(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記6基のスラストジャッキの前記ストローク量より前記前胴部の前記後胴部に対する相対的な位置・姿勢と、前記力センサによって検出される前記(6+n)基のスラストジャッキが受けている前記荷重とに基づいて、前記前胴部が受ける外力を演算し、その外力に対抗するためのそれぞれの前記スラストジャッキの目標分配力を演算する、
請求項1に記載のトンネル掘削装置。
掘削側表面に複数のカッタを有する前胴部と、前記前胴部の後方に配置されており、掘削を行う際の反力を得るためのグリッパを有する後胴部と、前記前胴部と前記後胴部とを連結するとともに、前記後胴部に対する前記前胴部の位置を変更する(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構と、を備えたトンネル掘削装置の制御方法であって、
前記(6+n)基のスラストジャッキが受ける荷重を検出するステップと、
前記スラストジャッキのストローク量を検出するステップと、
前記スラストジャッキが受ける荷重およびストローク量の検出結果に基づいて、前記前胴部が受ける外力を算出するステップと、
前記外力に基づいて、(6+n)基の前記スラストジャッキが分担する目標分配力を算出するステップと、
6基の前記スラストジャッキにおいてストローク制御を、他のn基の前記スラストジャッキにおいて前記目標分配力による力制御を実施するステップと、
を備えたトンネル掘削装置の制御方法。
(ただし、nは自然数)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のトンネル掘削装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたトンネル掘削装置を、例えば、坑道掘削に用いる場合には、通常のトンネル掘削に比べて、曲率半径Rが小さくかつ三次元の曲線掘削を行う必要がある。
【0006】
特に、曲率半径Rの小さい急曲線に沿ったトンネル掘削を行う際には、各スラストジャッキに付加されるスラスト力、ラジアル力、トルクが異なり、また大きく変動する。このため、特定の2基のジャッキの油圧回路を連通させる装置では、それら2基のジャッキに付加される力の方向・大きさが異なり、適切にジャッキの軸力を制御することができないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、トンネル掘削中に生じるあらゆる方向・大きさの外力に対して適切に対応可能なトンネル掘削装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係るトンネル掘削装置は、前胴部と、後胴部と、パラレルリンク機構と、ストロークセンサと、力センサと、制御部とを備えている。前胴部は、掘削側表面に複数のカッタを有する。後胴部は、前胴部の後方に配置されており、掘削を行う際の反力を得るためのグリッパを有する。パラレルリンク機構は、前胴部と後胴部との間で並列に配置されて前胴部と後胴部とを連結し後胴部に対する前胴部の位置を変更する(6+n)基のスラストジャッキを含む。ストロークセンサは、スラストジャッキに取り付けられ、各スラストジャッキのストローク量を検出する。力センサは、スラストジャッキに取り付けられ、スラストジャッキが受ける荷重を検出する。制御部は、ストロークセンサおよび力センサにおける検出結果に基づいて、(6+n)基のスラストジャッキに分配される目標分配力を算出するとともに、6基のスラストジャッキにおいてストローク制御を、他のn基のスラストジャッキにおいて目標分配力による力制御を実施するように、スラストジャッキを制御する(ただし、nは自然数。)。
【0009】
ここでは、前胴部と後胴部との間に設けられた(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構によって、後胴部に対して前胴部を前進させていくことで、トンネルの掘削を行うトンネル掘削装置において、各スラストジャッキに取り付けられた力センサおよびストロークセンサにおける検出結果に基づいて、6基のスラストジャッキのストローク制御を、残りn基のスラストジャッキの力制御を実施する。
【0010】
なお、3次元方向におけるトンネル掘削を実施するためには、前胴部の位置・方向は直交座標系のX,Y,Zの3軸と各軸の回転の6自由度の動きが必要であるため、6軸の駆動リンク(スラストジャッキ)が必要となる。本発明では、トンネル掘削時の大きな外力に対抗するために、n基のスラストジャッキを追加して(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構を用いる。
【0011】
一般的に、6自由度を持つ機構においては、6軸より多軸の駆動リンクでもストローク制御による位置姿勢の制御は可能だが、ストローク演算に不可避の誤差を伴う。さらに、駆動リンク内部で相殺される内力が発生するため、各駆動リンクの性能を損ねる。6基のスラストジャッキでストローク制御を行い、他のn基のスラストジャッキで補助的に外力に対抗する場合でも、急曲線掘進、あるいはトルクや推力の変化が大きい掘進では、上述の単純な油圧回路の連通では、逆にジャッキに内力が発生して、スラストジャッキが対抗できる最大外力が小さくなる場合が生じる。
【0012】
本発明では、6基のスラストジャッキをストローク制御することで、前胴部の位置・方向制御を実施する。さらに、(6+n)基のスラストジャッキが受けている荷重を基に算出される外力を(6+n)基のスラストジャッキに分配し、分配された力により残りn基のスラストジャッキを力制御する。これにより、(6+n)基のジャッキに理想的に外力を分配できるため、各ジャッキの力を有効にリンク外部に働かせることができる。
【0013】
第2の発明に係るトンネル掘削装置は、第1の発明に係るトンネル掘削装置であって、制御部は、6基のスラストジャッキのストローク量と、力センサによって検出される(6+n)基のスラストジャッキが受けている荷重とに基づいて前胴部が受ける外力を演算し、その外力に対抗するためのそれぞれのスラストジャッキの目標分配力を演算する。
ここでは、制御部が、前胴部の受ける外力を、検出されたスラストジャッキのストローク量と受けている荷重とから演算する。そして、演算された外力から、各スラストジャッキが受けるべき荷重を演算し、目標分配力とする。
【0014】
これにより、力制御するn基のスラストジャッキについて、制御する力の値を適切に演算できる。
第3の発明に係るトンネル掘削装置は、第1または第2の発明に係るトンネル掘削装置であって、力センサは、(6+n)基のスラストジャッキに設けられており、ストロークセンサは、6基のスラストジャッキに設けられている。
【0015】
ここでは、ストローク制御が実施される6基のスラストジャッキには、ストロークセンサおよび力センサが取り付けられているとともに、力制御のみが実施されるn基のスラストジャッキには、力センサのみが取り付けられる。
これにより、必要最小限のセンサを用いて、上述したストローク制御と力制御とを実施することができる。
【0016】
第4の発明に係るトンネル掘削装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るトンネル掘削装置であって、(6+n)基のスラストジャッキは、前胴部と後胴部とが互いに対向する面における外周部分に沿って略円周状に配置されている。
ここでは、(6+n)基のスラストジャッキのピストンロッド側、シリンダチューブ側の端部を、互いに対向する前胴部・後胴部の対向面における外周部分に沿って略円周状に配置している。
【0017】
これにより、多数のスラストジャッキを、バランスよく配置することができる。
第5の発明に係るトンネル掘削装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るトンネル掘削装置であって、制御部は、3次元方向において前胴部の姿勢を制御するように、それぞれのスラストジャッキを制御する。
ここでは、後胴部に対する前胴部の向き・姿勢が3次元方向(上・下・左・右方向)において調整可能となるように、パラレルリンク機構に含まれる複数のスラストジャッキを制御する。
【0018】
これにより、例えば、曲線部分を含み、かつ3次元方向におけるトンネルを含む坑道の掘削等を、容易に実施することができる。
第6の発明に係るトンネル掘削装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係るトンネル掘削装置であって、オペレータから前胴部の進行方向に関する操作入力を受け付ける入力部を、さらに備えている。入力部に対してオペレータからの操作入力が受け付けられると、制御部は、操作入力の内容に基づいて設定された所望のRに沿って掘削が実施されるように、6基のスラストジャッキを制御する。
【0019】
ここでは、オペレータによる操作入力により、所望の曲率半径Rに沿って曲線部分の掘削が実施されるように、6基のスラストジャッキを制御する。
これにより、オペレータの1回の操作入力によって、所望の曲率半径Rを維持しながら滑らかな曲線に沿った掘削を実施することができる。
第7の発明に係るトンネル掘削装置は、第6の発明に係るトンネル掘削装置であって、入力部は、タッチパネル式のモニタである。
【0020】
ここでは、オペレータからの操作入力を受け付ける入力部として、タッチパネル式のモニタを用いている。
これにより、オペレータは、手動操作によって前胴部の進行方向を調整する際には、タッチパネル式のモニタを操作するだけで容易に所望の方向へ掘削を実施することができる。
【0021】
第8の発明に係るトンネル掘削装置は、第7の発明に係るトンネル掘削装置であって、モニタは、前胴部の進行方向を設定する上下左右キーと、後胴部に対する前胴部の相対位置を表示する表示部と、を有している。
ここでは、タッチパネル式のモニタにおいて、前胴部の進行方向を設定する上下左右キーと後胴部に対する前胴部の相対位置とが表示される。
【0022】
これにより、オペレータは、直感的に微調整が必要な方向キーを押すだけで、容易に所望の方向への掘削を実施することができる。
第9の発明に係るトンネル掘削装置の制御方法は、掘削側表面に複数のカッタを有する前胴部と、前胴部の後方に配置されており掘削を行う際の反力を得るためのグリッパを有する後胴部と、前胴部と後胴部とを連結するとともに後胴部に対する前胴部の位置を変更する(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構と、を備えたトンネル掘削装置の制御方法であって、以下のようなステップを備えている。スラストジャッキが受ける荷重を検出するステップ。スラストジャッキのストローク量を検出するステップ。スラストジャッキが受ける荷重およびストローク量の検出結果に基づいて、前胴部が受ける外力を算出するステップ。その外力に基づいて、(6+n)基のスラストジャッキが分担する目標分配力を算出するステップ。6基のスラストジャッキにおいてストローク制御を、n基のスラストジャッキにおいて目標分配力による力制御を実施するように、スラストジャッキを制御するステップ。
【0023】
ここでは、前胴部と後胴部との間に設けられた(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構によって、後胴部に対して前胴部を前進させていくことで、トンネルの掘削を行うトンネル掘削装置において、各スラストジャッキに取り付けられた力センサおよびストロークセンサにおける検出結果に基づいて、6基のスラストジャッキのストローク制御を、残りn基のスラストジャッキの力制御を実施する。
【0024】
なお、3次元方向におけるトンネル掘削を実施するためには、前胴部の位置・方向は直交座標系のX,Y,Zの3軸と各軸の回転の6自由度の動きが必要であるため、6軸の駆動リンク(スラストジャッキ)が必要となる。本発明では、トンネル掘削時の大きな外力に対抗するために、n基のスラストジャッキを追加して(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構を用いる。
【0025】
本発明では、6基のスラストジャッキをストローク制御することで、前胴部の位置・方向制御を実施する。さらに、(6+n)基のスラストジャッキが受けている荷重を基に算出される外力を(6+n)基のスラストジャッキに分配し、分配された力により残りn基のスラストジャッキを力制御する。これにより、(6+n)基のジャッキに理想的に外力を分配できるため、各ジャッキの力を有効にリンク外部に働かせることができる。
【0026】
よって、6基のスラストジャッキについて誤差の少ないストローク制御を実施するとともに、6基のスラストジャッキを備えたパラレルリンク機構と比較して、より大きな外力に対抗することができる。この結果、例えば、小さい曲率半径を含む曲線部の掘削を実施する際にトンネル掘削装置に対して付与される外力の方向や大きさが変動した場合でも、(6+n)基のスラストジャッキを用いて適切に対応することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るトンネル掘削装置によれば、(6+n)基のスラストジャッキを含むパラレルリンク機構を備えたトンネル掘削装置において、急曲線掘削の場合でも、適切な荷重でスラストジャッキを力制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係るトンネル掘削装置およびその制御方法について、
図1〜
図8を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態において登場する掘削機(トンネル掘削装置)10(
図1等)は、坑道掘削(
図8参照)等に用いられる掘削装置であって、TBM(トンネルボーリングマシン)のうち、いわゆるグリッパTBM、ハードロックTBMと呼ばれるものである。また、本実施形態では、掘削機10によって掘削されるトンネル(第1トンネルT1)は、断面が略円形のトンネル(第1トンネルT1(
図2参照))である。なお、本実施形態に係る掘削機10によって掘削されるトンネルの断面形状は、円形に限らず、楕円形、複円形、馬蹄形などであってもよい。
【0030】
(掘削機10の構成)
本実施形態では、
図1に示す掘削機10を用いて、第1トンネルT1(
図2等参照)の掘削を行う。なお、本実施形態で説明する掘削機10は、グリッパ13aによって後方支持された状態でカッタヘッド12を回転させて掘削を行う一般的な構成を備えた掘削機である。
【0031】
掘削機10は、岩盤等を掘削しながら前進して第1トンネルT1の掘削工事を行う装置であって、
図1に示すように、前胴部11、カッタヘッド12、後胴部13、パラレルリンク機構14、およびベルトコンベア15を備えている。
前胴部11は、
図1に示すように、カッタヘッド12とパラレルリンク機構14との間に配置されており、掘削側先端に設けられたカッタヘッド12とともに掘削機10の前部を構成する。また、前胴部11は、後述するパラレルリンク機構14に含まれる複数のスラストジャッキ14a〜14hのいずれかを用いて、後胴部13に対する位置・姿勢を変化させる。また、前胴部11は、
図2に示すように、その外周面からトンネルT1の側壁T1aに対して突出して押し付けられるグリッパ11aを有している。これにより、例えば、掘削機10を後退させる際等に、前胴部11をトンネルT1内において支持しながらパラレルリンク機構14を伸びる方向に駆動させることで、後胴部13を後退させることができる。
【0032】
カッタヘッド12は、
図1に示すように、掘削機10の先端側に配置されており、略円形のトンネルの中心軸を回転中心として回転することで、先端側表面に設けられた複数のディスクカッタ12aによって岩盤等を掘削する。また、カッタヘッド12は、ディスクカッタ12aによって細かく砕かれた岩盤や岩石等を、表面に形成された開口部(図示せず)から内部に取り込む。
【0033】
後胴部13は、
図1に示すように、掘削機10の後側に配置されており、掘削機10の後部を構成する。後胴部13の幅方向の両側部には、グリッパ13aが配設されている。また、後胴部13と前胴部11とは、パラレルリンク機構14によって連結されている。
グリッパ13aは、
図2に示すように、後胴部13の外周面から径方向外側に向かって突出することで、掘削中の第1トンネルT1の側壁T1aに対して押し付けられる。これにより、掘削機10を第1トンネルT1内において支持することができる。
【0034】
パラレルリンク機構14は、
図1に示すように、掘削機10の中程に配置されており、掘削機10の中胴部を構成する。また、パラレルリンク機構14は、8基((6+n)基、n=2)のスラストジャッキ14a〜14hを有している。スラストジャッキ14a〜14hは、シリンダ式の油圧ジャッキである。スラストジャッキ14a〜14hは、前胴部11と後胴部13との間で並列に配置され、前胴部11と後胴部13とを連結している。このため、前胴部11と後胴部13との間においてそれぞれのスラストジャッキ14a〜14hを伸縮させることで、後胴部13に対する前胴部11の姿勢(向き)が所望の方向になるように制御しながら外力に対抗した状態で、カッタヘッド12によって第1トンネルT1を掘削していく。
【0035】
スラストジャッキ14a〜14hは、双方向吐出の油圧ポンプ52によって駆動される。油圧ポンプ52は、サーボモータ51によって駆動される。サーボモータ51は、コントローラ20から出力される信号によって制御される。サーボモータ51の制御により、スラストジャッキ14a〜14hの伸縮・停止が制御される。
スラストジャッキ14a〜14hの制御には、ストローク制御と力制御とがある。ストローク制御では、スラストジャッキのストローク量を指示すると、コントローラ20は、スラストジャッキをそのストローク量まで伸縮させ、そのストローク量でて停止するように制御する。力制御では、ジャッキが受ける荷重値を指示すると、コントローラは、スラストジャッキが受ける荷重がその荷重値より小さい間はストローク量を大きくし、荷重が荷重値と等しくなると、その状態を維持するようにストローク量を制御する。
【0036】
また、8基のスラストジャッキ14a〜14hのシリンダチューブ側およびピストンロッド側は、
図3に示すように、前胴部11と後胴部13とのそれぞれの対向面における外周部分に沿って略円周状に配置されている。また、8基のスラストジャッキ14a〜14hのうち、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fを伸縮させることで、後胴部13に対して前胴部11を前進させて、あるいは前胴部11に対して後胴部13を後進させて、掘削機10を少しずつ前進・後進させていくことができる。
【0037】
また、8基のスラストジャッキ14a〜14hには、各スラストジャッキ14a〜14hのシリンダ圧力を検出する力センサである圧力センサ17a〜17h(
図4参照)が取り付けられている。また、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fには、
図5(a)に示すように、各スラストジャッキ14a〜14fのストローク量を検出するストロークセンサ16a〜16fが取り付けられている。
【0038】
つまり、本実施形態では、パラレルリンク機構14に含まれる8基のスラストジャッキ14a〜14hのうち、ストローク制御の対象になっていない2基のスラストジャッキ14g,14hには、
図5(b)に示すように、圧力センサ17g,17hのみ取り付けられており、ストロークセンサは取り付けられていない。
そして、8基のスラストジャッキ14a〜14hは、ストロークセンサ16a〜16fおよび圧力センサ17a〜17hにおける検出結果に基づいて、後述するジャッキ制御部26によって制御される。
【0039】
なお、ジャッキ制御部26による各スラストジャッキ14a〜14hのストローク制御、力制御については、後段にて詳述する。
ストロークセンサ16a〜16fは、
図5(a)に示すように、8基のスラストジャッキ14a〜14hのうち、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fに取り付けられている。なお、上述したように、ストロークセンサは、ストローク制御の対象とならない2基のスラストジャッキ14g,14hには取り付けられていない。
【0040】
これにより、後胴部13に対する前胴部11の位置・姿勢を決めるストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fのストローク量を検出することができる。
圧力センサ17a〜17h(ヘッド側センサ17aa〜17fa、ボトム側センサ17ab〜17fbおよびヘッド側センサ17ga,17ha、ボトム側センサ17gb,17hb)は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、8基全てのスラストジャッキ14a〜14hに取り付けられている。
【0041】
つまり、圧力センサ17a〜17hは、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fに取り付けられたヘッド側センサ17aa〜17fa、ボトム側センサ17ab〜17fbと、ストローク制御の対象になっていない2基のスラストジャッキ14g,14hに取り付けられたヘッド側センサ17ga,17ha、ボトム側センサ17gb,17hbによって構成されている。
【0042】
そして、各スラストジャッキ14a〜14fのシリンダ圧は、ヘッド側センサ17aa〜17faとボトム側センサ17ab〜17fbとの圧力差によって求めることができる。同様に、スラストジャッキ14g,14hのシリンダ圧は、ヘッド側センサ17ga,17haとボトム側センサ17gb,17hbとの圧力差によって求めることができる。
これにより、分配力制御の対象となる8基のスラストジャッキ14a〜14hにかかっている外力を検出することができる。
【0043】
掘削機10は、以上の構成により、グリッパ13aが第1トンネルT1の側壁T1aに対して圧接されることで、第1トンネルT1内において移動しないように保持された状態で、先端側のカッタヘッド12を回転させながらパラレルリンク機構14のスラストジャッキ14a〜14hを伸ばしてカッタヘッド12を押し付けることで岩盤等を掘削し前進させる。このときに、掘削機10では、細かく砕かれた岩石等をベルトコンベア15等を用いて後方へと運搬する。このようにして、掘削機10は、第1トンネルT1(
図2参照)を掘り進んでいくことができる。
【0044】
(掘削機10の制御ブロック)
本実施形態の掘削機10は、
図4に示すように、内部に、入力部21と、ジャッキ圧力取得部22と、ストローク量取得部23と、前胴位置・姿勢演算部24と、目標分配力演算部25と、ジャッキ制御部26と、を含む制御ブロックが構成される。
入力部21は、後述するタッチパネル式のモニタ表示画面50(
図6参照)を介して、オペレータからの操作入力を受け付ける。具体的には、前胴部11の掘進(前進)する方向を手動操作する際に、方向入力部52の各種キー52a〜52d(
図6参照)等の操作を受け付ける。オペレータは、操作入力により所望の前胴部11の位置・姿勢を設定する。設定後に伸ボタン53aを押すと、前胴部11が設定された位置・姿勢になるようにスラストジャッキ14a〜14fのストロークが制御される。
【0045】
ジャッキ圧力取得部22は、力制御の対象となる8基全てのスラストジャッキ14a〜14hのそれぞれのシリンダ圧をリアルタイムに取得する。具体的には、ジャッキ圧力取得部22は、8基のスラストジャッキ14a〜14hにそれぞれ取り付けられた圧力センサ17a〜17hにおける検出結果を取得する。各圧力センサ17a〜17hにおける検出結果は、上述したように、ヘッド側センサ17aa〜17haにおける検出結果とボトム側センサ17ab〜17hbにおける検出結果との差として求められる。このヘッド側の圧力とボトム側の圧力の差分は、スラストジャッキスラスト14a〜14hの軸力であり、ジャッキが受ける荷重を示す。
【0046】
ストローク量取得部23は、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fのストローク量をリアルタイムに取得する。具体的には、ストローク量取得部23は、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fに取り付けられたストロークセンサ16a〜16fにおける検出結果を取得する。
前胴位置・姿勢演算部24は、後胴部13に対する前胴部11の相対的な位置・姿勢を演算によって求める。具体的には、前胴位置・姿勢演算部24には、例えば、1日1回、3点のプリズム(図示せず)を用いて行われる外部からの測量による後胴部13の位置が入力される。ストローク量取得部23で得られた各スラストジャッキ14a〜14fのストローク量に基づいて、後胴部13に対する前胴部11の相対的な位置・姿勢が演算によって求められる。また、入力された後胴部13の測量位置と、演算された後胴部13に対する前胴部11の相対的な位置・姿勢とによって、前胴部11の位置が演算によって求められる。
【0047】
目標分配力演算部25は、ジャッキ圧力取得部22において取得された圧力センサ17a〜17hの検出結果と前胴位置・姿勢演算部24において演算された前胴部の位置・姿勢から、8基のスラストジャッキ14a〜14hに掛かっていると想定される外力の大きさと、その外力の6成分に対抗するためのそれぞれのスラストジャッキ14a〜14fの目標分配力を演算する。
【0048】
パラレルリンク機構14を構成するスラストジャッキが6基だけであれば、各ジャッキの目標分配力の組み合わせは1通りのみ存在する。換言すると、目標分配力は、常に、各ジャッキにおいて検出された軸力と一致する。一方、本実施形態のように、スラストジャッキが6基より多い機構では、各ジャッキの目標分配力の組み合わせは無数に存在する。そこで、一般逆行列により、各ジャッキの目標分配力を演算する。
【0049】
具体的には、目標分配力演算部25は、以下のような演算によって各スラストジャッキ14a〜14hの目標分配力制御を行う。
すなわち、目標分配力演算部25は、前胴位置・姿勢演算部24で得られた前胴部11の位置・姿勢から、前胴部11の中心軸ローカル座標のy軸、前胴部11の断面にローカルのx軸,z軸を考え、その単位ベクトル(e
x,e
y,e
z)を求める。
【0050】
次に、8基のスラストジャッキ14a〜14hの延長方向の単位ベクトルe
1〜e
8を求める。
そして、ジャッキ圧力取得部22で得られた各ジャッキ14a〜14hの軸力をf
1〜f
8とする。
中心軸ローカル座標での前胴部11に加わる外力Fは、次式により演算できる。
【0052】
ここで、Fは、
F=(F
x,F
y,F
z,Mα,Mβ,Mγ)T
で示される行列である。F
x、F
y、F
zはローカル座標における各x方向、y方向、z方向の力である。Mα、Mβ、Mγは、ローカル座標における各z軸、y軸、x軸回りのモーメントである。Fは前胴部11に加わる外力を意味する。
fは、
f=(f
1,f
2,f
3,f
4,f
5,f
6,f
7,f
8)T
で示される行列である。記号f
1〜f
8は検知されたジャッキ14a〜14hの軸力である。
Wは変換行列であり、次の要素を持つ。
【0053】
記号e
ijは、各ジャッキ14a〜14hの軸延長方向の単位ベクトルとローカル座標軸方向の単位ベクトルの内積を示す。e
i (i=1〜8)と(e
x,e
y,e
z)の内積を計算して、ローカルxyz軸の成分に分解する。具体的には、
e
1・e
x=e
1x スラストジャッキ14aが力1の時、e
x方向への力成分Fx方向
e
1・e
y=e
1y スラストジャッキ14aが力1の時、e
y方向への力成分Fy方向
e
1・e
z=e
1z スラストジャッキ14aが力1の時、e
z方向への力成分Fz方向
e
1xy
1 -e
1yx
1 スラストジャッキ14aが力1の時、z軸回りのモーメントとして作用する成分Mα(=F
4)方向
e
1xz
1 -e
1zx
1 スラストジャッキ14aが力1の時、y軸回りのモーメントとして作用する成分Mβ(=F
5)方向
e
1zy
1 -e
1yz
1 スラストジャッキ14aが力1の時、x軸回りのモーメントとして作用する成分Mγ(=F
6)方向
を示す。
【0054】
パラレルリンク機構14を構成するスラストジャッキが6基のみである場合、上記式で演算される外力Fに基づく各ジャッキの軸方向の力成分と検知された軸力f
1〜f
6とは一致する。しかし、リンク機構14を構成するジャッキが6基より多い場合、演算された外力と検知された軸力とは一致しない。
例えば、8基のジャッキ構成では、6基のジャッキのストローク長により前胴部11の位置・姿勢が決定され、残り2基のジャッキがその位置・姿勢に対応するストローク長より短いストローク長であり得る。この場合、前胴部11に加わる外力が存在するにもかかわらず、残り2基のジャッキで検知される軸力はゼロである。
【0055】
そこで、演算された外力Fの6成分と、変換行列Wの行要素の比から、成分方向の分担を仮定して、外力に対応する各ジャッキの軸方向の力成分である目標分配力を求める。
変換行列Wは正則ではないので、目標分配力は一般逆行列を用いて算出する。一般逆行列としては疑似逆行列(ムーア・ペンローズ逆行列)を用いる。つまり、F=Wfより、W
+F=f'となる疑似逆行列W+(8×6行列)を求め、最少二乗解となる目標分配力f'(8×1行列)を得る。これにより、最小のノルムで目標分配力を演算することができる。
【0056】
この8成分のうち、ストローク制御の対象にならない2基のスラストジャッキ14g,14hの成分の値をfpjとする。
ジャッキ制御部26は、目標分配力演算部25において演算によって求められた8基のスラストジャッキ14a〜14hの目標分配力の中のジャッキ14g,14hの目標分配力に基づいて、パラレルリンク機構14に含まれる各スラストジャッキ14g,14hに掛かる力を制御するとともに、他の6基のスラストジャッキ14a〜14fのストローク量制御を行う。2基のスラストジャッキ14g,14hを上記演算で得られる目標分配力で力制御することにより、他のスラストジャッキ14a〜14fが外力から受ける荷重は、上記演算で得られる目標分配力と同じ、あるいはほぼ同じとなる。
【0057】
これにより、トンネルの掘削作業中において、岩盤質の変化等により掘削機10に付与される外力の方向や大きさが変化した場合でも、2基のスラストジャッキ14g,14hの分配力制御を実施するとともに、6基のスラストジャッキ14a〜14fのストローク制御を実施することで、外力の変化に適切に対応することができる。よって、外力の大きさや向きが変化しやすい曲率半径Rの小さい曲線部分を含む坑道等の掘削時においても、十分に対応可能となる。
【0058】
<モニタ表示画面50>
本実施形態の掘削機10は、オペレータからの操作入力を受け付ける入力部21として、
図6に示すように、タッチパネル式のモニタ表示画面50を用いている。本実施形態では、掘進目標装置を入力するインターフェースとして、モニタ表示画面50を介して、上下方向、左右方向、前進位置の3点を入力することができる。
【0059】
モニタ表示画面50には、
図6に示すように、掘進・後退設定部51と、方向入力部52と、ジャッキ操作部53と、前胴位置・姿勢表示部54と、が表示される。
掘進・後退設定部51は、掘削機10の移動方向(前進・後退)を切り替えるスイッチであって、掘進ボタン51aと、後退ボタン51bとを有している。
掘進ボタン51aは、掘削機10を前進させる際に押下される。そして、掘進ボタン51aが押下されると、掘削機10が前進するように、カッタヘッド12、後胴部13のグリッパ13aおよびパラレルリンク機構14の制御が行われる。
【0060】
後退ボタン51bは、所望の位置までトンネル掘削が完了した場合等に掘削機10をトンネルに沿って後退させる際に押下される。そして、後退ボタン51bが押下されると、掘削機10が前進するように、後胴部13のグリッパ13aおよびパラレルリンク機構14の制御が行われる。
方向入力部52は、目標位置に向かって掘進中にずれが生じた場合にオペレータによって操作され、複数の方向ボタン(上ボタン52a、下ボタン52b、右ボタン52c、左ボタン52d)を有している。
【0061】
上ボタン52a、下ボタン52b、右ボタン52c、左ボタン52dは、オペレータが前胴部の位置・姿勢を確認しながら、適切な方向のボタンが操作される。これにより、オペレータは、前胴位置・姿勢表示部54を見ながら、直感的に適切な方向にボタン操作するだけで、掘削機10が目標位置に向かって掘進していくように操作することができる。
ジャッキ操作部53は、パラレルリンク機構14に含まれる8基のスラストジャッキ14a〜14hの動作を設定する操作入力部であって、伸ボタン53a、止ボタン53b、
縮ボタン53cを有している。
【0062】
伸ボタン53aは、スラストジャッキ14a〜14hを伸びる方向に駆動させる際に操作される。
止ボタン53bは、スラストジャッキ14a〜14hの動きを停止させる際に操作される。
縮ボタン53cは、スラストジャッキ14a〜14hを縮める方向に駆動させる際に操作される。
【0063】
前胴位置・姿勢表示部54は、後胴部13に対する前胴部11の位置・姿勢、および計画掘削線を表示する。また、前胴位置・姿勢表示部54は、第1表示部54aと、第2表示部54bとを有している。
第1表示部54aは、後胴部13の中心位置R1、中心線Rと、前胴部11の中心位置(前胴原点)F1、中心線F、姿勢Aと、掘削装置の中折れ点P1と、計画掘削線DLと、を表示する。ここで、中折れ点P1とは、後胴部13の中心線Rと前胴部11の中心線Fの交点である。
図6に示す例では、前胴部11の中心位置F1が後胴部13に対し右方向にずれていることを示している。
【0064】
第2表示部54bは、後胴部13の中心位置P1を中心位置として、正面視において前胴部11の中心位置が上下・左右方向においてどの方向にずれているかを表示する。
図6に示す例では、前胴部11の中心位置が後胴部13の中心位置に対して右やや上にずれていることを示している。
本実施形態では、オペレータが
図6に示すモニタ表示画面50に操作入力を行うことで、以下のような操作を実施することができる。
【0065】
具体的には、掘進ボタン51aをON状態とし、伸ボタン53aが押下されると、後胴部13のグリッパ13aがトンネルの側壁に向かって張り出して、前胴部11のグリッパ11aは張り出さず、ストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fが伸びる方向に駆動される。これにより、後胴部13の位置はそのままで、前胴部11だけを前進させることができる。
【0066】
また、掘進ボタン51aをON状態とし、縮ボタン53cが押下されると、後胴部13のグリッパ13aは張り出さず、前胴部11のグリッパ11aが側壁に対して張り出した状態で、6基のスラストジャッキ14a〜14fが縮む方向に駆動される。これにより、前胴部11の位置はそのままで、後胴部13の位置を掘削方向に前進させることができる。
【0067】
さらに、後退ボタン51bをON状態とし、伸ボタン53aが押下されると、後胴部13のグリッパ13aは張り出さず、前胴部11のグリッパ11aが張り出した状態で、6基のスラストジャッキ14a〜14fが伸びる方向に駆動される。これにより、前胴部11の位置はそのままで、後胴部13だけを後退させることができる。
また、後退ボタン51bをON状態とし、縮ボタン53cが押下されると、後胴部13のグリッパ13aが張り出し、前胴部11のグリッパ11aが張り出さない状態で、6基のスラストジャッキ14a〜14fが縮む方向に駆動される。これにより、後胴部13の位置はそのままで、前胴部11だけを後退させることができる。
【0068】
<掘削機10の制御方法>
本実施形態の掘削機10の制御方法について、
図7のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、本実施形態の掘削機10では、例えば、設計図に基づいて設定された曲線(計画掘削線)に沿って自動掘削運転中に岩盤質等の変化により掘削機10に対して付与される外力が大きく変化した場合でも、以下に示す分配力制御を実行することで、上下・左右のあらゆる方向からの外力にも適切に対応することができる。
【0069】
具体的には、まず、ステップS11において、制御が開始されると、ステップS12において、8基のスラストジャッキ14a〜14hの全てにそれぞれ取り付けられた各圧力センサ17a〜17h(
図5(a)および
図5(b)参照)において検出されたボトム・ヘッド圧を取得する。
次に、ステップS13では、ステップS12において求められた各スラストジャッキ14a〜14hにおけるボトム・ヘッド圧からその圧力差が求められる。これにより、各スラストジャッキ14a〜14hに掛かっている荷重を得ることができる。
【0070】
次に、ステップS14では、8基のスラストジャッキ14a〜14hのうちのストローク制御の対象となる6基のスラストジャッキ14a〜14fに取り付けられたストロークセンサ16a〜16fから各スラストジャッキ14a〜14fのそれぞれのストローク量を取得する。
次に、ステップS15では、前胴部11の後胴部13に対する相対的な位置座標および姿勢を演算する。前胴部11の後胴部13に対する相対的な位置座標とは、掘削装置の中折れ点P1を基準とした前胴部11の位置座標を意味する。前胴部13の姿勢は、各スラストジャッキ14a〜14fのストローク量から内挿により演算される。
【0071】
なお、前胴部11の絶対的な位置座標は、上述したように、例えば、3点のプリズム(図示せず)を用いて行われる外部からの測量によって後胴部13の位置を求めた後、各スラストジャッキ14a〜14fのストローク量等に基づいて演算によって求めることができる。
次に、ステップS16では、ステップS15において演算によって求められた前胴部11の相対位置座標における各スラストジャッキ14a〜14hに分配されている力成分から前胴部11が受けている外力の演算を行う。
【0072】
次に、ステップS17では、前胴部11が受けるS16で演算された外力に対抗して8基のスラストジャッキ14a〜14hそれぞれが分担する力である目標分配力の演算を行う。なお、目標分配力の演算については、上段にて説明した通りである。
次に、ステップS18では、ステップS17において求められた目標分配力に基づいて、8基のスラストジャッキ14a〜14hに対して適切に外力を分担して負担させるように、スラストジャッキ14g,14hの力制御を行う。
【0073】
本実施形態の掘削機10では、以上の様な制御方法により、8基のスラストジャッキ14a〜14hのうち、6基のスラストジャッキ14a〜14fについては、ストローク量制御を行う。一方、2基のスラストジャッキ14g,14hについては、ストローク量制御は行わず、力制御だけを行う。
これにより、以下に示す坑道の掘削時等において曲率半径Rの小さい曲線部分を含むトンネルを掘削する際に、掘削機10に対して付与される外力の方向や大きさが変化した場合でも、8基のスラストジャッキ14a〜14hに対して効果的に外力の負担を分担させるように制御を行うことで、円滑に掘削を実施することができる。
【0074】
<トンネル掘削方法>
本実施形態に係る掘削機10による掘削方法について、
図8を用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、本実施形態では、上述した掘削機10を制御して、以下のように坑道掘削を行う。
【0075】
図8は、既設の2本のトンネルT0から、互いに略平行な3本の第1掘削線L1に沿って、3本の第1トンネルT1を掘削していく手順を示している。
なお、
図8では、掘削機10は掘削機10のための駆動源等を備えたバックアップトレーラ31を従えて、既設のトンネルT0と第1トンネルT1へと分岐していく位置まで掘削機10を牽引車によって移動させていく状態を示している。
【0076】
このとき、既設のトンネルT0から第1トンネルT1へ分岐するRが小さい部分には、コーナー用反力受け部30が設置されている。これにより、第1トンネルT1へ分岐するRが小さい曲線部においても、掘削機10は、グリッパ13aをコーナー用反力受け部30に当接させながら第1トンネルT1の掘削を進めていくことができる。
次に、
図8に示すように、第1掘削線L1に沿って、掘削機10によって岩盤等を掘削しながら、掘削機10およびバックアップトレーラ31を移動させていく。これにより、第1トンネルT1を所望の位置に形成することができる。
【0077】
次に、離間した位置に形成された既設のトンネルT0まで掘削が完了して第1トンネルT1がトンネルT0,T0間を貫通すると、掘削機10とバックアップトレーラ31は、牽引車によって後退して初期位置まで戻される。
なお、第1トンネルT1がトンネルT0まで到達した部分には、コーナー用反力受け部30が設置されている。
【0078】
次に、掘削された第1トンネルT1に略平行な新たな第1トンネルT1を掘削するために、再度、第1掘削線L1に沿って掘削機10を移動させる。
次に、これらの手順を繰り返して互いに略平行な第1トンネルT1を3本掘削する。
これにより、本実施形態の掘削機10によれば、Rが小さい曲線部を含む坑道掘削を行う際に、掘削中に掘削機10に対して付与される外力の方向や大きさが変化した場合でも、上述した掘削機10の制御方法によって、各スラストジャッキ14a〜14hに分配される分配力を適切に制御することで、円滑なトンネル掘削を実施することができる。
【0079】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、8基のスラストジャッキ14a〜14hを含むパラレルリンク機構14を備えた掘削機10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
パラレルリンク機構を構成するスラストジャッキの基数は、8基に限らず、例えば、7基、9基、10基等、(6+n)基(n=1,2,3,・・・)、つまり6基より多ければ何基でもよい。
なお、スラストジャッキの適切な基数は、掘削するトンネル径に依存する。例えば、トンネル径が10m未満の場合には、スラストジャッキの適切な基数は、7〜10基である。
【0081】
(B)
上記実施形態では、ストローク制御・力制御の対象となるスラストジャッキ14a〜14fに対して、
図3に示すように、力制御だけの対象となるスラストジャッキ14g,14hが互いに隣り合う位置に配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
例えば、
図9に示すように、スラストジャッキ14g,14hが離れた位置に配置された構成であってもよい。
(C)
上記実施形態では、上述したように、最少二乗法の解として求められたfを用いて力制御を実施する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、以下の様に、成分の2乗比×外力成分の総和全体から分担を受け持つとして、力制御を実施してもよい。
すなわち、j番目のスラストジャッキの目標力fpjを以下の様に求める。
【0085】
この場合でも、上記実施形態と同様に、(6+n)基のスラストジャッキに対して適切に分配力制御を実施することができる。
(D)
上記実施形態では、オペレータの操作入力を受け付けるインターフェースとして、タッチパネル式のモニタ表示画面50を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
例えば、タッチパネル式のモニタ以外にも、一般的なPC画面を見ながらキーボードやマウス等で操作入力を行ってもよい。
(E)
上記実施形態では、モニタ表示画面50に、各種操作部(掘進・後退設定部51と、方向入力部52と、ジャッキ操作部53と、ずれ量表示部54)を配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
例えば、モニタ表示画面に表示させる表示態様としては、他の態様を採用してもよい。
(F)
上記実施形態では、スラストジャッキ14a〜14hに加わる外力を検出するために、ジャッキのヘッド側とボトム側のそれぞれに圧力センサを設け、検出された圧力の差圧をコントローラ20で演算した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
例えば、スラストジャッキ14a〜14hのピストンロッドにロードセルを設けて直截、外力を検出してもよい。