で算出されるものである。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、細骨材を未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、600kg以上、更に650kg以上、そして、800kg以下、更に750kg以下含有することが好ましい。また、本発明の水硬性組成物が粗骨材を含有する場合、その含有量は、未硬化の水硬性組成物(フレッシュ状態の水硬性組成物)1m3に対して、800kg以上、更に900kg以上、そして、1200kg以下、更に1100kg以下含有することが好ましい。
【0050】
<水硬性組成物の運搬方法>
本発明は、前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製し、該水硬性組成物を、該水硬性組成物の調製場所とは異なる場所に運搬する、水硬性組成物の運搬方法を提供する。水硬性組成物としては、硬化前のいわゆる生コンクリートが挙げられる。
【0051】
生コンクリート(フレッシュ・コンクリート、生コンなどと称されることもある)は、「バッチャープラント」や「生コン工場」と呼ばれる製造工場で作られる。製造工場は、水硬性組成物の調製場所の1つである。ミキサ車やアジテータが、作られた生コンクリートを、調製場所とは異なる場合、例えば建築や土木の工事現場へ運搬するために使われる。生コンクリートは、骨材や水の分離を防止し、均一性を維持するために、運送中に、容器の回転等により、撹拌することが好ましい。ミキサ車やアジテータは、生コンクリートを積載するための容器であるドラムや、生コンクリートの投入口であるホッパーや、生コンクリートを目的の荷降し位置へ導くための樋であるシュートなどの構成を持つ。ミキサ車やアジテータには、ドラム内部に雨水が入るのを防いだり、生コン中の水分が蒸発するのを防いだりするために、ホッパーにはカバーを取り付けると良い。また、夏場など、気温が高い場合には、ドラム全体を、水を含ませたカバーで覆い、気化熱でドラムの温度を下げて、生コンクリートの温度が上昇しないようにしてもよい。
【0052】
本発明では、水硬性組成物を、混練後、好ましくは90分以上、より好ましくは120分以上、更に好ましくは180分以上かけて、該水硬性組成物の調製場所とは異なる場所に運搬する。
また、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは210分以下かけて、該水硬性組成物の調製場所とは異なる場所に運搬する。
【0053】
<水硬性組成物の製造方法>
本発明は、前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製する、水硬性組成物の製造方法を提供する。
【0054】
生コン工場は一般的に、材料の貯蔵、搬送、計量、練り混ぜを行う各設備と、洗浄廃水を処理する設備を有する。材料は砂利、砂、セメント、水、混和剤それぞれをサイロやストックヤードやタンクに貯蔵される。工場内の各材料の搬送は、骨材はベルトコンベアによって行われ、そのほかの粉体や液体は配管によって行われる。計量はロードセルによって行うのが一般的である。練り混ぜは、短時間で材料を均一に混ぜ合わせることである。練り混ぜ時間は通常30秒から120秒程度のことが多い。練り混ぜのためのミキサの種類としては重力式と強制式がある。重力式ミキサは、ドラム自体を回転させて、ドラム内に固定された羽で生コンクリートをすくい、重力で落下させることにより材料を混ぜ合わせるミキサである。強制式ミキサは、ドラム内で羽を回転させることにより、強制的に材料を混ぜあわせるミキサである。本発明の水硬性組成物の製造方法では、このような生コン工場における製造設備や製造条件を、適宜選定して採用することができる。
【0055】
本発明の態様を以下に例示する。
<1>
下記重合体(A)と下記重合体(B)とを含有する水硬性組成物用添加剤。
重合体(A):
構成単量体として、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルを含み、
全構成単量体中、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計の割合が95モル%以上であり、
アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下である、
重量平均分子量が17000以上、30000以下の共重合体
重合体(B):
芳香環を含む構成単位を有する共重合体
【0056】
<2>
重合体(B)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物である、前記<1>に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0057】
<3>
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、25モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が27モル%以上、55モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下の共重合体である、前記<1>又は<2>に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0058】
<4>
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が15モル%以上、35モル%以下、アクリル酸メチルの割合が25モル%以上、60モル%以下の共重合体である、前記<1>又は<2>に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0059】
<5>
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が5モル%以上、35モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が20モル%以上、35モル%以下、アクリル酸メチルの割合が52モル%以上、60モル%以下の共重合体である、前記<1>、<2>、<4>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0060】
<6>
重合体(A)が、アクリル酸又はその塩、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸メチルの合計中、アクリル酸又はその塩の割合が12モル%以上、17モル%以下、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が27モル%以上、32モル%以下、アクリル酸メチルの割合が52モル%以上、55モル%以下の共重合体である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0061】
<7>
重合体(A)の重量平均分子量が、17000以上、更に20000以上、そして、30000以下、更に25000以下、更に23000以下である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0062】
<8>
重合体(A)において、アクリル酸メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルのモル比が、0.6以上3.0以下、更に1.8以上2.25以下である、更に更に1.8以上2以下である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0063】
<9>
重合体(A)において、アクリル酸メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルのモル比が、0.6以上3.0以下、更に1.8以上2.0以下である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0064】
<10>
重合体(A)において、アクリル酸メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルのモル比が、0.6以上3.0以下、更に1.2以上3.0以下、更に1.8以上2.3以下、更に1.8以上2以下である前記<1>〜<7>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0065】
<11>
重合体(B)の重量平均分子量が、200000以下、更に100000以下、更に80000以下、更に50000以下、そして、1000以上、更に3000以上、更に4000以上、更に5000以上である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0066】
<12>
前記<1>〜<11>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と水と骨材を含有する水硬性組成物。
【0067】
<13>
前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を含有する水硬性組成物。この水硬性組成物では、重合体(A)及び/又は重合体(B)の態様は、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤で示したものを適宜適用できる。
【0068】
<14>
水硬性粉体100質量部に対して、重合体(A)を、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは0.28質量部以下、より好ましくは0.26質量部、更に好ましくは0.20質量部以下含有する、前記<12>又は<13>に記載の水硬性組成物。
【0069】
<15>
水硬性粉体100質量部に対して、重合体(B)を、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、そして、好ましくは1.6質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下含有する、前記<12>〜<14>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0070】
<16>
重合体(A)と重合体(B)の質量比が、重合体(A)/重合体(B)で、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、そして、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である、前記<12>〜<15>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0071】
<17>
水/水硬性粉体比が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である、前記<12>〜<16>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0072】
<18>
前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製し、該水硬性組成物を調製場所とは異なる場所に運搬する、水硬性組成物の運搬方法。この水硬性組成物の運搬方法では、重合体(A)及び/又は重合体(B)の態様は、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤や前記<12>〜<17>のいずれかに記載の水硬性組成物で示したものを適宜適用できる。
【0073】
<19>
水硬性組成物を、混練後、好ましくは90分以上、より好ましくは120分以上、更に好ましくは180分以上かけて前記異なる場所に運搬する、また、混練後、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは210分以下かけて運搬する、前記<18>に記載の水硬性組成物の運搬方法。
【0074】
<20>
前記重合体(A)、前記重合体(B)、水硬性粉体、水、及び骨材を混練して水硬性組成物を調製する、水硬性組成物の製造方法。この水硬性組成物の製造方法では、重合体(A)及び/又は重合体(B)の態様は、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤や前記<12>〜<17>のいずれかに記載の水硬性組成物で示したものを適宜適用できる。
【実施例】
【0075】
<重合体(A)及び比較の重合体>
実施例1−1の重合体を、以下の合成例1−1により製造した。また、表1の他の重合体を、下記合成例1−1と同様に、ただし、単量体組成と重量平均分子量を表1のように変更して、製造した。重量平均分子量は、過硫酸アンモニウム及びβ−メルカプトプロピオン酸の滴下量により調整した。なお、表1には、重合体(A)に該当しない重合体も便宜的に重合体(A)の欄に示した。
【0076】
合成例1−1
反応容器である4つ口フラスコにイオン交換水220.16gを仕込み、反応容器内を脱気後窒素雰囲気下にした。アクリル酸(以下、AAと表記する) 23.49g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEAと表記する) 78.07g、アクリル酸メチル(以下、AMと表記する) 102.83gを混合し、単量体液を調製した。過硫酸アンモニウム3.43gをイオン交換水22.90gに溶解し、開始剤水溶液(1)を調製した。β-メルカプトプロピオン酸19.40gをイオン交換水24.07gに溶解し、連鎖移動剤水溶液を調製した。反応容器を75℃にして、前記単量体液、開始剤水溶液(1)及び前記連鎖移動剤水溶液を、4つ口フラスコの別の口から滴下ロートで同時に180分かけて滴下した。その後、過硫酸アンモニウム0.74gをイオン交換水4.91gに溶解した開始剤水溶液(2)を30分かけて滴下し、その後更に75℃で60分間反応させた。反応終了後に常温に戻して、48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH5の重合体の水溶液を得た。
合成例1−1の仕込み組成比は、以下の通りであった。
AA/HEA/AM = 11.6/37.5/50.9 (質量比)
AA/HEA/AM = 15/30/55 (モル%)
【0077】
また、合成例1−1で得られた重合体の重量平均分子量は、20300であった。重合体(A)及び比較の重合体について、重量平均分子量の測定は、下記条件のサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)にて行った。
[GPC条件]
標準物質:ポリエチレングリコール換算(重量平均分子量 258,000、185,000、101,000、21,000、12,600、6,450、1,420)
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0078】
なお、合成例の単量体及び試薬は以下のものを用いた。
アクリル酸: SIGMA Aldrich 社製(純度 99.0質量%)
アクリル酸メチル:和光純薬工業(株)製(純度 99.0質量%)
2-ヒドロキシエチルアクリレート:SIGMA Aldrich 社製(純度 96.0質量%)
過硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)製
3-メルカプトプロピオン酸: SIGMA Aldrich 社製
【0079】
<重合体(B)>
重合体(B)として、下記のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、NSFと表記する)を用いた。
NSF:マイテイ150、(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系混和剤、重量分子量13400、花王(株)製)
【0080】
<水硬性粉体>
セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)の普通ポルトランドセメント/住友大阪セメント(株)の普通ポルトランドセメント=1/1、質量比)、密度3.16g/cm3
<骨材>
細骨材(S):城陽産、山砂、FM=2.67、密度2.56g/cm3、この細骨材は、細骨材Aに該当した。
<水>
水道水(W)
【0081】
<水硬性組成物(モルタル)の製造>
水硬性粉体(C)、骨材(S)、水(W)の配合比は、C/S/W=400g/700g/180gの質量比にて行った。この配合は、W/Cが45質量%であった。また、表1の重合体(A)と重合体(B)は、水(W)に添加して用いた。
モルタルミキサー((株)ダルトン製、万能混合撹拌機、型式:5DM−03−γ)を用いて、前記配合比で水硬性粉体及び骨材を投入し空練りを10秒行い、表1の重合体(A)と重合体(B)とを含んだ水を練り水として加え、低速回転にて120秒本混練りし、水硬性組成物を得た。
なお、重合体(B)の添加量は、目標空気連行量2±1%となるように調整した。
【0082】
<流動性の評価>
水硬性組成物について、混練直後、混練から15分後、及び混練から180分後のそれぞれのフロー値を以下の方法で測定し、流動性及び流動保持性を評価した。なお、練り水が最初に水硬性粉体と接した時点を混練開始とし、混練開始から15分後を「混練から15分後」とし、混練開始から180分後を「混練から180分後」とし、本混練り終了直後を「混練直後」とした。
(フロー値の測定方法)
水硬性組成物を、JIS R 5201に基づき、直ちにフローコーンに2層詰めし、フローコーンを正しく上の方に取り去り、最大と認める方向と、これに直角な方向の長さを測定し、フロー値とした。尚、JIS R 5201記載の落下運動は行っていない。
【0083】
混練直後のフロー値、混練から15分後のフロー値、及び混練から180分後のフロー値から、
(1)混練から180分後のフロー値の保持率(以下、「保持率」という)、
(2)混練直後のフロー値と混練から15分後のフロー値の変化率(以下、「0−15変化率」という)、
(3)混練から15分後のフロー値と混練から180分後のフロー値の変化率(以下、「15−180変化率」という)
を、下記の式により算出した。結果を表1に示す。なお、混練直後のフロー値を「初期フロー値」として表1に示した。
保持率(%)=100×(混練から180分後のフロー値)/(混練直後のフロー値)
0−15変化率(%)=100×〔(混練直後のフロー値)−(混練から15分後のフロー値)〕/(混練直後のフロー値)
15−180変化率(%)=100×〔(混練から180分後のフロー値)−(混練から15分後のフロー値)〕/(混練直後のフロー値)
【0084】
保持率は値が大きいほど流動保持性が良好であり、0−15変化率、15−180変化率は、それぞれ、値が小さいほど経時的な流動性のぶれが少なく、流動保持性が良好である。
【0085】
すなわち、0−15変化率が小さいということは、出荷時の検査の振れが少ないことを示し、好ましい。
また、15−180変化率が小さいということは、運搬後の水硬性組成物の到着時間に関係なくほぼ同じ流動性の水硬性組成物が得られることを示し、予測性が高いことになり、好ましい。
【0086】
【表1】
【0087】
表1中、重合体(A)及び重合体(B)の添加量は、それぞれ、セメント100質量部に対する添加量である。
【0088】
表1中、比較例1−6で得られた重合体(A)(比較重合体)は水に溶解しなかったため、重量平均分子量の測定は行わなかった。また、フロー値の測定も行わなかった。